(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
アイスクリーム類の定義と規格は、厚生労働省の乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令、最終改正:平成26年12月25日)と「食品、添加物等の規格基準」の二つにおいて定められている。乳等省令においては、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)と定義されている。
アイスクリーム類は、「アイスクリーム」(乳固形分15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上)、「アイスミルク」(乳固形分10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上)、「ラクトアイス」(乳固形分3.0%以上)、「氷菓」(上記以外のもの)を包含する概念である。
本発明のアイスクリーム類は、効果を有効に発現する点から、アイスクリーム、アイスミルク又はラクトアイスが好ましい。
【0011】
本発明のアイスクリーム類は乳脂肪球皮膜成分を含有する。
乳脂肪球皮膜成分は、乳脂肪球を被覆している膜、及び膜を構成する成分の混合物と定義されている。乳脂肪球皮膜は、一般的に、乾燥重量の約半分が脂質で構成され、当該脂質としては、トリグリセライドやリン脂質、スフィンゴ糖脂質が含まれることが知られている(三浦晋、FOOD STYLE21、2009及びKeenan TW、Applied Science Publishers、1983、pp89−pp130)。リン脂質としては、スフィンゴミエリン(SM)等のスフィンゴリン脂質、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)やホスファチジルセリン(PS)等のグリセロリン脂質が含まれることが知られている。
また、脂質以外の成分としては、ミルクムチンと呼ばれる糖タンパク質が含まれることが知られている(Mather、Biochim Biophys Acta、1978)。
【0012】
本発明で用いられる乳脂肪球皮膜成分は、コク味を付与し、口どけを良好とする点から、乳脂肪球皮膜成分中の脂質の含有量が、10質量%(以下、単に「%」とする)以上、更に20%以上、更に30%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100%以下、更に90%以下、更に60%以下であるのが好ましい。
【0013】
乳脂肪球皮膜成分は、製造後、特に長期保存後において保型性を良好とする点、コク味を付与し、口どけを良好とする点から、乳脂肪球皮膜成分中のリン脂質の含有量が5%以上、更に8%以上、更に10%以上、更に15%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100%以下、更に85%以下、更に70%以下、更に60%以下であるのが好ましい。
【0014】
乳脂肪球皮膜成分は、製造後、特に長期保存後において保型性を良好とする点、コク味を付与し、口どけを良好とする点から、乳脂肪球皮膜成分中のスフィンゴミエリン(SM)の含有量が、1%以上、更に2%以上、更に3%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、50%以下、更に30%以下、更に25%以下、更に20%以下であるのが好ましい。
同様の点から、乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、3%以上、更に5%以上、更に10%以上、更に15%以上であるのが好ましく、また、50%以下、更に40%以下、更に35%以下、更に30%以下であるのが好ましい
【0015】
乳脂肪球皮膜成分は、風味・製造性の点から、乳脂肪球皮膜成分中のホスファチジルセリン(PS)の含有量が0.5%以上25%以下が好ましく、1%以上10%以下がより好ましい。
【0016】
さらに、乳脂肪球皮膜成分は、風味・製造性の点から、乳脂肪球皮膜成分中のホスファチジルコリン(PC)の含有量が0.01%以上が好ましい。
尚、本明細書において、乳脂肪球皮膜成分中の脂質、リン脂質の含有量、並びに乳脂肪球皮膜成分の全リン脂質中のスフィンゴミエリンの含有量は、乳脂肪球皮膜成分の乾燥物に対する質量割合とする。
【0017】
乳脂肪球皮膜成分は、原料乳から遠心分離法や有機溶剤抽出法等の公知の方法により得ることができる。例えば、特開平3−47192号公報に記載の乳脂肪球皮膜成分の調製方法を用いることができる。また、特許第3103218号公報、特開2007−89535号公報に記載の方法等を用いることができる。さらに、透析、硫安分画、ゲルろ過、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、溶媒分画等の手法により精製することにより純度を高めたものを用いてもよい。
乳脂肪球皮膜成分の形態は、特に限定されず、室温(15〜25℃)で液状、半固体状(ペースト等)、固体状(粉末、固形、顆粒等)等のいずれでもよく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよいが、好ましくは固体状(粉末)である。
【0018】
乳脂肪球皮膜成分の原料乳としては、牛乳やヤギ乳等が挙げられる。なかでも、食経験が豊富であり、安価な点から、牛乳が好ましい。また、原料乳には、生乳、全粉乳や加工乳等の乳の他、乳製品も含まれ、乳製品としては、バターミルク、バターオイル、バターセーラム、ホエータンパク質濃縮物(WPC)等が挙げられる。
バターミルクは、牛乳等を遠心分離して得られるクリームからバター粒を製造する際に得られ、当該バターミルク中に乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターミルクをそのまま使用してもよい。同様に、バターオイルを製造する際に生じるバターセーラム中にも乳脂肪球皮膜成分が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜成分としてバターセーラムをそのまま使用してもよい。
【0019】
乳脂肪球皮膜成分は、市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、メグレジャパン(株)「BSCP」、雪印乳業(株)「ミルクセラミドMC−5」、(株)ニュージーランドミルクプロダクツ「Phospholipid Concentrate シリーズ(500,700)」等が挙げられる。
【0020】
本発明のアイスクリーム類中、乳脂肪球皮膜成分の含有量は0.5%以上であるが、製造後、特に長期保存後において保型性を良好とする点、コク味を付与し、口どけを良好とする点から、より好ましくは0.8%以上である。また、乳脂肪球皮膜成分の量が増えると乳臭さがでてきて後味に影響する傾向があるため、後味のキレを良好とする点、及び溶けにくさの点から、上限は好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下である。
【0021】
また、本発明のアイスクリーム類中のリン脂質の含有量は、同様の点から、好ましくは0.5%以上2.5%以下である。
【0022】
さらに、本発明のアイスクリーム類中、ホスファチジルセリン(PS)の含有量は、同様の点から、好ましくは0.005%以上0.5%以下であり、より好ましくは0.01%以上0.2%以下である。
【0023】
本発明のアイスクリーム類は、ホスファチジルコリン(PC)の含有量に対するスフィンゴミエリン(SM)の含有量の比(含有質量比)[SM/PC]が0.5以上1以下である。スフィンゴミエリンをアイスクリーム類中のホスファチジルコリンに対して一定範囲で含むと、製造直後から長期に渡ってアイスクリーム類の品質が安定化し、オーバーランを高く設定しても保型性に優れる。スフィンゴミエリンとホスファチジルコリンの比(質量比)[SM/PC]は、斯かる点から、好ましくは0.5以上0.8以下である。
【0024】
本発明のアイスクリーム類中、ホスファチジルコリン(PC)の含有量は、製造後、特に長期保存後において保型性を良好とする点から、好ましくは0.01%以上0.8%以下であり、より好ましくは0.1%以上0.5%である。
【0025】
さらに、本発明のアイスクリーム類中、スフィンゴミエリン(SM)の含有量は、製造後、特に長期保存後において保型性を良好とする点から、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.07%以上である。また、風味、溶けにくさの点から、好ましくは0.8%以下であり、より好ましくは0.4%以下である。
尚、本発明のアイスクリーム類における乳脂肪球皮膜成分の含有量、リン脂質の含有量には、乳脂肪球皮膜成分として配合されたもの以外にも他のアイスクリーム類原料由来のものが含まれる。
【0026】
アイスクリーム類の原料である乳としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳等が挙げられる。
【0027】
本発明のアイスクリーム類は、さらに、卵黄を含有することができる。
卵黄は、生、凍結、粉末、加塩、加糖等任意の形態でよく、卵白を含んだ全卵の形態で配合してもよい。また、酵素処理されたものを用いてもよい。
アイスクリーム類中の卵黄の含有量は、風味点から、液状卵黄換算で、好ましくは5%以上である。
【0028】
本発明のアイスクリーム類は、さらに、糖類を含有することができる。
糖類としては、例えば、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等の単糖類;ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース等のニ糖類が挙げられる。また、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップ、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、アガペエキス、蜂蜜等の混合単糖や、ケーンシュガーやメイプルシロップ等を用いることができる。
アイスクリーム類中、糖類の含有量は、アイスクリーム類に甘味を十分付与する点から、1〜65%が好ましく、更に5〜40%、更に10〜20%が好ましい。
【0029】
アイスクリーム類は、所望により、オリゴ糖や糖アルコール、天然甘味料又は人工甘味料を含有してもよい。
オリゴ糖としては、三糖類としてラフィノース、パノース、メレジトース、ゲンチアノー等が挙げられ、四糖類としてスタキオ−ス等が挙げられる。
糖アルコールとしては、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、パラチノース、マンニトール等が好適に使用される。
アイスクリーム類中のオリゴ糖又は糖アルコールの含有量は、1〜65%が好ましく、更に5〜40%、更に10〜20%が好ましい。
【0030】
人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、サッカリン、シクラメート、アセスルファム−K、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料、L−アスパルチル−D−アラニンアミド、L−アスパルチル−D−セリンアミド、L−アスパルチル−ヒドロキシメチルアルカンアミド甘味料、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド甘味料等の高甘味度甘味料、ソーマチン、グリチルリチン、合成アルコキシ芳香族化合物等が挙げられる。更に、ステビオシド及び他の天然源の甘味料も使用できる。
アイスクリーム類中、天然甘味料又は人工甘味料の含有量は、0.0001〜5.0%が好ましく、更に0.001〜2.0%、更に0.001〜1.0%が好ましい。
【0031】
本発明のアイスクリーム類には、上記成分の他に本発明の効果を損なわない範囲においてアイスクリーム類に含まれ得る成分、例えば、食用油脂;香辛料、着色料、保存料、乳化剤、増粘多糖類、果汁、果肉、香料等が適宜配合されていても良い。
【0032】
本発明のアイスクリーム類は、その全体中に固形分を20〜50%、更に22〜40%、更に25〜38%含有させることが、保型性に優れる点から好ましい。
【0033】
本発明のアイスクリーム類は、後掲の実施例に記載の方法により測定される円の侵入速度(1.5mm侵入時の応力)が、25℃において、好ましくは80g以上であり、より好ましくは95g以上、更に好ましくは100g以上である。この値が大きい程、溶け難く、保型性に優れると評価できる。
【0034】
また、本発明のアイスクリーム類は、後掲の実施例に記載の方法により測定される形態保持率が好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。この形態保持率が高い程、長期保存後においても良好な保型性が維持され、アイスクリーム類の品質安定性が高いと評価できる。
後記実施例に示すとおり、アイスクリーム類に乳脂肪球皮膜成分を配合し、アイスクリーム類中にホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルコリン(PC)及びスフィンゴミエリン(SM)を含み、スフィンゴミエリンとホスファチジルコリンの比(質量比)[SM/PC]が0.5以上1以下の範囲で含むようにすることで、オーバーランを高く設定しても、製造後、特に長期保存後の保型性が改善されたことから、乳脂肪球皮膜成分はアイスクリーム類の保型性改善に有用であり、また、食感及び風味改善に有用である。
【0035】
本発明のアイスクリーム類は、いずれの方法で製造してもよい。例えば、乳脂肪球皮膜成分と、更に必要により卵黄、糖類、乳化剤等の原料を混合して均質化(乳化)し、殺菌後、必要に応じてエージングを行って、更にフリージングすることによって製造することができる。エージング、フリージングの温度は、適宜設定することができる。
また、フリージング後、アイスクリーム類を容器に詰め、更に冷凍硬化させてもよい。
このように製造することにより、いずれのタイプでも製造することが可能である。
本発明のアイスクリーム類を容器詰して提供する場合、一般のアイスクリーム類と同様の包装材料を使用することができる。また、コーン、ワッフル生地等に充填して提供することもできる。
【実施例】
【0036】
〔乳脂肪球皮膜成分〕
乳脂肪球皮膜成分は牛乳から調製したものを使用した。
乳脂肪球皮膜成分の含水量は3.7%であった。乳脂肪球皮膜成分の組成は、乾燥物換算で、脂質:25.1%であった。また、乳脂肪球皮膜成分中、リン脂質の含有量は乾燥物換算で18%であり、スフィンゴミエリン(SM)の含有量は4.05%、ホスファチジルセリン(PS)の含有量は2.25%、ホスファチジルコリン(PC)の含有量は4.78%であった。
【0037】
〔全粉乳〕
(株)明治製の全粉乳を用いた。
全粉乳の含水量は3.7%であった。全粉乳の組成は、乾燥物換算で、脂質:23.6%であった。また、全粉乳中、リン脂質の含有量は乾燥物換算で0.34%であり、スフィンゴミエリン(SM)、ホスファチジルセリン(PS)及びホスファチジルコリン(PC)の含有量は0%であった。
【0038】
また、次の原料を用いた。
牛乳:明治おいしい牛乳(株式会社明治)、リン脂質の含有量0.0033%、スフィンゴミエリン(SM)の含有量0.0008%
生クリーム: めいらく スジャータホイップ(スジャータ めいらくグループ)、リン脂質の含有量0.123%、スフィンゴミエリン(SM)の含有量0.0012%
卵黄:リン脂質の含有量8.99%、スフィンゴミエリン(SM)の含有量0.41%
上白糖:精製上白糖(大日本明治製糖(株)、含水量0.4%)
乳化剤:レシチン(イレルキンTS、ADM社)、リン脂質の含有量50.4%、ホスファチジルコリン(PC)の含有量50.4%
安定剤:ペクチン(GENU pectin type AS Confectionery−J、GENU社)
【0039】
上記の乳脂肪球皮膜成分及びその他成分の分析は次のとおり行った。
【0040】
(1)脂質の分析
脂質量は酸分解法で求めた。試料を1g量りとり、塩酸を加え分解した後、ジエチルエーテル及び石油エーテルを加え、攪拌混和した。エーテル混合液層を取り出し、水洗した。溶媒を留去させ、乾燥させた後、重量を秤量することで脂質量を求めた。
【0041】
(2)水分量の分析
水分量は常圧加熱乾燥法(105℃4時間乾燥させ重量測定)により求めた。
【0042】
(3)リン脂質の分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち2mLを分取し、溶媒留去後、550℃16時間加熱処理により灰化した。灰分を6M塩酸水溶液5mLに溶解後、蒸留水を添加し、総量を50mLとした。3mLを分取し、モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をリン脂質量とした。
【0043】
(4)スフィンゴミエリンの分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち10mLを分取し、シリカカートリッジカラムに添加した。カラムをクロロホルム20mLで洗浄後、メタノール30mLでリン脂質を溶出し、溶媒留去後クロロホルム1.88mLに溶解した。シリカゲル薄層プレートに20μLを負荷し、1次元展開溶媒としてテトラヒドロフラン:アセトン:メタノール:水=50:20:40:8(V/V)、2次元展開溶媒としてクロロホルム:アセトン:メタノール:酢酸:水=50:20:10:15:5(V/V)を用いて2次元展開を行った。展開後の薄層プレートにディトマー試薬を噴霧し、スフィンゴミエリンのスポットをかきとり、3質量%(V/V)硝酸含有過塩素酸溶液2mL添加後、170℃3時間の加熱処理を行った。蒸留水5mL添加後モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をスフィンゴミエリン量とした。
【0044】
試験例1〜6
〔ラクトアイスの調製〕
次の工程でラクトアイスを製造した。
表1に示す処方で、牛乳、生クリーム、卵黄、上白糖、乳脂肪球皮膜成分又は全粉乳、乳化剤、安定剤を85℃まで加温し、溶解させてパドルミキサーを使用して10分間混合予備乳化を行った。その後、ゴーリン高圧ホモゲナイザーを用いて150kg/cm
2の条件で乳化を1回行った。得られた乳化物を85℃まで加温し、殺菌した後、5℃まで冷却し、そのまま保温して一昼夜エージングを行った。
エージング後の混合物をアイスクリームフリーザー(エフ・エム・アイ(株)製)に仕込み、最大オーバーランになるように撹拌しながら−20℃で凍結し、ラクトアイスを製造した。
【0045】
〔製造一日後の評価〕
(1)侵入度評価
製造一日後の試験品を室温(25℃)に放置し、5分後及び10分後に丸型(棒)調式テンションゲージ(大場計器製作所製、円の直径9mm、厚み1.5mm)にて硬度(g)を測定した。
【0046】
(2)官能評価
試験品の官能評価は、製造一日後の試験品5gを食したときのコク味及び口どけを以下の基準に従って、専門パネル4名にて評価を行い、平均値を評点とした。
結果を表1に示す。
(コク味)
5:コク味を強く感じる
4:コク味をやや強く感じる
3:コク味を感じる
2:コク味をわずかに感じる
1:コク味を感じない
(口どけ)
5:口どけが非常に良好
4:口どけが良好
3:口どけがやや良好
2:口どけがやや良くない
1:口どけが良くない
【0047】
〔28日保存後の評価〕
(1)侵入度評価
長期保存した試験品を室温(25℃)に放置し、5分後及び10分後に上記と同様にして硬度(g)を測定した。
【0048】
(2)官能評価
長期保存した試験品を5gを食したときのコク味及び口どけについて上記と同様にして評価した。
【0049】
(3)保持率評価
上記で得たラクトアイスを100gずつプラスチック容器に詰め、ドライアイスで急冷固化させた後、−20℃の冷蔵庫に28日間保存したものを以下の方法で評価した。
メスシリンダー上方に固定した漏斗の開口部に金網を載置し、その金網上に−20℃の各試験品50g載せ、20℃の温度条件下で1時間経過後にメスシリンダーに落下したアイスクリーム類の質量(g)を測定した。
更に、落下したアイスクリーム類の質量(g)に基づいて、下記式(1)により形態保持率(%)を算出した。
形態保持率(%)={(Wc-Wd)/Wc}×100 (1)
(式中、Wcはアイスクリーム類の質量(50g)であり、Wdは落下したアイスクリーム類の質量である。)
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、乳脂肪球皮膜成分を含み、ホスファチジルセリンと、アイスクリーム類中のホスファチジルコリンに対して一定範囲のスフィンゴミエリンを含む試験例2〜5のアイスクリーム類は、試験例1に比べて、製造直後から長期に渡って溶けて型崩れし難い特性を有し、また、コク味があって、口どけが良好であった。乳脂肪球皮膜成分のかわりに全粉乳を配合した試験例6のアイスクリーム類は、長期保存した場合の保型性の改善が十分ではなく、また、コク味に劣った。