特許第6841981号(P6841981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6841981
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】光学フィルム及びアイウェア
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210301BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02C7/12
【請求項の数】5
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-544555(P2020-544555)
(86)(22)【出願日】2020年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2020012836
【審査請求日】2020年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2019-63657(P2019-63657)
(32)【優先日】2019年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早崎 智之
(72)【発明者】
【氏名】矢作 悦幸
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/002582(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/098732(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/175581(WO,A1)
【文献】 特開2017−198981(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/175830(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/175829(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/186369(WO,A1)
【文献】 特開平11−125717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02C 7/12
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる中心反射波長を有する2以上の光反射層が積層された光学積層体と、PVA偏光フィルムとを備え、
前記2以上の光反射層は、いずれも膜の厚さが0.2μm以上1.4μm以下であり、
右円偏光反射能を有する右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層RPRLと、
左円偏光反射能を有する左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層LPRLの両方を有し、
前記光反射層は、全ての光反射層間で65nm以上500nm以下の間隔でずれた選択中心反射波長を有し、かつ
前記光学積層体の400nm以上900nm以下の波長領域における最大反射率が50%以下であり、偏光度が90%以上であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
偏光度が95%以上である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
ヘーズ値(Hz)が0.5%未満である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
450nm以上750nm以下の波長領域において、前記光学積層体の最大反射率と平均反射率との差が30%以下であり、かつ、前記光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が15%以下である、請求項1乃至3までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4までのいずれか一項に記載の光学フィルムを備えるアイウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる選択中心反射波長を有するコレステリック液晶層を有する複数の光反射層を備え、偏光度が高く、且つヘーズ値が低い光学フィルムに関する。このような光学フィルムは、主にアイウェア(サングラス、ゴーグル、ヘルメット用バイザーなど)に適用される。
【背景技術】
【0002】
水面、路面、雪面等からの反射光による眩しさの低減のために、アイウェア(サングラス、ゴーグル、バイザー等)が用いられている。例えば、サングラスにおいては、レンズ部を色素等で着色し、該色素で反射光を吸収させる。これにより、サングラス装着者の目に入射する光量が低減し、眩しさを低減することができる。一方、一般に、水面、雪面での反射光は偏光になる性質があるため、これらの反射光に対しては偏光サングラスが特に有効である。偏光サングラスは、その偏光方向の光を効果的に吸収させるように設計されているため、目への入射光量を大きく低減することなく、眩しさを低減し、視認性を向上させることができる。
【0003】
偏光サングラスに使用される光学フィルムは、通常、ポリカーボネート等の支持材で偏光素子が挟持された構成を有している。このような光学フィルを所望の形状に加工し、フレームにはめ込むことで偏光サングラスを作製することができる。偏光素子は、二色性染料、多ヨウ素―ポリビニルアルコール(PVA)錯体といったいわゆる二色性色素がPVA等の高分子と共に一軸配向されたフィルムであり、用いる色素の色によって、様々な色の偏光素子を得ることができる。通常のサングラスの場合、可視光域全体に偏光性を付与するために、偏光素子はグレー系の色に着色されることが多い。
【0004】
偏光サングラスにおけるデザイン性の付与、あるいは視認性の更なる向上のために、表面に多層膜を蒸着させる場合がある。多層膜を付与することにより、偏光サングラスを装着していない他者からはサングラス表面の反射光が青、緑、赤といったメタリック調の色調で視認可能であり、装着者においては、特定の光が反射されることで、眩しさの低減と共にレンズを介した景色の視認性がさらに向上する。このように多層膜を付与することは、装着者にとって有益である一方、皮脂などが多層膜に付着すると取れにくいといった取り扱い上の問題点、海などの水分、潮風に曝される場所では、多層膜が剥がれてしまうことがある。
【0005】
このような問題点に対し、多層膜を支持材の内側、すなわち偏光素子と支持材との間に設ける方法が考えられる。しかしながら、多層膜は、各層間での屈折率差により反射性能を発現しているため、多層膜が空気界面と同等の反射性能を得ることは困難である。また、多層膜は無機物質で作製されるために、有機物である偏光素子との接着にも問題がある。
【0006】
一方、多層膜を用いることなく、有機物でメタリックな色調の反射光を付与する方法として、コレステリック液晶層を用いる方法が知られている。コレステリック液晶は、液晶分子が螺旋配向をした状態であり、螺旋ピッチの長さによって、特定の波長領域において液晶分子の螺旋の向きと同じ向きの円偏光成分を選択的に反射する機能を有する。所望の波長領域で光が反射されるように螺旋配向を固定化したコレステリック液晶層を用いた光学積層体は、鮮やかな色調の反射光を示し、各種部材に装飾性を付与することができる。
【0007】
コレステリック液晶は、その性質上、特定の波長領域の円偏光成分を選択的に反射することができる。さらには、螺旋配向には右巻きと左巻きとがあり、右巻き螺旋配向の場合、右回り円偏光成分のみが反射され、左巻き螺旋配向の場合、左回り円偏光成分のみが反射される。そのため、右巻き螺旋配向の場合、外光が入射すると、螺旋ピッチに対応する波長領域の右回り円偏光成分のみが反射し、対応する波長領域の左回り円偏光成分が透過する。
【0008】
このように、コレステリック液晶層を使うと、多層膜を用いることなく、メタリックな色調の反射光を付与することはできるが、一方で、原理的に反射される光の波長領域の透過光は円偏光となる。二色性色素を用いて作製していた偏光素子は直線偏光に対して機能するため、偏光素子をコレステリック液晶層と組み合わせる場合、偏光素子が透過光を十分に吸収できない。そのため、偏光素子から漏れる光が増加し、偏光サングラスとしての本来の機能を低下させてしまうという新たな問題が懸念される。
【0009】
この問題に対し、特許文献1では、右巻き螺旋配向を有するコレステリック液晶層を有する光反射層Rと、左巻き螺旋配向を有するコレステリック液晶層を有する光反射層Lと、偏光素子層とを備える光学フィルムにより、左回り円偏光成分と右回り円偏光成分の両方を各光反射層で反射させることが開示されている。特許文献1では、光反射層Rと光反射層Lとの選択中心反射波長の間隔を20nm以内とすることで、ほぼ同じ選択中心反射波長の円偏光を各光反射層で反射させて高い偏光度が得られている。しかしながら、光反射層Rと光反射層Lとの選択中心反射波長の間隔がより広い光学フィルムでは、90以上の高い偏光度は達成されていない。また、光反射層Rと光反射層Lの各選択中心反射波長が同一又はほぼ同一であるため、光学フィルムの最大反射率は50%を超えている可能性が高い。さらに、光学フィルムをアイウェアに適用する場合、高偏光度だけでなく、低ヘーズ値も要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2016/002582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、互いに異なる選択中心反射波長を有する複数の光反射層を備え、偏光度が高く、且つヘーズ値が低い光学フィルム及びアイウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の要旨構成は、以下の通りである。
[1] 互いに異なる中心反射波長を有する2以上の光反射層が積層された光学積層体と、偏光素子層とを備え、
前記2以上の光反射層は、
右円偏光反射能を有する右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層RPRLと、
左円偏光反射能を有する左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層LPRLと、から選択され、
前記光反射層RPRL及び光反射層LPRLは、互いに隣接する2つの光反射層間でいずれも40nm以上500nm以下の間隔でずれた選択中心反射波長を有し、かつ
前記光学積層体の最大反射率が50%以下であることを特徴とする光学フィルム。
[2] 前記2以上の光反射層は前記光反射層RPRL及び光反射層LPRLの両方を含む、[1]に記載の光学フィルム。
[3] 偏光度が90%以上である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4] 偏光度が95%以上である、[1]乃至[3]までのいずれかに記載の光学フィルム。
[5] ヘーズ値(Hz)が0.5%未満である、[1]乃至[4]までのいずれかに記載の光学フィルム。
[6] 450nm以上750nm以下の波長領域において、前記光学積層体の最大反射率と平均反射率との差が30%以下であり、かつ、前記光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が15%である、[1]乃至[5]までのいずれかに記載の光学フィルム。
[7] [1]乃至[6]までのいずれかに記載の光学フィルムを備えるアイウェア。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、互いに異なる選択中心反射波長を有する複数の光反射層を備え、偏光度が高く、且つヘーズ値が低い光学フィルム及び当該光学フィルムを備えるアイウェアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に従う光学フィルムが備える光学積層体の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、本発明に従う光学フィルムの一実施形態を示す概略図である。
図3図3は、実施例1で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図4図4は、実施例15で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図5図5は、実施例2で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図6図6は、実施例3で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図7図7は、実施例4で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図8図8は、実施例5で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図9図9は、実施例6で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図10図10は、実施例7で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図11図11は、実施例8で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図12図12は、実施例9で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図13図13は、実施例10で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図14図14は、実施例11で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図15図15は、実施例12で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図16図16は、実施例13で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図17図17は、実施例14で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図18図18は、実施例16で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図19図19は、実施例17で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図20図20は、比較例1で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図21図21は、比較例2で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
図22図22は、比較例3で作製された光学積層体のスペクトルデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従う代表的な光学フィルムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を具体的に説明するために用いた代表的な実施形態を例示したにすぎず、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0016】
本発明におけるPRLは、Polarized light Reflection Layerの略記であって、光反射層を意味する。光反射層RPRLは、右巻き螺旋構造のコレステリック液晶層を有する光反射層を表し、光反射層LPRLは、左巻き螺旋構造のコレステリック液晶層を有する光反射層を表す。また、選択中心反射波長は、単に中心反射波長と表現することもある。また、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
<光学積層体>
図1は、複数の光反射層が積層された光学積層体の一例を示す。光学積層体1は、コレステリック液晶相が固定化された光反射層2、3、4及びこれらの光反射層2、3、4の間に形成された接着層5、6を備える。接着層5、6は、例えば、接着剤を用いて形成される。なお、接着剤を使用しなくても光反射層2、3、4を積層できる場合、接着層5、6を介することなく光反射層2、3、4を直接積層することができる。
【0018】
一実施態様において、各光反射層が異なる中心反射波長を有するために、光反射層3には、光反射層2のコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が長波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が反対であるコレステリック液晶層が使用される。同様に、光反射層4には、光反射層3のコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が長波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が反対であるコレステリック液晶層が使用される。例えば、光反射層2として、右巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−2)を用いる場合、光反射層3には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が長波長側にあり、且つ左巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(LCLC−3)が用いられ、光反射層4には、コレステリック液晶層(LCLC−3)と比べ中心波長が長波長側にあり、且つ右巻き螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−4)が用いられる。そのため、このような光反射層2、3、4を用いた図1に示される光学積層体1は、RPRL−2/接着層5/LPRL−3/接着層6/RPRL−4の積層構造を有する。また、当該積層構造に関して、対応する各光反射層の代わりに、螺旋の回転方向が反対方向の光反射層を用いる場合、光学積層体1は、LPRL−2/接着層5/RPRL−3/接着層6/LPRL−4の積層構造を有していてもよい。なお、RCLC(LCLC)は、Right(Left) Cholesteric Liquid Crystalの略記であって、右巻き螺旋構造又は左巻き螺旋構造のコレステリック液晶層を意味する。また、RCLC(LCLC)又はRPRL(LPRL)に続く数字は、図1の光反射層2、3、4として付した数字を意味する。以下、同様に表す。
【0019】
他の実施態様として、光反射層3には、光反射層2のコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が短波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が反対であるコレステリック液晶層が使用され、一方で、光反射層4には、光反射層2で使用されるコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が長波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が同じであるコレステリック液晶層が使用されていてもよい。この場合、例えば、光反射層2として、右巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−2)を用いる場合、光反射層3には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が短波長側にあり、且つ左巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(LCLC−3)が用いられ、光反射層4には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が長波長側にあり、且つ右巻き螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−4)が用いられる。また、この積層構造に関して、対応する各光反射層の代わりに、螺旋の回転方向が反対方向の光反射層が用いられた積層構造であっても、光の反射特性として同様の作用を示す光学積層体を得ることができる。
【0020】
他の実施態様として、光反射層3には、光反射層2で使用されるコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が長波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が反対であるコレステリック液晶層が使用され、一方で、光反射層4には、光反射層2で使用されるコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が短波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が同じであるコレステリック液晶層が使用されていてもよい。この場合、例えば、光反射層2として、右巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−2)を用いる場合、光反射層3には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が長波長側にあり、且つ左巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(LCLC−3)が用いられ、光反射層4には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が短波長側にあり、且つ右巻き螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−4)が用いられる。また、この積層構造に関して、対応する各光反射層の代わりに、螺旋の回転方向が反対方向の光反射層が用いられた積層構造であっても、光の反射特性として同様の作用を示す光学積層体を得ることができる。
【0021】
他の実施態様として、光反射層3には、光反射層2で使用されるコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が長波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が同じであるコレステリック液晶層が使用され、さらに、光反射層4には、光反射層2で使用されるコレステリック液晶層と比べて、中心反射波長が短波長側にあり、且つ螺旋の回転方向が同じであるコレステリック液晶層が使用されていてもよい。この場合、例えば、光反射層2として、右巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−2)を用いる場合、光反射層3には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が長波長側にあり、且つ左巻きの螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−3)が用いられ、光反射層4には、コレステリック液晶層(RCLC−2)と比べ中心反射波長が短波長側にあり、且つ右巻き螺旋構造のコレステリック液晶層(RCLC−4)が用いられる。また、この積層構造に関して、対応する各光反射層の代わりに、螺旋の回転方向が反対方向の光反射層が用いられた積層構造であっても、各光反射層が有する中心反射波長の順序をランダムにした積層構造であっても、光の反射特性として同様の作用を示す光学積層体を得ることができる。
【0022】
すなわち、光学積層体が有する各光反射層2、3、4の積層順は、螺旋の回転方向を特定した順に積層された積層構造、中心反射波長が長い順又は短い順に積層された積層構造に限定されず、任意の積層構造を設計することができる。
【0023】
本実施形態における光学積層体において、各光反射層が積層される順番は、少なくとも1つの光反射層RPRLと少なくとも1つの光反射層LPRLのいずれか一方又は両方が合計で2層以上積層されていれば特に限定されるものではない。例えば、図1において、各光反射層2、3、4は、光反射層RPRL又は光反射層LPRLのいずれかであってもよく、光反射層RPRLと光反射層LPRLの両方を含んでいてもよい。また、図1に示される光学積層体は、3層構造の光学積層体であるが、2層構造の光学積層体であってもよく、4層以上の光反射層を含んでいてもよい。特に、各光反射層2、3、4が光反射層RPRLと光反射層LPRLの両方を含むことにより、より高い偏光度を示す光学フィルムを得ることができる。
【0024】
意匠性を付与するアイウェアへの適用の観点から、光反射層RPRL及び光反射層LPRLは、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する。選択中心反射波長の下限は、420nm以上であることが好ましく、450nm以上であることがより好ましい。また、選択中心反射波長の上限は、850nm以下であることが好ましく、750nm以下であることがより好ましい。
【0025】
光学積層体に積層される光反射層RPRLと光反射層LPRLは、互いに隣接する2つの光反射層間でいずれも40nm以上500nm以下の間隔でずれた選択中心反射波長を有している。この間隔が40nm未満では、間隔が狭すぎるため、単一の選択中心反射波長を有するメタリックな色調光学フィルムと同等になるため、本発明においては好ましくない。そして、光学フィルムに低いヘーズ値を付与できない傾向にある。一方、間隔が500nmより離れると、光学フィルムが可視光域の光を反射しにくくなり、意匠性を付与するアイウェアとしての用途に適用できないおそれがある。選択中心反射波長のずれの間隔として、より好ましい上限は、480nm以下であり、更に好ましくは450nm以下であり、特に好ましくは400nm以下であり、最も好ましくは350nm以下である。また、より好ましい下限は70nm以上であり、更に好ましくは100nm以上であり、特に好ましくは150nm以上である。よって、選択中心反射波長のずれの間隔として最も好ましい範囲は、150nm以上350nm以下である。
【0026】
このような光反射層RPRLと光反射層LPRLが合計で2層以上積層されている光学積層体は、当該光学積層体を有する光学フィルムを高い偏光度が求められるアイウェアに適用させる観点から、光学積層体の入射光に対する最大反射率は50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは30%以下である。最大反射率が50%以下であることにより、高い偏光度を得ることができる。尚、入射光は、光学積層体に垂直に入射する光である。また、最大反射率は、400nm以上900nm以下の波長領域において光学積層体が有する最大の反射率を意味し、最小反射率は、400nm以上900nm以下の波長領域において光学積層体が有する最小の反射率を意味する。
【0027】
光反射層RPRL及び光反射層LPRLは、互いに異なる選択中心反射波長を有している。これにより、光学積層体が50%以下の最大反射率を得られやすく、また、反射光がメタリックな色調を示す光学フィルムを作製することができる。
【0028】
本実施形態において、色味のある反射光、或いは、無色又はシルバー色のメタリックな色調の反射光を示す光学フィルムを作製する場合、450nm以上750nm以下の波長領域において、光学積層体の最大反射率と平均反射率との差が30%以下であることが好ましく、且つ、光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が15%以下であることが好ましい。色味のある反射光を示す光学フィルムを作製する場合、最大反射率と平均反射率との差の下限は、5%よりも大きいことが好ましく、平均反射率と最小反射率との差の下限は、4%よりも大きいことが好ましい。450nm以上750nm以下の波長領域において、光学積層体の最大反射率と平均反射率との差が5%よりも大きく、30%以下であり、且つ、光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が、4%よりも大きく、30%以下であることにより、光学フィルムの正面方向又は傾斜させた際に反射光が発色し、色味のある反射光を得ることができる。一方、無色又はシルバー色のメタリックな色調の反射光を示す光学フィルムを作製する場合、450nm以上750nm以下の波長領域において、光学積層体の最大反射率と平均反射率との差が5%以下であり、且つ光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が5%以下であることが好ましい。これにより、無色又はシルバー色のメタリックな色調の反射光を示す光学フィルムを作製することができる。
【0029】
各光反射層の厚さは、0.2μm以上2μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以上1.5μm以下であり、更に好ましくは0.4μm以上1.4μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以上1.2μmである。各光反射層の厚さが0.2μm未満の場合、得られる光学積層体の反射率が極端に低いおそれがあり、一方、光反射層の厚さが2μmを超える場合、偏光度が低下するおそれがある。また、光学積層体の厚さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0030】
光学積層体のヘーズ値は0.5%未満が好ましく、0.3%以下がより好ましい。ヘーズ値が0.5%以上では、光学積層体の不透明性が大きく、透明性が重要であるアイウェアへの用途に適さない。
【0031】
光反射層RPRL及び光反射層LPRLの各光反射層は、種々の方法で形成することができる。一例として、後述する液晶塗布液の塗布により形成する方法が挙げられる。より具体的には、コレステリック液晶層を形成し得る硬化性液晶組成物を、基板、配向層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応、架橋反応等)を進行させることでコレステリック液晶相を固定させて、所定の光反射層を形成することができる。
【0032】
コレステリック液晶相を固定して形成される光反射層RPRL及び光反射層LPRLの各光反射層は、紫外光照射によって劣化する傾向があり、特に、380nm以下の波長の紫外光に対する劣化が顕著である。よって、例えば、紫外域の光を吸収する材料(紫外線吸収剤)を、基板又は少なくとも一つの光反射層に添加することによって、または当該材料を含有する層、例えば光吸収層を光学積層体に別途積層することによって、光反射層の劣化を顕著に抑制することができる。
【0033】
光学積層体は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する光反射層と基材とを貼り合わせることによって形成する方法であり、より具体的には、接着剤又は粘着剤を、基材又は光反射層の表面に塗布し、表面から別の光反射層を貼り合わせた後、硬化反応(例えば、重合反応、架橋反応等)を進行させることで硬化させて、この工程を複数回繰り返すことにより形成することができる。
【0034】
<偏光素子層>
図2は、本実施形態に係る光学フィルムの一例を示す。図2に示される光学フィルム9は、偏光素子で形成された偏光素子層8上に、接着層7を介して、図1に示される光学積層体1が設けられている。偏光素子層8の材料は、典型的にはPVA偏光フィルムが挙げられる。偏光素子層の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体から形成される高分子フィルムにヨウ素、二色性染料などの色素を吸着させ、次いで、該フィルムを一軸に延伸配向させることで偏光素子層8が製造される。色素としては、耐熱性の点から、二色性染料が好ましく、特にスルホン酸基をもつアゾ色素の直接染料が好ましい。また、光学積層体と偏光素子層とを積層する方法としては、特に限定されないが、高い接着力が得られることから接着層を介して貼り合わせることが望ましい。接着層としては、ホットメルト型接着剤と硬化型接着剤のいずれも使用可能である。通常、硬化型接着剤としては、アクリル樹脂系材料、ウレタン樹脂系材料、ポリエステル樹脂系材料、メラミン樹脂系材料、エポキシ樹脂系材料、シリコーン系材料等が使用でき、特に、曲げ加工時の接着力、加工性に優れることから、ウレタン樹脂系材料であるポリウレタンプレポリマーと硬化剤とを含む2液型の熱硬化性ウレタン樹脂が好ましい。光学積層体と偏光素子層を接着する接着剤には、調光染料を溶解させた接着剤を用いてもよい。
【0035】
光学積層体1及び光学フィルム9の実施態様は、図1図2に示す態様に限定されるものではない。光学積層体1には、所定の光反射層が2層以上積層されていればよく、3層以上積層されていてもよい。また、各光反射層2、3、4、・・・が形成される順番は、図1、2では、光反射層2、光反射層3、光反射層4、・・・の順で積層されているが、この積層順に限定されない。
【0036】
次に、光学積層体及び光学フィルムの作製に用いられる各種材料及び当該材料の作製方法の例について詳細に説明する。
【0037】
1.光反射層形成用材料
光反射層RPRL及び光反射層LPRLにおいて、各光反射層の形成に、硬化性の液晶組成物を用いることが好ましい。例えば、前記液晶組成物は、棒状液晶化合物、光学活性化合物(キラル化合物)、及び重合開始剤の各成分を少なくとも含有しており、各成分は2種以上含まれていてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、各種液晶化合物の配向の均一性、液晶組成物の塗布適性、得られる塗膜の強度を向上させるために、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0038】
(1)棒状液晶化合物
棒状液晶化合物の例として、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物として、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。また、棒状液晶化合物として、低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0039】
棒状液晶化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y.Goto et.al., Mol.Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23−28)に記載されている。重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は、種々の方法で棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物には、例えば、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、米国特許第5622648号明細書、米国特許第5770107号明細書、国際公開第95/22586号、国際公開第95/24455号、国際公開第97/00600号、国際公開第98/23580号、国際公開第98/52905号、特開平1−272551号公報、特開平6−16616号公報、特開平7−110469号公報、特開平11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。棒状液晶化合物として、2種類以上の重合性棒状液晶化合物が併用されていてもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0040】
(2)光学活性化合物(キラル剤)
液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、そのためには、光学活性化合物を含有していることが好ましい。ただし、棒状液晶化合物が不斉炭素原子を有する分子である場合、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成することが可能な場合もある。光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物又は面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶化合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と同種の基であることが好ましい。したがって、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることが更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0041】
液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部以上20重量部以下、より好ましくは1重量部以上10重量部以下である。光学活性化合物の使用量は、少ないほど液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好ましい。したがって、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捻れ配向を達成できるように、強い捩り力を示す化合物が好ましい。この様な、強い捻れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623号公報に記載のキラル剤が挙げられ、好ましくは、当該キラル剤を用いることができる。
【0042】
(3)重合開始剤
各光反射層の形成用に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であることが好ましく、これに伴い重合開始剤を含有していることが好ましい。塗布された液晶組成物については、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤は特に限定されず、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン(BASF社製「イルガキュアー907」)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュアー184」)、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン(BASF社製「イルガキュアー2959」)、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュアー953」)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(メルク社製「ダロキュアー1116」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASF社製「イルガキュアー1173」)、ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(BASF社製「イルガキュアー651」)等のベンゾイン化合物;ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン(日本化薬社製「カヤキュアーMBP」)等のベンゾフェノン化合物;及び、チオキサントン、2−クロルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーCTX」)、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーRTX」)、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロオチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーCTX」)、2,4−ジエチルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーDETX」)、2,4−ジイソプロピルチオキサントン(日本化薬社製「カヤキュアーDITX 」)等のチオキサントン化合物等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
重合性液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、重合性液晶化合物100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは2重量部以上8重量部以下である。
【0044】
光重合開始剤として、ベンゾフェノン化合物又は上記チオキサントン化合物を用いる場合、光重合反応を促進させるために、反応助剤を併用することが好ましい。反応助剤としては特に限定されず、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタアクリレート、ミヒラーケトン、4,4’−ジエチルアミノフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン化合物が挙げられる。
【0045】
重合性液晶組成物中の反応助剤の含有量は特に限定されないが、重合性液晶組成物の液晶性に影響を与えない範囲で使用することが好ましく、重合性液晶化合物と紫外線硬化型の重合性化合物の合計100重量部に対して、好ましくは0.5重量部以上10重量部以下であり、より好ましくは重量部以上8重量部以下である。また、反応助剤の含有量は、上記光重合開始剤の含有量に対して、0.5〜2倍量であることが好ましい。
【0046】
(4)溶剤
液晶組成物には、さらに溶剤が含まれる。このような溶剤は、使用する液晶化合物、キラル剤等を溶解できれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、アセトン、アニソールなどがあげられ、溶解性が良好なシクロペンタノンが好ましい。また、これらの溶剤は任意の割合で加えることができ、1種類のみを加えてもよく、複数の溶剤を併用してもよい。これら溶剤は、オーブン、フィルムコーターライン等の乾燥ゾーンにて乾燥除去される。
【0047】
(5)添加剤
液晶組成物に、必要に応じてレベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤架橋剤、可塑剤、無機微粒子、フィラー等の添加剤を任意の割合で更に添加し、液晶組成物にそれぞれの添加剤が有する機能を付与させることも可能である。レベリング剤としてはフッ素系化合物、シリコーン系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられ、光安定化剤としてはヒンダードアミン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられる。重合禁止剤としては、メトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン等が挙げられ、架橋剤としては、ポリイソシアネート類、メラミン化合物等が挙げられる。可塑剤としてはジメチルフタレートやジエチルフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテートのようなトリメリト酸エステル、ジメチルアジペートやジブチルアジペートのような脂肪族二塩基酸エステル、トリブチルホスフェートやトリフェニルホスフェートのような正燐酸エステル、グリセルトリアセテートや2−エチルヘキシルアセテートのような酢酸エステルが挙げられる。
【0048】
2.接着層形成用材料(接着剤)
本実施態様に係る光学積層体において、必要に応じて、各光反射層、光学積層体と偏光素子層を、接着層を介して積層することができる。光学フィルムの光学部材への適用を考慮すると、このような接着層を形成するための材料は、透明であることが好ましい。接着層形成用材料に使用可能な透明な樹脂の例として、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂が挙げられる。
【0049】
(1)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂は、アクリル系モノマー又はオリゴマーを主成分とし、アニオン重合やラジカル重合、レドックス重合によって硬化するものである。このようなアクリル系樹脂としては、例えば、2−シアノアクリル酸エステルを主成分とするアニオン重合型の瞬間接着剤、メタクリル酸エステルを主成分とするレドックス重合型のアクリル系接着剤、多官能アクリル酸エステル、多官能メタクリル酸エステルを主成分とする紫外線照射によるラジカル重合型の紫外線硬化型接着剤等が挙げられる。紫外線硬化型接着剤は(メタ)アクリレート系モノマー、光重合開始剤及び添加剤を含む。
【0050】
アクリル系樹脂として用いられる例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応生成物、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタアクリロキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(メタアクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応性生物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ブチルグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0051】
(2)エポキシ系樹脂
エポキシ系樹脂は、エポキシ樹脂と硬化剤、好ましくはアミン系化合物、酸無水物、金属触媒を任意成分として含んでいる。エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基をもつものであれば特に制限はなく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、プロム化エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレングリコールグリシジルエーテル又はペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどの脂肪族系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等が挙げられ、これらエポキシ樹脂は2種以上混合して用いてもよい。また、必要に応じて、粘度低下のためにブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、脂肪族アルコールのグリシジルエーテルなどのモノエポキシ化合物を配合してもよい。
【0052】
また、接着層形成用材料として、粘着剤を利用することもできる。粘着剤としてはゴム系、アクリル系、シリコーン系などを用いることができるが、特にアクリル系粘着剤が望ましい。
【0053】
(3)粘着剤
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや他の(メタ)アクリル系モノマー成分を共重合した(メタ)アクリル系ポリマーを用いた粘着剤が挙げられる。
【0054】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどが挙げられる。
【0055】
他の(メタ)アクリル系モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有モノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの窒素含有モノマー;及びグリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0056】
接着剤の塗工液には、粘度調整や塗工性改善のために溶剤を加えてもよい。溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチルのような酢酸エステル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールのようなアルコール類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンのようなケトン類;ベンジルアミン、トリエチルアミン、ピリジンのような塩基系溶媒;及び、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ヘキサン、ヘプタンのような非極性溶媒等が挙げられる。これらの溶剤は任意の割合で加えることができ、1種類のみ加えてもよいし、複数成分を配合してもよい。これら溶剤は、オーブン、フィルムコーターラインの乾燥ゾーンにて乾燥除去される。
【0057】
3.配向層
本実施形態に係る光学フィルムは、光学積層体中に積層されているコレステリック液晶相が固定化された光反射層と偏光素子層との間に配向層を有していてもよい。配向層は、コレステリック液晶相中の液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、又は光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成することが好ましい。
【0058】
配向層は、隣接する、光反射層及び偏光素子層のいずれに対しても、ある程度の密着力を有することが好ましい。例えば、コレステリック液晶層が固定化された光反射層を3層有する光学積層体に配向層を介挿する場合、まず光反射層と配向層とを有する2つの積層体を用意し、積層体[1](光反射層[1]/配向層[1])と、積層体[2](光反射層[2]/配向層[2])とを接着剤を用いて貼り合わせ、配向層[1]/光反射層[1]/接着剤/光反射層[2]/配向層[2]の層構造を有する積層体[A]を作製する。次いで、片方の配向層[2]を剥離し、さらに、同様に、予め用意した光反射層と配向層とを有する積層体[3](光反射層[3]/配向層[3])と、上記のように作製した積層体[A]とを接着剤を用いて貼り合わせ、配向層[1]/光反射層[1]/接着剤/光反射層[2]/接着剤/光反射層[3]/配向層[3]の層構造を有する積層体[B]を作製する。そのため、配向層は、コレステリック液晶相が固定化された光反射層と配向層との界面にて、剥離ができる程度の弱い剥離力で介挿されていることが望ましい。なお、配向層を剥離する界面は、特に限定されるものではないが、別工程で積層体[3]を積層することを考慮すると、光反射層と配向層との界面で剥離することが好ましい。
【0059】
配向層として用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、典型的には、それ自体が架橋可能なポリマー、又は架橋剤により架橋されるポリマーが用いられる。また、双方の機能を有するポリマーを用いてもよい。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。配向層の厚みは、0.1μm以上2.0μm以下が好ましい。コレステリック液晶相の光反射層と偏光素子層との間に配向層を有する場合、偏光度の観点から複屈折性が小さい配向層を使用することが好ましく、複屈折性の少ないトリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン、アクリルなどが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0061】
<塗布液(液晶組成物)の調製>
下記表1に示す組成の塗布液(R)及び表2に示す組成の塗布液(L)をそれぞれ調製した。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【化1】
キラル剤:化合物1(特開2002−179668号公報に記載の化合物)
【0065】
<接着剤の調製>
下記表3に示す組成の接着剤を調製した。
【0066】
【表3】
【0067】
<光反射層の作製>
調製した16種類の塗布液(R1〜R9)、(L1〜L7)を用い、下記の手順にてそれぞれコレステリック液晶の塗膜(光反射層)を作製し、選択中心反射波長を評価した。各光反射層の基板としては、ラビング処理が施された下塗り層がないPETフィルム(東洋紡績社製、「商品名 A4100」、厚さ50μm)を使用した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、所定の厚みになるようPETフィルム上に室温にて塗布した。
(2)150℃にて3分間加熱して溶剤の除去とともにコレステリック液晶相とした。次いで、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製:HX4000L)を120W出力、5〜10秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、コレステリック液晶塗膜(光反射層)を作製した。
(3)分光光度計(島津製作所社製「MPC−3100」)を用いて、作製した光反射層の反射スペクトルを測定し、選択中心反射波長及び最大反射率を求めた。各実施例に使用した各光反射層の厚み、選択中心反射波長及び最大反射率を下記表4に示す。
【0068】
【表4】
【0069】
<偏光素子層の作製>
ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「クラレビニロン#750」)を、クロランチンファストレッド(C.I.28160)0.25g/L、クリソフェニン(C.I.24895)0.18g/L、ソロフェニルブルー4GL(C.I.34200)1.0g/L及び硫酸ナトリウム10g/Lを含む水溶液中に浸漬し、35℃で3分間染色した後、溶液中で4倍に延伸した。次いで、得られた染色シートを酢酸ニッケル2.5g/L及びホウ酸6.6g/Lを含む水溶液中35℃で3分浸漬した。更に、そのシートを緊張状態が保持された状態で室温にて3分乾燥した後、70℃で3分間加熱処理し、偏光素子層を作製した。偏光素子層を、分光光度計を用いて絶対偏光法により偏光度を測定した結果、偏光素子層の偏光度は99.5%であった。
【0070】
<光学フィルムの作製>
[実施例1、実施例15、比較例1]
調整した接着剤(S1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが10μmになるように表4に記載した光反射層1のコレステリック液晶塗膜面に塗布した。40℃にて1分間加熱して溶剤を除去した後、接着剤が塗布された光反射層1のコレステリック液晶塗膜面と上記表4に記載した光反射層2のコレステリック液晶塗膜面とを、ハンドローラーを用いて合わせ、高圧水銀ランプ(ハリソン東芝ライティング社製「HX4000L」)を120W出力、5〜10秒間UV照射して接着剤を硬化させて、光反射層1と、光反射層2の2層を積層した。その後、光反射層2側のPETフィルムを剥離し、当該PETフィルムを剥離した側の光反射層2のコレステリック液晶塗膜面に、接着剤(S1)を乾燥後の膜の厚みが10μmになるようにワイヤーバーを用いて塗布し、2つの光反射層を積層した手順と同様に上記表4に記載した光反射層3のコレステリック液晶塗膜を積層した。次いで、光反射層1側のPETフィルムと光反射層3側のPETフィルムをそれぞれ剥離し、光反射層1と、光反射層2と、光反射層3の3層が積層された光学積層体(光反射層1/光反射層2/光反射層3)を作製した。次に、光反射層1上にウレタン樹脂系接着剤を用いて偏光素子層を貼り合わせて、光学フィルムを作製した。
【0071】
[実施例2〜14、実施例16〜17、比較例2〜3]
実施例1上記と同様の手順により、表4に記載した光反射層1と、光反射層2の2層が積層された光学積層体(光反射層1/光反射層2)を作製し、光反射層1上に偏光素子層を有する光学フィルムを作製した。
【0072】
[分光性能評価]
分光光度計(島津製作所社製「MPC−3100」)を用いて、実施例1〜17及び比較例1〜3で作製した各光学積層体の反射スペクトルを測定し、450nm〜750nmの波長領域の平均反射率、最小反射率及び最大反射率、また、400nm〜900nmの波長領域の最小反射率及び最大反射率を求めた。得られた結果を下記表5に示す。
【0073】
[外観評価]
実施例1〜17及び比較例1〜3で作製した光学フィルムの正面方向及び60度傾斜させた際の色味を確認した。得られた結果を下記表5に示す。
【0074】
[偏光度評価]
実施例1〜17及び比較例1〜3で作製した光学フィルムを、分光光度計を用いて、絶対偏光法により偏光度を評価した。得られた結果を下記表5に示す。
【0075】
[ヘーズ(Hz)評価]
実施例1〜17及び比較例1〜3で作製した光学フィルムを、日本電色社製のヘーズメーターを用いてヘーズを評価した。得られた結果を下記表5に示す。
【0076】
【表5】
【0077】
上記表5に示す通り、右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層、左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層、右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層の順で各光反射層を積層し、隣接する2つの光反射層における選択中心反射波長をそれぞれ150nm、190nmの間隔だけずらした実施例1で作製した光学フィルムは、98.0%の高い偏光度と0.3%の低いヘーズ値をそれぞれ示した。また、光学積層体に含まれる光反射層が全て光反射層RPRLである実施例15で作製した光学フィルムにおいても、92.5%の高い偏光度と、0.2%の低いヘーズ値をそれぞれ示した。さらに、表4、図3及び図4に示されるように、実施例1及び実施例15の光学フィルムは440nm、590nm及び780nmの選択中心反射波長をそれぞれ有する3つの光反射層を有していた。また、450nm以上750nm以下の波長領域において、光学積層体の最大反射率と平均反射率との差及び光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が、いずれも5%以下であり、作製した光学フィルムは、正面方向及び60度傾斜した際の反射光の色味がいずれも無色であり、メタリックな色調を示した。
【0078】
右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層と、左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層を積層し、隣接する2つの光反射層における選択中心反射波長を190nmの間隔だけずらした実施例2で作製した光学フィルムは、96.7%の高い偏光度と0.2%の低いヘーズ値をそれぞれ示した。また、表4及び図5に示されるように、実施例2の光学フィルムは530nm及び720nmの選択中心反射波長をそれぞれ有する2つの光反射層を有していた。さらに、450nm以上750nm以下の波長領域において、光学積層体の最大反射率と平均反射率との差及び光学積層体の平均反射率と最小反射率との差が、いずれも5%以下であり、作製した光学フィルムは、正面方向及び60度傾斜した際の反射光の色味がいずれも無色であり、メタリックな色調を示した。
【0079】
右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層と、左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された光反射層を積層し、隣接する2つの光反射層における選択中心反射波長が表5に示されるように最大440nm、最小65nmの間隔だけずらした実施例3〜実施例14の光反射フィルムは、いずれも90%以上の高い偏光度と0.2%以下の低いヘーズ値をそれぞれ示した。また、図6図17に示されるように、実施例3〜実施例14の光学フィルムは互いに異なる選択中心反射波長を有する複数の光反射層を含んでおり、マゼンダ色など単一の選択中心反射波長では再現できない反射色の色味を示していた。
【0080】
尚、実施例14の光学フィルムは、図17に示すように、選択中心波長が850nm以上の光反射層を含んでいるため、60度傾斜した際に非常に薄い色味の反射光を示すことも確認された。
【0081】
実施例16及び実施例17の光学フィルムは、図18図19に示すように、実施例3及び実施例4の光学フィルムと同様の分光スペクトルを有している。実施例16及び実施例17では、各光反射層が同一の螺旋構造を積層しているため、偏光度はいずれも実施例3及び実施例4の偏光度よりも若干低い値であったものの、いずれも90%以上の高い偏光度と0.3%以下の低いヘーズ値をそれぞれ示した。
【0082】
隣接する2つの光反射層における選択中心反射波長をそれぞれ14nm、9nmの間隔だけずらした比較例1の光学フィルムは、図20に示すように、比較的単一の選択中心波長と類似した分光スペクトルを有している。尚、偏光度は90%以上であったものの、ヘーズ値が0.5%であり、他の実施例と比べてヘーズ値に劣っていた。
【0083】
比較例2及び比較例3の光学フィルムは、表5、図21及び図22に示すように50%以上の最大反射率を有しているため、偏光度が低く、且つ0.6%以上の高いヘーズ値を示した。
【0084】
このように、実施例1〜実施例17の各光学積層体は、90%以上の偏光度及び0.5%未満の低いヘーズ値を示していることから、実施例1〜17で作製した各光学フィルムは、光学部材への使用に適している。特に、実施例1、2及び15で作製した各光学フィルムは、反射光の色味も無色であるため、無色又はシルバー色の反射光が要求されるアイウェアに適している。また、実施例3〜14、16〜17で作製した光学フィルムは、単一の選択中心反射波長では再現できない反射色を要求されるアイウェアに適している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、互いに異なる選択中心反射波長を有する複数の光反射層を備え、偏光度が高く、且つヘーズ値が低い光学フィルムに関する。このような光学フィルムは、主にアイウェア(サングラス、ゴーグル、ヘルメット用バイザーなど)の適用に好適である。
【符号の説明】
【0086】
1 光学積層体
2 光反射層
3 光反射層
4 光反射層
5 接着層
6 接着層
7 接着層
8 偏光素子層
9 光学フィルム
【要約】
本発明は、互いに異なる中心反射波長を有する2以上の光反射層が積層された光学積層体(1)と偏光素子層(8)とを備える光学フィルム(9)に関する。2以上の光反射層は、右円偏光反射能を有する右巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上850nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層RPRL(2,3,4)と、左円偏光反射能を有する左巻き螺旋構造のコレステリック液晶相が固定化された、400nm以上900nm以下の範囲に選択中心反射波長を有する少なくとも1つの光反射層LPRL(2,3,4)と、から選択される。光反射層RPRL及び光反射層LPRL(2,3,4)は、互いに隣接する2つの光反射層間でいずれも40nm以上500nm以下の間隔でずれた選択中心反射波長を有し、光学積層体(1)の最大反射率は50%以下である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22