特許第6841504号(P6841504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841504
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】輸液ポンプの点検機
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20210301BHJP
   F04B 51/00 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   A61M5/142
   F04B51/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-99229(P2017-99229)
(22)【出願日】2017年5月18日
(65)【公開番号】特開2018-192063(P2018-192063A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】592222525
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】古屋 明彦
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−276008(JP,A)
【文献】 国際公開第1999/058178(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
F04B 51/00
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向先端側にチューブ接続用の連通孔を設けたシリンジと、前記シリンジに軸方向に進退移動可能に隙間を設けて挿入される押し子を備え、輸液ポンプの駆動により前記連通孔を介して前記シリンジ内に流入し、前記押し子を後退させる液体で前記輸液ポンプの動作を確認点検する輸液ポンプの点検機において、
前記押し子の外周面に環状凹部が設けられ、
前記環状凹部にシールリングが嵌合されており、
前記シリンジ内に流入し更に前記隙間に充填された液体の液圧を受けて、前記シールリングを拡げ、前記シリンジの内周面との接触面積を増やす密閉機構と、前記押し子を前記シリンジに同軸状にセンタリングさせるセンタリング機構が実現されることを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項2】
請求項1に記載した輸液ポンプの点検機において、
シールリングは、そのV字形の先鋭な内底部が押し子の軸方向基端側を向くように嵌合されたV字形のシールリングであり、
密閉機構は、液圧を受けて前記シールリングのV字形を拡げて、シリンジの内周面との接触面積を増やすよう構成されていることを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項3】
請求項1または2に記載した輸液ポンプの点検機において、
押し子はシールリングの嵌合面よりも先端側では同径に構成されていることを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、
シリンジに対する押し子の相対的な移動をロック及びロック解除するロック機構を設けたことを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、
計測部として、
押し子と同軸状に設けられ、押し子の後退移動に連動する計測軸と、前記計測軸の移動により変化する光量を検出する光検出部と、前記計測軸の押しを受けて発生する歪を検出する歪検出部を備え、
前記光検出部の検出結果に基づいて送液流量を算出し、前記歪検出部の検出結果に基づいて閉塞圧を算出することを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、
疑似滴下信号発生部として、
滴下を擬した疑似滴下を作成する疑似滴下作成部と、前記疑似滴下を検出する位置に輸液ポンプの点滴プローブを装着させる装着ガイド部を備えることを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、
輸液を入れたソフトバッグの収納部を備えることを特徴とする輸液ポンプの点検機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸液ポンプの点検機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸液の送液に使用するポンプにはシリンジポンプと輸液ポンプがあり、シリンジポンプは高精度ではあるものの総投与量が制限されることから、総投与量が多い場合には輸液ポンプが専ら使用されている。
この輸液ポンプには、特許文献1に記載のように、点滴筒内の輸液の滴下を滴下センサで検出し、その検出結果に基づき流量を制御する滴下数制御方式のものや、専用のチューブを使用し、そのチューブをしごく回数で流量を制御する流量制御方式のものがあり、いずれもシリンジポンプに比較すれば精度は下がるものの、点滴を安全に実施するためには、それなりのレベルでの流量精度の確保と閉塞状態の正確な判定が要求されている。
【0003】
而して、従来は、この輸液ポンプの動作の点検では、輸液代わりに水を用いてメスシリンダーや容器に溜めてその総送液量と総送液時間から流量を算出しており、途中経過を細かく把握することができなかった。
最近では、機械的に点検できる点検機も提案されているが、排水する構造であったため、シンクの傍で作業をしたり、予めバケツを用意しておくなど場所が限定されたり、面倒な作業が必要であった。しかも検出精度を上げるため細いガラス管を利用しており、安価な水道水を使用すると、水道水には種々の不純物が含まれていることから、詰り易く、頻繁にメンテナンスしなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−229119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、自動的に輸液ポンプが正確に動作しているかを確認点検できるタイプで、排水しない閉鎖系で面倒なメンテナンスも不要になるよう工夫された、新規且つ有用な輸液ポンプの点検機を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、軸方向先端側にチューブ接続用の連通孔を設けたシリンジと、前記シリンジに軸方向に進退移動可能に隙間を設けて挿入される押し子を備え、輸液ポンプの駆動により前記連通孔を介して前記シリンジ内に流入し、前記押し子を後退させる液体で前記輸液ポンプの動作を確認点検する輸液ポンプの点検機において、前記押し子の外周面に環状凹部が設けられ、前記環状凹部にシールリングが嵌合されており、前記シリンジ内に流入し更に前記隙間に充填された液体の液圧を受けて、前記シールリングを拡げ、前記シリンジの内周面との接触面積を増やす密閉機構と、前記押し子を前記シリンジに同軸状にセンタリングさせるセンタリング機構が実現されることを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した輸液ポンプの点検機において、シールリングは、そのV字形の先鋭な内底部が押し子の軸方向基端側を向くように嵌合されたV字形のシールリングであり、密閉機構は、液圧を受けて前記シールリングのV字形を拡げて、シリンジの内周面との接触面積を増やすよう構成されていることを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した輸液ポンプの点検機において、押し子はシールリングの嵌合面よりも先端側では同径に構成されていることを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、シリンジに対する押し子の相対的な移動をロック及びロック解除するロック機構を設けたことを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、計測部として、押し子と同軸状に設けられ、押し子の後退移動に連動する計測軸と、前記計測軸の移動により変化する光量を検出する光検出部と、前記計測軸の押しを受けて発生する歪を検出する歪検出部を備え、前記光検出部の検出結果に基づいて送液流量を算出し、前記歪検出部の検出結果に基づいて閉塞圧を算出することを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、疑似滴下信号発生部として、滴下を擬した疑似滴下を作成する疑似滴下作成部と、前記疑似滴下を検出する位置に輸液ポンプの点滴プローブを装着させる装着ガイド部を備えることを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した輸液ポンプの点検機において、輸液を入れたソフトバッグの収納部を備えることを特徴とする輸液ポンプの点検機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の輸液ポンプの点検機を使用すれば、輸液ポンプが設定された送液流量で正確に送液できているか、且つ、設定された閉塞圧になったときに警告できているかを確認点検できる。しかも、送液ラインを閉鎖系で構成できるので、排水用の準備は必要がない。更に、特別に細いガラス管を使用せずに済むので、面倒なメンテナンスも不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る輸液ポンプの点検機を輸液ポンプにセットした状態を示す説明図である。
図2図1の点検機の斜視図である。
図3図2の点検機のシリンジと押し子の関係図である。
図4図3の非使用時と動作時におけるシリンジへの押し子の挿入状態の説明図である。
図5図1の点検機の計測部の説明図である。
図6図1の点検機の電気的構成図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る輸液ポンプの点検機の斜視図である。
図8図7のロック機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施の形態に係る輸液ポンプの点検機1を図面にしたがって説明する。
図1は点検機1のセット状態を示しており、この図に示すように、点検機1には、輸液ポンプPに装着されたチューブCの一端側が接続され、他端側は輸液バッグ(ソフトバッグ)B(図6)に接続されている。輸液バッグBは点検機1のケース3に収容されており、チューブCの該他端側はケース3の引出し口から外に引き出されている。このケース3は筐体本体5に対して着脱自在になっている。また、輸液ポンプPの点滴プローブ(滴下検出部)Tが取付けられている。
【0016】
点検機1は、図2の拡大図に示すように、筐体本体5の外形は直方体をなしており、下側にケース3が着脱自在に取付けられている。
筐体本体5は長手方向一方側(図2では左側)がシリンジセット部7になっている。このシリンジセット部7の上面にはシリンジベッドとして長手方向に沿って細長いベッド凹部9が設けられている。
このベッド凹部9の上側には、コの字形のガードパイプ11が長手方向に跨るように回動可能に枢着されている。このガードパイプ11は右側が基端の回動支点になっており、倒伏するとシリンジセット部7の左端側にガードパイプ11の先端部がくるが、そこには筐体本体5が隆起して一対の係止凹部13、13が設けられており、ガードパイプ11が倒伏すると、その連結部分が各係止凹部13、13に嵌り込んで係止される。
【0017】
図3に示すように、シリンジ(外筒体)15は直状同径に成形されており、軸方向一端側の中心に狭口された円形の連通孔17が形成されている。この連通孔17に液体流入用のチューブ接続部19(図1)が取付けられている。
そして大きく開口した他端側は押し子21の挿入口になっており、押し子21が進退移動可能に挿入されている。セットする場合には、この押し子21が挿入された状態になっており、チューブ接続部19を一対の係止凹部13、13の間に差し入れつつ、シリンジ15をベッド凹部9に寝かせる。その後、ガードパイプ11を倒伏させて係止させると、ガードパイプ11がシリンジ15を上方から押え付けた状態となり、シリンジ15が筐体本体5に安定的にセットされる。
【0018】
図4に従って、シリンジ15と押し子21の挿入関係を詳細に示す。
シリンジ15は温度変化の小さいガラスで成形されている。押し子21は金属製になっており、直状の円筒体で軸方向両端部が閉塞されている。押し子21の外周面には垂直に段差が設けられて径が変わっており、シリンジ15の連通孔17に対向する先端側から基端側に向かって、先部23、中継部25、中継部27、後部29に分かれている。中継部25、27は先部23、後部29に比較して格段に短小になっており、径は先部23>中継部27>後部29>中継部25となっている。
この先部23と中継部27の間には環状凹部31が形成されている。
また、先部23の先端面33は軸方向に垂直な面になっており、角部35は面取りされている。
【0019】
押し子21の環状凹部31にゴム製のシールリング37が嵌合されている。このシールリング37は断面V字状になっており、底部の外底面39は平面になっている。この外底面39が中継部27の段差面に当接する。従って、テーパ状の外壁部41と内壁部43のうち内壁部43が中継部25の外周面に弾接する。
シリンジ15に、押し子21は同軸状に挿入されると、押し子21の先部23の外周面とシリンジ15の内周面との間には一定の隙間45が作りだされる。また、先部23はある程度の軸長を有している。そして、シールリング37の外壁部41がシリンジ15の内周面に弾接する。
【0020】
図4の非使用時は、押し子21がシリンジ15に理想的な同軸状態で挿入されているときを示しており、押し子21の先部23の軸長(X)は41.5mmに設計されている。また、隙間45の(Y)は0.005〜0.045mmに収まるように設計されている。
連通孔17から液体W(輸液バッグBに接続された場合には輸液)がシリンジ15内に流入すると、押し子21の先端面33の角部35の周囲から隙間45にも入り込んで充填され、シールリング37に到達する。更に、流入の進行中は、液体Wの容量の増大に比例して、押し子21が引き出し方向に向かって後退する。このときには、図4の動作時に示すように、シールリング37の内底側に液圧を受けてテーパ状の外壁部41と内壁部43がそれぞれ弾性的に拡開する。従って、それぞれシリンジ15側及び押し子21の中継部25側との接触面積が大きくなってシール強度が増大し、密封機構が実現されるので、液漏れが阻止される。
【0021】
また、液体Wが隙間45に入り込んで充填されるので、押し子21の先部23の外周面は矢印に示すように液圧を受けることになる。先部23はある程度の長さ(X)を有していることもあって、この液圧を受ける面積は十分に大きくなっている。そのため、押し子21は液体Wでしっかりと抱持された片持ち支持状態になる。すなわち、押し子21の中心軸をシリンジ15の内側空間の中心軸(L)に合わせるセンタリング機能が実現される。しかも、抱持側が液体なので押し子21の後退方向の移動が妨げられることはない。
点検機1では、押し子21の軸方向の後退移動を計測対象としており、押し子21の移動中における安定したセンタリング機能が実現することで、液体Wの流量が押し子21の移動量に正確に反映され、精度の高い計測が可能となっている。
なお、シリンジ15内に元々有った空気もそのままシリンジ15内に残されるが、微量なので図示は省略する。
【0022】
筐体本体5の長手方向他方側(図2では右側)が計測部47になっている。計測部47では筐体本体5の外形が箱状になってシリンジセット部7に対して隆起しており、そこに図5に示す種々のものが収容されている。また、押し子21の後部29の一部が筺体本体5内に入り込んでいる。
符号49は計測軸を示し、この計測軸49は押し子21に対して同軸状に配置され、その先端側の半球形のキャップ51が押し子21のキャップ22に突き当たるようになっている。従って、押し子21が後退する方向に移動すると、計測軸49も連動して軸方向に後退することになる。
【0023】
計測軸49に沿って、光検出部53が配置されている。この光検出部53として、光の発光・受光素子が実装された反射基板55が筺体本体5側に固定され、スリットが多数形成されたスケール57がスケールベース59を介して計測軸49側に固定されている。
スケール57が計測軸49の移動に連動して移動すると、反射基板55の発光素子から放射され、スケール57で反射し受光素子に戻ってきた光の光量が変わることから、この光量の変化で押し子21の移動量を算出する仕組みになっている。
【0024】
また、計測軸49に沿って、光検出部53に隣り合った箇所に、閉塞検出部61が配置されている。この閉塞検出部61として、起歪体63が筺体本体5側に固定されており、歪ゲージ(図示省略)が貼り付けられている。
起歪体63は上記したスケールベース59に対して後退方向側から対向しており、スケールベース59が外力付与体として利用されている。従って、押し子21の過度の後退によってスケールベース59が後退すると起歪体63が押されて歪むことから、その歪量を閉塞圧(電気)信号として利用する仕組みになっている。
【0025】
更に、計測軸49の基端部には、疑似滴下作成部65が取付けられている。この疑似滴下作成部65には、光透過用のフィルター板67が備えられている。このフィルター板67は回転可能であり、その角度により透過が変化する。フィルター板67を囲んでボディ部69が設けられている。このボディ部69は点滴筒に代わって装着される部位になっており、図1に示すように点滴プローブTを挟持固定する形状になっている。この姿勢で点検機1に装着されたときには、フィルター板67が点滴プローブTの検出光路に対向する状態になる。
【0026】
押し子21の尻部にはキャップ22が差し込まれて閉塞されており、軸方向に垂直な段差面22Aが形成されている。この段差面22Aを利用して押し子21の後退移動をロックするロック機構71が構成されている。
筐体本体5側にモーター73が固定されており、このモーター73の回転により、ボールネジ部75を介してナット77に連結された押しシャフト79が軸方向に進退移動するようになっており、この押しシャフト79が押し子21側に進行すると上記した段差面22Aに当たり、押し子21をシリンジ15内に押し戻す。そこでモーター73が停止すれば、押し子21はシリンジ15内の所定の待機位置でロックされた状態となる。そして、押しシャフト79を後退させれば、押し子21から離れてロックは解除される。
【0027】
図6は、点検機1の模式的電気構成図である。
この図に示すように、メイン基板にメモリ等と共に実装されたマイクロコンピュータのCPU81が中心となって全体を制御しており、内蔵のバッテリー83から電源供給されるようになっており、電源スイッチ85のONにより起動を開始すると、光検出部53と、閉塞圧検出部61からは検出信号を受け取り、疑似滴下作成部65のフィルター板67と、ロック機構71のモーター73の回転駆動を制御すると共に、送液流量や閉塞圧を算出しその結果をLCD(表示部)87に表示するようになっている。このLCD87は筺体本体5の上面に設けられている。
【0028】
CPU81には、更に、無線通信部(Bluetooth(登録商標))89、USBコネクタ91が接続されており、外部のコンピュータからメモリへのデータの書込み、変更などが可能となっている。すなわち、シリンジ15の内径など送液流量や閉塞圧の算出に必要なデータの変更が可能となっている。
更に、警報ブザー93も接続されており、異常に高い閉塞圧を検出したような場合には即座に報知することで、輸液ポンプPの故障を阻止できるようになっている。
【0029】
点検機1は上記したように構成されており、図1に示すようにセットして、起動させれば、疑似信号を輸液ポンプPが受け取ってポンプ動作を開始し、液体Wをシリンジ15内に送り出すので、計測軸49と共に押し子21が後退移動し、その状態の光検出部53や閉塞圧検出部61による検出によりLCD87に輸液ポンプPの動作状態を示す流量や閉塞圧が遂次表示される。従って、この表示結果から、輸液ポンプPの動作状態を確認点検できる。上記したように、押し子21の移動量は液体Wの流量に正確に反映されるので、流量や閉塞圧のデータは信頼性の高いものとなっている。
また、計測に使用した液体Wは垂れ流しではなく、シリンジ15に溜められるので排水設備の準備は不要となっている。
【0030】
確認点検作業が終了した後は、モーター73を駆動させて押しシャフト79で押し子21を押し戻せば、初期位置まで戻り、そこでロックされる。なお、厳密に言えば押し子21の進行方向の移動はフリー状態になっている。
【0031】
図7は本発明の第2の実施の形態に係る点検機95を示す。
この点検機95は、第1の実施の形態に係る点検機1とほぼ同様の構成になっており、その部分は同じ符号を付すことで説明を省略し、明らかに異なる部分についてのみ説明する。
点検機95は簡易タイプになっており、先ず、輸液バッグBを収容するケースは設けられていない。
また、ロック機構97がメカニカルに構成されて手動によるロック及び解除操作が可能になっている。すなわち、押しシャフト99の基端にはプレート状のロック操作部101が連結されており、このロック操作部101側が筺体本体5から外方に出ている。図8に示すように、押しシャフト99の先端が計測軸49に同軸状に突き当たるように配置されている。押しシャフト99の外周面には環状の係止溝103とフランジ状の当て面105が形成されている。
【0032】
押しシャフト99は、ロック片107のロック孔109に通されている。このロック片107は「く」の字状に曲げられており、垂直部分に上記したロック孔109が形成されており、水平部分は解除操作部111として筺体本体5の上面開口から上方に突き出ている。
ロック片107はバネにより弾性的に矢印に示す上方に付勢されているが、フリー状態では、フリー保持ピン113の矢印に示す水平方向の圧接力に負けてロック片107は下げられて低い高さ位置で一定になっており、黒矢印に示すように、押しシャフト99が計測軸49を押すときにロック孔109内をスムーズに通ることができる。押しシャフト99が移動してロック手前にくると、矢印に示すように、押しシャフト99の当て面105がフリー保持ピン113に当たる。そのまま更に移動させると、フリー保持ピン113が矢印に示すように押されて圧接状態が解除され、ロック片107は矢印に示す付勢力だけが作用することになり、上昇してロック孔109に係止溝103が嵌り込み係止されてロック状態となる。このロック状態は、解除操作部111を矢印に示すように押下げれば、ロック片107が下げられてロック孔109から係止溝103が外れるので、押しシャフト99を黒矢印に示すように後退させれば、当て面105も後退してフリー保持ピン113の圧接力が再び作用するようになり、フリー状態に戻る。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、実施の形態では、滴下数制御方式の輸液ポンプが点検対象になっているが、流量制御方式の輸液ポンプも点検対象にできるのはもとよりである。
【符号の説明】
【0034】
1…点検機(第1の実施の形態)
3…ケース 5…筺体本体 7…シリンジセット部 9…ベッド凹部
11…ガードパイプ 13…係止凹部 15…シリンジ 17…連通孔
19…チューブ接続部 21…押し子 22…キャップ 22A…段差面
23…先部 25、27…中継部 29…後部
31…環状凹部 33…先端面 35…角部 37…シールリング
39…外底面 41…外壁部 43…内壁部 45…隙間
47…計測部 49…計測軸 51…キャップ 53…光検出部
55…反射基板 57…スケール 59…スケールベース 61…閉塞圧検出部
63…起歪体 65…疑似滴化作成部 67…フィルター板
69…ガイド部 71…ロック機構 73…モーター
75…ボールネジ部 77…ナット 79…押しシャフト 81…CPU
83…バッテリー 85…電源スイッチ 87…LCD(表示部)
89…無線通信部 91…USBコネクタ 93…警報ブザー
95…点検機(第2の実施の形態)
97…ロック機構 99…押しシャフト 101…ロック操作部
103…係止溝 105…当て面 107…ロック片 109…ロック孔
111…解除操作部 113…フリー保持ピン
P…輸液ポンプ C…チューブ B…輸液バッグ T…点滴プローブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8