【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
以下に説明するように、本発明の各種ジエステル化合物(香料前駆体)を合成した。
【0048】
(1)香料前駆体の合成1:4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレート
下記式(1)の4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレートを、下記反応経路(1)に従って合成した。
【0049】
【化4】
【0050】
【化5】
【0051】
50mLフラスコにモノ−l−メンチルグルタレート(10.0g,37mmol)を仕込み、40℃に加温して攪拌しつつ、塩化チオニル4.4g(37mmol)を滴下して酸クロリドを得た。次いで、塩化カルシウム管を備えた50mL二口フラスコに、バニリン(4.6g,0.03mol)およびピリジン(10.0g,0.125mol)を仕込み、氷水冷下で撹拌した。ここに前工程で得た酸クロリド(7.4g,0.025mol)のn−ヘキサン(10g)溶液を氷水冷下0.5時間かけて滴下した。氷水冷下で1時間撹拌後、室温下で終夜撹拌した。反応液を氷水に空け、エーテル抽出した。得られるエーテル層を希塩酸、重層水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣(10.2g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×20cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、目的物である4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレート(8.8g)を得た(収率87%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0052】
4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
9.93(s,1H),7.47(d,J=2.0Hz,1H),7.44(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),7.21(d,J=8.0Hz,1H),4.71(dt,J=11,4.4Hz,1H),3.88(s,3H),2.65(br.t,J=6.8Hz,2H),2.45(br.t,J=8.0Hz,2H),2.00〜1.94(m,1H),1.95(d.sept,J=7,2.8Hz,1H),1.8〜1.7(m,2H),1.68〜1.61(m,2H),1.52〜1.40(m,1H),1.40〜1.32(m,1H),1.06〜0.98(m,1H),0.95(q,J=11Hz,1H),0.89(d,J=7Hz,3H),0.86(d,J=7Hz,3H),0.88〜0.79(m,1H),0.74(d,J=7Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
191.04、172.39、170.44、151.88、144.92、135.19、124.78、123.36、110.71、74.30、56.02、47.00、40.94、34.21、33.39、33.01、31.36、26.28、23.38、22.01、21.75、20.30、16.28
IR(液膜法):2950、2875、1765、1730、1700、1605、1500、1455、1420、1385、1280、1205、1130、1030、720cm
−1
【0053】
(2)香料前駆体の合成2:4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル サクシネート
下記式(2)の4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル サクシネートを、下記反応経路(2)に従って合成した。
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
Physcool(登録商標)2.94g(11.5mmol)、バニリン1.53g(10.1mmol)および触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)をCH
2Cl
2(7mL)に溶かし、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.89g(15.0mmol)を滴下し、室温で22.5時間撹拌した。無色の沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄後、濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(4.70g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×20cm L,n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、目的物である4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル サクシネート(3.79g)を得た(収率97%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0057】
4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル サクシネートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
9.92(s,1H),7.47(d,J=2.0Hz,1H),7.45(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),7.21(d,J=8.0Hz,1H),4.71(dt,J=11,4.4Hz,1H),3.87(s,3H),2.92(br.t,J=6.8Hz,2H)/2.71(br.t,J=6.8Hz,2H)),2.00〜1.94(m,1H),1.84(d.sept,J=7,2.8Hz,1H),1.68〜1.61(m,2H),1.52〜1.40(m,1H),1.40〜1.32(m,1H),1.08〜0.98(m,1H),0.95(q,J=11Hz,1H),0.87(d,J=7Hz,3H),0.85(d,J=7Hz,3H),0.88〜0.79(m,1H),0.72(d,J=7Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
191.01,171.43,169.86,151.88,144.83,135.17,124.72,123.39,110.72,74.74,56.05,46.95,40.82,34.17,31.34,29.34/29.01,26.22,23.37,21.98,20.71,16.26
IR(液膜法):2950、2860、2720、1770、1720、1700、1600、1500、1460、1420、1380、1270、1195、1120、1030、990、980、880、790、740cm
−1
【0058】
(3)香料前駆体の合成3:4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル アジペート
下記式(3)の4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル アジペートを、下記反応経路(3)に従って合成した。
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
l−メントール2.53g(16.2mmol)、アジピン酸2.37g(16.2mmol)をCH
2Cl
2(10mL)およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(7g)の混合溶媒に溶かし、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)3.06g(24.2mmol)を滴下し、室温で24時間撹拌後、さらにN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)0.40g(3.3mmol)を加え、58℃に加熱しながら3.5時間撹拌した。バニリン2.47g(16.2mmol)およびN,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)2.04g(16.2mmol)を加え、58℃で7.5時間、室温で62時間撹拌した。ここで反応を停止し、沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(8.80g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×34.5cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)にて精製し、目的物である4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル アジペート(1.75g)を得た(収率26%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0062】
4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル アジペートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
9.90(s,1H),7.45(d,J=1.6Hz,1H),7.44(dd,J=7.6,1.6Hz,1H),7.17(d,J=7.6Hz,1H),4.66(dt,J=11,4.5Hz,1H),3.86(s,3H),2.60(br.t,J=7.0Hz,2H),2.33(br.t,J=6.8Hz,2H),1.98〜1.92(m,1H),1.83(d.sept,J=6.8,2.8Hz,1H),1.8〜1.7(m,4H),1.68〜1.60(m,2H),1.52〜1.39(m,1H),1.37〜1.29(m,1H),1.07〜0.97(m,1H),0.93(q,J=12Hz,1H),0.86(d,J=6.8Hz,3H)/0.85(d,J=6.8Hz,3H),0.87〜0.77(m,1H),0.72(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
190.98,172.76,170.65,151.88,144.92,135.10,124.68,123.31,110.68,74.05,55.96,46.93,40.88,34.17,34.17,33.52,31.29,26.21,24.29/24.26,23.32,21.96,20.69,16.22
IR(液膜法):2950、2860、2730、1770、1720、1700、1600、1500、1460、1420、1390、1270、1145、1120、1030、990、910、790、730cm
−1
【0063】
(4)香料前駆体の合成4:4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル セバケート
下記式(4)の4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル セバケートを、下記反応経路(4)に従って合成した。
【0064】
【化10】
【0065】
【化11】
【0066】
l−メントール1.61g(10.3mmol)およびバニリン1.57g(10.3mmol)をCH
2Cl
2(10mL)に溶かし、ピリジン4.07g(51.5mmol)を加え、さらに氷冷下、塩化セバコイル2.62g(11.0mmol)を加え、0℃で20分撹拌後、室温で19時間撹拌した。反応液中に水を加えて沈殿を溶かし、エーテル抽出を行った。有機層を1N HCl水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(4.78g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×19cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1〜5:1)にて精製し、5:1で、4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル セバケート(1.20g)を得た(収率25%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0067】
4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル セバケートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
9.93(s,1H),7.47(d,J=1.7Hz,1H),7.45(dd,J=7.6,1.7Hz,1H),7.19(d,J=7.6Hz,1H),4.65(dt,J=11,4.7Hz,1H),3.87(s,3H),2.58(br.t,J=7.6Hz,2H),2.26(br.t,J=7.6Hz,2H),1.99〜1.93(m,1H),1.84(d.sept,J=6.8,2.8Hz,1H),1.74(br.quint,J=7.7Hz,2H),1.7〜1.6(m,2H),1.60〜1.55(m,2H),1.5〜1.35(m,2H),1.35〜1.3(m,8H),1.08〜0.97(m,1H),0.93(q,J=12Hz,1H),0.88(d,J=6.8Hz,3H),0.87(d,J=6.8Hz,3H),0.9〜0.79(m,1H),0.73(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
191.08,173.40,171.18,151.98,145.07,135.10,124.80,123.42,110.71,73.88,56.04,47.00,40.95,34.71,34.25,33.95,31.36,29.10/29.08/29.05/28.94,26.22,25.08/24.87,23.37,22.02,20.77,16.27
【0068】
(5)香料前駆体の合成5:l−メンチル テトラヒドロリナリル グルタレート
下記式(5)のl−メンチル テトラヒドロリナリル グルタレートを、下記反応経路(5)に従って合成した。
【0069】
【化12】
【0070】
【化13】
【0071】
モノ−l−メンチルグルタレート2.70g(9.99mmol)を塩化メチレン(6.5mL)に溶かし、テトラヒドロリナロール1.58g(9.98mmol)及びN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)0.15g(1.2mmol)を加え、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.89g(15.0mmol)を滴下し、35℃の湯浴上で6時間、さらに室温で63.5時間撹拌した。この時点で反応を停止し、沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(5.12g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×19.5cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=25:1)にて精製し、l−メンチル テトラヒドロリナリル グルタレート(2.02g)を得た(収率49%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0072】
l−メンチル テトラヒドロリナリル グルタレートの物性データ
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
4.64(dt,J=11,4.4Hz,1H),2.29(br.t,J=7.2Hz,2H),2.24(t,J=7.2Hz),1.96〜1.90(m,1H),1.86(br.quint,J=7.2Hz),1.85〜1.75(m,1H),1.85〜1.65(m,2H),1.8〜1.6(m,2H),1.66〜1.58(m,2H),1.52〜1.37(m,2H),1.35〜1.3(m,1H),1.33(s,3H),1.24〜1.16(m,2H),1.13〜1.08(m,2H),1.06〜0.95(m,1H),0.91(br.q,J=11Hz,1H),0.86〜0.80(m,16H),0.70(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
172.54,172.07,85.23,74.04,46.91,40.86,39.16,37.94,34.47,34.19,33.73,31.30,30.82,27.73,26.17,23.31,23.28,22.54/22.54,21.96,21.27,20.71,20.52,16.20,7.94
IR(液膜法):2950、2865、1730、1460、1420、1320、1240、1180、1135、1020、980cm
−1
【0073】
(6)香料前駆体の合成6:cis−3−ヘキセニル l−メンチル グルタレート
下記式(6)のcis−3−ヘキセニル l−メンチル グルタレートを、下記反応経路(6)に従って合成した。
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
モノ−l−メンチルグルタレート2.70g(9.99mmol)を塩化メチレン(6.5mL)に溶かし、cis−3−ヘキセノール1.00g(9.98mmol)および触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を加え、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.89g(15.0mmol)を滴下し、0℃で40分、さらに室温で17.5時間撹拌した。沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(3.92g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×16cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=25:1)にて精製し、cis−3−ヘキセニル l−メンチル グルタレート(3.31g)を得た(収率94%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0077】
cis−3−ヘキセニル l−メンチル グルタレートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
5.50〜5.43(m,1H),5.30〜5.24(m,1H),4.65(dt,J=11,4.4Hz,1H),4.04(t,J=6.8Hz,2H),2.36〜2.29(m,6H),2.02(br.quint,J=7.6Hz,2H),1.96〜1.9(m,1H),1.89(br.quint,J=7.2Hz,2H),1.81(d.sept,J=6.8,2.8Hz,1H),1.67〜1.60(m,2H),1.51〜1.38(m,1H),1.36〜1.29(m,1H),1.07〜0.95(m,1H),1.0〜0.9(m,1H),0.93(t,J=7.6Hz,3H),0.86(t,J=6.8Hz,3H)/0.85(t,J=6.8Hz,3H),0.9〜0.77(m,1H),0.71(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
172.93,172.44,134.52,123.61,74.12,63.88,46.92,40.87,34.19,33.63/33.27,31.32,29.67,26.21,23.34,21.97,20.71,20.55/20.25,16.23,14.19
IR(液膜法):3010、2955、2925、2870、1735、1460、1420、1385、1365、1305、1240、1175、1140、1060、1135、1015、980cm
−1
【0078】
(7)香料前駆体の合成7:l−メンチル 4−(3−オキソブチル)フェニル グルタレート
下記式(7)のl−メンチル 4−(3−オキソブチル)フェニル グルタレートを、下記反応経路(7)に従って合成した。
【0079】
【化16】
【0080】
【化17】
【0081】
モノ−l−メンチルグルタレート2.70g(9.99mmol)を塩化メチレン(7.5mL)に溶かし、ラズベリーケトン1.64g(9.99mmol)および触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を加え、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.89g(15.0mmol)を滴下し、室温で21時間撹拌した。沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(4.34g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×17cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=10:1〜5:1)にて精製し、l−メンチル 4−(3−オキソブチル)フェニル グルタレート(3.95g)を得た(収率95%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0082】
l−メンチル 4−(3−オキソブチル)フェニル グルタレートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
7.16(br.d,J=8.8Hz,2H),6.96(br.d,J=8.8Hz,2H),4.68(dt,J=11,4.4Hz,1H),2.86(t,J=7.4Hz,2H),2.72(t,J=7.4Hz,2H),2.59(t,J=7.4Hz,2H),2.41(br.t,J=7.4Hz,2H),2.12(s,3H),2.04(br.quint,J=7.4Hz,2H),1.98〜1.94(m,1H),1.84(d.sept,J=6.8,2.8Hz,1H),1.69〜1.62(m,2H),1.53〜1.40(m,1H),1.39〜1.32(m,1H),1.09〜0.98(m,1H),0.95(br.q,J=11Hz,1H),0.88(t,J=6.8Hz,3H)/0.86(t,J=6.8Hz,3H),0.9〜0.79(m,1H),0.74(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
207.67,172.37,172.40,148.84,138.55,129.24,129.24,121.44,121.44,74.28,46.95,45.06,40.89,34.19,33.49/33.30,31.34,30.07,28.98,26.26,23.36,21.99,20.73,20.12,16.27
IR(KBr錠剤法):2950、2895,2860、1750、1725、1710、1510、1450、1420、1380、1370、1320、1295、1230、1210、1190、1165、1140、1020、970
【0083】
(8)香料前駆体の合成8:オイゲニル l−メンチル グルタレート
下記式(8)のオイゲニル l−メンチル グルタレートを、下記反応経路(8)に従って合成した。
【0084】
【化18】
【0085】
【化19】
【0086】
モノ−l−メンチルグルタレート2.72g(10.1mmol)をCH
2Cl
2(6.5mL)に溶かし、オイゲノール1.66g(10.1mmol)および触媒量のN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)を加え、氷冷下、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)1.91g(15.1mmol)を滴下し、室温で20時間撹拌した。沈殿を濾別し、酢酸エチルで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(4.78g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(48mm i.d.×18.5cm L、n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1)にて精製し、精製物(3.95g)を得た。これに対し、再度シリカゲルカラムクロマトグラフィー(33mm i.d.×37cm L、トルエン:アセトン=50:1〜5:1)にて精製し、オイゲニル l−メンチル グルタレート(3.34g)を得た(収率80%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0087】
オイゲニル l−メンチル グルタレートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
6.91(d,J=8.0Hz,1H),6.76(d,J=2.0Hz,1H),6.73(dd,J=8.0,2.0Hz,1H),5.93(ddt,J=17,10,6.8Hz,1H),5.11〜5.04(m,2H),4.68(dt,J=11,4.4Hz,1H),3.78(s,3H),3.35(br.d,J=6.8Hz,2H),2.61(t,J=7.2Hz,2H),2.44(br.t,J=7.2Hz,2H),2.06(br.quint,J=7.2Hz,2H),2.00〜1.95(m,1H),1.85(d.sept,J=6.8,2.8Hz,1H),1.69〜1.62(m,2H),1.53〜1.41(m,1H),1.39〜1.32(m,1H),1.09〜0.98(m,1H),0.95(br.q,J=11Hz,1H),0.9〜0.79(m,1H),0.88(t,J=6.4Hz,3H),0.87(t,J=6.8Hz,3H),0.74(d,J=6.8Hz,3H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
172.41,171.11,150.68,138.84,137.83,136.94,122.34,120.54,116.04,112.54,74.07,55.60,46.92,40.85,39.98,34.15,33.40,32.97,31.28,26.17,23.30,21.94,20.68,20.36,16.20
IR(液膜法):2980、2950、2865、1760、1730、1640、1605、1510、1455、1420、1370、1200、1130、1035、980、915cm
−1
【0088】
(9)香料前駆体の合成9:シクロヘキシル 4−ホルミル−2−メトキシフェニル グルタレート
下記式(9)のシクロヘキシル 4−ホルミル−2−メトキシフェニル グルタレートを、下記反応経路(9)−1〜2に従って合成した。
【0089】
【化20】
【0090】
【化21】
【0091】
シクロヘキサノール10.27g(102.5mmol)をトルエン(22g)に溶かし、95℃に加熱した。そこに、グルタル酸無水物12.84g(112.5mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物(p−TsOH・H
2O)0.20g(1.1mmol)をトルエン(50g)−ジメチルエーテル(7mL)の混合溶媒に溶かした溶液を30分かけて滴下し、95℃で5.5時間加熱を続け、さらに室温で13.5時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和NaHCO
3水溶液、飽和食塩水で洗浄した。全ての有機層を合わせて無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(23.09g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(47mm i.d. x 45cm L,n−ヘキサン−酢酸エチル=3:1〜2:1)にて精製し、17.59gを得た(収率80%)。このものを次の反応経路(9)−2の出発物質とした。
【0092】
【化22】
【0093】
次いで、反応経路(9)−2の出発物質3.00g(14.0mmol)、バニリン2.13g(14.0mmol)、DMAP(触媒量)をジクロロメタン(3〜4mL)に溶かし、氷冷下、DIC2.65g(21.0mmol)を滴下し、2℃で10分撹拌後、室温で18時間撹拌した。沈殿を濾別し、酢酸エチルでよく洗浄した。濾液と洗浄液を合わせて飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、エバポレーターで溶媒を溜去し、残渣(5.48g)を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(47mm i.d.x26cm L,n−ヘキサン−酢酸エチル=15:1〜4:1)にて精製し、シクロヘキシル 4−ホルミル−2−メトキシフェニル グルタレート(4.55g)を得た(収率93%)。得られた化合物の物性値を以下に示す。
【0094】
シクロヘキシル 4−ホルミル−2−メトキシフェニル グルタレートの物性データ:
1H−NMR(400MHz、CDCl
3):δppm
9.90(s,1H),7.45(d,J=1.6Hz,1H),7.43(dd,J=8.0,1.6Hz,1H),7.17(d,J=8.0Hz,1H),4.75(tt,J=8.8,4.3Hz,1H),3.85(s,3H),2.65(t,J=7.4Hz,2H),2.43(t,J=7.4Hz,2H),2.05(br.quint,J=7.4Hz,2H),1.85〜1.79(m,2H),1.73〜1.65(m,2H),1.54〜1.46(m,1H),1.43〜1.28(m,4H),1.26〜1.17(m,1H)
13C−NMR(100MHz、CDCl
3):δppm
190.97,172.19,170.39,151.81,144.85,135.11,124.67,123.29,110.67,72.67,55.95,33.36,32.92,31.57/31.57,25.27,23.65/23.65,20.19
IR(液膜法):2938、2855、2720、1760、1725、1700、1600、1500、1450、1420、1380、1270、1120、1030、910、870、830、780、735cm
−1
【0095】
[実施例2] 本発明の香料前駆体の残香性
本実施例では、各種香料前駆体の残香性について試験を行った。まず、市販の無香料の柔軟剤を基材として用意し、この柔軟剤基材に、実施例1で合成した各香料前駆体のうちフェノール性水酸基を有するもの、または当該香料前駆体を構成する香気化合物単体(すなわち、式AのR−OHで表される分子)を、当該基材の全質量に対しその量が1%となるように配合した。次いで、この柔軟剤0.5gを1.5Lの水(20℃)に溶かし(3000倍希釈)、そこに木綿100%のタオルを浸漬させ、20回手で攪拌したのち、10分間放置した。次いで、タオルの水気を手で搾り、日光の当たる室内で吊り下げた。この際、タオルは、24時間吊り下げた状態で放置する群と、50〜60℃の熱風を30分間当てる群とに分けた。
【0096】
このようにして得られた各タオルから感じられる香気について官能評価を行った。官能評価では、4〜7名の訓練された調香師がタオルの香気を嗅ぎ、香気の強度について、香気化合物単体の場合の香気強度を1点として、香気化合物単体と比べた香気の強さについて以下の基準で点数づけを行った。
1点:同等に感じられる
2点:わずかに強く感じられる
3点:強く感じられる
4点:明らかに強く感じられる
5点:非常に強く感じられる
以上の平均的な結果を下記表2に示す。表2において、「室内」とは上述の日光の当たる室内で24時間放置したタオルの場合、「熱」とは50〜60℃の熱風を30分間当てたタオルの場合を示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表2に示すように、本発明の香料前駆体はいずれも、香気化合物単体よりも高い残香性を示すことが確認された。なお、いずれの例においても、メントール様またはシクロヘキサノール様の香りは感じられなかった。
【0099】
以上に示すように、本発明品の香料前駆体は、香気化合物単体に比べて、香気化合物の徐放によって優れた残香性を示すものであった。従って、本発明のようにシクロヘキサノール誘導体を採用することで、優れた残香性を与え得ることが確認された。
【0100】
[実施例3] 香気の持続性確認(分析評価)
本発明の香料前駆体の残香性の優位性について、以下のように成分分析を行って確認した。
【0101】
(1)分析用タオルの調製
実施例1(1)で得られた本発明の香料前駆体である4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレートを、実施例2に記載の柔軟剤基材に、当該柔軟剤基材全量に対して1質量%の濃度となるよう配合した。また、同様にしてバニリン単体も当該柔軟剤基材全量に対して1質量%の濃度となるように配合した。このようにして、以下の柔軟剤AおよびBを調製した。
柔軟剤A:本発明の香料前駆体(4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレート(以下MVGとも称する))を配合した柔軟剤
柔軟剤B:バニリン単体を配合した柔軟剤
そして、実施例2と同様にして浸漬および熱風処理(50〜60℃の熱風を30分間当てる)を行い、以下のタオルサンプルAおよびBを調整した。
タオルサンプルA:柔軟剤A(MVG1%含有)を用いたタオル(本発明品)
タオルサンプルB:柔軟剤B(バニリン単体1%含有)を用いたタオル(比較品)
(2)分析および結果
タオルサンプルAおよびBに残存する各化合物の定量を行った。以下に、分析用サンプル液を調製した際の手順を示す。
【0102】
[サンプル液調製手順]
1)サンプルタオルA、Bをはさみで8等分に切断した
2)1L容オープンカラムに、切断したタオルを4つ折りにして充填した
3)テトラヒドロフラン(THF)(500mL)をカラムに仕込んだ
4)1時間静置し、浸漬抽出を行った
5)カラムコックを開放し、THFを回収した
6)カラム上からポンプによってタオルを5分加圧して、タオルに浸漬して5)で回収できなかったTHFを絞り出し、回収した
7)5)と6)で回収したTHFを合わせ、回収液1とした
8)上記操作(3〜5)をさらに2回繰り返し、回収液2および回収液3を得た
9)回収液1〜3を合わせて分析用回収液とした
得られた分析用回収液を、以下の分析に供した。
【0103】
[HPLC−PDA法による各化合物の測定]
標準液調製
メスフラスコに、4−ホルミル−2−メトキシフェニル l−メンチル グルタレート(MVG)およびバニリンを精密に量りとり、50%テトラヒドロフラン(THF)水溶液でメスアップした後にさらに50%THFで適宜精密に希釈し、標準液を調製した。
HPLC測定試料調製
タオルを抽出したTHF溶液を適宜メスフラスコに精密に量りとり、50%THFでメスアップした後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブランフィルタ(ラボラボカンパニー社、孔径0.45μm)処理を行った。この調製液をHPLC分析に供した。
HPLC−PDA測定条件
機種 :SHIMADZU PROMINENCE(島津製作所)
カラム :LunaOmega C18(Phenomenex社製)
内径2.1mm×長さ150mm、粒子径1.6μm
カラム温度 :40℃
移動相 :A液…水:リン酸=1000:1、B液…アセトニトリル:リン酸=1000:1
グラジェント条件:(A):(B)=90:10(0分),10:90(12分)〜10:90(18分)
流速 :0.45mL/min
注入量 :2μL
測定時間 :25分
検出器 :PDA(MVGの検出波長:260nm、バニリンの検出波長300nm)
得られた分析結果から、タオルへの吸着率および徐放バニリン量を算出した。その結果を、
図1〜2を参照しつつ以下に説明する。
【0104】
(i)タオルへの吸着率
図1は、タオルへのMVG(本発明の香料前駆体)またはバニリンの吸着率を示す図である。当該吸着率は、以下の式にて算出した。
【0105】
タオルへの吸着率(%)=(A)/(B)×100
(A)タオルに吸着した香料前駆体量+バニリン量をそれぞれモル換算した値の合計
(B)5mg(柔軟剤使用量×1%(配合率))/香料前駆体の分子量(香料前駆体の添加モル数)
なお、それぞれの値は回収液1〜3における量を合計したものであり、それぞれの回収液での量は、HPLCで測定した化合物の濃度に回収液の重さを乗じて計算したものである。また、本発明の香料前駆体(MVG)がタオルに吸着した後、タオルの乾燥中に分解してバニリンを徐放するとして、タオルから検出されたバニリンも、室内放置前にタオルに吸着された前駆体内に存在していたものであるとみなして、上記式で計上した。
【0106】
図1に示すように、シクロヘキサン構造を有する本発明の香料前駆体は、バニリン単体よりもタオルに吸着されやすいことが確認された。すなわち、シクロヘキサン構造が、物品への吸着率を向上させる効果がある可能性が考えられた。なお、バニリンの吸着率が低いことについては、バニリンは水溶性が比較的高いため、柔軟剤基材にそのまま配合するだけではタオルに残存し難いためと考えられる。
【0107】
(ii)徐放バニリン量
図2は、徐放バニリン量を示す図である。徐放バニリン量とは、前記回収液1〜3に含まれていたバニリン量の合計(mg)、すなわち、タオルに吸着していた本発明の香料前駆体(MVG)から放出され、タオルに吸着していたバニリン量(本発明品)、またはバニリン自体のタオル吸着量(比較品)とし、タオルから放出され得るバニリン量と見なすことができ、残香性の指標とすることができる。
【0108】
なお、それぞれの値は、回収液1〜3における量を合計したものであり、それぞれの回収液での量は、HPLCで測定した化合物の濃度に回収液の重量を乗じて計算したものである。
【0109】
図2に示すように、本発明の香料前駆体(MVG)は、バニリン単体よりも徐放バニリン量が格段に高いことが確認された。
【0110】
以上に示すように、本発明の香料前駆体が優れた残香性を示すことが、実施例2の官能評価だけではなく、分析値からも確認された。本発明の香料前駆体は、物品への優れた吸着性、優れた放出率などによって顕著に優れた残香性を獲得したものと考えられる。