【実施例】
【0016】
(本発明の餅割り器の説明に供する図)
本発明の実施例について、
図1〜
図8を参照しながら以下に説明する。ここで、
図1は、ある方向(斜め上方)から観察した餅割り器100の分解斜視図である。
図1には、加工対象の餅4、並びに、加工後に得られる切込み43入りの餅4や塊片5も示す。
図2は、別の方向(斜め下方)から観察した餅割り器100の分解斜視図である。
図3は、第1部材1と第2部材2とで餅4を収容した状態を示す(a)斜視図、(b)平面図、(c)A−A断面図、(d)B−B断面図、(e)第1刃16の拡大図及び(f)第2刃26の拡大図を示す。
図4(a)〜(f)は、除去促進部材3を使用することにより、第1部材1及び第2部材2に収容された餅4を取り出すことができることを説明した図である。
図5は、第1部材1の(a)平面図及び(b)底面図、並びに、第2部材2の(c)平面図及び(d)底面図である。
図6(a)〜(c)は、第1・第2刃16,26や第1・第2貫通孔17,27の変形例を示した図である。
図7及び
図8は餅割り器100の使用方法を説明した図(写真)である。
【0017】
(加工対象である餅)
以下の実施例では、加工対象の餅4は、定形サイズ(通常、約7cm×約4cm×約1.5cm)の矩形の切餅4の使用を前提とするが、後述する本発明の餅割り器100を構成する各部材の寸法・形状を、収容すべき餅の寸法・形状に適合するように変更することにより、定形サイズの切餅以外の餅(例えば、定形外の切餅や丸餅)などを使用することも可能である。
【0018】
(餅割り器の主要構成部材)
本発明の餅割り器100は、第1部材1と、この第1部材1に対応した寸法及び形状を有した第2部材2と、を備える。第1・第2部材1,2は、
図1に示すように、餅4の両側41,42(表面及び裏面)に上下から押し付け、第1・第2部材1,2に設けられた第1・第2刃16,26の各刃を餅4に突き刺すことによって、この餅4に切込み43を入れながら、この餅4を第1・第2枠13,23内に完全に収容することができる。
【0019】
(除去促進部材)
また、本発明の餅割り器100は、第1・第2部材1,2に収容された餅4を第1・第2部材1,2から容易に取り出せるように、後述の押出体31が設けられた除去促進部材3をさらに備えるようにしてもよい。なお、これらの構成部材1〜3は、軽量化や生産性向上等の観点から、樹脂製のものが好ましいが、樹脂以外の材質(例えば、金属、ガラス、木材、陶器)のものを使用してもよい。
【0020】
(第1部材の構造)
第1部材1は、
図1,2に示すように、第1部材1には、餅4を出し入れ可能な第1開口部11と、第1部材1に入れられた餅4の移動を制限(拘束)する第1拘束部と、第1開口部11に向かって延びかつ第1拘束部内に載置された餅4を2つ以上の塊片5になるよう切込み可能な第1刃16と、が設けられる。
【0021】
ここで、第1拘束部は、図示のように、第1開口部11から餅4を収容可能な第1内部空間12と、第1内部空間12を区画する第1枠13と、第1開口部11の反対側に設けられかつ第1内部空間12の一面を閉ざすように延びた第1板14と、を備えるようにしてもよい。但し、第1部材1内での餅4の移動が制限できれば、この例示の構成に限定されない。例えば、餅4の四方を囲む第1枠13に代えて、餅4の一部(三方又は二方)を囲む枠体(図示せず)を採用してもよい。なお、第1板14の左右には、第1枠13よりも外側に延びた掴み部15を設けてもよく、これにより、餅割り器100の操作の際に第1部材1を掴み易くなる。
【0022】
(第2部材の構造)
また、第2部材2も、第1部材1と同様の構造を有する。第2部材2には、餅4を出し入れ可能な第2開口部21と、第2部材2に入れられた餅4の移動を制限(拘束)する第2拘束部と、第2開口部21に向かって延びかつ第2拘束部内に載置された餅4を2つ以上の塊片5になるよう切込み可能な第2刃26と、が設けられる。
【0023】
ここで、第1部材1の第1拘束部の好適な上記構成と同様に、第2拘束部は、第2開口部21から餅4を収容可能な第2内部空間22と、第2内部空間22を区画する第2枠23と、第2開口部21の反対側に設けられかつ第2内部空間22の一面を閉ざすように延びた第2板24と、を備えるようにしてもよい。なお、第1・第2枠13,23の一方(図示の例では、第1枠13)は、餅4を挟持する際に、他方(図示の例では、第2枠23)を収容可能であることが好ましい。つまり、第1枠13が第2枠23より大きいため、第2枠23は入れ子状に収容される。
【0024】
但し、この例示の構成に限定されず、例えば、餅4の四方を囲む第2枠23に代えて、餅4の一部(三方又は二方)を囲む枠体(図示せず)を採用してもよい。例えば、前述の第1枠13が餅4の上下(例えば、
図5(b)の上下方向)の二側面の移動を拘束し、第2枠23が左右(例えば、
図5(c)の左右方向)の二側面の移動を拘束するようにしてもよい。
【0025】
また、第2板24の左右にも、第1板14の場合と同様に、第2枠23よりも外側に延びた掴み部25を設けてもよく、これにより、餅割り器100の操作の際に第2部材2を掴み易くなる。
【0026】
(第1部材内の第1刃)
第1部材1には、好ましくは、第1板14の一面(つまり内壁)から第1内部空間12に向かって垂直に延び、第1内部空間12に載置された餅4を2つ以上の塊片5になるよう切込み可能な第1刃16が少なくとも1つ設けられる。
【0027】
(第2部材内の第2刃)
第2部材2には、好ましくは、第2板24の内壁から第2内部空間22に向かって垂直に延び、第2内部空間22に載置された餅4を2つ以上の塊片5になるよう切込み可能な第2刃26が少なくとも1つ設けられる。ここで、第2刃26は、第1刃16に対応する位置に第1刃16に対応する数だけ第2部材2に設置されていることに留意されたい(
図3〜
図5参照)。
【0028】
(餅の挟持・収容・分割可能な構造)
第1開口部11と第2開口部21とを対向させながら第1・第2部材1,2で餅4を挟持し、この餅4に対してその両側41,42から餅4の内部に向けて、第1・第2刃16,26を更に押し付けると、餅4は第1・第2内部空間12,22に収容されるようになる。この際に、第1・第2刃16,26は、餅4を突き刺し、餅4の内部に切込み43を入れながら、第1・第2刃16,26の先端16e1,26e1が互いに近づくように構成されている。
【0029】
(塊片の取得)
以上のような構成により、餅割り器100に餅4が収容されると同時に、この餅4には、複数の塊片5に区画・形成するための切込み43が入れられるようになる。その後、この餅4から第1・第2部材1,2を取り外すと、切込み43の入った餅4全体、若しくは、切込み43によって分割された個々の塊片5を得ることができるようになる。
【0030】
以上説明した必須構成で本発明の餅割り(餅4から複数の塊片5への分割)を達成することができるが、実際には餅4は特有の粘りと脆さを有するため、餅割り器100内に上述のように収容して切込み43を入れた餅4は餅割り器100から取り出しづらい場合がある。このような事態に対処できるように、餅割り器100は以下の構成をさらに備えることが好ましい。
【0031】
(貫通孔の形成)
第1部材1(好適には、その第1板14)には、第1内部空間12に収容されかつ切込み43の入った餅4の塊片5の一部を露出する第1貫通孔17が少なくとも1つ(図示の例では全部で8個)設けられることが好ましい。同様に、第2部材2(好適には、その第2板24には、第2内部空間22に収容されかつ切込み43の入った餅4の塊片5の一部を露出する第2貫通孔27が少なくとも1つ(図示の例では、同様に全部で8個)設けられていることが好ましい。
【0032】
(除去促進部材の押出体)
このような構成の第1・第2貫通孔17,27のいずれかに、除去促進部材3の押出体31を挿入していけば、第1・第2刃16,26に突き刺さった状態でかつ粘りのある餅4を第1・第2開口部11,21のいずれかから外側へ押し出すことできるようになる。なお、除去促進部材3の使用が好ましいが、例えば、指や、箸やフォーク等の市販の調理道具で、第1・第2貫通孔17,27を挿入していくことでも、餅4の押出しが可能であろう。以上のように、塊片5が繋がった状態の餅4、或いは、分離された状態の複数の塊片5を餅割り器100から容易に取出し可能である。
【0033】
(第1・第2貫通孔の好適な形態)
本発明の好適な形態では、第1貫通孔17は、第1板14に複数(図示の例では8個)形成されている。第2貫通孔27は、第1貫通孔17と同数(図示の例では8個)に、同形状に、かつ対応する位置となるように第2板24に形成されている(
図5などを参照)。
【0034】
この第1・第2貫通孔17,27の寸法・配列に対応するように、押出体31も、第1貫通孔17又は第2貫通孔27の各孔に挿通できるよう複数(図示では8個)形成されている。加えて、除去促進部材3には基板32を設けて、互いに同じ高さ(さらに、第1・第2刃16,26の高さ以上の高さ)を有した押出体31を垂直に立設・保持するようにすることが好ましい。これにより、除去促進部材3の一度の押出操作により、餅4の全体を、又は、全ての塊片5をまとめて、均等の押出力かつ同一の押出長さで押し出すことができ、ひいては、第1・第2部材1,2から取り出すことできるようになる。
【0035】
また、除去促進部材3にも、第1・第2部材1,2に設けられた掴み部15,25の形状・寸法に対応するように左右に延びた掴み部33が形成されることが好ましい。これにより、除去促進部材3の押出体31と、第1・第2部材1,2の第1・第2貫通孔17,27と、の位置合わせが容易となるばかりか、各貫通孔17,27に各押出体31を挿入し、餅4を押し出す際にも力が入り易い。これにより、餅4に突き刺さった第1・第2刃16,26と、餅4と、を一気に引き離すことができる。
【0036】
上述の好適な形態の第1・第2貫通孔17,27を第1・第2部材1,2に形成し、かつ、第1・第2貫通孔17,27の寸法・配列に適合した押出体31を除去促進部材3に一体的に形成することで、餅割り器100に収容された餅4又は塊片5をいとも簡単に餅割り器100から取り出すことができるようになる。
【0037】
なお、複数の押出体31でもって同時に餅4を餅割り器100から押し出すと、餅4の特有の粘性のため、餅4のまま(個々の塊片5に分離されずに幾つか又は全ての塊片5が繋がったままの状態)で押し出される場合もありえよう。しかしながら、餅割り器100から取り出された餅4には、第1・第2刃16,26によって、個々の塊片5に分割するための切込み43が確実に刻設されることになる。
【0038】
そして、餅4は、通常、粘性とともに特有の脆さも有するため、切込み43入りの餅4を手で持ってこれを折ろう(曲げよう)とする力を与えると、餅4は、切込み43付近に沿っていとも簡単に分割されていき、ブロック状又はサイコロ状の塊片5が得られることになる(
図1、
図4(f)及び
図7(f)を参照)。
【0039】
(第1・第2刃の好適な長さ)
第1刃16及び第2刃27は、
図3(c)及び(d)に示すように、餅割り器100に収容された餅4の厚みの略半分に到達する長さL
1,L
2を有することが好ましく、刃先同士が接触しない程度の隙間G(0.5mm〜2mm程度)を有することがさらに好ましい。これにより、餅割り器100に収容された餅4の断面から見ると、第1刃16は、餅4の略上半分の厚さまで餅4内部に突き刺さる。一方、第2刃26は、餅4の略下半分の厚さまで餅4内部に突き刺さる。
【0040】
これにより、第1・第2刃16,26によって餅4の両側(表裏)41,42に付与された切込み43の長さが等しくなり、塊片5の分離が促進する。これに対して、第1・第2刃16,26の一方の長さ(例えば、L
1)が他方の長さ(例えば、L
2)より顕著に長くなると、一方の刃が、他方の刃に比べて、餅4を突き刺す力や切込み43の長さに顕著な差(偏り)が生じ、塊片5の望ましい分離状態が得られなくなる場合がある。
【0041】
また、上下に等しい長さの切込み43を入れた餅4であれば、その後、手で割る作業が必要となった場合でも、切込み43を基点に、餅4の中央の高さ(略半分の厚み)位置からすっぱりと餅4が分割され、各々、綺麗に整った形状を成す塊片5が得られるようになる。つまり、上記好適な形態の第1・第2刃16,26を有した餅割り器100を使用すれば、餅4が、いびつに割れるような不具合を減らすことができる。
【0042】
また、第1刃16は、
図5(b)に示すように、複数の刃からなる第1刃列16A〜16Dであり、かつ、各刃列16A〜16Dを構成する各刃は第1内部空間12を分割する仮想線(図示せず)上に離間しながら配置されることが好ましい。同様に、第2刃26も、複数の刃からなる第2刃列26A〜26Dであり、かつ、各刃列26A〜26Dを構成する各刃は第2内部空間22を分割する仮想線(図示せず)上に離間しながら配置されていることが好ましい。また、第1・第2刃16,26は、
図3(e)及び(f)に示すように、先端16e1,26e1から基端16e2,26e2に向かって末広がりとなる槍先形状を成すことが好ましい。
【0043】
このような構成の第1・第2刃16,26であれば、各刃の先端16e1,26e1が局所的に餅4にくい込むようになるため、餅4を収容してこれに切込み43を入れる際に、餅4の両側41,42に対して第1・第2部材1,2を押圧する力を格段に減らすことができる。従って、子供やお年寄りでも、本発明の餅割り器100を使って、餅4を簡単に割ることができるようになる。
【0044】
(第1・第2刃の変形例)
以上、第1・第2刃16,26の好適な形態を説明したが、
図6(a)〜(c)に示した変形形態の第1・第2刃16,26でも餅4を割って個々の塊片5を得ることができる。
図6(a)〜(c)は、各変形例の餅割り器100A〜100Cの平面図及びA−A断面図を示す。
【0045】
例えば、
図6(a)の餅割り器100Aに示すように、第1・第2部材1,2の第1・第2内部空間12,22を2分割するように、第1・第2刃16,26を一枚ずつ設けてもよい。この例では、1個の餅4から2個の塊片5が得られることになる。なお、この第1・第2刃16,26は、上述の好適な槍先状では無くてもよく、例えば、図示のように長さ方向(分割線)に沿って同じ切断高さを有した通常の平刃であってもよい。
【0046】
また、
図6(b)に示す餅割り器100Bは、
図6(a)と同様の構造を有した第1・第2刃16,26を示すが、第1・第2部材1,2の第1・第2枠13,23の対角線上に第1・第2刃16,26を一枚ずつ設けたものである。これにより、三角柱状の餅片5が得られることになる。なお、第1・第2貫通孔17,27は、それぞれ1つだけしか設けられていないが、第1・第2刃16,26で分割される塊片5のどちらも押し出すことが可能である。
【0047】
また、
図6(c)に示す餅割り器100Cは、
図6(a)の変形形態、
図6(b)の変形形態と組み合わせたような形態である。第1・第2刃16,26は、それぞれ3個あり、第1・第2枠13,23を縦横に横断する方向又は対角線上に設けられている。これらの構造によって、四角柱状の塊片5と三角柱状の塊片5との両方が同時に得られることになる。
【0048】
なお、
図6(c)に示す第1・第2刃16,26では、同形状の刃が長さ方向に連続した鋸形状を成すが、これに限定されない。また、
図6(c)に示す第1・第2貫通孔17,27は、各形状の塊片5に対応するように、三角形及び矩形の孔形状を有するが、塊片5が困難なく押し出すことが出来れば、これらの孔形状に限定されない。
【0049】
(餅割り器の使用方法)
図7及び
図8は、本発明の餅割り器100の使用方法の各段階を説明した写真である。本発明の餅割り器100の使い方は極めて簡単である。
【0050】
先ず、第1・第2開口部11,21を対向させながら、第1・第2部材1,2で切餅4を挟み込み、第1・第2枠13,23内に切餅4が完全に収容されるように、切餅4の上下から第1部材1と第2部材2とを近づける(
図7(a)参照)。この際、組み付いた第1・第2部材1,2の一方の側を下に向けてテーブル面上に載置し、上側に載置される他方の部材の上側に手を置き、下側に押し込むようにしてもよい。
【0051】
この押し込み操作により、第1板14から突出した第1刃16の各刃が切餅4の表面41から上半分の厚さ程度まで突き刺さる。同時に、第2板24から突出した第2刃26の各刃が切餅4の裏面42から下半分の厚さ近くまで突き刺さる(
図7(b)参照)。
【0052】
第1・第2刃16,26が突き刺さった状態の切餅4を収容した第1・第2部材1,2は、切餅4の特有の粘りにより、通常、組み付いた状態のままになり、分離されにくい。
【0053】
そこで、除去促進部材3の押出体31を、例えば、第1部材1の第1貫通孔17に挿入していけば、切餅4の上半分が第1部材1の外方(下方)へ押し出されるため、切餅4及びこれを収容した第2部材2は第1部材1から分離される(
図7(c)並びに
図4(a)(b)参照)。
【0054】
次に、除去促進部材3を第1部材1から分離し、第2部材2を持ち上げ、その下側に除去促進部材3を配置する(
図8(a)参照)。その状態で、除去促進部材3の押出体31を、第2部材2の第2貫通孔27に挿入していけば、切餅4の下半分が第2部材2の外方(上方)へ押し出されるため、切餅4は第2部材2からも分離される(
図8(b)並びに
図4(c)(d)参照)。
【0055】
この段階までくると、餅4の切込み43の入った切餅4又は個々の塊片5が、第1・第2部材1,2から取り外されることになる(
図8(c)参照)。
【0056】
なお、切餅4が個々の塊片5に分離されずに一体のままであれば、手で切餅4を折るような力を与えれば、切込み43間の連結部分は既に脆くなっているため、切餅4は切込み43に沿って簡単に割れ、個々の塊片5が得られるようになる(
図8(c)参照)。