特許第6842216号(P6842216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6842216
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】照明方法及び照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/105 20200101AFI20210308BHJP
【FI】
   H05B47/105
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-50917(P2020-50917)
(22)【出願日】2020年3月23日
【審査請求日】2020年4月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】石井 通友
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰介
【審査官】 野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−202494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00、47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象及び背景の照明方法であって、
等色関数を定め、該等色関数からxy色度図を求めるステップと、
該観察対象及び該背景を、フィルタを付けていないキセノン光源で照射した状態で、該観察対象について波長と分光放射輝度との関係を求め、該観察対象の波長に関する分光放射輝度の極大値に対応する波長から一つまたは複数の代表波長を定めるステップと、
該代表波長及びxy色度図から該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させるように該代表波長の対比波長を定めるステップと、
該代表波長及び該対比波長の光で該観察対象及び該背景を照射するステップと、を含む照明方法。
【請求項2】
該対比波長を求めるステップにおいて、該対比波長の使用禁止波長域を定め、該使用禁止波長域外で該対比波長を定める請求項1に記載の照明方法。
【請求項3】
該対比波長を求めるステップにおいて、該代表波長が一つの波長であり、該xy色度図において該代表波長と補色関係にある波長に最も近い波長を該対比波長とする請求項1または2に記載の照明方法。
【請求項4】
該対比波長を求めるステップにおいて、該代表波長が複数の波長であり、該xy色度図において該複数の代表波長を表す複数の点からの色差の和が最大となる点に対応する波長を該対比波長とする請求項1または2に記載の照明方法。
【請求項5】
該対比波長を求めるステップにおいて、該代表波長が複数の波長であり、該xy色度図において該複数の代表波長の平均波長と補色関係にある波長に最も近い波長を該対比波長とする請求項1または2に記載の照明方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の照明方法を実施するための照明システムであって、
観察対象を照射する光源であって、分光分布特性を変化させることのできる、キセノン光源と複数のフィルタとを組み合わせたスペクトル可変光源と、
該観察対象の分光放射輝度を測定する分光放射輝度計と、
該分光放射輝度計に接続され該分光放射輝度計からの分光放射輝度に基づいて該可変光源の照明光の分光分布特性を定めるプロセッサと、を含む照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象の視認性を向上させる照明方法及び照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野における診断、製造業における製品検査などの際に対象に照明光を照射して観察が行われる。この場合に観察対象の視認性を向上させる照明光を選択するのが望ましい。従来、観察対象の視認性を向上させる照明光の選択は個々の観察者が主観に基づいて試行錯誤を繰り返しながら実施していた。
【0003】
特許文献1は、照明の分光分布特性および色材の分光反射特性の制御に基づく照明光の効率的利用方法及び当該方法を利用した照明システムを開示している。しかし、特許文献1は、観察対象の視認性を向上させる照明光の選択について開示していない。
【0004】
このように、観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させる照明方法及び照明システムは従来開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-135195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させる照明方法及び照明システムに対するニーズがある。本発明の課題は、観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させる照明方法及び照明システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様の照明方法は、観察対象及び背景の照明方法であって、等色関数からxy色度図を求めるステップと、該観察対象の分光放射輝度を求め、該分光放射輝度から該観察対象の代表波長を定めるステップと、該代表波長及び該xy色度図から該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させるように該代表波長の対比波長を定めるステップと、該代表波長及び該対比波長の光で該観察対象及び該背景を照射するステップと、を含む。
【0008】
本態様の照明方法によれば、該代表波長及び該xy色度図から該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させるように該代表波長の対比波長を定めるので観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第1の態様の第1の実施形態の照明方法は、観察者またはセンサに応じた等色関数を定めるステップをさらに含む。
【0010】
本実施形態の照明方法によれば、観察者ごとに等色関数を求めるので観察者に固有の視認性を向上させることができる。また、カメラのカラーセンサの等色関数を求めるのでカメラで撮影した画像の観察対象及び背景のコントラスト比が向上する。
【0011】
本発明の第1の態様の第2の実施形態の照明方法は、該代表波長を定めるステップにおいて、該観察対象の分光放射輝度の極大値に対応する波長から一つまたは複数の代表波長を定める。
【0012】
本実施形態の照明方法によれば、観察対象の分光放射輝度から簡単に代表波長を定めることができる。
【0013】
本発明の第1の態様の第3の実施形態の照明方法は、該対比波長を求めるステップにおいて、該代表波長が一つの波長であり、該xy色度図において該代表波長と補色関係にある波長を該対比波長とする。
【0014】
本実施形態の照明方法によれば、xy色度図において代表波長と補色関係にある波長を対比波長とすることによって該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させることができる。
【0015】
本発明の第1の態様の第4の実施形態の照明方法は、該対比波長を求めるステップにおいて、該対比波長の使用禁止波長域を定め、該使用禁止波長域外で、該xy色度図において該代表波長と補色関係にある波長に最も近い波長を該対比波長とする。
【0016】
本実施形態の照明方法によれば、対比波長の使用禁止波長域を定めることによって画像に対する観察者の色の好みを反映させることができる。
【0017】
本発明の第1の態様の第5の実施形態の照明方法は、該対比波長を求めるステップにおいて、該代表波長が複数の波長であり、該xy色度図において該複数の代表波長を表す複数の点からの色差の和が最大となる点に対応する波長を該対比波長とする。
【0018】
本実施形態の照明方法によれば、xy色度図において複数の代表波長を表す複数の点からの色差の和が最大となる点に対応する波長を対比波長とすることによって該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させることができる。
【0019】
本発明の第1の態様の第6の実施形態の照明方法は、該対比波長を求めるステップにおいて、該対比波長の使用禁止波長域を定め、該使用禁止波長域外で、該xy色度図において該複数の代表波長の平均波長と補色関係にある波長に最も近い波長を該対比波長とする。
【0020】
本実施形態の照明方法によれば、対比波長の使用禁止波長域を定めることによって画像に対する観察者の色の好みを反映させることができる。
【0021】
本発明の第2の態様の照明システムは上記の照明方法を実施するための照明システムであって、観察対象を照射する光源であって、分光分布特性を変化させることのできるスペクトル可変光源と、該観察対象の分光輝度を測定する分光輝度計と、該分光輝度計に接続され該分光輝度計からの分光放射輝度に基づいて該可変光源の照明光の分光分布特性を定めるプロセッサと、を含む。
【0022】
本態様の照明システムによれば、上記の照明方法を実施することによって該代表波長及び該xy色度図から該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させるように該代表波長の対比波長を定めるので観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の照明方法を実施するための照明システムの構成を示す図である。
図2】本発明の照明方法を説明するための流れ図である。
図3】等色関数から定めたxy色度図を示す図である。
図4】フィルタを付けていないキセノン光源の分光放射照度の相対値を示す図である。
図5】観察対象及び背景はフィルタを付けていないキセノン光源によって照射された観察対象及び背景を示す画像である。
図6】フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図7】フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図8図2のステップS1040を説明するための流れ図である。
図9】代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図10】代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図11】代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、観察対象及び背景を示す画像である。
図12】フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図13】フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
図14】フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、観察対象及び背景を示す画像である。
図15】等色関数から定めたxy色度図を示す図である。
図16】二波長を代表値とした場合の図2のステップS1040を説明するための流れ図である。
図17】等色関数から定めたxy色度図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の照明方法を実施するための照明システム100の構成を示す図である。照明システム100は、光源部110と2次元分光放射輝度計120とプロセッサ130とを含む。光源部110は、複数のフィルタ交換式キセノン光源111と、ライトガイド113と、投光部115とを含む。複数のフィルタ交換式キセノン光源111によって複数の所望の波長の照明光が生成され、ライトガイド113を経由して投光部115へ送られ、投光部115からの照明光によって対象200が照射される。一例として、複数のフィルタは、特定の波長の光を通過させるフィルタであり、特定の波長の間隔は10ナノメータである。このように複数のフィルタ交換式キセノン光源111のフィルタを適切に選択することによって、光源部110はスペクトル可変光源として機能する。対象200は観察対象及び背景である。2次元分光放射輝度計120は対象200の分光放射輝度を測定する。測定された対象200の分光放射輝度はプロセッサ130へ送られ、プロセッサ130によって観察対象と背景とのコントラストを強調し観察者の視認性を向上させる照明光が定められる。
【0025】
図2は本発明の照明方法を説明するための流れ図である。
【0026】
図2のステップS1010において観察者またはマシンビジョンなどのカメラのカラーセンサに応じた等色関数を定める。
【0027】
まず、観察者の等色関数を定める場合について説明する。太陽光や白色LED光など一般的な白色光の下では観察者の色の感じ方の個人差は無視できるが、条件等色で光色を調整した照明光の下では観察者の色の感じ方の個人差は無視できない。そこで、観察者に固有の視認性を向上させるには観察者ごとに等色関数を求めるのが望ましい。しかし、観察者に固有の視認性を無視し、観察対象と背景とのコントラストを強調することによって標準的な観察者の視認性を向上させる場合には本ステップを省略して標準の等色関数を使用してもよい。
【0028】
つぎに、カメラのカラーセンサの等色関数を定める場合について説明する。カメラのカラーセンサの等色関数は存在しないのでカメラのカラーセンサの等色関数を求める必要がある。
【0029】
等色関数は等色実験によって定める。等色実験においては、単一波長の光を生成する光源及び原刺激のRGB光を組み合わせた光を生成する光源を準備する。上記の二台の光源として二組の光源部110を使用してもよい。上記の二台の光源によって、単一波長の光及び原刺激のRGB光を組み合わせた光で白いスクリーンの隣接する二領域を別々に照射し、上記の二領域の色を観察者または色度計(三刺激値読み取り型の色度計)が等色と判断するようにRGB光の光量を調整する。このようにして単一波長ごとに条件等色の値が決定され等色関数が定義される。
【0030】
図2のステップS1020においてステップS1010で求めた等色関数または標準の等色関数からxy色度図を求める。刺激値をX、Y及びZで表すと、色度値(x、y)は以下の式で表せる。
【数1】
上記の式の刺激値に波長ごとの等色関数の値を代入してx、yを求めることによってxy色度図が定まる。
【0031】
図3は等色関数から定めたxy色度図を示す図である。xy色度図の使用方法については後で説明する。
【0032】
図2のステップS1030において観察対象の分光データ(分光放射輝度)を求め、分光データから観察対象の代表波長を定める。
【0033】
観察対象の分光データを求めるために観察対象及び背景をキセノン光源111によって照射する。
【0034】
図4はフィルタを付けていないキセノン光源111の分光放射照度の相対値を示す図である。図7の横軸は波長を示し、単位はナノメータである。図5の縦軸は分光放射照度の相対値を示す。
【0035】
図5はフィルタを付けていないキセノン光源111によって照射された観察対象及び背景を示す画像である。画像は縦方向及び横方向に5分割され、25の区画に分けられている。図5において1と番号を付した区画を含む濃い色の領域が観察対象の領域であり、図5において25と番号を付した区画を含む薄い色の領域が背景の領域である。
【0036】
図6は、フィルタを付けていないキセノン光源111によって照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。グラフの横軸は波長を示し、単位はナノメータである。グラフの縦軸は輝度を示し、単位はワット毎ステラジアン毎平方メートル毎ナノメートルである。
【0037】
図6に示す観察対象の分光放射輝度から観察対象の代表波長を定める。代表波長は分光放射輝度の極大値に対応する波長から選択してもよい。図6の分光放射輝度の極大値に対応する波長は470ナノメータと720ナノメータである。上記の2波長のいずれかまたは両方を代表波長としてもよい。本実施形態では470ナノメータを観察対象の代表波長とする。
【0038】
図2のステップS1040において代表波長及びxy色度図から代表波長の対比波長を求める。
【0039】
図7は、フィルタを付けていないキセノン光源111によって照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。グラフの横軸は波長を示し、単位はナノメータである。グラフの縦軸は輝度を示し、単位はワット毎ステラジアン毎平方メートル毎ナノメートルである。図7において、フラフの実線は背景の区画の分光放射輝度を示し、破線は観察対象の区画の分光放射輝度を示す。観察対象の区画の分光放射輝度は図6に示したものと同じである。
【0040】
仮に、背景が無色、または無彩色(白〜灰色)の場合、観察対象と背景とのコントラストを最大にする照明光分光分布は代表波長の光と、代表波長に対応する色と補色の関係の色に対応する波長の光と、の積で決定される。そこで、観察対象と背景とのコントラストを強調するために対比波長として代表波長に対応する色と補色の関係の色に対応する波長を選択することが考えられる。
【0041】
他方、照明方法を使用する観察者が背景の色を調整したい場合も考えられる。一例として使用者が背景の赤みを少なくしたい場合には570ナノメータ以上を使用波長禁止域Dとしてもよい。
【0042】
図8図2のステップS1040を説明するための流れ図である。
【0043】
図8のステップS2010において図3に示すxy色度図においてスペクトル軌跡上の代表波長470ナノメータに対応する点Aを定める。ここで、スペクトル軌跡とはxy色度図の外周の曲線である。
【0044】
図8のステップS2020において図3に示すxy色度図において点Aと白色点Wを結ぶ直線AWを定める。
【0045】
図8のステップS2030においてxy色度図において直線AWとスペクトル軌跡との交点Bを定める。点Bは代表波長の色と補色関係の色に対応する点である。また、点Bは代表波長470ナノメータに対応する点Aからの色差が最大の点である。
【0046】
図8のステップS2040において図3に示すxy色度図において対比波長の使用禁止波長域に対応する領域Zを定める。
【0047】
図8のステップS2050において図3に示すxy色度図において、領域Zの外側のスペクトル軌跡上の点を点Cとして、直線ABと直線ACとのなす角度θを最小とする点Cを求め、点Cに対応する波長を対比波長とする。点Cに対応する波長は使用禁止波長域Zに含まれず、代表波長と補色関係の波長に最も近い波長である。ここで、本実施形態においてフィルタの波長の間隔は10ナノメータであるので、対比波長は560ナノメータとする。
【0048】
なお、図8のステップS2010−S202050を実施する際に、スペクトル軌跡を陰関数カーブフィッティングによって表現したものを使用してもよい。
【0049】
図2のステップS1050において代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で観察対象及び背景を照射する。
【0050】
図9は、代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。図9のグラフの横軸は波長を示し、単位はナノメータである。図9の縦軸は分光放射輝度を示し、単位はワット毎ステラジアン毎平方メートル毎ナノメートルである。後で説明する図10図12及び図13のグラフの横軸及び縦軸についても同様である。
【0051】
図10は、代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
【0052】
図11は、代表波長(470ナノメータ)及び対比波長(560ナノメータ)の光で照射された、観察対象及び背景を示す画像である。図11において「front」は観察対象の領域を示し、「back」は背景の領域を示す。
【0053】
図12は、フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において1と番号を付した観察対象の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
【0054】
図13は、フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、図5において25と番号を付した背景の区画の分光放射輝度を示すグラフである。
【0055】
図14は、フィルタを付けていないキセノン光源によって照射された、観察対象及び背景を示す画像である。図14において「front」は観察対象の領域を示し、「back」は背景の領域を示す。
【0056】
本発明の照明方法による図11の画像における観察対象及び背景のJISに基づくコントラスト比は、従来の照明方法による図14の画像における観察対象及び背景のJISに基づくコントラスト比と比較して32.8%向上している。このように本発明の照明方法によって観察対象と背景とのコントラストを強調した観察に適した画像を提供することができる。
【0057】
一般的に照射される面が均等拡散反射面である場合に、面の分光放射輝度は、その面への分光放射照度とその面の分光反射率との積である。したがって、対象の分光反射率を考慮して分光照度を定めることにより該対象の視認性を向上させることができる。
【0058】
つぎに、他の実施形態として、図6の分光放射輝度のもう一つの極大値720ナノメータを代表値とした場合の対比波長の求め方を図8の流れ図にしたがって説明する。
【0059】
図15は等色関数から定めたxy色度図を示す図である。
【0060】
図8のステップS2010において図15に示すxy色度図においてスペクトル軌跡上の代表波長720ナノメータに対応する点Aを定める。
【0061】
図8のステップS2020においてxy色度図において点Aと白色点Wを結ぶ直線AWを定める。
【0062】
図8のステップS2030においてxy色度図において直線AWとスペクトル軌跡との交点Bを定める。点Bは代表波長と補色関係の波長に対応する点である。
【0063】
本実施形態では、対比波長の使用禁止波長域に対応する領域Zを定めないので点Bに対応する波長を対比波長とする。対比波長は490ナノメータである。
【0064】
つぎに、さらに他の実施形態として、図6の分光放射輝度の二つの極大値に対応する二波長470ナノメータ及び720ナノメータを代表値とした場合の対比波長の求め方を説明する。
【0065】
図16は二波長を代表値とした場合の図2のステップS1040を説明するための流れ図である。
【0066】
図17は等色関数から定めたxy色度図を示す図である。
【0067】
本実施形態では、図17に示すxy色度図において分光放射輝度の二つの極大値に対応するスペクトル軌跡の二波長を表す点の間の区間が白色点を取り囲んでいる。すなわち、白色点からスペクトル軌跡の二波長を表す点の間の区間を見込む角度が180度より大きい。
【0068】
図16のステップS3010において図17のxy色度図において代表波長720ナノメータ及び470ナノメータにそれぞれ対応する点A及び点A’を定める。
【0069】
図16のステップS3020において図17のxy色度図において点Aと白色点Wを結ぶ直線AW及び点A’と白色点Wを結ぶ直線A’Wを定める。
【0070】
図16のS3030において図17のxy色度図において直線AWとスペクトル軌跡との交点P及び直線A’Wとスペクトル軌跡との交点P’を定める。スペクトル軌跡の点P及び点P’に間の区間に両方の波長に対して視認性を向上させる波長に対応する点が存在する。
【0071】
図16のS3040において図17のxy色度図においてスペクトル軌跡上で点P及び点P’の間を移動する点をCとし、線分PCの長さと線分P’Cの長さとの和を最大とする点Cを点Bとして、点Bに対応する波長を対比波長とする。点Bに対応する波長は515ナノメータである。ここで、点Bは点Aからの色差と点A’からの色差との和が最大となる点にほぼ相当する。本実施形態においてフィルタの波長の間隔は10ナノメータであるので、対比波長は520ナノメータとする。
【0072】
代表波長として三以上の波長を選択する場合も同様の手順で対比波長を定めることができる。
【0073】
スペクトル軌跡の複数の波長を表す複数の点の座標間距離が0.1以下の場合には、該複数の波長の平均値を代表波長として図8に示した流れ図にしたがって対比波長を定めてもほぼ同様の結果が得られる。
【要約】
【課題】観察者の主観及び試行錯誤に頼ることなく観察対象の視認性を向上させる照明方法を提供する。
【解決手段】本発明の照明方法は、観察対象及び背景の照明方法であって、等色関数からxy色度図を求めるステップと、該観察対象の分光放射輝度を求め、該分光放射輝度から該観察対象の代表波長を定めるステップと、該代表波長及び該xy色度図から該観察対象及び該背景のコントラスト比を増加させるように該代表波長の対比波長を定めるステップと、該代表波長及び該対比波長の光で該観察対象及び該背景を照射するステップと、を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17