(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6841887
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】模型部品
(51)【国際特許分類】
A63H 9/00 20060101AFI20210301BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20210301BHJP
A63H 3/52 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
A63H9/00 T
A63H3/36 D
A63H3/52 A
A63H9/00 Q
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-170785(P2019-170785)
(22)【出願日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】林田 翔一
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴大
【審査官】
西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−141736(JP,A)
【文献】
特開2019−17465(JP,A)
【文献】
実開昭59−119894(JP,U)
【文献】
ルイズのウエディングドレス Ver.フィギュアが超絶可愛い!![ゼロの使い魔],[online], 2019年3月27日, [2020年7月17日検索],URL,https://subculwalker.com/archives/56425/
【文献】
幸せに包まれた優しい笑顔がチャーミング!!『アイドルマスター ミリオンライブ!』田中琴葉がウェディングドレス姿でフィギュア化!,[online], 2019年7月5日, [2020年7月17日検索],URL,https://hobby.dengeki.com/news/794738/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H1/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明の第1の色の材料で形成され凹凸を有する第1の層が、半透明の第2の色の材料で形成され凹凸を有する第2の層の上に積層されて構成される模型部品であって、
前記第1の層は突起部を有し、前記第2の層は開口を有し、前記突起部が前記開口を貫通することにより、前記第1の層及び前記第2の層が結合され、
前記第1の層は、前記突起部を有する第1の端部とは逆側の第1の裾部を有し、
前記第2の層は、前記開口を有する第2の端部とは逆側の第2の裾部を有し、
前記結合された状態において、前記第1の裾部は前記第2の裾部よりも結合部の近くに位置し、
前記第1の層は、前記第1の裾部における厚みが、前記第1の端部における厚みよりも薄く、
前記第2の層は、前記第2の裾部における厚みが、前記第2の端部における厚みよりも薄く、
前記第1の層と前記第2の層とは不均一な間隔を隔てて積層されている、模型部品。
【請求項2】
前記第1の裾部、及び、前記第2の裾部の各表面には、凸形状の第1の模様が形成され、
前記第1の模様は前記第1の層、及び、前記第2の層の裏側から視認可能である、
請求項1に記載の模型部品。
【請求項3】
前記第1の裾部、及び、前記第2の裾部の各裏面には、凹形状の第2の模様が形成され、
前記第2の模様は前記第1の層、及び、前記第2の層の表側から視認可能である、
請求項2に記載の模型部品。
【請求項4】
前記第1の裾部、及び、前記第2の裾部の各側面には、シボ加工が施されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項5】
前記第2の層は、積層された複数の層により形成され、
前記複数の層のそれぞれは、前記突起部を貫通させるための開口と裾部とを有し、
前記開口と裾部との距離は、前記複数の層のうち下側に位置する層ほど長い、請求項1から4のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項6】
前記材料は、偏光材料を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項7】
前記偏光材料は偏光パール紛である、請求項6に記載の模型部品。
【請求項8】
前記第1の色、及び、前記第2の色は、互いに同系色、類似色、または、反対色の関係を有する色である請求項1から7のいずれか1項に記載の模型部品。
【請求項9】
前記模型部品は、人形模型のスカートレース部品である請求項1から8のいずれか1項に記載の模型部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型部品に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるプラモデル(登録商標)と呼ばれるような組み立て模型の部品(パーツとも言う)、例えば、玩具の顔に着色する際は、一か所一か所、人の手で色を塗ったり、彩色個所に開口部が設けられたマスクを利用してスプレーで塗装したりすることが行われている(特許文献1を参照)。また、複数の印刷機とコンベアを備えた彩色装置を利用して塗装を自動化したものも提案されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3-34226号公報
【特許文献2】特開平8-47585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数パーツが積層されてなる模型部品において、色の濃度が部位によって変化するようなグラデーションを施すには技量が必要であり、品質を安定させるのは困難である。また、塗装用の彩色装置を用いる場合、追加の設備投資や、設備が大型化するという問題もある。
【0005】
本発明は、安定した品質でグラデーションを知覚可能な模型部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、模型部品であって、
半透明の第1の色の材料で形成され凹凸を有する第1の層が、半透明の第2の色の材料で形成され凹凸を有する第2の層の上に積層されて構成される模型部品であって、
前記第1の層は突起部を有し、前記第2の層は開口を有し、前記突起部が前記開口を貫通することにより、前記第1の層及び前記第2の層が結合され、
前記第1の層は、前記突起部を有する第1の端部とは逆側の第1の裾部を有し、
前記第2の層は、前記開口を有する第2の端部とは逆側の第2の裾部を有し、
前記結合された状態において、前記第1の裾部は前記第2の裾部よりも結合部の近くに位置し、
前記第1の層は、前記第1の裾部における厚みが、前記第1の端部における厚みよりも薄く、
前記第2の層は、前記第2の裾部における厚みが、前記第2の端部における厚みよりも薄
く、
前記第1の層と前記第2の層とは不均一な間隔を隔てて積層されている、模型部品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定した品質でグラデーションを知覚可能な模型部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に対応する模型部品1の構造の一例を説明するための図である。
【
図2】実施形態に対応するスカートレース部品20の構造の一例を説明するための図である。
【
図3】実施形態に対応するスカートレース部品20の断面構造の一例を説明するための図である。
【
図4】実施形態に対応するスカートレース部品20を構成する各層の構造の一例を説明するための図である。
【
図5】実施形態に対応するするの各層の面に施された模様の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ参照符号は、同じ要素を示している。また、各図において、紙面に対する上下左右方向を、本実施形態における部品(またはパーツ)の上下左右方向として、本文中の説明の際に用いることとする。なお本発明は、以下に説明する実施形態おいて成形材料としてポリスチレンを例示するがこれに限定されず、他の材質(ポリエチレン、ABS等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、金属等)の利用を排除するものではない。
【0010】
図1は、実施形態に対応する模型部品の外観の一例を示す図である。
図1(A)から
図1(C)は、本実施形態に対応する人形玩具のスカートの模型部品1の一例を、異なる角度からそれぞれ示す。模型部品1は、スカート部品10と、スカートレース部品20とから構成されている。スカートレース部品20は、最も上側に位置する第1の層21、中央に位置する第2の層22、最も下側に位置する第3の層23の3層が積層されて構成されている。本実施形態では、積総数を3としているが、実施形態は3層に限定されるものではなく、2層であってもよいし、4層以上であってもよい。
【0011】
図2は、スカートレース部品20のみの構造の一例を示す図である。
図2(A)から
図2(C)は、スカートレース部品の一例を異なる角度からそれぞれ示す。スカートレース部品20は、第1の層21の第1の裾部、第2の層22の第2の裾部、第3の層23の第3の裾部はそれぞれ位置が異なっており、上側に位置する層ほど裾部が短くなっている。即ち、第1の裾部は第2の裾部よりも短く、第2の裾部は第3の裾部よりも短くなっている。また、第1の層21、第2の層22、第3の層23のそれぞれは全体的に貝殻状の形状を有し、全体的に湾曲しており、かつ、各層の表面及び裏面には凹凸が施されている。当該凹凸により入射した光の反射方向が異なるために、見る方向に応じた陰影が形成される。
【0012】
図3は、スカートレース部品20の断面構造を説明するための図である。
図3(A)は、スカートレース部品20を横からみた場合の外観の一例を示す。ここでXYZの座標系が
図3(A)に示すように適用される。このとき、
図3(B)はスカートレース部品20のXY平面における断面の一例を示し、
図3(C)はスカートレース部品20のYZ平面における断面の一例を示す。
【0013】
図3(B)に示すように、点線で囲んだ、第1の層21の第1の端部、第2の層22の第2の端部、第3の層23の第3の端部の各端部の厚みは、実線で囲んだ第1の層21の第1の裾部、第2の層22の第2の裾部、第3の層23の第3の裾部の厚みよりも厚く形成されている。本明細書において「端部」とは、各層の先端を含む所定の領域のことを総称するものとし、「裾部」とは、各層において「端部」と反対側に位置し、かつ、先端を含む所定の領域を総称するものとする。
【0014】
第1の層21、第2の層22、第3の層23のそれぞれは、端部から裾部の先端にかけて徐々に厚みが減少していく(薄くなっていく)ように形成されてもよいし、端部から裾部の先端近傍または先端周辺まではほぼ同じ厚みを維持し、裾部の先端近傍または先端周辺から先端にかけて厚みが減少していくように形成されてもよい。
【0015】
また、
図3(C)に示すように、第1の層21、第2の層22、及び第3の層23の表面には細かい凹凸が形成されている。この凹凸により、第1の層21と第2の層22との間隔、第2の層22と第3の層23との間隔が不均一となり、かつ、部位によって間隔が異なることで、スカートレース部品20を表側、或いは、裏側から見たときにグラデーションを知覚することが可能となる。
【0016】
図4はスカートレース部品20を構成する各層の裏面の構造の一例を示す図である。
図4(A)は、第1の層21の裏面の構造の一例を示す。第1の層21の裏面には、他の層と結合するための突起部41が2つ設けられている。
図4(B)は、第2の層22の裏面の構造の一例を示す。第2の層22には、第1の層21の突起部41が貫通する開口42が2つ設けられている。同様に、第2の層23にも、第1の層21の突起部41が貫通する開口43が2つ設けられている。突起部41は、開口42を介して開口43を貫通することにより、第1の層21から第3の層23が結合する。
【0017】
図5は、スカートレース部品20の裾部に施された模様の一例を示す図である。
図5(A)は、第1の層21、第2の層22、第3の層23の各裾部の表面に施された模様の一例を示す。模様51は凸部(凸形状)により表現されているが、模様自体はどのような形態であってもよい。また、裾部の先端を構成する側面52にはシボ加工が施されている。なお、シボ加工は側面52だけでなく第1の層21、第2の層22、第3の層23の各裾部の裏面に全体に施しても良い。このことにより、レース編みが裾に施されているような表現をスカートレース部品20の裾部上で行うことができる。なお、スカートレース部品20の各層は、半透明の材料により形成されているため、模様51は、各層の表側だけでなく、裏側からも視認可能に形成されている。
【0018】
図5(B)は、第1の層21、第2の層22、第3の層23の各裾部の裏面に施された模様の一例を示す。模様52は凹部(凹形状)により表現されているが、模様自体はどのような形態であってもよい。スカートレース部品20の各層は、半透明の材料により形成されているため、模様52は、各層の裏側だけでなく、表側からも視認可能に形成されている。
【0019】
また、
図5(A)から
図5(C)に示すように、第1の層21、第2の層22及び第3の層23を結合するための突起部41、開口42、開口43と、対応する裾部との距離は、各層において互いに異なっている。具体的に、突起部41と第1の裾部との距離が最も短く、開口43と第3の裾部との距離が最も長く、開口42と第2の裾部との距離はその中間である。
【0020】
上記の実施形態において、第1の層21、第2の層22、及び、第3の層23の成形材料(素材)としては、例えば半透明(または透明)の汎用ポリスチレン(GPPS)を使用することができる。各層の色は同系色、類似色、または、反対色の関係を有する色であってもよい。また、成形材料には、偏光材料、例えば偏光パール紛が含まれていてもよい。これにより、グラデーション効果をより顕著なものとすることができる。また、スカートレース部品20の各層を成形するための成形材料として、一部に不透明のポリスチレン(PS)または強化ポリスチレン(KPS)を使用してもよい。例えば、いずれか1層のみを不透明の材料により形成してもよい。また、上記実施形態は、レース以外にもシフォンやオーガンジー等の透け感のある素材の表現に利用可能である。上記実施形態においてスカートレース部品とは、そのような透け感のある素材を模した部品のことをいう。また、上記実施形態は、スカート以外にも様々なものに適用可能であり、例えばTシャツやジャケット等の衣服やアクセサリー等の装身具などを模した部品に適用しても良い。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、安定した品質でグラデーションが施された模型部品を提供することできる。
【要約】
【課題】安定した品質でグラデーションを知覚可能な模型部品を提供する。
【解決手段】半透明の第1の色の材料で形成され凹凸を有する第1の層が、半透明の第2の色の材料で形成され凹凸を有する第2の層の上に積層されて構成される模型部品であって、前記第1の層は突起部を有し、前記第2の層は開口を有し、前記前記突起部が前記開口を貫通することにより、前記第1の層及び前記第2の層が結合される。
【選択図】
図1