特許第6841710号(P6841710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841710
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】糸降ろし装置及び紡糸引取設備
(51)【国際特許分類】
   D01D 7/00 20060101AFI20210301BHJP
   D01D 11/00 20060101ALI20210301BHJP
   B65H 51/18 20060101ALI20210301BHJP
   B65H 75/40 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   D01D7/00 C
   D01D11/00 Z
   B65H51/18
   B65H75/40 A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-81488(P2017-81488)
(22)【出願日】2017年4月17日
(65)【公開番号】特開2018-178318(P2018-178318A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 太佑
(72)【発明者】
【氏名】杉山 研志
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/198698(WO,A1)
【文献】 特開昭54−088315(JP,A)
【文献】 実開昭53−144909(JP,U)
【文献】 特開昭51−064016(JP,A)
【文献】 米国特許第04206883(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第106414819(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D1/00−13/02
B65H51/00−51/32
75/34−75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上階に設けられた紡糸装置から紡出される複数の糸を下階で引き取る紡糸引取設備に設けられ、前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置であって、
前記上階を移動可能に構成された台車本体と、
前記台車本体に設けられ、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を保持した状態で前記下階に下降可能な糸降ろし部材と、
を備えることを特徴とする糸降ろし装置。
【請求項2】
前記糸降ろし部材は、上下方向に交差する方向に互いに離間しており、それぞれ前記複数の糸を引っ掛けることが可能な複数の引っ掛け部を有することを特徴とする請求項1に記載の糸降ろし装置。
【請求項3】
前記引っ掛け部は、下方に開口するスリット状であることを特徴とする請求項2に記載の糸降ろし装置。
【請求項4】
前記糸降ろし部材はワイヤーにつながれており、
前記台車本体に、前記ワイヤーを巻き取るための第1リールが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の糸降ろし装置。
【請求項5】
前記台車本体に、前記第1リールを回転駆動するための第1駆動部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の糸降ろし装置。
【請求項6】
前記台車本体に、前記糸降ろし部材を上下方向に案内するガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の糸降ろし装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、巻き取ることが可能な可撓性を有しており、
前記台車本体に、前記ガイド部材を巻き取るための第2リールが設けられていることを特徴とする請求項6に記載の糸降ろし装置。
【請求項8】
前記台車本体に、前記第2リールを回転駆動するための第2駆動部が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の糸降ろし装置。
【請求項9】
前記台車本体に、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を吸引するための吸引部材が設けられていることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の糸降ろし装置。
【請求項10】
上階に設けられた紡糸装置から紡出される複数の糸を下階で引き取る紡糸引取設備であって、
前記紡糸装置から紡出された複数の糸を、前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置を備え、
前記糸降ろし装置は、
前記上階を移動可能に構成された台車本体と、
前記台車本体に設けられ、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を保持した状態で前記下階に下降可能な糸降ろし部材と、
を有することを特徴とする紡糸引取設備。
【請求項11】
前記台車本体に、前記糸降ろし部材を上下方向に案内する昇降可能なガイド部材が設けられていることを特徴とする請求項10に記載の紡糸引取設備。
【請求項12】
前記下階に、前記ガイド部材を位置決めするための位置決め部が設けられており、
前記ガイド部材の下端部には、前記位置決め部に係合することで位置決めされる係合部が設けられていることを特徴とする請求項11に記載の紡糸引取設備。
【請求項13】
前記上階と前記下階との間に設けられた仕切床に、前記複数の糸が通過可能な開口が形成されるとともに、前記開口の周縁部において前記仕切床から下方に突出する筒状のカバー部材が設けられており、
前記位置決め部は、前記カバー部材の内壁に設けられていることを特徴とする請求項12に記載の紡糸引取設備。
【請求項14】
前記開口の周縁部において前記仕切床から上方に突出する落下防止壁が設けられるとともに、前記台車本体の前端部に、前記落下防止壁に当接可能な当接部が形成されており、
前記当接部を前記落下防止壁に当接させるように前記台車本体を位置決めすることで、前記ガイド部材を前記カバー部材の内壁に沿わせながら下降させることができることを特徴とする請求項13に記載の紡糸引取設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸装置から紡出される複数の糸を降ろすための糸降ろし装置及び当該糸降ろし装置を備える紡糸引取設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、紡糸装置から紡出された複数の糸を引き取る紡糸引取装置が開示されている。この紡糸引取装置は2階建てに構成されており、2階に紡糸装置が配置されており、1階に紡糸装置から紡出された複数の糸を引き取る引取部や巻取装置が設けられている。つまり、引取部や巻取装置に糸掛けを行う際には、紡糸装置から紡出された複数の糸を1階へと降ろす必要があった。このため、特許文献1では、紡糸装置から紡出された複数の糸を保持した状態で2階から1階へと降ろす糸降ろし装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/198698号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、糸の生産効率を向上させるため、昨今の紡糸引取設備では、紡糸装置及び紡糸引取装置が多数並んだ状態で配置されていることが多い。このような場合に、特許文献1に記載の糸降ろし装置を採用すると、各紡糸引取装置ごとに糸降ろし装置を設置する必要があり、メンテナンス費用も含めた設備のコストが高くなることが懸念される。
【0005】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、複数の紡糸引取装置が並んでいる場合であっても、コストを抑えて各紡糸引取装置における糸降ろしを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る糸降ろし装置は、上階に設けられた紡糸装置から紡出される複数の糸を下階で引き取る紡糸引取設備に設けられ、前記複数の糸を前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置であって、前記上階を移動可能に構成された台車本体と、前記台車本体に設けられ、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を保持した状態で前記下階に下降可能な糸降ろし部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成であれば、上階を移動可能に構成された台車本体に糸降ろし部材が設けられているため、台車本体を移動させることによって、適宜の位置で糸降ろしを行うことができる。したがって、複数の紡糸引取装置が並んでいる場合であっても、台車本体を移動させれば各紡糸引取装置で糸降ろしを行うことが可能であり、各紡糸引取装置ごとに専用の装置を設ける必要がないため、メンテナンス費用も含めた設備コストを抑えることができる。
【0008】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記糸降ろし部材は、上下方向に交差する方向に互いに離間しており、それぞれ前記複数の糸を引っ掛けることが可能な複数の引っ掛け部を有するとよい。
【0009】
このような構成であれば、複数の引っ掛け部に糸が引っ掛かることによって、引っ掛け部よりも上方において、引っ掛け部よりも上流側の糸と下流側の糸とを離間させることができる。したがって、糸を下階で受け渡す際に、上流側及び下流側の何れか一方のみから糸を確実に受け渡すことができる。
【0010】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記引っ掛け部は、下方に開口するスリット状であるとよい。
【0011】
このような構成であれば、糸降ろし部材が下降する際に引っ掛け部に糸を引っ掛けることができるので、糸降ろし部材による糸の保持が容易となる。
【0012】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記糸降ろし部材はワイヤーにつながれており、前記台車本体に、前記ワイヤーを巻き取るための第1リールが設けられているとよい。
【0013】
このような構成であれば、第1リールからワイヤーを引き出すことによって、糸降ろし部材を下降させることができる。また、糸降ろし以外のときは、ワイヤーを第1リールに巻き取っておくことで、装置をコンパクトにすることができる。
【0014】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記台車本体に、前記第1リールを回転駆動するための第1駆動部が設けられているとよい。
【0015】
このような構成であれば、第1駆動部を駆動させることで、糸降ろし部材を自動で昇降させることができ、オペレータの負担を軽減することができる。また、第1駆動部がブレーキとして作用することで、糸降ろし部材の自重によってワイヤーが勝手に引き出されることがないので、糸降ろし部材を安定的に下降させることができる。
【0016】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記台車本体に、前記糸降ろし部材を上下方向に案内するガイド部材が設けられているとよい。
【0017】
このような構成であれば、糸降ろし部材をガイド部材に沿って降ろすことができ、糸降ろし部材を所望の位置に安定的に下降させることができる。
【0018】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記ガイド部材は、巻き取ることが可能な可撓性を有しており、前記台車本体に、前記ガイド部材を巻き取るための第2リールが設けられているとよい。
【0019】
このような構成であれば、第2リールからガイド部材を引き出すことによって、ガイド部材を下降させることができる。また、糸降ろし以外のときは、ガイド部材を第2リールに巻き取っておくことで、装置をコンパクトにすることができる。
【0020】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記台車本体に、前記第2リールを回転駆動するための第2駆動部が設けられているとよい。
【0021】
このような構成であれば、第2駆動部を駆動させることで、ガイド部材を自動で昇降させることができ、オペレータの負担を軽減することができる。また、第2駆動部がブレーキとして作用することで、ガイド部材の自重によってガイド部材が勝手に引き出されることがないので、ガイド部材を安定的に下降させることができる。
【0022】
また、本発明に係る糸降ろし装置において、前記台車本体に、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を吸引するための吸引部材が設けられているとよい。
【0023】
このような構成であれば、吸引部材によって糸を吸引しておくことで、糸降ろし部材に糸を保持させる作業が容易となる。
【0024】
本発明に係る紡糸引取設備は、上階に設けられた紡糸装置から紡出される複数の糸を下階で引き取る紡糸引取設備であって、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を、前記上階から前記下階に降ろす糸降ろし装置を備え、前記糸降ろし装置は、前記上階を移動可能に構成された台車本体と、前記台車本体に設けられ、前記紡糸装置から紡出された複数の糸を保持した状態で前記下階に下降可能な糸降ろし部材と、を有することを特徴とする。
【0025】
このような構成であれば、上階を移動可能に構成された台車本体に糸降ろし部材が設けられているため、台車本体を移動させることによって、適宜の位置で糸降ろしを行うことができる。したがって、複数の紡糸引取装置が並んでいる場合であっても、台車本体を移動させれば各紡糸引取装置の吸引保持部に糸降ろしを行うことが可能であり、各紡糸引取装置ごとに専用の装置を設ける必要がないため、メンテナンス費用も含めた設備コストを抑えることができる。
【0026】
また、本発明に係る紡糸引取設備において、前記台車本体に、前記糸降ろし部材を上下方向に案内する昇降可能なガイド部材が設けられているとよい。
【0027】
このような構成であれば、糸降ろし部材をガイド部材に沿って降ろすことができ、糸降ろし部材を所望の位置に安定的に下降させることができる。
【0028】
また、本発明に係る紡糸引取設備において、前記下階に、前記ガイド部材を位置決めするための位置決め部が設けられており、前記ガイド部材の下端部には、前記位置決め部に係合することで位置決めされる係合部が設けられているとよい。
【0029】
このような構成であれば、ガイド部材が位置決めされることで、ガイド部材に沿って降ろされる糸降ろし部材の下降位置の精度が向上する。したがって、下階における糸の受け渡しを精度よく行うことができる。
【0030】
また、本発明に係る紡糸引取設備において、前記上階と前記下階との間に設けられた仕切床に、前記複数の糸が通過可能な開口が形成されるとともに、前記開口の周縁部において前記仕切床から下方に突出する筒状のカバー部材が設けられており、前記位置決め部は、前記カバー部材の内壁に設けられているとよい。
【0031】
このような構成であれば、ガイド部材を下降させる際に、ガイド部材をカバー部材の内壁に沿わせることができ、係合部を位置決め部に容易に係合させることができる。
【0032】
また、本発明に係る紡糸引取設備において、前記開口の周縁部において前記仕切床から上方に突出する落下防止壁が設けられるとともに、前記台車本体の前端部に、前記落下防止壁に当接可能な当接部が形成されており、前記当接部を前記落下防止壁に当接させるように前記台車本体を位置決めすることで、前記ガイド部材を前記カバー部材の内壁に沿わせながら下降させることができるとよい。
【0033】
このような構成であれば、ガイド部材をカバー部材の内壁に沿わせるための台車本体の位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本実施形態に係る紡糸引取設備の概略構成図である。
図2】糸降ろし装置の斜視図である。
図3】位置決めされた糸降ろし装置を示す模式図である。
図4】ガイド部材を下降させた状態の糸降ろし装置を示す模式図である。
図5】糸降ろし部材を下降させた状態の糸降ろし装置を示す模式図である。
図6図5のVI−VIにおける断面図である。
図7】ガイド部材を下降させる前の紡糸引取設備を示す図である。
図8】ガイド部材を下降させた状態の紡糸引取設備を示す図である。
図9】糸降ろし部材を下降させる直前の紡糸引取設備を示す図である。
図10】糸降ろし部材を下降させた状態の紡糸引取設備を示す図である。
図11】糸掛け装置による糸掛け中の紡糸引取設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施形態]
(全体の概略構成)
本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸引取設備の概略構成図である。紡糸引取設備1は、仕切床2によって1階(下階)と2階(上階)とに仕切られている。紡糸引取設備1は、紡糸装置3と、紡糸引取装置4と、糸降ろし装置5と、糸掛け装置6と、制御装置7と、を主要な構成として備えている。紡糸装置3、紡糸引取装置4の一部構成、及び、糸降ろし装置5は2階に配置されており、紡糸引取装置4の残りの構成、及び、糸掛け装置6は1階に配置されている。なお、糸降ろし装置5は2階を自由に移動することができる。そのため、図1の糸降ろし装置5の配置は一例に過ぎない。制御装置7は、紡糸引取設備1の全体の動作を制御する。具体的には、制御装置7は、紡糸引取装置4の動作を制御したり、糸掛け装置6に対して糸掛け指令を発したりする。
【0036】
本実施形態の紡糸引取設備1においては、紡糸装置3及び紡糸引取装置4が、図1の紙面垂直方向に複数並べられている。そして、仕切床2には、2階に配置された各紡糸装置3から紡出された複数の糸Yが通過可能な開口2aが、図1の紙面垂直方向に複数形成されている。各開口2aの周縁部の下側には、糸揺れ等を防止するため、仕切床2から下方に突出する筒状のカバー部材8が設置されている。また、各開口2aの周縁部の上側には、2階から糸降ろし装置5等が落下することを防止するため、仕切床2から上方に突出する筒状の落下防止壁9が設置されている。
【0037】
以下では、説明の便宜上、図1の上下方向を紡糸引取設備1の上下方向、図1の左右方向を紡糸引取設備1の前後方向、図1の紙面垂直方向を紡糸引取設備1の左右方向と定義する。
【0038】
(紡糸装置)
紡糸装置3は、2階に設置されており、紡糸口金10aを有する紡糸パック10が装着された構成を有する。ギヤポンプ等からなる不図示のポリマー供給装置から供給された高温状態の溶融ポリマーが、紡糸口金10aから押し出されることで、紡糸口金10aから複数の合成繊維糸Yが紡出される。
【0039】
(紡糸引取装置)
紡糸引取装置4は、紡糸装置3から紡出される複数の糸Yをそれぞれ引き取り、複数のボビンBにそれぞれ巻き取って複数のパッケージPを形成する。紡糸引取装置4は、冷却部11、油剤ガイド12、糸規制ガイド13、糸保持部14、引取部15、巻取装置16等を備えている。このうち、冷却部11、油剤ガイド12、及び、糸規制ガイド13は2階に配置されており、糸保持部14、引取部15、及び、巻取装置16は1階に配置されている。
【0040】
冷却部11は、紡糸装置3のすぐ下側に配置されている。紡糸口金10aから紡出された複数の糸Yは、冷却部11を通過する際に、冷却部11に供給される気体によって冷却されて固化する。冷却部11の下方には、油剤ガイド12及び糸規制ガイド13が配置されている。油剤ガイド12は、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yに油剤を付与する。また、油剤ガイド12の下側にある糸規制ガイド13は、油剤ガイド12で油剤が付与される複数の糸Yの糸道を規定する。
【0041】
糸保持部14は、仕切床2の開口2aの真下の位置において、固定的に設置されている。糸保持部14は、これよりも下流側の装置(引取部15や巻取装置16等)において何らかのトラブル等が発生した場合などに、紡糸装置3から紡出されてくる複数の糸Yを切断して、トラブル等が解消されるまでの間、一時的に吸引保持するものである。紡糸装置3から紡出されてくる複数の糸Yが糸保持部14に吸引保持されることによって、それよりも下流側の引取部15や巻取装置16へは糸Yは送られなくなる。これにより、オペレータは、引取部15や巻取装置16のトラブル解消等の作業を行うことができる。
【0042】
引取部15は、仕切床2に形成された開口2aを通って、2階から降りてきた複数の糸Yを引き取る。引取部15は、2つのゴデットローラ19、20を有する。2つのゴデットローラ19、20は、それぞれ不図示のモータによって回転駆動される。引取部15は、2つのゴデットローラ19、20により、複数の糸Yを巻取装置16へ送る。2つのゴデットローラ19、20のうち、上流側のゴデットローラ19は、糸保持部14のほぼ真下の位置に設置されている。一方、下流側のゴデットローラ20は、ゴデットローラ19に近接する糸掛け時の位置(図1の二点鎖線で示された位置)と、巻取装置16の直上の糸生産時の位置(図1の実線で示された位置)とにわたって移動可能である。
【0043】
巻取装置16は、ターレット21、2本のボビンホルダ22、トラバース装置23、接触ローラ24等を備えている。ターレット21には、2本のボビンホルダ22がそれぞれ回転自在に支持されている。ターレット21が回転することによって、2本のボビンホルダ22の位置が上下に切り換えられる。各ボビンホルダ22には、複数のボビンBが装着される。トラバース装置23は、ボビンホルダ22の複数のボビンBにそれぞれ対応する複数のトラバースガイド23aを有する。各トラバースガイド23aが往復移動することにより、支点ガイド25を中心に糸YがトラバースされつつボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。接触ローラ24は、上側のボビンホルダ22に形成された複数のパッケージPに接触して、複数のパッケージPにそれぞれ接圧を付与する。
【0044】
(糸降ろし装置)
次に、糸降ろし装置5について説明する。図2は、糸降ろし装置5の斜視図であり、図3は、位置決めされた糸降ろし装置5を示す模式図であり、図4は、ガイド部材を下降させた状態の糸降ろし装置5を示す模式図であり、図5は、糸降ろし部材を下降させた状態の糸降ろし装置5を示す模式図であり、図6は、図5のVI−VIにおける断面図である。糸降ろし装置5は、パッケージPの生産開始前に行う糸掛けの際に、紡糸装置3から紡出される複数の糸Yを1階へ降ろすためのものである。
【0045】
糸降ろし装置5は、台車本体30、糸降ろし部材31、ガイド部材32、サクションガン33等を有する。糸降ろし装置5は、台車本体30に各種部材が搭載された構成となっており、台車本体30には、車輪34及び操作部35が取り付けられている。そして、オペレータが操作部35を操作することによって、糸降ろし装置5を、仕切床2上を自在に移動させることが可能となっている。
【0046】
糸降ろし部材31は、上下方向に延びる支持部31aと、支持部31aの下端部に取り付けられた保持部31bと、を有する。保持部31bには、下方に開口し、複数の糸Yを引っ掛けることが可能なスリット状の引っ掛け部31cが2つ形成されている。2つの引っ掛け部31cは、支持部31aを挟んで互いに水平方向に離間して配置されている。後述するように、2つの引っ掛け部31cに複数の糸Yを引っ掛けて保持させた状態で、糸降ろし部材31を下降させることで、複数の糸Yを1階へ降ろすことができる。
【0047】
糸降ろし部材31の上端部には、ワイヤー36がつながれている。また、台車本体30の床面から立設された板状の支持部材37に、ワイヤー36を巻き取るための第1リール38が回転可能に取り付けられている。第1リール38は、第1モータ39によって回転駆動される。また、支持部材37には、ワイヤー36が掛けられるピン部材40が取り付けられており、糸降ろし部材31を昇降させる際のワイヤー36の経路が、ピン部材40によって規定されている。第1リール38をワイヤー36を引き出す方向に回転させることで、糸降ろし部材31がピン部材40の下方において下降する。また、第1リール38をワイヤー36を巻き取る方向に回転させることで、糸降ろし部材31が上昇する。
【0048】
ガイド部材32は、糸降ろし部材31が昇降する際に、糸降ろし部材31を上下方向に案内する。ガイド部材32は、複数の微小要素32aが互いに回動可能に連結されたチェーン状のケーブルベア(登録商標)によって構成されており、巻き取ることが可能な可撓性を有している。ガイド部材32の微小要素32aは、図6に示すように、右側(糸降ろし部材31と対向する側)が開口したコの字状の断面形状を有している。一方、糸降ろし部材31の支持部31aの背面(ガイド部材32と対向する側の面)には、複数の係合部31d(図3等参照)が上下方向に並んで形成されている。糸降ろし部材31の係合部31dが、ガイド部材32の微小要素32aに係合した状態で、微小要素32aの内部空間を上下方向に移動することによって、糸降ろし部材31がガイド部材32によって案内されながら昇降することが可能となっている。
【0049】
支持部材37には、ガイド部材32を巻き取るための第2リール41が回転可能に取り付けられている。第2リール41は、第2モータ42によって回転駆動される。また、支持部材37には、ガイド部材32が掛けられるピン部材43が取り付けられており、ガイド部材32を昇降させる際のガイド部材32の経路が、ピン部材43によって規定されている。第2リール41をガイド部材32を引き出す方向に回転させることで、ガイド部材32がピン部材43の下方において下降する。また、第2リール41をガイド部材32を巻き取る方向に回転させることで、ガイド部材32が上昇する。なお、第1モータ39や第2モータ42には、台車本体30に搭載された不図示のバッテリーから電力が供給される。
【0050】
ガイド部材32がピン部材43に接して屈曲する部分においては、微小要素32aの内部空間が上方に開放され、ここから糸降ろし部材31の係合部31dが、微小要素32aの内部空間内に出たり入ったりすることが可能となっている。なお、図2では、ピン部材43を示すため、ピン部材43の近傍において微小要素32aの図示を省略している。
【0051】
ガイド部材32の位置決めを行うため、図3図5に示すように、ガイド部材32の下端部に設けられた係合部材44と、カバー部材8の内壁の下端部に取り付けられた位置決め部材26と、によって位置決め機構が構成されている。係合部材44は、図6に示すように、位置決め部材26に上方から係合可能な形状を有する。これによって、ガイド部材32を下降させ、係合部材44を位置決め部材26に係合させることで、ガイド部材32を一時的に固定することができる。
【0052】
糸降ろし装置5によって糸降ろしを行う場合には、まず、対象となる紡糸装置3の下方に形成された開口2aの近傍に糸降ろし装置5を配置する。このとき、図3に示すように、糸降ろし装置5の台車本体30の前端部に形成された当接部30aを、上記開口2aの周りに形成された落下防止壁9に当接させるように糸降ろし装置5を配置する。これによって、図3の左右方向において、糸降ろし装置5が位置決めされる。また、本実施形態では、仕切床2の適切な位置に、図3の紙面垂直方向における位置決めを行う際の補助となるマーカーが付与されている。つまり、台車本体30の当接部30aを落下防止壁9に当接させるように、且つ、マーカーによって示される位置に糸降ろし装置5を移動させることで、糸降ろし装置5の位置決めが可能となっている。
【0053】
糸降ろし装置5の位置決めが終わると、図4に示すように、ガイド部材32を下降させる。上述のように、糸降ろし装置5の位置決めを適切に行っておくことで、ガイド部材32を下降させた際に、ガイド部材32の下端部に取り付けられた係合部材44を、位置決め部材26に円滑に係合させることができ、ガイド部材32が固定される。続いて、糸降ろし部材31をガイド部材32に沿って下降させることで、図5に示すように、保持部31bをカバー部材8の下端よりも下方に位置させる。これによって、保持部31bによって保持されている複数の糸Y(図5では不図示)を、糸掛け装置6や糸保持部14に受け渡すことができる。一連の動作の詳細については後で説明する。
【0054】
サクションガン33は、糸降ろしをする際に、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを吸引保持しておくための部材である。本実施形態のサクションガン33は、台車本体30に固定されているが、台車本体30に対して着脱自在でもよい。サクションガン33には、吸引ホース33aが接続されている。一方、各開口2aの近傍には、紡糸引取設備1に設けられた不図示の吸引源とつながる吸引用アダプタ2bが設けられている。そして、サクションガン33の吸引ホース33aを吸引用アダプタ2bに接続することで、サクションガン33の先端の吸引口に吸引力を発生させることができる。なお、サクションガン33によって吸引された複数の糸Yは、吸引ホース33aとは異なる吸引ホース33bを通って、不図示の廃糸ボックスに廃棄される。
【0055】
(糸掛け装置)
糸掛け装置6は、プログラム制御された糸掛けロボットである。糸掛け装置6は、左右方向(図1の紙面垂直方向)に移動可能に構成されており、三次元的に自由に動けるように多関節部を備えた糸掛けアーム6aを有する。なお、図示は省略するが、糸掛けアーム6aの先端部には、糸Yを切断するカッターや、このカッターで切断された糸Yを吸引する吸引部が設けられている。糸掛け装置6は、左右方向に配列された複数の紡糸引取装置4のうち、ある紡糸引取装置4における糸掛け指令を制御装置7から受信したときに、その紡糸引取装置4の前方の位置まで移動し、引取部15の2つのゴデットローラ19、20、及び、巻取装置16への糸掛けを行う。
【0056】
(糸降ろし及び糸掛けの流れ)
最後に、紡糸引取装置4によって糸Yの生産を開始する際の、糸降ろし及び糸掛け等の作業の流れについて、図7図11を参照して説明する。図7は、ガイド部材32を下降させる前の紡糸引取設備1を示す図であり、図8は、ガイド部材32を下降させた状態の紡糸引取設備1を示す図であり、図9は、糸降ろし部材31を下降させる直前の紡糸引取設備1を示す図であり、図10は、糸降ろし部材31を下降させた状態の紡糸引取設備1を示す図であり、図11は、糸掛け装置6による糸掛け中の紡糸引取設備1を示す図である。
【0057】
ある紡糸引取装置4において糸掛けを行う場合には、図3及び図7に示すように、オペレータは、糸降ろし装置5を当該紡糸引取装置4まで移動させる。既に説明したように、糸降ろし装置5は、後でガイド部材32を下降させた際に、係合部材44が位置決め部材26に係合するように、適切な位置に位置決めされる。なお、位置決めされた糸降ろし装置5においては、糸降ろし部材31の2つの引っ掛け部31cが前後方向に並んでいる。
【0058】
続いて、オペレータは、紡糸装置3から紡出される複数の糸Yをサクションガン33に吸引保持させたうえで、サクションガン33に吸引されている複数の糸Yを、油剤ガイド12及び糸規制ガイド13に掛ける。また、これに前後して、制御装置7は、糸掛け装置6を当該紡糸引取装置4の位置まで移動させるべく、糸掛け装置6に対して糸掛け指令を発する。
【0059】
次に、図4及び図8に示すように、オペレータは、第2モータ42を駆動させることによって、第2リール41からガイド部材32を引き出し、ガイド部材32を下降させる。その結果、ガイド部材32は開口2aを通過してさらに下降し、最終的には、係合部材44が位置決め部材26に係合する位置まで下降する。係合部材44が位置決め部材26に係合することによって、ガイド部材32の揺れが防止され、ガイド部材32に沿って糸降ろし部材31を安定して昇降させることができる。
【0060】
続いて、図9に示すように、オペレータは、糸掛け用工具Tによって複数の糸Yを引っ掛けて動かし、サクションガン33と糸掛け用工具Tとの間の糸Yを、糸降ろし部材31の保持部31bの直下に位置させる。より詳細には、糸降ろし部材31を続いて下降させたときに、2つの引っ掛け部31cにサクションガン33と糸掛け用工具Tとの間の糸Yが入り込むように、糸道を調整する。
【0061】
次に、図5及び図10に示すように、オペレータは、第1モータ39を駆動させることによって、第1リール38からワイヤー36を引き出し、糸降ろし部材31を下降させる。このとき、糸降ろし部材31の2つの引っ掛け部31cに複数の糸Yが引っ掛かり、保持部31bによって複数の糸Yが保持される。なお、本実施形態では、2つの引っ掛け部31cが前後方向に並ぶように糸降ろし装置5が位置決めされているので、糸降ろし部材31を下降させた際には、図10に示すように、糸規制ガイド13から糸降ろし装置5の保持部31bを経由してサクションガン33に至る糸道が、前後方向に開いたV字状となる。
【0062】
糸降ろし部材31を最下位置まで下降させると、糸掛け装置6は、紡糸引取装置4の前側から糸掛けアーム6aを、糸規制ガイド13と糸降ろし装置5の保持部31bとの間の複数の糸Yaに接触させる。そして、複数の糸Yaを切断及び吸引保持する。このとき、上述のように、保持部31bよりも上流側の糸Yaと、保持部31bよりも下流側の糸Ybとが前後方向に離れていることから、糸掛け装置6が複数の糸Yaと一緒に糸走行方向が異なる複数の糸Ybを切断及び吸引保持してしまうことを防止できる。
【0063】
糸掛け装置6は、糸掛けアーム6aで複数の糸Yを吸引保持したら、図11に示すように、糸掛けアーム6aを操作して、引取部15のゴデットローラ19、20に複数の糸Yを順に掛けていく。また、糸掛け装置6への糸Yの受け渡しが終わると、オペレータは、糸降ろし部材31及びガイド部材32を順番に上昇させ、台車本体30に戻す。
【0064】
[効果]
以上のように、本実施形態の糸降ろし装置5は、2階(上階)を移動可能に構成された台車本体30と、台車本体30に設けられ、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを保持した状態で1階(下階)に下降可能な糸降ろし部材31と、を備える。このような構成であれば、2階を移動可能に構成された台車本体30に糸降ろし部材31が設けられているため、台車本体30を移動させることによって、適宜の位置で糸降ろしを行うことができる。したがって、複数の紡糸引取装置4が並んでいる場合であっても、台車本体30を移動させれば各紡糸引取装置4で糸降ろしを行うことが可能であり、各紡糸引取装置4ごとに専用の装置を設ける必要がないため、メンテナンス費用も含めた設備コストを抑えることができる。
【0065】
また、本実施形態では、糸降ろし部材31に、上下方向に交差する方向(前後方向)に互いに離間しており、それぞれ複数の糸Yを引っ掛けることが可能な複数の引っ掛け部31cが形成されている。このため、複数の引っ掛け部31cに糸Yが引っ掛かることによって、引っ掛け部31cよりも上方において引っ掛け部31cよりも上流側の糸Yaと下流側の糸Ybとを離間させることができる。したがって、糸Yを1階で受け渡す際に、上流側の糸Yaのみから確実に受け渡すことができる。
【0066】
また、本実施形態では、引っ掛け部31cは、下方に開口するスリット状であるので、糸降ろし部材31が下降する際に引っ掛け部31cに糸Yを引っ掛けることができ、糸降ろし部材31による糸Yの保持が容易となる。
【0067】
また、本実施形態では、糸降ろし部材31はワイヤー36につながれており、台車本体30に、ワイヤー36を巻き取るための第1リール38が設けられている。したがって、第1リール38からワイヤー36を引き出すことによって、糸降ろし部材31を下降させることができる。また、糸降ろし以外のときは、ワイヤー36を第1リール38に巻き取っておくことで、装置をコンパクトにすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、台車本体30に、第1リール38を回転駆動するための第1モータ39(第1駆動部)が設けられている。したがって、第1モータ39を駆動させることで、糸降ろし部材31を自動で昇降させることができ、オペレータの負担を軽減することができる。また、第1モータ39がブレーキとして作用することで、糸降ろし部材31の自重によってワイヤー36が勝手に引き出されることがないので、糸降ろし部材31を安定的に下降させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、台車本体30に、糸降ろし部材31を上下方向に案内するガイド部材32が設けられている。このため、糸降ろし部材31をガイド部材32に沿って降ろすことができ、糸降ろし部材31を所望の位置に安定的に下降させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、ガイド部材32は、巻き取ることが可能な可撓性を有しており、台車本体30に、ガイド部材32を巻き取るための第2リール41が設けられている。したがって、第2リール41からガイド部材32を引き出すことによって、ガイド部材32を下降させることができる。また、糸降ろし以外のときは、ガイド部材32を第2リール41に巻き取っておくことで、装置をコンパクトにすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、台車本体30に、第2リール41を回転駆動するための第2モータ42(第2駆動部)が設けられている。したがって、第2モータ42を駆動させることで、ガイド部材32を自動で昇降させることができ、オペレータの負担を軽減することができる。また、第2モータ42がブレーキとして作用することで、ガイド部材32の自重によってガイド部材32が勝手に引き出されることがないので、ガイド部材32を安定的に下降させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、台車本体30に、紡糸装置3から紡出された複数の糸Yを吸引するためのサクションガン33(吸引部材)が設けられている。このため、サクションガン33によって糸Yを吸引しておくことで、糸降ろし部材31に糸Yを保持させる作業が容易となる。
【0073】
また、本実施形態では、1階に、ガイド部材32を位置決めするための位置決め部材26(位置決め部)が設けられており、ガイド部材32の下端部には、位置決め部材26に係合することで位置決めされる係合部材44(係合部)が設けられている。このような構成であれば、ガイド部材32が位置決めされることで、ガイド部材32に沿って降ろされる糸降ろし部材31の下降位置の精度が向上する。したがって、1階における糸Yの受け渡しを精度よく行うことができる。
【0074】
また、本実施形態では、2階と1階との間に設けられた仕切床2に、複数の糸Yが通過可能な開口2aが形成されるとともに、開口2aの周縁部において仕切床2から下方に突出する筒状のカバー部材8が設けられており、位置決め部材26は、カバー部材8の内壁に設けられている。このような構成であれば、ガイド部材32を下降させる際に、ガイド部材32をカバー部材8の内壁に沿わせることができ、係合部材44を位置決め部材26に容易に係合させることができる。
【0075】
また、本実施形態では、開口2aの周縁部において仕切床2から上方に突出する落下防止壁9が設けられるとともに、台車本体30の前端部に、落下防止壁9に当接可能な当接部30aが形成されており、当接部30aを落下防止壁9に当接させるように台車本体30を位置決めすることで、ガイド部材32をカバー部材8の内壁に沿わせながら下降させることができる。したがって、ガイド部材32をカバー部材8の内壁に沿わせるための台車本体30の位置決めを容易に行うことができる。
【0076】
[他の実施形態]
例えば、上記実施形態では、糸降ろしの作業性を向上させるため、糸降ろし装置5がガイド部材32やサクションガン33を有するものとした。しかしながら、ガイド部材32やサクションガン33を省略することも可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、第1リール38を回転駆動するための第1モータ39や、第2リール41を回転駆動するための第2モータ42を設けるものとした。しかしながら、第1モータ39や第2モータ42をなくして、オペレータが手動で第1リール38や第2リール41を回転させてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、係合部材44が位置決め部材26に係合することで、ガイド部材32を一時的に固定可能な構成とした。しかしながら、このような位置決め機構を設けることは必須ではない。
【0079】
また、上記実施形態では、糸降ろし装置5によって降ろされた糸Yが、糸掛け装置6に受け渡されるものとした。しかしながら、糸降ろし装置5によって降ろされた糸Yを、糸保持部14に受け渡してもよい。あるいは、糸降ろし装置5によって降ろされた糸Yを、1階にいるオペレータが有するサクションガンに受け渡すようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ワイヤー36の経路を規定するピン部材40、及び、ガイド部材32の経路を規定するピン部材43は固定部材とされた。しかしながら、固定部材に限らず、ベアリング等を有する回転体でもよい。回転体にすることで、ワイヤー36、及び、ガイド部材32に対する摩擦量を低下させることができ、製品寿命を延ばすことができる。
【0081】
また、上記実施形態では、糸降ろし装置5にワイヤー36をつなげ、台車本体30に設けられた第1リール38がワイヤー36を巻き取るとされた。しかしながら、第1リール38で巻き取れるものであれば、ワイヤーに限られるわけではない。
【0082】
また、上記実施形態では、糸降ろし部材31を上下方向に案内するガイド部材32を、台車本体30に設けるものとした。しかしながら、糸降ろし部材31を上下方向に案内しさえすれば、ガイド部材32をカバー部材8及び落下防止壁9に設けてもよい。各紡糸引取装置4ごとにガイド部材32を設けることで、第2リール41、第2モータ42及び係合部材44が糸降ろし装置5において必要ではなくなり、糸降ろし装置5を軽量且つコンパクトにすることができる。そのため、オペレータによる糸降ろし装置5の取り回し、及び、糸降ろしを行う際の糸降ろし装置5の位置決めが容易となり、従来設備に対してメンテナンス費用も含めた設備コストを抑えるだけでなく、糸の生産効率を高めることもできる。
【0083】
また、上記実施形態では、糸降ろし装置5の前後方向における位置決めを行う際の補助として仕切床2の適切な位置にマーカーが付与されていた。しかしながら、マーカーに限らず、位置決め用の案内レール又は位置決めピン等の案内部材を備えていてもよい。案内部材を備えることで、糸降ろし装置5の位置決めをより正確に行うことができる。
【0084】
また、上記実施形態では、位置決めされた糸降ろし装置5においては、糸降ろし部材31の2つの引っ掛け部31cが前後方向に並んでいるとされた。しかしながら、保持部31bによって保持されている複数の糸Yを、糸掛け装置6や糸保持部14に受け渡すことが出来さえすれば、前後方向に限らず、左右方向や斜め方向等に並んでいてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、糸降ろし装置5の台車本体30の前端部に形成された当接部30aを、開口2aの周りに形成された落下防止壁9に左側から当接させることで、糸降ろし装置5を左右方向において位置決めするものとした。しかしながら、当接部30aをどの方向から落下防止壁9に当接させるかは、適宜変更が可能である。つまり、何れの方向からであっても、当接部30aを落下防止壁9に当接させさえすれば、水平面内の一方向における位置決めは可能である。例えば、糸降ろし装置5を前後方向から落下防止壁9に当接させ、前後方向において位置決めを行うようにしても、糸降ろし部材31を所定の位置に安定的に下降させることができる。
【0086】
また、上記実施形態では、各開口2aの近傍に、紡糸引取設備1に設けられた不図示の吸引源とつながる吸引用アダプタ2bが設けられているとされた。しかしながら、複数の紡糸引取装置4に共通する吸引用アダプタ2bが設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1:紡糸引取設備
2:仕切床
2a:開口
3:紡糸装置
4:紡糸引取装置
5:糸降ろし装置
6:糸掛け装置
8:カバー部材
9:落下防止壁
26:位置決め部材(位置決め部)
30:台車本体
30a:当接部
31:糸降ろし部材
31c:引っ掛け部
32:ガイド部材
33:サクションガン(吸引部材)
36:ワイヤー
38:第1リール
39:第1モータ(第1駆動部)
41:第2リール
42:第2モータ(第2駆動部)
44:係合部材(係合部)
Y:糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11