(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のエレクトレット加工品の製造装置において、前記スライド面が前記非導電性シートに対して45〜75°の傾斜角を有していることを特徴とするエレクトレット加工品の製造装置。
請求項1又は2に記載のエレクトレット加工品の製造装置において、前記スライド面の両端に、流下する水の幅を制御するためのガイドが設けられていることを特徴とするエレクトレット加工品の製造装置。
請求項4に記載の非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記非導電性シートがヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤を0.5〜5重量%含有していることを特徴とする方法。
請求項4〜7のいずれかに記載の非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記非導電性シートがポリオレフィンを主体に構成されていることを特徴とする方法。
請求項11に記載の非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記水溶性有機溶剤がアルコール類又はケトン類を主成分に構成されていることを特徴とする方法。
請求項11又は12に記載の非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記水溶性有機溶剤がイソプロピルアルコール、エチルアルコール及びアセトンのうちの少なくとも1種であることを特徴とする方法。
請求項4〜13のいずれかに記載の非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記非導電性シートをあらかじめコロナ帯電によりエレクトレット化することを特徴とする方法。
【背景技術】
【0002】
従来、低圧力損失かつ高捕集性能を持つエアフィルターやマスクフィルターとして、エレクトレット繊維シートが使用されている。エレクトレット化の方法としては、非導電性繊維シートに高電圧を印可して、コロナ放電により、エレクトレット化する方法が知られている。しかしながら、コロナ放電による方法では、帯電量を多くするために電圧を上げすぎると、高電圧電極とアース電極との聞に火花放電が発生し、シートを損傷するという問題がある。また、この方法では、シートの表層部分、すなわち、コロナイオンに曝されている部分にのみ電荷が蓄積してしまう。そして、その蓄積電荷により形成される反発電界により、コロナイオンがシート内部まで浸透することができず、その結果、シート内部まで十分に荷電されないという欠点を有する。
【0003】
繊維シートをエレクトレット化する他の方法として、流動体による摩擦帯電を利用した方法が挙げられる。特表平9-501604号及び特表平11-510862号は、ウォータージェット装置を用いて水の噴流又は水滴流を、濾過向上性エレクトレット電荷を提供するのに十分な圧力でウェブに衝突させることによりウェブをエレクトレット化する方法を開示している。
【0004】
しかしながら、特表平9-501604号及び特表平11-510862号に記載の圧力をかけてウェブに水を衝突させる方法は、コンプレッサーなどの付帯設備が必要となり設備の導入及び運転にコストがかかる。また、シートをエレクトレット化するために十分な圧力をかける必要があるため、目付が低く強度の弱い不織布に適用した場合、不織布に水流の跡が残ることにより風合いが変化し、期待される性能を発現できないという問題がある。また、ウォータージェット装置のようにノズルから水を付与する方法では、ノズルの詰まりを回避するため定期的な洗浄が必要であり、メンテナンスが煩雑化する。
【0005】
特開2002-249978号は、スリット状吐出口から吐出した水を走行する非導電性シートの表面に膜状に塗布し、非導電性シートの下面側に配置した吸引器によって塗布した水を吸引し下面側へ透過させ、非導電性シートの表裏全体を浸透状態にした後、ニップロールで余剰の水を除去し、乾燥することによってエレクトレット化されたシートを製造する方法を開示している。
【0006】
しかしながら、特開2002-249978号に記載の方法は、
非導電性シートの表面に水を膜状に塗布するためスリット状吐出口から水を吐出させているため、スリット状吐出口が部分的に目詰まりした場合、水が均一に膜状に広がらなくなり、シートのエレクトレット化が不均一になる場合がある。またより広幅のシートをエレクトレット化する場合、スリット状吐出口から水を均一に吐出させるためには高い圧力で送液する必要があり、装置が大がかりになってしまう。さらに非導電性シートの下面側に配置した吸引器が直接非導電性シートに接しているため、非導電性シートに吸引器が擦れることによりシートに傷がつき、品質が低下するおそれがある。特に目付や充填率の低い強度の弱い繊維シートの場合には破損してしまう場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、非導電性シートに水を通過させることによって非導電性シートをエレクトレット化する
ことによりエレクトレット加工品を製造する装置であって、簡便な方法で非導電性シートの一面に帯状の水を供給することができ、かつ非導電性シートの品質を低下させないで他の面から水を吸引することが可能なエレクトレット加工品の製造装置
、及びそれを用いたエレクトレット加工品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、水を帯状に流下させるためのスライド面を有する水付与手段により非導電性シートの一面に水を供給すること、及び非導電性シートをメッシュ状のコンベアに載置して搬送し、前記メッシュ状のコンベアの裏面に水を吸引するための吸引ノズルを設けることにより、簡便な方法で品質の低下を招かずに非導電性シートをエレクトレット化できることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の製造装置は、
非導電性シートをエレクトレット化しエレクトレット加工品を製造する装置であって、前記非導電性シートを載置し水平方向に搬送するためのメッシュ状のコンベアと、
前記コンベアに載置された前記非導電性シートに帯状の水を付与するための水付与手段と、
前記コンベアの裏側に配置され、前記付与した水を前記非導電性シートの反対側から吸引するための吸引ノズルとを有し、
前記水付与手段が、水を帯状に流下させるためのスライド面と、前記スライド面の上流側に設けられたタンクと、前記タンクに水を供給する水供給部とからなり、
前記タンクからオーバーフローした水を前記スライド面に流下させることにより前記非導電性シートの幅方向に均一な帯状の水を供給することを特徴とする。
【0010】
前記スライド面が前記非導電性シートに対して45〜75°の傾斜角を有しているのが好ましい。
【0011】
前記スライド面の両端に、流下する水の幅を制御するためのガイドが設けられているのが好ましい。
【0012】
非導電性シートをエレクトレット化する本発明の方法は、
メッシュ状のコンベア上に載置した非導電性シートを搬送させながら、スライド面を帯状に流れ落ちる水を前記非導電性シート上に供給した後又は供給すると同時に、前記水を供給した側と反対面に配置した吸引ノズルにより、前記供給した水を吸引することによって非導電性シートに水を通過させ、その後前記シートを乾燥させることを特徴とする。
【0013】
前記非導電性シートはヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤を0.5〜5重量%含有しているのが好ましい。
【0014】
前記非導電性シートは合成繊維からなるシートであるのが好ましい。前記合成繊維からなるシートはメルトブロー不織布であるのが好ましい。
【0015】
前記非導電性シートはポリオレフィンを主体に構成されているのが好ましい。前記ポリオレフィンはポリプロピレンを主体に構成されているのが好ましい。
【0016】
前記水は水溶性有機溶剤を含有してもよい。前記水溶性有機溶剤は水よりも低い沸点を有するのが好ましい。
【0017】
前記水溶性有機溶剤はアルコール類又はケトン類を主成分に構成されているのが好ましい。前記水溶性有機溶剤はイソプロピルアルコール、エチルアルコール及びアセトンのうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0018】
前記非導電性シートをエレクトレット化する方法において、前記非導電性シートをあらかじめコロナ帯電によりエレクトレット化しておいても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造装置により、簡便な方法でかつ高品質で高性能なエレクトレット繊維シートの製造が可能になるため、特に、目付や充填率の低い強度の弱い不織布等の繊維シートであっても、破損等の品質低下を招かないで安価にエレクトレット化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1] エレクトレット加工品の製造装置
本発明のエレクトレット加工品の製造装置は、非導電性シートをエレクトレット化しエレクトレット加工品を製造するための装置であって、
前記非導電性シートを載置し水平方向に搬送するためのメッシュ状のコンベアと、
前記コンベアに載置された前記非導電性シートに帯状の水を付与するための水付与手段と、
前記コンベアの裏側に配置され、前記付与した水を前記非導電性シートの反対側から吸引するための吸引ノズルとを有し、
前記水付与手段が、水を帯状に流下させるためのスライド面と、前記スライド面の上流側に設けられたタンクと、前記タンクに水を供給する水供給部とからなり、
前記タンクからオーバーフローした水を前記スライド面に流下させることにより前記非導電性シートの幅方向に均一な帯状の水を供給することを特徴とする。
【0022】
エレクトレット加工品の製造装置の正面図、側面図及び斜視図をそれぞれ
図1、
図2及び
図3に示す。さらにエレクトレット加工品の製造装置に非導電性シートを搬送させた様子を
図4に斜視図で示す。エレクトレット加工品の製造装置1は、非導電性シートSを載置し水平方向に搬送するためのメッシュ状のコンベア2と、前記コンベア2に載置された非導電性シートSに帯状の水を付与するための水付与手段3と、前記コンベア2の裏側に配置され、前記付与した水を非導電性シートSの反対側から吸引するための吸引ノズル4とを有する。
【0023】
コンベア2は、3つの支持ロール51,52,53によって支持されており、モータ6の動力によって支持ロール51が駆動され、コンベア2が
図1及び
図2中で右から左に向かって(
図4中で右上から左下に向かって)移動することにより、非導電性シートSが搬送される。コンベアを支持及び駆動するための方法は、
図1及び
図2に記載した構成によるものに限らず適宜変更することができる。
【0024】
前記水付与手段3は、水を帯状に流下させるためのスライド面31と、前記スライド面31の上流側に設けられたタンク32と、前記タンク32に水を供給する水供給部33と、使用後に前記タンク32の水を排水するための排水孔34とを有し、前記タンク32に供給された水がスライド面31上部からオーバーフローしてスライド面31を流下するようにスライド面31上部のへり31aを他のへりよりも一段低く構成している。前記へり31aはスライド面31の幅方向に均一に水が流れるように水平に設けられている。スライド面31には、前記タンク32のへり31aから流れ出た水が一定の幅で流下するようにその流下方向の両側にガイド35,35が設けられている。前記スライド面31を流下した水は、スライド面31の下部からコンベア2によって搬送される非導電性シートS上に帯状(フィルム状)に付与(塗布)される。
【0025】
タンク32は、
図5に示すように、水供給部33が設けられた第一のタンク32aと、第一のタンク32aからオーバーフローした水を一旦溜めてスライド面31に流下させるための第二のタンク32bとを有する。第二のタンク32bは、第一のタンク32a側から順に、第二のタンク32bのほぼ下半分に設けられた第一のバッフル35aと、第二のタンク32bのほぼ上半分に設けられた第二のバッフル35bとを有する。第一のタンク32aから第二のタンク32bに流入した水は、第二のタンク32bに設けられた第一のバッフル35a及び第二のバッフル35bによって整流され、スライド面31上部のへり31aからオーバーフローしスライド面31を流下する。
【0026】
タンク内の水をさらに整流する必要がある場合は、バッフルの数を増やしたり、バッフルの高さを可変できる機構を追加して調整してもよい。また、へり31aの内側又は外側に、微調整用の板や塗工機などで使用されるワイヤーバーを設置して、さらに幅方向に均一に水が塗布されるように調整しても良い。
【0027】
水供給部33は、
図6(a)に示すように、第一のタンク32aの側面に直接配管を接続して設けても良いし、
図6(b)に示すように、多数の孔が設けられたパイプ部33aとその端部に設けられた供給管33bとにより構成されたものでも良い。供給管33bを設ける位置は、
図6(c)に示すように、パイプ部33aの中央であっても良い。幅の広い非導電性シートをエレクトレット化する場合は、幅方向の水の供給にムラができる場合があるので、
図6(c)に示すような構成が好ましい。
【0028】
水付与手段3を構成するスライド面31、タンク32及びガイド35は、強度及び精度を保つことのできる材質で構成される。例えば、金属、ガラス、セラミックス、プラスチック等の材料が好ましい。特にスライド面31は、水が幅方向に均一
に広がり
、非導電性シートS上で均一な帯状に広がるようにするため、濡れ性の良い材料で形成するのが好ましい。濡れ性の良い材料としては、金属、ガラス、セラミックス、プラスチック等の表面を親水化処理した材料、それらの表面に親水性の材料でコーティングしてなる材料等が挙げられる。スライド面31は、傾斜角度45〜75°であるのが好ましい。傾斜角度が45°より小さいと水の流れる勢いが弱く幅方向で水量が不均一になりやすい。またタンク32が浅くなるため、ある程度の水量を維持するためには水付与部分の底面積を大きくする必要があり、装置が大がかりになる。傾斜角度が75°より大きいと供給される水の勢いが強く、非導電性シートに損傷を与えるおそれがある。また、水はねの量が増えてスリットで十分に吸引できないために、非導電性シート上に残留する水分が多くなり、乾燥に余分なエネルギーがかかる。
【0029】
非導電性シートS上に帯状(フィルム状)に付与された水は、付与された直後、又は付与された後一定時間経過後、非導電性シートSの水を付与した面(上面)とは反対側の面(裏面)から吸引ノズル4の吸引力によって吸引されることにより、非導電性シートSの上面から裏面に通過し、この過程で非導電性シートSがエレクトレット化される。吸引ノズル4には、非導電性シートSとほぼ同じ幅で、非導電性シートSの搬送方向に垂直な方向に設けられたスリット41を有し、このスリット41により水を吸引する。図では、3連のスリット41a,41b,41cを有する吸引ノズル4が1つ配置されているが、スリットの数は特に限定されず、また吸引ノズル4を非導電性シートSの搬送方向に2つ以上並べて配置しても良い。
【0030】
水の塗布量(非導電性シートSの単位面積あたりに供給する量)は、水付与手段3によって供給される水の供給量と非導電性シートSの搬送速度とによって調節することができる。また付与してから吸引するまでの時間は、水付与手段3のスライド面31の位置から吸引ノズル4の位置までの距離と、非導電性シートSの搬送速度によって決まる。スライド面31の位置から吸引ノズルの位置までの距離は、吸引ノズル4に複数設けられたスリットのうち、どのスリットで吸引するかを選択することによって変更することができる。また吸引ノズル4の位置をずらして前記距離を変更しても良い。吸引ノズル4によって吸引する水の量は、タンク32に供給される水の量を流量計で計測し、その値をフィードバックして調整するのが好ましい。
【0031】
このようにスライド面31、タンク32及びガイド35からなる水付与手段3を用いることにより、従来のウォータージェット装置を用いた方法や、スリット状吐出口から水を供給する方法に比べて、簡便に多量の水を均一に供給することができるので、非導電性シートの品質を低下させず、十分な水を非導電性シートに通過させることができる。このため、本発明によって、高品質でかつ高性能なエレクトレット加工品を安価に製造することが可能となる。
【0032】
[2] 非導電性シートをエレクトレット化する方法
非導電性シートをエレクトレット化する本発明の方法は、
メッシュ状のコンベア上に載置した非導電性シートを搬送させながら、スライド面を帯状に流れ落ちる水を前記非導電性シート上に供給した後又は供給すると同時に、前記水を供給した側と反対面に配置した吸引ノズルにより、前記供給した水を吸引することによって前記非導電性シートに水を通過させ、その後前記シートを乾燥させることを特徴とする。
【0033】
非導電性シートのエレクトレット化は、前述したように非導電性シート(以下、単に「シート」と言うこともある。)の一方の面に水を供給し、その水を非導電性シートの他方の面に通過させ、その後前記シートを乾燥することによって行う。水は非導電性シート全体に均一に供給し通過させるのが好ましく、そのためには非導電性シート上に均一な膜面を形成するように水を付与することが重要である。このように均一な膜面を形成するように水を付与するには、本発明のエレクトレット加工品の製造装置を用いて、スライド面を帯状に流れ落ちる水を非導電性シート上に供給しながら非導電性シートを搬送す
る。
【0034】
(1)水の供給
水の供給量は、特に限定されないが、0.05 g/cm
2 以上であるのが好ましく、0.1 g/cm
2 以上であるのがより好ましい。水の供給量が0.05 g/cm
2 未満では十分な帯電効果が得られない場合がある。水の供給量の上限は、特に限定されないが、通常1 g/cm
2 以下であるのが好ましく、0.5 g/cm
2 以下であるのがより好ましい。水の供給量が1 g/cm
2 を超えると非導電性シートに残留する水が多くなるため、吸引ポンプの能力を大きくする必要が生じ、また後工程での乾燥にかかるエネルギー負荷が大きくなってしまう。
【0035】
非導電性シートの一方の面に供給した水は、供給と同時に、又は供給から一定の時間が経過後に、非導電性シートの他方の面から非導電性シートの幅方向に線状に形成された吸引ノズルによって吸引することによって水を非導電性シートの一方の面から他方の面へ通過させる。吸引ノズルは、メッシュ状のコンベアを介して非導電性シートの他方の面から水を吸引するように配置されているので、吸引ノズルが直接非導電性シートに接触することがない。そのため、非導電性シートに吸引器が擦れることにより非導電性シートに傷がつき、品質が低下するおそれがない。
【0036】
一方の面に水を供給した後、吸引するまでの経過時間は、水の供給箇所から非導電性シートの搬送方向に吸引ノズルを移動させて配置することによって設定することができる。例えば、水の供給箇所の真下に吸引ノズルを配置した場合、供給と同時に水の吸引が行われ吸引するまでの経過時間はゼロとなる。一方、吸引ノズルを水の供給箇所から搬送方向に距離x(m)ずらして配置した場合、非導電性シートの搬送速度をv(m/分)とすると、供給から吸引するまでの経過時間t(分)はt=x/vで表すことができる。前記経過時間tは、非導電性シートの濡れ性等によって適宜設定すればよいが、好ましくは0〜2秒、より好ましくは0〜1秒、最も好ましくは0〜0.5秒である。
【0037】
吸引ノズルの吸引圧力は、好ましくは-0.005〜-0.05 MPaの範囲であり、より好ましくは-0.006〜-0.04 MPaの範囲であり、最も好ましくは-0.01〜-0.03 MPaの範囲である。吸引圧力が-0.005 MPa未満の場合は吸引が不十分になり、-0.05 MPa超の場合は吸引が強すぎてシートが破れる場合がある。
【0038】
水を通過させた後のエレクトレット化されたシートの乾燥は、従来公知の方法がいずれも使用可能である。例えば、熱風乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥法等の方法を適用することができる。中でも熱風乾燥法は、連続処理が可能であるため好ましい。熱風乾燥法の場合、乾燥温度としてはエレクトレットを失活させない程度の温度にする必要がある。好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下で行う。熱風乾燥前に、予備乾燥として、ニップロール、吸水ロール、サクション吸引等によって余剰の水分を取り除くようにしてもよい。
【0039】
本発明において、非導電性シートに供給する水としては、通常の水道水又は工業用水をフィルター等で濾過したものを使用できる。着色していたり濁っていたりする水を使用する場合、イオン交換、蒸留、逆浸透膜での透過等で着色及び濁りを除去して使用するのが好ましい。
【0040】
非導電性シートに対する水の浸透性を一層向上させるために、水に水溶性有機溶剤を混合してもよい。水溶性有機溶剤を混合する場合、水溶性有機溶剤の濃度は20質量%以下であるのが好ましい。水に混合する水溶性有機溶剤としては、沸点が水の沸点より低いものが好ましい。沸点が水の沸点より低い水溶性有機溶剤は、水のシートへの浸透性を向上させると同時に、早く気化して乾燥することができる。水との沸点差は10℃以上であるのが好ましい。
【0041】
水溶性有機溶剤は、混合溶液の非導電性シートへの浸透性が良ければ特に限定されない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン類のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、その他アルデヒド類、カルボン酸類を挙げることができる。特に、浸透性の点からアルコール類又はケトン類が好ましく、アセトン、イソプロピルアルコール及びエタノールのうちの少なくとも1種を用いるのが好ましい。最も好ましくは、イソプロピルアルコールを主成分とするものである。
【0042】
(2) 非導電性シート
本発明に使用する非導電性シートは、非導電性を有する材料であれば特に限定されない。例えば、合成繊維又は天然繊維の織物、編み物、不織布等の繊維シートが挙げられる。これらの中でも合成繊維からなる繊維シートが好ましい。特に、エアフィルター用途には合成繊維不織布が好ましく、中でも高性能フィルター用途にはメルトブロー不織布が好ましい。
【0043】
非導電性シートを構成する素材は、非導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。好ましくは体積抵抗率が10
12・Ω・cm以上、さらに好ましくは10
14・Ω・cm以上の素材を主体とするものがよい。
【0044】
非導電性シートを構成する素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイト、フッ素系樹脂、これらの混合物等を挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィン又はポリ乳酸を主体とするものはエレクトレット性能の点から好ましく、さらにポリプロピレンを主体とするものは一層好ましい。
【0045】
本発明の水を通過させるエレクトレット化の方法においては、非導電性シートをあらかじめコロナ帯電等でエレクトレット化しておいてもよい。
【0046】
(3) 添加剤
本発明に使用する非導電性シートには、ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤を少なくとも1種配合することが好ましい。この添加剤を非導電性シートに含有させることにより、特に高いエレクトレット性能を保持させることが可能になる。
【0047】
ヒンダードアミン系添加剤としては、ポリ〔((6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)〕(BASF社製、キマソーブ944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASF社製、チヌビン622LD)、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASF社製、チヌビン144)などが挙げられる。
【0048】
トリアジン系添加剤としては、前述のポリ〔((6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)〕(BASF社製、キマソーブ944LD)、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール(BASF社製、チヌビン1577FF)などを挙げることができる。これらの中でも特にヒンダードアミン系添加剤が好ましい。
【0049】
非導電性シートには、上記添加剤の他に、熱安定剤、耐候剤、重合禁止剤、核剤等の一般にエレクトレット加工品の非導電性シートに使用されている添加剤を添加してもよい。
【0050】
前記ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤の添加量は、特に限定されないが、繊維100質量%に対して、好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは0.7〜3質量%である。添加量が0.5質量%未満では、十分な添加効果が得られない場合がある。5質量%を超えると製糸性や製膜性を悪化させ、かつコスト的にも不利になる。
【実施例】
【0051】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例1
添加剤としてトリアジン系添加剤(BASF社製、キマソーブ944LD)を1質量%含む、MFR=1550のポリプロピレンを原料として、メルトブロー法により目付30 g/m
2、厚み0.2 mm、平均繊維径2.5μmのメルトブロー不織布を製造した。なお平均繊維径、目付け及び厚みは後述する方法によって測定した。
【0053】
得られたメルトブロー不織布に、
図1に示すエレクトレット加工品製造装置を用い、水の供給量0.2 g/cm
2、搬送速度33 cm/秒、水を吸引するまでの時間0.1秒で水を浸透させ、最後に乾燥装置で乾燥して、エレクトレットメルトブロー不織布を製造した。得られたエレクトレットメルトブロー不織布の捕集性能(捕集効率及び圧力損失)を後述の方法によって測定したところ、捕集効率99.99%及び圧力損失25 Paであった。
【0054】
比較例1
実施例1と同じメルトブロー不織布を用い、大気下、電圧16 kV、電極間距離20 mmにおいてコロナ帯電を施した。得られたエレクトレットメルトブロー不織布の捕集性能を測定したところ、捕集効率98%及び圧力損失25 Paであった。
【0055】
(1)平均繊維径の測定
試験片の任意な5箇所を電子顕微鏡で撮影し、得られた5枚の写真について、1枚につき20本の繊維の直径を測定し、合計100本の繊維径を平均して求めた。
【0056】
(2)目付の測定
100×100 mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1 m
2当たりの質量を目付として求めた。
【0057】
(3)厚みの測定
100×100 mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
【0058】
(4)捕集効率の測定
0.3μmのNaCl粒子の試験用粉塵含有空気を31.8 L/minの流量で通過させ、JIS Z 8813に準じた光散乱光量積算方式により、通過前後の粉塵濃度を同時に連続的に測定し、次式:捕集効率(%)=[(通過前の粉塵濃度(mg/m
2)-通過後の粉塵濃度(mg/m
2))/(通過前の粉塵濃度(mg/m
2))]×100
により捕集効率を求めた。
【0059】
(5)圧力損失の測定
捕集効率の試験と並行してアネロイド式圧力計を用い、0.3μmのNaCl粒子の試験用粉塵含有空気の通過前後の圧力を測定し、その差圧を求めた。