(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は本実施形態により限定されるものではない。
【0018】
[1.構成]
本実施形態に係る会計処理装置を含む会計処理システムの構成の一例について、
図1を参照して説明する。
図1は、会計処理装置を含む会計処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
図1に示す会計処理システム1000は、情報処理装置としての会計処理装置100と、サーバ200と、会計処理装置100及びサーバ200を通信可能に接続するネットワーク300とを含んでいる。
【0020】
会計処理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータであり、複数の事業主からなる共同事業体が行う共同事業についての会計処理を行うための情報処理装置である。この会計処理装置100は、例えば、会計部門又は経理部門といった事業者において精算業務等の会計処理を行う部署に1台設置されている。なお、会計処理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置に限らず、市販されているノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置であってもよい。また、会計処理装置100は、会計処理システム1000内において複数台設置されていてもよく、複数台の会計処理装置100の間で同期をとることで1台の会計処理装置100として機能してもよい。
【0021】
会計処理装置100は、制御部102と、通信インターフェース部104と、記憶部106と、入出力インターフェース部108とを備えている。会計処理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0022】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置及び専用線等の有線又は無線の通信回線を介して、会計処理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、会計処理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。したがって、通信インターフェース部104は、他の部署若しくは共同事業体を構成する他の事業主に備え付けの情報処理装置からの入力情報、入金元(例えば共同事業による成果物の契約者)又は支払先からの入力情報等を、ネットワーク300又はネットワーク300及びサーバ200を介して受け付けることが可能に構成されているとともに、所定の情報処理装置や、他の事業主、入金元、又は、支払先に対して所定の情報を出力することが可能に構成されている。
【0023】
記憶部106には、各種のデータベース、テーブル、及びファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラム(本発明のプログラムを含む)が記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び光ディスク等を用いることができる。また、この記憶部106には、本発明のプログラムを実施するために用いられる各種のデータが書き出し/読み出し可能に格納されている。
【0024】
入出力インターフェース部108には、入力装置112及び出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。
【0025】
制御部102は、会計処理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0026】
さらに
図1を参照しながら、記憶部106及び制御部102の構成について詳述する。
【0027】
記憶部106は、
図1に示されるように、共同事業情報記憶領域106aと、金額情報記憶領域106bと、持分情報記憶領域106cと、単位会計データ記憶領域106dと、集計データ記憶領域106eと、仕訳データ記憶領域106fとを含む。共同事業情報記憶領域106aと、金額情報記憶領域106bと、持分情報記憶領域106cとは、互いに統合されていてもよい。
【0028】
共同事業情報記憶領域106aは、共同事業に関する共同事業情報を記憶するための領域である。共同事業情報には、共同事業を特定するための情報や、共同事業を行う共同事業体に関する情報、共同事業体を構成する事業体に関する情報が含まれる。金額情報記憶領域106bは、金額情報を記憶するための領域である。金額情報には、少なくとも、共同事業を構成する共同事業を構成する複数の単位事業の各々に関する会計金額に関する情報が含まれ、さらに、共同事業に関する会計金額に関する情報等が含まれていてもよい。ここで、会計金額とは、預り金、立替金、並びに、預り金及び立替金の相殺金額(精算額)をいう。持分情報記憶領域106cは、持分情報を記憶するための領域である。持分情報は、複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主の持分に関する持分情報を含む。本実施形態では、持分は、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に設定可能である。
【0029】
単位会計データ記憶領域106dは、単位会計データを記憶するための領域である。単位会計データとは、複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主についての積上げ計算可能な単位会計データをいう。単位会計データは、会計処理装置100によって作成され、単位会計データ記憶領域106dに積上げ計算可能に保持される。
【0030】
集計データ記憶領域106eは、集計データを記憶するための領域である。集計データとは、複数の会計データを集計することによって得られるデータをいい、本実施形態では、単位会計データを集計することによって得られるデータである。集計データは、会計処理装置100によって作成され、集計データ記憶領域106eに出力可能に保持される。
【0031】
仕訳データ記憶領域106fは、仕訳データを記憶するための領域である。仕訳データとは、会計処理上の仕訳に関するデータをいい、税務会計上の仕訳データであってもよいし、管理会計上の仕訳データであってもよい。本実施形態では、集計データに基づいて、会計処理装置100によって作成され、仕訳データ記憶領域106fに出力可能に保持される。
【0032】
制御部102は、
図1に示されるように、複数のモジュールを備えている。
図1に示す例では、制御部102は、持分設定部102aと、単位会計データ作成部102bと、集計部102cと、仕訳データ作成部102dとを備えている。
【0033】
持分設定部102aは、複数の事業主の各々の持分を単位事業ごとに設定可能な持分設定手段として機能するモジュールである。持分設定部102aによって設定された持分に関する情報は、持分情報記憶領域106cに読み出し可能に保持される。
【0034】
単位会計データ作成部102bは、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に関する会計金額に関する金額情報に基づいて、複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主についての積上げ計算可能な単位会計データを作成する単位会計データ作成手段として機能するモジュールである。また、単位会計データ作成部102bは、本実施形態では、金額情報と、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に設定可能な複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主の持分に関する持分情報とを用いて、単位会計データを作成する機能を有し、好ましくは、金額情報と持分情報とを用いることに代えて、金額情報と、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に設定可能な複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主の負担金額に関する負担金額情報とを用いて、単位会計データを作成する機能も有する。単位会計データ作成部102bによって作成された単位会計データは、単位会計データ記憶領域106dに読み出し可能に保持される。
【0035】
集計部102cは、単位会計データを集計して集計データを取得する集計手段として機能するモジュールであり、好ましくは、会計金額情報が、預り金に関する情報及び立替金に関する情報の双方を含む場合、預り金と立替金を相殺する機能を有する。集計部102cによって取得された集計データは、集計データ記憶領域106eに読み出し可能に保持される。仕訳データ作成部102dは、集計データに基づき仕訳データを作成する仕訳データ作成手段として機能するモジュールである。仕訳データ作成部102dによって作成された仕訳データは、仕訳データ記憶領域106fに読み出し可能に保持される。
【0036】
[2.処理]
次に、
図1に示す会計処理システム1000において実行される会計処理方法を例示的に説明する。
【0037】
図2は、
図1の会計処理システム1000において、会計処理装置100が実行する会計処理方法の処理手順を示すフローチャートである。この
図2に示す処理は、概略的には、複数の事業主からなる共同事業体(JV:ジョイントベンチャー)が行う共同事業についての会計処理を行うに際し、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に関する会計金額に関する金額情報に基づいて、複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主(例えば自社)についての積上げ計算可能な単位会計データを作成するというものであり、本処理の大部分は、会計処理装置100の制御部102において実行される。以下では、共同事業がマンションプロジェクトであり、共同事業体の幹事事業主が自社分及び共同事業主の会計処理を行う場合を例に挙げながら説明する。
【0038】
図2において、まず、ステップS210では、会計処理装置100は、共同事業に関する共同事業情報(プロジェクト)の登録を受け付ける。共同事業情報には、自社が幹事事業主である旨、幹事事業主以外の他の共同事業主(マイナー)に関する情報、共同事業を特定するための情報(例えばプロジェクトコード)、及び、共同事業を構成する複数の単位事業の各々を特定するための情報等が含まれる。各共同事業主幹事事業主は、通常、共同事業で生じる立替金及び預り金の管理を行い、共同事業主との契約に応じて立替金及び預り金の精算を行う。ここで、共同事業の一例は、マンションの建設の受注から、マンション施工、さらにはマンション各戸の販売までを行うマンションプロジェクトである。単位事業とは、共同事業を構成する事業であればよく、単一の事業(例えばマンション各戸の販売事業や契約管理事業)であってもよいし、1群の事業(マンション用地の整備事業、マンション建設事業)であってもよい。単位事業は、例えば、共同事業に関する会計金額を任意のタイミングで精算しやすいように、共同事業の工期等に応じて、又は、関与する共同事業主の数等に応じて、任意に設定することが可能である。
【0039】
さらに、共同事業情報には、各共同事業主の持分に関する持分情報又は事業主の負担金額に関する負担金額情報も含まれる。本実施形態では、持分情報及び負担金額情報は、いずれも、複数の事業主の各々の持分又は負担金額を示す情報として単位事業ごとに設定される。持分情報は、各共同事業主の単位事業ごとの持分の割合又はその百分率を示す持分比率として登録されてもよい。1つの単位事業に対して登録した持分情報又は負担金額情報を他の単位事業にも登録されるように構成されていることが好ましく、持分情報又は負担金額情報が複数の単位事業にわたって共通する場合におけるユーザの登録に要する手間を軽減することができる。また、共同事業情報には、精算時に、預り金と立替金を相殺するかどうかに関する相殺情報も含まれていることが好ましく、この場合、相殺情報は、単位事業ごとに又は事業主ごとに設定可能である。これに代えて、相殺情報は、共同事業情報に含まれていなくてもよく、この場合には、集計又は精算時に相殺するかどうかの設定を受け付けるようにしてもよい。
【0040】
次に、ステップS220では、共同事業又は単位事業につき、預り金又は立替金が発生したかどうかを判別する。このステップS220の判別は、具体的には、ステップS210で登録された共同事業につき、入金入力又は支払入力が所定の表示画面を介して登録されるかどうかを判別する。預り金又は立替金が発生するのを待機し、預り金又は立替金が発生したらステップS230の処理に進む。
【0041】
続くステップS230では、
図3を用いて後述する単位会計データ作成処理を行う。これにより、単位事業ごとに単位会計データが作成される。この単位会計データは、後述するように持分情報又は負担金額情報が反映されたものであり、事業主の単位事業に関する会計金額を示す情報を含む。
【0042】
図3は、
図2のステップS230において実行される単位会計データ作成処理のサブルーチンに係る処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
図3において、まず、ステップS231では、ステップS220の判別の結果、預り金又は立替金が発生した単位事業を特定する。単位事業の特定は、入金入力若しくは支払入力がなされるときに起動される表示画面から、又は、入金入力若しくは支払入力がなされるときに入力される単位事業を識別するための識別情報(例えば単位事業コード)から、行うことが可能である。
【0044】
続くステップS232では、特定した単位事業につき、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に関する会計金額に関する金額情報として、入金情報又は支払情報を取得する。入金情報が示す入金金額(例えばマンション購入者の申込金)はステップS220で発生したと判断される預り金に該当し、支払情報が示す支払金額(例えば施工業者への支払額)はステップS220で発生したと判断される立替金に該当する。このステップS232では、入金情報又は支払情報に限らず、預り金又は立替金に該当する金額情報があれば取得される。
【0045】
さらに、ステップS233では、特定した単位事業につき、ステップS210で登録された共同事業情報に含まれる持分情報又は負担金額情報を取得する。ここで、持分情報が取得された場合は、持分情報が示す持分又は持分比率に応じて、少なくとも本処理の対象とする事業主の会計金額が算出され、必要に応じて、他の事業主の会計金額も算出してもよい。なお、取得された持分情報又は負担金額情報を手入力で変更又は修正することも可能であり、例えば、登録されている持分情報が示す持分を他の持分に変更することも可能であり、また、登録されている持分情報を負担金額情報に変更することも可能である。なお、手入力で変更又は修正を行った場合には、表示画面上の持分情報又は負担金額情報を非表示にするよう制御してもよいし、固定値である旨の情報を表示するようにしてもよい。
【0046】
そして、ステップS234では、特定した単位事業についての単位会計データを作成する。単位会計データとは、一事業主の単位事業の会計金額に関する情報を含むデータであり、持分情報又は負担金額情報が反映されたデータである。単位会計データには、必要に応じて、消費税等の税額計算結果も反映される。このようにして作成される単位会計データは、単位事業において生じるさまざまな入金又は支払を計上するための基礎となり、後述するように集計時には積上げ計算に用いられる。
【0047】
その後、ステップS235では、修正があるかどうかを判別する。修正は、単位会計データに対するものであってもよいし、持分情報又は負担金額情報に対するものであってもよい。修正がある場合には(ステップS235でYes)、ステップS233に戻って、ステップS233〜S234の処理を行うことにより、単位会計データの更新を行う。一方、修正がない場合には(ステップS235でNo)、単位会計データが確定したものとして本サブルーチンを完了し、
図2の処理に戻って、ステップS240の処理に進む。
【0048】
ステップS240では、他の預り金又は立替金があるかどうかを判別する。他の預り金又は立替金がある場合には(ステップS240でYes)、ステップS230に戻って、当該預り金又は立替金についての単位会計データの作成を行い、一方、他の預り金又は立替金がない場合には(ステップS240でNo)、ステップS250の処理に進む。
【0049】
次に、ステップS250では、単位会計データの集計処理が必要であるかどうかを判別する。このステップS250の判別は、具体的には、所定の画面を介して精算又は集計の旨の指示入力がなされるかどうかを判別する。ここで、精算は、例えば、月次で又は単位事業完了時点で行われる。集計処理が必要でない場合、例えば集計すべき単位会計データが1つしかない場合には(ステップS250でNo)、ステップS260をスキップしてステップS270の処理に進み、一方、集計処理が必要である場合には(ステップS250でYes)、ステップS260に進んで、相殺処理が必要であるかどうかを判別する。相殺処理が不要である場合には(ステップS260でNo)、ステップS270の処理に進み、一方、相殺処理が必要である場合には(ステップS260でYes)、ステップS290の処理に進む。
【0050】
ステップS270では、集計データの作成を個別に行う。具体的には、立替金に関する単位会計データを積上げ計算することにより、立替金の集計データを取得し、預り金に関する単位会計データを積み上げ計算することにより、預り金の集計データを取得する。これらのようにして作成された立替金の集計データ及び預り金の集計データは、各事業主の持分情報又は負担金額情報が反映されたものであるため、共同事業体の立替金及び預り金の精算に用いることができる。作成された集計データは、帳票データ、例えば精算書データ又は請求書データに用いられ、精算書若しくは精算報告書や請求書といった帳票を発行可能に所定の記憶媒体例えば記憶部106に保持される。好ましくは、集計データは、単位事業の会計金額に関する金額情報、すなわち共同事業体の会計金額総額をさらに含んでおり、これにより、一事業主の会計金額と全事業主の会計金額を対比可能にすることができる。また、好ましくは、集計データは、他の事業主の単位事業の会計金額に関する金額情報をさらに含んでおり、これにより、共同事業に関わる事業主の会計金額をリストアップすることができる。
【0051】
また、相殺処理が必要である場合には(ステップS260でYes)、立替金と預り金を相殺した相殺金額を算出して、これを相殺済み集計データとして作成する(ステップS280)。相殺済み集計データの算出に際し、立替金と預り金の相殺は、単位会計データごとに行ってもよいが、後述の仕訳データ作成の観点からは、立替金の集計データと預り金の集計データとを個別に作成した後に行うことが好ましい。集計すべき単位会計データが立替金に関する情報しかない場合又は預り金に関する情報しかない場合には相殺金額の算出はスキップ又は省略してもよい。相殺済み集計データは、相殺金額がプラスであるかマイナスであるかに応じて、共同事業体の立替金及び預り金の一方の精算に用いることができる。相殺済み集計データは、上記共同事業体の会計金額総額及び上記他の事業主の単位事業の会計金額に関する金額情報の一方又は双方をさらに含んでいることが好ましい。
【0052】
ステップS270又はステップS280で集計データが作成されたら、ステップS290に進む。ステップS290では、仕訳データの作成を行う。仕訳データは、財務会計上の仕訳に関するものであってもよいし、管理会計上の仕訳に関するものであってもよく、双方であってもよい。仕訳データの作成は、集計データに基づいて行われる。したがって、ステップS280で作成される相殺済み集計データは、相殺前の立替金の集計データと預り金の集計データを併せて含むことが好ましい。そして、本処理を完了する。
【0053】
以上詳細に説明したように、
図2及び
図3に示した会計処理方法に係る処理によれば、
複数の事業主からなる共同事業体が行う共同事業についての会計処理を行うに際し、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に関する会計金額に関する金額情報に基づいて(ステップS232)、複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主についての積上げ計算可能な単位会計データが作成される(ステップS234)。この際、持分情報が取得された場合は(ステップS233)、持分情報が示す持分又は持分比率に応じて、少なくとも本処理の対象とする事業主の会計金額が算出され、単位会計データに反映される(ステップS234)。このように、単位事業ごとに異なりうる持分情報を単位会計データに反映させることができるので、共同事業体における事業主間の精算業務等の会計処理に係るユーザの負荷を軽減することができる。また、単位会計データは積上げ計算可能であるので、集計に要する会計処理装置100の処理負荷を軽減することができ、もって、ユーザは、集計データを速やかに得ることができる。
【0054】
また、
図2及び
図3の処理によれば、共同事業情報の登録に際し(ステップS210)、複数の事業主の各々の持分を単位事業ごとに設定可能であり、また、変更可能である(ステップS233)ので、ユーザは、単位事業ごとに異なりうる持分情報を適切にかつ柔軟に管理することができる。
【0055】
さらに、
図2及び
図3の処理によれば、金額情報と持分情報とを用いることに代えて、金額情報と、共同事業を構成する複数の単位事業の各々に設定可能な複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主の負担金額に関する負担金額情報とを用いて、単位会計データを作成することも可能である。これにより、事業主間で単位事業ごとに異なりうる契約内容にも柔軟に対応することができる。
【0056】
また、
図2及び
図3の処理によれば、単位会計データを集計することにより集計データが取得されるので、共同事業体における事業主間の精算業務等の会計処理に係るユーザの負荷をさらに軽減することができる。
【0057】
また、
図2及び
図3の処理によれば、会計金額情報が預り金に関する情報及び立替金に関する情報の双方を含む場合、預り金と立替金を相殺した相殺済み集計データを取得可能に構成されており、好ましくは、集計データが、単位事業の会計金額に関する金額情報をさらに含んでいる。これにより、ユーザは、共同事業体の会計金額(総額)と自社の会計金額の差(総額との相殺に必要な金額)や割合を容易に把握することができる。また、集計データに、他の事業主の単位事業の会計金額に関する金額情報を含ませることにより、共同事業に関わる事業主の会計金額をリストアップすることができ、例えば幹事事業主である場合、他の共同事業主から負担金額の問い合わせにも速やかに応じることができる。
【0058】
さらに、
図2及び
図3の処理によれば、集計データに基づき仕訳データが作成される。これにより、共同事業体における事業主間の精算業務等の会計処理に係るユーザの負荷をさらに軽減することができる。特に、事業主が共同事業体の幹事事業主である場合、他の共同事業主へ発行する精算書類の数は膨大にのぼるため、仕訳データ作成に要する負荷が軽減されることのメリットは大きい。
【0059】
また、
図2及び
図3の処理によれば、預り金又は立替金が発生するたびに、単位会計データが作成される。したがって、ユーザにとっては入金入力又は支払入力を行うたびに、単位事業の進捗等も管理することができる。例えば、共同事業がマンションプロジェクトである場合、マンション施工時の各種の工事の進捗状況、マンション購入者からの入金状況、及び、マンションの販売状況も管理することができる。
【0060】
[3.具体例]
本実施形態の具体例について、
図4〜
図31を参照して説明する。
【0061】
本実施形態は、
図1に示したような会計処理装置100を用いて、複数の事業主からなる共同事業体が行う共同事業についての会計処理を行うに際し、共同事業を構成する単位事業に設定可能な、複数の事業主の各々の持分比率に関する持分比率情報を受け付け、受け付けた持分比率情報から取得した複数の事業主のうちの少なくとも一の事業主についての持分比率にしたがって、会計処理に必要な演算を行って、積上げ計算可能な会計データを作成するというものであり、さらに、予め設定された負担金額ありきでも会計データを作成することができるものでもある。また、これらのようにして作成された会計データから、会計データリストの作成や、請求データの作成、及び、税務会計に用いる仕訳データの作成も可能となる。このように、本実施形態によれば、共同事業体における事業主間の精算業務に係る負荷を軽減することができるようになる。以下、具体的に説明する。
【0062】
複数の事業主からなる共同事業体(ジョイントベンチャー:JV)は、例えば、デベロッパー等の事業主の集合体である。この共同事業体では、各事業主が資金を出し合い、その資金をもとに、プロジェクトとして、マンションや商業施設等を共同建設し、さらに販売管理までを行う。そして、共同事業体を代表する一事業主(「JV幹事事業主」ともいう)は、メイン業者への支払に対しては、共同事業体を代表して立替金(JV立替金)で処理し、また、マンション等の契約者からの入金は預り金(JV預り金)として処理している。このような場合、自社収支の管理だけでなく、共同事業主(マイナー)への精算業務も必要となるため、複雑な会計処理が必要となる。特に、共同事業の内容によっては、一部の事業(例えば単位工事)について持分比率が設定され、残りの事業(例えば販売管理)については予め負担金額が設定される場合があり、会計処理を手作業で行うことは容易ではなく、そのため、運用の煩雑さのために間違えることがないようにするためには、日々の手作業による会計処理を怠ることはできないという状況にある。本実施形態では、この複雑な会計処理の少なくとも一部についてその自動化を実現するものであり、その概要については、
図4から
図5にかけて説明されているが、要約すると以下のことが実現できる。
【0063】
プロジェクトごとに又はプロジェクトを構成する単位事業ごとに持分比率の設定を行っておくことにより、業者からの支払依頼から、JV立替金の自社費用を自動的に算出することができる。また、自社費用分のみをプロジェクト収支へ連動(計上)させることで、予実管理(予算と実績の管理)を行うこともできる。さらに、契約情報から取得可能な、マンション購入者(契約者)からの手付金及び申込金などの入金に関する情報に対し、設定しておいた持分比率から預り金を自動的に算出することができる。また、業務システム又は会計システムで管理しているJV立替金及びJV預り金に関する情報を集約し、共同事業主(マイナー)に対する精算書の出力や精算の管理を行うことができる。JV立替金及びJV預り金、並びに、費用及び収入に関し、財務会計に必要な仕訳データの作成を行うことができる。そして、本実施形態で得られる会計データは、任意のタイミングで集計したり(合算数値である集計データの視覚化を行ったり)、仕訳連携を行ったりすることができ、さらには持分比率が変更(数値の変更又は設定された負担金額への変更)になっても明細データ単位又は集計データ単位で修正を容易に行うことができる。これらのように、本実施形態によれば、手作業での会計処理を回避して、業務負荷を軽減することができるようになる。
【0064】
以下、本実施形態の具体例に係る構成と動作について説明する。
【0065】
図6−1及び
図6−2は、本実施形態の具体例におけるJV預り金とJV立替金に関する業務フローを説明するために用いられる図である。これらの図に示されるように、複雑な会計処理、特には精算業務であっても、本実施形態によれば、精算書、請求書、支払明細書、及び仕訳データといった形態にまでの業務フローを円滑に進めることができるように、各種のマスタが用意され、かつ、それらマスタを参照した処理が行われる。以下では、処理手順にしたがって動作説明を行う。
【0066】
図7は、プロジェクト登録に係る処理を説明するために用いられる図である。
図7に示すような登録画面を介して、共同事業体を構成する共同事業主の登録と、各共同事業主の持分比率の設定等を行う。
【0067】
図8は、JV預り金及びJV立替金の自動計算方法を説明するために用いられる図である。
図8に示すように、JV預り金及びJV立替金の計算には、
図7に示されるような登録画面を介して設定された持分比率の値が用いられ、必要に応じて消費税等の計算や予実管理のための計算が行われる。
【0068】
図9は、JV立替金の変更を説明するために用いられる図であり、
図10は、JV立替金の変更の結果が反映された支払伝票を説明するために用いられる図であり、
図11は、
図10に示す支払伝票の明細を説明するために用いられる図である。
図9に示される表示画面は、
図8に示す表示画面から遷移可能な支払依頼入力画面であり、各明細につき「内訳」ボタンが押下されることで、ポップアップ画面が表示され、内訳に含まれるJV立替金を手入力で変更することができるようになっている。JV立替金の変更の結果は、
図10及び
図11に示されるように支払伝票に反映される。また、JV立替金の変更の結果は、後述する
図13に示す精算報告書及び請求書、並びに、
図14を用いて説明される仕訳データの作成にも反映される。このようにJV立替金を変更しても柔軟に対応することができるようになっている。なお、JV預り金についても同様に変更可能である。
【0069】
図12は、JV精算書発行に係る処理を説明するために用いられる図である。
図13は、
図12を用いて説明される処理の結果出力可能な書類の例(精算報告書及び請求書)を示す図である。
図14は、
図12を用いて説明される処理の結果出力可能な書類の別の例(預り金明細及び立替金明細)を示す図である。
図15は、仕訳データ作成に係る処理を説明するために用いられる図である。これらの図からも分かるように、本実施形態では、精算処理(例えば相殺処理)の自動化だけでなく、必要な書類の出力までも可能に構成されており、さらには、期間を指定した上で仕訳データを作成することができるようになっている。
【0070】
図16〜
図30には、入金に係る処理を説明するために用いられる図である。具体的には、共同事業体がマンションを建設した後又は建設中に販売を行ったときに購入者又は購入希望者との間で契約が発生した場合、契約に応じた入金(預り金)が発生する。
【0071】
図16は、契約者を入力するための契約入力画面の一例を示す図である。
図17は、契約の詳細情報を登録するための画面例の一部を示す図である。
図18は、
図17の画面から遷移可能な画面を示す図である。
図18に示すような画面を介して、預り金の調整等が可能となっている。
図19は、共同契約者を入力するための画面の一例を示す図である。共同契約者がいる場合に
図19の画面を介して登録することにより、
図16の画面を介して登録した契約者に関連付けられる。
【0072】
図20は、部屋別入金変更入力画面の一例を示す図である。
図21は、部屋別入金伝票の発行を説明するために用いられる図である。
図22は、
図21に示す画面を介して発行される伝票の一例を示す図である。
図23は、
図21に示す画面を介して発行される伝票の別の例を示す図である。
図22及び
図23に示す伝票においてもJV預り金が持分比率に応じて管理されていることが分かりやすくなっている。
図24は、部屋別入金承認入力を説明するために用いられる図である。
図25は、
図24の画面を介して入力された入金入力データの一覧表示画面の一例を示す図である。
図26は、入金を登録する画面の一例を示す図である。
図26に示すような画面を介して、預り金の調整等が可能となっている。
図27は、入金伝票の発行を説明するために用いられる図である。
図28は、
図27に示す画面を介して発行される伝票の一例を示す図である。
図29は、
図27に示す画面を介して発行される伝票の別の例を示す図である。
図28及び
図29に示す伝票においてもJV預り金が持分比率に応じて管理されていることが分かりやすくなっている。
図30は、入金承認入力を説明するために用いられる図である。
【0073】
以上詳細に説明したように、本実施形態の具体例によれば、予め持分比率を登録しておくことにより、マンションの契約に関する入金を、持分比率に応じた預り金として自動的に管理することができ、それにより、会計処理に係る負荷を大幅に軽減することができる。
【0074】
なお、上述した実施形態の具体例では、共同事業体がマンションを建設して販売する場合における入金処理を中心にして説明したが、同様の仕組みを用いることにより、立替金の処理や、共同事業主に対する精算処理等も実行することができる。このようにして作成された仕訳データの例が
図31に示されている。
【0075】
[4.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0076】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0077】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0078】
また、会計処理装置100及び会計処理システム1000に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0079】
例えば、会計処理装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて会計処理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0080】
また、このコンピュータプログラムは、会計処理装置100に対して任意のネットワーク(例えばネットワーク300)を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0081】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto−Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu−ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。したがって、本明細書で説明した処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体もまた本発明を構成することとなる。
【0082】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0083】
記憶部106に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、及び、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、及び、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0084】
また、会計処理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、会計処理装置100は、当該装置に本明細書で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0085】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。