特許第6842238号(P6842238)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大和ハウス工業株式会社の特許一覧 ▶ 積水化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6842238-目地構造 図000002
  • 特許6842238-目地構造 図000003
  • 特許6842238-目地構造 図000004
  • 特許6842238-目地構造 図000005
  • 特許6842238-目地構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842238
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】目地構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20210308BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   E04B1/94 K
   E04F13/08 Y
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-26063(P2016-26063)
(22)【出願日】2016年2月15日
(65)【公開番号】特開2017-145563(P2017-145563A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100111109
【弁理士】
【氏名又は名称】城田 百合子
(72)【発明者】
【氏名】幸山 貴広
(72)【発明者】
【氏名】山村 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 公江
(72)【発明者】
【氏名】木下 昌己
(72)【発明者】
【氏名】荻野 敦史
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−146564(JP,A)
【文献】 特開2006−009428(JP,A)
【文献】 特開2015−048667(JP,A)
【文献】 特開2008−144393(JP,A)
【文献】 特開平07−252928(JP,A)
【文献】 特開平10−025830(JP,A)
【文献】 実開昭62−155145(JP,U)
【文献】 特開平06−257235(JP,A)
【文献】 特開2004−324370(JP,A)
【文献】 特開2009−179974(JP,A)
【文献】 米国特許第05070667(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/61−1/99
E04F 13/08−13/18
F16B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に形成される縦目地の構造であって、
前記外壁は、複数のパネルによって形成されたものであり、前記縦目地は、水平方向に隣接する前記パネルの間に形成されており、
前記縦目地の屋内側に位置する上下方向に延びる構造体に取付けられるジョイナと、
前記縦目地部分の屋外側を屋外側から被覆するように配置される防水用の目地キャップと、を備え、
前記目地キャップは、前記縦目地を挟んで両側に延在する前記パネルの屋外側面に沿って各々延びるキャップ延出部と、該キャップ延出部間を連結し、前記縦目地の内部へと屋内方向に突出するキャップ目地挿入部と、を備えて構成されており、
前記ジョイナには、熱膨張耐火材が配置されており、
前記目地キャップは、前記キャップ目地挿入部から前記ジョイナに向けて締結された締結部材により、前記熱膨張耐火材とともに共締めされており、
前記キャップ延出部と前記パネルの間に形成された隙間には、外部との経路を遮断するためのキャップ側シーリング材が取り付けられ、
前記キャップ目地挿入部において屋外側に形成された内部空間には、前記締結部材を覆うように第2キャップ側シーリング材が取り付けられ、
前記目地キャップの屋外側における外面が略平面となるように形成され、かつ、前記目地キャップから前記第2キャップ側シーリング材が屋外側へ突出しないように配置され
前記キャップ延出部の延出端部には、湾曲して屋内側かつ前記キャップ目地挿入部側へ向かって折返されるキャップ折返し部が形成され、
該キャップ折返し部は、前記パネルの屋外側面へと圧接されており、水平方向において前記キャップ側シーリング材とは異なる位置に配置されていることを特徴とする目地構造。
【請求項2】
前記目地キャップの屋外側における外面と、前記第2キャップ側シーリング材の外面とで連続した平面が形成されていることを特徴とする請求項に記載の目地構造。
【請求項3】
前記ジョイナは、前記縦目地を挟んで両側に延在する前記パネルの屋内側面に沿って各々延びるジョイナ取付部と、該ジョイナ取付部間を連結し、前記縦目地の内部へと屋外方向に突出するジョイナ目地挿入部と、を備えて構成されており、
前記縦目地の屋内側に位置する上下方向に延びる構造体は、鋼製の柱であり、
該柱及び前記ジョイナは、耐火被覆材によって、屋内側から被覆されており、
前記ジョイナ目地挿入部において、前記ジョイナ取付部からの屋外方向への突出長は、
前記キャップ目地挿入部の最も屋内側の部分と前記ジョイナ取付部との距離と、
前記締結部材の長さと、の差分よりも大きくなるよう構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の目地構造。
【請求項4】
前記熱膨張耐火材の外側面には、金属箔が覆設されており、
軽量鉄骨造の建物を構成する前記外壁に適用されることを特徴とする請求項1乃至請求項いずれか一項に記載の目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁等に使用される、壁体の目地部分の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁として使用される壁体として、様々なものが流通している。その中で、外壁パネルは、軽量かつハンドリングが容易であるため、広く使用されている。
このような外壁パネルは、縦横それぞれに複数個並列して1個の外壁を構成することが一般的である。
つまり、胴縁に対し、外壁パネルを複数個並列させて1個の壁体が構成されることが一般的である。
このとき、例えば、水平方向に複数の外壁パネルを並列させれば、隣接する外壁パネルの境界部分には、上下方向に走る間隙である縦目地が形成されることとなる。
このような縦目地部分は、間隙となっているため、雨水や風等が、屋外から屋内へと侵入する可能性があり、このため、当該箇所での防水対策等が必要となる。これとともに、この縦目地部分には、耐火対策を行うことも必要である。
このような防水や耐火の対策として、様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
例えば、耐火性能を高める技術として、特許文献1の技術によれば、耐火ボード間の縦目地に熱膨張耐火材を配置する技術が開示されている。
この技術では、縦目地部分には、面方向から覆うように目地部に沿って目地ジョイナが配置されている。この目地ジョイナは、耐火ボードの端面に面接触するとともに、水平方向中央部に設けられたハット部が縦目地内部に入り込むよう構成されている。
そして、ハット部の縦目地内部側の面には、熱膨張耐火材が配置されている。火災時においては、この熱膨張耐火材が膨張して縦目地を閉塞し、炎及び熱経路を遮断することとなる。
また、屋外側には、縦目地の水密性を保持するための防水性シーリング材が配置されており、防水性が確保されている。
また、特許文献2の技術によれば、パネル間に形成される縦目地部分を、金属製の目地板により屋外側から被覆するとともに、当該目地板部分を更に屋外側から、金属製の化粧カバーで被覆するよう構成されている。そして、目地板と化粧カバーとの間の空隙は、シーリング材により閉塞され、表面止水構造が構築されている。
また、断面ハット状のジョイナが使用されており、このジョイナの水平方向中央部に形成される立ち上がり部が縦目地内に配置されるよう構成されている。
そして、この立ち上がり部の縦目地内部側の面には、熱膨張耐火材が配置されている。火災時においては、この熱膨張耐火材が膨張して縦目地を閉塞し、炎及び熱経路を遮断することとなる。
このように、特許文献1及び特許文献2の技術では、防水性と耐火性とが共に確保できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−061971号公報
【特許文献2】特開平07−113306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術においては、縦目地の防水対策と防火対策は、別個に施工する必要があるものである。
しかしながら、縦目地に対し、防水及び耐火両対策がなされるべきものであり、両者が共に関連をもって配置されることで、部品点数を減らすことができるとともに、施工もまた容易となるものであり、このような技術の開発が求められている。
また、より高い性能の防水性及び耐火性を備えたいという要望がある。
【0006】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、簡易な施工を実現するとともに、高い防水性及び耐火性を共に具備することができる目地構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、外壁に形成される縦目地の構造であって、前記外壁は、複数のパネルによって形成されたものであり、前記縦目地は、水平方向に隣接する前記パネルの間に形成されており、前記縦目地の屋内側に位置する上下方向に延びる構造体に取付けられるジョイナと、前記縦目地部分の屋外側を屋外側から被覆するように配置される防水用の目地キャップと、を備え、前記目地キャップは、前記縦目地を挟んで両側に延在する前記パネルの屋外側面に沿って各々延びるキャップ延出部と、該キャップ延出部間を連結し、前記縦目地の内部へと屋内方向に突出するキャップ目地挿入部と、を備えて構成されており、前記ジョイナには、熱膨張耐火材が配置されており、前記目地キャップは、前記キャップ目地挿入部から前記ジョイナに向けて締結された締結部材により、前記熱膨張耐火材とともに共締めされており、前記キャップ延出部と前記パネルの間に形成された隙間には、外部との経路を遮断するためのキャップ側シーリング材が取り付けられ、前記キャップ目地挿入部において屋外側に形成された内部空間には、前記締結部材を覆うように第2キャップ側シーリング材が取り付けられ、前記目地キャップの屋外側における外面が略平面となるように形成され、かつ、前記目地キャップから前記第2キャップ側シーリング材が屋外側へ突出しないように配置され、前記キャップ延出部の延出端部には、湾曲して屋内側かつ前記キャップ目地挿入部側へ向かって折返されるキャップ折返し部が形成され、該キャップ折返し部は、前記パネルの屋外側面へと圧接されており、水平方向において前記キャップ側シーリング材とは異なる位置に配置されていることにより解決できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る目地構造によれば、屋外側は目地キャップにより防水され、屋内側は、ジョイナにより耐火機能を有する熱膨張耐火材が支持されるように構成されており、防水性及び耐火性を共に備える。
そして、この目地キャップは、締結部材により、熱膨張耐火材とともに共締めされる構成となっている。
このように、本発明に係る目地構造では、防水性と耐火性との双方を備えるのみならず、双方が共に関連をもって配置されることで締結が実行されるため、部品点数を低減することができるとともに、施工が容易となる。
このように、本発明に係る目地構造によれば、簡易な施工を実現するとともに、高い防水性及び耐火性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る耐火壁の概略説明図である。
図2図1のX−X線断面図である。
図3図2のY部拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係る目地キャップとジョイナとを示す端面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る各部品のサイズ関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
また、本実施形態においては、耐火壁を一例として説明するが、その形状等は耐火壁が適用される場所や躯体との取合い等によって適宜変更可能であるものとする。また、縦目地の形状や本数等もまた、例に限られることはなく、適宜変更することができることは勿論のことである。
【0011】
図1乃至図5は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は耐火壁の概略説明図、図2図1のX−X線断面図、図3図2のY部拡大図、図4は目地キャップとジョイナとを示す端面図、図5は各部品のサイズ関係を示す説明図である。
なお、図1は、一部内部が露出するように図示している。
【0012】
<耐火壁の構成について>
図1により、本実施形態に係る耐火壁1について説明する。
本実施形態においては、耐火壁1として、外壁を構成する壁体の例を説明する。
なお、本実施形態に係る縦目地M2の構造は、軽量鉄骨造の建物に対し有効に適用することができる。
軽量鉄骨造とは、階層が3階層以下であり、使用される鉄骨の板厚が6mm以下であるものを指す。
つまり、本実施形態に係る構造は、このような薄い鋼材により骨組みが形成される建物において、好適に適用されるものである。
【0013】
本実施形態に係る耐火壁1は、外壁パネル11、下張部材12、フレーム13、を有して構成されている。
外壁パネル11は、所謂金属サンドイッチパネルであり、芯材11A、表面材11B、裏面材11C、を有して構成されている。
芯材11Aは、矩形ボード状に形成された耐火部材で構成されており、その表面には、金属製の表面材11Bが貼設されるとともに、裏面には金属製の裏面材11Cが貼設されている。
芯材11Aを構成する耐火部材は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、どのようなものが使用されていてもよいが、本実施形態においては、ロックウール保温板が使用されている。
また、この表面材11B及び裏面材11Cについてもまた、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、どのような薄板でもよいが、本実施形態では、アルミニウム鋼板が使用されている。
【0014】
なお、本実施形態においては、図1に示すように、屋外側を耐火壁1の表面側とし、屋内側を耐火壁1の裏面側とする。
また、本実施形態において、外壁パネル11は、表裏面に金属板を配置した金属サンドイッチパネルの構造を採る例を示したが、これに限られることはなく、少なくとも裏面材11Cが配置されていればよい。
つまり、表面材11Bに関しては、必須構成ではなく、金属板以外の矩形板状体が貼設されていてもよいし、シート材が貼設されたような構成であってよい。
【0015】
更に、本実施形態のおいては、耐火壁1は、その外装として、複数個の外壁パネル11が整列して構成されている。
このため、高さ方向沿って並列した外壁パネル11,11間には、横目地M1が形成されるとともに、水平方向に沿って並列した外壁パネル11,11間には、縦目地M2が形成されることとなる。
しかしながら、これに限られることはなく、本発明の趣旨に逸脱しない範囲において(縦目地が形成される構成であれば)、1単位の耐火壁1を構成するための外壁パネル11の個数や形状、及び、張り方等は適宜変更できるものとする。
【0016】
本実施形態に係る下張部材12は、矩形状の下張のための板材であり、裏面材11Cの裏面側(屋内側であって、芯材11Aと接する側と反対側の面)に貼設されている。
本実施形態に係るフレーム13は、矩形に組まれた枠体であり、上方枠13A(図示せず)、下方枠13B、左右(図2における方向)2個の縦枠13C(図示せず)、3個の胴縁13D、を有して構成されている。
なお、当該構成は一例であり、胴縁13Dの本数、配置等は適宜変更することが可能である。
上方枠13A及び下方枠13Bは、同長同形状の軽量鉄骨製の長尺部材であり、縦枠13Cは、軽量鉄骨製の略コ字形状断面の長尺部材である。
【0017】
上方枠13Aの両端部と、下方枠13Bの両端部と、の間に縦枠13C,13Cがわたされることにより、矩形の枠状体が形成されており、左右の縦枠13C,13Cの間に、この縦枠13Cと同長同形状の胴縁13Dが配置されている。
この胴縁13Dは、縦枠13C,13Cと平行となるように、上方枠13Aと下方枠13Bとの間にわたされている。本実施形態においては、左右方向中央部付近に1本の胴縁13Dが配置され、左右の縦枠13C,13Cに近接して、胴縁13D,13Dが一本ずつ配置されている。また、本実施形態において胴縁13Dは、リップ付溝型鋼形状に形成されている。
なお、本実施形態においては、左右方向中央部付近に配置された胴縁13Dが、縦目地M2に近接するよう構成されている(つまり、縦目地M2もまた、左右方向中央部付近に形成されていることとなる)。
【0018】
このように構成された胴縁13Dは、外壁パネル11の裏面側に取付けられる。
具体的には、裏面材11Cの屋内側面に貼設された下張部材12の屋内側面に取付けられることとなる。
そして、フレーム13を構成する胴縁13Dが建物の荷重支持部材である柱H1に取付けられることとなる。
なお、本実施形態においては、縦目地M2が形成されている部分の屋内側において、柱H1と胴縁13Dが連結される構成を示した。
【0019】
以上のように構成された各部品により本実施形態に係る耐火壁1は構成されている。
簡単に説明すると、本実施形態に係る耐火壁1は、芯材11Aの表裏面に金属製の表面材11B及び裏面材11Cが貼付された外壁パネルに対し、裏面材11Cの屋内側面に下張部材12を貼設し、更に、この下張部材12の屋内側面にフレーム13を設置することにより構成されている。
【0020】
<縦目地の構造について>
次いで、図2乃至図5により、本実施形態に係る縦目地M2の周りの防水構造及び耐火構造について説明する。
まず、縦目地M2の屋内側に配置される耐火構造について説明する。
図2及び図3に示すように、縦目地M2部分の屋内側面には、ジョイナ2が配置されており、屋外側面には、目地キャップ3が配置されている。
ジョイナ2は、長尺状の部材であり、縦目地M2に対向して上下方向に延びる屋内側の長尺部材に取付けられる。
このジョイナ2は、外壁パネル11を取り付ける際に、縦目地M2幅を適正に確保しながら取付け位置を示唆するためのものである。換言すれば、水平方向に並列する外壁パネル11,11の境界部分(縦目地M2部分)のサイズを確保し、正しい位置を示唆するものである。
【0021】
図4(a)にジョイナ2の端面図を示した。ジョイナ2は、長尺状の部材であり、屋外方向に底面を持ち屋内方向に開口する断面コ字形状のジョイナ目地挿入部21と、このジョイナ目地挿入部21の両屋内側端辺から各々延出する略長方形状板体のジョイナ取付部22と、により構成されている。
このジョイナ取付部22,22は、ジョイナ目地挿入部21の底面と平行に(つまり、水平面と平行に)延出している。
つまり、ジョイナ2は、ジョイナ目地挿入部21の両屋内側端部から、ジョイナ取付部22,22が延出したもので、端面形状がハット形状となるように構成された長尺部材である。
なお、ジョイナ目地挿入部21の底面を「ジョイナ底面21a」と記す。
【0022】
本実施形態においては、ジョイナ2は、図2及び図3に示すように、柱H1の屋外側を向く面に取付けられる。
詳しく説明すると、ジョイナ2は、ジョイナ目地挿入部21が、屋外側へと突出する方向へと向けられる。そして、ジョイナ取付部22,22は、柱H1の屋外側面に当接させられ、この状態において、当該ジョイナ取付部22,22が、柱H1に締結部材V1により留め付けられる。
そして、このとき、ジョイナ目地挿入部21は、縦目地M2内に配置されている。
なお、施工手順においては、柱H1に取付けられたジョイナ2のジョイナ目地挿入部21を縦目地M2位置の目印として、このジョイナ目地挿入部21の水平方向両側へ、外壁パネル11,11が並列されることとなる。
【0023】
このように配置されたジョイナ2を構成しているジョイナ目地挿入部21は、図2及び図3に示すように、縦目地M2内に配設されるようになる。
そして、本実施形態においては、このジョイナ目地挿入部21の外側面(屋外側を向いている面)に、熱膨張耐火材5が貼設されている。
この熱膨張耐火材5は、ジョイナ目地挿入部21の底面部分だけではなく、側面部分にも配置されている。つまり、ジョイナ目地挿入部21の突出部分を屋外側から覆うように配置されている。
【0024】
このように配置されているため、図3の二点鎖線のように膨張した際に、厚み方向のみならず水平方向へも熱膨張耐火材5が膨張し、縦目地M2部分を効率良く閉塞することができるようになる。
なお、この熱膨張耐火材5の外側面は、金属箔で覆われていると好適である。
このように構成することにより、柱H1への伝熱低減が期待できる。
【0025】
熱膨張耐火材5としては、エポキシ樹脂系、ブチルゴム系等、どのような素材のものが使用されていてもよいが、本実施形態においては、ブチルゴム系の熱膨張耐火材5が使用されている。
このようにブチルゴム系の素材を選択すると、その防水性により、通常時には、この熱膨張耐火材5が防水用シーリングとして機能し、火災時等には、膨張して耐火材としての機能を果たすことができる。
このように、本実施形態に係る熱膨張耐火材5は、2つの機能を併せ持つことができる。
【0026】
また、本実施形態においては、所定の部品間の空隙にシーリング材4が配置され、防水性を確保している。本実施形態において、ジョイナ取付部22,22の屋外側面と、下張部材12と、の間には、第1シーリング材41,41が配置されている。本実施形態においては、この第1シーリング材41は、シール材で構成されている。このように、ジョイナ2周りもまた防水性が確保されている。
以上のように、本実施形態においては、熱膨張耐火材5によって、耐火に対する措置が施されている。
【0027】
次いで、屋外側に配置される防水構造について説明する。
図2及び図3に示すように、縦目地M2部分の屋外側面には、目地キャップ3が配置されている。
目地キャップ3は、長尺状の部材であり、縦目地M2を屋外側から被覆しながら上下方向に延びるよう設置されている。
この目地キャップ3は、上記のように、縦目地M2の屋外側を被覆するとともに、当該部分の意匠性を確保するための化粧部材ともなるものである。
【0028】
図4(b)に目地キャップ3の端面図を示した。
目地キャップ3は、長尺状の部材であり、屋内方向に底面を持ち屋外方向に開口する断面コ字形状のキャップ目地挿入部31と、このキャップ目地挿入部31の両屋外側端辺から各々延出する略長方形状板体のキャップ延出部32と、により構成されている。
このキャップ延出部32,32は、キャップ目地挿入部31の底面と平行に(つまり、水平面と平行に)延出している。
つまり、目地キャップ3は、キャップ目地挿入部31の両屋外側端部から、キャップ延出部32,32が延出したもので、端面形状がハット形状となるように構成された長尺部材である。
なお、キャップ目地挿入部31の底面を「キャップ底面31a」と記す。
【0029】
また、本実施形態においては、キャップ延出部32の一端が、端面形状が略J字形状となるように折返されている。
詳細には、キャップ延出部32の一端は、緩やかに湾曲して屋内側かつ目地キャップ3の水平方向中央部側へ向かって折返される。
当該折返された部分を、「キャップ折返し部32a」と記す。
【0030】
目地キャップ3は、キャップ目地挿入部31が縦目地M2内に配置されるとともに、両キャップ延出部32,32が、縦目地M2を挟んで並列する表面材11B,11Bの屋外側面に配置される。
このとき、キャップ折返し部32a,32aが、表面材11B,11Bの屋外側面へと圧接している。
後述するが、目地キャップ3は、第2締結部材V2により、ジョイナ2に留め付けられる(屋内方向へ向けて留め付けられる)が、このように取付けられると、キャップ折返し部32a,32aが、その弾性により表面材11B,11Bの屋外面へと圧接されることとなる。
また、このように、キャップ折返し部32a,32aが形成されているため、作業者がエッジ(切断部分)に直接接触することを回避することができる。このため、取扱い性が良好であり、作業性が向上する。
【0031】
以下、縦目地M2の防水構造について詳しく説明する。
なお、本実施形態においては、表面材11Bの上下方向に延びる両端部は、一端側が箱折有タイプで、他端側が箱折無のタイプのものが使用されている。
このため、縦目地M2には、箱折無の端部と箱折有の端部とが水平方向に対面することとなる。
箱折無の側は、表面材11Bの目地側端部が、屋内方向へと略垂直に屈曲している。
この略垂直に屈曲して縦目地M2内を屋内側へと延びている略長方形状板体の部分を「箱折無垂下部111」と記す。
また、箱折有の側は、表面材11Bの目地側端部が、屋内方向へと略垂直に屈曲した後、最屋内側で縦目地M2内部方向へと更に略垂直に屈曲している。
このように、端面略L字形状に屈曲した部分を「箱折有L状部112」と記す。
【0032】
上記のように形成された箱折無垂下部111と、箱折有L状部112と、は、縦目地M2内に配置されるが、このとき、両者により囲まれ、屋外側へと開口した空間K1が形成される。
この空間K1には、第2シーリング材42が配置されている。本実施形態においては、この第2シーリング材は、目地充填材で構成されている。なお、箱折有L状部112のうち水平方向に延びる部分の奥側側面には、ボンドブレーカが配置されているとよい。
また、箱折無垂下部111と芯材11Aの縦目地M2側端面との間や、箱折有L状部112と芯材11Aの縦目地M2側端面との間に、パッキン材等が介在するよう構成されていてもよい。
【0033】
以上のように、空間K1には、第2シーリング材42が配置されるが、この第2シーリング材42が配置された空間K1に目地キャップ3が配置される。
目地キャップ3は、キャップ目地挿入部31が、屋内側へと突出する方向へと向けられ、空間K1に挿入される。つまり、第2シーリング材42と厚み方向に対向するように配置されることとなる。
そして、キャップ折返し部32a,32aが、表面材11B,11Bの屋外側面へと当接するように配置される。
このとき、キャップ延出部32,32の屋内側を向く面には、第3シーリング材43,43が配置されている。本実施形態においては、この第3シーリング材43は、樹脂製(合成ゴムを含む)のパッキン材として構成されている。この第3シーリング材43は、目地キャップ3が取付けられた状態において、キャップ延出部32,32と、表面材11B,11Bとの間に介在して外部との経路を遮断する。
【0034】
このように、キャップ折返し部32a,32aが、表面材11B,11Bの屋外側面へと当接するように配置された状態で、第2締結部材V2をキャップ底面31aからジョイナ底面21aへと(第2シーリング材42及び箱折有L状部を貫通させて)締結することにより、目地キャップ3を取付ける。
こうして、第2締結部材V2により締結された状態では、目地キャップ3は、屋内方向への力が付加されることから、キャップ折返し部32a,32a及び第3シーリング材43,43は、表面材11B,11Bの屋外側面へと圧接する。
また、ジョイナ目地挿入部21の屋外側面には、熱膨張耐火材5が配置されているため、このように第2締結部材V2により締結が行われると、この熱膨張耐火材5もまた、同時に共締めされる。
【0035】
こうして、キャップ折返し部32a,32a及び第3シーリング材43,43により、二重に外部との経路が遮断されることとなる。
そして、本実施形態においては、第2締結部材V2として、螺子部材が使用されており、キャップ目地挿入部31と第2締結部材V2の頭部との間には、第4シーリング材44が配置される。本実施形態においては、この第4シーリング材44は、目地充填材で構成されている。
なお、第4シーリング材44と第2締結部材V2の頭部との間には、バックアップ材を介在させることが望ましい。
【0036】
このように、第2締結部材V2を留め付けるために、各部品は図5に示すようなサイズ構成となっている。
本実施形態においては、第2締結部材V2をジョイナ底面21aに向かって締結させるために、ジョイナ目地挿入部21の突出長t1を調整した。
なお、本実施形態において、第2締結部材V2の長さを長さt2とし、キャップ底面31aとジョイナ底面21aとの距離を距離t3とし、キャップ底面からジョイナ取付部22までの距離を距離t4とする。
【0037】
このように規定すると、距離t3<長さt2となるように、突出長t1を設定した。
つまり、距離t3=距離t4−突出長t1<長さt2であればいい。
よって、突出長t1>距離t4−長さt2となるように設定すればよい。
通常は、ジョイナ2は、水平方向に隣接する外壁パネル11,11の立設に対し、位置を示唆するための機能を果たすため、ジョイナ目地挿入部21の突出長t1に関しては、当該機能が発揮できれば、特別注目する必要はなく、まして大きくする必要はない。
しかしながら、本実施形態においては、ジョイナ目地挿入部21は、熱膨張耐火材5を配置するための土台となるとともに、防水機能を有する目地キャップ3を留め付けるための土台としても機能するものとなる。そして、この第2締結部材V2はまた、熱膨張耐火材5もまた共締めすることができる。
このため、本実施形態においては、従来技術においては、注目されなかったジョイナ目地挿入部21の突出長を調整し、従来技術では成し得ない、上記機能を備えたものである。
更に、本実施形態においては、下張部材12が使用されているため、この下張部材12の厚さ分、従来品よりも突出長t1を大きくする必要もある。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る目地キャップ3によれば、縦目地M2を上下方向全長に亘って被覆することができるとともに、第3シーリング材43及び第4シーリング材44を配置することにより、防水性を高めることができる。
また、キャップ折返し部32a,32aを形成することにより、巻き込み効果と弾性効果とにより、目地キャップ3の上下方向に延びる両端部の水密性を向上させることができる。
更に、表面材11B,11Bの端部構造及びそこに配置される第2シーリング材42により、目地キャップ3の屋内側においても、更に防水性を高めることができる。
【0039】
しかも、本実施形態によれば、屋内側に備えられたジョイナ2に、目地キャップ3を留め付けることができるため、作業が容易である。また、このジョイナ2には、熱膨張耐火材5が備えられている。
また、本実施形態においては、柱H1の屋内側から下張部材12の屋内側面に至るように、耐火被覆材6が覆設されている。
このように、本実施形態に係る縦目地M2部分においては、高い耐火性能が確保されている。
以上のように、本実施形態において、縦目地M1の構造は、耐火構造と防水構造とが共働するよう備えられている。
このため、高い耐火性能と防水性能を確保しつつ、施工が簡易になり、好適である。
【0040】
このように、本発明に係る目地構造によれば、縦目地M2の屋外側は目地キャップ3により防水され、屋内側は、ジョイナ2により耐火機能を有する熱膨張耐火材5が支持されるように構成されている。
そして、この目地キャップ3は、キャップ目地挿入部31からジョイナ目地挿入部21に向けて締結された第2締結部材V2により、熱膨張耐火材5とともに共締めされる構成となっている。
つまり、防水性と耐火性との双方を備えるのみならず、双方が共に関連し合うことで締結が実行される。
よって、双方を別個に留め付けるための構造が不要となり、部品点数が低減するとともに、施工が容易となる。
このように本実施形態に係る目地構造によれば、部品点数を減らし、施工性を向上させるとともに、耐火性及び防水性を共に具備することが可能となる。
これは、両者を別個に施工する従来技術には無い思想であり、従来技術には無い効果である。
【0041】
また、このとき、縦目地M2の屋内側に位置する鋼製の柱及びジョイナ2は、耐火被覆材5によって、屋内側から被覆される構成をとる。
このように、構成されていると、より耐火性能を高めることができるため好適である。
【0042】
具体的な構成としては、ジョイナ目地挿入部21において、ジョイナ取付部22からの屋外方向への突出長は、キャップ目地挿入部31の最も屋内側の部分とジョイナ取付部21との距離と、前記締結部材の長さと、の差分よりも大きくなるよう構成されている。このように構成されているため、目地キャップ3を構成するキャップ目地挿入部31から、ジョイナ2を構成するジョイナ目地挿入部21へと、締結部材V2を締結することができる。
【0043】
また、熱膨張耐火材5の外側面には、金属箔が覆設されていると、ジョイナ2が取付けられる鋼製の柱への伝熱低減が期待されるため好適である。
【0044】
更に、本実施形態に係る目地構造は、軽量鉄骨造の建物を構成する耐火壁1に適用されると好適である。本実施形態に係る耐火壁1は外壁パネル11で構成されており、よって、軽量鉄骨造の建物の耐火壁1として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 耐火壁(外壁)
11 外壁パネル
11A 芯材
11B 表面材
111 箱折無垂下部
112 箱折有L状部
11C 裏面材
12 下張部材
13 フレーム
13A 上方枠
13B 下方枠
13C 縦枠
13D 胴縁
2 ジョイナ
21 ジョイナ目地挿入部
21a ジョイナ底面
22 ジョイナ取付部
3 目地キャップ
31 キャップ目地挿入部
31a キャップ底面
32 キャップ延出部
32a キャップ折返し部
4 シーリング材
41 第1シーリング材
42 第2シーリング材
43 第3シーリング材(キャップ側シーリング材)
44 第4シーリング材(第2キャップ側シーリング材)
5 熱膨張耐火材
6 耐火被覆材
M1 横目地
M2 縦目地
V1 第1締結部材
V2 第2締結部材(締結部材)

図1
図2
図3
図4
図5