(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842215
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】溶湯保持炉
(51)【国際特許分類】
B22D 45/00 20060101AFI20210308BHJP
B22D 18/04 20060101ALI20210308BHJP
B22D 18/06 20060101ALI20210308BHJP
H05B 3/82 20060101ALI20210308BHJP
H05B 3/44 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B22D45/00 B
B22D18/04 U
B22D18/06 509W
H05B3/82
H05B3/44
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-1184(P2020-1184)
(22)【出願日】2020年1月8日
(62)【分割の表示】特願2017-518718(P2017-518718)の分割
【原出願日】2015年8月31日
(65)【公開番号】特開2020-62689(P2020-62689A)
(43)【公開日】2020年4月23日
【審査請求日】2020年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-100381(P2015-100381)
(32)【優先日】2015年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391003727
【氏名又は名称】株式会社トウネツ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】望月 城也太
【審査官】
國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−067327(JP,A)
【文献】
中国実用新案第203801092(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 33/00−47/02
B22D 18/00−18/08
H05B 3/02− 3/18
H05B 3/40− 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁(12)と、天井壁と、前記底壁(12)と天井壁の間に伸びる側壁(13)とを備え、前記底壁(12)と天井壁と側壁(13)によって溶湯収容空間(18)を形成するとともに、前記側壁(13)又は前記天井壁を貫通して形成された少なくとも1つの貫通挿入孔(20)を備えた炉体(11)と、
発熱体(51)を含み、前記貫通挿入孔(20)に挿入された加熱チューブ(30)とを備え、
前記発熱体(51)で発生した熱を利用して前記溶湯収容空間(18)に収容された金属溶湯を所定温度に維持する溶湯保持炉(10)であって、
前記貫通挿入孔(20)は、前記側壁(13)又は前記天井壁の内側端部から外側端部に向けて、前記内側端部又はその近傍の始点(23)から前記内側端部と前記外側端部との間の中間点(24)までの間に、前記始点(23)から前記中間点(24)まで次第に内径が大きくなる内側円筒部(21)を有し、前記中間点(24)から前記外側端部又はその近傍の終点(25)までの間に、一定内径の外側円筒部(22)を有し、
前記加熱チューブ(30)は、前記貫通挿入孔(20)の内側円筒部(21)に対応しており、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって外径が大きくなるテーパ面を有する先端側円筒部(35)と、前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)に対応しており、前記中間点(24)における前記先端側円筒部(35)の外径よりも小さな一定の外径を有する基端側円筒部(36)とを有し、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)のテーパー面は、テーパー円筒面と非テーパ円筒面を交互に配置した疑似テーパー面によって形成され、
前記加熱チューブ(30)は、前記加熱チューブ(30)の先端側円筒部(35)を前記貫通挿入孔(20)の内側円筒部(21)に位置させ、前記加熱チューブ(30)の基端側円筒部(36)を前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)に位置させた状態で、前記貫通挿入孔(20)に挿入されて位置決めされており、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)との間に充填材(60)が充填されている
ことを特徴とする溶湯保持炉。
【請求項2】
前記加熱チューブ(30)は、該加熱チューブ(30)の先端側円筒部(35)と基端側円筒部(36)との間に、径方向に伸びる環状面からなる段部(37)が形成されており、
前記加熱チューブ(30)の基端側円筒部(36)と前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)との間に管状部材(61、77)が配置され、
前記管状部材(61、77)が前記加熱チューブ(30)の段部(37)に押し当てられている
ことを特徴とする請求項1の溶湯保持炉。
【請求項3】
前記管状部材(61)が伝熱性金属材料からなることを特徴とする請求項2の溶湯保持炉。
【請求項4】
前記管状部材(77)が断熱材料からなることを特徴とする請求項2の溶湯保持炉。
【請求項5】
前記管状部材(61、77)の外側に固定部材(62)が配置されており、
前記固定部材(62)は前記炉体(11)に締結手段(63、64)を介して連結されており、
前記締結手段(63、64)によって、前記管状部材(61、77)が前記加熱チューブ(30)の段部(37)に押し当てられている
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれかの溶湯保持炉。
【請求項6】
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は一つの部材で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの溶湯保持炉。
【請求項7】
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は別々の部材で構成されており、前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は熱的に接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの溶湯保持炉。
【請求項8】
前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、不連続的に内径が大きくなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの溶湯保持炉。
【請求項9】
前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、連続的に内径が大きくなっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの溶湯保持炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属が溶解してなる溶湯を保持する溶湯保持炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムの溶湯を保持する溶湯保持炉が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された溶湯保持炉は、溶湯を収容する炉体を有する。炉体の側壁には貫通孔(チューブ挿入孔)が形成されており、その貫通孔を介して加熱チューブが溶湯内に挿入されている。
【0003】
また、溶湯保持炉に適用可能な別の加熱チューブが特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−170801号公報
【特許文献2】特許第5371784号公報
【0005】
これら特許文献1,2に開示された、横浸漬型の加熱チューブを採用した溶湯保持炉は、自然対流によって溶湯を加熱するため、溶湯を過剰に加熱することがない、また、そのために表面加熱型の溶湯保持炉と違って溶湯の酸化が抑制される、といった利点を有する。
【0006】
ところで、アルミニウム溶湯保持炉の場合、溶湯温度はアルミニウムの溶解温度(摂氏660度)よりも多少高めの温度(例えば、摂氏700度)に調整される。他方、アルミニウムの凝固温度は摂氏550度程度である。したがって、加熱チューブの基端部(炉壁の外側に位置する部分)の温度を摂氏550度以下に調整することで、加熱チューブの周囲に充填されている充填材に生じた亀裂等を伝って溶湯アルミニウムが外部に漏洩するのを防止している。
【0007】
しかし、加熱チューブの基端部の温度を摂氏550度よりも下げ過ぎると、加熱チューブの基端部から放出される熱量が大きくなり、それは熱効率の点で好ましいことではない。
【0008】
ちなみに、特許文献2の加熱チューブは、炉壁に支持される加熱チューブの基端側に、炉の外側から内側に向かって先細りとなるテーパ部が形成されている。この加熱チューブを採用する溶湯保持炉の炉壁には対応する形状のテーパ貫通孔が形成され、炉壁のテーパ貫通孔に加熱チューブのテーパ部が楔のようにはめ込まれる。したがって、加熱チューブと貫通孔との間に充填される材料が両者の楔効果によって密に挟持され、溶湯の漏れが効果的に防止される、という効果が得られる。しかし、特許文献2のテーパ部材は、内側から外側に向けて次第に径が大きくなっており、最も外側の端部の断面が最大になっている。したがって、放熱性の点では優れているが、熱が過剰に放熱されるために保温性の点で問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、放熱性と保温性を適度に兼ね備えた新たな溶湯保持炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、本発明の一実施形態に係る溶湯保持炉は、
底壁(12)と、天井壁と、前記底壁(12)と天井壁の間に伸びる側壁(13)とを備え、前記底壁(12)と天井壁と側壁(13)によって溶湯収容空間(18)を形成するとともに、前記側壁(13)又は前記天井壁を貫通して形成された少なくとも1つの貫通挿入孔(20)を備えた炉体(11)と、
発熱体(51)を含み、前記貫通挿入孔(20)に挿入された加熱チューブ(30)とを備え、
前記発熱体(51)で発生した熱を利用して前記溶湯収容空間(18)に収容された金属溶湯を所定温度に維持する溶湯保持炉(10)であって、
前記貫通挿入孔(20)は、前記側壁(13)又は前記天井壁の内側端部から外側端部に向けて、前記内側端部又はその近傍の始点(23)から前記内側端部と前記外側端部との間の中間点(24)までの間に、前記始点(23)から前記中間点(24)まで次第に内径が大きくなる内側円筒部(21)を有し、前記中間点(24)から前記外側端部又はその近傍の終点(25)までの間に、一定内径の外側円筒部(22)を有し、
前記加熱チューブ(30)は、前記貫通挿入孔(20)の内側円筒部(21)に対応しており、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって外径が大きくなるテーパ面を有する先端側円筒部(35)と、前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)に対応しており、前記中間点(24)における前記先端側円筒部(35)の外径よりも小さな一定の外径を有する基端側円筒部(36)とを有し、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)のテーパー面は、テーパー円筒面と非テーパ円筒面を交互に配置した疑似テーパー面によって形成され、
前記加熱チューブ(30)は、前記加熱チューブ(30)の先端側円筒部(35)を前記貫通挿入孔(20)の内側円筒部(21)に位置させ、前記加熱チューブ(30)の基端側円筒部(36)を前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)に位置させた状態で、前記貫通挿入孔(20)に挿入されて位置決めされており、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)との間に充填材(60)が充填されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、
前記加熱チューブ(30)は、該加熱チューブ(30)の先端側円筒部(35)と基端側円筒部(36)との間に、径方向に伸びる環状面からなる段部(37)が形成されており、
前記加熱チューブ(30)の基端側円筒部(36)と前記貫通挿入孔(20)の外側円筒部(22)との間に管状部材(61、77)が配置され、
前記管状部材(61、77)が前記加熱チューブ(30)の段部(37)に押し当てられていることを特徴とする。
なお、前記管状部材(61、77)は、伝熱性金属材料又は断熱材料のいずれかで構成してもよい。
【0012】
本発明の他の実施形態によれば、
前記管状部材(61、77)の外側に固定部材(62)が配置されており、
前記固定部材(62)は前記炉壁(14)に締結手段(63、64)を介して連結されており、
前記締結手段(63、64)によって、前記管状部材(61、77)が前記加熱チューブ(30)の段部(37)に押し当てられていることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の実施形態によれば、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は一つの部材で構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は別々の部材で構成されており、前記先端側円筒部(35)と前記基端側円筒部(36)は熱的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の実施形態によれば、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、連続的に外径が大きくなっていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の実施形態によれば、
前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、不連続的に内径が大きくなっていることを特徴とする。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、
前記加熱チューブ(30)の前記先端側円筒部(35)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、不連続的に外径が大きくなっていることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、
前記貫通挿入孔(20)の前記内側円筒部(21)は、前記始点(23)から前記中間点(24)に向かって、連続的に内径が大きくなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このような構成を備えた溶湯保持炉(10)によれば、溶湯の熱は加熱チューブ(30)を伝ってその先端側(炉内側)から基端側(炉外側)に移動するが、先端側円筒部(35)と基端側円筒部(36)との境界で大きく断面積が縮小されているため、その境界を越えて先端側円筒部(35)から基端側円筒部(36)に伝わる熱が制限され、基端側円筒部(36)の温度は相当低く抑えられる。そのため、加熱チューブ(30)の外周面に沿って炉内から炉外に移動する溶湯があっても、その溶湯は途中で固まり、炉外に流れ出ることがない。また、炉外に放出される熱量が著しく低減される。したがって、放熱性と保温性に優れた溶湯保持炉が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1に係る溶湯保持炉の部分断面図。
【
図2】
図2は、
図1に示す溶湯保持炉に使用されている加熱チューブの断面図。
【
図3】
図3は、他の実施形態に係る溶湯保持炉の部分断面図。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係るヒータ保護管の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る溶湯保持炉について、添付図面を参照して説明する。なお、溶湯保持炉の説明では、炉の内側と外側に位置する部位についてそれぞれ「内側」、「外側」の表現を用いる。また、溶湯保持炉の炉壁を貫通して挿入される加熱チューブの説明では、炉の内側と外側に位置する部位についてそれぞれ「先端」、「基端」の表現を用いる。
【0022】
図1は、アルミニウム等の金属溶湯を保持する溶湯保持炉10の一部を示す断面図である。図示する溶湯保持炉10の炉体11は、一般的な溶湯保持炉と同様に、底壁12と、底壁12の周端から鉛直方向に伸びる周壁又は側壁13によって構成されている。底壁12と側壁13は、概略、外側から内側に向かって順番に、鉄製の外壁(鉄皮)14、断熱層15、バックアップ層16、耐火層17を備えており、耐火層17の内側に溶湯収容空間18が形成されている。
【0023】
図2に示すように、溶湯保持炉10の側壁13は、底壁12の近くに、後述する加熱チューブを取り付けるための、水平方向に向けた複数のチューブ挿入用の貫通孔(以下、「チューブ挿入孔」という。)20が形成されている。図示するように、チューブ挿入孔20は、内側円筒部(テーパ円筒部)21と外側円筒部(非テーパ円筒部)22を有する。内側円筒部21は、符号23で示す始点(最内端)から符号24で示す中間点まで伸びており、外側から内側に向けて次第に細くなる円筒状のテーパ面によって形成されている。外側円筒部22は、中間点24から符号25で示す終点(最外端)まで伸びており、内側円筒部21の最外端の内径と同じ、一定の内径を有する円筒面によって形成されている。
【0024】
チューブ挿入孔20の周囲では、炉体11の内外方向に関して、耐火層17が厚く、断熱層15が薄くしてあり、内側円筒部21が耐火層17に形成され、外側円筒部22がバックアップ層16と断熱層15に形成されている。
【0025】
加熱チューブ30は、ヒータ保護管31を有する。ヒータ保護管31は、例えば窒化ケイ素系のセラミックからなり、概略円筒状を有し、溶湯収容空間18に突出する先端部32が閉鎖され、側壁13から外側に突出する基端部33が開放されている。
【0026】
ヒータ保護管31の内面は、基端部33から先端部32まで、一定の径を有する円筒面で形成されている。ヒータ保護管31の外面は、図示するようにチューブ挿入孔20に挿入された状態で、溶湯収容空間18に位置する領域は一定の径を有する円筒面34で形成され、また、耐火層17に隣接する領域はテーパ円筒面(以下、「先端側円筒部」という。)35が形成され、さらに、断熱層15に隣接する領域は一定の径を有する非テーパ円筒面(以下、「基端側円筒部」という。)36が形成されている。また、先端側円筒部35のテーパ角は、チューブ挿入孔20の内側円筒部21のテーパ角と同じである。図示するように、ヒータ保護管31の基端側円筒部36は、チューブ挿入孔20の外側円筒部22よりも小さな径を有し、中間点24に対応する位置に、基端側円筒部36の先端から先端側円筒部35の基端に向かって径方向に伸びる環状面からなる段部37を形成している。
【0027】
ヒータ保護管31の基端側開口は蓋体40によって塞がれる。蓋体40は、ヒータ保護管31の中心軸41と該中心軸41に対して径方向に平行にオフセットした軸42に沿って第1と第2の電極挿入孔43,44が形成されており、これら第1と第2の電極挿入孔43,44を介してヒータ保護管31の内側に2つの電極棒(端子)45,46が挿入される。
【0028】
図示のとおり、中心軸41上に配置される第1の電極棒45は蓋体40を貫通してヒータ保護管31の先端近傍まで伸びており、オフセット軸42上に配置される第2の電極棒46は蓋体40を貫通してヒータ保護管31の先端側円筒部35の先端(始点23)近傍まで伸びている。他方、第1の電極棒45と第2の電極棒46の基端は、蓋体40の外側に突出している。
【0029】
溶湯収容空間18に位置する第1の電極棒45の先端側部分には軸方向に所定の間隔をあけて2つの環状又は筒状の絶縁性の耐熱支持部材47,48が固定されており、これにより、第1の電極棒45が中心軸41又はその近傍に保持されている。また、基端側の耐熱支持部材48は、第2の電極棒46の先端を支持している。耐熱支持部材47,48は、第1の電極棒45に外装された中空の絶縁性耐熱円筒体49を、中心軸41の周りに支持している。耐熱円筒体49の外周面には螺旋状の溝50が形成されており、この溝50に発熱体(電熱ヒータ)51がはめ込まれている。発熱体51は、その両端が第1と第2の電極棒45,46と電気的に接続されている。
【0030】
図示するように、基端側の蓋体40と基端側耐熱支持部材48の間に位置する、ヒータ保護管31の内側には、断熱材52を配置することが好ましい。
【0031】
図示するように、第1の電極棒45は中空円筒管で構成し、その内側に熱電対53を収容してもよい。
【0032】
このように構成された加熱チューブ30は、電極棒や断熱材等が挿入されていない状態のヒータ保護管31が、側壁13に形成したチューブ挿入孔20にその外側から挿入される。ヒータ保護管31の挿入に先立って、チューブ挿入孔20のテーパ面(内側円筒部21)又は該テーパ面に接する加熱チューブ30の先端側円筒面35若しくはそれらの両方に、セメントペースト又はモルタルセメントの充填材60が塗布される。そして、ヒータ保護管31をチューブ挿入孔20に挿入する。このとき、ヒータ保護管31のテーパ面(先端側円筒部)35がチューブ挿入孔20のテーパ面(内側円筒部)21にはめ込まれ、正確に且つ位置ずれ不能に固定される。また、チューブ挿入孔20のテーパ面(内側円筒部)21に対してヒータ保護管31のテーパ面(先端側円筒部)35が楔のように嵌まるため、両テーパ面の間に挟まれた充填材60は均一に広がり、ヒータ保護管31の周囲には一定の厚みの充填剤層が形成される。
【0033】
加熱チューブ30の基端側円筒部36に管状部材61を同心的に外装する。本実施形態では、管状部材61は伝熱性材料(例えば、ステンレス等の金属)からなる円筒体で、その先端が段部37に接触される。したがって、本実施形態では、管状部材61は、放熱部材として機能する。管状部材61は、ヒータ保護管31をチューブ挿入孔20に挿入する前に該ヒータ保護管31の基端側円筒部36に外装してもよいし、ヒータ保護管31をチューブ挿入孔20に挿入した後に該ヒータ保護管31の基端側円筒部36に外装してもよい。いずれの場合であっても、チューブ挿入孔20の外側円筒部22と管状部材61の間に形成される環状隙間と、加熱チューブ30の基端側円筒部36と管状部材61との環状隙間には、セメントペースト又はセメントモルタル等の充填材60を充填する。
【0034】
管状部材61の基端には、環状の固定部材62が宛がわれる。管状部材61と固定部材62は、互いに独立した部材であってもよいし、両者を連結して一体化してもよい。固定部材62とこれに対向する外壁14は適当な締結手段(締結具)によって締め付け可能に連結されている。締結手段は、例えば、外壁14と固定部材62に周方向に一定の間隔をあけて形成されたボルト挿通孔(図示せず)、これらボルト挿通孔に挿通されたボルト63,及びボルト63に外装されたナット64を有する。この形態によれば、ナット64を締めることによって、管状部材61の先端がヒータ保護管31の段部37に押し当てられ、ヒータ保護管31がチューブ挿入孔20内にしっかりと固定される。
【0035】
次に、電極棒45,46、耐熱支持部材47,48,絶縁性耐熱円筒体49,発熱体51、断熱材52,熱電対53、及び蓋体40を組み合わせたアセンブリをヒータ保護管31の内部に挿入する。
【0036】
最後に、固定部材62の外側に、中心軸41を中心とする周方向に一定の間隔をあけて留め金(アングル部材)68が配置され、これら固定部材62に形成したねじ孔(図示せず)と留め金68に形成した孔(図示せず)にボルト69を通し、ナット70を締めて、固定部材62及び炉体11に対して蓋体40を固定する。
【0037】
また、第1と第2の電極棒45,46の基端はそれぞれ電源に接続される。
【0038】
図示するように、電極棒45,46、蓋体40、固定部材62等の周囲に、開閉蓋73を有する筒状フレーム74を外壁14に固定し、それら電極棒45,46等が露出するのを防止することが好ましい。
【0039】
以上の構成を備えた溶湯保持炉10によれば、電極棒45,46を通じて供給される電力によって発熱体51が発熱し、その熱によって溶湯保持炉10内の金属溶湯が所定の溶融温度に維持される。
【0040】
発熱体51からヒータ保護管31に伝わる熱、また、溶融金属から伝わる熱により、ヒータ保護管31の周囲に充填された充填材60には時間の経過とともに亀裂が発生し、その亀裂に沿って金属溶湯が内側から外側に進行することが考えられる。しかし、本発明によれば、ヒータ保護管31の先端側円筒部(テーパ面)35とチューブ挿入孔20の内側円筒部(テーパ面)21との間に充填されている充填材60は、外側から内側に向かって加えられた押圧力(ボルト63を締めることにより、管状部材61がヒータ保護管31の段部37に作用する力)により、充填材60は均一に充填されているため、亀裂の発生を最小限に抑えることができるし、たとえ亀裂が発生してもその大きさは極めて小さい。また、溶湯の熱はヒータ保護管31をその先端から基端に移動するが、ヒータ保護管31の末端側はその断面を縮小した基端側円筒部36によって形成されているため、ヒータ保護管31の先端側円筒部35から基端側円筒部36に伝わる熱は両者の境界で急減に減少し、ヒータ保護管31の基端側円筒部36の基端まで到達する熱は相当少なくなり、結果、外部に放出される熱量は少ない。
【0041】
本実施形態では、先端側円筒部35に到達した熱は、それに続く基端側円筒部36及び先端側円筒部35の基端段部37に接触した管状部材61を介して外側に伝わって放熱される。したがって、本実施形態では、放熱性と断熱性を考慮して、例えばアルミニウムの溶湯炉の場合、段部37における温度が約摂氏550度となるように、ヒータ保護管31における先端側円筒部35及び基端側円筒部36の断面と管状部材61の断面が決定されるとともに、基端側円筒部36と管状部材61の断面積比率(すなわち、放熱性)が決定される。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、種々改変可能である。例えば、上述した実施形態では、ヒータ保護管31の基端側円筒部36の周囲に放熱部材である管状部材61を設け、該管状部材61を介して熱の一部を外部に放出したが、
図3に示すように、ヒータ保護管31の基端側円筒部36の周囲は断熱材料からなる管状部材(断熱部材)77によって覆ってもよい。この実施形態において、管状部材77の基端側には固定部材62が配置され、上述した締結手段により、固定部材62を介して管状部材77をヒータ保護管31の段部37に押し付ける。
【0043】
なお、金属製の管状部材61は、周囲の断熱層15やバックアップ層16に比べて熱膨張率が大きいため、温度の上昇と共に周囲の部材よりも軸方向により多く伸び、段部37を更に強く押し付け、溶湯の漏れを効果的に防止できる。また、溶湯保持炉の使用開始後であっても、管状部材61の材質や形状を変更することによって、溶湯保持炉の放熱性と保温性の調整を行なうことができる。
【0044】
本実施形態の場合、上述した実施形態の場合よりも基端側円筒部36の厚みを増して、適当な放熱性を確保することが好ましい。その場合、上述のように、段部37における温度が約摂氏550度となるように、ヒータ保護管31における先端側円筒部35及び基端側円筒部36の断面を決定することが好ましい。
【0045】
また、上述した2つの実施形態のいずれの場合でも、ヒータ保護管31の基端側円筒部36は一定の外径を有するものとしたが、内側から外側に向かって又は外側から内側に向かって次第に径が小さくなるテーパ状円筒部としてもよい。
【0046】
さらに、
図4に示すように、ヒータ保護管31の先端側円筒部35のテーパ面は、テーパ円筒面81a〜81dと非テーパ円筒面82a〜82cを交互に配置した疑似テーパ面によって形成してもよい。この場合、非テーパ円筒面82a〜82cの外径をその基端側に隣接して形成されるテーパ円筒面81b〜81dの先端側外径よりも小さくすることによって、非テーパ円筒面82a〜82cとその基端側に隣接するテーパ円筒面81b〜81dとの境界に環状段部83a〜83cを形成することが好ましい。同様の方法によって、テーパ円筒面とその基端側に隣接する非テーパ円筒面の間に環状段部を形成してもよい。このような構成を採用すれば、ヒータ保護管31の先端側円筒部35とこれに対向する、チューブ挿入孔20の内側円筒部21との間の充填材60を軸方向に加圧する力が強くなるため、充填材をより均一に充填でき、充填不良をより確実に防止できる。また、ヒータ保護管31の先端側円筒部をテーパ面で形成する一方、チューブ挿入孔20の内側円筒部を上述した疑似テーパ面に対応する形状の疑似テーパ面に形成してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、ヒータ保護管31の先端側円筒部35はヒータ保護管31に一体的に形成されているが、一定の外径を有するチューブの外側に同一又は異なる材料のテーパ円筒管を外装し固定することによって構成してもよい。
【0048】
さらに、上述の実施形態では、ヒータ保護管31の基端側円筒部36は先端側円筒部35と一体的に形成されているが、基端側円筒部36を同一又は異なる材料からなる円筒体で形成し、先端側円筒体と基端側円筒体を熱的に接続してもよい。
【0049】
さらにまた、上述したすべての実施形態において、ヒータ保護管31の先端側円筒部35と基端側円筒部36の両方又はいずれか一方の外周面には、環状又は螺旋状の凹部(溝)又は凸部(突起)を形成してもよい。これら凹部又は凸部は、周方向に連続してもよいし、不連続であってもよい。
【0050】
以上の説明では、側壁13に貫通挿入孔20を形成したが、天井壁に貫通挿入孔を形成し、そこに垂直方向に加熱チューブ(ヒータ保護管)を挿入してもよい。このような垂直型加熱チューブを含む溶湯保持炉も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10:溶湯保持炉
11:炉体
12:底壁
13:側壁
14:外壁(鉄皮)
15:断熱層
16:バックアップ層
17:耐火層
18:溶湯収容空間
20:チューブ挿入孔
21:内側円筒部(テーパ面)
22:外側円筒部(円筒面)
23:始点
24:中間点
25:終点
30:加熱チューブ
31:ヒータ保護管
32:先端部
33:基端部
34:円筒面
35:先端側円筒部(テーパ面)
36:基端側円筒部(円筒面)
37:段部
40:蓋体
41:中心軸
42:軸(オフセット軸)
43:第1の電極挿入孔
44:第2の電極挿入孔
45:第1の電極棒
46:第2の電極棒
47、48:耐熱支持部材
49:絶縁性耐熱円筒体
50:溝
51:発熱体(ヒータ)
52:断熱材
53:熱電対
60:充填材
61:管状部材(放熱材料)
62:固定部材
63:ボルト
64:ナット
68:留め金
69:ボルト
70:ナット
73:開閉蓋
74:フレーム
77:管状部材(断熱材料)
80:疑似テーパ面
81:テーパ円筒面
82:非テーパ円筒面