【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願、平成27年度国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 マッチングプランナープログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明を適用した歩行補助車の側面図であり、
図2は
図1のA−A断面図であり、
図3はハンドルの平面図である。歩行補助車1は、歩行困難者の歩行を補助する歩行車である。
【0015】
この歩行補助車1は、歩行者が身体を預ける車輪2,3付きの機体4と、前記車輪3に制動力を作用させる制動装置6と、該制御装置6の作動を制御する制御ユニット7とを備えている。
【0016】
上記機体4は、左右一対の前輪2,2及び後輪3,3と、平面視で後方に開放したU字状をなすベースフレーム8及び該ベースフレーム8の前部において左右幅の略全体に亘り架設され且つ前後に並列配置された複数の左右方向に延びる横フレーム9によって構成され且つ上述の4つの車輪2,2,3,3に支持されるベース部11と、ベース部11から上方に突設された左右一対の支柱12,12と、該左右の支柱12,12の上端部の間に架設された平面視で後方が開放されたU字状に成形されたハンドル14とを有している。
【0017】
左右の前輪2,2は、左右の車輪フレーム10,10にそれぞれ回転自在に支持され、この車輪フレーム10,10は、ベース部11の前部の左右にそれぞれ水平回動可能に取付けられている。一方、左右の後輪3,3は、左右の車輪フレーム15,15にそれぞれ回転自在に支持され、この車輪フレーム15,15は、ベース部11の左右一対の後端部にそれぞれ取付固定されている。前輪2,2の水平回動によって、機体4をスムーズに左右旋回させることが可能になる。
【0018】
左右の支柱12,12は、その下端部が左右の取付ブラケット16,16によって、ベース部12にそれぞれ取付けられている。さらに、各支柱12は、その中途部が後方斜め下方に延びる補強フレーム17によってベース部11の後部に連結固定され、取付強度の補強が図られている。
【0019】
この支柱12は、上方に向って若干後方傾斜した姿勢でベース部11に取付けられている。支柱12は、下側に配置され且つ筒状に成形された固定部18と、該固定部18と同一軸心となるようにして該固定部18の内周側に軸方向に移動可能に嵌合挿入された可動部19とによって構成される。固定部18に対して回動部19を軸方向に移動させることによって支柱12が伸縮し、該伸縮によってハンドル14の上下位置が調整可能になる。一方、固定部18に対して可動部19を固定させることによって支柱12が伸縮されない状態となり、ハンドル14がその伸縮程度に対応した高さで固定される。
【0020】
なお、左右の支柱12,12は、左右の取付ブラケット16,16間に架設された左右方向の揺動軸21を支点として、同一姿勢で前後揺動構成可能にベース11に支持してもよい。この場合、左右の支柱12,12を、図示しない固定具又は補強フレーム17等によって、複数の前後揺動位置で解除可能に固定させることを可能とし、ハンドル14の前後位置の調整及び前後傾斜の調整を行う。
【0021】
また、補強フレーム17を折畳み、左右の支柱12,12を、同一姿勢で、側面視でベースフレーム8と上下に重なって平行になる位置まで揺動させて折畳むことにより、自家用車やトラックの荷台等に収容させ、容易に運搬可能になる。
【0022】
ハンドル14は、前端側に位置して左右方向に延びるフロント部14aと、フロント部14aの左右の端部からそれぞれ後方に延長されて前後方向に延びるサイド部14b,14bと有し、平面視で後方が開放されたU字状に曲げ成形されている。ハンドル14は、左右のサイド部14b,14bの前後中途部が左右の支柱12,12の上端部にそれぞれ固定されることにより、該左右の支柱12,12の間に架設固定される。
【0023】
左右のサイド部14b,14bの候端部には、グリップ(把持部)22,22がそれぞれ形成されている。フロント部14aには、左右一対の補助グリップ(把持部)23,23が形成されている。機体4の後方で起立した歩行者は、グリップ22,22又は補助グリップ23,23を把持し、該機体4に身体を預けながら歩いていく。機体4は、歩行者を下側から支持しながらも、4つの車輪2,2,3,3によってスムーズに前後進又は左右旋回移動させることが可能であるため、歩行の補助を効率的に行うことが可能になる。
【0024】
各グリップ22の直下には、該グリップ22を把持しながら揺動操作(ブレーキ操作)することが可能なブレーキ操作レバー(操作具)24がサイド部14b側に支持された状態で設けられている。
【0025】
上記制動装置6は、左右の各前輪2,2又は左右の各後輪3,3(図示する例では、各後輪3,3)に制動力を作用させ(ブレーキを掛け)、機体4を減速又は停止させる。このため、各後輪3には、該後輪3にブレーキを掛ける制動作動部26が設けられている。
【0026】
上記制御ユニット7は、筐体27と、該筐体27内に設置されたマイコン等からなる制御部28(
図4参照)とを有している。筐体27は、固定ブラケット29等によって、左右の支柱12,12間に支持固定されている。制御部28は、制動装置6の作動を制御するように構成されている。
【0027】
上述の制動装置6は、ブレーキ操作レバー24をグリップ22に近づける側に揺動させるブレーキ操作(制動操作)によって、左右の車輪3,3に制動力を作用させ、ブレーキを掛ける。ちなみに、ブレーキ操作レバー24は、図示しない弾性部材によって、グリップ22から遠ざかる側(ブレーキ解除操作側)に弾性的に付勢されている。一方、所定条件下では、制御部28によっても制動装置6が制動する。
【0028】
図4は制御部の構成を示すブロック図である。制御部28の入力側には、機体4に身体を預けて歩行を補助する補助対象者の歩行者からの距離(機体4側と該機体4との間の距離)を検出する距離検出手段31と、歩行補助車1の走行速度を検出する速度検出手段32と、後述する連絡及びキャンセルを行う連絡・キャンセル手段(連絡手段,キャンセル手段)33とが接続されている。
【0029】
距離検出手段31は、繰出し及び繰入ワイヤ可能なワイヤの繰出し側端部を歩行者に装着させて繰出し量を検知することにより距離を測定する距離センサ、超音波を用いた距離センサ、赤外線等を用いた光学式の距離センサ、レーザを用いた距離センサ等から構成されている。
【0030】
そして、この距離検出手段31は、機体1における補助対象となる歩行者の正面位置に配置されている。具体的には、左右の支柱12,12の上部間に架設された左右方向の支持フレーム34に中央部に、検出範囲が真後ろに向けられた姿勢で、固定部材36により固定されている(
図1及び
図3参照)。
【0031】
速度検出手段32は、前輪2又は後輪3側に設置されたエンコーダ等の回転センサなどによって構成されている。
【0032】
制御部28の出力側には、制動装置6の制動作動部26毎に設けられたアクチュエータ37と、歩行者及びその周辺の者に対して報知を行う報知手段38とが接続されている。
【0033】
アクチュエータ37は、制動作動部26を制動作動させるソレノイドや電動モータ等によって構成される。左右の車輪3,3は、車輪3,3毎に設けられたアクチュエータ37,37によって各別に制動させてもよいし、左右の車輪3,3にそれぞれ設けられた制動作動部26,26を連係機構等で機械的に連結し、単一のアクチュエータ37によって、左右両側の車輪3,3を制動させてもよい。
【0034】
さらに、アクチュエータ37による制動制御中でも、ブレーキ操作レバー24による制動作動部26のブレーキ・ブレーキ解除操作を可能にするため、融通機構39を設けている。
【0035】
なお、図示する例では、実線で示す通り、アクチュエータ37及びブレーキ操作レバー24の両方が融通機構39を介して制動作動部26に接続されているが、同図に仮想線で示すように、アクチュエータ37又はブレーキ操作レバー24の何れか一方は制動作動部26に直接的に接続され、他方は融通機構39を介して制動作動部26に接続させてもよい。
【0036】
また、ブレーキ操作レバー24は、左右の車輪3,3毎に設けてもよいが、左右の車輪3,3をまとめてブレーキ・ブレーキ解除操作するブレーキ操作レバー24を、左右のグリップ22,22の何れか一方のみに設けてよい。
【0037】
さらに、ブレーキ操作レバー24の操作を検出するポテンショメータ等の操作検出手段41を制御部28の入力側に接続させて設け、ブレーキ操作レバー24によるブレーキ操作も制御部28を介してアクチュエータ37により実行するようにしてもよい。この場合には、制動作動部26は、ブレーキ操作レバー24からの操作力によらずに、全てアクチュエータ37によって作動が制御されることになるため、融通機構39が不要になる。
【0038】
報知手段38は、画像表示、音声出力、振動等によって、補助対象の歩行者に各種報知を行うように構成されている。このため、この報知手段38は、モニタ、スピーカ又は振動用モータ等によって構成される。
【0039】
さらに、制御部28には、無線による通信手段42及び各種情報を記憶する記憶部43が入出力可能に接続されている。
【0040】
通信手段42は、制御部28がグローバル又はローカルなネットワーク100を介してサーバ200と情報のやり取りを行うことが可能にさせる。サーバ200は、CPUやRAM等から構成された制御部201を備え、制御部201にも、ネットワーク100を介して歩行補助車1とやり取りを行う無線又は有線による通信手段202と、各種情報を記憶する記憶装置203とが入出力可能に接続されている。
【0041】
また、サーバ200は、ネットワーク100を介して、スマートフォンやタブレットやパソコン等の情報端末(無線通信端末)300とも情報のやり取りを行うことが可能である。ちなみに、図示する例では、共通のネットワーク100を介して、歩行補助車1と、サーバ200と、情報端末300とが通信可能となっているため、歩行補助車1と情報端末300とも通知可能であるが、情報端末300とサーバ200との通信は、別途設けたネットワーク(図示しない)を介して、行ってもよい。
【0042】
なお、歩行補助車1と情報端末300とが通信可能である場合、連絡・キャンセル手段42や、操作具24や、報知手段38等の機能の一部又は全部を情報端末300に担わせてもよく、この場合、該情報端末300が制御ユニット7の一部(さらに具体的には制御部28の一部や、通信手段42の一部又は全部や、記憶部43の一部又は全部)を構成し、筐体27内に収容される。
【0043】
記憶部43及び記憶装置203は、フラッシュROMやハードディスクやSSD等によって構成されている。ただし、記憶部43は、制御部43を構成するマイコンに内蔵されたROM等を用いてもよい。この記憶部43又は記憶装置203の一方又は両方には、歩行者の歩行データが予め記憶されている。
【0044】
この歩行データは、歩行補助車1に身体を預け補助された状態の歩行者を、ブレーキを掛ける必要がない(制動装置6による車輪3への制動力が必要ない)安定した状態で歩行(通常歩行)させる。この際、距離検出手段31によって検出された距離と、この距離検出時(同一又は略同一の時期)に速度検出手段32によって検出された速度とを関連付けさせた1組(1セット)のデータ(セットデータ)とし、このセットデータを所定時間毎に計測して、このようにして取得した複数のセットデータを時系列でまとめたものが上述の歩行データになる。
【0045】
このように構成された制御部28は、距離検出手段31によって検出された歩行者との距離と、速度検出手段32によって検出された走行速度と、記憶部42に記憶された歩行データ又は通信手段42を介してサーバ200の記憶装置203から取得した歩行データとに基づいて、アクチュエータ37の作動を制御することにより、歩行者の意思とは関係無く、必要に応じてブレーキを自動で掛ける(制動力を作用・非作用及びその制動力の大きさ自動で制御する)自動制御を実行する。
【0046】
ちなみに、自動制御の実行時に、制動力を作動させる場合には、左右の車輪3,3の両方に同様の制動力(ブレーキ力)を作動させることが望ましい。
【0047】
また、制御部28は、該歩行データと、距離検出手段31及び速度検出手段32によって検出された距離及び走行速度の情報に基づいて、歩行者が通常歩行の状態であるか、或は異常歩行の状態であるかを監視する監視制御を実行する。
【0048】
ところで、ある歩行者を補助対象として前記自動制御及び監視制御を実行する場合、この歩行者と同一の者、或は体型や歩行障害の状態が類似している者から取得した歩行データ(補助対象となる歩行者に対応いた歩行データ)を用いて、該自動制御又は監視制御を実行することが望ましい。言換えると、補助対象となる歩行者毎に歩行データを予め取得し、これらの歩行データを、記憶部42及び記憶装置203の少なくとも一方に記憶させる。
【0049】
さらに、自動制御及び監視制御の実行の際に用いる歩行補助車1は、歩行データを取得する際に用いた歩行補助車1と同一種類ものものを用い、支柱12の前後傾斜角度や、ハンドル14の前後傾斜角度も同一とすることが望ましい。このようにすることにより、距離検出センサ31を機体4のどの位置に設けても、正確に自動制御や監視制御を実行させることが容易になる。
【0050】
図5は、取得された未加工の歩行データの構成を概念的に示したグラフであり、
図6(A)は自動制御用に加工された歩行データの構成を概念的に示すグラフであり、(B)は監視制御用に加工された歩行データの構成を概念的に示すグラフである。
【0051】
図5に示す通り、縦軸及び横軸の一方を距離検出手段31によって検出された距離を示す軸とし、他方を速度検出手段32によって検出された走行速度を示す軸とし、2次元座標と定義する。上述したセットデータの1つを1点とし、同一の走行データを構成する複数のセットデータを、前記2次元座標にプロットする(記す)。
【0052】
生の歩行データが示された同図の2次元座標において、点の密度が高いエリヤと、該エリヤよりも前進又は後進時の走行速度が低いエリヤ又は距離が短いエリヤは、補助対象の歩行者が、過度な前傾姿勢や前方に転倒するリスクが低く、安定した歩行可能なエリヤ(安定エリヤ)A1(
図6(A)参照)であると推測される。
【0053】
この安定エリヤA1以外の領域であって且つ点の密度が低いエリヤと、該エリヤよりも前進又は後進時の走行速度が高いエリヤ又は距離が長いエリヤは、補助対象の歩行者が、過度な前傾姿勢や前方に転倒するリスクが高く、安定して歩行することが困難なエリヤ(不安定エリヤ)A2(
図6(A)参照)であると推測される。
【0054】
安定エリヤA1と不安定エリヤA2との間の境界のエリヤは中間エリヤA3(
図6(A)参照)になる。なお、安定エリヤA1から不安定エリヤA2に至るエリヤを、複数段階に分けて設けてもよい。言換えると、複数の中間エリヤA3を設けてもよい。
【0055】
図6(A)に示すにように、前記自動制御では、前記生の歩行データを、上記のような基準でエリヤ分けしてなる自動制御用の歩行データを利用する。
【0056】
具体的には、安定エリヤA1では、両車輪3,3に制動力は作用させない一方で、不安定エリヤA2では、両車輪3,3に大きな制動力(具体的には、歩行補助車1が確実に停止する程度の大きさ最大限の制動力)を作用させる。
【0057】
一又は複数の中間エリヤA3では、不安定エリヤA2に近い程、両車輪3,3に大きな制動力を作用させる。ただし、この際の制動力は、不安定エリヤA2で作用させる制動力よりは小さな値に設定される。
【0058】
言換えると、安定エリヤA1は通常歩行エリヤになり、不安定エリヤA2は歩行停止エリヤになり、中間エリヤA3は制動エリヤになる。
【0059】
ちなみに、生の歩行データから自動制御用の歩行データに変換することを目的とした領域分割は、種々の手法を用いることが可能であるが、例えば逆距離加重法(IDW)等を用い、これによって、前記2次元座標の全領域を補間する。
【0060】
以上のように、制御部28は、
図6(A)に示すような歩行データを用いて、実際に検出された走行速度及び距離が、どのエリヤA1,A2,A3内に存在するかを確認することにより、制動装置6を制動制御する。
【0061】
監視制御では、歩行者の歩行が通常歩行であるか、或は異常歩行であるかを判断して、各種処理を行う。この処理の内容は後述する。また、この判断の際に用いる歩行データは、
図6(B)に示す通りである。具体的には、前記2次元座標において、上記データセットが所定割合(例えば、5〜95パーセンタイル)で存在しているエリヤを通常歩行領域A10とし、それ以外のエリヤを異常歩行領域A11とする。
【0062】
そして、距離検出手段31及び速度検出手段32によって検出された距離及び速度のデータセットが、前記した監視制御用の歩行データにおいて、通常歩行領域A10に位置しているか、異常歩行領域A11に位置しているかを確認して、監視制御の各種処理を実行する。
【0063】
図7は、監視制御の処理内容を示すフロー図である。監視制御が開始されると、ステップS1から処理を開始する。ステップS1では、速度検出手段32によって走行速度を検出し、ステップS2に進む。ステップS2では、距離検出手段31によって上記距離を検出し、ステップS3に進む。
【0064】
ステップS3では、直前のステップS1及びステップS2で検出された距離及び走行速度(データセット)が通常歩行領域A10に属していれば、歩行者が通常歩行状態であると判断する一方で、異常歩行領域A11に属していれば、歩行者の歩行状態が異常歩行状態であると判断し、ステップS4に進む。
【0065】
ステップS4では、直前のステップS3での判定結果を反映させ、その時点から予め定めた所定の時間遡った時点までの期間において、異常歩行状態の判断された割合(逸脱割合)を算出し、ステップS5に進む。ちなみに、この処理を可能とするため、ステップS3の判定結果は、逐次記憶部43又は記憶装置203に保存される。
【0066】
ステップS5では、上記逸脱割合が予め定めた閾値以上になっているか否かを確認し、閾値以上になっている場合、ステップS6に進む一方で、閾値よりも少ない場合、ステップS1の処理を戻す。ステップS6では、後述するタイマーのカウント開始から予め定めた所定の時間T1が経過しているか否かを確認し、カウント開始から時間T1が経過していなければステップS1に処理を戻す一方で、時間T1が経過していればステップS7に進む。ちなみに、監視制御の実行初期においては、カウント開始から時間T1が経過している状態になっている。
【0067】
ステップS7では、歩行者に対して、報知手段38によって注意喚起を目的として報知(通知)を行った回数が予め定めた所定の回数に達しているか否かを確認し、達していなければステップS8に進む。ステップS8では、報知手段38によって、補助対象の歩行者に対して、異常歩行の割合が多いことを通知し、ステップS9に進む。
【0068】
ステップS9では、タイマーをセットし、時間T1の経過のカウントを開始し、ステップS1に処理を戻す。ステップS7において、通知の累積回数が所定値に達した場合、ステップS10に処理を進める。すなわち、上記逸脱割合が大きくなって、その状態がしばらく維持されると、時間T1の経過毎に、注意喚起の通知が歩行者に対して実行され、その通知回数が所定値に達すると、ステップS10に処理を進められる。
【0069】
ステップS10では、報知手段38によって注意を喚起するとともに、補助対象の歩行者が異常歩行状態であることを、該歩行者の家族等の監視者に連絡するモードに移行した旨と、該連絡を歩行者自身でキャンセル可能である旨とを、歩行者自身に伝え、ステップS11に進む。ちなみに、歩行者は連絡・キャンセル手段33によって、前記連絡をキャンセルさせることが可能であるとともに、監視者に自身の歩行状態等を連絡することも可能である。
【0070】
ステップS11では、予め定めた所定の時間(T2)の経過のカウントを開始し、ステップS12に処理を進める。ステップS12では、歩行者からの上記キャンセルの有無を確認し、キャンセルがされていればステップS1に処理を戻す一方で、キャンセルされていなければステップS13に進む。
【0071】
ステップS13では、カウント開始から時間T2が経過しているか否かを確認し、経過していればステップS14に進む一方で、経過していなければステップS12に処理を戻す。すなわち、時間T2が経過するまでの間、連絡のキャンセルを受付ける。ステップS14では、ネットワーク100を介して、サーバ200から監視者の情報端末300、或は歩行補助車1から監視者の情報端末300に、その歩行者が異常歩行状態であることをメールや通話等で連絡し、ステップS1に処理を戻す。
【0072】
以上のような構成によれば、同一機種を用いて同一人から得られる歩行データを利用して、距離検出手段31及び速度検出手段32の検出結果に基づいて、適切なタイミングで、制動力が作用するため、歩行者の過度な前傾姿勢や前方への転倒を効率的に防止できる。また、
図7に示すような見守りサービスによって、地域全体で歩行困難者をサポート可能になる。
【0073】
また、様々な人の歩行データや実データを蓄積によって、さらに効率的な対策を練ることが可能になる。このようなデータは、介護施設やリハビリ施設でも活用可能である。
【0074】
なお、自動制御及び監視制御の一方又は両方について、処理の一部をサーバ200に実行させることも可能である。すなわち、歩行補助車1と、該歩行補助車1とネットワーク100を介して接続されたサーバ200によって歩行補助システムを構成し、この歩行補助システム全体で、各部が分担して、自動制御及び監視制御の処理を行わせてもよい。
【0075】
また、上述の例では、検出する値として距離及び走行速度を用い、過去に測定された距離情報及び歩行速度情報から構成された2次元マップを歩行データとして用いているが、これをさらに3次元、4次元、5次元・・・と増やすことも可能である。具体的には、ブレーキ操作時の操作量や、歩行車1の加速度や、歩行車1の傾斜度合等を用いて、歩行データを多次元化させ、制御の精度をさらに向上させる。
【0076】
ちなみに、歩行データの一部にブレーキ操作時の操作量を用いる場合、ブレーキ操作レバー24の揺動操作量を検出するポテンショメータ等の操作量検出手段が必要になり、歩行データの一部に加速度を用いる場合、機体4側に設置された加速度センサ等の加速度検出手段が必要になり、歩行データの一部に傾斜度合を用いる場合、機体4側に設置されたジャイロセンサ等の傾斜角度検出手段が必要になる。
【0077】
また、歩行レベルの高い歩行者は、疲れても、逸脱割合が安定して低く、走行速度や距離も一定で安定しているが、歩行レベルの低い歩行者は、疲れると、逸脱割合が増加し、走行速度や距離も安定しなくなる。この特定を利用し、歩行者の歩行レベルを推定し、これを監視制御や自動制御に利用してもよい。このようなデータも、上述の場合と同様に介護施設やリハビリ施設で有効に活用可能となる。
【0078】
さらに、歩行補助車1は、ハンドルやフレーム等の形状が異なる歩行車(例えば前腕支持型の歩行車)にも適用可能である。また、歩行補助車1は、歩行車に限定されるものではなく、シルバーカーや、手押し車や、荷物運搬用の台車や、ベビーカー等にも適用させることが可能である。