特許第6842212号(P6842212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842212電池性能評価方法および電池性能評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842212
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】電池性能評価方法および電池性能評価装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20210308BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210308BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210308BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/371 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/374 20190101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01M10/42 P
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 Y
   G01R31/389
   G01R31/392
   G01R31/367
   G01R31/371
   G01R31/374
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-237234(P2019-237234)
(22)【出願日】2019年12月26日
【審査請求日】2020年10月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/187264(WO,A1)
【文献】 特開2012−220199(JP,A)
【文献】 特開2016−085062(JP,A)
【文献】 特開2007−187533(JP,A)
【文献】 特開平09−113588(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0372054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36−31/396
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により認識された前記第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記第1二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算要素と、
初期状態において前記第1二次電池と同一性能の二次電池として設計された第2二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該第2二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての実測出力電圧を認識する第2認識要素と、
前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧を計算する第2計算要素と、
前記第2認識要素により認識された前記実測出力電圧および前記第2計算要素により計算された前記モデル出力電圧対比結果に基づき、前記第2二次電池の性能を評価する電池性能評価要素と、を含んでいることを特徴とする電池性能評価装置。
【請求項2】
請求項1記載の電池性能評価装置において、
前記第1認識要素が、前記第1二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、
前記第2認識要素が、前記第2二次電池の前記出力電圧に加えて当該第2二次電池の温度の計測結果を認識し、
前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記第2認識要素により認識された前記二次電池の温度の計測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を計算することを特徴とする電池性能評価装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の電池性能評価装置において、
前記第1認識要素が、前記第1二次電池が電源として搭載されている第1対象機器との相互通信に基づき、前記第1対象機器に搭載されている測定機器によって交流インピーダンス法にしたがって測定された前記第1二次電池の複素インピーダンスを認識することを特徴とする電池性能評価装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の電池性能評価装置において、
前記第2認識要素が、前記第2二次電池が電源として搭載されている第2対象機器との相互通信に基づき、前記第2対象機器に搭載されているインパルス電流発生器により発生されたインパルス電流が、前記第2対象機器に搭載されているセンサにより測定された前記第2二次電池の電圧応答特性を認識することを特徴とする電池性能評価装置。
【請求項5】
第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識工程と、
前記第1認識工程において認識された前記第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記第1二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算工程と、
初期状態において前記第1二次電池と同一性能の二次電池として設計された第2二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該第2二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての実測出力電圧を認識する第2認識工程と、
前記第1計算工程において前記パラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧を計算する第2計算工程と、
前記第2認識工程において認識された前記実測出力電圧および前記第2計算工程において計算された前記モデル出力電圧対比結果に基づき、前記第2二次電池の性能を評価する電池性能評価工程と、を含んでいることを特徴とする電池性能評価方法。
【請求項6】
請求項5記載の電池性能評価方法において、
前記第1認識工程において、前記第1二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算工程において、前記第1認識工程において認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、
前記第2認識工程において、前記第2二次電池の前記出力電圧に加えて当該第2二次電池の温度の計測結果を認識し、
前記第2計算工程において、前記第1計算工程において前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記第2認識工程において認識された前記二次電池の温度の計測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を計算することを特徴とする電池性能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池の性能を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の内部抵抗を抵抗RとキャパシタCの並列回路を多段に接続して等価回路を構成し、電流−電圧の挙動波形の変化を論じている。しかしながら電圧の数秒以上の過渡応答波形を説明するには時定数要素としてのキャパシタ容量値が数100Fから数1000Fの値を用いざるを得ない。このような値は、電池のAC特性の評価方法であるACインピーダンスとその等価回路モデルとは対応できない数値であり、電池の性状を再現しているとは言いがたい。
【0003】
二次電池の特性項目として内部抵抗がある。たとえばリチウムイオン二次電池(以下LIB二次電池)においては、電池内部における電極反応、SEI反応、イオンの拡散反応等複雑な化学反応が絡み合って生じているため、電池電圧の挙動も内部抵抗を単なる直流抵抗と見なしてオームの法則を適用できる類いではない。
【0004】
電池の内部抵抗を強化する方法としては、従来より周波数応答解析法(FRA: Frequency Response Analysis)に基づくACインピーダンス解析法がよく知られており、様々な内部反応を等価回路のモデルを適用して、いくつかの時定数要素に分解して解釈する方法が確立している。電池の秒のオーダーの挙動はワールブルグ(Warburg)抵抗としての拡散現象が支配的影響を占めており、このワールブルグ抵抗を如何に動作モデルとして組み込めるかが、モデルとしての性能を決定している。ACインピーダンス測定を行うには周波数応答アナライザ(FRA)のような専用装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第第5924617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実用時には二次電池は負荷と接続されており、充電および放電の繰り返しが行われており、その場合には二次電池の状態を知るための基礎情報としては電圧、電流および温度のみが測定される。このような状況下において、電池の出力電圧は内部抵抗に影響され、また内部抵抗自体も温度条件または電池の劣化度によって変化しており、実動作状態の電池の特性を詳しく解析する手段が必要とされていた。
【0007】
そこで、本発明は、二次電池の電池性能評価の精度向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電池性能評価装置は、
第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により認識された前記第1二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記第1二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算要素と、
初期状態において前記第1二次電池と同一性能の二次電池として設計された第2二次電池に対して、インパルス電流が入力された際に当該第2二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての実測出力電圧を認識する第2認識要素と、
前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際に当該二次電池モデルから出力される電圧の変化態様としてのモデル出力電圧を計算する第2計算要素と、
前記第2認識要素により認識された前記実測出力電圧および前記第2計算要素により計算された前記モデル出力電圧対比結果に基づき、前記第2二次電池の性能を評価する電池性能評価要素と、
を含んでいることを特徴とする。
【0009】
本発明の電池性能評価装置において、前記第1認識要素が、前記第1二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、前記第2認識要素が、前記第2二次電池の前記実測出力電圧に加えて当該第2二次電池の温度の計測結果を認識し、前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記インパルス電流に加えて前記第2認識要素により認識された前記二次電池の温度の計測結果が入力された際の前記モデル出力電圧を計算することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態としての電池性能評価装置の構成に関する説明図。
図2】二次電池の電池性能評価方法の手順を示すフローチャート。
図3】二次電池の複素インピーダンスの測定システムに関する説明図。
図4】二次電池のナイキストプロットに関する説明図。
図5A】二次電池の内部抵抗の等価回路の第1例示説明図。
図5B】二次電池の内部抵抗の等価回路の第2例示説明図。
図6A】IIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図6B】FIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図7A】インパルス電流に関する説明図。
図7B】二次電池および二次電池モデルの電圧応答特性に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(電池性能評価装置の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての電池性能評価装置100は、データベース10および対象機器200のそれぞれとネットワークを介して通信可能な一または複数のサーバにより構成されている。電池性能評価装置100は、対象機器200に電源として搭載されている二次電池220の性能を評価する。
【0012】
電池性能評価装置100は、第1認識要素111と、第2認識要素112と、第1計算要素121と、第2計算要素122と、電池性能評価要素130と、情報提供要素132と、を備えている。第1認識要素111、第2認識要素112、第1計算要素121、第2計算要素122、電池性能評価要素130および情報提供要素132のそれぞれは、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、インパルス電流に対する二次電池220の電圧応答特性の測定結果などの様々なデータのほか、プログラム(ソフトウェア)が記憶保持されている。例えば、二次電池220またはこれが搭載されている対象機器200の種類(規格および諸元により特定される。)を識別するための複数の識別子のそれぞれと、複数の二次電池モデルのそれぞれとが対応付けられてメモリに記憶保持されている。プロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、各要素111、112、121、122、130および132に割り当てられた後述する演算処理またはタスクが実行される。
【0013】
対象機器200は、入力インターフェース202と、出力インターフェース204と、制御装置210と、二次電池220と、センサ群230と、を備えている。対象機器200は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、家電製品または電動自転車等の移動体など、二次電池220を電源とするあらゆる機器を含んでいる。
【0014】
制御装置210は、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、二次電池220の電圧応答特性の計測結果などの様々なデータが記憶保持される。制御装置210は、二次電池220から供給電力に応じて作動し、通電状態において対象機器200の動作を制御する。対象機器200の動作には、当該対象機器200を構成するアクチュエータ(電動式アクチュエータなど)の動作が含まれる。制御装置210を構成するプロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって割り当てられた演算処理を実行する。
【0015】
二次電池220は、例えばリチウムイオンバッテリであり、ニッケル・カドミウム電池等のその他の二次電池であってもよい。センサ群230は、二次電池220の電圧応答特性および温度のほか、対象機器200の制御に必要なパラメータの値を測定する。センサ群230は、例えば二次電池220の電圧、電流および温度のそれぞれに応じた信号を出力する電圧センサ、電流センサおよび温度センサにより構成されている。
【0016】
電池性能評価装置100は対象機器200に搭載されていてもよい。この場合、ソフトウェアサーバ(図示略)が、対象機器200が備えている制御装置210を構成する演算処理装置に対して劣化判定用ソフトウェアを送信することにより、当該演算処理装置に対して電池性能評価装置100としての機能を付与してもよい。
【0017】
(電池性能評価方法)
前記構成の電池性能評価装置100により実行される二次電池220の電池性能評価方法について説明する。
【0018】
(複素インピーダンスの測定結果の認識)
電池性能評価装置100において、第1認識要素111により、さまざまな種類の二次電池(第1二次電池221)の複素インピーダンスZの測定結果が認識される(図2/STEP112)。各要素が情報を「認識する」とは、情報を受信すること、データベース10等の情報源から情報を検索することもしくは読み取ること、他の情報に基づいて情報を算定、推定等することなど、必要な情報を準備するあらゆる演算処理等を実行することを意味する。第1二次電池221の複素インピーダンスZは、交流インピーダンス法により測定され、当該測定結果は第1二次電池221の種類を識別するための識別子と関連付けられてデータベース10に登録される。
【0019】
交流インピーダンス法によれば、図3に示されているように、周波数応答解析装置(FRA)212およびポテンショガルバノスタット(PGS)232の組み合わせが用いられる。FRA212構成する発振器から任意の周波数の正弦波信号が出力され、当該正弦波信号に応じた第1二次電池221の電流信号I(t)および電圧信号V(t)がPGS232からFRA212に入力される。そして、FRA212において、電流信号I(t)および電圧信号V(t)が離散フーリエ周波数変換によって周波数領域のデータに変換され、周波数f=(ω/2π)における複素インピーダンスZが測定される。
【0020】
例えば二次電池220の出荷直前等、対象機器200に搭載されていない状態における第1二次電池221の複素インピーダンスZが測定される。そのほか、対象機器200に搭載されている状態における第1二次電池221としての二次電池220の複素インピーダンスZが測定されてもよい。この場合、制御装置210によりFRA212が構成され、センサ群230がPGSにより構成されていてもよい。例えば、対象機器200が二次電池220の充電のために商用電源等の電源に接続され、当該電源から供給される電力によって正弦波信号が出力されうる。
【0021】
図4には、第1二次電池221の複素インピーダンスZの実測結果を表わすナイキストプロットの一例が、当該プロットの近似曲線とともに示されている。横軸は複素インピーダンスZの実部ReZであり、縦軸は複素インピーダンスZの虚部−ImZである。−ImZ>0の領域においてReZが大きくなるほど低周波数の複素インピーダンスZを表わしている。−ImZ=0におけるReZの値は第1二次電池221の電解液中の移動抵抗に相当する。−ImZ>0の領域における略半円形状の部分の曲率半径は、第1二次電池221の電荷移動抵抗に相当する。当該曲率半径は、第1二次電池221の温度Tが高温になるほど小さくなる傾向がある。−ImZ>0の領域の低周波数領域において約45°で立ち上がる直線状の部分には、第1二次電池221のワールブルグインピーダンスの影響が反映されている。
【0022】
(二次電池モデルの確立)
電池性能評価装置100において、第1計算要素121により、第1認識要素111により認識された第1二次電池221の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値が同定される(図2/STEP114)。
【0023】
二次電池モデルは、電流I(t)が二次電池220に入力された際に当該二次電池220から出力される電圧V(t)を表わすモデルである。二次電池220の開放電圧OCVおよび内部抵抗の伝達関数H(t)を用いて関係式(01)により定義される。
【0024】
V(t)=OCV(t)+H(t)・I(t) ‥(01)。
ここでOCV(t)は、電流I(t)の充電および/または放電に伴い開放電圧が増減することを表わしている。
【0025】
二次電池の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(t)は関係式(02)により定義される。
【0026】
H(t)=H0(t)+Σi=1-mi(t)+HW(t)+HL(t) ‥(02)。
【0027】
「H0(t)」、「Hi(t)」、「HW(t)」および「HL(t)」は、二次電池の内部抵抗の特性を表わすパラメータにより定義されている。
【0028】
図5Aには、二次電池220の内部抵抗の等価回路の一例が示されている。この例では、内部抵抗の等価回路は、電解液中の移動抵抗に相当する抵抗R0、電荷移動抵抗に相当する抵抗RiおよびキャパシタCiからなる第iのRC並列回路(i=1,2,‥,m)、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0、ならびに、コイルLの直列回路により定義されている。直列接続されるRC並列回路の数は、図5Aに示した実施例では「3」であったが、3より小さくてもよく、3より大きくてもよい。抵抗W0は、少なくともいずれか1つのRC並列回路において抵抗Rと直列接続されていてもよい。キャパシタCがCPE(Constant Phase Element)に置換されていてもよい。図5Bに示されているよう、ワールブルグ抵抗Wが少なくとも1つのRC並列回路(図5Bの例では第1のRC並列回路)の抵抗Rと直列接続されてもよい。
抵抗R0の伝達関数H0(z)は関係式(03)により定義されている。
【0029】
0(z)=R0 ‥(03)。
【0030】
第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)はIIR(Infinite Impulse Response)システム(無限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(03)により定義されている。図6Aには、第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0031】
i(z)=(b0+bi-1)/(1+ai-1) ‥(03)。
【0032】
ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)はFIR(Finite Impulse Response)システム(有限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(04)により定義されている。図6Bには、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0033】
W(z)=Σk=0-nk-k ‥(04)。
【0034】
コイルLの伝達関数HL(z)は関係式(05)により定義されている。
【0035】
L(z)=(2L0/T)(1−z-1)/(1+z-1) ‥(05)。
【0036】
図4に実線で示されているナイキストプロットにより表わされる二次電池の複素インピーダンスZの近似曲線を求める際、関係式(02)にしたがって二次電池の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(z)が定義されるという仮定下で求められる。これにより、パラメータR0、ai、b0、bi、hk、L0およびTの値が求められる(関係式(03)〜(05)参照)。開放電圧OCVの測定値により二次電池モデルにおける開放電圧OCVの値が同定される(関係式(01)参照)。そして、当該パラメータの値により二次電池モデルが様々な種類の二次電池220について確立される。
【0037】
(二次電池性能評価)
対象機器200において、通電状態の制御装置210により第1条件が満たされているか否かが判定される(図2/STEP212)。「第1条件」としては、対象機器200において入力インターフェース202を通じて二次電池220の電池性能評価の要請があったこと、対象機器200が二次電池220の充電のために外部電源に接続されたことなどの条件が採用される。
【0038】
第1条件が満たされていないと判定された場合(図2/STEP212‥NO)、第1条件の充足性判定処理が再び実行される(図2/STEP212)。第1条件の充足性判定処理(図2/STEP212)は省略されてもよい。
【0039】
第1条件が満たされていると判定された場合(図2/STEP212‥YES)、図7Aに示されているようなインパルス電流I(t)が二次電池220に対して入力される(図2/STEP214)。インパルス電流I(t)の波形信号は、電池性能評価装置100および対象機器200の相互通信によって、第2認識要素112により指定されたものであってもよい。例えば、対象機器200が接続された外部電源からの供給電力により、対象機器200に搭載されているパルス電流発生器が駆動されることにより、当該パルス電流発生器において発生されたインパルス電流I(t)が二次電池220に対して入力される。インパルス電流発生のための補助電源が対象機器200に搭載されていてもよい。
【0040】
センサ群230の出力信号に基づき、制御装置210により二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Tが測定される(図2/STEP216)。これにより、例えば、図7Bに実線で示されているように変化する二次電池220の電圧応答特性V(t)が測定される。
【0041】
続いて、制御装置210により第2条件が満たされているか否かが判定される(図2/STEP218)。「第2条件」としては、電圧応答特性V(t)を特定するために十分な波形信号が取得されたこと、最後に第1条件が満たされたと判定された第1時点から所定時間が経過した第2時点に至ったこと、対象機器200において入力インターフェース202を通じて二次電池220の電池性能評価の要請があったことなどの条件が採用される。
【0042】
第2条件が満たされていないと判定された場合(図2/STEP218‥NO)、第1条件の充足性判定処理が再び実行される(図2/STEP212)。第2条件の充足性判定処理(図2/STEP218)は省略されてもよい。
【0043】
第2条件が満たされていると判定された場合(図2/STEP218‥YES)、二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Tの測定結果が、出力インターフェース204を構成する送信装置により対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信される(図2/STEP220)。この際、二次電池220の種類(規格、諸元)を識別するための識別子IDも対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信される。また、電圧応答特性V(t)が測定された際に二次電池220に入力されたインパルス電流I(t)を特定するための測定条件情報が対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信されてもよい。
【0044】
電池性能評価装置100において、第2認識要素112により、二次電池220の電圧応答特性V(t)および温度Tの測定結果が第2測定結果として認識される(図2/STEP122)。
【0045】
第2計算要素122により、データベース10に登録されている多数の二次電池モデルの中から、第2測定結果に付随する識別子IDおよび第2測定結果に含まれている温度Tの測定結果のそれぞれに関連付けられている一の二次電池モデルが選定される(図2/STEP124)。
【0046】
さらに、第2計算要素122により、当該選定された二次電池モデルに対して、インパルス電流I(t)が入力される(図2/STEP126)。インパルス電流I(t)は、第2認識要素112により指定された波形信号に基づいて認識されてもよく、対象機器200から電池性能評価装置100に対して送信された測定条件情報に基づいて認識されてもよい。
【0047】
第2計算要素122により、二次電池モデルから出力される電圧応答特性Vmodel(t)が当該二次電池モデルの出力信号として計算される(図2/STEP128)。これにより、例えば、図7Bに破線で示されているように変化する二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)が二次電池モデルの出力信号として計算される。図7Bには、開放電圧OCV(t)の変化態様が一点鎖線で示されている。
【0048】
続いて、電池性能評価要素130により、二次電池220(第2二次電池222)の電圧応答特性V(t)および二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)の対比結果に基づき、当該二次電池220の性能が評価される(図2/STEP130)。例えば、二次電池220(第2二次電池222)の電圧応答特性V(t)および二次電池モデルの電圧応答特性Vmodel(t)のそれぞれを表わす曲線の類似度xが計算される。そして、類似度xを主変数とする減少関数fにしたがって、二次電池220の劣化度D(i)=f(x)が計算される(「i」は二次電池220の種類の別を意味する指数である)。
【0049】
電池性能評価要素130により、二次電池220の劣化度D(i)に応じた劣化診断情報Info(D(i))が生成される(図2/STEP132)。電池性能評価要素130により、診断情報Info(D(i))が電池性能評価装置100から対象機器200に対して送信される(図2/STEP134)。
【0050】
対象機器200において、入力インターフェース202を構成する受信装置が劣化診断情報Info(D(i))が受信される(図2/STEP222)。出力インターフェース204を構成するディスプレイ装置に、劣化診断情報Info(D(i))が出力表示される(図2/STEP224)。これにより、二次電池220の劣化度D(i)を示すグラフ表示のほか、「バッテリーの劣化度は30%です。あと150日で交換することをおススメします。」といった劣化度D(i)に応じた対処方法などに関するメッセージがディスプレイ装置に表示される。
【0051】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、第1二次電池221および第2二次電池222のそれぞれの電圧応答特性V(T)の測定時の温度Tが勘案されたうえで二次電池モデルが選定され、当該第2二次電池222の性能が評価されたが、他の実施形態として、第1二次電池221および第2二次電池222のそれぞれの電圧応答特性V(T)の測定時の温度Tが勘案されずに、種類を表わす識別子に基づいて二次電池モデルが選定され、当該第2二次電池222の性能が評価されてもよい。
(発明の効果)
【0052】
本発明に係る電池性能評価装置100およびこれにより実行される電池性能評価方法によれば、第1二次電池221の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値が同定される(図2/STEP112〜STEP114、図2図5図6Aおよび図6B参照)。二次電池モデルは、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により第1二次電池221の内部抵抗のインピーダンスが表現されている(関係式(03)、(04)、図2図5図6Aおよび図6B参照)。また、第2二次電池222としての二次電池220に対して、インパルス電流I(t)が入力された際に当該第2二次電池222から出力される電圧応答特性V(t)と、パラメータの値が同定された二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際のモデル電圧応答特性Vmodel(t)との対比結果に基づき、第2二次電池222の性能が評価される(図7B参照)。
【0053】
第2二次電池222は、初期状態において第1二次電池221と同一性能の二次電池220として設計されているため、第1二次電池221の性能を基準とした第2二次電池222の性能が評価されうる。例えば、第1二次電池221が第2二次電池222と同一の二次電池220である場合、第2二次電池222としてインパルス電流I(t)に対する応答特性が測定された時点における、当該第1二次電池221の初期状態を基準とした劣化状態が判定されうる。
【符号の説明】
【0054】
10‥データベース、100‥電池性能評価装置、111‥第1認識要素、112‥第2認識要素、121‥第1計算要素、122‥第2計算要素、130‥電池性能評価要素、200‥対象機器、202‥入力インターフェース、204‥出力インターフェース、210‥制御装置、220‥二次電池、221‥第1二次電池、222‥第2二次電池、230‥センサ群。
【要約】
【課題】二次電池の電池性能評価の精度向上を図りうる装置等を提供する。
【解決手段】第1二次電池221の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値が同定される。二次電池モデルは、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により第1二次電池221の内部抵抗のインピーダンスが表現されている。また、第2二次電池222としての二次電池220に対して、インパルス電流I(t)が入力された際に当該第2二次電池222から出力される電圧応答特性V(t)と、パラメータの値が同定された二次電池モデルに対して、前記インパルス電流が入力された際のモデル電圧応答特性Vmodel(t)との対比結果に基づき、第2二次電池222の性能が評価される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B