(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841904
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】カムシャフト調整のための電磁調整装置
(51)【国際特許分類】
F01L 1/356 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
F01L1/356 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-513314(P2019-513314)
(86)(22)【出願日】2017年8月21日
(65)【公表番号】特表2019-526745(P2019-526745A)
(43)【公表日】2019年9月19日
(86)【国際出願番号】EP2017071014
(87)【国際公開番号】WO2018046287
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2019年4月1日
(31)【優先権主張番号】102016116981.1
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513099832
【氏名又は名称】ケンドリオン (ビリンゲン) ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KENDRION (Villingen) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】カンメラー、アンドレアス
【審査官】
菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−058437(JP,A)
【文献】
特開2014−203986(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0342071(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102007020092(DE,A1)
【文献】
特開2000−269028(JP,A)
【文献】
特開2013−239538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34− 1/356
9/00− 9/04
13/00−13/08
H01F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ポッティング材から製造されたプラグハウジング(10)を有する、カムシャフト調整のための電磁調整装置(1)であって、前記プラグハウジング(10)内には、それぞれ端子(24,25,26,27;31,32,33)を有する固定コイルユニット(20)および別個のセンサユニット(30)が埋め込み方式で設置されており、これらの端子は電気配線(41〜46)によってプラグハウジング(10)上に突出するコンタクトピン(61〜66)および作動ユニット(80)に電気的に接続されており、前記作動ユニット(80)内には、前記コイルユニット(20)の通電により軸線方向に移動可能である少なくとも1つの軸線方向に移動可能なアーマチュア(91,92)が設置されており、
前記コンタクトピン(61〜66)への前記コイルユニット(20)および別個のセンサユニット(30)の端子(24,25,26,27;30,31,32)と電気配線(41〜46)とが、前記プラグハウジング(10)のポッティング材内に包埋されており、
それによって、前記コイルユニット(20)、別個のセンサユニット(30)、ならびにその関連する端子(24,25,26,27;30,31,32)および電気配線(41〜46)が、前記プラグハウジング(10)のポッティング材内に完全に包埋されて、全体として前記作動ユニット(80)上に配置される完成されたアセンブリを提供する、電磁調整装置(1)において、
前記プラグハウジング(10)には、平板状底部(11)であって、その下側面上に周溝(16)を有する平板状底部(11)が一体的に形成されており、
前記別個のセンサユニット(30)が、前記平板状底部(11)から下方に突出していることを特徴とする、電磁調整装置。
【請求項2】
前記コイルユニット(20)と前記コンタクトピン(64,65,66)との間の電気配線(44,45,46)、または前記センサユニット(30)と前記コンタクトピン(61,62,63)との間の電気配線(41,42,43)、あるいはこれら両方の電気配線(41,42,43)が、金属の打ち抜き格子として形成されている、または前記プラグハウジング(10)内に予め曲げられて挿入されている、あるいはこれらの両方であることを特徴とする、請求項1に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項3】
前記コイルユニット(20)と前記コンタクトピン(64,65,66)との間に3本の電気配線(44,45,46)が備えられ、かつ前記センサユニット(30)と前記コンタクトピン(61,62,63)との間に3本の配線(41,42,43)が備えられていることを特徴とする、請求項1または2に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項4】
前記コイルユニット(20)が、コイル(21,22)が巻回された少なくとも1つのコイル支持体(28)、並びに異なる軸線方向高さを有する上側カラー(28a)および下側カラー(28b)を有し、少なくとも2つのコンタクトピンが端子(24,25,26,27)として幅広なカラー(28aまたは28b)に挿入され、前記端子がコイル(21)のコイル線のコイル線端部(21a,21b)にそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項5】
前記コンタクトピンが前記コイル線端部(21a,21b)に溶接されていることを特徴とする、請求項4に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項6】
前記作動ユニット(80)のアーマチュア(91,92)がアーマチュアピンとして形成されており、かつ前記プラグハウジング(10)が作動ユニット(80)上に配置されたときに、前記コイルユニット(20)のコイル(21)内において中央に係合することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項7】
前記作動ユニット(80)が、前記コイルユニット(20)を包囲する前記プラグハウジング(10)の空洞(18)内に少なくとも部分的に係合する弓形の形態にあるシェルまたはガイドプレート(84)を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項8】
前記プラグハウジング(10)の平板状底部(11)が、ブッシング(13)を埋め込み保持するための、前記プラグハウジング(10)の側壁から外方に延びる部分を有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項9】
前記プラグハウジング(10)がカバー(15)によって閉鎖されていることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【請求項10】
前記コイルユニット(20)がコイル支持カラー(28a,28b)を有する少なくとも1つのコイル本体(28)を有し、前記コイル支持カラー(28a,28b)には周囲封止リップ(28c,28d)が設けられており、これらの封止リップ(28c,28d)が前記プラグハウジング(10)のポッティング材内に挿入されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のカムシャフト調整のための電磁調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴を有する、特にカムシャフト調整のための電磁調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電磁カムシャフト調整装置は、例えば、特許文献1より知られている。この装置は、固定コイルユニットおよびセンサユニットが内部に設置されたプラグハウジングを有する。コイルユニットおよびセンサユニットはそれぞれ端子を有し、詳細には説明されていない方法で電気配線(elektrische Leitungen)を介して、ハウジングのプラグ部の内側のコンタクトピンに接続されている。プラグハウジングは、軸線方向に移動可能なアーマチュアを有する作動ユニット上に設置され、そのアーマチュアはコイルユニットの通電により軸線方向に移動可能であり、かつ自動車両のカムシャフト調整ユニットのタペットと相互に作用する。ハウジングはコイルユニットを包囲する円筒状ハウジングシェルを有する。この場合、円筒状ハウジングは、コイルユニットが押出被覆されるようにプラスチックポッティング材によって充填されている。コイルユニットの下端領域は、そのポッティング材から依然として突出している。
【0003】
コイルユニットは、詳細には示されていない方法で、プラグハウジング上において外部からアクセス可能なコンタクトピンにつながる接続線に接続されている。これらのコンタクトピンは、プラグハウジング上に一体的に形成されたプラグフランジの空洞内に設置されている。加えて、センサユニットは、その約半分がポッティング材によって包囲され、かつその下半分がプラグハウジングの空洞内に突出するように、ハウジング上に固定されている。センサユニットは、この場合、円盤状の永久磁石と相互に作用し、そのためアーマチュアの軸線方向の移動の間、永久磁場の変化はセンサユニットによって検出可能であり、これを後の電子的処理に供給することができる。
【0004】
プラグハウジング内部の個々の構成要素の比較的複雑な取り付け、およびとりわけコイルユニットとセンサーとの接触は、そのような電磁カムシャフト調整装置において特に課題を示す。コイルは製造のために自動車両の油に晒されるので、接点の適切な封止および/または漏出密封性が保証されるべきである。従って、一般にそのような電磁カムシャフト調整装置内において溶接される接点は油と接触不可であるため、一方ではコイルとプラグハウジングのコンタクトピンとの間における個々の接点、および他方ではまたセンサユニットとプラグハウジングのコンタクトピンとの間における個々の接点を完全に油密にする必要がある。これは、接点と油とのそのような接触が望ましくない銅腐食を生じるためである。従って、これらの溶接された接点は、センサーをプラグハウジング内に取り付けた後に、さらなるポッティング材によって、このさらなるポッティング材を未だ露出した接点に適用することにより、規則的に別々に再度封止される。
【0005】
電磁カムシャフト調整装置における対応する接点のそのような別々の封止は、一方では非常に複雑であり、他方では、電磁カムシャフト調整装置全体の費用効率の高い生産に反する付加的な方法ステップを必要とする。加えて、さらなるポッティング材の適用中に腐食に敏感な接点の完全な封止をもたらさない不備が生じる危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国実用新案第202009006940号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明について以下に説明する。
本発明は記載した不都合を回避し、個々の構成要素および特に接点が完全に油密で形成されるように冒頭に規定した電磁調整装置を改良することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、コイルユニットおよびまたセンサーの双方、並びに関連する電気配線および端子がポッティング材に完全に埋め込まれている、プラグハウジングがポッティング材からなる本発明に従って本質的に達成される。
【0009】
この方法は、電磁調整装置の重要な構成要素、並びに接点および/または電気配線がプラグハウジングのポッティング材内に完全に油密に一体化されることを保証し、電磁調整装置の作動ユニット上に配置して、その上に固定するだけで機能的な電磁調整装置を提供する、すべての電磁構成要素を有する完成した扱い易いアセンブリが提供されるという利点がさらに得られる。
【0010】
そのような電磁調整装置は、電磁アクチュエータの簡単な取り付けおよび完全な油密性によって特徴付けられる。
そのような電磁調整装置のさらなる実施形態は従属請求項に明示される。
【0011】
本発明のさらなる実施形態では、コイルユニットとプラグハウジングから外部よりアクセス可能なコンタクトピンとの間の電気配線、および/またはセンサユニットとプラグハウジングから外部よりアクセス可能なコンタクトピンとの間の電気配線が金属打ち抜き格子(metallisches Stanzgitter)として形成され、かつ予め曲げられて射出成形金型内に挿入され、その射出成形金型内においてプラグハウジングが押出被覆によって続いて製造されることを規定する。そのような前加工した打ち抜き格子の本質的な利点は、一方では、コイルユニットに前に接続することができるということであり、よって打ち抜き格子を有するコイルユニットは、非常に容易に扱うことができ、かつ射出成形金型に挿入することができる前加工した構造ユニットを形成する。これはまた、センサユニットが接続されるさらなる打ち抜き格子にも当てはまる。固定され接続されたセンサユニットを有するこの打ち抜き格子はまた、容易に扱うことができる前加工した構造ユニットを形成する。打ち抜き格子は、しかるべく予め曲げられて、簡単な方法でプラグハウジングの射出成形金型内に挿入され得る。これはまた電磁調整装置の製造工程を決定的に単純化する。
【0012】
コイルユニット用の3本の電気配線およびセンサユニット用の3本の電気配線の双方を提供することが好都合であることが判明している。従って、合計6本の電気配線が6つのコンタクトピンに接続可能であり、それらのコンタクトピンは適当なプラグを介して制御電子回路ユニットおよび/または分析電子回路ユニットに接続することができる。センサーの3本の配線の各々は、1本はセンサーの接地端子に接続され、1本はセンサーの供給電位に接続され、1本はセンサーの信号線に接続される。
【0013】
いわゆる2ピンカムシャフト調整器では、2つのコイルがコイルユニットに提供される。これらの2つのコイルにはそれぞれ正極端子および接地端子が備えられており、2つの接地端子は互いに接続され得る。2つの正極端子および共通接地端子は、次に打ち抜き格子の3本の上記の配線に接続される。打ち抜き格子のこれらの3本の配線は、次に本発明に従って電磁カムシャフト調整装置のプラグの3つのコンタクトピンに接続される。
【0014】
電磁調整装置および特にカムシャフト調整装置が、単一のタペットのみを作動させるための所謂1ピンアクチュエータである場合には、コイルユニットはまた単一のコイルのみを有する。この場合、2つの配線(正極端子および接地端子)のみが必要となる。
【0015】
本発明の別のさらなる実施形態において、コイルユニットはコイル支持体上に巻回された少なくとも1つのコイルを有する。コイル支持体は上側カラーおよび下側カラーを有し、それらの2つのカラーは異なる軸線方向高さを有する。上側カラーであり得る幅広なカラーでは、例えば、少なくとも2つのコンタクトピンが端子として挿入され、それらの端子はそれぞれコイルのコイル線のコイル線端部に電気的に接続されている。この場合、コンタクトピンをコイル線端部に溶接することが有利であることが判明している。しかしながら、例えば、はんだ付け、電気伝導性接着剤接合など他の電気接続方法も可能である。
【0016】
本発明のさらなる実施形態において、作動ユニットのアーマチュアは、アーマチュアピンとして設計されており、プラグハウジングが作動ユニット上に配置されたときに、コイルユニットのコイル内において中央に少なくとも部分的に係合する。2ピンアクチュエータを実装する場合には、2つのそのようなアーマチュアピンが備えられる。
【0017】
またコイルユニットを包囲するプラグハウジングの空洞に少なくとも部分的に係合する弓形の形態にある金属からなるシェルを作動ユニットに設けることが有利であることも判明した。ガイドプレートとして具体化することもできる弓形の形態にある金属からなるこれらのシェルは、コイルユニットの通電により、よって電磁カムシャフト調整装置の動作時に、生成される電磁場を案内するために用いられる。
【0018】
プラグハウジングを作動ユニット上に固定できるようにするためには、プラグハウジングが平板状底部を有し、その平板状底部にはブッシングが押し出されることが有利であることが判明した。これらのブッシングの開口は、この場合には、作動ユニット上の対応する固定開口と整合され、その結果、プラグハウジングの作動ユニットへのねじ接続が簡単な方法で可能となる。
【0019】
本発明のさらなる実施形態において、プラグハウジングはカバーによって閉鎖される。これは、レーザー溶接または他の固定方法によってプラグハウジング上に固定されるプラスチックカバーであり得る。
【0020】
最後に油密性を高めるために、コイルユニットは少なくとも1つのコイル本体を有することができ、そのコイル支持カラーには周囲封止リップが備えられている。封止リップはまた、プラグハウジングの製造中にプラグハウジングのポッティング材によって押出被覆され、その結果、このように確実で最適な封止が得られる。
【0021】
本発明に従った電磁カムシャフト調整装置をさらに説明するためのいくつかの図面に基づいて、特定の例示的な実施形態について詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】より分かり易くするためにプラグハウジングを透明にして示した、本発明に従った電磁カムシャフト調整装置の例示的な実施形態の分解図。
【
図2】取り付けられた状態の
図1に従った電磁カムシャフト調整装置を示す図。
【
図3】内部に取り付けられた構成要素とともに透視図で示された
図1および
図2のプラグハウジングの斜視図。
【
図4】内部に位置する構成要素を有した
図3の断面Bに沿った
図3からのプラグハウジングの断面図。
【
図5】断面線A−Aに沿った
図4に示したプラグハウジングの断面図。
【
図6】プラグハウジングに向かって斜め下から見たプラグハウジングおよびその内部に位置する構成要素の斜視図。
【
図7】プラグハウジング内に位置する2つのコイル間において断面が形成されたプラグハウジングの横断面図。
【
図8】
図3からの断面線C−Cに沿ったプラグハウジング10の断面図。
【
図9】斜視図のコイル支持体を含むプラグハウジング内に位置するコイルのうちの1つの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面の以下の説明において、同一の参照数字は、他に示されていない場合には、同一の意味を有する同一の部品を識別する。以下の図において、より分かり易くするため、かつよりよく理解するために、プラグハウジングおよびその内部に一体的に形成された底部、並びに一体的に形成されたプラグフランジはそれぞれ、プラグハウジング内に位置する構成要素を見えるようにすると同時に、図の説明についての理解を促進するために透明にして示されている。このプラグハウジングが実際には明らかに透明にされる必要はないことは自明である。プラグハウジングの任意の色彩設計が可能である。プラグハウジングの1つの特に好ましい色の変形例は、それが黒色ポッティング材からなることである。
【0024】
図1には、全体が参照番号1で識別された電磁カムシャフト調整装置の可能な一実施形態が示されている。
図1に示した電磁カムシャフト調整装置は、カムシャフトの調整のために2つのタペット100,101が内燃機関の調整溝内に係合する、所謂「2ピンアクチュエータ」である。後に説明されるコイルユニットの対応する通電により、カムシャフトの調整を実施するために、これらのタペット100,101を軸線方向に前後に移動させることができる。「2ピンアクチュエータ」の代わりに、電磁カムシャフト調整装置はまた、単一のタペットのみが内燃機関のカムシャフトの単一の調整溝内に係合してカムシャフトを調整する、所謂「1ピンアクチュエータ」としても設計され得る。
【0025】
この文脈において、本発明に従った電磁調整装置は、好ましくは、カムシャフトの調整を目的として、上記の1つ以上のタペットを移動させるために提供されるが、自動車両における使用に制限されない他の調整作業にも用いることができることに特に留意するべきである。
【0026】
電磁カムシャフト調整装置1は、プラスチックポッティング材から製造されたプラグハウジング10を有し、プラグハウジング10上には平板状底部11が一体的に形成されている。この底部11は、プラグハウジング10のほぼ円形または楕円形のハウジング壁を越えて突出しており、中央開口14を有する2つの直径方向に対向したブッシング13が、この突出した領域(この点に関して
図4参照)に埋め込まれて保持されている。これらのブッシング13は、プラグハウジング10を後に説明する固定ユニット80および自動車両のエンジンハウジング(
図1には示さず)に固定するために用いられる。加えて、プラグハウジング10にはプラグフランジ12が一体的に形成されている。好ましくは楕円形の断面形状を有し、かつ後に説明するコンタクトピン61〜66を収容するこのプラグフランジ12は、
図1の実施例では、プラグハウジング10から左側に突出している。
【0027】
図1が示すように、プラグハウジング10は、カバー15、好ましくはプラスチックから製造されたカバーによって、その上側面において閉鎖されている。このカバー15は、封止を形成するためにプラグハウジング10上に配置されている。プラグハウジング10への機械的な接続は、例えば、超音波溶接、接着剤接合、または同様の固定方法によって生成することができる。この場合、カバー15は、プラグハウジング10上において可能な限り漏出防止性を有するように設置されることが重要である。
【0028】
プラグハウジング10は、カバー部15から離反するように向いたその下側面上、よって底部11の下側面上に、周溝16を有する。周溝16内には、プラグハウジング10が作動ユニット80上に配置されて電磁カムシャフト調整装置が取り付けられるときに、封止リング17が挿入される。プラグハウジング10および作動ユニット80のこの組み立て状態を
図2に示す。
【0029】
既に述べたように、プラグハウジング10はプラスチックポッティング材からなる。この場合、電気部品、接点および接続線はすべて、プラグハウジング10のポッティング材内に埋め込まれ、その中に完全かつ広範囲に包埋され、その結果、完全な漏出密封性が保証される。プラグハウジング10内に埋め込まれた電気部品が電気的に接続される上述のコンタクトピン61〜66のみがポッティング材から突出する。
【0030】
電気部品、端子コンタクトおよび電気配線のポッティングおよび包埋は、
図4の断面線A−Aに沿った、ハウジング10のポッティング材がクロスハッチングされて示されている
図5の断面図において特にはっきりと確認できる。
【0031】
2つのコイルを有するコイルユニット20はプラグハウジング10内に設置され、「2ピンアクチュエータ」を実現するための例示的な実施形態は、すなわち第1コイル21および第2コイル22を有する。コイル21,22の双方は、好ましくは同様に具体化される。コイル21は
図9において斜視図で示され、また
図10において上面図で拡大されている。コイル21はコイル支持体28に巻回されている。好ましくは同様にプラスチックからなるこのコイル支持体28は、上側カラー28aおよび下側カラー28bを有する。これらの2つのカラー28a,28bは、コイル21の外側巻線の外径を若干越えて突出して、その範囲を定める。コイル支持体28の上側カラー28aは、コイル支持体28の下側カラー28bより有意に高い。これは、接触弓の形態にある電気端子24,25を上側カラー28aの周壁に側方方向に挿入できるようにするために必要である。コイル21の2つのコイル端部21a,21bは、例えば、端子24,25として用いられるコンタクトピンのタブがコイル端部21a,21bを緊締し、それらに電気的に接触することによって、端子24,25に電気的に接続される。加えて、コイル支持体28の上側カラー28aおよび下側カラー28bの双方はそれぞれ周囲封止リップ28c,28dを有しており、周囲封止リップ28c,28dが、プラグハウジング10の製造およびそれに関連するコイル21(およびまたコイル22)のポッティングの間におけるプラグハウジング10のポッティング材への最適な熱可塑性結合と、よって最適な封止効果とを保証する。
【0032】
第2コイル22は説明したコイル21と同様の方法で構成されており、かつ第2コイル22のコイル端部が電気的に接続されるコンタクトピンを同様に有する。これらのコンタクトピンは、第2コイル22の端子26,27を形成する。
【0033】
第1コイル21の端子24,25、および第2コイル22の端子26,27は、電気配線によってプラグハウジング10のコンタクトピン64,65,66に電気的に接続されている。この場合、電気配線は3本の配線を有する金属の打ち抜き格子として実現される。打ち抜き格子のこれらの3本の配線は、好ましくはいくつかの区間で互いに平行に延びており、かつ第1コイル21の端子24,25および第2コイル22の端子26,27に接触する。この場合、第1コイル21の端子24および第2コイル22の端子26は、それらの端子がグランドにあるため、接触弓(Kontaktbuegel)によって互いに短絡される。よって、2つの端子24,26は打ち抜き格子の電気配線44に一緒に接続される(この点に関して
図6参照)。第1コイル21の端子25は打ち抜き格子の配線45に接続され、第2コイル22の端子27は打ち抜き格子の電気配線46に接続されている。
【0034】
製造時、コイル21,22はそれらの端子24〜27とともに予め組み立てられて、取り付けユニットに供給され、その中でコイル21,22の端子24〜27は打ち抜き格子の対応する3本の配線44,45,46に溶接される。この前加工した打ち抜き格子には、その他方の端部において、コンタクトピン64,65,66を備えている。その配線44,45,46および関連するコンタクトピン64,65,66、並びに溶接されたコイル21,22も有する打ち抜き格子は、次にしかるべく予め曲げられて射出成形金型内に挿入され、この金型内においてプラグハウジング10が射出成形される。
【0035】
加えて、一端において上述のコンタクトピン61,62,63を有し、かつ他端においてセンサユニット30に電気的に接続されたさらなる打ち抜き格子も、この射出成形金型内に挿入される。センサユニット30は、上記のタペット100,101またはこれらのタペット100,101に動作可能に接続されたアーマチュア90,91の軸線方向位置を検出する目的で、電磁カムシャフト調整装置の動作時に提供される、例えばホールセンサーであってもよい。このセンサユニット30は、例えば、センサユニット30の集積回路のコンタクトピンとして形成することができる3つの端子31,32,33を有する。これらの端子31,32,33は、例えば、溶接によって、打ち抜き格子の配線41,42,43に電気的に接続される。
【0036】
さらなる事前組立ステーションにおいて、このセンサユニット30は打ち抜き格子の配線41,42,43に溶接される。配線41,42,43を有する第2打ち抜き格子と溶接されたセンサユニット30とからなる、このように予め取り付けられたこの第2ユニットは、適当な方法で曲げられ、同様にプラグハウジング10の押し出しのための射出成形金型内に挿入される。
【0037】
加えて、特に
図6に明瞭に示すように、2つのブッシング13も射出成形金型に挿入される。続いて、プラスチック製のプラグハウジング10を押し出すために、ポッティング材が射出成形金型に導入される。この場合、射出成形金型およびネガティブ(凹型)射出成形金型は、2つのコイル21,22のすべての端子24,25,26,27、およびセンサユニット30の端子31,32,33がプラスチックを用いて完全に押出被覆され、よって封止されるように設計されている。加えて、プラグフランジ12内に突出するコンタクトピン61〜66を除いて、2つの打ち抜き格子の配線41〜46もすべてプラスチックを用いて完全に押出被覆される。最後に、コイルもまた、
図5の断面図に明瞭に示されるように、プラスチック材料を用いて全体が押出被覆される。この場合には、特にコイル支持体の管状内壁もポッティング材で全体が押出被覆され得る。
【0038】
プラグハウジング10の内側のすべての構成要素の最適な封止はこのように保証される。さらに、記載した製造方法によって、
図1に示すように作動ユニット80上に配置するだけでよい、扱いが非常に簡単な構成要素が提供される。
【0039】
この作動ユニット80は、プラグハウジング10の底部プレート11の寸法に概ね相当する、例えば金属からなる、底部プレート81を有する。固定孔82は、プラグハウジング10の固定ブッシング13の開口14と整合されて、作動ユニット80の底部プレート81内に組み込まれている。カムシャフトの調整に用いられ、かつピン形アーマチュア91,92にそれぞれ動作可能に接続されている上述のタペット100,101は、この底部プレート81の下側面から突出している。プラグハウジング10が作動ユニット80上に配置されるとき、これらの2つのアーマチュア91,92は、コイル21,22の中央開口に少なくとも部分的に係合する。アーマチュア91,92は、コイル21および/またはコイル22の通電により、このように軸線方向に移動可能であり、それにタペット100,101の軸線方向の移動が連動する。前述のセンサユニット30はこの軸線方向の移動を検出することができる。
【0040】
アーマチュア91,92およびタペット100,101に加えて、作動ユニット80はまた、コイルユニット20の2つのコイル21,22のまわりに形成されたプラグハウジング10の空洞18(この点に関して
図5参照)に係合する金属の管状ガイドプレート84も有する。作動ユニット80をプラグハウジング10のこの空洞18内に挿入することができるように、ガイドプレート84は長手方向スロット85を有し、センサユニット30はプラグハウジング10および作動ユニット80の取り付けの間に長手方向スロット85内に押し込まれる。
【0041】
内部に埋め込まれた電気部品並びに電気配線および電気端子を有するプラグハウジング10の
図5の断面図から明らかなように、プラグハウジング10のポッティング材はこれらの構成要素を完全に包囲している。従って、コイル21,22、センサユニット30、および関連する端子24〜27,31〜33の各々、並びに接続線44〜46はすべて、特にモーターオイルとの接触に関して封止され、かつ最適に保護される。
【0042】
最後に、
図5はまた、プラグハウジング10のポッティング材によって完全に埋め込まれたセンサ、すなわちセンサユニット30は、底部11のフットプリントを超過量Dだけ僅かに越えて突出するという特別な特徴を示している。これは、センサユニット30が、アーマチュア91,92とともに移動可能に配列され、かつ分かり易くするために図示されていない永久磁石およびその磁界を最適に検出することができるために必要である。加えて、
図5は、ブッシング13も底部11のフットプリントを僅かに越えて突出していることを示している。よって、これらのブッシング13は、ブッシング13のこの突出領域が作動ユニット80の上記の開口82に係合することができることにより、整合補助部として簡単な方法で用いられ得る。
【符号の説明】
【0043】
1…特にカムシャフト調整のための電磁調整装置、10…プラグハウジング、11…底部、12…プラグフランジ、13…ブッシング、14…開口、15…カバー、16…封止リング、17…溝、18…空洞、20…コイルユニット、21…コイル、21a…コイル線端部、21b…コイル線端部、22…第2コイル、24…端子、25…端子、26…端子、27…端子、28…第1コイル支持体、28a…第1コイル支持体28の上側カラー、28b…第1コイル支持体28の下側カラー、28c…上側カラー28a上の周囲封止リップ、28d…下側カラー28b上の周囲封止リップ、29…第2コイル支持体、29a…第2コイル支持体29の上側カラー、29b…第2コイル支持体29の下側カラー、30…センサユニット、31…端子、32…端子、33…端子、41…電気配線、42…電気配線、43…電気配線、44…電気配線、45…電気配線、46…電気配線、61…コンタクトピン、62…コンタクトピン、63…コンタクトピン、64…コンタクトピン、65…コンタクトピン、66…コンタクトピン、80…作動ユニット、81…底部プレート、82…固定開口、83…固定開口、84…管状ガイドプレート、85…スロット、91…アーマチュア、92…アーマチュア、100…タペット、101…タペット、A−A…断面、B…切断面、C−C…断面、D…超過量。