特許第6841494号(P6841494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841494
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】呼気成分測定装置および異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20210301BHJP
   G01N 33/497 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G01N1/02 W
   G01N33/497 A
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-232032(P2016-232032)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-87788(P2018-87788A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】佐川 清志
(72)【発明者】
【氏名】望月 計
(72)【発明者】
【氏名】藤江 正宏
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−119332(JP,A)
【文献】 特開2013−144104(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0061043(US,A1)
【文献】 特開2009−002883(JP,A)
【文献】 特開2014−117249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/02
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の呼気を導入する導入口を有し当該導入口を通じて導入された呼気を収容する収容部と、
前記収容部に収容された呼気について所定成分を測定する測定部と、
前記収容部内の圧力を検出する圧力センサと、
前記収容部を変形させて前記収容部の容積を変更する変更部と、
前記変更部による前記収容部の変形によって前記収容部内の圧力が変化しているときの前記圧力センサの出力に基づいて異常の有無を判定する第1判定部と、を含む呼気成分測定装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記変更部による前記容積の減少に応じて前記圧力センサが検出した圧力が第1閾値よりも高い場合に、異常有りと判定することを特徴とする請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項3】
前記第1判定部は、前記圧力センサの検出した圧力が前記変更部による前記容積の減少に伴って第2閾値よりも高くなってから前記容積の減少の終了後に第3閾値よりも低くなるまでの時間が、第4閾値よりも長い場合に、異常有りと判定することを特徴とする請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項4】
前記第1判定部は、前記変更部による前記容積の増加に応じて前記圧力センサが検出した圧力が第5閾値よりも低い場合に、異常有りと判定することを特徴とする請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項5】
前記第1判定部は、前記圧力センサの検出した圧力が前記変更部による前記容積の増加に伴って第6閾値よりも低くなってから前記容積の増加の終了後に第7閾値よりも高くなるまでの時間が、第8閾値よりも長い場合に、異常有りと判定することを特徴とする請求項1に記載の呼気成分測定装置。
【請求項6】
前記導入口には、前記被験者により前記呼気が吹き込まれる呼気流路が連通され、
前記呼気流路への前記呼気の吹込み時に前記圧力センサの検出した圧力が第9閾値よりも高い場合に、吹込み異常と判定する第2判定部をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の呼気成分測定装置。
【請求項7】
前記第1判定部での異常有りの判定結果に応じた情報を出力する出力部をさらに含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の呼気成分測定装置。
【請求項8】
被験者の呼気を導入する導入口を有する収容部に収容された呼気について所定成分を測定する呼気成分測定における異常の有無を判定する異常判定方法であって、
前記収容部を変形させることによって前記収容部内の圧力が変化しているときの前記収容部内の圧力に基づいて異常の有無を判定することを特徴とする異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気成分測定装置および異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被験者の呼気のアルコール濃度を測定する呼気成分測定装置が記載されている。この呼気成分測定装置は、被験者の呼気を、呼気の導入口からガスセンサ室に取り込み、ガスセンサ室に設けられたガスセンサで呼気のアルコール濃度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−119943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の呼気成分測定装置では、呼気の導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正が行われると、導入口を通ってガスセンサ室に取り込まれる呼気の量が少なくなり、アルコール濃度の測定値が、実際のアルコール濃度よりも小さくなってしまう。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、呼気の導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能な技術を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る呼気成分測定装置の一態様は、被験者の呼気を導入する導入口を有し当該導入口を通じて導入された呼気を収容する収容部と、前記収容部に収容された呼気について所定成分を測定する測定部と、前記収容部内の圧力を検出する圧力センサと、前記収容部の容積を変更する変更部と、前記容積の変更に応じた前記圧力センサの出力に基づいて異常の有無を判定する第1判定部と、を含む。
収容部の導入口に遮蔽物等が詰め込まれた場合、導入口に遮蔽物等が詰め込まれていない場合に比べて、収容部の密閉の度合い(収容部への空気の出入り難さの度合い)は高くなる。収容部の密閉の度合いが高いほど、収容部への気体(呼気)の出入りが困難になるため、収容部の容積の変更に伴う収容部内の圧力の変化は大きくなる。このため、導入口に遮蔽物等が詰め込まれた場合と、遮蔽物等が詰め込まれていない場合とで、収容部の容積変更に応じた収容部内の圧力は異なる。この態様によれば、収容部の容積の変更に応じた圧力センサの出力(収容部内の圧力)に基づいて異常の有無を判定する。このため、収容部の導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0007】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記第1判定部は、前記変更部による前記容積の減少に応じて前記圧力センサが検出した圧力が第1閾値よりも高い場合に、異常有りと判定することが望ましい。
導入口に遮蔽物などが詰め込まれて収容部の密閉の度合いが高くなるほど、収容部の容積の減少に伴う収容部内の圧力の上昇の度合いは大きくなる。この態様によれば、収容部の容積の減少に応じて圧力センサが検出した圧力が第1閾値よりも高い場合に、異常有りと判定する。このため、導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0008】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記第1判定部は、前記圧力センサの検出した圧力が前記変更部による前記容積の減少に伴って第2閾値よりも高くなってから前記容積の減少の終了後に第3閾値よりも低くなるまでの時間が、第4閾値よりも長い場合に、異常有りと判定することが望ましい。
導入口に遮蔽物などが詰め込まれて収容部の密閉の度合いが高くなるほど、収容部内の圧力が収容部の容積の減少に応じて第2閾値よりも高くなってから該容積の減少の終了後に第3閾値よりも低くなるまでの時間(以下「第1変動時間」)と称する)が長くなる。この態様によれば、第1変動時間が第4閾値よりも長い場合に、異常有りと判定する。このため、導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0009】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記変更部による前記容積の増加に応じて前記圧力センサが検出した圧力が第5閾値よりも低い場合に、異常有りと判定することが望ましい。
導入口に遮蔽物などが詰め込まれて収容部の密閉の度合いが高くなるほど、収容部の容積の増加に伴う収容部内の圧力の減少の度合いは大きくなる。この態様によれば、収容部の容積の増加に応じて圧力センサが検出した圧力が第5閾値よりも低い場合に、異常有りと判定する。このため、導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0010】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記第1判定部は、前記圧力センサの検出した圧力が前記変更部による前記容積の増加に伴って第6閾値よりも低くなってから前記容積の増加の終了後に第7閾値よりも高くなるまでの時間が、第8閾値よりも長い場合に、異常有りと判定することが望ましい。
導入口に遮蔽物などが詰め込まれて収容部の密閉の度合いが高くなるほど、圧力センサの検出した圧力が収容部の容積の増加に伴って第6閾値よりも低くなってから該容積の増加の終了後に第7閾値よりも高くなるまでの時間(以下「第2変動時間」と称する)が長くなる。この態様によれば、第2変動時間が第8閾値よりも長い場合に、異常有りと判定する。このため、導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0011】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記導入口には、前記被験者により前記呼気が吹き込まれる呼気流路が連通され、前記呼気流路への前記呼気の吹込み時に前記圧力センサの検出した圧力が第9閾値よりも高い場合に、吹込み異常と判定する第2判定部をさらに含むことが望ましい。
呼気流路への呼気の吹込みが強すぎると、呼気吹込み時の圧力センサの出力と、収容部の容積の変更に応じた圧力センサの出力との差が小さくなり、収容部の容積の変更に伴う圧力センサの出力変化に基づいて異常の有無を判定できなくなるおそれが生じる。この態様によれば、呼気流路への呼気の吹込み時に圧力センサの検出した圧力が第9閾値よりも高い場合に、吹込み異常と判定する。このため、呼気流路への呼気の吹込みが強すぎて異常の有無を判定できなくなるおそれがある場合に吹込み異常と判定可能になる。
【0012】
上述した呼気成分測定装置の一態様において、前記第1判定部での異常有りの判定結果に応じた情報を出力する出力部をさらに含むことが望ましい。
この態様によれば、異常有りの場合に第1判定部の判定結果に応じた情報を出力することが可能になる。
【0013】
本発明に係る異常判定方法の一態様は、被験者の呼気を導入する導入口を有する収容部に収容された呼気について所定成分を測定する呼気成分測定における異常の有無を判定する異常判定方法であって、前記収容部の容積の変更に応じた前記収容部内の圧力に基づいて異常の有無を判定することを特徴とする。
この態様によれば、収容部の容積の変更に応じた収容部内の圧力に基づいて異常の有無を判定する。このため、収容部の導入口に遮蔽物などが詰め込まれる不正を検出可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る呼気成分測定装置10の外観を示す斜視図である。
図2】呼気成分測定装置10の外観を示す図である。
図3】呼気成分測定装置10の断面図である。
図4】呼気成分測定装置10全体の構成を示すブロック図である。
図5】制御部100が実現する機能ブロックを示した図である。
図6】導入口21aに異物がない状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図7】導入口21aに異物がある状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図8】第1実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態での制御部100が実現する機能ブロックを示した図である。
図10】導入口21aに異物がない状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図11】導入口21aに異物がある状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図12】第2実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図13】第3実施形態での制御部100が実現する機能ブロックを示した図である。
図14】導入口21aに異物がない状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図15】導入口21aに異物がある状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図16】第3実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図17】第4実施形態での制御部100が実現する機能ブロックを示した図である。
図18】導入口21aに異物がない状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図19】導入口21aに異物がある状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図20】第2実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
図21】導入口21aに異物がない状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
図22】導入口21aに異物がある状態での圧力センサ16の出力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施の形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る呼気成分測定装置10の外観を示す斜視図である。図2(a)は呼気成分測定装置10の正面図であり、図2(b)は呼気成分測定装置10の側面図であり、図2(c)は呼気成分測定装置10の上面図である。図3は、呼気成分測定装置10の断面図である。
【0017】
呼気成分測定装置10には、被験者によって吹き込まれた呼気が通過する呼気流路33を備えたマウスピース30が取り付けられる。呼気成分測定装置10には、電源スイッチ12と、操作ボタン等の入力インターフェース(入力I/F)13と、マウスピース30を取り付けるための取付部14と、呼気流路33と連通する導入口21aが設けられた突起21と、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示部11aとが設けられている。取付部14には、マウスピース30を着脱自在に保持する保持部19が設けられている。導入口21aは、被験者の呼気を呼気成分測定装置10の内部の収容部20へ導入する。呼気成分測定装置10は、乾電池等のバッテリーを内蔵でき、被験者によって携帯可能である。
【0018】
マウスピース30は、被験者が呼気を吹き込むための吹込口31と、呼気が排出される排出口32と、吹込口31と排出口32との間に形成された呼気流路33とを有している。呼気流路33には、マウスピース30が呼気成分測定装置10に取り付けられた際に突起21が嵌められる貫通口33aが形成されている。突起21が貫通口33aに嵌められると、呼気流路33と導入口21aとが連通する。
【0019】
呼気成分測定装置10は、導入口21aを有する収容部20と、収容部20に収容された呼気について所定成分を測定するガスセンサ15と、収容部20内の圧力を検出する圧力センサ16と、収容部20の容積を変更するソレノイド18と、呼気成分測定装置10を制御する制御部100とを含む。本実施形態では、所定成分としては、アルコールが用いられる。
【0020】
収容部20は、ガスセンサ15が設けられているガスセンサ室15aと、膨張収縮可能な容器であるエアバレル17と、導入口21aとガスセンサ室15aとを連通する流路22と、ガスセンサ室15aとエアバレル17とを連通する流路23と、エアバレル17と圧力センサ16とを結ぶ流路24とを含む。
【0021】
ソレノイド18は、変更部の一例である。ソレノイド18は、エアバレル17と連結されている。ソレノイド18は、伸張することでエアバレル17を押し込んで収縮(容積を減少)させる。また、ソレノイド18は、収縮することでエアバレル17を引き戻して膨張(容積を増加)させる。ソレノイド18は、エアバレル17を収縮させた後に膨張させることで、導入口21aを通じて被験者の呼気を収容部20(特に、ガスセンサ室15a)に引き込む。エアバレル17の収縮や膨張により、収容部20の容積は変更される。
【0022】
圧力センサ16は、収容部20内の圧力を検出する。収容部20内の圧力は、被験者の呼気流路33への呼気の吹込み、および、収容部20の容積の変更に応じて変動する。圧力センサ16は、ダイヤフラムの表面に半導体ひずみゲージが形成された圧力センサである。圧力センサ16では、外部からの力(圧力)によるダイヤフラムの変形に応じて、ピエゾ抵抗効果により電気抵抗が変化する。圧力センサ16は、電気抵抗の変化を電気信号に変換する。なお、圧力センサ16は他の方式の圧力センサでもよい。
【0023】
ガスセンサ15は、測定部の一例である。ガスセンサ15は、感ガス体を備え、ガスセンサ室15aに引き込まれた呼気中のガス(アルコール)を測定する。本実施形態では、ガスセンサ15として、アルコールに触れると電流が流れる感ガス体を有する電気化学式センサが用いられる。この電気化学式センサは、感ガス体を流れる電流の値によって呼気中のアルコール濃度を表す。一例としては、アノード(anode)およびカソード(cathode)としてPt(白金)またはPt合金が用いられ、電解質として硫酸(HSO)が用いられるセンサが挙げられる。このセンサは、アルコール分子が白金触媒に酸化されたときに生じる電流の変化によって呼気中のアルコール濃度を表す。
【0024】
なお、ガスセンサ15は、呼気中のアルコール濃度を測定できればよい。このため、ガスセンサ15としては、例えば、金属酸化物に吸着させた酸素と気体中のアルコールとの反応によって電気抵抗が変化する半導体センサ(つまり、気体中のアルコール濃度に応じて電気抵抗が変化する半導体センサ)など、様々な方式のアルコールセンサが採用可能である。
【0025】
図4は、呼気成分測定装置10全体の構成を示すブロック図である。呼気成分測定装置10は、表示部11aと、入力I/F13と、ガスセンサ15と、圧力センサ16と、ソレノイド18と、収容部20(導入口21a、流路22、ガスセンサ室15a、流路23、エアバレル17、および流路24)と、制御部100とに加えて、出力インターフェース(出力I/F)11と記憶部28とを含む。
【0026】
出力I/F11は、ディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスである。出力I/F11は、出力部の一例である表示部11aを含む。
【0027】
記憶部28は、コンピュータにて読み取り可能な記録媒体、例えば、半導体記録媒体、磁気式記録媒体または光学式記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体、または、これらの記録媒体が組み合わされた記録媒体である。記憶部28は、制御部100の動作を規定するプログラムと、種々の情報(閾値等)とを記憶する。
【0028】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)等のコンピュータである。制御部100は、記憶部28に記憶されているプログラムを読み取り実行することによって、図5に示すように、呼気流入判定部101と、動作制御部102と、異常判定部103と、アルコール濃度測定部104と、運転可否判定部105と、表示情報生成部106と、を実現する。
【0029】
呼気流入判定部101は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、呼気の呼気流路33への流入の有無と、呼気の呼気流路33への流入の継続の有無とを判定する。
【0030】
動作制御部102は、呼気流入判定部101の判定結果に基づいて、ソレノイド18を駆動する。一例を挙げると、呼気流入判定部101が、呼気の呼気流路33への流入の継続時間が閾値Th2を超えていると判断すると、動作制御部102は、ソレノイド18にソレノイド制御信号を一定時間出力した後にその出力を終了して、エアバレル17の容積を一旦減少(収縮)させた後に増加させる。このエアバレル17の容積の増加(膨張)に応じて、呼気流路33の呼気が収容部20(特には、ガスセンサ室15a)に引き込まれる。動作制御部102は、ソレノイド制御信号の出力を開始すると、ソレノイド18の駆動開始を示す駆動情報を異常判定部103に出力する。
【0031】
異常判定部103は、第1判定部の一例である。異常判定部103は、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積(エアバレル17の容積)が変更された場合に、その容積の変更に応じた圧力センサ16の出力に基づいて異常の有無を判定する。
【0032】
ここで、異常の一例として、導入口21aに遮蔽物等の異物が詰め込まれた異常(不正測定)について説明する。
導入口21aに遮蔽物等の異物が詰め込まれた場合と詰め込まれていない場合とでは、収容部20の容積の変更に応じた圧力センサ16の出力が異なる。図6は、導入口21aに異物が詰め込まれていない状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を減少させた後に増加させたときの圧力センサ16の出力(収容部20内の圧力)の一例を示した図である。図7は、導入口21aに異物が詰め込まれた状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を減少させた後に増加させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。
【0033】
図6および図7において、タイミングt1は、被験者の呼気流路33への呼気の吹込み開始タイミングである。タイミングt2は、呼気の吹込みによって圧力センサ16の出力(出力レベル)が閾値Th1よりも高くなったタイミングである。タイミングt3は、圧力センサ16の出力が閾値Th1よりも高い状態の継続時間が閾値Th2よりも長くなって、動作制御部102がソレノイド18を駆動するためのソレノイド制御信号を出力し始めるタイミングである。ソレノイド18は、ソレノイド制御信号に応じて伸張を開始することで、エアバレル17を押し込んでエアバレル17(収容部20)の容積を減少させる動作を開始する。タイミングt4は、ソレノイド18によるエアバレル17の押し込みが完了するタイミングである。タイミングt5は、動作制御部102がソレノイド制御信号の出力を終了するタイミングである。ソレノイド18は、ソレノイド制御信号の終了に応じて収縮を開始することで、エアバレル17を引き戻してエアバレル17の容積を増加させる動作を開始する。タイミングt6は、ソレノイド18によるエアバレル17の引き戻しが完了するタイミングである。タイミングt7は、被験者の呼気流路33への呼気の吹込み終了タイミングを示す。
【0034】
図6および図7に示したように、収容部20の容積の変更に伴う圧力センサ16の出力変化は、導入口21aに異物が詰め込まれていないとき(図6参照)よりも、詰め込まれているとき(図7参照)の方が大きくなる。これは、収容部20の密閉の度合い(収容部20への空気の出入り難さの度合い)が、導入口21aに異物が詰め込まれている場合の方が、詰め込まれていない場合よりも高いことに起因する。
そこで、異常判定部103は、収容部20の容積の変更に応じた圧力センサ16の出力に基づいて、異常の有無を判定する。具体的には、異常判定部103は、ソレノイド18が収容部20の容積を減少させたときに圧力センサ16が検出した圧力が閾値Th3以上である場合に異常有りと判定し、閾値Th3未満である場合に異常なしと判定する。閾値Th3は、第1閾値の一例であり、閾値Th1よりも大きい。異常判定部103は、動作制御部102からの駆動情報の受け取りに応じて、圧力センサ16の出力に基づいて異常の有無を判定する。なお、閾値Th1、Th2およびTh3は記憶部28に記憶されている。異常判定部103は、異常なしと判定すると、ガスセンサ室15aに引き込まれた呼気のアルコール濃度をガスセンサ15に検出させる。
【0035】
アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の出力に基づいて、呼気中のアルコールの濃度を測定する。具体的には、アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の出力電流に基づいて、呼気中のアルコール濃度を算出する。
【0036】
運転可否判定部105は、アルコール濃度測定部104が算出した呼気中のアルコール濃度に基づいて、被験者の運転可否の判定を行う。運転可否判定部105は、呼気中のアルコール濃度が、記憶部28に記憶されている運転可否判定閾値以下である場合には、運転可能であると判断する。
【0037】
表示情報生成部106は、表示部11aに各種の情報を表示させる。表示情報生成部106は、例えば、息の吹きかけの待機の指示や、息の吹きかけの指示や、吹きかけ終了の指示など、操作ガイドの情報を表示部11aに表示させる。また、表示情報生成部106は、呼気中のアルコール濃度の数値、運転可否判定部105の判定結果、呼気流入判定部101の判定結果、および異常判定部103の判定結果等も表示部11aに表示させる。
【0038】
次に、動作を説明する。図8は、呼気成分測定装置10の動作を説明するためのフローチャートである。
先ず、被験者が電源スイッチ12を押下すると、表示情報生成部106は、測定可能になるまでの待機時間(例えば5秒間)の間、吹きかけ待機の表示を表示部11aに実行させる(ステップS101)。
【0039】
待機時間の終了後、表示情報生成部106は、マウスピース30に呼気を所定時間(例えば5秒間)吹きかける旨の吹きかけ指示表示を表示部11aに実行させる(ステップS102)。
【0040】
吹きかけ指示表示に応じて被験者がマウスピース30の吹込口31に呼気を吹きかけると、呼気が呼気流路33を通過する。この際、呼気の圧力が、導入口21aを介して収容部20内に伝わって圧力センサ16で検出される。
【0041】
呼気流入判定部101は、圧力センサ16の出力に基づいて、収容部20内の圧力を算出する。呼気流入判定部101は、収容部20内の圧力が閾値Th1以下である場合(ステップS103:NO)、処理がステップS102に戻される。
【0042】
一方、収容部20内の圧力が閾値Th1よりも高い場合(ステップS103:YES)、呼気流入判定部101は、吹きかけの検出を示す吹きかけ検出情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、吹きかけ検出情報を受け取ると、吹きかけ中を示す表示を、表示部11aに実行させる(ステップS104)。
【0043】
呼気流入判定部101は、吹きかけ検出情報を出力した後に収容部20内の圧力が閾値Th1以下である場合(ステップS105:NO)、吹きかけの中断を示す吹きかけ中断情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、吹きかけ中断情報を受け取ると、吹きかけ中断エラーを示す表示を、表示部11aに実行させる(ステップS112)。
【0044】
呼気流入判定部101は、吹きかけ検出情報を出力した後に収容部20内の圧力が閾値Th1よりも高い場合(ステップS105:YES)、ステップS103でYESと判断してからの経過時間tが閾値Th2よりも長いか否かを判断する(ステップS106)。ここで、経過時間tは、収容部20内の圧力が閾値Th1よりも継続して高くなっている時間を表す。経過時間tが閾値Th2以下である場合(ステップS106:NO)、処理がステップS104に戻される。
【0045】
経過時間tが閾値Th2よりも長いと(ステップS106:YES)、呼気流入判定部101は、呼気の取り込みの開始を示す開始情報を動作制御部102に出力する。動作制御部102は、開始情報を受け取ると、ソレノイド18に一定時間ソレノイド制御信号を出力して、エアバレル17の容積がまず減少しその後増加するようにソレノイド18を駆動する(ステップS107)。動作制御部102は、ソレノイド18の駆動を開始すると、駆動情報を異常判定部103に出力する。
【0046】
エアバレル17の容積の減少に伴って、収容部20内の気体の少なくとも一部は導入口21aから排出される。そして、その後のエアバレル17の容積の増加に伴って、呼気流路33内の呼気が導入口21aから収容部20(特に、ガスセンサ室15a)に引き込まれる。ここで、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていると、遮蔽物等が詰め込まれていない場合よりも導入口21aが狭くなり、収容部20に出入りする気体(呼気等)の単位時間当たりの流量が少なくなる。この流量の違いが原因となって、収容部20の容量の変化に伴う収容部20内の圧力の変化は、導入口21aの広さに応じて変動する。
【0047】
異常判定部103は、駆動情報の受け取りに応じて、圧力センサ16の出力が閾値Th3よりも低いか否かを判定する(ステップS108)。具体的には、異常判定部103は、駆動情報を受け取ってから第1特定時間(例えば、図6および図7に示したタイミングt3からタイミングt4までの時間)だけ経過すると、圧力センサ16の出力が閾値Th3よりも低い状態を維持するか否かを判定する。なお、タイミングt3からタイミングt4までの時間は、設計上の時間でもよいし、呼気成分測定装置10の製造時に測定された時間でもよい。
導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていると、導入口21aが狭くなるので、図7に示したように、エアバレル17の容積の減少に伴い圧力センサ16の出力が閾値Th3以上になる。一方、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていないと、図6に示したように、エアバレル17の容積が減少しても圧力センサ16の出力は閾値Th3未満の状態を維持する。
【0048】
圧力センサ16の出力が閾値Th3以上である場合(ステップS108:NO)、例えば、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれている場合、異常判定部103は、異常有りと判定し、異常圧力の検出を示す異常圧力検出情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、異常圧力検出情報を受け取ると、異常圧力の検出を示す表示を、表示部11aに実行させる(ステップS111)。
【0049】
一方、圧力センサ16の出力が閾値Th3よりも小さい場合(ステップS108:YES)、例えば、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていない場合、異常判定部103は、異常なしと判定し、ガスセンサ15を動作させる。ガスセンサ15は、ガスセンサ室15a内の呼気のアルコール濃度を検出し、その検出結果をアルコール濃度測定部104に出力する。
【0050】
アルコール濃度測定部104は、ガスセンサ15の検出結果に基づいて呼気中のアルコール濃度を測定(解析)する(ステップS109)。このとき、アルコール濃度測定部104が、解析開始を示す解析開始情報を表示情報生成部106に出力し、表示情報生成部106が、解析開始情報の受け取りに応じて、呼気の吹き込みの終了を示す表示を、表示部11aに実行させてもよい。アルコール濃度測定部104は、呼気中のアルコール濃度の測定が完了すると、アルコール濃度の測定結果を、表示情報生成部106と運転可否判定部105とに出力する。
【0051】
表示情報生成部106は、アルコール濃度の測定結果を受け取ると、その測定結果が示すアルコール濃度を、表示部11aに表示させる(ステップS110)。
【0052】
運転可否判定部105は、アルコール濃度の測定結果が運転可否判定閾値を越える場合には、運転不可であると判定し、運転不可を示す運転不可情報を表示情報生成部106に出力する。一方、アルコール濃度の測定結果が運転可否判定閾値を越えない場合には、運転可否判定部105は、運転可と判定し、運転可を示す運転可情報を、表示情報生成部106に出力する。なお、運転可否判定閾値は、記憶部28に記憶されている。
表示情報生成部106は、運転不可情報を受け取ると、運転不可を示す表示を表示部11aに実行させ、運転可情報を受け取ると、運転可を示す表示を表示部11aに実行させる(ステップS113)。ここで、運転不可を表す表示は、異常判定部103による異常有りの判定結果に応じた情報の一例である。
【0053】
本実施形態によれば、収容部20の容積の変更に応じた圧力センサ16の出力(収容部20内の圧力)に基づいて異常の有無が判定される。このため、導入口21aに遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0054】
また、アルコール濃度を測定するために呼気を導入口21aから収容部20に引き込む引込動作が、異常の有無の判定に必要な収容部20の容積を変更する容積変更動作として兼用されている。このため、引込動作と容積変更動作とを別々に行う場合に比べて、ソレノイド18の動作を少なくでき、省電力化を図ることが可能になる。
【0055】
また、引込動作の開始判定に使用される圧力センサ16が、異常の有無の判定にも使用されている。このため、引込動作の開始判定に使用する圧力センサと、異常の有無の判定に使用する圧力センサとを別々に有する構成に比べて、構成の簡略化を図ることが可能になる。
【0056】
<第2実施形態>
本発明の第1実施形態では、圧力センサ16の出力(収容部20内の圧力)が、収容部20の容積の減少に応じて閾値Th3よりも高くなった場合に異常有りと判定される。これに対して、本発明の第2実施形態では、収容部20の容積を減少させる動作を実行した場合に、圧力センサ16の出力が閾値Th4を超えてから閾値Th4未満になるまでの時間に基づいて、異常の有無が判定される。なお、閾値Th1と閾値Th3と閾値Th4とは、閾値Th1<閾値Th4<閾値Th3の関係を満たす。
【0057】
第2実施形態の構成は、記憶部28が閾値Th3を記憶せずに後述する閾値Th4〜Th7を記憶し第1実施形態用のプログラムの代わりに第2実施形態用のプログラムを記憶する点と、吹込み異常判定部107を有する点(図9参照)と、異常判定部103の代わりに異常判定部103aを有する点において、第1実施形態の構成と異なる。以下、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0058】
図9は、第2実施形態において制御部100によって実現される機能ブロックを示した図である。制御部100は、記憶部28に記憶された第2実施形態用のプログラムを読み取り実行することによって、呼気流入判定部101と、動作制御部102と、異常判定部103aと、アルコール濃度測定部104と、運転可否判定部105と、表示情報生成部106と、吹込み異常判定部107と、を実現する。
【0059】
図10は、図6と同様に、導入口21aに異物が詰め込まれていない状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を減少させ、その後に増加させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。図11は、図7と同様に、導入口21aに異物が詰め込まれている状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を減少させ、その後に増加させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。
図10および図11において、タイミングtaは、圧力センサ16の出力が収容部20の容積の減少時に閾値Th4よりも高くなったタイミングを示す。タイミングtbは、圧力センサ16の出力が収容部20の容積の減少の終了後に閾値Th4よりも低くなったタイミングを示す。
【0060】
tb−taにて特定される時間(以下「第1変動時間」と称する)は、収容部20に出入りする気体(呼気等)の単位時間当たりの流量(以下、単に「流量」と称する)が少ないほど長くなる。そして、この流量は導入口21が狭いほど小さくなる。このため、第1変動時間は、導入口21aが狭いほど長くなる。よって、例えば導入口21aに異物が押し込まれて導入口21aが狭くなっている場合、導入口21aが狭くなっていない場合よりも、第1変動時間は長くなる。
そこで、異常判定部103aは、第1変動時間が閾値Th5以上である場合に異常有りと判定し、第1変動時間が閾値Th5未満である場合に異常なしと判定する。異常判定部103aは、第1判定部の一例である。閾値Th4は、第2閾値および第3閾値の一例である。閾値Th5は、第4閾値の一例である。
【0061】
また、呼気流路33への呼気の吹き込みが強すぎて、閾値Th4以上の圧力が圧力センサ16にかかると、異常判定部103aは圧力センサ16の出力に基づいて異常の有無を判定できなくなるという問題が生じる。
そこで、吹込み異常判定部107は、圧力センサ16の検出した圧力が呼気流路33への呼気の吹き込みに応じて閾値Th6よりも高い場合に、吹込み異常と判定する。吹込み異常判定部107は第2判定部の一例である。閾値Th6は、閾値Th1<閾値Th6<閾値Th4の関係を満たす。閾値Th6は、第9閾値の一例である。
【0062】
図12は、第2実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。図12において、図8に示した処理と同一内容の処理には同一符号を付してある。以下、第2実施形態の動作について、図8に示した処理と異なる点を中心に説明する。
【0063】
経過時間tが閾値Th2を超えると(ステップS106:YES)、呼気流入判定部101は、吹込み異常を判定することを示す圧力判定情報を吹込み異常判定部107に出力する。吹込み異常判定部107は、圧力判定情報を受け取ると圧力センサ16の出力(収容部20内の圧力)が閾値Th6よりも高いか否かを判定する(ステップS201)。
【0064】
圧力センサ16の出力が閾値Th6よりも高い場合(ステップS201:YES)、吹込み異常判定部107は、吹込み異常と判定し、吹込み異常を検出した旨の吹込み異常検出情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、吹込み異常検出情報を受け取ると、異常検出を示す表示(具体的には、吹込み異常を示す表示)を表示部11aに実行させる(ステップS209)。
【0065】
圧力センサ16の出力が閾値Th6以下である場合(ステップS201:NO)、吹込み異常判定部107は、吹込み正常と判定し、呼気の取り込みの開始を示す開始情報を動作制御部102に出力する。動作制御部102は、開始情報を受け取ると、エアバレル17の容積がまず減少しその後増加するように、ソレノイド18を駆動する(ステップS107)。動作制御部102は、ソレノイド18を駆動すると、駆動情報を異常判定部103aに出力する。
【0066】
異常判定部103aは、駆動情報を受け取ると、圧力センサ16の出力が閾値Th4以下であると(ステップS202:NO)、駆動情報を受け取ってからの経過時間t11が閾値Th7よりも長いか否かを判定する(ステップS203)。
経過時間t11が閾値Th7以下であると(ステップS203:NO)、処理がステップS202に戻される。一方、経過時間t11が閾値Th7よりも長いと(ステップS203:YES)、異常判定部103aは、ソレノイド18の駆動異常等により圧力異常が発生したと判定し、圧力異常を示す圧力異常情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、圧力異常情報を受け取ると、圧力異常を検出した旨の表示を表示部11aに実行させる(ステップS209)。
【0067】
ステップS202で圧力センサ16の出力が閾値Th4よりも高いと(ステップS202:YES)、異常判定部103aは、そのときのタイミングtaを記憶部28に記憶する(ステップS204)。
【0068】
続いて、異常判定部103aは、圧力センサ16の出力が閾値Th4以上であると(ステップS205:NO)、タイミングtaを記憶してからの経過時間t12が閾値Th7よりも長いか否かを判定する(ステップS206)。
経過時間t12が閾値Th7以下であると(ステップS206:NO)、処理がステップS205に戻される。一方、経過時間t12が閾値Th7よりも長いと(ステップS206:YES)、異常判定部103aは、圧力異常情報を表示情報生成部106に出力する。表示情報生成部106は、圧力異常情報を受け取ると、ステップS209を実行する。
【0069】
ステップS205で圧力センサ16の出力が閾値Th4よりも低いと(ステップS205:YES)、異常判定部103aは、そのときのタイミングtbを記憶部28に記憶する(ステップS207)。
【0070】
続いて、異常判定部103aは、tb−taにて特定される第1変動時間が閾値Th5よりも短い場合(ステップS208:YES)、異常なしと判定し、ガスセンサ15を動作させる。一方、第1変動時間が閾値Th5以上である場合(ステップS208:NO)、異常判定部103aは、異常有りと判定し、異常圧力検出情報を表示情報生成部106に出力する。
【0071】
本実施形態によれば、第1変動時間が閾値Th5以上である場合、異常判定部103aは、異常有りと判定する。このため、導入口21aに遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
また、第1実施形態によると、圧力センサ16のダイナミックレンジが小さい場合には、ソレノイド18の駆動により変化する圧力センサ16の出力が一部サチュレーション(飽和)することにより異常の有無の判定が困難であるが、第2実施形態によれば、そのような場合であっても、異常の有無の判定が可能になる。
【0072】
<第3実施形態>
第1実施形態および第2実施形態では、まずソレノイド18を伸張して収容部20の容積を減少し、その後、ソレノイド18を収縮して収容部20の容積を増加することで、収容部20に呼気が取り込まれ、その呼気のアルコール濃度が測定される。
これに対して、本発明の第3実施形態では、まずソレノイド18を収縮して収容部20の容積を増加して収容部20に呼気が取り込まれ、その呼気のアルコール濃度が測定され、その後、ソレノイド18を伸張して収容部20内の呼気が排出される。そして、ソレノイド18が収縮して収容部20の容積が増加したときの圧力センサ16の出力が閾値Th8よりも低い場合に、異常有りと判定される。閾値Th8は、閾値Th8<閾値Th1の関係を満たす。
【0073】
第3実施形態の構成は、記憶部28が閾値Th3を記憶せずに閾値Th8を記憶し第1実施形態用のプログラムの代わりに第3実施形態用のプログラムを記憶する点と、異常判定部103の代わりに異常判定部103b(図13参照)を有する点において、第1実施形態の構成と異なる。以下、第3実施形態について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0074】
図13は、第3実施形態において制御部100によって実現される機能ブロックを示した図である。制御部100は、記憶部28に記憶された第3実施形態用のプログラムを読み取り実行することによって、呼気流入判定部101と、動作制御部102と、異常判定部103bと、アルコール濃度測定部104と、運転可否判定部105と、表示情報生成部106と、を実現する。
【0075】
異常判定部103bは、第1判定部の一例である。異常判定部103bは、ソレノイド18が収縮して収容部20の容積が増加したときの圧力センサ16の出力が閾値Th8よりも低い場合に、異常有りと判定する。
【0076】
図14は、導入口21aに異物が詰め込まれていない状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。図15は、導入口21aに異物が詰め込まれている状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。
【0077】
図14および図15において、ダイミングt3aは、圧力センサ16の出力が閾値Th1よりも高い状態の継続時間が閾値Th2よりも長くなって、動作制御部102がソレノイド制御信号を出力し始めるタイミングである。本実施形態では、ソレノイド18は、ソレノイド制御信号に応じて収縮を開始することによって、エアバレル17を引いてエアバレル17の容積を増加させる動作を開始する。タイミングt4aは、ソレノイド18によるエアバレル17の引きが完了するタイミングである。タイミングt5aは、動作制御部102がソレノイド制御信号の出力を終了するタイミングである。ソレノイド18は、ソレノイド制御信号の終了に応じて伸張を開始することによって、エアバレル17を押し込んでエアバレル17の容積を減少させる動作を開始する。タイミングt6aは、ソレノイド18によるエアバレル17の押し込みが完了するタイミングである。
【0078】
図16は、第3実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。図16において、図8に示した処理と同一内容の処理には同一符号を付してある。以下、第3実施形態の動作について、図8に示した処理と異なる点を中心に説明する。
【0079】
経過時間tが閾値Th2を超えると(ステップS106:YES)、呼気流入判定部101は、開始情報を動作制御部102に出力する。動作制御部102は、開始情報を受け取ると、ソレノイド18に一定時間ソレノイド制御信号を出力して、エアバレル17の容積がまず増加しその後減少するようにソレノイド18を駆動する(ステップS301)。動作制御部102は、ソレノイド制御信号の出力を開始すると、駆動情報を異常判定部103bに出力する。
【0080】
導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていると、導入口21aが狭くなるので、図15に示したように、エアバレル17の容積の増加に伴い圧力センサ16の出力が閾値Th8以下になる。一方、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていないと、図14に示したように、エアバレル17の容積が増加しても圧力センサ16の出力は閾値Th8よりも高くなる。
【0081】
異常判定部103bは、駆動情報を受け取ってから第2特定時間(例えば、図14および図15に示したタイミングt3aからタイミングt4aまでの時間)経過したときに、圧力センサ16の出力が閾値Th8以下になった場合(ステップS302:NO)、例えば、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれている場合、異常圧力検出情報を表示情報生成部106に出力する。
【0082】
一方、駆動情報を受け取ってから第2特定時間経過したときに圧力センサ16の出力が閾値Th8よりも高い場合(ステップS302:YES)、例えば、導入口21aに遮蔽物等が詰め込まれていない場合、異常判定部103bは、ガスセンサ15を動作させる。
【0083】
本実施形態によれば、収容部20の容積を増加したときの圧力センサ16の出力が閾値Th8以下になる場合に、異常判定部103bは、異常有りと判定する。このため、導入口21aに遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0084】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態では、第3実施形態と同様に、まずソレノイド18を収縮して収容部20の容積を増加して収容部20に呼気が取り込まれ、その呼気のアルコール濃度が測定され、その後、ソレノイド18を伸張して収容部20内の呼気が排出される。そして、収容部20の容積を増加させる動作を実行した場合に、圧力センサ16の出力が閾値Th9未満になってから閾値Th9よりも高くなるまでの時間に基づいて、異常の有無が判定される。閾値Th9は、閾値Th8<閾値Th9<閾値Th1の関係を満たす。
【0085】
第4実施形態の構成は、記憶部28が閾値Th4〜Th6を記憶せずにTh9およびTh10を記憶し第2実施形態用のプログラムの代わりに第4実施形態用のプログラムを記憶する点と、異常判定部103aの代わりに異常判定部103c(図17参照)を有する点と、吹込み異常判定部107が省略される点とにおいて、第2実施形態の構成と異なる。以下、第4実施形態について、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0086】
図17は、第4実施形態において制御部100によって実現される機能ブロックを示した図である。制御部100は、記憶部28に記憶された第4実施形態用のプログラムを読み取り実行することによって、呼気流入判定部101と、動作制御部102と、異常判定部103cと、アルコール濃度測定部104と、運転可否判定部105と、表示情報生成部106と、を実現する。
【0087】
図18は、図14と同様に、導入口21aに異物が詰め込まれていない状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。図19は、図15と同様に、導入口21aに異物が詰め込まれている状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例を示した図である。
図18および図19において、タイミングta1は、圧力センサ16の出力が収容部20の容積の増加時に閾値Th9よりも低くなったタイミングを示す。タイミングtb1は、圧力センサ16の出力が収容部20の容積の増加の終了後に閾値Th9よりも高くなったタイミングを示す。
【0088】
tb1−ta1にて特定される時間(以下「第2変動時間」と称する)は、収容部20に出入りする気体(呼気等)の単位時間当たりの流量が少ないほど長くなる。そして、流量は導入口21が狭いほど小さくなる。このため、第2変動時間は、導入口21aが狭いほど長くなる。よって、例えば導入口21aに異物が押し込まれて導入口21aが狭くなっている場合、導入口21aが狭くなっていない場合よりも、第2変動時間は長くなる。
そこで、異常判定部103cは、第2変動時間が閾値Th10以上である場合に異常有りと判定し、第2変動時間が閾値Th10未満である場合に異常なしと判定する。異常判定部103cは、第1判定部の一例である。閾値Th9は、第6閾値および第7閾値の一例である。閾値Th10は、第8閾値の一例である。
【0089】
図20は、第4実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。図20において、図12図16に示した処理と同一内容の処理には同一符号を付してある。以下、第4実施形態の動作について、図12図16に示した処理と異なる点を中心に説明する。
【0090】
経過時間tが閾値Th2を超えると(ステップS106:YES)、呼気流入判定部101は、開始情報を動作制御部102に出力する。動作制御部102は、開始情報を受け取ると、ステップS301を実行する。続いて、動作制御部102は、駆動情報を異常判定部103cに出力する。
【0091】
異常判定部103cは、駆動情報を受け取ると、圧力センサ16の出力が閾値Th9以上であると(ステップS401:NO)、ステップS203を実行する。一方、圧力センサ16の出力が閾値Th9よりも低いと(ステップS401:YES)、異常判定部103cは、そのときのタイミングta1を記憶部28に記憶する(ステップS402)。
【0092】
続いて、異常判定部103cは、圧力センサ16の出力が閾値Th9以下であると(ステップS403:NO)、ステップS206を実行する。このステップS206での経過時間t12は、タイミングta1を記憶してからの経過時間である。一方、圧力センサ16の出力が閾値Th9よりも高いと(ステップS403:YES)、異常判定部103cは、そのときのタイミングtb1を記憶部28に記憶する(ステップS404)。
【0093】
続いて、異常判定部103cは、tb1−ta1にて特定される第2変動時間が閾値Th10よりも短い場合(ステップS405:YES)、異常なしと判定し、ガスセンサ15を動作させる。一方、第2変動時間が閾値Th10以上である場合(ステップS405:NO)、異常判定部103cは、異常有りと判定し、異常圧力検出情報を表示情報生成部106に出力する。
【0094】
本実施形態によれば、第2変動時間が閾値Th10以上である場合、異常判定部103cは、異常有りと判定する。このため、導入口21aに遮蔽物などが詰め込まれる不正を判定可能になる。
【0095】
なお、各実施形態において使用される閾値は、呼気成分測定装置10の動作特性に応じて適宜設定されることが望ましい。
【0096】
<変形例>
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様の中から任意に選択された一または複数の変形を適宜組み合わせることもできる。
【0097】
<変形例1>
第3実施形態において、記憶部28が閾値Th8の代わりに閾値Th3を記憶し、ソレノイド18が収容部20の容積を減少させたときに圧力センサ16が検出した圧力が閾値Th3以上である場合に、異常判定部103bは異常有りと判定してもよい。
また、第4実施形態において、記憶部28が閾値Th9およびTh10の代わりに閾値Th4およびTh5を記憶し、第1変動時間が閾値Th5以上である場合に、異常判定部103aは、異常有りと判定してもよい。
図21は、導入口21aに異物が詰め込まれていない状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例と、変形例1での閾値Th3およびTh4とを示した図である。図22は、導入口21aに異物が詰め込まれている状態で、ソレノイド18の駆動によって収容部20の容積を増加させ、その後に減少させたときの圧力センサ16の出力の一例と、変形例1での閾値Th3およびTh4とを示した図である。
なお、変形例1で使用する閾値Th3と第1実施形態で使用する閾値Th3とは互いに異なる値でもよい。また、変形例1で使用する閾値Th4と第2実施形態で使用する閾値Th4とは互いに異なる値でもよい。
【0098】
<変形例2>
第2実施形態では、ステップS202で用いられる閾値(第2閾値)とステップS205で用いられる閾値(第3閾値)とが共通の閾値Th4であったが、第2閾値と第3閾値とは互いに異なっていてもよい。
また、第4実施形態では、ステップS401で用いられる閾値(第6閾値)とステップS403で用いられる閾値(第7閾値)とが共通の閾値Th9であったが、第6閾値と第7閾値とは互いに異なっていてもよい。
【0099】
<変形例3>
ステップS108において、圧力センサ16の出力が閾値Th3以下か否かが判定されてもよい。ステップS201において、圧力センサ16の出力が閾値Th6以上か否かが判定されてもよい。ステップS202において、圧力センサ16の出力が閾値Th4以上か否かが判定されてもよい。ステップS205において、圧力センサ16の出力が閾値Th4以下か否かが判定されてもよい。ステップS208において、tb−ta(第1変動時間)が閾値Th5以下か否かが判定されてもよい。ステップS302において、圧力センサ16の出力が閾値Th8以上か否かが判定されてもよい。ステップS401において、圧力センサ16の出力が閾値Th9以下か否かが判定されてもよい。ステップS403において、圧力センサ16の出力が閾値Th9以上か否かが判定されてもよい。ステップS405において、tb1−ta1(第2変動時間)が閾値Th10以下か否かが判定されてもよい。
【0100】
<変形例4>
制御部100がプログラムを実行することによって実現する各機能部は、回路等のハードウェアで実現されてもよい。
【0101】
<変形例5>
第2実施形態で用いた吹込み異常判定部107が、第1実施形態で用いられてもよい。この場合、吹込み異常判定部107は、圧力センサ16の検出した圧力が呼気流路33への呼気の吹込みに応じて閾値Th3を超える場合に、吹込み異常と判定することが望ましい。
【0102】
<変形例6>
呼気の所定成分としてアルコールが用いられたが、所定成分はアルコールに限らず適宜変更可能である。
【0103】
<変形例7>
異常判定部103、103a、103bまたは103cでの異常有りの判定結果に応じた情報を出力する出力部は、表示部11aに限らず適宜変更可能である。例えば、この判定結果を通信端末やサーバに送信する送信部が、出力部として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10…呼気成分測定装置、15…ガスセンサ(測定部)、16…圧力センサ、18…ソレノイド(変更部)、20…収容部、100…制御部、103…異常判定部
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図22