特許第6841806号(P6841806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841806
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】回転力伝達部品
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/18 20060101AFI20210301BHJP
   F16H 55/14 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   F16H55/18
   F16H55/14
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-190420(P2018-190420)
(22)【出願日】2018年10月5日
(65)【公開番号】特開2020-60213(P2020-60213A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2020年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 元貴
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0341183(US,A1)
【文献】 特開2005−337333(JP,A)
【文献】 実開平05−032862(JP,U)
【文献】 特開2016−145630(JP,A)
【文献】 特開平05−248513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/18
F16H 55/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材に対して軸受により所定の軸線回りに回転可能に支持され、前記軸線を中心とする円筒外面または円筒内面からなる第1嵌合面を備える回転支持部材と、
第2部材との間で回転力を伝達し、前記第1嵌合面に嵌合する第2嵌合面を備える回転力伝達部材と、
前記第1嵌合面と前記第2嵌合面との間に配置され、前記第1嵌合面と前記第2嵌合面との径方向の隙間を密封する円環状の弾性部材と、
前記第1嵌合面と前記第2嵌合面とを嵌合させた状態で前記回転力伝達部材と前記回転支持部材とを固定する固定部材とを備え、
前記弾性部材がOリングである回転力伝達部品。
【請求項2】
前記回転支持部材がシャフトであり、前記第1嵌合面が円筒外面である請求項1に記載の回転力伝達部品。
【請求項3】
前記回転力伝達部材がギヤ、プーリまたはスプロケットである請求項1または請求項2に記載の回転力伝達部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力伝達部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ギヤと、ギヤを軸受によって回転可能に支持するためのシャフトとを別部品で構成し、両者を同心に組み付けて使用する回転力伝達部品が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
ギヤとシャフトとを同心に組み付けるために、両者に嵌め合う軸部と孔部とからなる嵌合部を設け、嵌合部の嵌め合い公差を小さくして同軸度を向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−163374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、嵌め合い公差を小さくすると、加工にコストがかかるとともに、組立容易性が低下し、嵌め合い公差を大きくすると、加工コストの低減および組立容易性の向上を図ることができる反面、ギヤとシャフトとの偏心量が増大し、ギヤの回転位相によってバックラッシが大小変動的になるという不具合がある。
本発明は、加工コストの低減および組立容易性の向上を図りながら偏心量を低減することで、安定したバックラッシが得られる回転力伝達部品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1部材に対して軸受により所定の軸線回りに回転可能に支持され、前記軸線を中心とする円筒外面または円筒内面からなる第1嵌合面を備える回転支持部材と、第2部材との間で回転力を伝達し、前記第1嵌合面に嵌合する第2嵌合面を備える回転力伝達部材と、前記第1嵌合面と前記第2嵌合面との間に配置され、前記第1嵌合面と前記第2嵌合面との径方向の隙間を密封する円環状の弾性部材と、前記第1嵌合面と前記第2嵌合面とを嵌合させた状態で前記回転力伝達部材と前記回転支持部材とを固定する固定部材とを備え、前記弾性部材がOリングである回転力伝達部品である。
【0006】
本態様によれば、回転支持部材の第1嵌合面と、回転力伝達部材の第2嵌合面とを嵌合させる際に、両者間を密封する位置に円環状の弾性部材を配置することにより、第1嵌合面と第2嵌合面との嵌め合い公差が大きい場合であっても、円環状の弾性部材の弾発力が全周にわたって均一に作用することにより、第1嵌合面と第2嵌合面との径方向の隙間が全周にわたって一定に維持され、回転支持部材と回転力伝達部材とが調芯される。
【0007】
この状態で固定部材によって回転支持部材と回転力伝達部材とを固定することにより、回転支持部材と回転力伝達部材とが調芯された回転力伝達部品を構成することができる。
すなわち、第1嵌合面と第2嵌合面との間の嵌め合い公差を過度に小さくする必要がないので、加工コストの低減および組立容易性の向上を図ることができるとともに、容易に調芯を図って偏心量を低減することで、安定したバックラッシを得ることができる。
【0008】
上記態様においては、前記回転支持部材がシャフトであり、前記第1嵌合面が円筒外面であってもよい。
この構成により、シャフトの円筒外面からなる第1嵌合面に、回転力伝達部材の円筒内面からなる第2嵌合面を嵌合させる際に、両者間に円環状の弾性部材を配置することにより、シャフトと回転力伝達部材との調芯を図ることができる。
【0009】
また、上記態様においては、前記回転力伝達部材がギヤ、プーリまたはスプロケットであってもよい。
この構成により、回転力伝達部材がギヤの場合には、偏心量の低減によってバックラッシの変動を抑制し、プーリまたはスプロケットの場合には、ベルトまたはチェーンの張力の変動を抑制することができる。
【0010】
また、上記態様においては、前記弾性部材がOリングであ
この構成により、標準的な機械部品であるOリングによって、簡易かつ低コストに調芯を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加工コストの低減および組立容易性の向上を図りながら偏心量を低減することで、安定したバックラッシを得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る回転力伝達部品を示す縦断面図である。
図2図1の回転力伝達部品の分解縦断面図である。
図3図1の回転力伝達部品の変形例を示す縦断面図である。
図4図3の回転力伝達部品の分解縦断面図である。
図5図1の回転力伝達部品の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る回転力伝達部品1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る回転力伝達部品1は、図1および図2に示されるように、ロッド(第1部材、図示略)に軸受によって軸線A回りに回転可能に支持されるシャフト(回転支持部材)2と、外面に、他のギヤ(第2部材、図示略)と噛み合うギヤ4を備える平歯車部材(回転力伝達部材)3と、Oリング(弾性部材)5と、ボルト(固定部材)6とを備えている。
【0014】
シャフト2は、円筒外面(第1嵌合面)7と、ロッドを貫通させる中央孔8とを有する円筒部9と、円筒部9の軸方向の一端に径方向外方に延びる鍔状のフランジ部10とを備えている。円筒外面7にはOリング5を収容するOリング溝11が設けられている。フランジ部10には、ボルト6を板厚方向に貫通させる貫通孔12が周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0015】
平歯車部材3は、シャフト2の円筒外面7に嵌合する円筒内面(第2嵌合面)13を有するリング板状に形成されている。平歯車部材3には、シャフト2のフランジ部10の貫通孔12を貫通したボルト6を締結させる雌ネジ14が、貫通孔12と同じ位置関係で複数設けられている。
【0016】
このように構成された本実施形態に係る回転力伝達部品1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る回転力伝達部品1を組み立てるには、シャフト2の円筒部9の円筒外面7に設けられたOリング溝11内にOリング5を収容し、Oリング5を径方向に圧縮しながら円筒外面7に円筒内面13を嵌合させる。これにより、平歯車部材3がシャフト2に取り付けられるので、平歯車部材3に設けられた雌ネジ14とシャフト2のフランジ部10に設けられた貫通孔12との位相を合わせて、貫通孔12にボルト6を挿入し雌ネジ14に締結する。これにより、シャフト2と平歯車部材3とが固定された回転力伝達部品1が構成される。
【0017】
本実施形態に係る回転力伝達部品1によれば、シャフト2の円筒外面7と平歯車部材3の円筒内面13との間に挟まれたOリング5の弾発力によって、円筒外面7に対して円筒内面13が、全周にわたって径方向外方に均等に押圧される。その結果、円筒外面7と円筒内面13との間の嵌め合い公差が大きく設定されていても、円筒外面7に対して円筒内面13が調芯されて、シャフト2の軸線Aと平歯車部材3の軸線とが精度よく一致させられる。
【0018】
このようにして精度よく調芯された状態のシャフト2と平歯車部材3とを、周方向に複数配置されたボルト6によって均等に固定することにより、シャフト2の中央孔8の内面に対するギヤ4の偏心量を小さく抑えることができ、回転に伴う他のギヤとの間のバックラッシの変動を防止することができるという利点がある。
また、嵌め合い公差を過度に小さくする必要がないので、加工コストを低減することができるとともに、組立容易性の向上を図ることができるという利点がある。
【0019】
平歯車部材3とシャフト2とを別部材により構成することによって、一体部品として製造する場合と比較して、材料の無駄をなくすことができるとともに、ギヤ4およびシャフト2にそれぞれ適した材料を使用することができる。
【0020】
なお、本実施形態においては、ギヤ4として平歯車を例示したが、ハス歯歯車であってもよいし、他の任意の形態のギヤを採用してもよい。
ギヤ4として傘歯歯車を採用した場合を図3および図4に示す。回転力伝達部品1の構造は平歯車部材3を用いた場合と同様であるが、バックラッシ調整用のシム16をシャフト2のフランジ部10と傘歯歯車部材(回転力伝達部材)15との間に軸方向に挟むことにしてもよい。
【0021】
また、動力伝達部材としてギヤ4を例示したが、これに代えて、ベルトによって他のプーリ(第2部材)に回転力を伝達するプーリを採用してもよいし、チェーンによって他のスプロケット(第2部材)に回転力を伝達するスプロケットを採用してもよい。
また、回転支持部材としてシャフト2が中央孔8を有する中空軸のものを例示したが、これに代えて中実軸のものを採用してもよい。
【0022】
また、本実施形態においては、回転支持部材と回転力伝達部材とを固定する固定手段として、フランジ部10の貫通孔12を貫通させたボルト6を平歯車部材3の雌ネジ14に締結するものを例示したが、これに代えて、フランジ部10に雌ネジ14、平歯車部材3に貫通孔12を設け、フランジ部10の雌ネジ14にボルト6を締結していくと、ボルト6が平歯車部材3の挿入孔12に挿入されるものを採用してもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、シャフト2がフランジ部10を備えているものを例示したが、これに代えて、図5に示されるように、平歯車部材3がフランジ部17を備えているものを採用してもよい。また、図5においては、平歯車部材3のフランジ部17に貫通孔18、シャフト2に雌ネジ14が設けられているが、これに代えて、平歯車部材3のフランジ部17に雌ネジ14、シャフトに貫通孔18が設けられているものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 回転力伝達部品
2 シャフト(回転支持部材)
3 平歯車部材(回転力伝達部材)
5 Oリング(弾性部材)
6 ボルト(固定部材)
7 円筒外面(第1嵌合面)
13 円筒内面(第2嵌合面)
15 傘歯歯車部材(回転力伝達部材)
A 軸線
図1
図2
図3
図4
図5