(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
火災感知器を有する火災報知システムからの火災場所を特定する情報を含む火災情報信号に基づいて、火災場所が示された施設の地図を表示画面に表示する制御装置であって、
安全確認指示信号を前記施設内で使用されている作業ロボットへ送信し、
前記作業ロボットから前記安全確認指示信号への応答として受信した安全確認応答信号に基づき、前記施設内の安全エリアを前記表示画面に表示させ、
前記安全エリアに基づき安全な避難経路を設定して避難誘導を報知させる、
ことを特徴とする制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[防災連携システムの概要]
図1は防災連携システムの概要を示した説明図である。
図1に示すように、防災連携システムは、火災報知システム10と機器管理システム12で構成される。
【0026】
(火災報知システム)
図1に示すように、火災報知システム10は受信機14を備え、受信機14は病院や高齢者施設等の対象施設における防災センターや管理人室等に設置されている。受信機14は例えば端末アドレスが識別可能なR型であり、施設内の監視区域に引き出された監視用の伝送路16aに火災感知器18と発信機20が接続され、また、受信機14から引き出された制御用の伝送路16bに、地区音響装置22、防火戸24、防火シャッター26等の端末機器が接続されている。
【0027】
伝送路16aに接続された火災感知器18及び発信機20には中継機能が設けられると共に固有のアドレスが設定されている。火災感知器18は火災に伴う煙濃度又は温度を検出しており、煙濃度又は温度が火災レベルを示す所定の閾値に達した場合に火災と判断して発報し、火災信号を受信機14に送信する。発信機20は火災通報操作による押釦スイッチのオンにより、火災通報信号を受信機14に送信させる。
【0028】
受信機14は火災感知器18からの火災信号または発信機20からの火災通報信号を受信すると、火災代表表示を行うと共に主音響警報を出力させ、これに伴う防災担当者等が現場に出向いて火災を確認した場合の火災確定操作を受けて、受信機14から引き出された制御用の伝送路16bに接続している地区音響装置22を作動して地区音響警報を出力させ、また、火災場所に対応した防火戸24や防火シャッター26を制御して防火区画を形成させる連動制御が行われる。
【0029】
なお、受信機14は、非常放送設備が設けられている場合には、非常放送設備の連動制御により非常放送を行わせることになる。
【0030】
(機器管理システム)
図1に示すように、機器管理システム12は制御装置として機能する卓上インタフェース装置15を備え、施設内で使用している各種の作業ロボットの日常的な運用のための管理制御を集中的に行っている。
【0031】
図2は卓上インタフェース装置の外観を示した説明図であり、テーブル台44の上に、テーブル画面46が水平に配置されており、テーブル画面46はタッチパネル付きの液晶ディスプレイで構成されている。
【0032】
卓上インタフェース装置15のテーブル画面46には、通常は施設内で使用されている作業ロボットの管理や制御に必要な画像が表示されており、火災報知システム10の受信機14から火災情報信号を受信した火災時には、テーブル画面46に火災場所50を示した施設地
図48が表示され、作業ロボットを活用した避難誘導のための制御処理に利用される。
【0033】
再び
図1を参照するに、卓上インタフェース装置15からは施設内にLANケーブル等による伝送路28が引き出されており、伝送路28には無線LANのアクセスポイント30が接続され、施設内に無線LANによる無線通信エリアが形成されている。
【0034】
施設内で働いているスタッフ等の関係者は携帯端末34を携帯しており、また、作業ロボットとして例えば掃除ロボット36、搬送ロボット38、ストレッチャーロボット40、車椅子ロボット42が配置され、アクセスポイント30を経由して卓上インタフェース装置15と通信接続されて信号を送受信する。
【0035】
掃除ロボット36には施設内における所定のエリアが作業エリアとして割り当てられており、予め設定された清掃スケジュールに基づき、作業エリアを移動しながら清掃作業を自動的に行っている。
【0036】
搬送ロボット38は、スタッフによる施設内の医療現場や介護現場等の搬送先の指定に基づき、保管場所等から必要とする機材を自動走行により運搬する作業を行っている。
【0037】
ストレッチャーロボット40や車椅子ロボット42は歩行が困難な入院患者や高齢者を乗せ、スタッフが設定した施設内の目的地に、スタッフの付添いを伴いながら移動する支
援作業を行っている。
【0038】
(火災報知システムと機器管理システムの連携)
火災報知システム10の受信機14は、火災信号又は火災通報信号を受信して火災警報を出力した場合、火災場所を含む火災情報信号を機器管理システム12の卓上インタフェース装置15に送信する。
【0039】
機器管理システム12の卓上インタフェース装置15は、受信機14から火災情報を受信した場合に、
図2に示したように、火災場所50が示された施設の地
図48をテーブル画面46に表示させると共に、施設内で作業ロボットとして使用している例えば掃除ロボット36に安全確認指示信号を送信して施設内の安全エリアを確認させ、掃除ロボット36から受信された安全確認応答信号により安全確認結果をテーブル画面46に表示させ、続いて、確認された安全エリアに基づき安全な避難経路を設定して避難誘導を報知させる連携制御を行う。
【0040】
[防災連携システムの機能構成]
図3は受信機と卓上インタフェース装置の機能構成を示したブロック図である。
【0041】
(受信機の機能構成)
図3に示すように、受信機14には、受信制御部52,伝送部54、警報部56、表示部58、操作部60、移報部62及び伝送部64が設けられている。
【0042】
受信制御部52は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の受信制御機能を実現する。受信機14からは施設の警戒エリアに向けて伝送路16aが引き出され、火災感知器18及び発信機20が接続されている。
【0043】
火災感知器18及び発信機20は、受信機14との間で情報を双方向伝送する伝送機能を備えており、受信機14を含めて固有のアドレスが予め割り当てられている。1つの伝送路16aに接続できる火災感知器18及び発信機20の数は、例えば最大アドレス数が256アドレスの場合、受信機アドレスを除くことから、255台以下を接続することができる。なお、P型火災報知システムに使用されている発信機を使用する場合には、受信機14との間で情報を双方向伝送する機能を備え、アドレスが設定された中継器を介して発信機が接続される。
【0044】
また、受信機14から引き出された制御用の伝送路16bには、受信機14との間で情報を双方向伝送する伝送機能を備え且つアドレスが設定された防火戸24や防火シャッター26等の端末機器が接続されている。
【0045】
受信機14から火災感知器18及び発信機20に対する下り信号は電圧モードで伝送されている。この電圧モードの信号は、伝送路16aの電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0046】
これに対し火災感知器18及び発信機20からの上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、伝送路16aに伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機に伝送される。受信機14から防火戸24や防火シャッター26等の端末機器に対する下り信号と上り信号の伝送も同様である。
【0047】
受信制御部52による受信制御は火災感知器18を例にとると、次のようになる。受信機14は、通常の監視時にあっては、端末アドレスを順次指定した正常監視用のポーリングコマンドを送信しており、火災感知器18は自己の設定アドレスに一致するポーリングコマンドを受信すると正常監視応答を行う。このため受信機14にあっては、ポーリングコマンドに対し応答がなかった火災感知器18を障害として故障を検出することができる。
【0048】
また受信機14は、すべての端末アドレスに対するポーリングコマンドの送信周期ごとに一括AD変換コマンドを繰り返し送信している。火災感知器18は受信機14からの一括AD変換コマンドを受信すると、検出している煙濃度や温度などのアナログ検出データをサンプリングし、予め定めた火災レベルと比較している。
【0049】
火災感知器18でサンプリングしたアナログ検出データが火災レベルを超えた場合には、受信機14に対しポーリングコマンドに対する応答タイミングで割込信号を送信する。この割込信号は、応答ビット列をオール1とするような通常は使用されない信号を送る。
【0050】
受信機14は、火災感知器18からの割込信号を受信すると、グループ検索コマンドを発行し、火災を検出した火災感知器18を含むグループからの割込応答を受信してグループを判別する。
【0051】
続いて、判別したグループに含まれる個々の火災感知器18に対し、順次アドレスを指定したポーリングを行い、アナログデータの火災応答を受けることで、火災を検出した火災感知器18の感知器アドレスを認識し、火災警報動作を行うことになる。
【0052】
受信機14による防火戸24や防火シャッター26等の端末機器の制御は、通常の監視時にあっては、端末機器の端末アドレスを順次指定した正常監視用のポーリングコマンドを送信しており、特定の端末機器を作動させる場合には、そのアドレスを指定したポーリングコマンドのタイミングで所定の制御コマンドを送信し、端末機器は自己の設定アドレスに一致する制御コマンドを受信すると、制御コマンドで指定された制御動作を行う。
【0053】
警報部56はスピーカを備え、各種の警報音や音声メッセージを出力する。表示部58には火災代表灯、障害代表灯、タッチパネルを備えた液晶ディスプレイ等が設けられている。操作部60には、火災断定スイッチ、音響停止スイッチ、地区音響一時停止スイッチ等が設けられている。移報部62は非常放送設備等の外部装置に火災移報信号を出力して連動させる。
【0054】
伝送部64は、受信制御部52で火災信号又は火災通報信号を受信して火災警報が出力された場合、火災場所を含む火災情報信号を卓上インタフェース装置15に送信する。
【0055】
(卓上インタフェース装置の機能構成)
図3に示すように、卓上インタフェース装置15には、装置制御部66,通信部68、伝送部70、液晶ディスプレイ72、タッチパネル74、表示部76、操作部78及びデータベース80が設けられている。液晶ディスプレイ72とタッチパネル74はテーブル画面46を構成している。
【0056】
装置制御部66は、CPU、メモリ、各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路で構成しており、プログラムの実行により所定の制御機能を実現する。通信部68から施設内に向けてLANケーブルを用いた伝送路28が引き出され、伝送路28に接続されたアクセスポイント30との間で例えばイーサネット(登録商標)に従って信号の送受信が行われる。
【0057】
データベース80には、火災時に画面表示される施設の地図情報や日常管理で画面表示される各種の情報が格納されている。
【0058】
装置制御部66は、通常時は、
図1に示す施設内で使用している掃除ロボット36、搬送ロボット38、ストレッチャーロボット40及び車椅子ロボット42等の作業ロボットの運用に関する情報を、メニュー選択等により表示し、作業状況の確認や必要な制御を指示する操作等を可能としている。
【0059】
また、装置制御部66は、通常時に、施設に設けられた入退出管理システムからの情報信号に基づき施設の在籍者の情報を表示することも可能であり、更に、スタッフの携帯端末34に対する業務の遂行に必要な各種の連絡事項やお知らせの通知等を行うことも可能である。
【0060】
また、装置制御部66は、伝送部70を介して受信機14から火災情報信号を受信した場合に、火災場所が示された施設の地図を液晶ディスプレイ72の駆動によりテーブル画面46に表示させると共に、火災場所に対応した施設内で動いている例えば掃除ロボット36に安全確認指示信号を送信して施設内の安全エリアを確認させ、掃除ロボット36から受信した安全確認応答信号による安全確認結果に基づきテーブル画面46に表示させ、確認された安全エリアに基づき安全な避難経路を設定して避難誘導を報知させる制御を行う。
【0061】
なお、装置制御部66は、複数階層の施設の場合には、火災階の地図に加え、火災による危険性の高い直上階の地図を同時に表示させたり、選択操作により任意の階の地図を表示可能としている。
【0062】
また、装置制御部66は、掃除ロボット36により施設内の安全エリアを確認された場合、階段室等の所定の避難場所又は階段室に近い所定の一時避難場所に向かって、掃除ロボット36により確認された安全エリアを通り、且つ火災場所から遠ざかる方向に前記避難経路を設定する制御を行う。
【0063】
また、装置制御部66は、安全が確認された避難経路による避難誘導として、
図1に示したアクセスポイント30を経由して施設内に設置されている例えば誘導表示装置32に指示し、避難方向を示す矢印を表示させる等して避難経路報知させる制御を行う。
【0064】
なお、施設内に誘導表示装置32に共に音声誘導装置が併設されている場合には、装置制御部66からの指示により、音声誘導装置の前を通過する避難者に対し避難先までの距離を音声メッセージにより報知させる制御を行わせるようにしても良い。
【0065】
また、装置制御部66は、掃除ロボット36により施設内の安全エリアが確認されて避難経路が設定された後も、掃除ロボット36に指示して施設内の安全エリアを確認させており、安全エリアが変化した場合、当該変化した安全エリアに基づき新たな避難経路を再設定して避難誘導を報知させる制御を行う。
【0066】
更に、装置制御部66は、訓練モードによる制御処理が可能であり、施設内の任意の区画を疑似的な火災場所に設定した状態で、関係者を訓練するための制御を行う。この訓練モードによる装置制御部66の制御は、例えば、夜間や休日等の時間帯を利用して行うことが望ましく、また、火災報知システムとの連携は解除し、卓上インタフェース装置15、操作スタッフの携帯端末34及び掃除ロボット36を対象として、疑似的に発生した火災に対する対応処理を行う。
【0067】
訓練モードでは、疑似的な火災場所に近い作業エリアが割り当てられている掃除ロボット36は、作業エリアの安全確認の指示を受け、最初は安全エリアを示す確認結果を応答するが、時間の経過に伴って危険エリアを示す確認結果の応答に変化する訓練手順が組み込まれており、時間の経過に伴って施設内の安全エリアが縮小して行く訓練環境を構築可能としている。
【0068】
(掃除ロボットの機能構成)
図4は掃除ロボットの機能構成を示したブロック図である。
図4に示すように、掃除ロボット36には、ロボット制御部82,アンテナ85が接続された通信部84、走行距離センサ86、煙濃度センサ88、温度センサ90、ガスセンサ92、操作表示部94、音声報知部96、撮像部98、走行駆動部100及び清掃駆動部102が設けられている。
【0069】
通信部84は施設内に設置されている無線LANのアクセスポイント30との間で無線回線による通信接続を確立して信号の送受信を行い、アクセスポイント30を介して卓上インタフェース装置15との間で信号を送受信させる。
【0070】
走行距離センサ86は掃除ロボット36に設けられた走行輪の回転数に基づいて走行距離を検出して出力させる。
【0071】
煙濃度センサ88は掃除ロボット36が位置している場所の煙濃度を検出して出力させる。温度センサ90は掃除ロボット36が位置している場所の温度を検出して出力させる。ガスセンサ92は掃除ロボット36が位置している場所のCOガス又はCO2ガスのガス濃度を検出して出力させる。
【0072】
ここで、掃除ロボット36の高さは例えば60センチメートル程度であり、煙濃度センサ88、温度センサ90、ガスセンサ92は、人の身長程度の空間の煙濃度、温度、ガス濃度を検出することとなり、検出した煙濃度、温度、ガス濃度が所定の危険レベルを超えていなければ、その場所は安全な場所と判断することが可能となる。
【0073】
なお、煙濃度センサ88、温度センサ90、ガスセンサ92は、火災による煙濃度、温度、ガス濃度を検出する火災センサとして機能しており、煙濃度、温度、ガス濃度の全てを検出することが望ましいが、煙濃度、温度、ガス濃度少なくとも何れかを検出できれば良い。
【0074】
操作表示部94は掃除ロボット36の清掃作業に必要な各種の設定操作や起動停止等の操作が行われる。例えば、操作表示部94の操作或いはリモコン装置の操作により掃除ロボット36を割当エリア内で走行させることで、走行ルートの設定を行うことができ、その後は、清掃指示操作を行った場合、或いはタイマ管理による設定時刻に達した場合、設定した走行ルートに従った清掃作業が自動的に行われる。また、掃除ロボット36の清掃走行パターンとして、操作表示部94の操作表示を利用して渦巻き旋回、往復ジクザグ走行等の複数種類のパターンを予め登録しておき、その中から適宜の清掃走行パターンを選択するようにしても良い。
【0075】
音声報知部96はスピーカを備え、清掃作業中に、注意を促すためにチャイム音等の所定の注意音を出力させる。また、音声報知部96は火災時に、音声誘導装置として利用することも可能である。
【0076】
撮像部98はITVカメラ等であり、例えば卓上インタフェース装置15からの指示により掃除ロボット36の前方を動画画像として撮像し、撮像信号を卓上インタフェース装置15に送って表示させる。
【0077】
走行駆動部100は掃除ロボット36の走行輪を駆動する。本実施形態の掃除ロボット36は独立して走行駆動可能な駆動輪を左右に備えており、両輪を同じ速度で回転駆動することで直進走行が行われ、何れか一方の駆動輪を回転させることで旋回走行が行われる。また、走行駆動部100に接触センサ等を設け、壁に接触した場合に旋回又は後退させる走行駆動を可能としている。
【0078】
清掃駆動部102は、ファンによる吸入装置とゴミを掻き集める旋回ブラシ等を備え、床面の清掃作業を行うようにしている。
【0079】
図5は火災感知器と清掃ロボットによる煙濃度の検出を示した説明図であり、
図5(A)は火災による煙を火災感知器と掃除ロボットにより検出している状態を示し、
図5(B)は煙が天井側に滞留している場合の火災感知器と掃除ロボットにより検出した煙濃度の時間変化を示し、
図5(C)は煙が空間全域に拡散した場合の火災感知器と掃除ロボットにより検出した煙濃度の時間変化を示す。
【0080】
図5(A)に示すように、火災感知器18は施設内の天井面に設置されており、火災の熱気流で上昇した煙は天井面に沿って広がり、天井面の下側に煙層106が形成され、火災感知器18はこの煙層106による煙濃度か火災レベルに達した場合に発報して火災信号を出力する。
【0081】
天井面側の煙層106は時間の経過に伴う煙量の増加により床面側に下がり、やがてその場所全体が煙に包まれることになる。
【0082】
このため火災感知器18からの火災信号だけでは、火災感知器18の設置場所が安全な場所であるか否かは、火災発生からの時間経過により様々であり、その場所に行ってみないと確かなことは分からない。
【0083】
一方、掃除ロボット36は床面を走行しており、掃除ロボット36の上部に煙濃度センサ88を搭載した場合、避難者108が移動する床面に近い空間の煙濃度を検出している。
【0084】
このため
図5(A)のように、天井面側に煙層106が形成されている段階では、
図5(B)に示すように、火災感知器18の煙濃度D1は時間の経過の伴って増加して火災レベルDthを超えた場合に火災感知器18が作動するが、掃除ロボット36の煙濃度センサ88による煙濃度d2は時間が経過してもほとんど増加せず、火災感知器18が作動していても、この場所は安全であることになる。
【0085】
一方、空間全体に煙が広がっている場合には、
図5(C)に示すように、火災感知器18の煙濃度D1の増加に追従して掃除ロボット36の煙濃度センサ88による煙濃度D2も増加しており、掃除ロボット36により検出された煙濃度D2が高い場合には、この場所は安全な場所とは云えない状況にある。
【0086】
本実施形態にあっては、卓上インタフェース装置15が受信機14から火災情報信号を受信した場合に、掃除ロボット36に安全確認指示信号を送信して作業エリアの安全を確認させた場合、安全確認結果を示す掃除ロボット36からの安全確認応答信号の受信により、
図5(A)(B)のように火災感知器18は作動しているが、安全なエリアであることを確認することが可能となり、施設内における安全エリアに基づき最適な避難経路を設定して誘導させることが可能となる。
【0087】
なお、
図1に示した搬送ロボット38、ストレッチャーロボット40及び車椅子ロボット42も、掃除ロボット36と同様に、走行駆動部を備えたことで施設内を自由に走行できる作業ロボットであり、特に、施設内で物資の搬送に使用されている搬送ロボット38は、サイズ的にも掃除ロボット36に近いことから、搬送ロボット38に、通信部84、煙濃度センサ88、温度センサ90、ガスセンサ92、音声報知部96、撮像部98を追加的に設けることで、火災が発生した場合に施設内の安全エリアを確認する作業ロボットとしての使用が可能となる。
【0088】
[卓上インタフェース装置による防災連携援処理]
図6は卓上インタフェース装置に表示される監視対象施設の平面図を清掃ロボットの作業エリアと共に示した説明図である。
【0089】
図6に示すように、通常状態において、卓上インタフェース装置15のテーブル画面46には例えば施設を平面で示した施設地
図48が表示されている。
図6の施設は、病院の入院病棟を例にとっており、スタッフステーションを中心として上下両側に示す病室が配置され、病室並びの中央付近にはラウンジが配置されている。また、スタッフステーションの左右両側にはエレベータ(EL)室と階段室が配置されている。
【0090】
このようなテーブル画面46に表示された施設地
図48は共用部となる廊下やラウンジを対象に、左右上下に4つの作業エリアA1〜A4に分割されており、作業エリアA1〜A4の各々に掃除ロボット36−1〜36−4が割り当てられ、作業エリアA1〜A4を走行しながら清掃作業を自動的に行っている。
【0091】
図7は火災発生時に卓上インタフェース装置に表示される監視対象施設の平面図を避難経路と共に示した説明図である。
【0092】
図7に示すように、卓上インタフェース装置15は受信機14から火災情報信号を受信すると、テーブル画面46に火災対象地区を示す施設地
図48を表示させ、この例では施設地
図48の左下隅に示す病室が火災場所110として表示されており、この病室に設置されている火災感知器18が作動して受信機14から火災警報が出力されている。なお、必要があれば火災階の直上階または選択操作した階の地図が表示される。
【0093】
また受信機14は管理担当者等による火災の現場確認に基づく火災確定操作に対応し、
図7に示すように、火災場所110に近い廊下に設けられた防火戸24a,24bのラッチを解除することで閉鎖させ、また、火災場所に近い階段室の入口およびエレベータ室入口の防火シャッター26a,26bを閉鎖させており、この状況が施設地
図48上に太い破線で表示されている。
【0094】
卓上インタフェース装置15は、火災情報に基づく火災場所110を示した施設地
図48の表示に伴い、施設内で働いているスタッフが携帯している携帯端末34に火災情報信号を送信し、例えば、
図7のテーブル画面46と同じ施設地
図48を表示し、日頃の避難訓練で習得している手順に従って対処行動を開始させる。
【0095】
また、卓上インタフェース装置15は、火災が発生した施設内に配置されている掃除ロボット36−1〜36−4に対し安全確認指示信号を送信して自己の作業エリアA1〜A4の安全確認を指示する。
【0096】
卓上インタフェース装置15からの安全確認指示信号を受信した掃除ロボット36−1〜36−4は、それまでの清掃作業を中止し、所定の走行パターンに従って作業エリアA1〜A4を移動しながら、例えば煙濃度センサ88により煙濃度を検出し、所定の危険レベルに達していなければ、安全エリアであることを示す安全確認応答信号を卓上インタフェース装置15に送信し、所定の危険レベルに達している場合には、危険エリアであることを示す安全確認応答信号を卓上インタフェース装置15に送信する。
【0097】
このような掃除ロボット36−1〜36−4による作業エリアA1〜A4の安全確認応答信号を受信して、卓上インタフェース装置15は、
図7に示すように、火災場所110に近い防火戸24及び防火シャッター26で仕切られた掃除ロボット36−2で確認された作業エリアA2は危険エリア116として表示し、それ以外の掃除ロボット36−1,36−3,36−4で確認された作業エリアA1,A3,A4は安全エリアであることを表示する。なお、危険エリアと安全エリアは必要に応じて色分け表示することが望ましい。
【0098】
続いて、卓上インタフェース装置15は安全エリアA1,A3,A4に基づき、例えば避難場所となる火災場所110から離れた右端に示す階段室を避難先として、安全エリアA1,A3,A4を通り、火災場所110から遠ざかりながら避難場所に向かう太線の矢印で示す避難経路114を設定して表示し、この避難経路114の設定に基づき施設内に設置されている誘導表示装置32に避難誘導指示信号を送信して避難方向を示す矢印を表示させて誘導させる。
【0099】
この卓上インタフェース装置15に表示された安全エリアおよび避難経路114を示す信号は、逐次、スタッフが携帯している携帯端末32に送信されて表示され、安全な避難経路114の設定に対応したスタッフによる入院患者の避難場所への搬送作業が迅速且つ適切に行われることを可能とする。
【0100】
また、火災場所110に近い危険エリア116についても火災場所から遠ざかる矢印で示す方向に避難経路が設定され、危険エリア116に入院患者が残っているような場合には、卓上インタフェース装置15の操作により危険エリア116からの避難誘導指示信号をスタッフの携帯端末34に送信して表示させ、近くにいるスタッフによる危険エリア116からの入院患者の迅速な運び出しを可能とする。
【0101】
図8は火災が拡大した場合に卓上インタフェース装置に表示される監視対象施設の平面図を避難経路と共に示した説明図である。
【0102】
図8に示すように、
図7に示した火災が時間の経過に伴って隣の病室に拡大したとすると、火災が拡大した病室に設置されている火災感知器18が作動して火災信号を送信し、受信機14は2報目の火災信号を受信して新たな火災地区表示を行い、卓上インタフェース装置15に拡大した火災場所を含む火災情報信号を送信する。また、受信機14は火災の拡大に伴い掃除ロボット36−1の作業エリアA1内の防火戸24cを新たに閉鎖する制御を行う。
【0103】
このため卓上インタフェース装置15は
図8に示すように、火災場所110を隣の病室まで拡大表示し、火災の進展状況を把握可能とする。また、施設に設置されている掃除ロボット36−1〜36−4は、卓上インタフェース装置15から安全確認指示信号を受信して安全確認応答信号により結果を報告した後も、継続して作業エリアA1〜A4を移動しながら安全を確認している。
【0104】
このため火災の拡大に伴い火災場所110からの煙が、それまで安全エリアであった掃除ロボット36−1の作業エリアA1に流れ込み、例えば、作業エリアA1の煙濃度が危険レベルに達したことが掃除ロボット36−1により検出されると、卓上インタフェース装置15に作業エリアA1が危険エリアとなったことが安全確認応答信号により送信され、卓上インタフェース装置15はそれまでの作業エリアA2であった危険エリア116を作業エリアA1まで拡大した表示に切替え、これにより施設スタッフは安全エリアは掃除ロボット36−3,36−4の作業エリアA3,A4となったことを認識する。
【0105】
ここで、掃除ロボット36−1の作業エリアA1は防火戸24cの閉鎖により仕切られており、掃除ロボット36−1は防火戸24cで仕切られた火災場所に近い作業エリアA1の左側の安全を確認して危険と判断している。このため防火戸24cで仕切られた作業エリアA1の右側については、隣接する作業エリアA3に割り当られた掃除ロボット36−3に確認指示を行うことで対応可能としている。
【0106】
このように火災の拡大に伴い安全エリアが変化すると、卓上インタフェース装置15は変化した安全エリアとなる作業エリアA1の右側、及び作業エリアA3,A4に基づいて、太線の矢印で示す新たな避難経路114を再設定し、施設内に設置されている誘導表示装置32により避難方向を示す矢印を表示し、同時に、スタッフの携帯している携帯端末34に再設定された避難経路114を示した施設地
図48を送って表示させ、再設定された避難経路114に沿って入院患者等を安全な避難場所に運び出す作業を行うことを可能とする。
【0107】
[防災連携システムの制御動作]
(火災感知器の制御動作)
図9は受信機の制御を示したフローチャートであり、
図3の受信機14に設けられた受信制御部52による制御動作となる。
【0108】
図9に示すように、受信機14の受信制御部52は、ステップS1で火災感知器18の作動(発報)又は発信機20の操作に基づく火災受信の有無を判別しており、火災受信を判別するとステップS2に進み、火災警報を出力させる。
【0109】
この火災警報の出力を受けて防災担当者が火災を現場確認すると、火災確定操作が行われることから、火災確定操作をステップS3で判別して、火災場所に対応した防火戸24や防火シャッター26を作動させ、更に、排煙ダンパを開いて火災による煙を排出させる防排煙連動制御を行わせる。また、受信制御部52は、ステップS5に進んで、火災場所を含む火災情報信号を卓上インタフェース装置15に送信する。
【0110】
続いて、ステップS6に進んで受信制御部52は2報目以降の火災受信の有無を判別しており、2報目以降の火災受信を判別するとステップS7に進んで拡大した火災に対応した地区表示と防排煙連動制御を行うと共に、ステップS8で拡大した火災場所を含む火災情報信号を卓上インタフェース装置15に送信する。
【0111】
続いて、受信制御部52はステップS9で復旧操作を判別するまでステップS6からの処理を繰り返しており、火災が鎮火に対応して行われる復旧操作をステップS9で判別するとステップS10に進み、それまでの火災受信制御を復旧させた後、ステップS11で火災復旧信号を卓上インタフェース装置15に送信し、ステップS1の火災受信の判別に戻る。
【0112】
(卓上インタフェース装置の制御動作)
図10は卓上インタフェース装置の制御を示したフローチャートであり、
図3に示した卓上インタフェース装置15の装置制御部66による制御動作となる。
【0113】
図10に示すように、卓上インタフェース装置15の装置制御部66は、ステップS21で所定の日常的な表示や制御、例えば施設内に配置している各種の作業ロボットの状態等を表示して、その運用管理を可能としている。
【0114】
続いて、装置制御部66はステップS22で受信機14からの火災情報信号の受信の有無を判別しており、火災情報信号の受信を判別するとステップS23に進み、スタッフの携帯している携帯端末34及び全ての作業ロボットに対し火災モード信号を送信し、スタッフは火災発生を知って次の指示を待ち、また作業ロボットは日常的な作業を中止して次の指示を待つスタンバイ状態とさせる。
【0115】
続いて、装置制御部66は、ステップS24でテーブル画面46に火災場所を含む施設の地図を表示させ、ステップS25において施設内でスタンバイ状態にある掃除ロボット36に対し安全確認指示信号を送信して安全確認を指示する。続いて、装置制御部66は、掃除ロボット36からの確認結果を示す安全確認応答信号の受信をステップS26で判別するとステップS27に進み、テーブル画面46の地図上に安全エリアを危険エリアと共に表示すると共に、安全エリアに基づいて避難経路を設定する。
【0116】
続いて、装置制御部66は、設定された避難経路に基づきステップS28で施設内に設置している誘導表示装置32に避難誘導指示信号を送信して避難方向を示す矢印等を表示させ、続いて、ステップS29でスタッフの携帯端末34に避難誘導指示信号を送信し、設定された避難経路による避難行動を指示する。
【0117】
続いて、装置制御部66は、ステップS30で掃除ロボット36からの新たな安全エリアの確認結果を示す安全確認応答信号の受信を判別するとステップS31に進み、安全エリアに変化があったことを判別するとステップS32に進み、変化した安全エリアに基づき避難経路を再設定し、ステップS26からの処理を繰り返す。
【0118】
また、装置制御部66は、ステップS31で安全エリアに変化がないことを判別した場合はステップS33に進み、火災復旧信号を受信するまでステップS30からの処理を繰り返しており、ステップS31で火災復旧信号の受信を判別するとステップS34に進み、それまでの火災対応制御を復旧させ、ステップS21の日常表示制御に戻る。
【0119】
(掃除ロボットの制御動作)
図11は掃除ロボットの制御を示したフローチャートであり、
図4に示した掃除ロボット36のロボット制御部82による制御動作となる。
【0120】
図11に示すように、掃除ロボット36のロボット制御部82は、ステップS41で所定の作業スケジュールに従って自己に割り当てられた作業エリアを走行しながら自動清掃制御を行っており、自動清掃制御中にステップS42で卓上インタフェース装置15からの火災モード信号の受信を判別するとステップS43に進み、自動清掃制御を停止して待機するスタンバイ状態となる。
【0121】
続いて、ロボット制御部82はステップS44で卓上インタフェース装置15からの安全確認指示信号の受信を判別するとステップS45に進み、自己に割り当てられた作業エリアを走行しながら、煙濃度、温度及びガス濃度を検出し、ステップS46で作業エリアでの安全の有無を判別して卓上インタフェース装置15に安全確認応答信号を送信する。
【0122】
続いて、ロボット制御部82は、ステップS47で卓上インタフェース装置15からの火災復旧信号の受信を判別するまではステップS45からの処理を繰り返しており、ステップS47で火災復旧信号の受信を判別すると、それまでの火災情報に基づく安全確認等の制御を停止させ、ステップS41に戻って作業エリアの自動清掃制御を行うことになる。
【0123】
[本発明の変形例]
(火災報知システム)
上記の実施形態は、火災感知器等に端末アドレスを設定して火災場所や制御場所を識別可能なR型の火災報知システムを例にとっているが、回線単位に火災を検出したり端末機器を制御するP型の火災報知システムとしても良い。
【0124】
(対象施設)
上記の実施形態は避難困難者が予想される病院や高齢者施設を例にとっているが、これに限定されない。例えば、多数の人が出入りするオフィスビルや商業施設等の適宜の施設を対象としても良い。
【0125】
(作業ロボットによる避難誘導)
また、作業ロボットは避難中の人や残留者を検出したときは卓上インタフェース装置に通知するようにしても良い。また、避難者や残留者の検出をしたときや、人の操作に応じて避難経路情報に基づき避難誘導を行うようにしても良い。このとき、現在位置が避難経路上にないときは、現在位置から避難経路または安全エリアまで誘導する経路を卓上インタフェース装置から設定させるようにしても良い。
【0126】
(作業ロボットの照度センサ)
また、作業ロボットは、更に、周囲の明るさを検出する照度センサを有し、照度センサの検出値が所定の値を下回った場合に、現在の居場所の照度が低下している旨を示す信号を卓上インタフェース装置に送信するようにしても良い。作業ロボットに照度センサが設けられたことで、卓上インタフェース装置は照度が低下している場合にもその周辺を避難困難区域に設定して他の区域と区別できるようになり、避難経路の設定などの助けとすることができる。
【0127】
(その他)
上記の実施形態は施設内を安全エリアかそうでないかで分類したが、安全度を段階的に分けても良い。その際、卓上インタフェース装置上で安全度を表示する際、色の変化などを用いて、例えば等高線のように危険度を表示するようにしても良い。
【0128】
上記の実施形態は施設内の状況をロボットが定性的に判定した結果を卓上インタフェース装置に送信しているが、各種センサデータを卓上インタフェースに送信し、卓上インタフェースが施設内の状況を判定するようにしても良い。
【0129】
また、卓上インタフェース装置に代え、公知のディスプレイ装置やVRなどの表示端末と操作端末を使用することにより表示と操作を可能にしても良い。
【0130】
また本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。