特許第6841815号(P6841815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841815血液学的毒性バイオマーカーとしてのGDF−15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841815
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】血液学的毒性バイオマーカーとしてのGDF−15
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20210301BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20210301BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20210301BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20210301BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G01N33/53 D
   C12Q1/6837 Z
   C12Q1/686 Z
   A61P35/00
   A61K45/00
   A61K31/496
   A61K31/4439
   A61K31/497
   A61K31/506
   A61K31/401
   A61K31/407
   A61K31/4412
   A61K31/47
   A61K45/06
   A61P7/04
   A61P43/00 121
   A61K31/4152
【請求項の数】50
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2018-505654(P2018-505654)
(86)(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公表番号】特表2018-523824(P2018-523824A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】IB2016054685
(87)【国際公開番号】WO2017021908
(87)【国際公開日】20170209
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】62/200,310
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ゲレイロ,ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】メイレ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ワースナー,ジェンス
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−508442(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/084804(WO,A1)
【文献】 Camelia Iancu-Rubin,Activation of p53 by the MDM2 inhibitor RG7112 impairs thrombopoiesis,Experimental Hematology,2014年,Vol.42,Page.137-145
【文献】 ZHAO Na,Expression of serum GDF15 and its clinical significance in multiple myeloma patients,J Cent South Univ (Med Sci),2014年,Vol.39 No.3,Page.270-275
【文献】 Isabelle Ray-Coquard,Effect of the MDM2 antagonist RG7112 on the P53 pathway in patients with MDM2-amplified, well-differentiated or dedifferentiated liposarcoma: an exploratory proof-of-mechanism study,Lancet Oncol,2012年11月,Vol.13 No.11,Page.1133-1140
【文献】 Amita Patnaik,Clinical pharmacology characterization of RG7112, an MDM2 antagonist, in patients with advanced solid tumors,Cancer Chemother Pharmacol,2015年 7月26日,Vol.76,Page.587-595
【文献】 ZHAO Yujun,Small-Molecule Inhibitors of the MDM2-p53 Protein-Protein Interaction (MDM2 Inhibitors) in Clinical Trials for Cancer Treatment: Miniperspective,Journal of Medicinal Chemistry,2015年 2月12日,Vol.58 No.3,Page.1038-1052
【文献】 Jeay, Sebastien,Dose and schedule determine distinct molecular mechanisms underlying the efficacy of the p53-MDM2 inhibitor HDM201,Cancer Research,2018年,Vol.78 No.21,Page.6257-6267
【文献】 Kumamoto, Kensuke,Nutlin-3a activates p53 to both down-regulate inhibitor of growth 2 and up-regulate mir-34a, mir-34b, and mir-34c expression, and induce Senescence,Cancer Research,2008年,Vol.68 No.9,Page.3193-3203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/53
A61K 31/401
A61K 31/407
A61K 31/4152
A61K 31/4412
A61K 31/4439
A61K 31/47
A61K 31/496
A61K 31/497
A61K 31/506
A61K 45/00
A61K 45/06
A61P 7/04
A61P 35/00
A61P 43/00
C12Q 1/6837
C12Q 1/686
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mdm2阻害剤の毒性学的作用を予測するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用。
【請求項2】
対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を予測するためのデータを得る方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に前記対象から得られた投与前生物学的試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(ii)ある用量の前記Mdm2阻害剤が投与された対象から得られた投与後生物学的試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)前記投与前試料におけるGDF−15の発現を前記投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップ
を含む方法。
【請求項3】
前記毒性学的作用が血小板減少症である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の増加が50%未満であることが、患者における、前記用量の前記Mdm2阻害剤の前記連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である、請求項2から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の増加が少なくとも25%であることが、患者における、前記用量の前記Mdm2阻害剤の前記連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、請求項2から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
対象におけるがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤であって、
(i)ある用量の前記Mdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料における前記GDF−15発現を測定するステップ、
(iii)前記投与前試料における前記GDF−15発現を前記投与後試料における前記GDF−15発現と比較して、Mdm2阻害剤の毒性学的作用を予測するステップ、および
(iv)前記投与後試料における前記GDF−15発現が、前記投与前試料における前記GDF−15発現と比較して少なくとも25%高い場合に、前記対象の前記処置を変更するステップ、または
(v)前記投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、前記投与前試料における前記GDF−15発現と比較して50%未満の高さである場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤。
【請求項7】
前記処置の前記変更が、前記対象への前記Mdm2阻害剤の前記投与レジメンの変更および/または血小板に対する前記Mdm2阻害剤の作用を低減させる手段を施すことを含む、請求項6に記載のMdm2阻害剤。
【請求項8】
前記処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤の用量の低減、および/または前記Mdm2阻害剤の投与頻度の低減を含む、請求項6または請求項7に記載のMdm2阻害剤。
【請求項9】
血小板に対する前記Mdm2阻害剤の作用を低減させる手段が、血小板輸注および/またはトロンボポエチンの投与、および/またはトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含む、請求項または請求項8に記載のMdm2阻害剤。
【請求項10】
血小板に対する前記Mdm2阻害剤の作用を低減させる手段がトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、前記トロンボポエチン受容体アゴニストがエルトロンボパグである、請求項6から9のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項11】
請求項6から10のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤であって、がんの処置における使用のためのものであり、前記処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤を用いる前記処置の中止を含む、Mdm2阻害剤。
【請求項12】
前記処置の変更が休薬日を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載のがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤。
【請求項13】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の30分後から24時間後までの時間枠内に得られる、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の30分後に得られる、請求項13の方法。
【請求項15】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の3時間後に得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の6時間後に得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の12時間後に得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記GDF−15発現が、GDF−15遺伝子転写を測定することによってアッセイされる、請求項2から5、および13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記GDF−15遺伝子発現が、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによってアッセイされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記GDF−15発現が、生物学的試料におけるGDF−15タンパク質レベルの測定によってアッセイされる、請求項2から5、および13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記GDF−15タンパク質レベルが、GDF−15タンパク質に結合する抗体によってアッセイされる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清または尿である、請求項20から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記生物学的試料が血液である、請求項20から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記投与前試料におけるGDF−15発現と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の増加が少なくとも75%、100%または150%であることが、血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、請求項2から5、および13から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の30分後から24時間後までの時間枠内に得られる、請求項6から12のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項26】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の30分後に得られる、請求項25のMdm2阻害剤。
【請求項27】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の3時間後に得られる、請求項25のMdm2阻害剤。
【請求項28】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の6時間後に得られる、請求項25のMdm2阻害剤。
【請求項29】
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の12時間後に得られる、請求項25のMdm2阻害剤。
【請求項30】
前記GDF−15発現が、GDF−15遺伝子転写を測定することによってアッセイされる、請求項6から12、および25から29のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項31】
前記GDF−15遺伝子発現が、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによってアッセイされる、請求項30に記載のMdm2阻害剤。
【請求項32】
前記GDF−15発現が、生物学的試料におけるGDF−15タンパク質レベルの測定によってアッセイされる、請求項6から12、および25から29のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項33】
前記GDF−15タンパク質レベルが、GDF−15タンパク質に結合する抗体によってアッセイされる、請求項32に記載のMdm2阻害剤。
【請求項34】
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清または尿である、請求項32から33のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項35】
前記生物学的試料が血液である、請求項32から33のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項36】
前記投与前試料におけるGDF−15発現と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の増加が少なくとも75%、100%または150%であることが、血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、請求項6から12、および25から35のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項37】
Mdm2阻害剤が、
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【化1】


および
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;または前記いずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項38】
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項39】
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項40】
Mdm2阻害剤が、
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【化2】


および
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;または前記いずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項2から5および13から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項2から5および13から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項2から5および13から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
Mdm2阻害剤が、
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【化3】


および
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;または前記いずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項6から12および25から36のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項44】
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項6から12および25から36のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項45】
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項6から12および25から36のいずれか一項に記載のMdm2阻害剤。
【請求項46】
投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して、少なくとも25%高い対象における薬物誘発性血小板減少症の予防または処置における使用のための、トロンボポエチン受容体アゴニストを含む医薬であって、
前記対象が、投与に応答して血小板減少症を発症する可能性が高いと予測され、
前記「投与前試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の薬物が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料において測定されたGDF−15発現であり、
前記「投与後試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の前記薬物が前記対象に投与された後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料において測定されたGDF−15発現である、医薬。
【請求項47】
薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得る前記薬物が、Mdm2阻害剤である、請求項46に記載の医薬。
【請求項48】
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグである、請求項46または47に記載の医薬。
【請求項49】
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項46から48のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項50】
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、請求項46から48のいずれか一項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Mdm2阻害剤の毒物学的作用を判定するための安全性バイオマーカーの使用、対象におけるMdm2阻害剤の毒物学的作用を判定するための、特にある用量のMdm2阻害剤の投与に応答して対象において血小板減少症の発症の可能性を判定するためのex vivo方法、対象におけるがんの処置においてMdm2阻害剤を使用する方法、がんを有する患者が、ある用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性を予測する際に使用するためのキット、がんを有する患者を処置する際に使用するためのキットおよび関連する開示実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質p53は、DNA損傷修復、アポトーシスおよび細胞周期停止に関与する多数の標的遺伝子の発現を制御する転写因子である。野生型p53活性の損失を導く突然変異は、多くの異なる腫瘍タイプにおいて検出されることが多い。TP53遺伝子は、ヒトのがんにおいて最も頻繁に突然変異する遺伝子の1つである。したがって、腫瘍抑制因子p53は、ヒトのがんの概ね50%における突然変異または欠失によって機能的に損なわれる。残りのヒトのがんにおいて、p53は野生型の状態を保持するが、その機能はその主要な細胞阻害剤、マウス二重微小染色体2(Mdm2、MDM2;HDM2(マウス二重微小染色体2のヒトホモログ))によって阻害される。Mdm2は、p53腫瘍抑制因子の負の調節因子である。Mdm2タンパク質は、p53のプロテアソーム分解を導くE3ユビキチンリガーゼ、およびp53転写活性の阻害剤の両方として機能する。多くの場合、Mdm2は、p53野生型腫瘍における増幅が見出される。
【0003】
Mdm2とp53の間の相互作用は、野生型p53を保持するがんにおけるp53の機能の阻害に対する主要な機構であるため、Mdm2−p53相互作用、したがってp53を再活性化することは、新規の有望な治療戦略である。Mdm2−p53相互作用を阻害するいくつかのMdm2阻害剤が開発され、したがって、抗腫瘍効果を誘発することができる。報告された最初の有効な小分子Mdm2阻害剤は、Nutlinであった(Vassilev LT, et al., Science. 2004 Feb 6; 303(5659):844-8)。Nutlinの発見に続き、いくつかのさらなる小分子Mdm2阻害剤、例えばMI−63(Ding K, et al., J Med Chem. 2006 Jun 15; 49(12):3432-5)、およびMI219(Shangary S, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Mar 11; 105(10):3933-8)が開発された。
【0004】
薬物がクリニックに移されると、これらの薬物の毒物学的作用に注意を払う必要がある。ある種の薬物は、薬物誘発性血小板減少症、すなわち対象が血小板の相対的な減少を有する状態の発症を引き起こし得る。脂肪肉腫を有する患者における、Nutlinファミリーの阻害剤である、単剤RG−7112の概念研究の証明から得られた結果により、RG−7112は、患者の40%において血小板減少症を誘発したことが実証された。この研究結果は、RG−7112投与に伴う主な用量規定毒性の1つが血小板減少症であることを示す(Ray-Coquard I, et al. Lancet Oncol, 2012, 13: 1133-1140)。動物モデルで行われた研究は、RG−7112に誘発される血小板減少症が処置期間のある程度後期に起こり、薬物中止後も持続したことを示し、このことは、薬物が造血前駆細胞に初期に作用することを示唆する(Iancu-Rubun, C., et al., Experimental Hematology 2014;42:137-145)。RG−7112だけでなく他のMdm2阻害剤が血小板減少症を潜在的に誘発し得、したがって、この点において注意が払われるべきである。
【0005】
血小板減少症を引き起こし得る特定の薬物を用いる処置を中止することによるか、または対応して処置を変更することによるかのいずれかで、血小板減少症の発症前または血小板減少症の非常に初期の発生において感受性患者の処置を調整することが重要である。初期段階で血小板減少症の発生を検出できないこと、および問題の薬物を用いる処置の継続が致死的転帰をもたらす場合がある。したがって、当技術分野では、後発性の薬物誘発性血小板減少症を予測すること、判定すること、監視すること、および薬物処置後、特にMdm2阻害剤の投与後に対象における毒性を管理することに対する継続した必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Mdm2阻害剤の毒性学的作用、特にMdm2阻害剤の血液毒性を判定するための安全性バイオマーカーとしてGDF−15を提供することが本開示の目的である。特に、本開示は、Mdm2阻害剤の投与に応答して対象において血小板減少症を発症する可能性を判定するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に従って、(i)対象におけるGDF−15の発現のベースラインレベルと比較したある用量のMdm2阻害剤の投与後の同じ対象におけるGDF−15発現のレベルの相対的増加と(ii)前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与の毒性学的作用、特にMdm2阻害剤の血液毒性の間に相関関係が存在することを驚くべきことに見出した。所与の投薬レジメンに関して、対象へのある用量のMdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現のレベルと、前記用量のMdm2阻害剤に応答して対象において血小板減少症を発症する可能性の間に相関関係が存在することが特定された。特に、Mdm2阻害剤投与前の対象から得られた投与前試料と比較したある用量のMdm2阻害剤投与後の対象から得られた投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも25%の増加、特に少なくとも50%の増加が、患者が、前記用量のMdm2阻害剤に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標であることが確立された。安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用は、医師が、Mdm2阻害剤を用いた対象(患者)の処置の経過を監視し、血小板減少症を最小限にするかまたは完全に予防するための手段を適切に適用するのに十分早期に遅延性の薬物誘発性血小板減少症を予測する助けとなり得る。
【0008】
一態様では、本開示は、対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex vivo方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
(ii)投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を対象に投与するステップ、
(iv)前記Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
(v)投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(vi)投与前試料におけるGDF−15の発現を投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップであって、特に前記用量のMdm2阻害剤の投与に応答して対象において血小板減少症を発症する可能性が決定されるステップ
を含む方法。
【0009】
別の態様では、本開示は、対象におけるがんの処置であって、
(i)ある用量のMdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量のMdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(iii)投与前試料におけるGDF−15発現を投与後試料におけるGDF−15発現と比較するステップ、および
(iv)投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%高い場合に、前記対象の処置を変更するステップ、または
(v)投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して50%未満、好ましくは25%未満高い場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤を提供する。
【0010】
さらなる態様において、本開示は、がんを有する患者が、ある用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性を予測する際に使用するためのキットであって、
(i)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、および
(ii)GDF−15発現について、患者から得られる生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書であって、
(a)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは少なくとも50%の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標であり、
(b)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現における50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である使用説明書
を含むキットに関する。
【0011】
またさらなる態様では、本開示は、がんを有する患者を処置する際に使用するためのキットであって、
(i)治療有効量のMdm2阻害剤、
(ii)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、
(iii)GDF−15発現について、患者から得られる生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書、および
(iv)治療有効量のMdm2阻害剤を患者に投与した後に患者から得られる生物学的試料が、前記患者から得られる投与前試料におけるGDF−15発現のレベルと比較して、少なくとも25%増加し、より好ましくは少なくとも50%増加した場合に、患者に手段を適用するための使用説明書
を含むキットに関する。
【0012】
具体的には、本開示は、以下の項目に列挙されるように、それぞれ単独でまたは組み合わせて、以下の態様、有利な特徴および具体的実施形態を提供する:
1.Mdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用。
2.対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex vivo方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に前記対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
(ii)投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を対象に投与するステップ、
(iv)前記Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
(v)投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(vi)投与前試料におけるGDF−15の発現を投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップ
を含む方法。
3.前記用量のMdm2阻害剤の投与に応答して前記対象において血小板減少症を発症する可能性が決定される、項目2に記載の方法。
4.前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である、項目2または項目3の方法。
5.前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは50%の増加が、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、項目2から4のいずれか1つの方法。
6.対象におけるがんの処置であって、
(i)ある用量のMdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量のMdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(iii)投与前試料におけるGDF−15発現を投与後試料におけるGDF−15発現と比較するステップ、および
(iv)投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して少なくとも25%高く、好ましくは少なくとも50%高い場合に、前記対象の処置を変更するステップ、または
(v)投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して50%未満、好ましくは25%未満高い場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤。
7.処置の前記変更が、対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンの変更および/または血小板へのMdm2阻害剤の作用を低減させるための手段を投与することを含む、項目6に記載のMdm2阻害剤。
8.処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤の用量の低減、および/または前記Mdm2阻害剤の投与頻度の低減を含む、項目6または項目7に記載のMdm2阻害剤。
9.血小板に対するMdm2阻害剤の作用を低減させる手段が、血小板輸注および/またはトロンボポエチンの投与、および/またはトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、好ましくは血小板輸注を含む、項目6または項目8に記載のMdm2阻害剤。
10.血小板に対するMdm2阻害剤の作用を低減させる手段がトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、前記トロンボポエチン受容体アゴニストがエルトロンボパグである、項目6から9のいずれか1つに記載のMdm2阻害剤。
11.処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤を用いる処置の中止を含む、項目6から10のいずれか1つに記載のがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤。
12.前記処置の変更が休薬日を含む、項目6から10のいずれか1つに記載のがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤。
13.前記投与後試料が、Mdm2阻害剤の投与の約30分後から約24時間後まで、好ましくは約1時間後から約12時間後まで、約2時間後から約12時間後まで、約3時間後から約12時間後まで、約4時間後から約8時間後まで、約5時間後から約8時間後まで、約5時間後から約7時間後まで、約6時間後から約7時間後までの時間枠内に得られる、項目2から5のいずれか1つの方法または項目6から12のいずれか1つのMdm2阻害剤。
14.前記投与後試料が、Mdm2阻害剤の投与の約30分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後に得られる、項目13の方法または項目13のMdm2阻害剤。
15.前記投与後試料が、Mdm2阻害剤の投与の約3時間後に得られる、項目14の方法または項目13のMdm2阻害剤。
16.前記投与後試料が、Mdm2阻害剤の投与の約6時間後に得られる、項目14の方法または項目13のMdm2阻害剤。
17.前記投与後試料が、Mdm2阻害剤の投与の約12時間後に得られる、項目14の方法または項目13のMdm2阻害剤。
18.前記GDF−15発現が、GDF−15遺伝子転写を測定することによってアッセイされる、項目2から5、13から17のいずれか1つに記載の方法または項目6から17のいずれか1つに記載のMdm2阻害剤。
19.前記GDF−15遺伝子発現が、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによってアッセイされる、項目18に記載の方法または項目18に記載のMdm2阻害剤。
20.前記GDF−15発現が、生物学的試料におけるGDF−15タンパク質レベルの測定によってアッセイされる、項目2から5、13から17のいずれか1つの方法または項目6から17のいずれか1つのMdm2阻害剤。
21.前記GDF−15タンパク質レベルが、GDF−15タンパク質に結合する抗体によってアッセイされる、項目20に記載の方法または項目20に記載のMdm2阻害剤。
22.生物学的試料が、血液、血漿、血清または尿である、項目20から21のいずれか1つの方法または項目20から21のいずれか1つのMdm2阻害剤。
23.生物学的試料が、血液である、項目20から21のいずれか1つの方法または項目20から21のいずれか1つのMdm2阻害剤。
24.投与前試料におけるGDF−15発現と比較した投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも75%、100%または150%の増加が、血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、項目2から5、13から23のいずれか1つの方法または項目6から23のいずれか1つのMdm2阻害剤。
25.がんを有する患者が、ある用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性を予測する際に使用するためのキットであって、
(i)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、および
(ii)GDF−15発現について、患者から得られる生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書であって、
(a)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは少なくとも50%の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標であり、
(b)前記患者への前記用量のMdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現における50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる前記処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である使用説明書
を含むキット。
26.がんを有する患者を処置する際に使用するためのキットであって、
(i)治療有効量のMdm2阻害剤、
(ii)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、
(iii)GDF−15発現に対する患者から得られた生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書、および
(iv)治療有効量のMdm2阻害剤が患者に投与された後に患者から得られる生物学的試料が、前記患者から得られる投与前試料におけるGDF−15発現のレベルと比較して少なくとも25%増加した、より好ましくは少なくとも50%増加したGDF−15発現を有する場合、患者に手段を適用するための使用説明書
を含むキット。
27.プローブが、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはGDF−15タンパク質に結合する抗体である、項目25から26のいずれか1つに記載のキット。
28.前記Mdm2阻害剤が、
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【0013】
【化1】
および
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;または前述のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、項目1に記載の使用、または項目2から5、もしくは12から24のいずれか1つに記載の方法、または項目6から24のいずれか1つに記載のMdm2阻害剤、または項目25から27のいずれか1つに記載のキット。
29.前記Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、項目1に記載の使用、または項目2から5、もしくは12から24のいずれか1つに記載の方法、または項目6から24のいずれか1つに記載のMdm2阻害剤、または項目25から27のいずれか1つに記載のキット。
30.前記Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、項目1に記載の使用、または項目2から5、もしくは12から24のいずれか1つに記載の方法、または項目6から24のいずれか1つに記載のMdm2阻害剤、または項目25から27のいずれか1つに記載のキット。
31.投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%高い対象における薬物誘発性血小板減少症の予防または処置における使用のためのトロンボポエチン受容体アゴニストであって、
「投与前試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の薬物が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料において測定されたGDF−15発現であり、
「投与後試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の薬物が前記対象に投与された後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料において測定されたGDF−15発現である、トロンボポエチン受容体アゴニスト。
32.薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得る薬物が、Mdm2阻害剤である、項目31または32に記載の使用のためのトロンボポエチン受容体アゴニスト。
33.Mdm2阻害剤およびトロンボポエチン受容体アゴニストの組合せ。
34.医学的使用のための項目33に記載の組合せ。
35.がんの処置および薬物誘発性血小板減少症の予防または処置における使用のための、項目33に記載の組合せ。
36.トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグである、項目31から35のいずれか1つに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
37.Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、項目31から36のいずれか1つに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
38.Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、項目31から36のいずれか1つに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】週3回の連続経口投薬レジメンで(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンを用いて処置した患者の血小板数を実測し、個々にフィットさせた時間プロファイルを示すグラフである。最初の投与は、このグラフの400時間においてである。患者は、3回の血小板輸血イベントを受けた。
図2】週3回投与の連続投薬レジメンで(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンを用いて処置した患者のGDF−15タンパク質レベルを実測し、個々にフィットさせた時間プロファイルを示すグラフである。
図3】(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの週3回の連続経口投与で処置した21人の患者についてのGDF−15および血小板数に対する(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの作用についての予備データ解析を示すグラフである。各ポイントは、個々の患者を表す。X軸は、基準からの割合変化(%)におけるGDF−15の増加を表す。Y軸は、処置の過程中、同じ患者に対する最も低い実測血小板数である。
図4】血小板動態を説明するために使用されるPKPDモデルを示す図である。MMTは平均成熟時間、E([C])は薬物濃度の薬効関数である。Circ.の区画は循環血小板、Prol.は増殖性未熟細胞およびA2、A3、A4は成熟区画を表す。
図5】GDF−15動態を説明するために使用されるPKPDモデルの概略図である。Tlagおよびkaは、それぞれ遅延および一次薬物吸収速度パラメーターである。k12およびk21は区画間速度であり、keは排出速度であり、Vmおよびkmはミカエリスメンテン排出パラメーターである。koutは間接応答モデルの代謝回転速度であり、kinは0次産生である。Vは中央区画の見かけの体積であり、Qc/Vは薬物濃度である。
図6】確立したPKPDモデルを示すグラフである。GDF−15のslGi産生に関する個々の薬物の効能を未成熟造血細胞slPiに関する個々の薬物の効能に対してプロットした。
図7】12.5mg(A)、25mg(B)、50mg(C)、100mg(D)、200mg(E)、250mg(F)、350mg(G)の用量で3週サイクル(本明細書においてレジメン1Aまたは3週に1回投与とも称される)の最初の日または120mg(I)の用量で4週サイクル(本明細書においてレジメン1Bとも称される)最初の日および8日目に式Iの化合物を受ける固形腫瘍を有する患者に対する、GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化(図7)を表すグラフである。左のグラフ:GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化であり、GDF−15は第1サイクルの1日目(C1D1)に測定される。右のグラフ:GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化。
図8】12.5mg(A)、25mg(B)、50mg(C)、100mg(D)、200mg(E)、250mg(F)、350mg(G)の用量で3週サイクル(本明細書においてレジメン1Aまたは3週に1回投与とも称される)の最初の日または120mg(I)の用量で4週サイクル(本明細書においてレジメン1Bとも称される)最初の日および8日目に式Iの化合物を受ける固形腫瘍を有する患者に対する、GDF−15の倍率変化に対する好中球数の最大変化(図8)を表すグラフである。左のグラフ:GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化であり、GDF−15は第1サイクルの1日目(C1D1)に測定される。右のグラフ:GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化。
【発明を実施するための形態】
【0015】
患者へのMdm2阻害剤の投与は、血小板減少症の発症を引き起こし得る。以前の研究により、Mdm2阻害剤であるRG7112が血小板産生を損なうことが実証された。本発明者らは、GDF−15をMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するための安全性バイオマーカーとして特定した。本開示は、(i)対象におけるGDF−15の発現の基準レベルと比較した、Mdm2阻害剤の投与後の同じ対象におけるGDF−15発現のレベルの相対的増加と、(ii)前記Mdm2阻害剤の毒性学的作用、特にMdm2阻害剤の血液毒性の間の相関関係の特定に基づいている。関連づけの勾配は、Mdm2の効能と投薬レジメンに応答して変化し得る。特に、本発明者らは、所与の投薬レジメンに関して、ある用量のMdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現のレベルと前記用量のMdm2阻害剤の投与に応答して対象において血小板減少症を発症する可能性の間に相関関係があることを特定した。有利には、本開示を使用して、血小板減少症の非常に初期の発生において、または血小板減少症が発症する前においても、Mdm2阻害剤の所与の投薬レジメンについて、対象において血小板減少症を発症する可能性を判定することができる。特に、本開示を使用して、治療有効量のMdm2阻害剤の投与の第1サイクルの第1日目の後に、Mdm2阻害剤の所与の投薬レジメンについて、対象において血小板減少症を発症する可能性を既に判定することができる。別の例では、本開示を使用して、治療有効量のMdm2阻害剤の投与の第1サイクルの第1日目から第1サイクルの第7日目まで、特に治療有効量のMdm2阻害剤の投与の第1サイクルの第1日目、第1サイクルの第2日目、または第1サイクルの第3日目の後に、Mdm2阻害剤の所与の投薬レジメンについて、対象において血小板減少症を発症する可能性を既に判定することができる。本開示の教示を適用することによって、当業者は、同じ対象から得られる投与前および投与後試料におけるGDF−15発現の相対的増加を、対象における所与のMdm2阻害剤の処置に応答して血小板減少症を発症する可能性に関連づける相関関係パラメーターに到達することができる。
【0016】
一態様では、本開示は、Mdm2阻害剤の毒性学的作用、特にMdm2阻害剤の血液毒性を判定するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用に関する。一実施形態では、本開示は、ある用量のMdm2阻害剤の投与に応答して対象において血小板減少症を発症する可能性を判定するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用に関する。
【0017】
「対象」、「個体」または「患者」は、本明細書において互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。哺乳動物として、これらに限定されないが、マウス、サル、ヒト、家畜、競技用動物、およびペットが挙げられる。
【0018】
用語「毒性学的作用」は、本明細書で使用される場合、全生物に対する作用と同様に生物の部分構造に対する作用にも関する。具体的には、この用語は、生物において血小板減少症をもたらす作用を指す。用語「血液毒性」は、本明細書で使用される場合、血液産生組織の損傷をもたらし、白血球数および/または好中球絶対数の減少を引き起こす造血系への毒性を指す。
【0019】
用語「血小板減少症」は、本明細書で使用される場合、正常血液の血小板数(すなわち、1マイクロリットル当たり150,000個の血小板)を下回る血小板数の低減を指す。これは、血小板の数を減少させる巨核球形成の異常調節によって引き起こされ得る。巨核球形成は、骨髄造血前駆細胞の増殖、成熟、血小板形成、および血小板の循環への放出のプロセスである。成人の正常な血小板数は、血液1マイクロリットル当たり150,000から450,000個の範囲の血小板である(Ross DW; Ayscue LH; Watson J; Bentley SA (1988). "Stability of hematologic parameters in healthy subjects. Intraindividual versus interindividual variation". American journal of clinical pathology 90 (3): 262-7)。1マイクロリットル当たり150,000個未満の血小板の血小板数は正常より低く、血小板減少症を示す。10,000/μL未満の血小板数で、特発出血が増加する。50,000/μL未満の血小板数で、外科手技が出血によって難しくなる場合が多い。100,000/μL未満の血小板数で、血小板減少症の悪化および出血のリスクの増加の恐れに対する注意を要し、化学療法および放射線療法が投与される。アメリカ国立がん研究所の有害事象共通用語規準第3版(NCI Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0)によれば、血小板減少症は以下のように分類され、グレード1(軽度の有害事象)は血小板数LLN(正常値の下限)未満〜75,000/mmによって特徴付けられ、グレード2(中等度の有害事象)は血小板数75,000/mm未満〜50,000/mmで特徴付けられ、グレード3(高度の有害事象)は血小板数50,000/mm未満〜25,000/mmであり、グレード4(生命を脅かすかまたは活動できない有害事象)は血小板数25,000/mm未満である(Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0 (CTCAE), August 9, 2006; http://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/docs/ctcaev3.pdf)。
【0020】
本明細書で使用される場合、「可能性」および「可能性が高い」は、事象が起こる蓋然性の高さの尺度である。これは、「蓋然性」と互換的に使用されてよい。可能性は、推測より高いが、確実より低い蓋然性を指す。したがって、常識、訓練または経験を有する通常人が、場合が場合ならば、事象が蓋然性が高いと結論づける場合、事象は可能性が高い。一部の実施形態では、可能性が確認されると、患者は化合物を用いて処置され(もしくは処置を継続され)得るか、または処置が変更されるかもしくは中止される必要があり得る。一実施形態では、「得る」および「可能性が高い」は、事象が起こる蓋然性の高さの、パーセントでの見込みを意味する。
【0021】
句「可能性の増加」は、事象が起こる蓋然性の増加を指す。例えば、本明細書におけるいくつかの方法は、患者が、前記Mdm2阻害剤の投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加を示すかどうかの予測を可能にする。一実施形態では、可能性の増加は、事象が起こる50%超の見込み、60%超の見込み、70%超または80%超の見込みがあることを意味する。同様に、「可能性の減少」は、事象が起こる見込みが、それぞれ50%未満、60%未満、70%未満または80%未満であることを意味する。
【0022】
用語「投与」、「投与すること」などは、治療剤の単回投与を指し、同様に、用語「投与」は、完全な治療レジメンまたは投薬レジメンに従った治療剤の投与を含むことも意図する。用語「投与」は、治療剤が、必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与される訳ではない処置レジメンを含むことも意図する。
【0023】
用語「連続投与」は、本明細書で使用される場合、治療剤の所与の投薬に基づく処置レジメンを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「処置レジメン」または「投薬レジメン」は、治療剤が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、..21、..、26、27、28、29、30..、35、...、42、...、49、...、56、57、58、59、60日毎に1回投与され得る投薬レジメンを指す。この用語は、例えば、(i)約1日に1回から約60日毎に1回までの範囲の投薬周期、(ii)約2日毎に1回から約40日もしくは6週間毎に1回までの範囲の投薬周期、(iii)約5日毎に1回から約月1回もしくは約4週毎もしくは30日毎に1回までの範囲の投薬周期、(iv)約週1回もしくは7日毎に1回から約3週毎に1回もしくは約20日毎に1回までの範囲の投薬周期、(v)約週1回もしくは7日毎に1回から約2週間に1回もしくは10日毎に1回までの範囲の投薬周期、または(vi)週に2回から週に4回までの範囲、特に週に3回の投薬周期を有する投薬レジメンを含む。各場合に、投薬の後に休薬日があり得る。3週間毎に1回の投薬レジメンが好ましい。
【0025】
「処置レジメン」または「投薬レジメン」は、特定期間に治療剤を投与した後に休薬日があることも含む。例えば、Mdm2阻害剤を、週に3回連続して、または週に3回を2週間投与した後に1週間の休薬日をとることができる(3週サイクル)。別の例では、阻害剤を、1日1回、2週間続け、2週間止めて投与することができる。さらに別の例では、薬物を、1週間の休薬日を有して3週間の期間1日1回(1日1回/3週間;休薬日/1週間)投与した後、次のサイクルの薬物投与(1日1回/3週間;休薬日/1週間)を行うことができる。
【0026】
用語「GDF−15」(または「GDF15」)は、本明細書で使用される場合、MIC−1、TGF−PL、PDF、PLABおよびPTGFBとしても知られている増殖分化因子15を指す。GDF−15に対する受託番号は、Q99988、BC008962、GI:38196924、AAH08962である。GDF−15は、形質転換増殖因子−ベータスーパーファミリーの多様なメンバーである。GDF−15mRNAは、肝臓において最も豊富であり、他のいくつかの組織では低いレベルで見られる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「GDF−15発現」、「GDF−15発現のレベル」などは、GDF−15遺伝子の転写またはGDF−15タンパク質の発現を指す。GDF−15遺伝子の発現は、例えば、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによって、アッセイされまたは測定され得る。GDF−15タンパク質レベルは、例えば、GDF−15タンパク質に結合する抗体によって、例えば、ELISAアッセイによって、アッセイされまたは測定され得る。処置前および処置後の測定値など、GDF−15遺伝子またはタンパク質発現の測定値は、互いの間で比較される場合が多く、GDF−15遺伝子転写の相対的な値もしくはレベルまたはGDF−15タンパク質発現の相対的なレベルのみが妥当であり得る。
【0028】
用語「Mdm2阻害剤」または「HDM2阻害剤」は、本明細書で使用される場合、HDM2/p53(Mdm2/p53)相互作用による会合を阻害する任意の化合物を指す。HDM2(マウス二重微小染色体のヒトホモログ)は、p53の負の調節因子である。Mdm2阻害剤は、Mdm2/p53の会合の阻害が示されるヒトまたは脊椎動物に使用する医薬組成物において、例えば、腫瘍および/またはがん細胞増殖の処置において有用である。特に、Mdm2阻害剤は、ヒトのがんの処置において有用であり、これは、これらのがんの進行が、p53の「ゲートキーパー」機能を最優先すること、例えばMdm2の過剰発現に少なくとも部分的に依存する場合があるからである。
【0029】
あるいは、Mdm2阻害剤の代わりにまたはMdm2阻害剤に加えて、p53がp53活性化に対する代替マーカーとして使用されるように、p53経路の任意の他の直接活性剤を、これらの薬理学的作用様式の一部として、本明細書に記載される本発明の態様において使用することができる。例えば、Mdm2阻害剤の代替としてまたはMdm2阻害剤に加えて、Mdm4阻害剤を、本明細書に記載される本発明の態様において使用することができる。
【0030】
好ましい実施形態では、言及される「Mdm2阻害剤」または「HDM2阻害剤」は、時間分解蛍光エネルギー移動(TR−FRET)アッセイによって測定した、10μM未満、好ましくは1μM未満、好ましくはnMの範囲のIC50を有するMdm2/p53相互作用を阻害する。蛍光エネルギー移動(またはFoerster共鳴エネルギー移動)によって、ドナーとアクセプター5蛍光分子の間のエネルギー移動が説明される。このアッセイに対し、C末端ビオチン部分でタグ付けされたMDM2タンパク質(アミノ酸2〜188)が、ドナーフルオロフォアとして作用するユーロピウム標識ストレプトアビジン(Perkin Elmer, Inc.、Waltham、MA、USA)と組み合わせて使用される。p53から誘導されたCy5標識ペプチドCy5−TFSDLWKLL(p53 aa18〜26)はエネルギー受容体である。340nmでドナー10分子が励起されると、MDM2とp53ペプチドの間の結合相互作用がエネルギー移動および665nmにおける受容体発光波長での応答の増強を誘発する。MDM2のp53結合部位に結合する阻害剤分子によるp53−MDM2複合体の形成の破壊により、615nmにおけるドナー発光の増加を生じる。レシオメトリックFRETアッセイ読み出しは、時間分解様式で測定した2つの異なる蛍光シグナルの15個の生データから計算される(計数率665nm/計数率615nm×1000)。アッセイを以下の手順に従って実行することができる:試験は、総体積3.1μlで、1536ウェルの白色マイクロタイタープレート(Greiner Bio−One GmbH、Frickenhausen Germany)において、90%のDMSO/10%のHO(3.2%のDMSO最終濃度)に希釈した100nlの化合物と反応緩衝液(PBS、125mMのNaCl、0.001%のNovexin(タンパク質の溶解度および安定性を増大させるように設計された炭水化物ポリマー(Novexinポリマー)からなる;Novexin Ltd.、ambridgeshire、United Kingdom)、ゼラチン0.01%、0.2%のプルロニック(エチレンオキシドとプロピレンオキシドからのブロックコポリマー、BASF、Ludwigshafen、Germany)、1mMのDTT)中の2μlのユーロピウム20標識ストレプトアビジン(最終濃度2.5nM)とを組合せ、その後に、アッセイ緩衝液中で希釈した0.5μlのMDM2−BioまたはMDM4−Bio(最終濃度10nM)を添加することによって行う。溶液を、室温で15分間プレインキュベートさせ、続いて、アッセイ緩衝液中の0.5μlのCy5−p53ペプチド(最終濃度20nM)を添加する。室温で10分間インキュベートしてからプレートを読む。試料を測定するために、以下の設定30のAnalyst GTマルチモードマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用する:ダイクロイックミラー380nm、励起330nm、発光ドナー615nmおよび発光アクセプター665nm。IC50値は、XLfitを使用するカーブフィッティングにより計算する。指定がない限り、試薬は、Sigma Chemical Co、St.Louis、MO、USAから購入する。
【0031】
MDM2(Mdm2)は、具体的には、EMBO J. 10, 1565-9, Fakharzadeh et al., 1991に記載されたMDM2に関する。MDM2(Mdm2)の受託番号は、Q86WA3、AJ550519、GI:29125746である。MDM2(Mdm2)のバリアントは、最初に記載した全長タンパク質に相当し、好ましくはMDM2のp53に対する親和性の少なくとも0.5%で、より好ましくは少なくとも5%、10%、20%、30%、40%または特に50%以上で、以下に記載するアッセイ系において、p53に依然として結合し、最初に記載されたかまたは以下に具体的に述べたMDM2またはHDM2に対して少なくとも20%、より好ましくは少なくとも25%の配列相同性を有するそのバリアント(例えば、アミノ酸の1つまたは複数、例えば1つから430個の欠失、挿入および/または交換によるスプライスバリアント、アイソフォーム、断片、変異体またはオンコジーン)を指す。他に述べられていなければ、MDM2は、まさに定義したように、一般に、それぞれMDM2、Mdm2、HDM2もしくはHdm2またはそのバリアントを指す。
【0032】
タンパク質とそのバリアントの間の、相同と称されることも多い、配列相同性の割合は、特に、ギャップ開始ペナルティ12およびギャップ伸長ペナルティ1を有するアフィンギャップ検索を使用する、Gapプログラム(SmithおよびWatermanのアルゴリズムを使用するWisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Reseach Park、Madison Wisconsin、USA(Adv. Appl. Math. 2: 482-489 (1981))などの、この目的のために通常用いられるコンピュータープログラムによって決定されることが好ましい。
【0033】
言及される「そのバリアント」は、1つまたは複数のバリアントを意味する。
【0034】
本開示によれば、Mdm2阻害剤は、例えば、以下の式のいずれかの化合物であり得る:
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【0035】
【化2】
もしくは
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩。
【0036】
用語「薬学的に許容される塩」は、この開示に従って使用した場合に化合物の生物学的効果および特性を保持し、典型的には、生物学的にまたは他の意味においても望まれないものではない塩を指す。薬学的に許容される酸付加塩は、例えば酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、塩素塩/塩酸塩、クロルテオフィロネート、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩などは、無機酸および有機酸を用いて形成することができる。塩が由来し得る無機酸として、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。
【0037】
好ましい実施形態では、本開示は、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩に関する。Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、新規分類のイミダゾピロリジノン化合物に属し、MDM2/p53相互作用(この用語は、特に、Hdm2/p53相互作用を含む)の有効な阻害を示す。特に、この化合物は、MDM2に結合することによってMDM2のp53との相互作用の阻害剤として作用する。最も好ましい実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、式Iの化合物であり、国際公開第2013/111105号パンフレットの実施例102に記載されている。
【0038】
【化3】
【0039】
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンの結晶形態は、国際公開第2013/111105号パンフレットの実施例6、実施例7および実施例8に記載されている。この開示には、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン化合物のコハク酸共結晶が包含される。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本開示は、Mdm2阻害剤である(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩に関する。Mdm2阻害剤である(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンは、式IIの化合物であり、国際公開第2011/076786号パンフレットの実施例106に記載されている。
【0041】
【化4】
【0042】
一実施形態では、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの薬学的に許容される塩は、重硫酸塩である(国際公開第2011/076786号パンフレットに開示されている)。(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの重硫酸塩の結晶形態は、国際公開第2012/066095号パンフレットに記載されている。
【0043】
用語「投与」は、治療剤が同じ投与経路でまたは同時に必ずしも投与される訳ではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0044】
一実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、28日サイクル毎の最初の21日間、毎日投与される。別の実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、28日サイクル毎の最初の週の間、毎日投与された後、3週間の処置中止(休薬日)を伴う。さらなる実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、28日サイクル毎の最初の2週間、毎日投与された後、2週間の処置中止(休薬日)を伴う。さらに別の実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、28日サイクル毎の後の3または5日間、毎日投与された後、対応して、25日または23日間の処置中止(休薬日)を伴う。さらに別の実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンは、3週間毎に1回投与される。
【0045】
一実施形態では、Mdm2阻害剤である(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンは、21日サイクル毎の最初の2週間、週に3回投与される(2週間に3回/1週間中止)。
【0046】
用語「前記Mdm2阻害剤の投与後」は、最初のサイクルまたは前記Mdm2阻害剤の任意の連続投与の最初の日における前記Mdm2阻害剤の投与を指す場合がある。したがって、用語「前記Mdm2阻害剤の投与後」は、投与サイクル内に行われるMdm2阻害剤の任意の投与を指してよい。
【0047】
用語「ある用量のMdm2」阻害剤は、本明細書で使用される場合、治療有効量の前記Mdm2阻害剤を指す。用語Mdm2阻害剤の「治療有効量」は、対象の生物学的または医学的応答を誘発する、例えば、症状が軽快する、状態を緩和する、疾患の進行を遅らせるかもしくは遅延させる、腫瘍増殖を減速させる、または腫瘍退縮を引き起こすなどの化合物の量を指す。一実施形態では、in vivoでの治療有効量は、投与経路に応答して、約0.1〜500mg/kgの間、または約1〜100mg/kgの間の範囲であってよい。
【0048】
一実施形態では、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンの治療有効量またはある用量は、経口投与の場合、3週間毎に100から1500mgの間、特に3週間毎に100から800mgの間、または毎日50から600mgの間の範囲であってよい。好ましい実施形態では、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンの治療有効量またはある用量は、28日サイクル毎の最初の21日間の毎日の投与に対して、400mg、より好ましくは300mgである。あるいは、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンの総治療量または総用量は、4サイクル当たり560mgである(2週間40mgを1日1回/2週間中止、または1週間80mgを1日1回/3週間中止)。したがって、静脈内投与はより低い必要がある。
【0049】
一実施形態では、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの治療量または用量は、経口投与の場合、500から2000mgの間、特に500から1200mgの間である。好ましい実施形態では、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの治療量または用量は、500mg、より好ましくは800mgである。したがって、静脈内投与はより低い必要がある。
【0050】
各治療剤は、例えば、1回の個々の投薬単位でまたは複数の投薬単位に分けて都合よく投与してよいことが理解される。さらに、各治療剤は、1日1回投与または1日4回までの投与で都合よく投与してよいことが理解される。
【0051】
別の態様では、本開示は、in vivoで、対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex vivo方法を提供する。
【0052】
一実施形態では、本開示は、in vivoで、対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex vivo方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
(ii)投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を対象に投与するステップ、
(iv)前記Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
(v)投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(vi)投与前試料におけるGDF−15の発現を投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップ
を含む方法に関する。
【0053】
一実施形態では、本開示は、in vivoで、対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex vivo方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
(ii)投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を対象に投与するステップ、
(iv)前記Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
(v)投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(vi)投与前試料におけるGDF−15の発現を投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップであって、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して前記対象において血小板減少症を発症する可能性が決定されるステップ
を含む方法に関する。
【0054】
一実施形態では、前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の50%未満の増加は、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少を示す。好ましい実施形態では、前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の25%未満、より好ましくは10%未満の増加は、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少を示す。一実施形態では、前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも10%の増加は、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。別の実施形態では、前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも25%の増加は、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。好ましい実施形態では、前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも50%の増加は、患者が、前記用量のMdm2阻害剤の連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。またさらなる実施形態では、投与前試料におけるGDF−15発現と比較した投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも75%、少なくとも100%または少なくとも150%の増加は、血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。
【0055】
用語「生物学的試料」は、本明細書で使用される場合、検体の供給源から採取された任意の他の検体を代表するようにサンプリングによって採取された生物学的検体を指す。一実施形態では、生物学的試料は、細胞、組織、血液、血漿、血清、尿、マウスウォッシュ、便、唾液、およびこれらの組合せである。さらなる実施形態では、生物学的試料は、血液、血漿、血清、または尿である。好ましい実施形態では、生物学的試料は血液である。別の好ましい実施形態では、生物学的試料は血清である。
【0056】
用語「投与前生物学的試料」は、本明細書で使用される場合、Mdm2阻害剤の投与前に対象から得られる生物学的試料を指す。一実施形態では、投与前生物学的試料は、対象へのMdm2阻害剤の投与の少し前に前記対象から得られる。あるいは、投与前生物学的試料は、対象へのMdm2阻害剤の投与の約10分前から対象へのMdm2阻害剤の投与の約7日前までに前記対象から得られる。さらなる実施形態では、投与前生物学的試料は、対象へのMdm2阻害剤の投与の約10分、または約20分、または約30分、または約1時間、または約2時間、または約3時間、または約5時間、または約10時間、または約15時間または約1日、または約2日、または約3日、または約4日、または約5日、または約6日、または約7日前に前記対象から得られる。
【0057】
用語「投与後生物学的試料」は、本明細書で使用される場合、Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる生物学的試料を指す。一実施形態では、投与後試料は、対象へのMdm2阻害剤の投与後、約30分から約24時間、好ましくは約1時間から約12時間、約2時間から約12時間、約3時間から約12時間、約4時間から約8時間、約5時間から約8時間、約5時間から約7時間、約6時間から約7時間の時間枠ないに前記対象から得られる。別の実施形態では、投与後試料は、Mdm2阻害剤の投与の約30分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後に対象から得られる。好ましい実施形態では、投与後試料は、Mdm2阻害剤の投与の約3時間後に対象から得られる。より好ましい実施形態では、投与後試料は、Mdm2阻害剤の投与の約6時間後に対象から得られる。さらに好ましい実施形態では、投与後試料は、Mdm2阻害剤の投与の約12時間後に対象から得られる。
【0058】
数値xに関する用語「約」は、任意選択であり、例えば、x+10%を意味する。
【0059】
用語「アッセイすること」または「測定すること」は、本明細書で使用される場合、特定する、スクリーニングする、探索する、判定する、または測定する作用を指し、この作用は任意の従来の手段によって実施されてよい。例えば、試料は特定のマーカーの存在に対してアッセイされてもよく、この特定のバイオマーカーのレベルは、そのマーカーが試料中に存在するかどうかを検出するために、ELISAアッセイ、ノーザンブロット、イメージングなどを使用することによって測定され得る。用語「アッセイすること」および「測定すること」は、試料を物理的試験に供することによって、1つの状態から別の状態へ物質を変形させること、例えば生物学的試料、例えば血液試料または他の組織試料を変形させることを企図する。
【0060】
一部の実施形態では、GDF−15の核酸発現レベルが測定される。一部の実施形態では、GDF−15の核酸発現レベルは、ハイブリダイゼーションによって測定される。一部の実施形態では、GDF−15の核酸発現レベルは、増幅によって測定される。さらなる実施形態では、GDF−15の核酸発現レベルを測定するための増幅方法は、RT−PCR増幅である。またさらなる実施形態では、GDF−15の核酸発現レベルを測定するために使用される方法は、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、転写介在増幅(TMA)、定量的PCR(qPCR)、リアルタイムPCR、ループ介在等温増幅(LAMP)、TaqMan、インベーダー、インベーダープラス、ローリングサークル、鎖置換増幅(SDA)、Q−ベータ−レプリカーゼ、ヘリカーゼ依存増幅(HAD)、分枝DNA、加水分解FRETプローブ、リガーゼ連鎖反応(LCR)、縮重オリゴヌクレオチド初回刺激PCR、または当業者に既知の他の方法からなる群から選択される。一実施形態では、GDF−15発現は、GDF−15遺伝子の転写を測定することによってアッセイされる。一実施形態では、GDF−15遺伝子発現は、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによってアッセイされ得る。
【0061】
一部の実施形態では、GDF−15のタンパク質発現レベルが測定される。一部の実施形態では、GDF−15のタンパク質発現レベルは、GDF−15タンパク質またはその断片に特異的に結合する1種または複数の抗体を使用するイムノアッセイを実施することによって、特にELISAを実施することによって測定される。一部の実施形態では、GDF−15のタンパク質発現レベルは、2Dゲル電気泳動を実施することによって測定される。好ましい実施形態では、GDF−15発現は、生物学的試料におけるGDF−15タンパク質レベルの測定によってアッセイされる。GDF−15タンパク質レベルは、GDF−15タンパク質、またはその断片に結合する抗体によってアッセイすることができる。
【0062】
別の態様では、本開示は、対象におけるがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤であって、
(i)ある用量のMdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量のMdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(iii)投与前試料におけるGDF−15発現を投与後試料におけるGDF−15発現と比較するステップ、および
(iv)投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して少なくとも25%高く、好ましくは少なくとも50%高い場合に、前記対象の処置を変更するステップ、または
(v)投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して50%未満、好ましくは25%未満高い場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤を提供する。
【0063】
一実施形態では、投与前試料におけるGDF−15発現と比較した投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%の増加は、血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。
【0064】
さらなる実施形態では、投与前試料におけるGDF−15発現と比較した投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%の増加は、血小板減少症を発症する可能性の増加を示す。
【0065】
一実施形態では、本開示は、対象におけるがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤であって、
(i)ある用量のMdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量のMdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(iii)投与前試料におけるGDF−15発現を投与後試料におけるGDF−15発現と比較するステップ、および
(iv)投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して少なくとも75%、好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも150%高い場合に、前記対象の処置を変更するステップ、または
(v)投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して150%未満、好ましくは100%未満、より好ましくは75%未満高い場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤を提供する。
【0066】
本明細書で使用される場合、任意の疾患または障害についての用語「処置する」、「処置すること」または「処置」は、一実施形態では、疾患または障害を軽快させること(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせるかまたは阻止するかまたは低減させること)を指す。別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、患者が認識できるものでないこともあるものを含む少なくとも1つの物理的パラメーターを緩和させるか軽快させることを指す。さらに別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、物理学的に(例えば、認識される症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理学的パラメーターの安定化)、またはその両方のいずれかで、疾患または障害を調節することを指す。さらに別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」または「処置」は、疾患または障害の開始または発症または進行を予防することまたは遅延させることを指す。
【0067】
用語「がん」は、例えば、胸、肺、膵臓、卵巣、中枢神経系(CNS)、子宮内膜、胃、大腸、結腸、食道、骨、泌尿器、造血、リンパ、肝臓、皮膚、メラノーマ、腎臓、軟部組織肉腫および胸膜を含むがん疾患を指す。
【0068】
一実施形態では、処置の変更は、対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンおよび/または血小板へのMdm2阻害剤の作用を低減させるための手段を投与することの変更を含む。さらなる実施形態では、処置の変更は、Mdm2阻害剤の用量の低減および/または前記Mdm2阻害剤の投与頻度の低減および/または休薬日および/または処置の完全な中止を含む。好ましい実施形態では、処置の血小板へのMdm2阻害剤の作用を低減させるための手段は、血小板輸血を含む。さらに好ましい実施形態では、血小板へのMdm2阻害剤の作用を低減させるための手段は、トロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、前記トロンボポエチン受容体アゴニストはエルトロンボパグである。エルトロンボパグ−(rINN、コードネームSB−497115−GR、商標名:Promacta、Revolade)は、ホルモンであるトロンボポエチンの生理学的標的であるc−mpl(TpoR)受容体の小分子アゴニストである。
【0069】
別の実施形態では、処置の変更は、前記Mdm2阻害剤を用いる処置の中止を含む。さらに別の実施形態では、処置の変更は休薬を含む。用語「休薬日」は、本明細書で使用される場合、薬物休暇、医薬休暇、構造化治療中断または戦略的治療中断と称されることもあり、ある期間、数日から数カ月または数年までのいずれかの期間、処置を中止することを指す。一実施形態では、休薬日は、1週間、2週間、3週間または4週間の期間のMdm2阻害剤を用いる処置の中止である。
【0070】
一実施形態では、生物学的試料は、細胞、組織、血液、血漿、血清、尿、マウスウォッシュ、便、唾液、およびこれらの組合せである。さらなる実施形態では、生物学的試料は、血液、血漿、血清、または尿である。好ましい実施形態では、生物学的試料は血液である。
【0071】
さらなる態様では、本開示は、がんを有する患者が、Mdm2阻害剤を用いる連続した処置に応答して血小板減少症を発症する可能性を予測する際に使用するためのキットであって、
(i)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、および
(ii)GDF−15発現について、患者から得られる生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書であって、
(a)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは少なくとも50%の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる連続した処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標であり、
(b)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現における50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、前記患者が前記用量のMdm2阻害剤を用いる連続した処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である使用説明書
を含むキットに関する。
【0072】
本明細書で使用される場合、「予測すること」は、本明細書に記載されている方法が、医療提供者に、処置を受けた個体がより高い可能性で血小板減少症を発症する可能性を判定させることができる情報を提供することを示す。これは、100%の精度で応答を予測する能力をさすものではない。代わりに、当業者は、これが、蓋然性の増加を指すことを理解する。
【0073】
一実施形態では、キットは、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはGDF−15タンパク質に結合する抗体であるプローブを含む。
【0074】
またさらなる態様では、本開示は、がんを有する患者を処置する際に使用するためのキットであって、
(i)治療有効量のMdm2阻害剤、
(ii)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、
(iii)GDF−15発現について、患者から得られる生物学的試料をアッセイするためにプローブを使用するための使用説明書、および
(iv)治療有効量のMdm2阻害剤を患者に投与した後に患者から得られる生物学的試料が、前記患者から得られる投与前試料におけるGDF−15発現のレベルと比較して、少なくとも25%増加し、より好ましくは少なくとも50%増加したGDF−15発現を有する場合に、患者に手段を適用するための使用説明書
を含むキットに関する。
【0075】
一実施形態では、キットは、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはGDF−15タンパク質に結合する抗体であるプローブを含む。
【0076】
本発明の態様が、医学的使用または活性医薬成分(API、例えばMdm2阻害剤、トロンボポエチン受容体アゴニスト)および適応症(例えば、がん、血小板減少症)を含む処置方法に関する場合、これらの態様は、以下の代替形式で表すことができる。
【0077】
[適応症]の処置における使用のための[API]。
【0078】
有効量の[API]を投与することを含む、このような処置を必要とするヒト患者における[適応症]の処置のための方法。
【0079】
[適応症]の処置のための医薬調製用[API]。
【0080】
[API]を含む[適応症]の処置のための医薬。
【0081】
さらに驚くべきことに、GDF−15発現は、がんを有する患者が血小板減少症を発症する可能性の指標となるだけでなく、がんを有する患者が好中球減少症、すなわち好中球の異常な低濃度、例えば1.5×10細胞/L未満の好中球数、を発症する可能性も示すことが見出された[Hsieh MM, et al. (April 2007): "Prevalence of neutropenia in the U.S. population: age, sex, smoking status, and ethnic differences". Ann. Intern. Med. 146 (7): 486-92を参照のこと]。
【0082】
この驚くべき発見に基づき、本発明は、さらに、血小板/血小板数/血小板減少症に関して本明細書に記載されている全ての態様と、同様に、好中球/好中球数/好中球減少症に関する対応する代替バージョンも提供する。
【0083】
以下の実施例は、上述の開示を例証するが、いかなる意味においても本開示の範囲を限定することを意図するものではない。関連する技術分野の当業者に、それ自体既知の他の紙面モデルも、特許請求された開示の有益な効果を決定することができる。
実施例
【実施例1】
【0084】
方法:
患者を、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン(化合物A)を用いて処置した。用量範囲は、1週間に10から500mgを3回(3QW)を続けるか、または2週間処置して1週間中止する投薬レジメンであった。血清サンプルを、投与前および最初の処置日の投与の0.5から6時間後に各対象から回収した。
【0085】
GDF−15発現の血清レベルを、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;R&D SystemのキットDGD150)を使用して測定した。
【0086】
臨床データ(血小板数を含む)を処置期間の過程中、全ての患者から回収した。
【0087】
最大実測期間は、入手可能な血小板データに関して448日であった。
【0088】
結果:
図1は、1人の患者の例について、週3回の連続投薬レジメンで、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンを用いて処置した患者の血小板数の典型的に実測され、個々に予測された時間プロファイルを表す。このモデルは、投薬の4週間後に任意の投薬中断と、PLT輸血事象の影響も組み込む。図1に表されたグラフでは、最初の投与は400時間の時間においてである。図2は、図1で表された同じ患者の例について、週3回の連続投薬レジメンで、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンを用いて処置した患者のGDF−15タンパク質レベルの、実測され、個々にフィットさせた時間プロファイルを表す。
【0089】
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの連続的な週3回の経口投与で処置された21人の患者に対するGDF−15および血小板数に関する(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンの予備データ解析を行った。行われたデータ解析を、図3のプロットで表す。このプロットにおいて、各ポイントは、個々の患者を表す。X軸は、基準からの割合変化(%)におけるサイクル1の1日目のGDF−15の増加である。Y軸は、処置の過程中、同じ患者に対する最も低い実測血小板数を表す。このプロットで示されるように、基準から25%超までのGDF−15レベルの増加は、150G/L未満に低下する血小板数(グレード1の血小板減少症CTCAE V4)の高い発生率に関連する。
【実施例2】
【0090】
方法:
このアプローチは、投薬レジメンにおける異種成分、およびGDF−15に対するサンプリング時間に関するデータ解析を可能とする。薬物濃度、GDF−15レベルおよび血小板(PLT)の完全な時間経過を説明するPK/PDモデルを開発した。個体間のばらつきが大きいため、全てのモデリング解析を、非線形混合効果モデリングを適用して行った。
・ 薬物濃度(PK)とGDF−15動態の間の関係を産生の刺激に関する間接応答モデルによって説明した(type III, Br J Clin Pharmacol 1998; 45: 229-239)。このアプローチを適用することによって、GDF−15のslGi産生に関する個々の薬物の効能を推定した。
・ PKとPLT時間経過の間の関係をPKPDモデルの模倣造血によって説明した(Friberg L. et al. J Clin Oncol. 2002 Dec 15;20(24):4713-21)。このモデルは、PLT産生の局所的および全身的調節を含み、PLT循環区画における注入としてPLT輸血事象を考慮に入れる。未成熟造血細胞slPiに関する個々の薬物の効能を推定した。
【0091】
PKPDモデリングに使用したデータ
患者を、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オンを用いて処置した。合計45人の対象を血小板減少症のPKPDモデリングに使用した。用量範囲は、連続したまたは2週間処置して1週間中止する投薬レジメンで、10から500mgを週に3回(3QW)であった。血清サンプルを、C1D1、C1D8およびC2D1について、投与前および投与の0.5から8時間後に各対象から回収した。GDF−15タンパク質レベルの血清レベルを、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA;R&D SystemのキットDGD150)を使用して測定した。臨床データ(血小板数を含む)を処置期間の過程中、全ての患者から回収した。最大実測期間は、入手可能な血小板データに関して448日であった。
【0092】
結果:
PKPDモデルを図4および5で説明し、モデルコードを添付A1で報告した。
【0093】
図5は、GDF−15動態を説明するために使用されたPKPDモデルの概略図を表す。Tlagおよびkaは、それぞれ遅延および一次薬物吸収速度パラメーターである。k12およびk21は区画間速度であり、keは排出速度であり、Vmおよびkmはミカエリスメンテン排出パラメーターである。koutは間接応答モデルの代謝回転速度であり、kinは0次産生である。Vは中央区画の見かけの体積であり、Qc/Vは薬物濃度である。
【0094】
図4は、血小板動態を説明するために使用されたPKPDモデルを表す。MMTは平均成熟時間、E([C])は薬物濃度の薬効関数である。Circ.の区画は循環血小板、Prol.は増殖性未熟細胞およびA2、A3、A4は成熟区画を表す。GDF−15と骨髄について推定した薬物の効能の間の関連づけは、slGi(GDF−15のslGi産生に関する個々の薬物の効能)対slPi(未成熟造血細胞に関する個々の薬物の効能)をプロットすることによって、まず調査した。
【0095】
図6は、2つのパラメーターの間の関連づけ、すなわち未成熟造血細胞(slPi)に関する個々の薬物の効能に対するGDF−15(slGi)産生に関する個々の薬物の効能の間の関連づけを調査する予備結果を示す。この解析は、45人の患者に由来するデータを用いて行った。
【0096】
以下の添付A1において、PKPDモデルの例示を提示する。全てのモデリングを非線形混合効果モデリングソフトウェアMONOLIX(バージョン4.3.2)(例えば、“Estimation of population pharmacokinetic parameters of saquinavir in HIV patients with the MONOLIX software. J Pharmacokinet Pharmacodyn. 2007 Apr;34(2):229-49. Lavielle M, Mentre F.”またはhttp://www.lixoft.eu/に記載されている)を使用して行った。
【0097】
添付A1:MONOLIX4.3.2の下で見出されたMLXTRAN言語のPKPDモデルコード
【0098】
【化5】
【実施例3】
【0099】
上述のように、PKPD血小板減少症モデルを使用して、GDF−15と骨髄に関する化合物Aの薬物の効能の間の関連づけを確立した。このアプローチは、さらに、血小板減少症を最少化するか、またはこれを完全に予防する手段を適切に適用するのに十分早期に、遅延した薬物誘発性血小板減少症の予測を改善するためのバイオマーカーとしてのGDF−15の重要性も評価した。このデータはまた、GDF−15と薬物誘発性血小板減少症の間と同様の相関関係が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンを含む他のMDM2阻害剤についても存在するという知見を支持する。化合物Aから学んだように、本明細書に記載されている同様のアプローチを、他のMDM2阻害剤に引き継ぐことができるガイダンスとして使用することができる。例えば、別のMdm2阻害剤が使用される場合、ある用量のMdm2阻害剤の投与後の対象におけるGDF−15発現レベル(すなわち、対象から得られる投与後試料におけるGDF−15発現)の、前記対象におけるGDF−15の発現の基準レベル(すなわち、対象由来の投与前試料におけるGDF−15発現)と比較した相対的増加と同じ対象における血小板減少症を発症する可能性の間の相関関係については、以下のステップを完了することによって到達され得る。
1)前記Mdm2阻害剤の投与前に対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
2)投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
3)ある用量の前記別のMdm2阻害剤を対象に投与するステップ、
4)前記Mdm2阻害剤の投与後に対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
5)投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
6)前記Mdm2阻害剤に対して特異的であり、個々のPKプロファイルを説明するPKモデルを選択するステップ、
7)血小板およびこれらの成熟時間の基準など、モデルにおけるいくつかのPDパラメーター、ならびに化合物Aモデルで使用したのと同じフィードバックパラメーターを維持しながら、造血成熟プロセスを再生産する一連の5つの区画を有する半機構モデル(添付A1の化合物Aについて記載されている)を使用して、血小板(PLT)数の時間経過に関するMdm2阻害剤の効果を説明することによって、PKPDの関係を確立するステップ。薬物の効能は、新規薬物に特異的であり、このモデルから推定される。Mdm2阻害剤投薬レジメンは、このPKPDモデルで考える。
8)GDF−15に対するPKPDの関係を確立するステップ。構造および生理学的パラメーター(GDF−15の基準、回転率)は、化合物Aモデルと同様に保つべきである。所与のMdm2iに特異的であり、投薬レジメンと独立したGDF−15産生および血小板産生に関する薬物の効能は、固定値としてこのモデルから読み取られる。
9)血小板産生に関する薬物の効能と遅延した血小板減少症を予測するために必要とされるGDF−15発現の(初期の)増加レベルを確立するためのGDF−15の個々のパラメーターとの間の相関関係を決定するステップ。さらに、GDF−15に関する薬物の効能は、PLT薬物の効能の個体間のばらつきを低減させるためのPLT産生に関する薬物作用において考えることができる。
【0100】
最終的に、確立したPKPDモデルは、血小板減少症を予防するための適切な用量低減または任意の手段を定義するために使用されるべきである。
【0101】
この分野の専門家は、例えば、データポイント、したがって十分なモデルに到達するために必要とされる患者の最小数、またはデータセット、すなわち薬物毒性のばらつきに対して、データポイント(すなわち、患者)の必要数がどの程度依存するか(すなわち、PLTの数またはGDF−15発現の差における変化のレベルにどの程度依存するか)に関して、PKおよびPKPDモデルを調製する際の一般的ガイダンスを認識している。選択したPKモデルは、それぞれのMdm2阻害剤のPKプロファイルを最もよく説明するものであるはずである。所与の医薬化合物、本件ではMdm2阻害剤、特に(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその塩に対するPKモデルをどのように調製するかは、当業者の一般的範囲内である。当業者はまた、“Pharmacokinetic and Pharmacodynamic Data Analysis: Concepts and Applications”, Fourth Edition, 2007, Swedish Pharmaceutical Press, by Johan Gabrielsson and Daniel Weinerに対するPKモデリングの一般原理を参照することができる。
【実施例4】
【0102】
血小板数(図7)および好中球数(図8)およびGDF−15値の最大変化を、12.5mg(A)、25mg(B)、50mg(C)、100mg(D)、200mg(E)、250mg(F)、350mg(G)の用量で、3週サイクル(本明細書では、レジメン1Aまたは週に3回投与とも称される)の最初の日に、または120mg(I)の用量で4週サイクル(本明細書では、レジメン1Bとも称される)の最初の日および8日目に、式Iの化合物、すなわち(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オンを受けた、固形腫瘍を有する患者に対して決定した。左のグラフは、GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化を示し、GDF−15は第1サイクルの1日目(C1D1)に測定される。右のグラフは、GDF−15の倍率変化に対する血小板数の最大変化を示す。
【0103】
血小板/好中球数を、最初の投与を受ける前(基準)ならびにレジメン1A(A〜G)に対する第1および第2サイクルの1、7および15日目、またはレジメン1B(I)に対する第1および第2サイクルの1、8、14、22日目に決定し、基準と比較した血小板値の最大変化を選択した。「血小板/好中球数の変化」値は、基準後の値引く基準値として計算され、血液マイクロリットル当たりの血小板/好中球の数で与えられる。
【0104】
GDF−15を、最初の投与を受ける前(基準、C1D1 投与前)ならびにレジメン1A(A〜G)およびレジメン1B(I)に対する第1サイクルの最初の日の最初の投与の24時間後(C1D1 投与後24時間)および第2サイクルの最初の日の投与の24時間後(C2D1 投与後24時間)に決定した。レジメン1Bについて、さらに1つのGDF−15値を第1サイクルの8日目の投与の8時間後(C1D8 投与後8時間)に決定した。「GDF−15のC1D1倍率変化」をC1D1 投与後24時間/C1D1 投与前として定義する。「GDF−15の最大倍率変化」を投与後の値の最大値をC1D1 投与前値で割ったものとして定義する。
【0105】
これにより、バイオマーカーGDF−15の増加が、式Iの化合物を用いた処置の間の血小板および好中球数の減少と相関することが実証される。この相関関係は、式Iの化合物の最初の投与の24時間後に決定されたGDF−15のC1D1値に対して既に実測された(図7および図8の左のグラフを参照のこと)。したがって、Mdm2阻害剤を用いる処置の初期相におけるGDF−15値の増加は、前記処置の間の血小板および好中球数の減少を示す。

本発明は次の実施態様を含む。
[1]
Mdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するための安全性バイオマーカーとしてのGDF−15の使用。
[2]
in vivoで、対象におけるMdm2阻害剤の毒性学的作用を判定するためのex
vivo方法であって、
(i)前記Mdm2阻害剤の投与前に前記対象から得られる投与前生物学的試料を準備するステップ、
(ii)前記投与前試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(iii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を前記対象に投与するステップ、
(iv)前記Mdm2阻害剤の前記投与後に前記対象から得られる投与後生物学的試料を準備するステップ、
(v)前記投与後試料におけるGDF−15の発現を測定するステップ、
(vi)前記投与前試料におけるGDF−15の発現を前記投与後試料におけるGDF−15の発現のレベルと比較するステップ
を含む方法。
[3]
前記用量の前記Mdm2阻害剤の連続投与に応答して前記対象において血小板減少症を発症する可能性が決定される、上記[2]に記載の方法。
[4]
前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、患者が、前記用量の前記Mdm2阻害剤の前記連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である、上記[2]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記投与前試料と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは50%の増加が、患者が、前記用量の前記Mdm2阻害剤の前記連続投与に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、上記[2]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
対象におけるがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤であって、
(i)ある用量の前記Mdm2阻害剤が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料におけるGDF−15発現を測定するステップ、
(ii)ある用量の前記Mdm2阻害剤を前記対象に投与した後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料における前記GDF−15発現を測定するステップ、
(iii)前記投与前試料における前記GDF−15発現を前記投与後試料における前記GDF−15発現と比較するステップ、および
(iv)前記投与後試料における前記GDF−15発現が、前記投与前試料における前記GDF−15発現と比較して少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%高い場合に、前記対象の前記処置を変更するステップ、または
(v)前記投与後試料におけるGDF−15発現のレベルが、前記投与前試料における前記GDF−15発現と比較して50%未満、好ましくは25%未満高い場合に、前記対象への前記Mdm2阻害剤の投与レジメンに対する変更を加えないステップ
を含む前記処置における使用のためのMdm2阻害剤。
[7]
前記処置の前記変更が、前記対象への前記Mdm2阻害剤の前記投与レジメンの変更および/または血小板への前記Mdm2阻害剤の作用を低減させるための手段を投与することを含む、上記[6]に記載のMdm2阻害剤。
[8]
前記処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤の用量の低減、および/または前記Mdm2阻害剤の投与頻度の低減を含む、上記[6]または上記[7]に記載のMdm2阻害剤。
[9]
血小板に対する前記Mdm2阻害剤の作用を低減させる手段が、血小板輸注および/またはトロンボポエチンの投与、および/またはトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、好ましくは血小板輸注を含む、上記[6]または上記[8]に記載のMdm2阻害剤。
[10]
血小板に対する前記Mdm2阻害剤の作用を低減させる手段がトロンボポエチン受容体アゴニストの投与を含み、前記トロンボポエチン受容体アゴニストがエルトロンボパグである、上記[6]から[9]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[11]
前記処置の前記変更が、前記Mdm2阻害剤を用いる前記処置の中止を含む、上記[6]から[10]のいずれかに記載のがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤。
[12]
前記処置の変更が休薬日を含む、上記[6]から[10]のいずれかに記載のがんの処置における使用のためのMdm2阻害剤。
[13]
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の約30分後から約24時間後まで、好ましくは約1時間後から約12時間後まで、約2時間後から約12時間後まで、約3時間後から約12時間後まで、約4時間後から約8時間後まで、約5時間後から約8時間後まで、約5時間後から約7時間後まで、約6時間後から約7時間後までの時間枠内に得られる、上記[2]から[5]のいずれかに記載の方法または上記[6]から[12]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[14]
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の約30分後、約1時間後、約2時間後、約3時間後、約4時間後、約5時間後、約6時間後、約7時間後、約8時間後、約10時間後、約12時間後、約24時間後に得られる、上記[13]の方法または上記[12]のMdm2阻害剤。
[15]
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の約3時間後に得られる、上記[14]に記載の方法または上記[13]に記載のMdm2阻害剤。
[16]
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の約6時間後に得られる、上記[14]に記載の方法または上記[13]に記載のMdm2阻害剤。
[17]
前記投与後試料が、前記Mdm2阻害剤の投与の約12時間後に得られる、上記[14]に記載の方法または上記[13]に記載のMdm2阻害剤。
[18]
前記GDF−15発現が、GDF−15遺伝子転写を測定することによってアッセイされる、上記[2]から[5]、[13]から[17]のいずれかに記載の方法または上記[6]から[17]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[19]
前記GDF−15遺伝子発現が、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブによってアッセイされる、上記[18]に記載の方法または上記[18]に記載のMdm2阻害剤。
[20]
前記GDF−15発現が、生物学的試料におけるGDF−15タンパク質レベルの測定によってアッセイされる、上記[2]から[5]、[13]から[17]のいずれかに記載の方法または上記[6]から[17]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[21]
前記GDF−15タンパク質レベルが、GDF−15タンパク質に結合する抗体によってアッセイされる、上記[20]に記載の方法または上記[20]に記載のMdm2阻害
剤。
[22]
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清または尿である、上記[20]から[21]のいずれかに記載の方法または上記[18]から[19]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[23]
前記生物学的試料が血液である、上記[20]から[21]のいずれかに記載の方法または上記[20]から[21]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[24]
前記投与前試料におけるGDF−15発現と比較した前記投与後試料におけるGDF−15発現の少なくとも75%、100%または150%の増加が、血小板減少症を発症する可能性の増加の指標である、上記[2]から[5]、[13]から[23]のいずれかに記載の方法または上記[6]から[23]のいずれかに記載のMdm2阻害剤。
[25]
がんを有する患者が、ある用量のMdm2阻害剤を用いる処置に応答して血小板減少症を発症する可能性を予測する際に使用するためのキットであって、
(i)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、および
(ii)前記GDF−15発現について、前記患者から得られる生物学的試料をアッセイするために前記プローブを使用するための使用説明書であって、
(a)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現の少なくとも25%の増加、より好ましくは少なくとも50%の増加が、前記患者が前記用量の前記Mdm2阻害剤を用いる連続処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の増加の指標であり、
(b)前記患者への前記用量の前記Mdm2阻害剤の投与後のGDF−15発現における50%未満の増加、より好ましくは25%未満の増加が、前記患者が前記用量の前記Mdm2阻害剤を用いる前記処置に応答して血小板減少症を発症する可能性の減少の指標である、使用説明書
を含むキット。
[26]
がんを有する患者を処置する際に使用するためのキットであって、
(i)治療有効量のMdm2阻害剤、
(ii)GDF−15発現を検出することができる少なくとも1つのプローブ、
(iii)前記GDF−15発現に対する前記患者から得られた生物学的試料をアッセイするために前記プローブを使用するための使用説明書、および
(iv)前記治療有効量の前記Mdm2阻害剤が前記患者に投与された後に前記患者から得られる前記生物学的試料が、前記患者から得られる投与前試料におけるGDF−15発現のレベルと比較して少なくとも25%増加した、より好ましくは少なくとも50%増加したGDF−15発現を有する場合、前記患者に手段を適用するための使用説明書
を含むキット。
[27]
前記プローブが、GDF−15をコードする核酸の領域に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、またはGDF−15タンパク質に結合する抗体である、上記[25]から[26]のいずれかに記載のキット。
[28]
Mdm2阻害剤が、
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4
−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(6−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピリジン−3−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(5−{メチル−[4−(3−メチル−4−オキソ−イミダゾリジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−ピラジン−2−イル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン;
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
4−[(S)−5−(3−クロロ−2−フルオロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−3−イソプロピル−6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−イル]−ベンゾニトリル;
(S)−5−(5−クロロ−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン;
(S)−5−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;
【化1】

および
(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)−6−(4−クロロフェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−d6−ピリミジン−5−イル)−1−((R)−1−メトキシプロパン−2−イル)−5,6−ジヒドロピロロ[3,4−d]イミダゾール−4(1H)−オン;または前記いずれかの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、上記[1]に記載の使用、または上記[2]から[5]、もしくは[12]から[24]のいずれかに記載の方法、または上記[6]から[24]のいずれかに記載の使用のためのMdm2阻害剤、または上記[25]から[27]のいずれかに記載のキット。
[29]
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、上記[1]に記載の使用、または上記[2]から[5]、もしくは[12]から[24]のいずれかに記載の方法、または上記[6]から[24]のいずれかに記載の使用のためのMdm2阻害剤、または上記[25]から[27]のいずれかに記載のキット。
[30]
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、上記[1]に記載の使用、または上記[2]から[5]、もしくは[12]から[24]のいずれかに記載の方法、または上記[6]から[24]のいずれかに記載のMdm2阻害剤、または上記[25]から[27]のいずれかに記載のキット。
[31]
投与後試料におけるGDF−15発現が、投与前試料におけるGDF−15発現と比較して、少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%高い対象における薬物誘発性血小
板減少症の予防または処置における使用のためのトロンボポエチン受容体アゴニストであって、
前記「投与前試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の薬物が前記対象に投与される前に、前記対象から得られる投与前生物学的試料において測定されたGDF−15発現であり、
前記「投与後試料におけるGDF−15発現」が、薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得るある用量の前記薬物が前記対象に投与された後に、前記対象から得られる投与後生物学的試料において測定されたGDF−15発現である、トロンボポエチン受容体アゴニスト。
[32]
薬物誘発性血小板減少症の発症を引き起こし得る前記薬物が、Mdm2阻害剤である、上記[31]または[32]に記載の使用のためのトロンボポエチン受容体アゴニスト。[33]
Mdm2阻害剤およびトロンボポエチン受容体アゴニストの組合せ。
[34]
医学的使用のための上記[33]に記載の組合せ。
[35]
がんの処置および薬物誘発性血小板減少症の予防または処置における使用のための、上記[33]に記載の組合せ。
[36]
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグである、上記[31]から[35]のいずれかに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
[37]
Mdm2阻害剤が、(S)−5−(5−クロロ−1−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−3−イル)−6−(4−クロロ−フェニル)−2−(2,4−ジメトキシ−ピリミジン−5−イル)−1−イソプロピル−5,6−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,4−d]イミダゾール−4−オン、またはその薬学的に許容される塩である、上記[31]から[36]のいずれかに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
[38]
Mdm2阻害剤が、(S)−1−(4−クロロ−フェニル)−7−イソプロポキシ−6−メトキシ−2−(4−{メチル−[4−(4−メチル−3−オキソ−ピペラジン−1−イル)−trans−シクロヘキシルメチル]−アミノ}−フェニル)−1,4−ジヒドロ−2H−イソキノリン−3−オン、またはその薬学的に許容される塩である、上記[31]から[36]のいずれかに記載のトロンボポエチン受容体アゴニスト、組合せ、または使用のための組合せ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8