特許第6842213号(P6842213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842213模擬電池構築方法および模擬電池構築装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842213
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】模擬電池構築方法および模擬電池構築装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20210308BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210308BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20210308BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20210308BHJP
【FI】
   H01M10/48 P
   H01M10/48 301
   H02J7/00 Q
   H02J7/00 Y
   G01R31/367
   G01R31/389
   G01R31/392
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-238569(P2019-238569)
(22)【出願日】2019年12月27日
【審査請求日】2020年10月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 一郎
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−122917(JP,A)
【文献】 特開2013−160613(JP,A)
【文献】 特開2012−220199(JP,A)
【文献】 特開2016−176924(JP,A)
【文献】 特開昭53−070344(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0372054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R31/36−31/396
H01M10/42−10/48
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識要素と、
前記第1認識要素により認識された前記二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算要素と、
電流指令値の時系列を認識する第2認識要素と、
前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列を、前記二次電池モデルに入力することにより、前記二次電池モデルの出力としての電圧の時系列を計算する第2計算要素と、
前記第2計算要素により計算された電圧の時系列が指定機器に印加されるように、当該指定機器に接続された模擬電池の動作を制御する模擬電池制御要素と、を備えていることを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項2】
請求項1記載の模擬電池構築装置において、
前記第1認識要素が、前記二次電池の異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性を特定し、
前記第2認識要素が、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池の劣化状態の時系列を認識し、
前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池の劣化状態の時系列が入力された際のモデル出力電圧を計算することを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項3】
請求項2記載の模擬電池構築装置において、
前記第1認識要素が、第1指定時点および当該第1指定時点よりも後の前記二次電池の複素インピーダンスの測定時点である第2指定時点のそれぞれにおいて、前記二次電池に対してインパルス電流が入力された際に当該二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての第1実測出力電圧および第2実測出力電圧のそれぞれを認識し、かつ、前記第1実測出力電圧および前記第2実測出力電圧の対比に基づき、前記第1指定時点における前記二次電池を基準とした前記第2指定時点における前記二次電池の劣化状態を認識することを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項4】
請求項3記載の模擬電池構築装置において、
前記第1認識要素が、前記二次電池が電源として搭載されている指定機器との相互通信に基づき、前記指定機器に搭載されているインパルス電流発生器により発生されたインパルス電流が前記二次電池に入力された際に、当該二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての前記第1実測出力電圧および前記第2実測出力電圧のそれぞれとして、前記指定機器に搭載されているセンサにより測定された前記二次電池の電圧応答特性を認識することを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の模擬電池構築装置において、
前記第1認識要素が、前記二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、
前記第2認識要素が、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果を認識し、
前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果が入力された際のモデル出力電圧を計算することを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の模擬電池構築装置において、
前記第1認識要素が、前記二次電池が電源として搭載されている指定機器との相互通信に基づき、前記指定機器に搭載されている測定機器によって交流インピーダンス法にしたがって測定された前記二次電池の複素インピーダンスを認識することを特徴とする模擬電池構築装置。
【請求項7】
二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識工程と、
前記第1認識工程において認識された前記二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算工程と、
電流指令値の時系列を認識する第2認識工程と、
前記第2認識工程において認識された前記電流指令値の時系列を、前記二次電池モデルに入力することにより、前記二次電池モデルの出力としての電圧の時系列を計算する第2計算工程と、
前記第2計算工程において計算された電圧の時系列が指定機器に印加されるように、当該指定機器に接続された模擬電池の動作を制御する模擬電池制御工程と、を含んでいることを特徴とする模擬電池構築方法。
【請求項8】
請求項7記載の模擬電池構築方法において、
前記第1認識工程において、前記二次電池の異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算工程において、前記第1認識工程において認識された前記二次電池の前記異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性を特定し、
前記第2認識工程において、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池の劣化状態の時系列を認識し、
前記第2計算工程において、前記第1計算工程において前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識工程において認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池の劣化状態の時系列が入力された際のモデル出力電圧を計算することを特徴とする模擬電池構築方法。
【請求項9】
請求項8記載の模擬電池構築方法において、
前記第1認識工程において、第1指定時点および当該第1指定時点よりも後の前記二次電池の複素インピーダンスの測定時点である第2指定時点のそれぞれにおいて、前記二次電池に対してインパルス電流が入力された際に当該二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての第1実測出力電圧および第2実測出力電圧のそれぞれを認識し、かつ、前記第1実測出力電圧および前記第2実測出力電圧の対比に基づき、前記第1指定時点における前記二次電池を基準とした前記第2指定時点における前記二次電池の劣化状態を認識することを特徴とする模擬電池構築方法。
【請求項10】
請求項7〜9のうちいずれか1項に記載の模擬電池構築方法において、
前記第1認識工程において、前記二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、
前記第1計算工程において、前記第1認識工程において認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、
前記第2認識工程において、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果を認識し、
前記第2計算工程において、前記第1計算工程において前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識工程において認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果が入力された際のモデル出力電圧を計算することを特徴とする模擬電池構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオンバッテリ等の二次電池の性能を模擬する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の内部抵抗を抵抗RとキャパシタCの並列回路を多段に接続して等価回路を構成し、電流−電圧の挙動波形の変化を論じている。しかしながら電圧の数秒以上の過渡応答波形を説明するには時定数要素としてのキャパシタ容量値が数100Fから数1000Fの値を用いざるを得ない。このような値は、電池のAC特性の評価方法であるACインピーダンスとその等価回路モデルとは対応できない数値であり、電池の性状を再現しているとは言いがたい。
【0003】
二次電池の特性項目として内部抵抗がある。たとえばリチウムイオン二次電池(以下LIB二次電池)においては、電池内部における電極反応、SEI反応、イオンの拡散反応等複雑な化学反応が絡み合って生じているため、電池電圧の挙動も内部抵抗を単なる直流抵抗と見なしてオームの法則を適用できる類いではない。
【0004】
電池の内部抵抗を強化する方法としては、従来より周波数応答解析法(FRA: Frequency Response Analysis)に基づくACインピーダンス解析法がよく知られており、様々な内部反応を等価回路のモデルを適用して、いくつかの時定数要素に分解して解釈する方法が確立している。電池の秒のオーダーの挙動はワールブルグ(Warburg)抵抗としての拡散現象が支配的影響を占めており、このワールブルグ抵抗を如何に動作モデルとして組み込めるかが、モデルとしての性能を決定している。ACインピーダンス測定を行うには周波数応答アナライザ(FRA)のような専用装置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第第5924617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、実用時には二次電池は負荷と接続されており、充電および放電の繰り返しが行われており、その場合には二次電池の状態を知るための基礎情報としては電圧、電流および温度のみが測定される。このような状況下において、電池の出力電圧は内部抵抗に影響され、また内部抵抗自体も温度条件または電池の劣化度によって変化しており、実動作状態の電池の特性を精度よく再現する手段が必要とされていた。
【0007】
そこで、本発明は、模擬電池による二次電池の特性の様々な条件下での再現精度の向上を図りうる装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る模擬電池構築装置は、二次電池の複素インピーダンスの測定結果を認識する第1認識と、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の複素インピーダンスの測定結果に基づき、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により前記二次電池の内部抵抗のインピーダンスが表現されている二次電池モデルのパラメータの値を同定する第1計算要素と、電流指令値の時系列を認識する第2認識要素と、前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列を、前記二次電池モデルに入力することにより、前記二次電池モデルの出力としての電圧の時系列を計算する第2計算要素と、前記第2計算要素により計算された電圧の時系列が指定機器に印加されるように、当該指定機器に接続された模擬電池の動作を制御する模擬電池制御要素と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の模擬電池構築装置において、前記第1認識要素が、前記二次電池の異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる劣化状態のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性を特定し、前記第2認識要素が、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池の劣化状態の時系列を認識し、前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の前記二次電池の劣化状態に対する依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池の劣化状態の時系列が入力された際のモデル出力電圧を計算することが好ましい。
【0010】
本発明の模擬電池構築装置において、前記第1認識要素が、第1指定時点および当該第1指定時点よりも後の前記二次電池の複素インピーダンスの測定時点である第2指定時点のそれぞれにおいて、前記二次電池に対してインパルス電流が入力された際に当該二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての第1実測出力電圧および第2実測出力電圧のそれぞれを認識し、かつ、前記第1実測出力電圧および前記第2実測出力電圧の対比に基づき、前記第1指定時点における前記二次電池を基準とした前記第2指定時点における前記二次電池の劣化状態を認識することが好ましい。
【0011】
本発明の模擬電池構築装置において、前記第1認識要素が、前記二次電池が電源として搭載されている指定機器との相互通信に基づき、前記指定機器に搭載されているインパルス電流発生器により発生されたインパルス電流が前記二次電池に入力された際に、当該二次電池から出力される電圧の変化態様の計測結果としての前記第1実測出力電圧および前記第2実測出力電圧のそれぞれとして、前記指定機器に搭載されているセンサにより測定された前記二次電池の電圧応答特性を認識することが好ましい。
【0012】
本発明の模擬電池構築装置において、前記第1認識要素が、前記二次電池の異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果を認識し、前記第1計算要素が、前記第1認識要素により認識された前記二次電池の前記異なる温度のそれぞれにおける複素インピーダンスの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータの値の温度依存性を特定し、前記第2認識要素が、前記電流指令値の時系列に加えて前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果を認識し、前記第2計算要素が、前記第1計算要素により前記パラメータの値が同定され、かつ、当該パラメータの値の温度依存性が同定された前記二次電池モデルに対して、前記第2認識要素により認識された前記電流指令値の時系列および前記模擬電池または前記指定機器の温度の計測結果が入力された際のモデル出力電圧を計算することが好ましい。
【0013】
本発明の模擬電池構築装置において、前記第1認識要素が、前記二次電池が電源として搭載されている指定機器との相互通信に基づき、前記指定機器に搭載されている測定機器によって交流インピーダンス法にしたがって測定された前記二次電池の複素インピーダンスを認識することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態としての模擬電池構築装置の構成に関する説明図。
図2】模擬電池の構成の一例に関する説明図。
図3】二次電池の模擬電池構築方法の準備手順を示すフローチャート。
図4】二次電池の模擬電池構築方法の手順を示すフローチャート。
図5】二次電池の複素インピーダンスの測定システムに関する説明図。
図6】二次電池のナイキストプロットに関する説明図。
図7A】二次電池の内部抵抗の等価回路の第1例示説明図。
図7B】二次電池の内部抵抗の等価回路の第2例示説明図。
図8A】IIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図8B】FIRシステムの伝達関数を表わすダイヤグラム。
図9A】インパルス電流に関する説明図。
図9B】二次電池および二次電池モデルの電圧応答特性に関する説明図。
図10】電流指令値から電圧指令値の計算結果に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(模擬電池構築装置の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としての模擬電池構築装置100は、データベース10、模擬電池20および指定機器200のそれぞれとネットワークを介して通信可能な一または複数のサーバにより構成されている。模擬電池構築装置100は、模擬電池20から指定機器200に印加される電圧を制御する。データベース10は、模擬電池構築装置100の構成要素であってもよい。
【0016】
模擬電池構築装置100は、第1認識要素111と、第2認識要素112と、第1計算要素121と、第2計算要素122と、模擬電池制御要素140と、を備えている。第1認識要素111、第2認識要素112、第1計算要素121、第2計算要素122および模擬電池制御要素140のそれぞれは、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。
【0017】
メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、インパルス電流に対する二次電池220の電圧応答特性の測定結果などの様々なデータのほか、プログラム(ソフトウェア)が記憶保持されている。例えば、二次電池220またはこれが搭載されている指定機器200の種類(規格および諸元により特定される。)を識別するための複数の識別子のそれぞれと、複数の二次電池モデルのそれぞれとが対応付けられてメモリに記憶保持されている。プロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがった演算処理を実行することにより、模擬電池構築装置100を構成する各要素111、112、121、122および140に割り当てられた後述する演算処理またはタスクが実行される。
【0018】
図2に示されているように、模擬電池20は、D/Aコンバータ21と、増幅器22と、を備えている。D/Aコンバータ21は、二次電池モデルから出力される電圧指令値Vcmd(t)が入力されると、これをD/A変換する。増幅器22は、D/Aコンバータ21からの出力に応じた電圧V(t)を指定機器200またはこれを構成する負荷に対して印加する。「(t)」は、時刻tにおける値または時系列を意味する。
【0019】
二次電池モデルに相当する計算器(第2計算要素122)は、計算器1221と、出力器1222と、加算器1224と、を備えている。計算器1221は、電流指令値Icmd(t)が入力されると、模擬電池20の仮想的な内部抵抗に由来する出力電圧を算定する。電流指令値Icmd(t)は、指定機器200から付与されてもよい。計算器1221の伝達関数Hを定義するパラメータの値は、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の劣化度D(n2)に基づき、モデルパラメータ調整要素1220により調節される。出力器1222は、模擬電池20の仮想的な開放電圧OCV(t)を出力する。加算器1224は、計算器1221および出力器1222のそれぞれの出力を加算する。
【0020】
模擬電池20は、指定機器200が接続される商用電源などの外部電源によって構成されていてもよい。模擬電池20は、二次電池220に代えて指定機器200に搭載されてもよい。模擬電池20は、第2計算要素122を備えていてもよい。この場合、指定機器200を構成する制御装置210により第2計算要素122が構成されていてもよい。
【0021】
指定機器200は、入力インターフェース202と、出力インターフェース204と、制御装置210と、二次電池220と、センサ群230と、を備えている。指定機器200は、パソコン、携帯電話(スマートフォン)、家電製品または電動自転車等の移動体など、二次電池220を電源とするあらゆる機器を含んでいる。
【0022】
制御装置210は、プロセッサ(演算処理装置)、メモリ(記憶装置)およびI/O回路等により構成されている。当該メモリまたはこれとは別個の記憶装置には、二次電池220の電圧応答特性の計測結果などの様々なデータが記憶保持される。制御装置210は、二次電池220から供給電力に応じて作動し、通電状態において指定機器200の動作を制御する。指定機器200の動作には、当該指定機器200を構成するアクチュエータ(電動式アクチュエータなど)の動作が含まれる。制御装置210を構成するプロセッサがメモリから必要なプログラムおよびデータを読み取り、当該データに基づき、当該プログラムにしたがって割り当てられた演算処理を実行する。
【0023】
二次電池220は、例えばリチウムイオンバッテリであり、ニッケル・カドミウム電池等のその他の二次電池であってもよい。指定機器200に対して模擬電池20から電力が供給される際、当該指定機器200から二次電池220が取り外されていてもよい。センサ群230は、二次電池220の電圧応答特性および温度のほか、指定機器200の制御に必要なパラメータの値を測定する。センサ群230は、例えば二次電池220の電圧、電流および温度のそれぞれに応じた信号を出力する電圧センサ、電流センサおよび温度センサにより構成されている。
【0024】
模擬電池構築装置100は指定機器200に搭載されていてもよい。この場合、ソフトウェアサーバ(図示略)が、指定機器200が備えている制御装置210を構成する演算処理装置に対して劣化判定用ソフトウェアを送信することにより、当該演算処理装置に対して模擬電池構築装置100としての機能を付与してもよい。
【0025】
(模擬電池構築方法)
前記構成の模擬電池構築装置100により実行される模擬電池構築方法について説明する。
【0026】
識別子id(n0)により種類が識別されるさまざまな種類の二次電池220を対象として、異なる劣化度D(n2)のそれぞれにおいて、異なる温度T(n1)のそれぞれにおける二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)が定められる。
【0027】
具体的には、まず、模擬電池構築装置100において、第1指数n1および第2指数n2のそれぞれが「0」に設定される(図3/STEP102)。第1指数n1は、二次電池220の温度Tの高低を表わす指数である。第2指数n2は、二次電池220の劣化度Dの評価回数または評価期間の順番を表わす指数である。
【0028】
二次電池220の温度Tが温度T(n1)に制御される(図3/STEP104)。二次電池220の温度調節に際して、二次電池220の近傍に配置された加熱器(電熱ヒータなど)および冷却器(冷却ファンなど)のほか、二次電池220の近傍に配置されたまたは二次電池220のハウジングに取り付けられた温度センサが用いられる。
【0029】
第1認識要素111により、二次電池220の複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)の測定結果が認識される(図3/STEP106)。各要素が情報を「認識する」とは、情報を受信すること、データベース10等の情報源から情報を検索することもしくは読み取ること、他の情報に基づいて情報を算定、推定等することなど、必要な情報を準備するあらゆる演算処理等を実行することを意味する。二次電池220の複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)は、交流インピーダンス法により測定され、当該測定結果は二次電池220の種類を識別するための識別子と関連付けられてデータベース10に登録される。
【0030】
交流インピーダンス法によれば、図5に示されているように、周波数応答解析装置(FRA)212およびポテンショガルバノスタット(PGS)232の組み合わせが用いられる。FRA212を構成する発振器から任意の周波数の正弦波信号が出力され、当該正弦波信号に応じた二次電池220の電流信号I(t)および電圧信号V(t)がPGS232からFRA212に入力される。そして、FRA212において、電流信号I(t)および電圧信号V(t)が離散フーリエ周波数変換によって周波数領域のデータに変換され、周波数f=(ω/2π)における複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)(ω)が測定される。
【0031】
例えば二次電池220の出荷直前等、指定機器200に搭載されていない状態における二次電池220の複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)が測定される。そのほか、指定機器200に搭載されている状態における二次電池220の複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)が測定されてもよい。この場合、制御装置210によりFRA212が構成され、センサ群230がPGSにより構成されていてもよい。例えば、指定機器200が二次電池220の充電のために商用電源等の外部電源に接続され、当該外部電源から供給される電力によって正弦波信号が出力されうる。
【0032】
図6には、二次電池220の複素インピーダンスZ(n0,n1,n2)の実測結果を表わすナイキストプロットの一例が、当該プロットの近似曲線とともに示されている。横軸は複素インピーダンスZの実部ReZであり、縦軸は複素インピーダンスZの虚部−ImZである。−ImZ>0の領域においてReZが大きくなるほど低周波数の複素インピーダンスZを表わしている。−ImZ=0におけるReZの値は二次電池220の電解液中の移動抵抗に相当する。−ImZ>0の領域における略半円形状の部分の曲率半径は、二次電池220の電荷移動抵抗に相当する。当該曲率半径は、二次電池220の温度Tが高温になるほど小さくなる傾向がある。−ImZ>0の領域の低周波数領域において約45°で立ち上がる直線状の部分には、二次電池220のワールブルグインピーダンスの影響が反映されている。
【0033】
(二次電池モデルの確立)
模擬電池構築装置100において、第1計算要素121により、第1認識要素111により認識された二次電池220の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)の値が同定される(図3/STEP108)。パラメータP(n0,n1,n2)は、計算器1221の伝達関数Hを定義する。
【0034】
二次電池モデルは、電流I(t)が二次電池220に入力された際に当該二次電池220から出力される電圧V(t)を表わすモデルである。二次電池220の開放電圧OCVおよび内部抵抗の伝達関数H(t)を用いて関係式(01)により定義される。
【0035】
V(t)=OCV(t)+H(t)・I(t) ‥(01)。
ここでOCV(t)は、電流I(t)の充電および/または放電に伴い開放電圧が増減することを表わしている。
【0036】
二次電池の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(z)は関係式(02)により定義される。
【0037】
H(z)=H0(z)+Σi=1-mi(z)+HW(z)+HL(z) ‥(02)。
【0038】
「H0(z)」、「Hi(z)」、「HW(z)」および「HL(z)」は、二次電池の内部抵抗の特性を表わすパラメータにより定義されている。
【0039】
図7Aには、二次電池220の内部抵抗の等価回路の一例が示されている。この例では、内部抵抗の等価回路は、電解液中の移動抵抗に相当する抵抗R0、電荷移動抵抗に相当する抵抗RiおよびキャパシタCiからなる第iのRC並列回路(i=1,2,‥,X)、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0、ならびに、コイルLの直列回路により定義されている。直列接続されるRC並列回路の数は、図7Aに示した実施例では「3」であったが、3より小さくてもよく、3より大きくてもよい。抵抗W0は、少なくともいずれか1つのRC並列回路において抵抗Rと直列接続されていてもよい。キャパシタCがCPE(Constant Phase Element)に置換されていてもよい。図7Bに示されているよう、ワールブルグ抵抗Wが少なくとも1つのRC並列回路(図5Bの例では第1のRC並列回路)の抵抗Rと直列接続されてもよい。
抵抗R0の伝達関数H0(z)は関係式(03)により定義されている。
【0040】
0(z)=R0 ‥(03)。
【0041】
第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)はIIR(Infinite Impulse Response)システム(無限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(03)により定義されている。図8Aには、第iのRC並列回路の伝達関数Hi(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0042】
i(z)=(b0+bi-1)/(1+ai-1) ‥(03)。
【0043】
ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)はFIR(Finite Impulse Response)システム(有限インパルス応答システム)の伝達関数として関係式(04)により定義されている。図8Bには、ワールブルグインピーダンスに相当する抵抗W0の伝達関数HW(z)を表わすブロックダイヤグラムが示されている。
【0044】
W(z)=Σk=0-nk-k ‥(04)。
【0045】
コイルLの伝達関数HL(z)は関係式(05)により定義されている。
【0046】
L(z)=(2L0/T)(1−z-1)/(1+z-1) ‥(05)。
【0047】
図6に実線で示されているナイキストプロットにより表わされる二次電池の複素インピーダンスZの近似曲線は、関係式(02)にしたがって二次電池の内部抵抗の等価回路モデルの伝達関数H(z)が定義されるという仮定下で求められる。これにより、パラメータP(n0,n1,n2)={R0,ai,b0,bi,hk,L0,T}の値が求められる(関係式(03)〜(05)参照)。開放電圧OCV(n0,n1,n2)の測定値により二次電池モデルにおける出力器1222から出力される開放電圧OCV(t)の値が同定される(関係式(01)参照)。そして、当該パラメータの値により二次電池モデルが様々な種類の二次電池220について確立される。
【0048】
第1指数n1が所定数N1以上であるか否かが判定される(図3/STEP110)。当該判定結果が否定的である場合(図3/STEP110‥NO)、第1指数n1の値が「1」だけ増加され(図3/STEP112)、その上で二次電池220の温度調節以降の処理が繰り返される(図3/STEP104→106→108→110)。
【0049】
(劣化度判定)
当該判定結果が肯定的である場合(図3/STEP110‥YES)、第2認識要素112により、二次電池220のインパルス電流I(t)に応じた電圧応答特性V(n0,n2)(t)(〜V(n0,n2)(z))の測定結果が認識される(図3/STEP114)。
【0050】
当該測定に際して、インパルス電流I(t)(〜I(z))が二次電池220に対して入力される。例えば、図9Aに示されているようなインパルス電流I(t)が二次電池220に対して入力される。パルス電流発生器が駆動されることにより、当該パルス電流発生器において発生されたインパルス電流I(t)が二次電池220に対して入力される。二次電池220が指定機器200に搭載されている場合、パルス電流発生器が当該指定機器200に搭載され、外部電源または指定機器200に搭載されている補助電源からの供給電力により、当該指定機器200に搭載されているインパルス電流発生のために指定機器が駆動されてもよい。
【0051】
そして、電圧センサの出力信号に基づき、制御装置210により二次電池220の電圧応答特性V(n0,n2)(t)が測定される。二次電池220が指定機器200に搭載されている場合、当該指定機器200に搭載されているセンサ群230を構成する電圧センサの出力信号に基づき、制御装置210により二次電池220の電圧応答特性V(n0,n2)(t)が測定されてもよい。これにより、例えば、図9Bに破線で示されているように変化する二次電池220の電圧応答特性V(n0,n2)(t)が測定される。図9(B)には、第2指数n2が0である場合における二次電池220の電圧応答特性V(n0,0)(t)の測定結果が実線で示されている。
【0052】
続いて、第2計算要素122により、二次電池220の電圧応答特性V(n0,n2)(t)およびV(n0,0)(t)の対比結果に基づき、識別子id(n0)により種類が識別される当該二次電池220の劣化度D(n0,n2)が評価される(図3/STEP116)。例えば、二次電池220の電圧応答特性V(n0,n2)(t)およびV(n0,0)(t)のそれぞれを表わす曲線の類似度xが計算される。そして、類似度xを主変数とする減少関数fにしたがって、二次電池220の劣化度D(n0,n2)=f(x)が計算される。
【0053】
第2指数n2が所定数N2以上であるか否かが判定される(図3/STEP118)。当該判定結果が否定的である場合(図3/STEP118‥NO)、第1指数n1の値が「0」にリセットされ、かつ、第2指数n2の値が「1」だけ増加される(図3/STEP120)。その上で二次電池220の温度調節以降の処理が繰り返される(図3/STEP104→106→108→110)。
【0054】
(模擬電池構築)
第2認識要素112により、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の種類を識別する識別子id(m0)が認識される(図4/STEP140)。例えば、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200に対して適用が予定されている二次電池の種類を識別する識別子id(m0)が認識されてもよい。また、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200の入力インターフェース202を通じて設定された仮想的な二次電池の種類に応じて識別子id(m0)が認識されてもよい。
【0055】
第2認識要素112により、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の温度T(m1)が認識される(図4/STEP142)。例えば、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200のセンサ群230を構成する温度センサにより測定された指定機器200の温度が仮想的な二次電池の温度T(m1)として認識されてもよい。また、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200の入力インターフェース202を通じて設定された温度が仮想的な二次電池の温度T(m1)として認識されてもよい。
【0056】
第2認識要素112により、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の劣化度D(m2)が認識される(図4/STEP144)。例えば、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200の入力インターフェース202を通じて設定された劣化度が仮想的な二次電池の劣化度D(m2)として認識されてもよい。
【0057】
第2計算要素122により、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の種類を識別する識別子id(m0)、温度T(m1)および劣化度D(m2)の第2認識要素112による認識結果に基づき、データベース10に登録されている多数の二次電池モデルの中から、パラメータP(m0,m1,m2)により特定される一の二次電池モデルが選定される(図4/STEP146)。これは、図2に示されている計算器1221の伝達関数Hを定義するパラメータP(m0,m1,m2)の値が、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の劣化度D(n2)に基づき、モデルパラメータ調整要素1220により調節されることに相当する。
【0058】
さらに、第2認識要素112により、電流指令値Icmd(t)が認識される(図4/STEP148)。例えば、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200のセンサ群230により測定された指定機器200の作動状況に応じて制御装置210により設定される負荷への電流目標値が電流指令値Icmd(t)として認識されてもよい。また、第2認識要素112により、指定機器200との通信に基づき、当該指定機器200の入力インターフェース202を通じて設定された電流目標値が電流指令値Icmd(t)として認識されてもよい。これにより、例えば、図10に実線で示されているように時間変化する電流指令値Icmd(t)が認識される。
【0059】
第2計算要素122により、当該選定された二次電池モデルに対して、電流指令値Icmd(t)が入力され、当該二次電池モデルの出力として電圧指令値Vcmd(t)が計算される(図4/STEP150)。これにより、例えば、図10に細線で示されているように変化する電圧指令値Vcmd(t)が二次電池モデルの出力として計算される。
【0060】
続いて、模擬電池制御要素140により、電圧指令値Vcmd(t)に基づき、模擬電池20にて増幅器22によりゲイン倍された電圧V(t)が指定機器200または指定機器200を構成する指定負荷に対して印加され制御される(図4/STEP152)。これにより、例えば、図10に太線で示されているように変化する電圧V(t)が指定機器200に印加される。
【0061】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では、識別子id(n0)により種類が識別される二次電池220の劣化度D(n2)の相違に応じて、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)の値が個別に定められていたが(図3/STEP108、STEP114、116参照)、他の実施形態として、二次電池220の劣化度D(n2)の相違が勘案されずに、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1)の値が定められていてもよい。
【0062】
前記実施形態では、識別子id(n0)により種類が識別される二次電池220の温度T(n1)の相違に応じて、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)の値が個別に定められていたが(図3/STEP104、STEP114、116参照)、他の実施形態として、二次電池220の温度T(n1)の相違が勘案されずに、二次電池モデルのパラメータP(n0,n2)の値が定められていてもよい。
【0063】
(発明の効果)
本発明に係る模擬電池構築装置100およびこれにより実行される模擬電池構築方法によれば、識別子id(n0)により種類が識別される二次電池220を対象として、異なる劣化度D(n2)のそれぞれにおいて、異なる温度T(n1)のそれぞれにおける二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)が定められる。二次電池220の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)の値が同定される(図3/STEP104→106→108、図5図7図8Aおよび図8B参照)。二次電池モデルは、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により二次電池220の内部抵抗のインピーダンスが表現されている(関係式(03)、(04)、図5図7図8Aおよび図8B参照)。
【0064】
さらに、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の識別子id(m)、温度T(m1)および劣化度D(m2)に基づき、パラメータP(m,m1,m2)を有する二次電池モデルが選定される(図2図4/STEP140→142→144→146参照)。そして、電流指令値Icmd(t)が当該二次電池モデルに入力された際の出力である電圧指令値Vcmd(t)が計算され、これに応じた電圧V(t)が模擬電池20により指定機器200またはその負荷に対して印加される(図2図4/STEP148→150→152、図10参照)。これにより、模擬電池20による二次電池220の特性の様々な条件下での再現精度の向上が図られる。
【符号の説明】
【0065】
10‥データベース、20‥模擬電池、22‥増幅器、100‥模擬電池構築装置、111‥第1認識要素、112‥第2認識要素、121‥第1計算要素、122‥第2計算要素、140‥模擬電池制御要素、200‥指定機器、202‥入力インターフェース、204‥出力インターフェース、210‥制御装置、220‥二次電池、230‥センサ群。
【要約】
【課題】模擬電池による二次電池の特性の様々な条件下での再現精度の向上を図りうる装置等を提供する。
【解決手段】異なる劣化度D(n2)のそれぞれにおいて、異なる温度T(n1)のそれぞれにおける二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)が定められる。二次電池220の複素インピーダンスZの測定結果に基づき、二次電池モデルのパラメータP(n0,n1,n2)の値が同定される。二次電池モデルは、IIRシステムおよびFIRシステムのそれぞれを表わす伝達関数により二次電池220の内部抵抗のインピーダンスが表現されている。さらに、模擬電池20により模擬される仮想的な二次電池の識別子id(m)、温度T(m1)および劣化度D(m2)に応じた二次電池モデルに電流指令値Icmd(t)が入力された際の電圧指令値Vcmd(t)が計算され、これに応じた電圧V(t)が模擬電池20により指定機器200またはその負荷に対して印加される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10