(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841778
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/01 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
E06B9/01 H
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-19750(P2018-19750)
(22)【出願日】2018年2月7日
(65)【公開番号】特開2019-137990(P2019-137990A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】518044734
【氏名又は名称】神谷コーポレーション湘南株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 忠重
(72)【発明者】
【氏名】葛生 雅美
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−280022(JP,A)
【文献】
特開2014−152475(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0265415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/01,9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦框並びに上側の横框及び下側の横框とからなる木材の框組みと、該框組み内に組み付けられる一枚物の面材と、夫々縦格子と横格子とからなり、前記框組み内において前記面材をその表裏面から挟持・固定する、木材の格子とからなる木製格子扉における前記表裏の格子の高さ方向の中央部に位置する夫々の横格子のみに、その一方側の他方側との対向面に、永久磁石を固着する一方、もう一方側の他方側との対向面に、前記永久磁石に磁力により吸着する金属片を固着し、経時変化によって表裏の格子の高さ方向の中央部が反って膨らみ、面材との間に隙間が生じることを防止することを特徴とする木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造。
【請求項2】
面材が、ガラス板又はアクリル板である請求項1記載の木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造。
【請求項3】
永久磁石と金属片の夫々の横格子への固着を、夫々の横格子の対向面に穿設した凹部内への、その表面が横格子の表面と面一となるようにした嵌合と、接着剤による接着によって行うようになした請求項1又は2記載の木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、
図7乃至
図9に示す如く、框組み内に取り付けられるガラス板又はアクリル板からなる面材を、木材の格子によって表裏面から挟持・固定した木製格子扉があり、意匠性に優れていることから住宅等において多用されている。
【0003】
図7乃至
図9において、100は木製格子扉であり、左右の縦框101、101並びに上側の横框102及び下側の横框103とからなる木材の框組み104と、該框組み104内に組み付けられるガラス板又はアクリル板からなる面材105と、前記框組み104内において前記面材105をその表裏面から挟持・固定する、木材からなる格子106、106とからなるものである。尚、該面材105をその表裏面から挟持・固定する格子106、106は、夫々縦格子106aと横格子106bとからなり、表裏の格子106、106は同形に組み立てられている。
【0004】
しかしながら、斯かる従来の木製格子扉100は、経時変化によって表裏の格子106、106に反りが生じ、
図9に示す如く、表裏の格子106、106の高さ方向の中央部において膨らみ、そしてこれにより表裏の格子106、106と面材105との間に隙間Sが生じることになる。このような傾向は、格子や框組みを薄くしたり、扉の高さを大きくすればする程顕著になる。そして、このようになった場合には、表裏の格子106、106による面材105の挟持・固定が不安定になると共に、見栄えも悪くなる。
【0005】
そしてまた、上記の点を改善すべく、
図4乃至
図6に示す如き手段も採用されている。尚、
図4乃至
図6において前記
図7乃至
図9におけると同一の部材には、同一の符号を付している。
【0006】
該手段は、表裏の格子106、106の高さ方向の中央部において面材105を分断し、該分断した部分の隙間Sの位置において表裏の格子106b、106bに、そのいずれか一方側から他方側にかけてビス107を螺入して締め付け、該横格子106b、106b及び縦格子106a、106aが面材105を挟持した状態を保持するものである。そして、これにより格子106、106の経時変化の反りに基因する高さ方向の中央部の膨らみを抑制するものである。
【0007】
しかし、斯かる手段の場合には、框組み104内に組み付ける前に予め面材105を高さ方向の所定の位置で分断する必要がある。したがって、この手間がかかる。そして、面材105の上下に分断した部分の隙間Sの位置において表裏の横格子106b、106bにビス107を螺入するときには、ビスの挿入孔を穿設した後、ビスを挿入して何回もネジ回す作業が必要であり、これにも多大な労力と時間を要するものである。また、この作業中において横格子106b、106bが割れる虞もある。さらにまた、横格子106bの表面にビス107の頭部が露出していることから、美感を損ねて安っぽい印象を与えることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、面材を框組み内に組み付ける際に、従来の如く予め分断する必要がなく、またビスによる締め付けの場合における上記の如き手間がかからず、さらにまた横格子の表面にビスの頭部が露出することがなく、組み付け作業を簡単且つ迅速に行うことができると共に、格子中央部の膨らみを確実に抑制することができ、加えて格子の意匠性を損なうこともない木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
而して本発明の要旨とするところは、左右の縦框並びに上側の横框及び下側の横框とからなる木材の框組みと、該框組み内に組み付けられる
一枚物の面材と、夫々縦格子と横格子とからなり、前記框組み内において前記面材をその表裏面から挟持・固定する、木材の格子とからなる木製格子扉における前記表裏の格子の高さ方向の中央部に位置する夫々の横格子
のみに、その一方側の他方側との対向面に、永久磁石を固着する一方、もう一方側の他方側との対向面に、前記永久磁石に磁力により吸着する金属片を固着し
、経時変化によって表裏の格子の高さ方向の中央部が反って膨らみ、面材との間に隙間が生じることを防止することを特徴とする木製格子扉における格子中央部の膨らみ抑制構造にある。
【0010】
また、上記構成において、面材はガラス板又はアクリル板のいずれかであることが好ましい。
【0011】
また、上記構成において、永久磁石と金属片の夫々の横格子への固着を、夫々の横格子の対向面に穿設した凹部内への、その表面が横格子の表面と面一となるようにした嵌合と、接着剤による接着によって行うようになすことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記の如き構造であり、木製格子扉における表裏の格子の高さ方向の中央部に位置する夫々の横格子に、その一方側の他方側との対向面に、永久磁石を固着する一方、もう一方側の他方側との対向面に、前記永久磁石に磁力により吸着する金属片を固着してなるものであるから永久磁石の磁力による吸着作用を利用して表裏の横格子同士を恒常的に近づけておくことにより、表裏の格子の高さ方向の中央部の反りに基因する膨らみを抑制することができるものである。
【0013】
また、従来の如き面材を分断する手間が不要であると共に、ビスによる締め付けに要する多大な労力と時間が不要で、表裏の格子の夫々の横格子の対向面に、永久磁石と金属片を埋め込むだけの簡単な組み付け作業で済み、加えて格子の表面には何らの美感を損ねるものは存在しないから、格子の意匠性が損なわれることもないものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施した木製格子扉の正面図である。
【
図4】従来の改良された木製格子扉の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図中、1は本発明を実施した木製格子扉である。また、該木製格子扉1は、その基本的な構成自体は従来における木製格子扉と同様であり、左右の縦框2、2並びに上側の横框3及び下側の横框4とからなる木材の框組み5と、該框組み5内に組み付けられるガラス板又はアクリル板からなる
一枚物の面材6と、夫々縦格子7aと横格子7bとからなり、前記框組み5内において前記面材6をその表裏面から挟持・固定する、木材からなる格子7、7とからなるものである。
【0017】
而して本発明は、前記木製格子扉1 における前記表裏の格子7、7の高さ方向の中央部に位置する夫々の横格子7b、7b
のみに、その一方側の他方側との対向面に、永久磁石8を固着する一方、もう一方側の他方側との対向面に、前記永久磁石8に磁力により吸着する金属片9を固着し
、経時変化によって表裏の格子7、7の高さ方向の中央部が反って膨らみ、面材6との間に隙間が生じることを防止することを特徴とするものであり
、このように永久磁石8の磁力による吸着作用を7b、7b同士を恒常的に近づけておくことにより、確実に表裏の格子7、7の高さ方向の中央部の反りに基因する膨らみを抑制することができるものである。
【0018】
また、本発明によれば、従来の如き、分断した面材の隙間に挿通するビスを用いて横格子同士を恒常的に近づけておくものではないから、面材を分断する手間が不要である。
【0019】
また、本実施形態においては、前記表裏の格子7、7の夫々の横格子7b、7bの対向面に、永久磁石8と金属片9を埋め込むだけの簡単な組み付け作業で済むようになしており、具体的には、永久磁石8と金属片9の夫々の横格子7b、7bへの固着を、夫々の横格子7b、7bの対向面に穿設した凹部7b′、7b′内への、その表面が横格子7b、7bの表面と面一となるようにした嵌合と、接着剤(図示せず。)による接着によって行うものである。
【0020】
これにより従来の横格子にビスの挿通孔を穿設し、そしてこれにビスを挿入して何回もネジ回す組み付け作業に比して大幅に労力と時間を軽減することができると共に、組み付け作業中において横格子が割れる虞も解消することができるものである。加えて、永久磁石8と金属片9は横格子7b、7bの表面からは見えず、従来の如きビスの頭部が見えることにより美感を損なうこともないから、意匠性が損なわれることもないものである。
【符号の説明】
【0021】
1 木製格子扉
2、2 左右の縦框
3 上側の横框
4 下側の横框
5 框組み
6 面材
7、7 表裏の格子
7a、7a 縦格子
7b、7b 横格子
7b′、7b′ 凹部
8 永久磁石
9 金属片