(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエーテルエステル化合物、前記第2のエーテルエステル化合物、及び前記エステル縮合物の含有割合の合計を100質量部とすると、前記第1のエーテルエステル化合物、及び前記第2のエーテルエステル化合物から選ばれる少なくとも一つを80〜99.95質量部、前記エステル縮合物を0.05〜20質量部の割合で含有する請求項1又は2に記載のポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明に係る
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の処理剤は、下記の第1のエーテルエステル化合物、及び下記の第2のエーテルエステル化合物の少なくともいずれか一方と、下記のエステル縮合物とを含有する。
第1のエーテルエステル化合物:多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物1モルに対して炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが合計で1〜500モルの割合で付加された化合物。
【0020】
第2のエーテルエステル化合物:多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物1モルに対して炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが合計で1〜500モルの割合で付加された化合物と、炭素数4〜26の脂肪酸とが縮合された化合物。
【0021】
エステル縮合物:分子中にヒドロキシ基とカルボキシ基とを有する炭素数6〜22のヒドロキシカルボン酸から形成された構成単位を有し、縮合度が1〜5である縮合物。
処理剤が、上記第1のエーテルエステル化合物、及び上記第2のエーテルエステル化合物の少なくともいずれか一方と、上記エステル縮合物とを含有することにより、後述のように、
ポリオレフィン系合成繊維製不織布を構成する繊維に対する濡れ性が好適に向上する。また、処理剤が付着した
ポリオレフィン系合成繊維製不織布の耐久親水性を好適に向上させることができる。
【0022】
上記多価アルコールとしては、特に限定されず、脂肪族多価アルコールであってもよいし、芳香族多価アルコールであってもよい。また、脂肪族多価アルコールは、飽和脂肪族であってもよいし、不飽和脂肪族であってもよい。
【0023】
上記多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
上記多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
上記一価脂肪酸としては、特に限定されず、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐脂肪酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。
上記一価脂肪酸の具体例としては、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ペンタン酸、オクタン酸等が挙げられる。
【0025】
上記一価脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物は、天然油脂であってもよい。天然油脂の具体例としては、例えば、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ゴマ油、魚油、牛脂等が挙げられる。
【0026】
上記天然油脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの具体例としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの中でも、エチレンオキサイドであることが好ましい。重合配列としては、特に限定されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
【0027】
上記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記炭素数2〜4のアルキレンオキサイドの付加モル数は、5〜120モルであることが好ましい。
【0028】
第1のエーテルエステル化合物と第2のエーテルエステル化合物とにおいて、エステル化合物は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。炭素数2〜4のアルキレンオキサイドも同様に同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0029】
上記第2のエーテルエステル化合物における炭素数4〜26の脂肪酸としては、特に限定されず、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐脂肪酸であってもよい。また、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。
【0030】
炭素数4〜26の脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、オクチル酸、ベヘニン酸、マレイン酸等が挙げられる。
上記炭素数4〜26の脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上記エステル縮合物の構成単位である炭素数6〜22のヒドロキシカルボン酸は、下記の化2で示されるものであることが好ましい。
【0032】
【化2】
(化2において
R
1:炭素数4〜12の飽和炭化水素基、又は炭素数4〜12の不飽和炭化水素基。
【0033】
R
2:水素原子、又は炭素数1〜8の飽和炭化水素基。)
また、化2におけるR
1は、炭素数8〜10の飽和炭化水素基、又は炭素数8〜10の不飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0034】
また、化2におけるR
2は、炭素数6〜8の飽和炭化水素基であることが好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が上記数値範囲であることにより、
ポリオレフィン系合成繊維製不織布の耐久親水性をより好適に向上させることができる。
【0035】
上記エステル縮合物は、縮合度が1〜2であり、環状の分子構造を有するものであることが好ましい。
処理剤中のエステル縮合物の含有割合に特に制限はない。処理剤中のエステル縮合物の含有割合は、0.01〜20質量%であることが好ましい。
【0036】
第1のエーテルエステル化合物、第2のエーテルエステル化合物、及びエステル縮合物の含有割合に特に制限はない。第1のエーテルエステル化合物、第2のエーテルエステル化合物、及びエステル縮合物の含有割合の合計を100質量部とすると、第1のエーテルエステル化合物、及び第2のエーテルエステル化合物から選ばれる少なくとも一つを80〜99.95質量部、エステル縮合物を0.05〜20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0037】
第1のエーテルエステル化合物、第2のエーテルエステル化合物、及びエステル縮合物の含有割合が上記数値範囲であることにより、後述のように、
ポリオレフィン系合成繊維製不織布を構成する繊維に対する濡れ性がより好適に向上する。また、処理剤が付着した
ポリオレフィン系合成繊維製不織布の耐久親水性をより好適に向上させることができる。
【0038】
処理剤は、その他成分を含有してもよい。
その他成分の具体例としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性化合物としての両性界面活性剤等のイオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤、一価又は多価アルコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、ワックス化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。
【0039】
イオン性界面活性剤としては、例えば、リン酸エステル型イオン性界面活性剤や、スルホン酸エステル型イオン性界面活性剤が挙げられる。リン酸エステル型イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルリン酸エステルカリウム塩、ブチルリン酸エステルカリウム塩等が挙げられる。スルホン酸エステル型イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、アルキル(炭素数12〜16)スルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0040】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル型非イオン性界面活性剤、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物、ペンタエリスリトール1モルに対してプロピレンオキサイドを120モル付加させた化合物が挙げられる。
【0041】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物等が挙げられる。
これらのその他成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
その他成分の含有割合に特に制限はない。第1のエーテルエステル化合物、第2のエーテルエステル化合物、及びエステル縮合物の含有割合の合計100質量部に対して、1〜30質量部の割合で含有することが好ましい。
【0043】
(第2実施形態)
本発明に係るポリオレフィン系合成繊維および
ポリオレフィン系合成繊維製スパンボンド不織布を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態のポリオレフィン系合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している。
【0044】
ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。以下、ポリオレフィン系合成繊維を単に合成繊維ともいう。
【0045】
合成繊維の具体例としては、例えば、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリブテン系繊維が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。さらにポリプロピレン系繊維としては、種々のモノマーを共重合した改質ポリプロピレン繊維、ポリエチレンとポリプロピレンとの複合ポリプロピレン繊維等が適用されてもよい。
【0046】
また、芯鞘構造の複合繊維であって、芯、鞘部のいずれか又は両方がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維であってもよい。
【0047】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1〜2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3〜1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
【0048】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する水性液又はさらに希釈した水溶液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0049】
さらに、本発明に係る
ポリオレフィン系合成繊維製スパンボンド不織布(以下、単に不織布ともいう。)は、スパンボンド法によって製造される。
スパンボンド法による不織布の製造方法は、下記の工程1〜7を経ることが好ましい。
【0050】
工程1:合成繊維の原料樹脂を、押出機に供給する原料供給工程。
工程2:押出機内で原料樹脂を加熱し、溶融させて、紡糸口金を備えるノズルへ押し出す溶融・押出工程。
【0051】
工程3:ノズルから溶融紡糸を行い、さらに溶融紡糸した繊維に対してエジェクタを用いて延伸を行う紡糸・延伸工程。
工程4:前記工程3を経た繊維をコンベア上に捕集してウェブを形成し、さらにウェブをコンベアによって搬送する捕集・搬送工程。
【0052】
工程5:前記工程4を経たウェブを、一対の加熱したローラー間を通過させて繊維間を融着させる融着工程。
工程6:前記工程5を経て形成された不織布に対して、第1実施形態の処理剤を付着させる付着工程。
【0053】
工程7:前記工程6を経た不織布を巻取用ローラーに巻き取る巻取工程。
以上の工程を経ることにより、本実施形態の不織布を製造することができる。
第1実施形態の処理剤、第2実施形態の合成繊維、及び不織布によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
(1)第1実施形態の処理剤は、所定のエーテルエステル化合物と、所定のエステル縮合物とを含有している。したがって、ポリオレフィン系合成繊維に対する濡れ性が好適に向上する。
【0055】
(2)第1実施形態の処理剤を付着させることによって、
ポリオレフィン系合成繊維製スパンボンド不織布の耐久親水性を好適に向上させることができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0056】
・第2実施形態において、処理剤が付着した合成繊維は、ポリオレフィン系合成繊維であったが、この態様に限定されない。ポリオレフィン系合成繊維以外の合成繊維に処理剤を付着させてもよい。ポリオレフィン系合成繊維以外の合成繊維としては、例えばポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、セルロース系繊維、リグニン系繊維等が挙げられる。これらの繊維は、2種以上から成る複合合成繊維であってもよい。
【0057】
ポリエステル系繊維の具体例としては、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらポリエステル系樹脂を含有して成る複合ポリエステル系繊維等が挙げられる。さらにポリエステル系繊維としては、塩基性又は酸性可染性ポリエステル繊維、帯電防止性ポリエステル繊維、難燃性ポリエステル繊維等の改質ポリエステル繊維等が挙げられる。
【0058】
・また、処理剤が付着した不織布は、スパンボンド不織布であったが、この態様に限定されない。スパンボンド不織布以外の不織布に処理剤を付着させてもよい。スパンボンド不織布以外の不織布とは、スパンボンド法以外の方式でウェブが形成された不織布を意味するものとする。
【0059】
スパンボンド法以外のウェブ形成方式としては、例えば、原料繊維が短繊維の場合において、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や、抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また、原料繊維が長繊維の場合において、メルトブローン法やフラッシュ紡糸法が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
【0060】
・処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤(シリコーン系化合物)等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%は質量%を意味する。
【0062】
試験区分1(
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤の調製)
(実施例1〜40及び比較例1〜7)
以下の方法により、表1、2に示す第1のエーテルエステル化合物(A1−1〜A1−10)を調製した。なお、表1に示すA1−1〜A1−4では、多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物として天然油脂を用いた。
【0063】
A1−1では、ヒマシ油933g(1モル)と、触媒としての水酸化ナトリウム2gとをオートクレーブ内に加えて雰囲気を窒素ガスで置換した後、エチレンオキサイド4400g(100モル)を圧入して、エーテル化反応を行った。
【0064】
次に、エーテル化反応を行った液体に公知の無機合成吸着剤を40g添加し、約80℃で30分間撹拌した。その後、珪藻土でプレコートした濾過機に移し、水酸化ナトリウム触媒を吸着した無機合成吸着剤を除去して、A1−1を調製した。A1−2〜A1−4も、このA1−1の合成方法に沿って調製した。
【0065】
第1のエーテルエステル化合物におけるエステル化合物の種類とモル数、アルキレンオキサイドの種類とモル数は、表1の「エステル化合物」欄、「アルキレンオキサイド」欄に示すとおりである。
【0066】
【表1】
表2に示すように、A1−5では、多価アルコールとしてのエチレングリコール62g(1モル)と、一価脂肪酸としての12−ヒドロキシステアリン酸600g(2モル)とを反応容器に仕込み、エステル化反応を行った。エステル化反応によって得られたエステル化合物と、触媒としての水酸化カリウム2gとをオートクレーブ内に加えて雰囲気を窒素ガスで置換した後、エチレンオキサイド1408g(32モル)を圧入して、エーテル化反応を行った。
【0067】
次に、エーテル化反応を行った液体に公知の無機合成吸着剤を17g添加し、約80℃で30分間撹拌した。その後、珪藻土でプレコートした濾過機に移し、水酸化カリウム触媒を吸着した無機合成吸着剤を除去して、A1−5を調製した。A1−6〜A1−10も、このA1−5の合成方法に沿って調製した。
【0068】
第1のエーテルエステル化合物におけるエステル化合物の種類とモル数、アルキレンオキサイドの種類とモル数は、表2の「エステル化合物」欄、「アルキレンオキサイド」欄に示すとおりである。
【0069】
【表2】
また、以下の方法により、表3、4に示す第2のエーテルエステル化合物(A2−1〜A2−20、Ra−1、Ra−2)を調製した。なお、表3に示すA2−1〜A2−12では、多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物として天然油脂を用いた。
【0070】
A2−1では、ヒマシ油933g(1モル)と、触媒としての水酸化ナトリウム2gとをオートクレーブ内に加えて雰囲気を窒素ガスで置換した後、エチレンオキサイド660g(15モル)と、プロピレンオキサイド348g(6モル)を圧入して、エーテル化反応を行った。
【0071】
次に、エーテル化反応を行った液体に公知の無機合成吸着剤を16g添加し、約80℃で30分間撹拌した。その後、珪藻土でプレコートした濾過機に移し、水酸化ナトリウム触媒を吸着した無機合成吸着剤を除去した。
【0072】
水酸化ナトリウム触媒を除去した液体と、炭素数4〜26の脂肪酸としてのラウリン酸600g(3モル)とを反応容器に仕込み、エステル化反応を行って、A2−1を調製した。A2−2〜A2−12も、このA2−1の合成方法に沿って調製した。
【0073】
第2のエーテルエステル化合物におけるエステル化合物の種類とモル数、アルキレンオキサイドの種類とモル数、炭素数4〜26の脂肪酸の種類とモル数は、表3の「エステル化合物」欄、「アルキレンオキサイド」欄、「脂肪酸」欄に示すとおりである。
【0074】
【表3】
表4に示すように、A2−13では、多価アルコールとしてのエチレングリコール62g(1モル)と、一価脂肪酸としての12−ヒドロキシステアリン酸600g(2モル)とを反応容器に仕込み、エステル化反応を行った。エステル化反応によって得られたエステル化合物と、触媒としての水酸化カリウム2gとをオートクレーブ内に加えて雰囲気を窒素ガスで置換した後、エチレンオキサイド1408g(32モル)を圧入して、エーテル化反応を行った。
【0075】
次に、エーテル化反応を行った液体に公知の無機合成吸着剤を17g添加し、80℃で30分間撹拌した。その後、珪藻土でプレコートした濾過機に移し、水酸化カリウム触媒を吸着した無機合成吸着剤を除去した。
【0076】
水酸化カリウム触媒を除去した液体と、炭素数4〜26の脂肪酸としてのオレイン酸847g(3モル)とを反応容器に仕込み、エステル化反応を行って、A2−13を調製した。A2−14〜A2−20、Ra−1、Ra−2も、このA2−13の合成方法に沿って調製した。
【0077】
第2のエーテルエステル化合物におけるエステル化合物の種類とモル数、アルキレンオキサイドの種類とモル数、炭素数4〜26の脂肪酸の種類とモル数は、表4の「エステル化合物」欄、「アルキレンオキサイド」欄、「脂肪酸」欄に示すとおりである。
【0078】
【表4】
また、表5に示すエステル縮合物(B−1〜B−21、Rb−1〜Rb−3)を用意した。これらのエステル縮合物は、市販品であってもよいし、公知の方法によって製造してもよい。公知の方法によって製造する場合には、例えば、原料物質に含まれるヒドロキシ基とカルボキシ基との脱水縮合反応によって製造することができる。
【0079】
表5において、R
1、R
2は、上記化2で示される炭素数6〜22のヒドロキシカルボン酸における炭化水素基、又は水素原子を意味するものとする。
エステル縮合物におけるR
1の種類、R
2の種類、ヒドロキシカルボン酸の炭素数、縮合度、分子構造は、表5の「R
1」欄、「R
2」欄、「炭素数」欄、「縮合度」欄、「分子構造」欄に示すとおりである。なお、「分子構造」欄において、「環状」欄に「〇」が付与されているものは、環状の分子構造を有することを意味し、「鎖状」欄に「〇」が付与されているものは、鎖状の分子構造を有することを意味する。
【0080】
【表5】
次に、表6に示す各成分を用いて、第1のエーテルエステル化合物(A1−1)が99.5部、エステル縮合物(B−1)が0.5部となるようにビーカーに加えた。これらをよく撹拌して実施例1の
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤を調製した。
【0081】
実施例2〜40、及び比較例1〜7の各
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤は、表6に示す各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。各例の処理剤中におけるエーテルエステル化合物の種類と含有量、エステル縮合物の種類と含有量、その他成分の種類と含有量は、表6の「
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤」欄における「エーテルエステル化合物(A)」欄、「エステル縮合物(B)」欄、「その他成分(C)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0082】
【表6】
表6のその他成分(C)欄に記載するC−1〜C−7の詳細は以下のとおりである。
【0083】
C−1:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
C−2:ブチルリン酸エステルカリウム塩
C−3:アルキル(炭素数12〜16)スルホン酸ナトリウム塩
C−4:ポリエチレングリコール(分子量600)
C−5:ラウリルアルコール1モルに対してエチレンオキサイドを10モル付加させた化合物
C−6:ペンタエリスリトール1モルに対してプロピレンオキサイドを120モル付加させた化合物
C−7:ステアリン酸1モルに対してエチレンオキサイドを20モル付加させた化合物
試験区分2(ポリオレフィン系スパンボンド不織布の製造)
試験区分1で調製した処理剤を用いて、ポリオレフィン系スパンボンド不織布を製造した。
【0084】
試験区分1で調製した処理剤を水で希釈して0.25質量%の濃度の水性液とした。かかる水性液を用いて処理浴(浴温25℃)を準備し、この処理浴に、ポリプロピレンスパンボンド不織布(目付け20g/m
2)を5分間浸漬して取り出した。このポリプロピレンスパンボンド不織布2gに対して水性液の付着量が4gとなるようにマングルにて絞り率を調整して絞った後、80℃×30分間送風乾燥して固形分付着量が0.5質量%の処理不織布とした。
【0085】
試験区分3(評価)
実施例1〜40及び比較例1〜7の処理剤について、工程性の評価項目として、不織布に対する濡れ性を評価した。また、不織布の評価項目として、処理剤を付着させた不織布の耐久親水性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表6の「濡れ性」及び「耐久親水性」に示す。
【0086】
(濡れ性)
実施例、及び比較例に記載の各処理剤を約70℃に加温した。加温した各処理剤を、約50℃に加温したイオン交換水に撹拌下で加えて、処理剤の10%水溶液を調製した。
【0087】
次に、処理剤の付与されていないポリプロピレン不織布を、20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間調湿した。
調湿した不織布上に、各処理剤の10%水溶液を10μl滴下した。処理剤が不織布に浸透する状態を目視で観察した。処理剤が完全に浸透するまでの時間を測定して、下記の評価基準で評価した。
【0088】
・濡れ性の評価基準
◎(良好):4秒未満で浸透した場合
〇(可):4秒以上且つ6秒未満で浸透した場合
×(不良):6秒以上で浸透した場合
(耐久親水性)
試験区分2で作製したスパンボンド不織布を、10cm×10cmの小片に裁断した。この小片状の不織布を、20℃で相対湿度60%の恒温室内にて24時間調湿した。
【0089】
調湿した不織布を、5枚積層された濾紙上に置いた。さらに、不織布上の中央部に、両端が開放された内径1cmの円筒を、軸方向が鉛直方向となるように載置した。
この円筒の内部に、0.9%生理食塩水10mlを注入した。生理食塩水が不織布に吸収される状態を目視で観察して、生理食塩水が完全に吸収されるまでの時間を測定した。
【0090】
その後、不織布を取り出して、不織布に対して40℃の温風を90分間吹き付けて送風乾燥を行った。送風乾燥を行った後、再度、不織布を調湿して生理食塩水を吸収させる試験を3回繰り返して行った。3回目の結果を下記の評価基準で評価した。
【0091】
・耐久親水性の評価基準
◎(良好):生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が5秒未満の場合
〇(可):生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が5秒以上7秒未満の場合
×(不良):生理食塩水が完全に吸収されるまでに要する時間が7秒以上の場合
表6の結果から、本発明によれば、ポリオレフィン系合成繊維に対する濡れ性が好適に向上する。また、
ポリオレフィン系合成繊維製不織布用処理剤を付着させた
ポリオレフィン系合成繊維製スパンボンド不織布の耐久親水性を好適に向上させることができる。
【解決手段】下記の第1のエーテルエステル化合物、及び下記の第2のエーテルエステル化合物の少なくともいずれか一方と、下記のエステル縮合物とを含有する。第1のエーテルエステル化合物:多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物1モルに対して炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが合計で1〜500モルの割合で付加された化合物。第2のエーテルエステル化合物:多価アルコールと一価脂肪酸とのエステル化合物1モルに対して炭素数2〜4のアルキレンオキサイドが合計で1〜500モルの割合で付加された化合物と、炭素数4〜26の脂肪酸とが縮合された化合物。エステル縮合物:分子中にヒドロキシ基とカルボキシ基とを有する炭素数6〜22のヒドロキシカルボン酸から形成された構成単位を有し、縮合度が1〜5である縮合物。