(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841804
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-183346(P2018-183346)
(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公開番号】特開2020-49615(P2020-49615A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】本脇 淑雄
【審査官】
稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−247288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/00 − 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの先端に取り付けられる第1部分と、該第1部分に対して着脱可能であり、かつ、ワークを把持可能な一対の把持片を備える第2部分とを備え、
前記第1部分が、前記ロボットに取り付けられる第1ベースと、該第1ベースに対して一方向に第1ストロークで移動可能に支持された第1可動部材と、該第1可動部材を移動させるアクチュエータと、前記第1ベースに設けられ前記第2部分を着脱する着脱機構とを備え、
前記第2部分が、前記着脱機構により着脱される第2ベースと、該第2ベースに対して一方向に前記第1ストロークよりも大きな第2ストロークで移動可能に支持され、かつ、少なくとも一方の前記把持片が固定された第2可動部材とを備え、
前記第1可動部材に、第1係合部が設けられ、
前記第2可動部材に、該第2可動部材の移動方向に、前記第1ストローク以下の間隔をあけて複数設けられ、前記着脱機構による前記第2ベースの装着位置において前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられているロボットハンド。
【請求項2】
前記第1係合部または前記第2係合部の一方が突起、他方が該突起を嵌合させる凹部である請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記アクチュエータがエアシリンダである請求項1または請求項2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記第1可動部材および前記第2可動部材が一対ずつ備えられ、
前記アクチュエータが、一対の前記第1可動部材を同時に逆方向に移動させる請求項1から請求項3のいずれかに記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小さいワークから大きいワークまで把持できるロボットハンドとしては、一対の把持片の開閉間隔を変更可能な大きなストロークを有するサーボハンド(例えば、特許文献1参照。)あるいはエアシリンダ等の長いストロークのアクチュエータを用いたロボットハンドが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−103294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サーボハンドあるいは長いストロークのアクチュエータを有するロボットハンドは、それ自体の重量が大きくなり易いという不都合がある。
本発明は、自重を小さく抑制しながら寸法の大きく異なるワークを把持することができるロボットハンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、ロボットの先端に取り付けられる第1部分と、該第1部分に対して着脱可能であり、かつ、ワークを把持可能な一対の把持片を備える第2部分とを備え、前記第1部分が、前記ロボットに取り付けられる第1ベースと、該第1ベースに対して一方向に第1ストロークで移動可能に支持された第1可動部材と、該第1可動部材を移動させるアクチュエータと、前記第1ベースに設けられ前記第2部分を着脱する着脱機構とを備え、前記第2部分が、前記着脱機構により着脱される第2ベースと、該第2ベースに対して一方向に前記第1ストロークよりも大きな第2ストロークで移動可能に支持されかつ少なくとも一方の前記把持片が固定された第2可動部材とを備え、前記第1可動部材に、第1係合部が設けられ、前記第2可動部材に、該第2可動部材の移動方向に、前記第1ストローク以下の間隔をあけて複数設けられ、前記着脱機構による前記第2ベースの装着位置において前記第1係合部に係合する第2係合部が設けられているロボットハンドである。
【0006】
本態様によれば、ロボットの作動により先端に取り付けた第1部分を第2部分との装着位置まで移動させることにより、第1部分の第1可動部材に設けられた第1係合部を第2部分の第2可動部材に設けられたいずれかの第2係合部に係合させた状態で、着脱機構の作動により、第1部分に第2部分を装着状態にする。これにより、アクチュエータの作動により第1可動部材を一方向に第1ストロークで往復移動させると、第2可動部材も一方向に第1ストロークで往復移動させられ、そのときの一対の把持片のストローク範囲内に配置される大きさのワークを把持することができる。
【0007】
一対の把持片のストローク範囲(第1のストローク範囲という。)よりも大きなワークを把持する場合には、アクチュエータの作動によって、一対の把持片が最も離れた状態として、着脱機構の作動により、第1部分と第2部分とを切り離し、第1係合部と第2係合部との係合が解除される位置まで第1部分を退避させる。この状態で、アクチュエータを作動させて、第2係合部の間隔の整数倍分だけ把持片どうしを近接させ、再度、第1部分を第2部分の装着位置に配置する。
【0008】
これにより、第1係合部と第2係合部とが再度係合した状態となるので、この位置で、着脱機構により第1部分に第2部分を装着すれば、一対の把持片は、上述した第1のストローク範囲の外側において第1ストロークで往復移動する新たなストローク範囲で動作するようになる。この新たなストローク範囲よりもさらに大きなワークを把持する場合には、上記動作を繰り返すことにより、一対の把持片間の間隔を徐々に大きくして行くことができる。
すなわち、本態様によれば、小さいストロークで駆動するアクチュエータを用いて、自重を小さく抑制しながら寸法の大きく異なるワークを把持することができる。
【0009】
上記態様においては、前記第1係合部または前記第2係合部の一方が突起、他方が該突起を嵌合させる凹部であってもよい。
この構成により、第1部分を第2部分との装着位置に移動させる動作により、突起と凹部とを簡易に係合させて、アクチュエータの動作により一対の把持片の間隔を変化させることができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記アクチュエータがエアシリンダであってもよい。
この構成により、第1ストロークが十分に短い場合には、アクチュエータをエアシリンダによって構成することにより、第1部分の効率的な小型軽量化を図ることができる。
【0011】
また、上記態様においては、前記第1可動部材および前記第2可動部材が一対ずつ備えられ、前記アクチュエータが、一対の前記第1可動部材を同時に逆方向に移動させてもよい。
この構成により、一対の第1可動部材にそれぞれ設けられた第1係合部を、一対の第2可動部材にそれぞれ設けられた第2係合部に係合させて、一対の第1可動部材を同時に逆方向に移動させることにより、一対の第2可動部材に設けられた一対の把持片を同時に逆方向に移動させ、両開き構造のロボットハンドを構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、自重を小さく抑制しながら寸法の大きく異なるワークを把持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドの第1部分と第2部分とが分離した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1のロボットハンドの作用を説明するフローチャートである。
【
図3】
図1のロボットハンドの一対の把持片を最大限に離間させ、第1部分を第2部分との装着位置に配置した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3の把持片の間隔をシリンダのストローク分短くした状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3の状態で着脱機構により第1部品と第2部品とを連結したロボットハンドにより、幅寸法の大きなワークを把持する動作を説明する斜視図である。
【
図6】
図5のロボットハンドをワークの把持位置に配置した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6のロボットハンドによりワークを把持した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図4のロボットハンドの第1部分を第2部分から離間した状態を示す斜視図である。
【
図9】
図8のロボットハンドの第1部分の第1可動部材を最大限に近接させた状態を示す斜視図である。
【
図10】着脱機構により第1部品と第2部品とを連結したロボットハンドにより、幅寸法の小さなワークを把持する動作を説明する斜視図である。
【
図11】
図10のロボットハンドをワークの把持位置に配置した状態を示す斜視図である。
【
図12】
図11のロボットハンドによりワークを把持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係るロボットハンド1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るロボットハンド1は、
図1に示されるように、ロボットの先端に取り付けられる第1部分2と、第1部分2に着脱可能な第2部分3とを備えている。
【0015】
第1部分2は、ロボットの先端に取り付けられる第1ベース4と、第1ベース4に対して一方向に沿って直線移動可能に支持された一対の第1可動部材5と、第1ベース4に固定され一対の第1可動部材5を同時に逆向きに移動させるシリンダ(アクチュエータ)6、例えばエアシリンダと、第1ベース4に固定されたATC(着脱機構)7とを備えている。シリンダ6による一対の第1可動部材5のそれぞれのストロークは所定の第1ストロークである。
【0016】
ATC7は、第1部分2を取り付けたロボットを、第1可動部材5の移動方向に直交する方向(以下、着脱方向という。)に直線移動させることにより第1部分2を第2部分3に近接させて、第2部分3を着脱する。
各第1可動部材5の上述した着脱方向の先端面には、着脱方向に延びるピン(第1係合部、突起)8が設けられている。各第1可動部材5のピン8は、着脱方向に直交する方向に所定寸法だけずれた位置に配置されている。
【0017】
第2部分3は、ATC7によって着脱される着脱部9を備える第2ベース10と、第2ベース10に対して一方向に沿って直線移動可能に支持された一対の第2可動部材11と、各第2可動部材11に固定され、対向配置された一対の把持片12とを備えている。
第2可動部材11は、第1ストロークよりも十分に大きな第2ストロークだけ直線移動可能に第2ベース10に支持されている。
【0018】
各第2可動部材11は、ATC7が着脱部9を装着する位置に配置されたときに、各第1可動部材5の先端面が突き当たる位置に配置されているとともに、第1可動部材5に設けられたピン8を嵌合可能な複数の孔(第2係合部、凹部)13をそれぞれ備えている。孔13は、第2可動部材11の移動方向に第1ストロークと同じ間隔をあけて等間隔に複数配列されている。
一対の第2可動部材11は、移動方向に直交する方向に所定寸法だけずれて平行に配置されている。第2可動部材11のズレ量は、上述した第1可動部材5のピン8のズレ量に等しい。
【0019】
このように構成された本実施形態に係るロボットハンド1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係るロボットハンド1を用いて最も大きいワーク(
図5参照)Wを把持するには、
図1に示されるように、第2部分3の一対の把持片12が最も離間した位置に配置されている状態とする。そして、
図2に示されるように、係数Nを初期化し(ステップS1)、第1部分2のシリンダ6の作動により一対の第1可動部材5を最も近接させた状態とする(ステップS2)。
【0020】
ロボットを作動させて第1部分2を着脱方向に移動させることによって、第2部分3に近接させ、
図3に示されるように、ATC7を着脱部9の装着位置に配置する(ステップS3)。この位置で、第1部分2に設けられている第1可動部材5の先端面が、第2部分3の第2可動部材11に突き当たる位置に配置され、第1可動部材5のピン8が第2可動部材11の孔13に嵌合する。これにより、第1可動部材5と第2可動部材11とが、第1可動部材5および第2可動部材11の移動方向に係合する。
【0021】
この状態で、
図4に示されるように、シリンダ6を駆動して、矢印に示されるように、一対の第1可動部材5を相互に最大限に離間させることにより(ステップS4)、第1可動部材5に係合している第2可動部材11を近接させることができる。すなわち、この状態では、一対の把持片12は、最も離間した間隔Aから、シリンダ6のストロークBでそれぞれ移動することができ、以下の条件式(1)に示される幅寸法Xを有するワークWを把持することができる。
A−2NB<X≦A
−2(N−1)B (1)
【0022】
幅寸法Xが上記条件式(1)を満足するワークWである場合(ステップS5)には、ATC7の作動により着脱部9を装着することにより、第1部分2と第2部分3とを連結して一体のロボットハンド1を構成する(ステップS6)。
これにより、
図5から
図7に示されるように、短いストロークのシリンダ6の駆動により最大限の幅寸法を有するワークWを把持することができる。
【0023】
幅寸法Xが条件式(1)の下限以下のワークWを把持するには、
図8に示されるように、ロボットの作動により第1部分2を第2部分3から着脱方向に一旦離間させ(ステップS7)、係数Nをインクリメントして(ステップS8)、
図9に示されるように、ステップS2からの工程を繰り返す。
【0024】
これにより、ピン8を嵌合させる孔13を隣接する孔13に係合させることができ、把持片12のストローク範囲を内側に移動させ、
図10から
図12に示されるように、より小さな幅寸法のワークWを把持することができる。
このように、本実施形態に係るロボットハンド1によれば、シリンダ6のストロークを比較的小さい第1ストロークに抑えつつ、第1ストロークではカバーできない範囲で大きさの異なるワークWを把持することができる。すなわち、小さいストロークで駆動するシリンダ6を用いて、自重を小さく抑制しながら寸法の大きく異なるワークWを把持することができるという利点がある。
【0025】
なお、本実施形態においては、第1部分2の第1可動部材5の移動方向と、第2部分3の第2可動部材11の移動方向とを逆方向にしたが、これに限定されるものではなく、同一方向に移動させることにしてもよい。
また、第1可動部材5にピン8、第2可動部材11に孔13を設けたが、逆でもよい。
【0026】
また、第2可動部材11に、シリンダ6のストロークと同一のピッチで複数の孔13を設けたが、ストロークを調整できるアクチュエータであれば、孔13の間隔はアクチュエータの第1ストロークと同一である必要はなく、第1ストローク以下であればよい。ストロークを調整できるアクチュエータとしてモータおよびボールねじ等の直動機構を採用してもよい。
【0027】
また、本実施形態においては、第1可動部材5および第2可動部材11を一対ずつ設けることにより、一対の把持片12を両方とも同一ストロークで逆方向に移動させるロボットハンド1を構成したが、これに代えて、第1可動部材5および第2可動部材11を1つずつ設け、一方の把持片12を固定してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 ロボットハンド
2 第1部分
3 第2部分
4 第1ベース
5 第1可動部材
6 シリンダ(アクチュエータ)
7 ATC(着脱機構)
8 ピン(第1係合部、突起)
10 第2ベース
11 第2可動部材
12 把持片
13 孔(第2係合部、凹部)
W ワーク