特許第6841905号(P6841905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841905多層セラミック系構造体の突出部上のアンテナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841905
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】多層セラミック系構造体の突出部上のアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/38 20060101AFI20210301BHJP
   H01Q 21/08 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   H01Q1/38
   H01Q21/08
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-513927(P2019-513927)
(86)(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公表番号】特表2019-530327(P2019-530327A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2016071849
(87)【国際公開番号】WO2018050230
(87)【国際公開日】20180322
【審査請求日】2019年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501431073
【氏名又は名称】ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イン, チーノン
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−114719(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/299256(US,A1)
【文献】 特開平11−243307(JP,A)
【文献】 特開2005−203841(JP,A)
【文献】 特開平10−022723(JP,A)
【文献】 特開2005−117139(JP,A)
【文献】 特開2005−136936(JP,A)
【文献】 特表2009−513048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/38
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック系層を含む多層セラミック系構造体(110)と、
前記多層セラミック系構造体(110)の縁において前記セラミック系層のうちの少なくとも1つの他のセラミック系層を越えて延在する前記セラミック系層のうちの少なくとも1つによって形成された突出部(120)と、
前記突出部(120)上の少なくとも1つの導電性層(141、142;145、146)によって形成された少なくとも1つのアンテナ(140)と、
を備える、デバイス(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアンテナが、前記突出部(120)の片側上の第1の導電性層(141;145)と、前記突出部(120)を形成している前記セラミック系層のうちの少なくとも1つによって分離された第2の導電性層(142、146)とによって形成される、
請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記第1の導電性層(141)および前記第2の導電性層(142)が、前記突出部を形成している前記少なくとも1つのセラミック系層を貫通して延在する導電性ビア(143)によって接続される、
請求項2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記第1の導電性層(141、145)が、少なくとも1つのアンテナパッチを含み、前記第2の導電性層(142、146)が、前記少なくとも1つのアンテナパッチに給電するように構成された少なくとも1つの給電パッチを含む、
請求項2または3に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの給電パッチが、前記アンテナパッチのうちの少なくとも1つに導電的に給電するように構成される、
請求項4に記載のデバイス(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの給電パッチが、前記アンテナパッチのうちの少なくとも1つに容量的に給電するように構成される、
請求項4または5に記載のデバイス(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアンテナ(140)が、ダイポールアンテナを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアンテナ(140)が、ノッチアンテナを含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項9】
前記多層セラミック系構造体(110)の空洞(160)内に収容された無線フロントエンド回路(150)
を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項10】
前記アンテナ(140)が、1mm超かつ3cm未満の波長を有する無線信号の伝送のために構成される、
請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項11】
前記多層セラミック系構造体が、低温同時焼成セラミック系構造体である、
請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのデバイス(100)と、
前記少なくとも1つのデバイス(100)が配置される回路基板(710)と、
を備える組立体(700)。
【請求項13】
前記少なくとも1つのデバイス(100)が、前記少なくとも1つのアンテナ(140)を前記回路基板(710、720)の縁に位置させて配置される、
請求項12に記載の組立体(700)。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の少なくとも1つのデバイス(100)と、
前記少なくとも1つのデバイス(100)の前記少なくとも1つのアンテナ(140)を介して伝送される通信信号を処理するように構成された少なくとも1つのプロセッサ(840)と
を備える、通信デバイス(800)。
【請求項15】
前記通信デバイス(800)が、請求項12または13に記載の組立体を含む、
請求項14に記載の通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナデバイスに関し、また、そのようなアンテナデバイスのうちの1つまたは複数を備える組立体および通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信技術では、通信信号を伝達するために様々な周波数帯が利用される。帯域幅需要の高まりに応えるために、約10GHzから約100GHzの範囲内の周波数に対応するミリメートル波長範囲内の周波数帯も考慮されている。例えば、ミリメートル波長範囲内の周波数帯が、5G(第5世代)セルラー無線技術の候補と見なされている。しかし、そのような高い周波数の利用とともに起きる問題は、波長に適合するために、アンテナサイズが十分に小さい必要があることである。さらに、十分な性能を得るために、携帯電話、スマートフォン、または類似の通信デバイスなどの小型の通信デバイスにおいて(例えば、アンテナアレイの形態の)複数のアンテナが必要とされ得る。
【0003】
さらに、通信デバイス内のケーブルまたは他の有線接続による損失は、典型的には周波数が高くなるほど増大するので、アンテナが無線フロントエンド回路に非常に接近して位置し得るアンテナ設計を有することも望まれ得る。
【0004】
したがって、通信デバイスに効率的に統合され得るコンパクトなサイズのアンテナが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態によれば、デバイスが提供される。デバイスは、複数のセラミック系層を含む多層セラミック系構造体を備える。多層セラミック系構造体は、例えば、低温同時焼成セラミック(LTCC)構造体であり得る。セラミック系層は、1種もしくは複数種のセラミック材料で形成された層、または、1種もしくは複数種のセラミック材料と1種もしくは複数の他の材料との組合せ、例えばセラミック材料とガラス材料との組合せで形成された層に相当し得る。さらに、デバイスは、多層セラミック系構造体の縁においてセラミック系層のうちの少なくとも1つの他のセラミック系層を越えて延在するセラミック系層のうちの少なくとも1つによって形成された突出部を備える。さらに、デバイスは、突出部上の少なくとも1つの導電性層によって形成された少なくとも1つのアンテナを備える。このようにして、アンテナは、多層セラミック系構造体の縁に効率的に形成され得る。それにより、装置の外縁に接近した、例えば通信デバイスの外縁に接近した、アンテナの位置決めが可能になる。突出部に隣接した空きスペースが、アンテナの所望の伝送特性を得るための効率的な形で利用され得る。具体的には、3を超える、例えば3から20までの範囲内、典型的には5から8までの範囲内の高い誘電率を有し得る、アンテナに隣接したセラミック系材料が、例えば無線信号を減衰されるまたは歪ませることによりアンテナの伝送特性に悪影響を及ぼすことが、回避され得る。
【0006】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアンテナは、突出部の片側上の第1の導電性層と、突出部を形成しているセラミック系層のうちの少なくとも1つによって分離された第2の導電性層とによって形成される。したがって、アンテナは、多層設計において効率的に形成され得る。例えば、第1の導電性層は、少なくとも1つのアンテナパッチを含むことができ、第2の導電性層は、少なくとも1つのアンテナパッチに給電するように構成された少なくとも1つの給電パッチを含むことができる。少なくとも1つの給電パッチは、アンテナパッチのうちの少なくとも1つに導電的に給電するように構成され得る。あるいは、またはさらに、少なくとも1つの給電パッチは、アンテナパッチのうちの少なくとも1つに容量的に給電するように構成され得る。例えば、第2の導電性層は、第1の導電性層の第1のアンテナパッチに導電的に結合されかつ第1の導電性層の第2のアンテナパッチに容量的にさらに結合された給電パッチを含み得る。導電的な結合は、突出部を形成している少なくとも1つのセラミック系層を貫通して延在しかつ第1の導電性層と第2の導電性層とを接続している導電性ビアによって提供されてもよい。いくつかの実施形態では、突出部を形成している少なくとも1つのセラミック系層を貫通して延在しかつ第1の導電性層と第2の導電性層とを接続している導電性ビアがまた、アンテナパッチに導電的に給電すること以外のために、例えば複数の導電性層上のアンテナパッチを結合させることにより3次元のアンテナ構造を形成するために設けられ得ることが、留意される。
【0007】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアンテナは、ダイポールアンテナを含む。あるいは、またはさらに、少なくとも1つのアンテナは、ノッチアンテナを含み得る。しかし、他のタイプのアンテナ構成、例えばIFA(逆F形アンテナ)構成、垂直エッジパッチアンテナ(vertical edge patch antenna)構成、および/またはSIW(基盤集積導波路)アンテナ構成も同様に使用され得ることに留意すべきである。
【0008】
一実施形態によれば、デバイスは、多層セラミック系構造体の空洞内に収容された無線フロントエンド回路をさらに備える。無線フロントエンド回路は、例えば、1つまたは複数の電子チップを含み得る。空洞は、多層セラミック系構造体内に埋め込まれていてもよく、または、多層セラミック系構造体の表面で開口していてもよい。したがって、デバイスは、無線フロントエンド回路および少なくとも1つのアンテナを含むパッケージとして形成され得る。
【0009】
一実施形態によれば、アンテナは、1mm超かつ3cm未満の波長を有する無線信号の伝送のために構成される。
【0010】
さらなる実施形態によれば、組立体が提供される。組立体は、上記の実施形態のうちの任意のものによる少なくとも1つのデバイスを備える。さらに、組立体は、例えばプリント回路基板(PCB)である、少なくとも1つのデバイスが配置される回路基板を備える。少なくとも1つのデバイスは、少なくとも1つのアンテナを回路基板の縁に位置させて配置されることが好ましい。いくつかの実施形態では、上記の実施形態のうちの任意のものによる複数のデバイスが、好ましくは回路基板の1つまたは複数の側縁に沿って、回路基板上に配置され得る。他の電子構成要素、例えばアンテナによって伝送される信号を生成または処理するための構成要素もまた、デバイスが回路基板上に配置されるときに、回路基板上に配置され得る。
【0011】
さらなる実施形態によれば、例えば携帯電話、スマートフォン、または類似のユーザデバイスの形態の通信デバイスが提供される。通信デバイスは、上記の実施形態のうちの任意のものによる少なくとも1つのデバイスを備える。さらに、通信デバイスは、少なくとも1つのデバイスの少なくとも1つのアンテナを介して伝送される通信信号を処理するように構成された少なくとも1つのプロセッサを備える。インサート通信デバイス、デバイスのアンテナを、通信デバイスの外縁に接近して位置決めすることができ、それにより、有利な伝送特性を得ることが可能になる。
【0012】
一実施形態によれば、通信デバイスは、上記のような組立体を備え得る。つまり、通信デバイスは、少なくとも1つのデバイスが配置される回路基板を備えることができる。その場合、少なくとも1つのデバイスは、少なくとも1つのアンテナを回路基板の縁に位置させて配置されて、アンテナを通信デバイスの外縁に接近して位置決めすることを可能にすることが好ましい。通信デバイスの少なくとも1つのプロセッサもまた、回路基板上に配置され得る。
【0013】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の上記その他の実施形態をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるアンテナデバイスを概略的に示す斜視図である。
図2】アンテナデバイスの概略断面図である。
図3】アンテナデバイスにおいて使用され得るダイポールアンテナ構成を示すための斜視図である。
図4】本発明の一実施形態によるアンテナの伝送特性を示すための図表である。
図5】本発明の一実施形態によるアンテナの伝送特性を示すための図表である。
図6】アンテナデバイスにおいて使用され得るノッチアンテナ構成を示すための斜視図である。
図7A】本発明の一実施形態による複数のアンテナデバイスが回路基板上に配置されている組立体を概略的に示す図である。
図7B】本発明の一実施形態による複数のアンテナデバイスが回路基板上に配置されているさらなる組立体を概略的に示す図である。
図8】本発明の一実施形態による通信デバイスを概略的に示すためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の例示的な実施形態が、より詳細に説明される。以下の説明は、本発明の原理を例示するためにのみ与えられるものであって、限定的な意味にとられるべきではないことが、理解されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定められるものであり、以下で説明される例示的な実施形態によって限定されることを意図されたものではない。
【0016】
例示される実施形態は、無線信号、具体的にはcm/mm波長範囲内の短波長無線信号の伝送のためのアンテナデバイスに関する。例示されるアンテナデバイスは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、などのような通信デバイスにおいて利用され得る。
【0017】
例示される概念では、アンテナデバイスの1つまたは複数のアンテナが、多層セラミック系構造体の突出部上に設けられる。以下でさらに詳述されるような例では、多層セラミック系構造体はLTCC構造体であることが想定される。しかし、例えば、高温同時焼成セラミック(HTCC)もしくはLTCCとHTCCとの組合せを基礎とする、または、セラミック系層とガラス材料および/もしくはポリマー材料との組合せを基礎とする、他の種類の多層セラミック系構造体も同様に利用され得ることが、理解されるべきである。セラミック系層は、1種もしくは複数種のセラミック材料で形成されてもよく、または、1種もしくは複数種のセラミック材料と1種もくしは複数種の他の材料との組合せ、例えばセラミック材料とガラス材料との組合せで形成されてもよい。典型的には、セラミック系層は、比較的高い誘電率を有し、例えば3を超える誘電率、例えば5から8の範囲内の誘電率を有する。
【0018】
多層セラミック系構造体を形成するために使用される具体的な技術および材料もまた、特定の波長の無線信号の伝送を支援するのに望ましい誘電特性を得るために、それに応じて選択することができ、例えば、
の関係に基づいて選択することができ、式中、Lは、アンテナの有効寸法を表し、λは、伝送すべき無線信号の波長を表し、εは、多層セラミック系構造体の基板材料の比誘電率を表す。
【0019】
図1は、例示された概念に基づくアンテナデバイス100を例示する斜視図を示す。例示された例では、アンテナデバイス100は、例えばLTCC構造体である多層セラミック系構造体110を含む。多層セラミック系構造体110は、垂直方向に沿って積み重ねられた複数のセラミック系層を含む。多層セラミック系構造体110は、多層セラミック系構造体110のセラミック系層のうちの1つまたは複数によって形成された突出部120を備える。これらの層は、多層セラミック系構造体110の1つまたは複数の他のセラミック系層を越えて延在する。
【0020】
例示された例では、多層セラミック系構造体110は、本体部分130と、本体部分130の縁を越えて例えば2から5mm延在する突出部120とを含む。突出部120は、本体部分130の上に積み重ねられた頂部セラミック系層または最上部セラミック系層の群によって形成される。しかし、突出部120を形成するセラミック系層は、本体部分130の底部に配置されてもよく、または、本体部分130の底部と本体部分130の上部との間に配置された1つもしくは複数の中間セラミック系層に相当してもよいことが、留意される。本体部分130は、複数のセラミック系層を含むことができ、また、導電性層、例えば金属層が、例えば本体部分130内に収容された電子回路への接続のために、それらの複数のセラミック系層間に設けられ得る。例えば金属ペーストなどの導電性材料で充填された穴である導電性ビアが、本体部分130の異なる導電性層間に形成され得る。
【0021】
多層セラミック系構造体110のセラミック系層は、例えば、セラミック系層の底部側および/もしくは上部側上の導電性層の構造、ならびに/またはセラミック系層を貫通してセラミック系層の上部側上の導電性構造をセラミック系層の底部側上の導電性構造に接続する1つもしくは複数の導電性ビアの構造を画定することにより、個別に調製され得る。次いで、セラミック系層は、多層セラミック系構造体110および異なるセラミック系層上の導電性構造間の接続を形成するために、互いに位置合わせされて接続され得る。これは、例えば1つまたは複数の同時焼成ステップによる熱処理を伴い得る。突出部120は、セラミック系層のうちの1つまたは複数を、それらが他のセラミック系層を越えて延在するように、より大きい水平方向寸法で調製することによって、形成され得る。さらに、突出部120は、セラミック系層を接続した後で、例えば、フライス加工、研削、もしくはエッチングなどの、機械的および/または化学的な処理により、セラミック系層のうちのいくつかの層の一部分を除去することによって、形成されてもよい。
【0022】
さらに例示されるように、多層セラミック系構造体110の突出部120上に、アンテナ140が設けられる。アンテナ140は、突出部を形成しているセラミック系層上の導電性構造によって形成される。図1では、最上部セラミック系層の上部側上のアンテナ140の導電性構造を見ることができる。しかし、以下でさらに説明されるように、アンテナ140はまた、例えば突出部120の底部側上に、さらなる導電性構造を含んでもよい。
【0023】
図2は、アンテナデバイス100の概略断面図を示す。理解され得るように、例示された例では、アンテナ140は、突出部120の底部側上の第1の導電性層141、および、突出部120の上部側上の第2の導電性層142で形成される。突出部120の底部側上の導電性層141は、1つまたは複数のアンテナパッチを形成する。突出部120の上部側上の導電性層142は、アンテナパッチに給電するための給電パッチを形成する。さらに例示されるように、突出部120の上部側上の導電性層142はまた、本体部分130に向かう、具体的には本体部分130の空洞160内に収容された無線フロントエンド回路チップ150への、アンテナ140の電気接続を提供する。
【0024】
アンテナパッチの給電は、容量性のものであってもよい。さらに、または代替案として、導電性の給電が使用されてもよい。このために、導電性ビア143が、第1の導電性層141と第2の導電性層142との間に設けられ得る。例示されたように、導電性ビア143は、突出部120を形成しているセラミック系層を貫通して延在する。
【0025】
図3は、アンテナ140のために使用され得るアンテナ構成の一例を例示するための斜視図を示す。図3は、アンテナ140を形成している導電性構造に重点を置いており、また、多層セラミック系構造体110のセラミック系層の図示は、より良好な概観のために省かれている。多層セラミック系構造体110の本体部分130の縁は、破線により概略的に示されている。
【0026】
図3の例では、アンテナ140は、第1の導電性層141に形成された第1のアンテナパッチ141Aおよび第2のアンテナパッチ141Bを含むダイポールアンテナとして構成されている。ダイポールアンテナの給電は、導電性層141に形成された給電パッチからアンテナパッチ141Aまで延在する導電性ビア143によって導電的に達成される。第2のアンテナパッチ141Bは、第1のアンテナパッチ141Aおよび給電パッチに容量的に結合される。したがって、ダイポールアンテナの給電はまた、部分的に、容量的に達成される。
【0027】
図3のアンテナ構成では、突出部120を形成しているセラミック系層の厚さは、0.2から0.5mmであり得る。この厚さはまた、第1の導電性層141と第2の導電性層142との間の距離を画定する。アンテナ140の有効寸法を画定するアンテナパッチ141A、141Bの長さLは、3mmであり得る。突出部120を形成しているセラミック系層の誘電率は、5から8であり得る。
【0028】
図4および5は、図3に示されたようなアンテナ構成に対して得られた例示的なシミュレーション結果を示す。具体的には、図4は、周波数へのアンテナ利得の依存性を(dBで)示し、図5は、遠方界実現利得(farfield realized gain)の角度依存性を占める。理解され得るように、アンテナ構成は、約26GHzを中心にして約1から2GHzの使用に適した広い帯域幅を得ることを可能にする。さらに、アンテナ構成は、全方向性の伝送特性を得ることを可能にする。
【0029】
図6は、アンテナ140のために使用され得るアンテナ構成のさらなる例を例示するための斜視図を示す。図6は、アンテナ140を形成している導電性構造に重点を置いており、また、多層セラミック系構造体110のセラミック系層の図示は、より良好な概観のために省かれている。多層セラミック系構造体110の本体部分130の縁は、破線によって概略的に示されている。
【0030】
図6の例では、アンテナ140は、第1の導電性層141に形成された複数のノッチ状のアンテナパッチ145を含むノッチアンテナとして構成されている。ノッチアンテナの給電は、導電性層141に形成された給電パッチ146により容量的に達成される。理解され得るように、給電パッチ146は、突出部120の上部側上でU字状の形状で延在する。
【0031】
図6のアンテナ構成では、突出部120を形成しているセラミック系層の厚さは、0.2から0.5mmであり得る。この厚さはまた、第1の導電性層141と第2の導電性層142との間の距離を画定する。アンテナ140の有効寸法を画定するノッチ状のアンテナパッチ145の長さLは、3mmであり得る。突出部120を形成しているセラミック系層の誘電率は、5から8であり得る。シミュレーションによれば、図6のアンテナ構成は、図3のアンテナ構成の場合と同様の帯域幅および全方向性の伝送特性を得ることを可能にすることが示された。
【0032】
図1、2、3、および6の例では、導電性層142に設けられている給電パッチと、例えば給電パッチの下方で導電性層141に設けられているアンテナパッチとの例示された配置は、1つの選択肢にすぎず、他の配置も同様に使用され得ることが、留意される。例えば、給電パッチは、導電性層141に設けられてもよく、アンテナパッチは、導電性層142に設けられてもよい。さらに、1つまたは複数の追加の導電性層、例えば電気的な遮蔽を提供する最上部導電性層が、設けられてもよい。
【0033】
図7Aは、例えばPCBである回路基板710と、回路基板710上に配置された複数のアンテナデバイス100とを含む組立体を、概略的に示す。アンテナデバイス100は、図1から6に関連して説明されたような構成をそれぞれが有し得る。図に示すように、アンテナデバイス100は、回路基板710の外縁に沿って配置される。具体的には、アンテナデバイス100の突出部120は、回路基板710の外縁と位置合わせされる。突出部120は、回路基板710の外縁とぴったり重なっていてもよく、または、回路基板710の外縁を越えて延在してもよい。このようにして、アンテナデバイス100のアンテナ140は、組立体700が使用される装置の外縁、例えばハウジングに近接して配置され得る。それにより、具体的にはミリメートル波長範囲内で有利な伝送特性を獲得して、約10GHzから約100GHzまでの範囲の周波数に対応することが可能になる。したがって、回路基板に近いものの上に配置された回路基板710構成要素による伝送信号の歪みまたは減衰が、回避され得る。アンテナデバイス100のアンテナ140は、例えば、アンテナアレイとしてまたはアンテナアレイのサブアレイとして協働するように構成され得る。他の構成要素も回路基板710上に配置され得ることが、留意される。そのような構成要素は、例えば、アンテナデバイス100のアンテナ140によって伝送されるあらゆる処理信号を生成するための1つまたは複数のプロセッサを含み得る。
【0034】
図7Aの例では、アンテナデバイス100は、突出部120上に1つのアンテナを備えているものとしてそれぞれ示されている。しかし、同一のアンテナデバイス100の突出部120上に複数のアンテナ140を設けることも可能である。対応する例が、図7Bに例示されている。図7Bの例では、複数のアンテナデバイス100が、例えばPCBである回路基板720上に配置されている。各アンテナデバイス100は、回路基板720の外縁と位置合わせされる突出部120を有する。この場合もやはり、突出部120は、回路基板720の外縁とぴったり重なっていてもよく、または、回路基板720の外縁を越えて延在してもよい。図に示すように、各突出部120は、複数のアンテナ140を提供する。同一のアンテナデバイス100の複数のアンテナ140は、例えば、アンテナアレイとしてまたはアンテナアレイのサブアレイとして協働するように構成され得る。例えば、図7Bに示された全てのアンテナ140が、アンテナアレイとして協働してもよく、また、同一のアンテナデバイス100のアンテナ140が、このアンテナアレイのサブアレイとして協働してもよい。また、図7Bの例では、他の構成要素も回路基板720上に配置され得る。そのような構成要素は、例えば、アンテナデバイス100のアンテナ140によって伝送されるあらゆる処理信号を生成するための1つまたは複数のプロセッサを含み得る。
【0035】
図8は、上記で説明したような1つまたは複数のアンテナデバイス、例えばアンテナデバイス100を備える通信デバイス800を概略的に示すためのブロック図である。通信デバイス800は、小型のユーザデバイス、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレットコンピュータ、などに相当し得る。しかし、他の種類の通信デバイス、例えば車両ベースの通信デバイス、無線モデム、または自律センサも同様に使用され得ることが、理解されるべきである。
【0036】
図に示すように、通信デバイス800は、1つまたは複数のアンテナデバイス810を含む。これらのアンテナデバイス810のうちの少なくともいくつかは、上記で説明したようなアンテナデバイス、例えば突出部120上に形成された上述のアンテナ140などの、多層セラミック系構造体の突出部上に形成されたアンテナを含む、アンテナデバイスに相当し得る。さらに、通信デバイス800はまた、他の種類のアンテナまたはアンテナデバイスを含み得る。上記で説明したような概念を使用することにより、複数のアンテナは、無線フロントエンド回路に一緒に統合され得る。具体的には、無線フロントエンド回路の少なくとも一部分が、多層セラミック系構造体にその部分を埋め込むことにより、突出部上に形成されたアンテナ140と統合され得る。さらに、通信デバイス800は、1つまたは複数の通信用プロセッサ840を含む。通信用プロセッサ840は、アンテナデバイス810のアンテナを介して伝送するための通信信号を生成するか、あるいは処理し得る。このために、通信用プロセッサ840は、例えば5Gセルラー無線技術に従って、様々な種類の信号処理および1つまたは複数の通信プロトコルによるデータ処理を実行し得る。通信デバイス800は、図7Aまたは7Bに例示されたような組立体を含み得る。その場合、アンテナデバイス810のうちの少なくともいくつかは、回路基板710または720上に位置し得る。さらに、通信用プロセッサ840もまた、回路基板710または720上に位置し得る。
【0037】
上記で説明した概念は様々な修正が可能であることが、理解されるべきである。例えば、概念は、5G技術に限定されることなしに、様々な種類の無線技術および通信デバイスに関連して適用され得る。例示されたアンテナは、通信デバイスから無線信号を伝送するため、および/または通信デバイスにおいて無線信号を受信するために使用され得る。さらに、例示されたアンテナ構造は、ダイポールアンテナまたはノッチアンテナに限定されることなしに、例えばIFA構成、垂直エッジパッチアンテナ構成、および/またはSIWアンテナ構成といった様々なタイプのアンテナ構成に基づいてよく、かつ、アンテナ幾何形状に関して様々な修正が可能であることが、理解されるべきである。さらに、例示されたアンテナデバイスは、単一の突出部上に位置する単一のアンテナを備えるように限定されるものではない。むしろ、多層セラミック系構造体の1つの突出部上に複数のアンテナを設けること、例えば、突出部上にアンテナアレイもしくはアンテナアレイのサブアレイを設けること、または、多層セラミック系構造体の例えば異なる縁にそれぞれが1つまたは複数のアンテナを担持する複数の突出部を設けることもまた、考えられる。後者の場合では、多層セラミック系構造体の異なる突出部上の複数のアンテナは、アンテナアレイとしてまたはアンテナアレイのサブアレイとして協働するように構成され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8