特許第6841893号(P6841893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6841893-静電噴霧発生装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841893
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】静電噴霧発生装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20210301BHJP
   B05B 7/06 20060101ALI20210301BHJP
   F24F 6/14 20060101ALI20210301BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20210301BHJP
   A62C 31/02 20060101ALN20210301BHJP
【FI】
   B05B5/025 A
   B05B7/06
   F24F6/14
   F24F5/00 Z
   !A62C31/02
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-231703(P2019-231703)
(22)【出願日】2019年12月23日
(62)【分割の表示】特願2016-143136(P2016-143136)の分割
【原出願日】2016年7月21日
(65)【公開番号】特開2020-62642(P2020-62642A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】辻 利秀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲雄
【審査官】 塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/161476(WO,A1)
【文献】 特開2001−332398(JP,A)
【文献】 特開2009−106405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−9/08
A61L9/00−9/01;9/015−9/04;9/12−9/22
A62C2/00−99/00
B01D47/00−47/18
B03C3/00−11/00
B08B15/00−17/06
F24F1/0328−1/0353
F24F5/00
6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体材質で形成された液体ノズル部と、
絶縁体材質で形成された液体導管部と、
導電性の液体側電極と、
絶縁体材質で形成され、気体ノズル部を有して前記液体導管部の外周側に同軸状に設けた気体導管部と、
電極導体を絶縁材質により被覆して形成した誘導電極と、
を備え、
前記液体側電極に接して前記液体導管部を流通した液体を、前記液体ノズル部を介して液体柱として開放空間へ放出し、
前記気体導管部から前記気体ノズル部を介して前記開放空間へ気体流を噴出し、この際、前記開放空間へ放出された前記液体柱の放出軸上であって前記開放空間側の所定位置に存する噴霧化点に当該気体を作用させて、前記液体柱の液体を微粒子化して微粒子を含む噴霧流を生成し、
前記液体側電極と、前記噴霧化点近傍を前記液体導管部と同軸状に囲むように配置した前記誘導電極の前記電極導体と、の間に所定の電圧を与えることで前記微粒子を帯電させる、
ことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項2】
絶縁体材質で作られ、開放空間へ液体柱を放出する液体ノズル部と、
絶縁体材質で作られ、加圧された液体を前記液体ノズル部に導く液体導管部と、
前記液体導管部の内部に配置されるか、又は、前記液体導管部の一部分として構成され、前記液体と接触する導電性の液体側電極と、
絶縁体材質で作られ、前記液体ノズル部の周囲に配置されて、気体ノズル部を介して前記開放空間へ気体流を噴出し、前記液体ノズル部から放出された前記液体柱の放出軸上であって前記開放空間側の所定位置に存する開放空間側の所定位置である噴霧化点に前記気体流を作用させることにより前記液体柱の液体を微粒子化して微粒子を含んだ気流の流れである噴霧流を生成する気体導管部と、
電極導体を絶縁体材質により被覆して形成され、前記噴霧化点近傍をリング状に囲むように配置される誘導電極と、
を備え、
前記液体側電極と前記誘導電極の前記電極導体との間に所定の電圧を与えることで前記微粒子を帯電させることを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の静電噴霧発生装置に於いて、
前記誘導電極は、前記液体ノズル部から放出される前記液体柱の放出軸上において、前記噴霧化点の前記開放空間側を中心として前記噴霧化点近傍を囲むことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の静電噴霧発生装置に於いて、
前記気体ノズル部からの前記気体流の噴出に伴い、前記液体ノズル部から放出される前記液体柱の放出軸上において、前記噴霧化点の前記開放空間側とは反対側の周囲から、前記噴霧化点へ外気を取り込むように、前記誘導電極を配置したことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の静電噴霧発生装置に於いて、
前記液体導管部の液体供給側に、供給された液体の圧力を調整することにより、前記液体ノズル部から前記開放空間に放出される前記液体柱の形成状態と流速を管理させる液体圧力減衰部が設けられたことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項6】
請求項5記載の静電噴霧発生装置に於いて、
前記液体圧力減衰部は、供給された液体の流量を絞るオリフィス部と、前記オリフィス部の流出側に配置されて前記液体の圧力を低下させ、かつ、均一な流速に変換させるレフレクタ部を備えたことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の静電噴霧発生装置に於いて、
前記誘導電極の前記電極導体に対して前記液体側電極をアース側とし、当該アースを非接地としたことを特徴とする静電噴霧発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、海水、薬液等の液体の微粒子を帯電して放出させる静電噴霧発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水等の液体の微粒子を帯電して放出させる静電噴霧発生装置にあっては、噴射ノズルの噴射空間側に配置した誘導電極部と、噴射ノズルの内部に配置されて水系の消火剤
に接触する水側電極部とを備え、電源により誘導電極部と水側電極部との間に電圧を加えることにより生じる外部電界を、噴射ノズルにより噴射過程にある水系の消火剤に印加して、噴射粒子を帯電させるようにしている。
【0003】
このような静電噴霧発生装置によれば、平均粒子径が20〜200μmの微粒子を放出させることができ、例えばウォーターミスト消火設備に使用した場合には、帯電散布ヘッドから散布する水粒子を帯電させることにより、クーロン力により高温燃焼面への水粒子の付着はもとより、燃焼材のあらゆる面への水粒子の付着がおこり、帯電していない通常の水粒子と比較して、濡らし効果が大幅に増大して消火力を高めることができる。
【0004】
また、水噴霧冷房設備に使用した場合には、噴霧水に帯電させることにより、クーロン力により人の皮膚に対する付着量が増加し、清涼感を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−106405号公報
【特許文献2】特開2009−103335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の静電噴霧発生装置にあっては、平均粒子径が20〜200μmといった微粒子を帯電して放出させているが、平均粒子径を数ミクロン以下とする用途があり、従来の静電噴霧発生装置では、平均粒子径を数ミクロン以下とする微粒子を帯電して放出することは困難であり、この点が解決課題として残されている。
【0007】
本発明は、平均粒子径を数ミクロン以下とする微粒子を帯電して放出可能とする静電噴霧発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(静電噴霧発生装置)
本発明は、静電噴霧発生装置に於いて、
絶縁体材質で形成された液体ノズル部と、
絶縁体材質で形成された液体導管部と、
導電性の液体側電極と、
絶縁体材質で形成され、気体ノズル部を有して液体導管部の外周側に同軸状に設けた気体導管部と、
電極導体を絶縁材質により被覆して形成した誘導電極と、
を備え、
液体側電極に接して液体導管部を流通した液体を、液体ノズル部を介して液体柱として開放空間へ放出し、
気体導管部から気体ノズル部を介して開放空間へ気体流を噴出し、この際、開放空間へ放出された液体柱の放出軸上であって開放空間側の所定位置に存する噴霧化点に当該気体を作用させて液体柱の液体を微粒子化して微粒子を含む噴霧流を生成し、
液体側電極と、噴霧化点近傍を液体導管部と同軸状に囲むように配置した誘導電極の電極導体と、の間に所定の電圧を与えることで微粒子を帯電させる、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明は、静電噴霧発生装置に於いて、
絶縁体材質で作られ、開放空間へ液体柱を放出する液体ノズル部と、
絶縁体材質で作られ、加圧された液体を液体ノズル部に導く液体導管部と、
液体導管部の内部に配置されるか、又は、液体導管部の一部分として構成され、液体と接触する導電性の液体側電極と、
絶縁体材質で作られ、液体ノズル部の周囲に配置されて、気体ノズル部を介して開放空間へ気体流を噴出し、液体ノズル部から放出された液体柱の放出軸上であって開放空間側の所定位置に存する開放空間側の所定位置である噴霧化点に気体流を作用させることにより液体柱の液体を微粒子化して微粒子を含んだ気流の流れである噴霧流を生成する気体導管部と、
電極導体を絶縁体材質により被覆して形成され、噴霧化点近傍をリング状に囲むように配置される誘導電極と、
を備え、
液体側電極と誘導電極の電極導体との間に所定の電圧を与えることで微粒子を帯電させることを特徴とする。
【0010】
(誘導電極の位置)
誘導電極は、液体ノズル部から放出される液体柱の放出軸上において、噴霧化点の開放空間側を中心として噴霧化点近傍を囲む。
【0011】
気体ノズル部からの気体流の噴出に伴い、液体ノズル部から放出される液体柱の放出軸上において、噴霧化点の開放空間側とは反対側の周囲から、噴霧化点へ外気を取り込むように、誘導電極を配置する。
【0012】
(液体圧力減衰部)
液体導管部の液体供給側に、供給された液体の圧力を調整することにより、液体ノズル部から開放空間に放出される液体柱の形成状態と流速を管理させる液体圧力減衰部を備える。
【0013】
(オリフィス部とレフレクタ部)
液体圧力減衰部は、供給された液体の流量を絞るオリフィス部と、オリフィス部の流出側に配置されて液体の圧力を低下させ、かつ、均一な流速に変換させるレフレクタ部を備える。
【0014】
(アースケーブルの非接地)
誘導電極の電極導体に対して液体側電極をアース側とし、当該アースを非接地とする。
【発明の効果】
【0015】
(基本的な効果)
本発明の静電噴霧発生装置によれば、液体柱を開放空間に放出する絶縁体材質で作られた液体ノズル部と、加圧された液体を液体ノズル部に導く絶縁体材質で作られた液体導管部と、液体導管部の内部に配置されるか、又は、液体導管部の一部分を導体材質とすることで構成される、液体と接触する液体側電極と、液体ノズル部の周囲に配置される気体ノズル部を有し、液体ノズル部から開放空間に放出される液体柱の所定位置である噴霧化点において、気体ノズル部からの気体流を作用させることにより液体柱を微粒子化して微粒子を含んだ気流の流れである噴霧流を生成する絶縁体材質で作られた気体導管部と、開放空間に位置する噴霧化点を囲んで配置され、導体材質で作られた電極導体を絶縁体材質により被覆した略リング形状を持つ誘導電極とを備え、電源から液体側電極と誘導電極間に所定の電圧を与えることで帯電した微粒子の噴霧流を放出させるようにしたため、気体ノズル部による気体流を液体ノズル部から放出される液体柱に作用させることで、液体柱を微粒子化して平均粒子径が数ミクロン以下となる微粒子を含んだ気流の流れとなる噴霧流を生成し、液体側電極と誘導電極間に所定の電圧を与えることで噴霧流の微粒子に帯電させて放出させることができ、水、薬液等の液体から平均粒子径が数ミクロン以下となる帯電した微粒子は、クーロン力により適宜の対象物へ効率良く付着し微粒子の付着に伴う例えば消火や冷却といった効果を大幅に増大することができ、噴霧空間における粉じん又は臭気原因物質の吸着量を増大することができる。
【0016】
(誘導電極の配置位置による効果)
また、誘導電極は、開放空間中であって、リング中心が液体ノズル部の噴霧化点の同軸上の開放空間側に位置すると共にリング部分が円錐状に広がる噴霧流の外側に位置し、更に、気体ノズル部からの気体流の噴出に伴い周囲から外気が流入される隙間を設けて保持されるようにしたため、この誘導電極の配置によって、生成される帯電した微粒子の比電荷が1.0mC/Kg以上となり、この大きな比電荷で数ミクロン以下となる帯電した微粒子を確実に生成できることが確認されている。
【0017】
(液体圧力減衰部による効果)
また、静電噴霧発生装置は、更に、液体導管部の液体供給側に、供給された液体の圧力を低下させ、かつ、均一な流速に変換させることにより、液体ノズル部から開放空間に放出される液体柱の形成状態と流速を、供給される液体の圧力調整により管理させる液体圧力減衰部が設けられ、液体圧力減衰部は、供給された液体の流量を絞るオリフィス部と、オリフィス部の流出側に配置されて液体の圧力を低下させ、かつ、均一な流速に変換させるレフレクタ部を備えるようにしたため、液体ノズル部から安定して連続的に流体柱が放出され、これに気体ノズル部からの気体流を当てて確実に数ミクロン以下の微粒子を生成すると共に帯電させて放出できる。

【0018】
また、液体導管部に供給する液体の圧力を調整することで、帯電した微粒子の噴霧量を必要に応じて適宜に調整可能とする。
【0019】
(アースケーブルの非接地による効果)
また、電源部から誘導電極に電圧印加ケーブルを接続すると共に液体側電極にアースケーブルを接続し、アースケーブルを接地せずに、グランド電位に対しフローティング電位としたため、電源部から高圧電圧を印加していても、利用者が誘導電極と液体側電極の両方を同時に触れない限り短絡電流が流れることがなく、誘導電極と液体側電極の両方を同時に触れるような状況はほとんど想定できず、その結果、アースケーブルを接地してグランド電位とした場合に比べ、より高い安全性が確保可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による静電噴霧発生装置の実施形態を断面で示した説明図
図2図1の静電噴霧発生装置を放出側から見て示した平面図
図3図1の静電噴霧発生装置に設けられた液体導管部の気体ノズル部側を取り出して示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[静電噴霧発生装置の構造]
図1は本発明による静電噴霧発生装置の実施形態を断面で示した説明図、図2図1の静電噴霧発生装置を放出側から見て示した平面図、図3図1の静電噴霧発生装置に設けられた液体導管部の気体ノズル部側を取り出して示した説明図であり、図3(A)にノズル開口側から見た平面を示し、図3(B)に軸方向の断面を示す。
【0022】
図1に示すように、静電噴霧発生装置10は、液体供給部材12、装置本体14、ノズル部材22で構成され、液体供給部材12、装置本体14、ノズル部材22は絶縁材質で作られている。液体供給部材12、装置本体14、ノズル部材22の絶縁材質としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂、セラミックス(アルミナセラミックス)、ガラス琺瑯の少なくとも1種を絶縁材質に用いて形成されている。
【0023】
液体供給部材12の端部には、配管取付ねじ部15aと共に、軸方向に液体供給穴15が形成され、外部のポンプ等で加圧された水や薬剤等の加圧された液体が供給される。液体供給部材12に供給される液体の圧力は例えば0.1〜1.0MPaの範囲で調整される。
【0024】
液体供給穴15が連通した内部流路には液体圧力減衰部46が設けられる。液体圧力減
衰部46には、流入側からストレーナ48、オリフィス50及びレフレクタ部52が配置されている。
【0025】
液体供給部材12に続いて設けられた装置本体14の内部には軸方向に流路が形成された液体側電極16が組み込まれている。液体側電極16は金属の導電材質で作られている。液体側電極16の導電材質は、金属以外に、導電性を有する樹脂、繊維束、ゴムなどを用いて形成されていてもよく、また、これらを組み合わせた複合体を用いて形成されていてもよい。
【0026】
液体側電極16には装置本体14の横方向の取付穴に対し防水電極端子42がねじ込み固定され、防水電極端子42の先端が電気的に接触固定されている。
【0027】
装置本体14の先端側は円錐形の絞り部に続いて軸部が形成され、内部の軸方向に液体導管部18が形成され、液体導管部18の先端に液体ノズル部20が開口されている。
【0028】
装置本体14の先端外側に配置されたノズル部材22は内部に気体導管部36が形成され、気体導管部36に対し右側から空気供給管34が連結固定され、空気供給管34によりコンプレッサ等から例えば0.6〜0.7MPa程度に圧縮された空気が供給される。
【0029】
ノズル部材22と装置本体14の先端には気体ノズル部24が形成されている。気体ノズル部24は、図3に示す装置本体14の先端に開口した液体ノズル部20の外周テーパ面のスパイラル方向に複数本の導気溝部60が形成されており、導気溝部60の外側に、図1に示すように、ノズル部材22の先端のテーパ穴が位置することで、気体ノズル部24が形成されている。
【0030】
気体ノズル部24は液体ノズル部20から放出される液体柱38に対し、導気溝部60を介して圧縮された空気をスパイラル状に噴出し、液体ノズル部20から開放空間に放出される液体柱38の所定位置である噴霧化点Pにおいて、気体ノズル部24からの気体流を作用させることにより液体柱38を微粒子化して微粒子を含んだ気流の流れである噴霧流40を生成させる。
【0031】
液体ノズル部20及び気体ノズル部24の先端側の開放空間には誘導電極26が配置される。誘導電極26は先端のリング部を開放空間に位置する噴霧化点Pを囲んで配置され、導体材質で作られた電極導体28を絶縁体材質で作られた絶縁被覆30で覆っており、リング部は図2に示すように、放射状に配置された3本の電極保持アーム32によりノズル部材22に対し支持固定されている。
【0032】
ここで、誘導電極26のリング部は、ノズル部材22の先端側の開放空間中であって、リング中心Qが液体柱38の噴霧化点Pの同軸上の開放空間側(外側)に位置すると共に円錐状に広がる噴霧流40の外側に位置し、更に、気体ノズル部24からの気体流の噴出に伴い周囲から外気が流入される外気流入空間35が形成される隙間を設けて保持される。
【0033】
誘導電極26における電極導体28は導電性をもつ金属であり、金属以外に、導電性を有する樹脂、繊維束、ゴムなどを用いて形成されていてもよく、また、これらを組み合わせた複合体を用いて形成されていてもよい。
【0034】
また、誘導電極26における絶縁被覆30の絶縁材質としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポ
リクロロトリフルオロエチレン樹脂、セラミックス(アルミナセラミックス)、ガラス琺瑯の少なくとも1種を絶縁材質に用いて形成されている。
【0035】
液体側電極16と誘導電極26に対しては電源部54からの電圧印加ケーブル56とアースケーブル58が接続され、液体側電極16に対するアースケーブル58は本実施形態では接地されている。電源部54は、液体側電極16と誘導電極26の間に+0.5kV〜+20kV又は−0.5kV〜−20kVの範囲の直流(交流またはパルス状)の所定の電圧を印加すると、誘導電極26のリング部の周囲に所定の外部電界が形成され、噴霧化点Pで生成された微粒子に帯電させ、帯電された微粒子の噴霧流40を放出させる。
【0036】
例えば、誘導電極26に直流電圧を印加した場合には、誘導電極26の極性に応じて、正電荷と負電荷のいずれか一方の電荷で帯電した微粒子が生成される。また、交流、パルス状で電圧を印加すると、交互に切り替わる誘導電極26の極性に応じ、選択的に正電荷あるいは負電荷で帯電した微粒子が生成される。
【0037】
また、電源部54は誘導電極26に印加する電圧を、−5kV〜20kVの範囲の所定の一定電圧としてもよいし、±5kV〜±20kVの範囲で変動させてもよい。そして、このように印加電圧を±5kV〜±20kVの範囲にすると、火花放電の発生が防止され、安全を確保しながら帯電した微粒子の噴霧流40が生成される。
【0038】
[静電噴霧発生装置の動作]
図1に示す静電噴霧発生装置10を使用する場合には、ポンプ等で加圧された液体を配管取付ねじ部15aに連結した配管により供給させ、また、空気供給管34によりコンプレッサ等からの圧縮空気を供給させ、更に、電源部54により液体側電極16と誘導電極26の間に±5kV〜±20kVの範囲の所定の電圧を印加させる。
【0039】
液体供給穴15から供給された加圧液体は、液体圧力減衰部46のストレーナ48からオリフィス50で絞られてレフレクタ部52に入り、オリフィス50通る際に減圧され、レフレクタ部52を通る際に均一な流速に変換され、液体導管部18を通って先端の液体ノズル部20に送られ、液体ノズル部20から開放空間に柱状の形態を保った液体柱38を放出させる。
【0040】
ここで、液体供給穴15に供給される加圧液体の圧力を調整することで、液体ノズル部20から放出される液体柱38の形成状態と流速(放出量)を調整して管理することができる。
【0041】
空気供給管34から供給される圧縮空気は気体導管部36から気体ノズル部24に送られ、図2及び図3に示したスパイラル配置された導気溝部60から開放空間に放出され、所定位置となる噴霧化点Pで液体ノズル部20から放出される液体柱38に当たって作用することで、液体柱38を微粒子化して平均粒子径が数ミクロン以下の微粒子を含んだ気体の流れである噴霧流40が生成される。
【0042】
噴霧化点Pで生成される噴霧流40の微粒子は、一定電圧が印加された誘導電極26のリング部にて形成される外部電界により誘導帯電され、帯電した微粒子群の噴霧流40が放出される。
【0043】
このように空気流の作用で液体柱38を噴霧化させる噴霧化点Pと誘導電極26のリング中心Qとの位置関係として、微噴霧化点Pの同軸上の開放空間側にリング中心Qを位置させたことで、誘導電極26の誘導電解により帯電された微粒子の比電荷は1.0〜20mC/kgとなっており、この大きな比電荷で確実に帯電した微粒子を生成できることが確認されている。
【0044】
[本発明の変形例]
(液体側電極)
上記の実施形態は、液体導管部の内部に導体材質で作られた液体側電極を配置しているが、絶縁体材質で作られた液体導管部の一部分を導体材質とすることで液体側電極を構成しても良い。
【0045】
(アースケーブルの非接地)
また、上記の実施形態は、液体側電極に接続するアースケーブルをグランドに接地しているが、アースケーブルをグランドに接地せずに、グランドから浮いたフローティング電位としてもよい。このようにアースケーブルをグランドに接地せずにフローティング電位とすることで、利用者が誘導電極と液体側電極の両方を同時に触れない限り短絡電流が流れることがなく、誘導電極と液体側電極の両方を同時に触れるような状況はほとんど想定できず、その結果、アースケーブルを接地してグランド電位とした場合に比べ、より高い安全性が確保可能となる。
【0046】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0047】
10:静電噴霧発生装置
12:液体供給部材
14:装置本体
15:液体供給穴
16:液体側電極
18:液体導管部
20:液体ノズル部
22:ノズル部材
24:気体ノズル部
26:誘導電極
28:電極導体
30:絶縁被覆
32:電極保持アーム
34:空気供給管
36:気体導管部
38:液体柱
40:噴霧流
42:防水電極端子
46:液体圧力減衰部
48:ストレーナ
50:オリフィス
52:レフレクタ部
54:電源部
56:電圧印加ケーブル
58:アースケーブル
60:導気溝部
図1
図2
図3