特許第6841622号(P6841622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841622
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
   G01N35/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-172729(P2016-172729)
(22)【出願日】2016年9月5日
(65)【公開番号】特開2018-40578(P2018-40578A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】藤原 貴文
(72)【発明者】
【氏名】吉村 高志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌造
(72)【発明者】
【氏名】金原 健
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−134484(JP,A)
【文献】 特開平11−103944(JP,A)
【文献】 特開平08−262030(JP,A)
【文献】 特開2014−006140(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0223063(US,A1)
【文献】 特開2012−194072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00〜35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面を有する試薬庫と、
前記試薬庫内を冷却する冷却機構と、
長手形状を有するワイパと、
前記ワイパを支持して前記試薬庫の前記天井面に当該試薬庫の内側から当接させる支持部と、
前記支持部に固定され、前記支持部を回転軸周りに回動させて前記ワイパを前記天井面に沿って摺動させる駆動部とを具備する、自動分析装置。
【請求項2】
前記ワイパは、前記天井面に付着している水を拭き取るブレードを有する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記ブレードは、前記ワイパの長手方向に規則的に配列される複数の板状部材である、請求項2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記ワイパは、前記拭き取られた水を受ける、当該ワイパの前記長手方向に沿う樋状の溝を備え、
前記複数のブレードは、前記拭き取られた水が前記ワイパの移動に伴って前記溝へとガイドされるように配列される、請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記ワイパは、前記溝へとガイドされた水を前記試薬庫の外にガイドする流路を備える、請求項4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
さらに、バキュームポンプと、
前記流路と前記バキュームポンプとの間のラインを開閉する弁とを具備する、請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記自動分析装置が待機モードのときに前記ワイパを動かす、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記回転軸と軸を合せて回転駆動されるシャフトを備え、
前記支持部は、前記シャフトに固定されて前記ワイパを支持するジョイントを有する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記試薬庫内で試薬ボトルを搭載して前記回転軸周りに回転駆動される載置部を備え、
前記支持部は、
前記載置部と連動する台座と、
前記載置部の駆動時に前記台座から伸長して前記ワイパを前記天井面に当接させる伸縮部とを備える、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記台座は、前記試薬ボトルと共通の立体形状を有する、請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記天井面は、前記回転軸を中心とし前記試薬庫の外側から内側に向かって凹むすり鉢状の形状を有し、
前記ワイパは、前記すり鉢状の形状のスロープ部分に沿って、前記天井面に当接する、請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記天井面は、前記試薬庫の蓋の底面である、請求項1に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医療用の自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、患者から採取された試料と、当該患者の検査項目としてオーダされた各検査項目毎に対応する試薬とを混合して反応液を生成し、その反応液の反応状態を測定し、試料に含まれている各種成分や試料の性質等を分析する。これら一連のプロセスは、自動分析装置によって自動的に実行される。反応液の測定によって、試料中の各種成分の濃度や、酵素活性などを示す様々な分析データが得られる。
試料と混合される試薬は、検査項目ごとに決められ、それぞれ個別のボトルに収容されている。各試薬ボトルは、自動分析装置の試薬庫に保持される。
【0003】
試薬庫は、その中に収容している試薬を冷やすために、冷却機構を備える。試薬庫の冷却機構は、試薬だけではなく、試薬庫の内の湿った空気も冷やす。そのため、空気中に含まれていた水蒸気の一部は、凝結し、凝集して水滴と成る。このような現象は、結露と呼ばれる。結露は、試薬庫内にカビを発生させたりしてしまう怖れがある。そこで、試薬庫の内周壁に結露で付着した水を拭き取る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−006140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、提案されている技術は、試薬庫の天井面に結露で水が付着することを考慮していない。天井面に付着した水は、やがて天井面から滴り落ちる。
【0006】
通常、試薬ボトルは、試薬の吸引が迅速に円滑に行われるように、開栓された状態で試薬庫内に収容されている。したがって、試薬庫の天井面から滴り落ちた水が試薬吸引口から試薬ボトル内に進入してしまう怖れがある。このように試薬ボトル内に水が滴り落ちてしまうと、ボトル内の試薬が水で薄まってしまい、その濃度が変わってしまう。
【0007】
また、試薬ボトルの試薬吸引口からは、試薬表面から蒸発した気化ガスが立ち昇り、試薬庫内の天井付近に試薬の成分を含んだ雰囲気が漂うことになる。したがって、試薬庫内の天井付近の雰囲気は、様々な異なった試薬の成分が混合したものとなる。このような雰囲気中に含まれている成分のうち、水溶性のものは、天井に付着した水に溶け込み、様々な成分が混ざり合った水溶液を試薬庫の天井面に生成する怖れがある。このような水溶液が試薬ボトル内に滴り落ちてしまうと、その試薬ボトル内の試薬を汚染してしまう。
【0008】
以上のような、結露に起因した予期せぬ水の試薬ボトル内への進入は、装置の測定結果に不具合を招いてしまうが、その原因としては特定がされにくい。
【0009】
したがって、試薬庫内の天井面に付着した水は、天井面から滴り落ちる前に対処することが望まれている。
目的は、試薬庫内の天井面に付着した水の天井面からの滴り落ちを防止可能な自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、自動分析装置は、天井面を有する試薬庫と、長手形状を有するワイパと、支持部と、駆動部とを具備する。支持部は、ワイパを支持して試薬庫の天井面に当該試薬庫の内側から当接させる。駆動部は、支持部を回転軸周りに回動させてワイパを天井面に沿って摺動させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係わる自動分析装置の一例を示す外観図である。
図2図2は、一端に試薬プローブ8aを有する試薬アーム7a、第1試薬庫6、反応ディスク2の一部を含む領域を上から見た図である。
図3図3は、一端に試薬プローブ8bを有する試薬アーム7b、第2試薬庫9、反応ディスク2の一部を含む領域を上から見た図である。
図4図4は、試薬ボトル14の一例を示す外観図である。
図5図5は、第1試薬庫6と蓋13aとを簡略化して示した外観図である。
図6図6は、図5に示される蓋13aと第1試薬庫6とを含むA−A断面図である。
図7図7は、ワイパ17の外観を示す斜視図である。
図8図8は、ワイパ17を円周側から見た外観図である。
図9図9は、ワイパ17の駆動方向と水流との関係の一例を示す図である。
図10図10は、図9に示したワイパ17のB−B断面図である。
図11図11は、図9に示したワイパ17を短手方向に切断した断面図である。
図12図12は、第2の実施形態に係わる自動分析装置におけるワイパ17の支持機構の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係わる自動分析装置の一例を示す外観図である。図1に示される自動分析装置1は、反応ディスク2、サンプルディスク3、サンプルアーム4、サンプルプローブ5、第1試薬庫6、試薬アーム7a、試薬アーム7b、試薬プローブ8a、試薬プローブ8b、及び第2試薬庫9を備える。なお、第2試薬庫9は蓋13bの下に位置しており、図1においては図示されていない。
【0013】
図1において、反応ディスク2は複数の反応管10を保持する。複数の反応管10は、反応ディスク2において環状に配列される。反応ディスク2は回動と一時停止とを交互に繰り返す。
【0014】
反応ディスク2の環の例えば内側に、第1試薬庫6が配置される。第1試薬庫6は、試薬ボトルラック11を有する。試薬ボトルラック11は、円環状に配列される複数の試薬ボトル12を収容する。第1試薬庫6は、冷却機構などで冷やされ、冷気が逃げないように通常、蓋13aで閉じられている。これにより、試薬ボトル12内の試薬を適温に保つことができる。ここで、第1試薬庫6は、長手形状のワイパ17を用いて、蓋13aの第1試薬庫6の天井面に付着した水滴を拭き集めるワイパ機構を有する。このワイパ機構については、後で詳しく説明する。
【0015】
サンプルディスク3は、例えば反応ディスク2の近傍に配置される。サンプルディスク3は、それぞれ試料を収容する複数の試料容器を円環状に保持する。サンプルディスク3が回動することで、次に吸引すべき試料を保持した試料容器が順次、試料吸引位置に移動される。
【0016】
サンプルアーム4が、反応ディスク2とサンプルディスク3との間に配置される。サンプルアーム4は、その一端にサンプルプローブ5を有する。サンプルアーム4は、サンプルプローブ5を上下動可能に支持する。
【0017】
例えば反応ディスク2の近傍に、第2試薬庫9が配置される。第2試薬庫9は、円筒形状の空間内に複数の試薬ボトルを収容する。第2試薬庫9は冷却機構などで冷やされ、冷気が逃げないように通常、蓋13bで閉じられている。これにより試薬ボトル内の試薬を適温に保つことができる。なお、第2試薬庫9も、第1試薬庫6と同様に、後述するワイパ機構を有する。
【0018】
第1試薬庫6の試薬ボトル12内の試薬は、検査項目に応じて第2試薬庫9の試薬ボトル内の試薬と組み合わせて用いられる。もちろん、各試薬ボトル内の試薬は単独で用いられても良いし、同じ試薬庫に収納される異なる試薬ボトル内の試薬を組み合わせて用いることも可能である。
【0019】
試薬アーム7a、7bが、反応ディスク2と第2試薬庫9との間に配置される。試薬アーム7a、7bは、それぞれその一端に試薬プローブ8a、8bを備える。試薬アーム7a、7bは、試薬プローブ8a、8bを上下動可能に支持する。また試薬アーム7a、7bは、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に試薬プローブ8a、8bを支持する。
【0020】
図2は、一端に試薬プローブ8aを有する試薬アーム7a、第1試薬庫6、反応ディスク2の一部を含む領域を上から見た図であり、試薬アーム7aの回動軌跡を説明するための図である。図2に示されるように、試薬アーム7aの回動軌跡は、第1試薬庫6上の試薬吸引位置P1(すなわち、蓋13aに設けられた穴130a)と反応ディスク2上の試薬吐出位置P2とを通過する。
【0021】
図3は、一端に試薬プローブ8bを有する試薬アーム7b、第2試薬庫9、反応ディスク2の一部を含む領域を上から見た図であり、試薬アーム7bの回動軌跡を説明するための図である。図3に示されるように、試薬アーム7bの回動軌跡は、第2試薬庫9上の試薬吸引位置P1(すなわち、蓋13bに設けられた穴130b)と反応ディスク2上の試薬吐出位置P2とを通過する。
【0022】
図4は、第1試薬庫6、第2試薬庫9内のボトルラックに載置される試薬ボトル14の一例を示す外観図である。試薬ボトル14の立体形状は普通、扇形(或いはくさび形)である。複数の試薬ボトル14が、扇形の中心角部分(或いはくさび状の先端部分)を中心に向けて輪を描くように、第1試薬庫6内、第2試薬庫9内に規則的に並べて載置される。各試薬ボトル14の鉛直上面には試薬吸引口15が設けられる。第1試薬庫6、第2試薬庫9のそれぞれにおいて、試薬プローブ8a、8bによる吸引タイミングに合わせて、吸引対象となる試薬を格納する試薬ボトル14の試薬吸引口15が穴130a、穴130bの位置に来るように、各試薬庫内のボトルラックの回動が制御される。
【0023】
なお、試薬ボトル14の背面にバーコードラベル16が貼付されても良い。バーコードラベル16は、例えば試薬識別情報、試薬製造年月日、使用期限、試薬ボトル種類などの試薬情報を含むことができる。バーコードラベルに代えてICチップやRFIDタグなどを用いてもよい。
【0024】
図5は、第1試薬庫6と蓋13aとを簡略化して示した外観図である。同図を参照しながら、第1試薬庫6、蓋13aの構成について説明するが、第2試薬庫9、蓋13bの構成についても同様である。
【0025】
図5に示されるように、蓋13aは、持ち手130が設けられた上面131と、すり鉢形状の底面132とを有する。すなわち、図5の点線で示されるように、第1試薬庫6はいわばドーナツのような円筒形状である。蓋13aは、円筒形状の第1試薬庫6の軸を中心とし、第1試薬庫6の外周から内周に向かって、第1試薬庫6の底面側に突出する形状を有する。
【0026】
蓋13aの底面が、第1試薬庫6の天井面である。この天井面には結露による水が付着しやすい。蓋13aをすり鉢状にすることで、付着した水は天井面のスロープ状の傾斜に沿って蓋13の中心に向かって流れる。
【0027】
なお、蓋13aの上面131は、部分的に開閉可能な分割構造であってもよい。このような蓋13aを用いれば、試薬ボトル14の交換時に逃げる冷気を最小限にできる。
【0028】
(ワイパ機構)
次に、本実施形態に係る自動分析装置が有するワイパ機構について説明する。当該機構は、試薬庫内の天井面(すなわち蓋の底面)に付着した水滴を、ワイパを用いて所定のタイミングで拭き取るためのものである。なお、以下においては、第1試薬庫6に設けられるワイパ機構を例として説明するが、第2試薬庫9に設けられるワイパ機構についても同様である。
【0029】
図6は、図5に示される蓋13aと第1試薬庫6とを含むA−A断面図である。図6において、ワイパ17は、ジョイント18により支えられ、第1試薬庫6の天井面(蓋13aの底面)に、第1試薬庫6の内側から当接する。ジョイント18は天井面のスロープに接触した状態で回転軸R周りに回転して、天井面に付着した水滴を拭き集める。
【0030】
ジョイント18は、筒状の中空シャフト19に接続される。ジョイント18は、ワイパ17で集められた水を導く流路を備える。中空シャフト19はその外側面に形成されるギヤ20を備える。ギヤ20は、ベース21に取り付けられたモータ22の駆動軸に、ベルト23およびギヤ24を介して連結される。これによりモータ22が駆動すると中空シャフト19が軸周りに回転し、ジョイント18とこのジョイント18に接続されたワイパ17が、中空シャフト19と軸を合せて回動する。回動の向きは、回転軸Rに対して右回り、左回りのいずれでもよい。
【0031】
第1の実施形態において、モータ22は、自動分析装置1が待機モードのときに回転駆動し、検査モードであるときには停止する。よってワイパ17は、自動分析装置1が待機モードのときに動き、検査モードにおいては例えば一定の位置(ホームポジション)で停止した状態を保つ。このようにすることで、検査中にワイパ17と試薬プローブ8とが干渉することを防止できる。
【0032】
実施形態において待機モードとは、装置の一部機能を休止させるモードであり、起動から安定状態に至るまでの期間、あるいは検査オーダの入力を待っているときなどに、自動分析装置は待機モードに遷移する。どのような状態において待機モードに移行するかは、ユーザにより設定することが可能である。
【0033】
検査オーダが与えられると自動分析装置は検査モードに遷移し、各種のユニットが動作を開始する。検査モードにおいては反応ディスク2やサンプルディスク3が回転を始め、また、サンプルアーム4、サンプルプローブ5、試薬アーム7a、7bおよび試薬プローブ8a、8bが頻繁に動くようになる。
【0034】
検査モードにおいてワイパ17を動かすと、ワイパ17と試薬プローブ8aとが接触する怖れがある。試薬庫内の天井面に水が常時付着しているわけではないので、待機モードで定期的に拭き取ることで十分な効果を得ることができる。
【0035】
中空シャフト19の内部に、中空シャフト19と軸を合せてチューブ25が設けられる。チューブ25の一方端はジョイント18に接続されてワイパ17からの水流を受ける。チューブ25の他方端はジョイント付きベアリング26に接続される。ベアリング26はロート27と回動自在に連結される。これにより、チューブ25は中空シャフト19の回転によってねじれることなく、ワイパ17からの水流をロート27にまで導く。
【0036】
ロート27は、さらにチューブ28を介して電磁弁29に接続される。電磁弁29は、チューブ28とバキュームポンプ30との間のラインを開閉する。すなわち、電磁弁29が開くと、ワイパ17からバキュームポンプ30に至る水の流路が接続されて、真空引きによる吸引力がワイパ17にもたらされる。これにより水滴がバキュームポンプ30で吸引され、排水ラインに排出される。
【0037】
図7(a)および図7(b)は、ワイパ17の外観を示す斜視図である。なお、各図において、中心側とは第1試薬庫6の中心(すなわち図6の回転軸R)側を意味し、円周心側とは第1試薬庫6の円周(すなわち図5、6の第1試薬庫6の側面)側を意味する。
【0038】
ワイパ17は、第1試薬庫6の天井面(すなわち、蓋13aのすり鉢状の底面)に付着している水を拭き取るための内部構造を備える。すなわちワイパ17は、本体31と、ワイパ17の長手方向に規則的に配列される複数のブレード32とを備える。各ブレード32は、長手方向に対して例えば45°の角度をつけて配列される。
【0039】
図8は、ワイパ17を円周側から見た外観図である。図8において、ワイパ17は、断面E字状の本体31と、この本体31の長手方向に沿って配列される複数のブレード32とを備える。本体31はワイパ17の長手方向に沿って溝状、あるいは樋状に成形され、底部33と、側壁34とを備える。側壁34は底部33から立ち上がって樋状の構造を形成し、ブレード32により拭き取られた水があふれ出ることを防止する。底部33は側壁34から溝中央に向かって傾斜しており、ブレード32で拭き取られた水が本体31の中央に向かうようになっている。
【0040】
ブレード32は例えば板状の硬質ゴムであり、本体31の側壁34よりも少しだけはみ出すように、底部33から延伸される。ワイパ17が第1試薬庫6天井面に当接するとき、ブレード32の1つ1つが第1試薬庫6の天井面に接触して水滴を拭き取る。
【0041】
図9は、ワイパ17の移動方向と水流との関係の一例を示す図である。ワイパ17は、図9に示される白抜き矢印のいずれの方向にも稼働できる。ワイパ17の長手方向に対してブレード32が斜めに取り付けられているので、ワイパ17が移動すると、拭き取られた水はワイパ17の溝中央方向へとガイドされる。ハッチングされた矢印は、ガイドされた水の流れる方向を示す。ワイパ17がいずれの方向に動いても、拭き取られた水滴はワイパ17の中央に導かれる。
【0042】
図10は、図9に示したワイパ17のB−B断面図である。図11は、図9に示したワイパ17を短手方向に沿って切断した断面図である。ワイパ17は、その長手軸方向に沿う管35を備える。管35は、例えばブレード32と同じピッチで穿たれた複数の取水口36を備える。そして、底部33と側壁34とで形成される溝の中央へとガイドされた水は、取水口36から吸引されて管35を通り、ワイパ17の外部へと導かれる。管35は図6に示されるジョイント18に接続され、さらに、ジョイント18からチューブ25、ベアリング26、ロート27、チューブ28、電磁弁29を介してバキュームポンプ30に至るラインが形成される。この一連のラインにより、吸引された水滴はワイパ17から第1試薬庫6の外に排除される。
【0043】
上記構成において、蓋13aの閉じられた状態でワイパ17が第1試薬庫6の天井面に当接している。この状態から待機モードになると、モータ22の駆動力がギヤ24およびベルト23を介してギヤ20に伝えられる。これにより中空シャフト19が回転軸R周りに回動し、第1試薬庫6の天井面に付着していた水はワイパ17により拭き取られる。
【0044】
拭き取られた水はワイパ17からジョイント18、中空シャフト19を伝ってチューブ25を通り、ベアリング26を介してロート27で受けられる。一方、電磁弁29は開かれ、バキュームポンプ30の吸引力がチューブ28に達する。そうすると、拭き取られた水はロート27から吸引されて排水ラインに排出される。
【0045】
以上述べたように第1の実施形態では、試薬庫の内部から天井面(すなわち、試薬庫の蓋の底面)にワイパを当接させ、当該天井面に付着していた水を、ワイパを回転駆動させて拭き取る。ワイパは、試薬庫の蓋が閉まっている状態では当該蓋の底面に常時接触している。ただし自動分析装置の待機モードにおいてのみ、ワイパを動かすようにする。これによりワイパ17の劣化を最小限に抑えることができ、継続的な拭き取り効果を期待することができる。
【0046】
既存の技術によれば試薬庫の側壁に付着していた水を拭き取ることはできるが、天井面に付着していた水を除去できないので、天井面から水が滴り落ち、試薬ボトル内に進入する怖れがある。また、拭き取り機構が常時稼働するのでワイパが早期に劣化する。さらに、ワイパ自身の弾性により拭き取った水が弾き飛ばされる怖れもあった。
【0047】
これに対し第1の実施形態によれば、試薬庫の天井面に付着した水を確実に除去することができる。また、ワイパ17は水を拭き取るブレード32と、拭き取られた水が溢れることを防止する側壁34とを有し、拭き取られた水はワイパ17の底部33の傾斜に沿って中央軸に導かれる。さらに、ワイパ17の軸に沿って、随所に穴の開いた管35が設けられており、ブレード32に拭き取られた水は管35を通ってチューブ25に導かれる。
【0048】
チューブ25は電磁弁29を介してバキュームポンプ30に接続される(図6)。バキュームポンプ30には電磁弁29によるライン分岐が設けられ、自動分析装置1の検査モードにおいてはチューブ25とバキュームポンプ30とを結ぶラインは遮断されている。
【0049】
一方、待機モードにおいてはチューブ25とバキュームポンプ30とを結ぶラインが接続され、ワイパ17の駆動開始とともにバキュームポンプ30の吸引動作が開始される。そして、待機モードが終了してワイパ17が停止すると、電磁弁29のライン切り替えを元に戻すようにした。
【0050】
以上のような構成であるから、第1の実施形態によれば、ワイパ17で拭き取った水を飛び散らせず、確実に排水することができる。従って試薬庫内の天井面からの水の滴り落ちを確実に防止することが可能になる。
【0051】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態に係わる自動分析装置1におけるワイパ17の支持機構の一例を示す図である。この実施形態では、ワイパ17は台座37と、この台座37から延びるシャフト38により支持される。台座37は試薬ボトル14(図3)と共通の立体形状を有し、第1試薬庫6の試薬ボトルラック11に、試薬ボトル14と混在させて配置することができる。
【0052】
シャフト38は例えばソレノイドなどの、伸縮自在な機構によりワイパ17を支持する。通常モード(検査モード)においてシャフト38は縮んでいて、ワイパ17は蓋13aの底面から離れている。一方、自動分析装置1が待機モードに入ったことが検知されるとシャフト38が台座37から延び、ワイパ17が天井面に当接する。そして、第1試薬庫6の回転に合わせてワイパ17も回転し、蓋13aの底面に付着した水が拭き取られる。
【0053】
このように第2の実施形態では、第1試薬庫6内の専用ラック(または試薬ラック)にソレノイドなどを用いたシャフト38を設け、ワイパ17をシャフト38で支持する。そしてソレノイドをON/OFFしてシャフト38を上下に動かし、ソレノイドをONした時にのみ、ワイパ17が第1試薬庫6の天井面に当接するようにした。
【0054】
上記構成であるから、第1試薬庫6内のそれ自体の回転動作に合わせてワイパ17が動き、天井面に付着した水が拭き取られる。これにより、ワイパ17を回転させるための機構を設ける必要が無いので、構成を簡略化することができる。また第2の実施形態によっても、ワイパ17は必要な時にだけ第1試薬庫6の天井面に接触するので、劣化を最小限に抑えられる。
【0055】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えばワイパ17のブレード32の取り付け角度は45°に限定されるものではない。要するに、拭き取られた水がワイパ17の移動に伴ってワイパ17の溝へとガイドされるように、各ブレード32が配列されていればよい。
【0056】
また実施形態では、蓋13a、蓋13bはすり鉢の底面を有する構成であるとした。しかしながら、当該例に拘泥されず、蓋13a、蓋13bの底面を平面とし、当該平面としての底面(すなわち第1試薬庫6、第2試薬庫9の天井面)にワイパ17を当接させ、上記各実施形態に係るワイパ機構によって拭き取る構成としても良い。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…自動分析装置、2…反応ディスク、3…サンプルディスク、4…サンプルアーム、5…サンプルプローブ、6…試薬庫、7a…試薬アーム、7b…試薬アーム、8…試薬プローブ、8a…試薬プローブ、8b…試薬プローブ、9…試薬庫、10…反応管、11…試薬ボトルラック、12…試薬ボトル、13…蓋、13a…蓋、13b…蓋、14…試薬ボトル、15…試薬吸引口、16…バーコードラベル、17…ワイパ、18…ジョイント、19…中空シャフト、20…ギヤ、21…ベース、22…モータ、23…ベルト、24…ギヤ、25…チューブ、26…ジョイント付きベアリング、27…ロート、28…チューブ、29…電磁弁、30…バキュームポンプ、31…本体、32…ブレード、33…底部、34…側壁、35…管、36…取水口、37…台座、38…シャフト、130…持ち手、130a…穴、130b…穴、131…上面、132…底面、P1…試薬吸引位置、P2…試薬吐出位置。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12