特許第6842277号(P6842277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842277
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】管体内下地処理装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/40 20060101AFI20210308BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   B24B5/40 B
   B24B27/00 L
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-216978(P2016-216978)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-75642(P2018-75642A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】306033025
【氏名又は名称】日本鉄塔工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】辻丸 敏彦
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−131746(JP,A)
【文献】 特開2007−007755(JP,A)
【文献】 特開2004−286114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/40
B24B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形状の金属製の管体を有する管体構造物における当該管体の内表面の下地処理に用いられる管体内下地処理装置であって、
前記管体内に挿入され、軸線を当該管体の中心線に対応する位置に案内する脚部を有する案内装置と、
この案内装置における前記管体内に先に挿入される側である先端側に配置された作業装置とを備えてなり、
前記作業装置は、回転駆動部と、この回転駆動部の回転出力軸に連結されて前記案内装置の前記軸線を中心にするようにして回転駆動される回転体と、先端部が前記管体の円筒内周面に対して離接する方向に移動可能なように、基端部が揺動支持ピンを介して前記回転体に揺動自在に連結されたアームと、このアームの先端部に取り付けられ、当該先端部から先端側に突出するように設けられた下地処理工具とを有しており、
前記揺動支持ピンは、前記回転体の回転中心線から放射方向に所定の間隔をおいた位置に配置されており、
前記アームには、揚力発生部が設けられており、
前記揚力発生部は、前記アームが前記回転体の先端側に存在する状態において、前記回転中心線回りの前記回転体の回転に基づいて相対的に生じる空気の流れの方向に対して、この流れの方向とは逆方向に向かって前記回転中心線から少なくとも遠ざかる方向に傾斜する迎角を有するもので構成されている
ことを特徴とする管体内下地処理装置。
【請求項2】
前記揺動支持ピンは、前記回転中心線回りに所定の間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管体内下地処理装置。
【請求項3】
前記揺動支持ピンは、その軸線が前記回転体の回転中心線を中心とする円の接線方向を向いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管体内下地処理装置。
【請求項4】
前記アームが前記回転中心線に沿うように案内装置の先端側に延在した状態において、当該アームの基端部を前記回転体に所定の力で保持する一時保持手段が当該回転体及び当該アームの基端部の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の管体内下地処理装置。
【請求項5】
前記アームは、基端側に位置する第1のアームと、先端側に位置する第2のアームとを備えた構成になっており、
前記第1のアームは、その基端部が前記揺動支持ピンを介して前記回転体に揺動自在に連結され、その先端部が前記第2のアームの基端部と回動ピンを介して回動自在に連結されており、
前記第2のアームの先端部には、当該先端部から先端側に突出するように前記下地処理工具が設けられており、
前記回動ピンは、その軸線が揺動支持ピンの軸線に直交する平面に沿う方向であって、前記第1のアームの延在する方向に略直交する方向を向いていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の管体内下地処理装置。
【請求項6】
前記回転駆動部における前記回転出力軸は、エアモータによって回転駆動されるようになっており、
前記エアモータの近傍には、当該エアモータの給気口側の空気流路及び当該エアモータの排気口側の空気流路の少なくとも一方の空気流路に対応する位置に電磁弁が配置されており、
前記電磁弁は、前記空気流路の閉塞及び開放が可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の管体内下地処理装置。
【請求項7】
前記下地処理工具に対して前記案内装置の基端側の方向に位置するように配置され、当該下地処理工具に対応する前記管体の前記内表面の部分を少なくとも照明する方向に向けられた第1照明手段及び当該内表面の部分を少なくとも撮影する方向に向けられた第1カメラを備えていると共に、前記第1照明手段及び前記第1カメラに対して前記案内装置の基端側の方向に位置するように配置され、当該配置された位置より前記案内装置の基端側の方向に位置する前記管体の前記内表面を少なくとも照明する方向に向けられた第2照明手段及び当該内表面を少なくとも撮影する方向に向けられた第2カメラを備えていることを特徴とする請求項1〜6何れかに記載の管体内下地処理装置。
【請求項8】
前記第1照明手段及び前記第1カメラを備えた第1撮影装置と、前記第2照明手段及び前記第2カメラを備えた第2撮影装置は、前記案内装置の前記軸線に対応する線を中心として周方向に複数等分される各位置に設けられており、
前記複数の第1及び第2カメラの少なくとも一つの映像をモニターに表示する撮影制御装置を備えていることを特徴とする請求項に記載の管体内下地処理装置。
【請求項9】
前記撮影制御装置は、前記複数の第1撮影装置及び前記複数の第2撮影装置の少なくとも一方について前記周方向に順次切り換えることによって、前記複数の第1カメラの映像及び前記複数の第2カメラの映像の少なくとも一方の映像をモニターに順次表示する自動表示切換回路を有していることを特徴とする請求項に記載の管体内下地処理装置。
【請求項10】
前記撮影制御装置は、前記複数の第1撮影装置及び前記複数の第2撮影装置の中から所定の撮影装置を手動で選択して、その選択した撮影装置におけるカメラの映像をモニターに表示する手動表示切換回路を備えていることを特徴とする請求項8又は9に記載の管体内下地処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の管体を有する管体構造物における当該管体の内表面の下地処理を行うための管体内下地処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、円筒状の鋼管(金属製の管体)を有する鋼管鉄塔(管体構造物)としては、その鋼管を複数連結することで長尺に構成された主柱を複数基(例えば4基)備えたものが知られている。主柱の内外の面は例えば溶融亜鉛メッキによる防錆処理が施されているが、その主柱の内表面(即ち鋼管の内表面)については外方からの目視による検査が困難なこともあって、予め塗装を施すことにより防錆効果を更に高めておきたい場合がある。その場合には、主柱の内表面に付着した埃等の異物を除去したり、当該内表面を粗面化したり、また錆が発生している場合はその錆を除去する等の下地処理を行った上で、その内表面に対して塗装を施すことになる。
【0003】
主柱の内表面の下地処理については、例えば特許文献1に示すような管体内除錆装置を主柱内に挿入し、この管体内除錆装置を管体内下地処理装置として使用することにより行うことが可能である。
【0004】
即ち、上記管体内除錆装置を用いた管体内下地処理装置は、主柱の中心線に沿って移動可能に構成された案内装置と、この案内装置の先端側に設けられた複数のリンクを有するアームと、そのアームの先端部に設けられた回転砥石部(除錆部)とを備えており、上記回転砥石部により、主柱における内方に突出する部分等を含めた内表面に付着した異物の除去、当該内表面の粗面化、錆が発生している場合にはその錆の除去等の下地処理を行うことができる。
【0005】
しかも、上記管体内下地処理装置においては、アームが複数のリンクに基づいて屈曲可能に構成されていることから、そのアームの先端部に設けた回転砥石部を主柱内の種々の位置に移動することができ、当該主柱の内表面におけるあらゆる部位の埃の除去、内表面の粗面化、錆の除去等の下地処理を、極めて的確に行うことができるという利点がある。
【0006】
しかしながら、上記管体内下地処理装置においては、主柱の内表面における広範囲にわたる部位を全体的に下地処理するような場合には回転砥石部をアームの屈曲機能を利用して順次移動しなければならないことから、短時間で効率良く下地処理を行うことが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−089232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管体の内側に表れる面(即ち、内表面)の広範囲にわたる部位について短時間で効率良く下地処理を行うことのできる管体内下地処理装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、断面円形状の金属製の管体を有する管体構造物における当該管体の内表面の下地処理に用いられる管体内下地処理装置であって、前記管体内に挿入され、軸線を当該管体の中心線に対応する位置に案内する脚部を有する案内装置と、この案内装置における前記管体内に先に挿入される側である先端側に配置された作業装置とを備えてなり、前記作業装置は、前記案内装置の先端部に取り付けられた回転駆動部と、この回転駆動部の回転出力軸に連結されて前記案内装置の前記軸線を中心にするようにして回転駆動される回転体と、先端部が前記管体の円筒内周面に対して離接する方向に移動可能なように、基端部が揺動支持ピンを介して前記回転体に揺動自在に連結されたアームと、このアームの先端部に取り付けられ、当該先端部から先端側に突出するように設けられた下地処理工具とを有しており、前記揺動支持ピンは、前記回転体の回転中心線から放射方向に所定の間隔をおいた位置に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記揺動支持ピンは、前記回転中心線回りに所定の間隔をおいて複数設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記揺動支持ピンは、その軸線が前記回転体の回転中心線を中心とする円の接線方向を向いていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記アームには、揚力発生部が設けられており、前記揚力発生部は、前記アームが前記回転体の先端側に存在する状態において、前記回転中心線回りの前記回転体の回転に基づいて相対的に生じる空気の流れの方向に対して、この流れの方向とは逆方向に向かって前記回転中心線から少なくとも遠ざかる方向に傾斜する迎角を有するもので構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記アームが前記回転中心線に沿うように案内装置の先端側に延在した状態において、当該アームの基端部を前記回転体に所定の力で保持する一時保持手段が当該回転体及び当該アームの基端部の少なくとも一方に設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかに記載の発明において、前記アームは、基端側に位置する第1のアームと、先端側に位置する第2のアームとを備えた構成になっており、前記第1のアームは、その基端部が前記揺動支持ピンを介して前記回転体に揺動自在に連結され、その先端部が前記第2のアームの基端部と回動ピンを介して回動自在に連結されており、前記第2のアームの先端部には、当該先端部から先端側に突出するように前記下地処理工具が設けられており、前記回動ピンは、その軸線が揺動支持ピンの軸線に直交する平面に沿う方向であって、前記第1のアームの延在する方向に略直交する方向を向いていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れかに記載の発明において、前記回転駆動部における前記回転出力軸は、エアモータによって回転駆動されるようになっており、前記エアモータの近傍には、当該エアモータの給気口側の空気流路及び当該エアモータの排気口側の空気流路の少なくとも一方の空気流路に対応する位置に電磁弁が配置されており、前記電磁弁は、前記空気流路の閉塞及び開放が可能に構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7の何れかに記載の発明において、前記下地処理工具に対して前記案内装置の基端側の方向に位置するように配置され、当該下地処理工具に対応する前記管体の前記内表面の部分を少なくとも照明する方向に向けられた第1照明手段及び当該内表面の部分を少なくとも撮影する方向に向けられた第1カメラを備えていると共に、前記第1照明手段及び前記第1カメラに対して前記案内装置の基端側の方向に位置するように配置され、当該配置された位置より前記案内装置の基端側の方向に位置する前記管体の前記内表面を少なくとも照明する方向に向けられた第2照明手段及び当該内表面を少なくとも撮影する方向に向けられた第2カメラを備えていることを特徴としている。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記第1照明手段及び前記第1カメラを備えた第1撮影装置と、前記第2照明手段及び前記第2カメラを備えた第2撮影装置は、前記案内装置の前記軸線に対応する線を中心として周方向に複数等分される各位置に設けられており、前記複数の第1及び第2カメラの少なくとも一つの映像をモニターに表示する撮影制御装置を備えていることを特徴としている。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記撮影制御装置は、前記複数の第1撮影装置及び前記複数の第2撮影装置の少なくとも一方について前記周方向に順次切り換えることによって、前記複数の第1カメラの映像及び前記複数の第2カメラの映像の少なくとも一方の映像をモニターに順次表示する自動表示切換回路を有していることを特徴としている。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の発明において、前記撮影制御装置は、前記複数の第1撮影装置及び前記複数の第2撮影装置の中から所定の撮影装置を手動で選択して、その選択した撮影装置におけるカメラの映像をモニターに表示する手動表示切換回路を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、先端部が管体の円筒内周面に対して離接する方向に移動可能なように、基端部が揺動支持ピンを介して回転体に揺動自在に連結されたアームと、このアームの先端部に取り付けられ、当該先端部から先端側に突出するように設けられた下地処理工具とを有し、揺動支持ピンは回転体の回転中心線に対して放射方向に所定の間隔をおいた位置に配置されているので、例えば上下に延在する管体内に管体内下地処理装置を挿入した上で、回転体を所定の方向に回転駆動することにより、アームも回転体の回転中心線を中心にして旋回するように回転することになる。そうすると、アーム及び下地処理工具等に遠心力が生じ、この遠心力によって、アームが揺動支持ピンを支点にして管体の円筒内周面に向かう方向に揺動し、下地処理工具が当該円筒内周面に当接することになる。このため、管体の円筒内周面としての内表面に付着した埃等の異物の除去、当該内表面の粗面化、錆が発生している場合にはその錆の除去等の下地処理を行うことができる。この状態で案内装置を管体の中心線に沿って移動することにより、その移動した範囲の管体の円筒内周面の全体を満遍なくかつ効率よく下地処理することができる。
【0021】
また、管体の円筒内周面から内方に突出するようなリブ等の凸部が存在する場合には、回転体の回転速度に基づいてアームの揺動支持ピン回りの角度を所定の角度に調整し、案内装置を管体の中心線に沿って移動することにより、その凸部の上面の下地処理も行うことができる。即ち、上記凸部の上面における内方の縁部に下地処理工具が当たるようにアームの角度を調整した上で、案内装置を徐々に凸部側に移動することにより、下地処理工具が凸部上面における内方の縁部から外方の縁部まで自動的に移動することになるので、当該凸部の上面全体についても下地処理を効率良く行うことができる。
【0022】
以上のように、管体の円筒内周面としての当該管体の内側に表れる面(即ち、内表面)、及び凸部を有する場合にはその凸部の上面としての管体の内側に表れる面(即ち、内表面)について短時間で効率よく下地処理することができる。即ち、管体の内表面の広範囲にわたる部位について短時間で効率良く下地処理を行うことができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、揺動支持ピンが回転体の回転中心線回りに所定の間隔をおいて複数設けられているので、各揺動支持ピンに設けられたアーム及びこれに設けられた下地処理工具により、更に短時間で効率よく下地処理を行うことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、揺動支持ピンの軸線が回転体の回転中心線を中心とする円の接線方向を向いているので、アーム等に生じる遠心力の方向が揺動支持ピンに直交する方向となる。従って、当該遠心力を下地処理工具から管体の円筒内周面としての管体の内表面に効率良く作用させることができるので、下地処理の効率の向上を図ることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、揚力発生部がアームに設けられており、その揚力発生部はアームが回転体の先端側に存在する状態において、回転中心線回りの回転体の回転に基づいて相対的に生じる空気の流れの方向に対して、この流れの方向とは逆方向に向かって回転中心線から少なくとも遠ざかる方向に傾斜する迎角を有するものとなっているので、空気から受ける流体力によっても、アームが揺動支持ピンを支点にして管体の円筒内周面に向かう方向に揺動することになる。即ち、遠心力と流体力とを合計した力に基づいて、下地処理工具を管体の円筒内周面に押し付けることができるので、更に効率良く、下地処理を行うことができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、アームが回転中心線に沿うように案内装置の先端側に延在した状態において、当該アームの基端部を回転体に所定の力で保持する一時保持手段が回転体及びアームの基端部の少なくとも一方に設けられているので、斜めや横方向に延在する管体内に管体内下地処理装置を挿入した場合でも、当該アームを回転中心線に沿う方向に維持することが可能となる。この状態で回転体を回転することにより、アーム等に作用する遠心力(揚力発生部を有するものにあっては流体力を加えた力)に基づく力が一時保持手段による保持力を超えた時点で、アームが管体の円筒内周面の方向に揺動し、下地処理工具が管体の円筒内周面に圧接した状態になる。従って、斜め等に延在する管体内の部位について下地処理を行う際の操作性の向上を図ることができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、アームが第1のアームと第2のアームとで構成され、第1のアームの基端部が揺動支持ピンを介して回転体に揺動自在に連結され、第1のアームの先端部と第2のアームの基端部とが回動ピンを介して回動自在に連結されており、回動ピンの軸線が揺動支持ピンの軸線に直交する平面に沿う方向であって、第1のアームの延在する方向に略直交する方向を向いているので、第2のアームについては、その先端部に設けた下地処理工具が管体の円筒内周面に当接した際に、第1のアームに対して回転方向の後方に所定の角度傾いた状態となることが可能になる。このため、第1のアーム及び第2のアームは、管体の内径が所定の範囲内であれば、第1のアーム、第2のアーム等に作用する遠心力(揚力発生部を有するものにあっては流体力を加えた力)により、揺動支持ピンを支点にして、回転中心線に対してほぼ直交する方向(揚力発生部を有するものにあっては直交する方向以上の方向)に移動することも可能になる。
【0028】
即ち、上下方向に延在する管体に挿入した場合には、第1のアーム、第2のアーム、下地処理工具等に作用する遠心力によって、回転中心線に対して直交する方向に近い状態まで、当該第1のアーム、第2のアーム及び下地処理工具を移動することができる。アームに揚力発生部を有する場合には、回転中心線に対して直交する方向を超える状態まで、当該第1のアーム、第2のアーム及び下地処理工具を移動することができる。従って、管体の円筒内周面にリブ等の凸部が存在する場合でも、この凸部の下面に近接する管体の円筒内周面についても下地処理することができるという利点がある。また、凸部の下面についても、その外縁側(管体の円筒内周面に近い側)の部分の下地処理が可能になる。
【0029】
そして、管体が例えば下方に向かって段状に拡径している場合には、その段状に形成された部分の下面(即ち、内表面)や、その下面に近接する管体の内周面(即ち、内表面)についても下地処理が可能である。このため、管径が下方に向かって複数段、段状に拡大するように構成された管体の場合でも、管体の上端部から本発明の管体内下地処理装置を挿入することで、当該管体の内表面を確実に下地処理することができる。しかも、第1のアームの長さによってほぼ決まる最小径から第1のアーム及び第2のアームの合計長さによってほぼ決まる最大径まで、内径が大きく変化するような管体に対しても、その内表面の下地処理を一種類の管体内下地処理装置で行うことができるという利点がある。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、エアモータの給気口側の空気流路及び排気口側の空気流路の少なくとも一方の空気流路に対応する位置に電磁弁が設けられているので、少なくとも一方の空気流路を電磁弁で閉塞することにより、エアモータの給気口側に駆動用の空気の圧力が作用しても、エアモータが作動することがない。しかもこの場合は、例えば所定の高圧の空気を供給する空気圧源から給気口までの空気流路が長い場合であっても、その空気流路に空気が流れていない状態においては圧力損失が発生することがないので、当該空気圧源で設定された所定の空気の圧力(即ち、元圧)がエアモータの近傍まで作用することになる。
【0031】
即ち、電磁弁が給気口側の空気流路に対応する位置にのみ設けられている場合には、エアモータの近傍の電磁弁の位置まで上記空気圧源の元圧が作用することになる。また、電磁弁が排気口側の空気流路に対応する位置にのみ設けられている場合には、給気口からエアモータ内及び排気口を介してこの排気口側の電磁弁の位置まで上記空気圧源の元圧が作用することになる。更に、電磁弁が給気口側及び排気口側の空気流路に対応する位置に設けられている場合には、いずれか一方の電磁弁の位置まで上記空気圧源の元圧が作用するようにすることができる。
【0032】
このため、給気口側の空気流路に対応する位置にのみ設けた電磁弁を閉から開にした場合は、当該電磁弁の直前位置まで高圧となっていた空気がエアモータに一気に流入し、当該エアモータに所定のトルクが発生することになるので、回転出力軸が所定の角加速度をもって回転し始めることになる。即ち、回転出力軸は、所定の時間で所定の回転状態になる。
【0033】
また、排気口側の空気流路に対応する位置にのみ設けた電磁弁を閉から開にした場合は、エアモータ内に既に充満している高圧空気が排気口から一気に流出することになるので、その電磁弁の開放と同時にエアモータに所定のトルクが発生し、回転出力軸が所定の時間で所定の回転状態になる。
【0034】
更に、給気口側及び排気口側の双方に電磁弁を設けた場合は、各電磁弁の開放のタイミングを調整することにより、電磁弁を給気口側の空気流路にのみ設けた場合と、排気口側の空気流路にのみ設けた場合との双方の性能を発揮させることができる。また、回転出力軸を駆動する際には排気口側の電磁弁のみで制御(即ち、メータアウト制御)し、当該回転出力軸を停止する際には給気口側の電磁弁のみで制御(即ち、メータイン制御)するように構成することにより、回転出力軸を所定の時間で所定の回転状態に立ち上げることができると共に、当該回転出力軸の停止時のショックを緩和することもできる。
【0035】
また、アームは回転出力軸と共に回転することになるが、当該アームに作用する遠心力はその回転出力軸の角速度の2乗に比例することになる。そして、その角速度は給気口側及び排気口側のいずれの電磁弁を開放した場合も所定の時間で所定の回転状態になるので、電磁弁を開放した後、所定の時間でアームに所定の遠心力が作用することになる。従って、エアモータを駆動後、下地処理工具が管体の円筒内周面に達するまでの時間を所定の時間内に収めることができるので、下地処理の能率を向上させることができる。
【0036】
なお、回転出力軸の最高角速度については、上述した空気圧源に備えられた例えば流量調整弁からエアモータに供給する空気の流量を当該流量調整弁で調整することにより、所定の値に設定することができる。
【0037】
また、回転開始後、所定の時間でアームに所定の遠心力を作用させることができるので、当該アームを回転中心線に沿うように安定的に保持する一時保持手段が設けられている場合でも、当該一時保持手段の保持力に抗して、当該アームを管体の円筒内周面側にスムーズに揺動させることができるという利点がある。
【0038】
請求項8に記載の発明によれば、管体の内表面が下地処理工具によって処理される状況を第1照明手段及び第1カメラで確認しながら、その下地処理作業を行うことができる。従って、管体の内表面について必要十分な下地処理をすることができるという利点がある。
【0039】
また、第2照明手段及び第2カメラによって、管体内下地処理装置の基端方向に位置する管体の内表面を撮影することができるので、例えば管体内に突出部がある場合でも、その突出部に引っ掛かるのを避けながら管体内下地処理装置を管体から引き抜くことができる。
【0040】
従って、下地処理の作業の高効率化を図ることができる。
【0041】
請求項9に記載の発明によれば、第1撮影装置及び第2撮影装置が周方向に等分された状態で複数設けられているので、管体の内表面について周方向の全体にわたる撮影が可能になる。そして、第1カメラの映像及び第2カメラの映像の少なくとも一つの映像をモニターに表示する撮影制御装置が設けられているので、管体の内表面における周方向の任意の部分についてモニターで確認することができ、下地処理を過不足なく行うことができる。
【0042】
請求項10に記載の発明によれば、撮影制御装置の自動表示切換回路が複数の第1撮影装置について周方向に順次切り換えるように構成されている場合には、管体の内表面についての下地処理工具による処理状況を、その内表面における周方向の全体にわたるように、モニターで確認することができるという利点がある。
【0043】
また、撮影制御装置の自動表示切換回路が複数の第2撮影装置について周方向に順次切り換えるように構成されている場合には、管体内下地処理装置の基端方向に位置する管体の内表面について、その周方向の全体にわたるように、モニターで確認することができる。
【0044】
更に、撮影制御装置の自動表示切換回路が複数の第1撮影装置及び第2撮影装置について周方向に順次切り換えるように構成されている場合には、下地処理工具側の管体の内表面及び案内装置の基端方向側の管体の内表面について、その周方向の全体にわたるように、モニターで確認することができる。この場合、下地処理工具側の映像についてはモニター画面の下半分側に表示し、案内装置の基端方向側の映像についてはモニター画面の上半分側に表示することも可能である。また、下地処理工具側及び案内装置の基端方向側のそれぞれの映像について、それぞれ専用のモニターに表示するようにしてもよい。
【0045】
請求項11に記載の発明によれば、撮影制御装置の手動表示切換回路によって、複数の第1及び第2カメラの中から所定のカメラを手動で選択することができるので、管体の内表面のうち特定部分の映像を継続してモニターに表示することができる。このため、例えば錆の発生部分等のように下地処理が特に重要な部分については、確実に下地処理がなされたことをモニターで確認することができる利点がある。なお、2以上の所定のカメラを手動で選択し、それらの映像をモニターに表示することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の一実施形態として示したの正面図である。
図2】同管体内下地処理装置における案内装置を示す要部破断正面図である。
図3】同管体内下地処理装置における作業装置を示す図であって、案内装置の先端部に取り付けられた状態を示す要部破断正面図である。
図4】同管体内下地処理装置における作業装置の要部破断正面図である。
図5】同管体内下地処理装置における作業装置を示す図であって、(a)は図4のVA−VA線に沿う断面図であり、(b)はアームが遠心力等により開いた後の状態を示す図4のVB矢視図である。
図6】同管体内下地処理装置における作業装置の回転体を示す図であって、(a)は底面図であり、(b)は(a)のB矢視図であり、(c)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
図7】同管体内下地処理装置における作業装置の第1のアームを示す図であって(a)は正面図であり、(b)は揺動支持ピン回りに所定角度揺動した後の状態の正面図であり、(c)は(a)のC矢視図であり、(d)は(a)のD矢視図であり、(e)は(a)のE矢視拡大図であり、(f)は(a)のF−F線に沿う拡大断面図である。
図8】同管体内下地処理装置における作業装置の第1のアームと第2のアームとの連結部を示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図であり、(c)は(b)のC矢視図である。
図9】同管体内下地処理装置における作業装置の第2のアームを示す図であって、(a)は正面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図であり、(c)は(b)のC矢視図であり、(d)は超鋼バーとは異なる下地処理工具の例として示したワイヤブラシの正面図であり、(e)は(d)のE矢視図である。
図10】同管体内下地処理装置の作用を示す要部正面図である。
図11】同管体内下地処理装置の作用を示す要部正面図であって、下方に向かって段状に拡径された鋼管に対して、その拡径直下部分の鋼管等について下地処理が可能であることを示す要部正面図である。
図12】同管体内下地処理装置におけるエアモータ近傍部分についての他の例を示す要部正面説明図であって、(a)はエアモータの近傍における給気ホースに対応する位置に電磁弁を設けた例を示す要部正面説明図であり、(b)はエアモータの近傍における排気ホースに対応する位置に電磁弁を設けた例を示す要部正面説明図であり、(c)はエアモータの近傍における給気ホース及び排気ホースのそれぞれに対応する位置に電磁弁を設けた例を示す要部正面説明図である。
図13】同管体内下地処理装置における作業装置のアームについての他の例を示す図であって、(a)は回転体の要部、アーム及び下地処理工具を示す正面図あり、(b)は(a)のB−B線に沿う拡大断面図であり、(c)は(a)のC−C線に沿う拡大断面図である。
図14】同管体内下地処理装置におけるカメラ等備えた部分に関する他の例を示す要部破断正面図である。
図15】同カメラ等備えた部分に関する他の例を示す図であって、図14のXV−XV線に沿う断面図である。
図16】内表面の下地処理を行うための主柱(鋼管)を有する鋼管鉄塔を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の一実施形態としての管体内下地処理装置について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0048】
この実施形態で示す管体内下地処理装置1は、図1図14に示すように、断面円形状の金属製の管体としての鋼管Pを軸方向に連結することによって形成された主柱aを有する鋼管鉄塔(管体構造物)(図14参照)における当該支柱a(鋼管P)の内側に表れる面(内表面)の下地処理に用いられるものとなっている。なお、主柱aの内外面には溶融亜鉛メッキが施されている。
【0049】
この管体内下地処理装置1は、図1に示すように、主柱aの上方開口端に設けた蓋h(図14参照)を開いた上でその上方開口端から当該主柱a内に挿入され、軸線2aを当該主柱aの中心線(即ち、鋼管Pの中心線)に対応する位置に案内する脚部22を有する案内装置2と、この案内装置2における主柱a内に先に挿入される側である先端側に配置された作業装置3とを備えている。
【0050】
作業装置3は、図3に示すように、案内装置2の先端部に取り付けられた回転駆動部4と、この回転駆動部4の回転出力軸4aに連結されて案内装置2の軸線2aを中心にするようにして回転駆動される回転体5と、先端部が主柱a(鋼管P)の円筒内周面に対して離接する方向に移動可能なように、基端部が揺動支持ピン53を介して回転体5に揺動自在に連結されたアーム6と、このアーム6の先端部に取り付けられ、その先端側に突出するように設けられた下地処理工具7とを有している。
【0051】
以下に、更に詳細に説明する。即ち、この例で示す鋼管鉄塔は、図14に示すように、複数基(例えば4基)の主柱aを腹材e等で連結したもので構成されている。各主柱aは、複数の鋼管Pをフランジ継手部fによって接続することにより連続する一本のものに構成されている。なお、鋼管Pは、上方に位置するに従って、径の細いものが採用されている。フランジ継手部fは、通常は隣接する鋼管P同士を連通する開口を有するものであるが、主柱aの傾斜角度が変化する部位のフランジ継手部f1、f2については隣接する鋼管P内を仕切る鉄板g(図1参照)が存在するものもある。
【0052】
即ち、フランジ継手部f1、f2は、図1に示すように、その内部が鉄板gによって仕切られて閉塞された構造になっている場合がある。このような鉄板gが存在する場合には、当該フランジ継手部f1、f2より下方の主柱aの内表面の状況を確認することができない。このため、例えば図10に示すように、プラズマ切断機等の溶断手段(図示せず)を用いて、鉄板gの中央部に所定の径の貫通孔g1をあけることにより、フランジ継手部f1、f2より下方の主柱aの内表面の状況の確認を可能にしている。
【0053】
なお、貫通孔g1を形成することにより、鉄板gは内方に突出するリブgとして残ることなり、貫通孔g1の縁部がリブgの内方端g1となる。即ち、鋼管Pの円筒内周面には、フランジ継手部f1、f2が内方に突出した部分としての凸部や、リブgによる凸部等が存在し得ることになる。即ち、この例においては、上記円筒内周面、フランジ継手部f1、f2の内方に表れる面及びリブgの内方に表れる面が鋼管Pあるいは主柱aの内表面に該当する。
【0054】
また、案内装置2は、図1及び図2に示すように、直線状に長く延在する円筒状の外殻部21を有すると共に、その基端部(上端部)にワイヤ11の接続部21aが設けられている。そして、外殻部21の軸心が上述した軸線2aに対応するものとなっている。また、案内装置2には、その軸線2aを主柱aの中心線に対応する位置に保持しながら、当該主柱aの中心線に沿って案内装置2自体を移動自在に支持する脚部22が少なくとも一組設けられている(この例では軸線2aの方向に所定の間隔をおいて3組設けられている)。
【0055】
各組みにおける脚部22は、外殻部21の外周面を周方向にほぼ三等分する各位置(三等分以上の各位置であってもよい。)に配置されている。その各位置に配置された脚部22は、図2に示すように、その基端部(上端部)22aから先端部までの全体が外殻部21内に収納可能になっていると共に、その基端部22aを支点にして、その先端部が主柱aの円筒内周面に対して離接する方向に揺動駆動されるようになっている。この場合、外殻部21内には、図2に示すように、基端部22aを支点にして脚部22を揺動駆動する揺動駆動機構23が設けられている。
【0056】
揺動駆動機構23は、ステッピングモータ等からなるモータ23aと、このモータ23aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構23bと、このねじ機構23bによって直線方向に駆動されるラックギヤ23cと、このラックギヤ23cに噛み合う3つのピニオンギヤ23dを備えた構成になっている。そして、各ピニオンギヤ23dに各脚部22の基端部22aが固定されており、モータ23aの回転角度によって制御される各ピニオンギヤ23dの回転角度に応じた角度で各脚部22が揺動駆動されるようになっている。
【0057】
即ち、各脚部22は、各ピニオンギヤ23dの回転角度に応じて、全体が円筒状の外殻部21内に収納された状態になったり、その先端部が種々の径の主柱aの円筒内周面に当接した状態になったりするようになっている。また、各脚部22の先端部には、主柱a(鋼管P)の円筒内周面に当接し、当該円筒内周面に沿って主柱aの中心線に沿う方向に円滑に移動することを可能にする転輪22bが設けられている。
【0058】
案内装置2の先端部には、図3及び図4に示すように、軸線2aと同軸状にパイプ81を保持する継手部8が設けられている。継手部8には、パイプ81の周囲に対応する部位に、カメラ82及び照明手段83が設けられている。
【0059】
カメラ82は、下地処理工具7による主柱aの内表面の下地処理状況を確認可能なように、その光軸82aの方向が設定されていると共に、視野角が設定されたものとなっている。この場合、カメラ82は、軸線2aの回りに180°間隔をおいた各位置に配置されており、主柱aの内表面を360°にわたって認識することが可能になっている。照明手段83は、LEDによって構成されたものであり、各カメラ82の間に配置されており、少なくともカメラ82の視野角の範囲における主柱aの内表面を照明することが可能なように配光されている。
【0060】
回転駆動部4は、パイプ81及び継手部8を介して案内装置2の先端部に取り付けられたケーシング40を有しており、このケーシング40内にエアモータ401が設けられている。エアモータ401は、その出力軸が軸線2aと同軸状に配置された回転出力軸4aを有するものとなっている。また、エアモータ401に接続された給気ホース(空気流路)401a及び排気ホース(空気流路)401bについては、ケーシング40内からパイプ81を通り案内装置2内に導かれた上で、主柱aの上方開口端から導き出されるようになっている。なお、排気ホース401bを設けずに、エアモータ401の排気を主柱a内にそのまま排出するように構成してもよい。
【0061】
ケーシング40は、案内装置2の外殻部21とほぼ同径の円筒状の外殻部40aを有し、その外殻部40aの基端部及び先端部のそれぞれに基端カバー40b及び先端カバー40cが固定されている。基端カバー40bは、パイプ81に同軸状に連結されていると共に、当該パイプ81内とケーシング40内とを連通するようになっている。先端カバー40cは、軸線2aと同軸状に形成された貫通孔部を有し、この貫通孔部でベアリング402を保持するようになっている。ベアリング402は、後述する回転体5の軸部51を回転自在に保持することで、回転体5の回転中心線5aを、案内装置2の軸線2aと同軸状に保持するようになっている。
【0062】
揺動支持ピン53は、図5及び図6に示すように、回転体5の回転中心線5aから放射方向に所定の間隔をおいた位置に配置されていると共に、回転中心線5aを中心とする円の周方向に一定の間隔をおいて4つ(複数)設けられている。なお、揺動支持ピン53は、一つでもよいが、揺動支持ピン53の重心位置が回転中心線5aに対応した位置となるように、2以上の複数設けることが好ましい。また、複数の揺動支持ピン53を合計したものの重心位置が回転中心線5aに対応する位置となるのであれば、各揺動支持ピン53は、回転中心線5aから放射方向に異なる間隔をおいた位置に設けてもよく、また回転中心線5aを中心として周方向に異なる間隔をおいた位置に設けてもよく、更に回転中心線5aに沿う方向に位置をずらして設けてもよい。
【0063】
また、各揺動支持ピン53は、その軸線53aが回転中心線5aを中心とする円の接線方向に向けられている。
【0064】
アーム6には、図7等に示すように、揚力発生部61aが設けられている。この揚力発生部61aは、図4及び図7(a)に示すように、アーム6が回転体5の先端側に存在する状態において、回転中心線5a回りに回転体5が回転することに基づいて生じる相対的な空気の流れの方向qに対して、この流れの方向q(図7(f)参照)とは逆方向に向かって回転中心線5aから少なくとも遠ざかる方向に傾斜する迎角αを有する平面状の底面61bを有するもので構成されている。
【0065】
また、揚力発生部61aの上面61cは、底面61bと平行な平面によって形成されており、当該揚力発生部61aの断面は、上面61c及び底面61bをそれぞれ上底及び下底とする台形状に形成されており、左右の各側面61dと底面61bとのなす角度が鋭角に形成されている。即ち、アーム6が回転中心線5a回りに回転した際に、揚力発生部61aに生じる空気抵抗が小さなものとなっている。なお、上記空気の流れの方向qは、回転中心線5aを中心とする円であって底面61bの幅方向の中心点を通る円の当該中心点における接線方向でありかつ底面61bに向かう方向としている。迎角αは、流れの方向qと底面61bとのなす角度である。
【0066】
また、アーム6は、図3図7に示すように、基端側に位置する第1のアーム61と、先端側に位置する第2のアーム62とを備えた構成になっている。第1のアーム61は、その基端部が揺動支持ピン53を介して回転体5に揺動自在に連結されている。また、第1のアーム61は、図8に示すように、その先端部が第2のアーム62の基端部に回動ピン60を介して回動自在に連結されている。第2のアーム62の先端部には、図9に示すように、当該先端部から先端側に突出するように上述の下地処理工具7が設けられている。なお、上述した揚力発生部61aは、図7等に示すように、第1のアーム61に形成されたものとなっている。
【0067】
回動ピン60は、図5(b)及び図8に示すように、その軸線60aが揺動支持ピン53の軸線53aに直交する平面に沿う方向であって、第1のアーム61の延在する方向に略直交する方向を向いたものとなっている。この回動ピン60は、円筒部60bと、その一端部に形成された鍔部60cとを備えており、ビス60d及びナット60eによって第1のアーム61の先端部に固定されている。
【0068】
第2のアーム62には、図9に示すように、その基端部に、回動ピン60の円筒部60bに回転自在に嵌合する貫通孔62aが形成されている。また、第2のアーム62の先端部には、下地処理工具7のシャンク7aを挿入した状態に保持する孔62bが形成されている。この孔62bは、第2のアーム62の先端面から当該第2のアーム62の軸方向に延在するように形成されている。また、第2のアーム62には、孔62bの軸方向の途中の位置にねじ孔が形成されており、このねじ孔にシャンク7aを固定するための止めネジ62cが設けられている。
【0069】
また、第1のアーム61の先端部には、図8(a)に示すように、当該第1のアーム61及び第2のアーム62が直線状に延在した状態から回転体5の回転方向Fに10°まで回動することを可能にする第1のストッパ61sが設けられていると共に、当該第1のアーム61及び第2のアーム62が直線状に延在した状態から回転体5の回転方向Fと反対の方向に120°まで回動することを可能にする第2のストッパ61tが設けられている。
【0070】
一方、回転体5は、図6に示すように、基端側に位置する軸部51と、先端側に位置する円板部52を備えた構成になっている。軸部51は、図4に示すように、エアモータ401の出力軸として設けられた回転駆動部4の回転出力軸4aにチャック41を介して当該回転出力軸4aに同軸状に連結されている。円板部52は軸部51と同軸状に形成されている。
【0071】
また、円板部52には、図6に示すように、その先端面側から凹状に形成された円形凹部52b及び4つの溝部52cが形成されている。円形凹部52bは、回転中心線5aと同軸状の円筒状の内周面を有する凹部によって形成されている。各溝部52cは、回転中心線5aを中心として周方向に4等分する各位置にあって、当該回転中心線5aから放射方向に延在するように形成されている。この場合、各溝部52cは、円形凹部52bから円板部52の外周縁まで一定の幅で直線状に形成されている。そして、各溝部52cの幅方向を貫くように、上述した揺動支持ピン53が設けられている。各揺動支持ピン53の軸線53aの方向は、回転中心線5aから放射する方向に対して直交する方向となっている。
【0072】
揺動支持ピン53は、先端部に雄ネジ部53bを有し、中間部に平行ピン部53cを有するビス状のもので構成されており、雄ネジ部53bが溝部52cの一方の側面に形成されたねじ孔にねじ込まれて固定された際に、平行ピン部53cが溝部52cの全幅にわたって横断した状態となるようになっている。また、円板部52には、揺動支持ピン53の頭部の近傍に、当該揺動支持ピン53の抜け止め用のビス52dが固定されている。
【0073】
そして、アーム6の基端部であって第1のアーム61の基端部は、図5(a)に示すように、溝部52cに挿入可能な幅に形成されていると共に、図7(a)に示すように、揺動支持ピン53の平行ピン部53cに回動自在に嵌合する貫通孔61eが形成されている。また、第1のアーム61の基端部には、第1のアーム61が回転中心線5aに沿うように延在した状態において、溝部52c内から円形凹部52b内に飛び出すように形成された偏出部61fが形成されている。
【0074】
偏出部61fは、その基端側の面に凹部が形成されており、その凹部にビスで固定された鉄等の強磁性体からなる吸着板片61gを有している。第1のアーム61は、吸着板片61gによって、基端面が平面状に形成されたものとなっている。この場合、吸着板片61fは、第1のアーム61が回転中心線5aに沿うように延在した状態において、円形凹部52bの底面に当接するようになっている。
【0075】
一方、円板部52には、円形凹部52bの底面における各吸着板片62dが当接する部位に、一時保持手段としての磁石52eが設けられている。磁石52eは、N極又はS極の平面状の吸着面が円形凹部52bの底面に対して同一面状となるように円板部52に埋め込まれたものとなっている。この場合、磁石52eは、アーム6が回転中心線5aに沿うように案内装置2の先端側に延在した状態において、吸着板片61gを所定の磁気力で吸着することで、当該アーム6の基端部を所定の力で一時的に保持し、当該アーム6が揺動支持ピン53回りに自由に回動するのを防止するようになっている。なお、上記磁気力は、回転体5の回転速度が所定の値に達した際に、アーム6等に作用する遠心力に基づいて吸着板片61gの部位が磁石52eから離れる方向に受ける力より小さなものとなっている。
【0076】
下地処理工具7は、図9(a)〜(c)に示すように、超鋼バーからなるものであり、シャンク7aの先端部に、当該シャンク7aと同軸状に形成された回転楕円体状の刃部7bを備えたものとなっている。なお、刃部7bとしては、全体が円柱状に形成されたもの、円柱の先端部が半球状に丸められた形状のもの、先端に向かってテーパ状に形成されたもの、球状に形成されたもの等を用いることが可能である。また、図9(d)及び(e)に示すように、ワイヤブラシからなる下地処理工具71を用いてもよい。この下地処理工具71は、シャンク71aの先端部にブラシ部71bが固定されたもので構成されている。ブラシ部71bは、複数の金属製の線材を断面円形状に束ねたもので構成されている。線材の金属としては、真鍮、銅、鋼、ステンレス等が用いられる。線材を束ねたブラシ部71bの断面の形状としては、円形以外の例えば楕円形や多角形状であってもよい。また、真鍮、銅等の比較的柔らかい金属による線材を用いた下地処理工具71については、埃等の付着物の除去等に適しており、鋼、ステンレス等の比較的硬い金属による線材を用いた下地処理工具71については、内表面の粗面化や錆の除去等に適している。
【0077】
上記のように構成された管体内下地処理装置1においては、先端部が主柱aの円筒内周面に対して離接する方向に移動可能なように、基端部が揺動支持ピン53を介して回転体5に揺動自在に連結されたアーム6と、このアーム6の先端部に取り付けられ、当該先端部から先端側に突出するように設けられた下地処理工具7とを有し、揺動支持ピン53は回転体5の回転中心線5aに対して放射方向に所定の間隔をおいた位置に配置されているので、上下に延在する主柱a内に管体内下地処理装置1を挿入した上で、回転体5を所定の回転方向Fに回転駆動することにより、アーム6も回転体5の回転中心線5aを中心にして旋回するように回転することになる。そうすると、アーム6及び下地処理工具7等に遠心力が生じ、この遠心力によって、アーム6が揺動支持ピン53を支点にして主柱aの円筒内周面に向かう方向に揺動し、下地処理工具7が主柱aの円筒内周面に当接することになる。このため、主柱aの円筒内周面に付着した埃等の異物の除去、当該円筒内周面の粗面化、錆が発生している場合にはその錆の除去等の下地処理を行うことができる。この状態で案内装置2を主柱aの中心線に沿って移動することにより、その移動した範囲の主柱aの円筒内周面の全体を満遍なくかつ効率よく下地処理することができる。
【0078】
また、図10に示すように、主柱aの内方に突出するリブgが存在する場合には、回転体5の回転速度に基づいてアーム6の揺動支持ピン53回りの角度を所定の角度に調整し、下地処理工具7の刃部7b(あるいは下地処理工具71のブラシ部71b)をリブgの上面の内方端g1近傍に位置させた状態で、案内装置2を主柱aの中心線に沿って下方に移動することにより、そのリブgの上面全体の下地処理を行うことができる。即ち、上記リブgの上面の内方端g1近傍に下地処理工具7の刃部7b(あるいは下地処理工具71のブラシ部71b)が当たるようにアーム6の角度を調整した上で、案内装置2を徐々にリブgに向けて移動することにより、下地処理工具7の刃部7b(あるいは下地処理工具71のブラシ部71b)がリブgの上面における内方縁部から外方縁部まで自動的に移動することになるので、当該リブgの上面全体の下地処理を効率良く行うことができる。
【0079】
以上のように、主柱aの円筒内周面としての内表面及びリブgの上面としての内表面の広範囲にわたる部位を短時間で効率よく下地処理することができる。
【0080】
しかも、揺動支持ピン53が回転体5の回転中心線5a回りに所定の間隔をおいて4つ設けられているので、各揺動支持ピン53に設けられた全部で4つのアーム6及び下地処理工具7により、更に短時間で効率よく下地処理することができる。
【0081】
また、揺動支持ピン53の軸線53aが回転体5の回転中心線5aを中心とする円の接線方向を向いているので、アーム6等に生じる遠心力の方向が揺動支持ピン53に直交する方向となる。従って、当該遠心力を下地処理工具7から主柱aの円筒内周面に効率良く作用させることができるので、この点からも下地処理の効率の向上を図ることができる。
【0082】
更に、揚力発生部61aがアーム6に設けられており、その揚力発生部61aは回転体5の回転に基づいて相対的に生じる空気の流れ方向qに対して、この流れの方向qとは逆方向に向かって回転中心線5aから遠ざかる方向に傾斜する迎角αを有するものとなっているので、空気から受ける流体力によっても、アーム6が揺動支持ピン53を支点にして主柱aの円筒内周面に向かう方向に揺動することになる。即ち、遠心力と流体力とを合計した力に基づいて、下地処理工具7を主柱aの円筒内周面に押し付けることができるので、更に効率良く、下地処理を行うことができる。
【0083】
一方、アーム6が回転中心線5aに沿うように案内装置2の先端側に延在した状態において、当該アーム6の基端部を回転体5に所定の力で保持する磁石52eが当該回転体5に設けられているので、例えば斜めや横方向に延在する主柱a内に管体内下地処理装置1を挿入した場合でも、当該アーム6を回転中心線5aに沿う方向に維持することが可能となる。この状態で回転体5を回転することにより、アーム6等に作用する遠心力及び流体力に基づく力が磁石52eによる保持力を超えた時点で、アーム6が主柱aの円筒内周面の方向に揺動し、下地処理工具7が主柱aの円筒内周面に圧接した状態になる。従って、斜め等に延在する主柱a内の部位について下地処理を行う際の操作性の向上を図ることができる。
【0084】
また、アーム6が第1のアーム61と第2のアーム62とで構成され、第1のアーム61の基端部が揺動支持ピン53を介して回転体5に揺動自在に連結され、第1のアーム61の先端部と第2のアーム62の基端部とが回動ピン60を介して回動自在に連結されており、回動ピン60の軸線60aが揺動支持ピン53の軸線53aに直交する平面に沿う方向であって、第1のアーム61の延在する方向に略直交する方向を向いているので、第2のアーム62については、その先端部に設けた下地処理工具7が主柱aの円筒内周面に当接した際に、図5(b)に示すように、第1のアーム61に対して回転方向Fの後方に所定の角度傾いた状態となることが可能になる。このため、第1のアーム61及び第2のアーム62は、主柱aの内径が所定の範囲内であれば、第1のアーム61、第2のアーム62等に作用する遠心力及び揚力発生部61aに発生する流体力により、揺動支持ピン53を支点にして、回転中心線5aに対してほぼ直交する方向又はそれ以上の上方に傾く方向に移動することも可能になる。
【0085】
即ち、上下方向に延在する主柱aに挿入した場合には、第1のアーム61、第2のアーム62、下地処理工具7等に作用する遠心力等によって、回転中心線5aに対して直交する方向に近い状態又はそれ以上に、当該第1のアーム61、第2のアーム62及び下地処理工具7を揺動移動させることができる。従って、図10に示すように、主柱a内に突出する突起物としてのリブgの下面に近接するフランジ継手部f1の内面(鋼管Pの円筒内周面からリブg等の凸部が突出している場合にはその凸部の下面に近接する鋼管Pの円筒内周面)の下地処理を行うことができるという利点がある。また、リブgの下面についても、その外縁側の部分について下地処理を行うことが可能になる。
【0086】
また、図11に示すように、例えばフランジ継手部f1、f1の下側の鋼管Pがそのフランジ継手部f1、f1の上側の鋼管Pより径が拡大している場合には、フランジ継手部f1、f1及び上下の鋼管Pによって構成された管体としての主柱aが下方に向かって段状に拡径された状態になる。この場合、管体における段状に形成された部分の下面(内表面)f1aや、その下面f1aに近接する内周面(内表面)f1bは上方及び下方のフランジ継手部f1、f1によって形成されることになるが、これらの下面f1aの外周部や内周面f1bについても下地処理が可能である。
【0087】
このため、管径が下方に向かって複数段、段状に拡大するように構成された主柱aの場合でも、主柱aの上方開口端から蓋h(図14参照)を開けて当該主柱a内に管体内下地処理装置1を挿入することで、当該主柱aの内表面を確実に下地処理することができる。しかも、第1のアーム61の長さによってほぼ決まる最小径から第1のアーム61及び第2のアーム62の合計長さによってほぼ決まる最大径まで、内径が大きく変化する主柱aに対しても、その内表面の下地処理を一種類の管体内下地処理装置1によって行うことができるという利点がある。
【0088】
なお、上記実施形態においては、磁石52eを回転体5に設け、吸着板片61gをアーム6の基端部に設けた例を示したが、磁石をアーム6の基端部に設け、吸着板片を回転体5に設けるように構成してもよい。また、磁石で吸着する相手側の回転体5又はアーム6の基端部が磁性体で形成されている場合には、吸着板片を設けないものであってもよい。この場合、磁石(一時保持手段)は回転体5及びアーム6の基端部の少なくとも一方に設けられていればよい。
【0089】
また、エアモータ401の近傍には、図12に示すように、当該エアモータ401の給気口4011につながる空気流路としての給気ホース401aに対応する位置や、当該エアモータ401の排気口4012につながる空気流路としての排気ホース401bに対応する位置にそれぞれ電磁弁403A、403Bを配置するように構成してもよい。
【0090】
即ち、図12(a)は給気口4011側の給気ホース401aに対応する位置にのみ電磁弁403Aを設けた例を示しており、図12(b)は排気口4012側の排気ホース401bに対応する位置にのみ電磁弁403Bを設けた例を示しており、図12(c)は給気ホース401a及び排気ホース401bのそれぞれに対応する位置に電磁弁403A、403Bを設けた例を示している。
【0091】
これらの例の場合、電磁弁403A、403Bは、エアモータ401における給気口4011及び排気口4012の位置に直接取り付けられた状態になっており、当該エアモータ401に最も近い位置において、給気ホース401a及び排気ホース401bの流路を開閉することが可能になっている。ただし、これらの電磁弁403A、403Bについては、給気口4011や排気口4012から少し離れているが、当該給気口4011や排気口4012の近傍の給気ホース401a及び排気ホース401bの位置にそれぞれ設けるように構成してもよい。なお、排気ホース401bを設けずに、エアモータ401の排気を排気口4012から主柱a内に排出するように構成している場合には、図12(b)、(c)に示すように、電磁弁403Bを排気口4012に直接設けることになる。但し、その場合のエアモータ401の排気は、排気口4012から電磁弁403Bを介して主柱a内に排出されることになる。
【0092】
そして、電磁弁403A、403Bは、ソレノイドに電圧が印加されていない中立位置において、給気ホース401aや、排気ホース401bのそれぞれの流路を閉塞状態に保持し、ソレノイドに電圧が印加されたときにそれぞれの流路を開放するように構成されている。なお、エアモータ401は、図示しない空気圧源から供給された高圧空気が給気口4011から当該エアモータ401内に流入し、排気口4012から流出することにより、回転出力軸4aが準方向(図5に示す回転方向F)に回転する。
【0093】
上記のように、エアモータ401の近傍の給気ホース401a及び排気ホース401bの少なくとも一方の位置に電磁弁403A、403Bが設けられている場合には、電磁弁403A、403Bのいずれかが閉じている限り、エアモータ401の給気口4011側に高圧空気が作用しても、当該エアモータ401が作動することがなく、回転出力軸4aが回転することがない。しかもこの場合は、空気圧源から給気口4011までの流路が長い場合であっても、その流路に空気が流れていない限り圧力損失が発生することがないので、当該空気圧源で設定された所定の空気の圧力(即ち、元圧)がエアモータ401の近傍部分まで作用することになる。
【0094】
即ち、図12(a)に示すように、電磁弁403Aのみが給気口4011の近傍に設けられている場合には、当該電磁弁403Aの位置まで空気圧源の元圧が作用することになる。また、図12(b)に示すように、電磁弁403Bのみが排気口4012の近傍に設けられている場合には、給気口4011からエアモータ401内及び排気口4012を介して電磁弁403Bの位置まで空気圧源の元圧が作用することになる。更に、図12(c)に示すように、電磁弁403A、403Bの双方が給気口4011及び排気口4012のそれぞれの近傍に設けられている場合には、いずれか一方の電磁弁を開又は閉にすることによって、電磁弁403Aの位置又はエアモータ401内等を介して電磁弁403Bの位置まで空気圧源の元圧を作用させることができる。
【0095】
このため、図12(a)に示すように、電磁弁403Aのみを給気口4011側に設けた場合において、当該電磁弁403Aを閉から開に切り換えると、電磁弁403Aの直前位置まで既に空気圧源の元圧(例えば、1.5〜2Kg/cm)となっている高圧空気がエアモータ401に一気に流入し、当該エアモータ401に所定のトルクが発生することになるので、回転出力軸4aが所定の角加速度をもって回転を開始し、これによって吸着板片61gが磁石52eから引き離された状態になると共に、回転出力軸4aが所定の時間で所定の回転状態になる。そして、鋼管内面の下地処理を実施する場合、さらに高速回転にするために空気圧源の元圧(例えば、3〜4Kg/cm)を上げることにより、回転出力軸4aが大きな角加速度をもって回転し、下地処理工具7が主柱aの円筒内周面に当接することになる。このため、主柱aの円筒内周面に付着した埃等の異物の除去、当該円筒内周面の粗面化、錆が発生している場合にはその錆の除去等の下地処理を行うことができる。
【0096】
また、図12(b)に示すように、電磁弁403Bのみを排気口4012側に設けた場合において、当該電磁弁403Bを閉から開に切り換えると、エアモータ401内に既に充満している高圧空気が排気口4012から一気に流出することになるので、当該エアモータ401に所定のトルクが発生し、回転出力軸4aが所定の角加速度をもって回転を開始し、これによって吸着板片61gが磁石52eから引き離された状態になると共に、回転出力軸4aが所定の時間で所定の回転状態になる。そして、鋼管内面の下地処理を実施する場合、さらに高速回転にするために空気圧源の元圧(例えば、3〜4Kg/cm)を上げることにより、回転出力軸4aが大きな角加速度をもって回転し、下地処理工具7が主柱aの円筒内周面に当接することになる。このため、主柱aの円筒内周面に付着した埃等の異物の除去、当該円筒内周面の粗面化、錆が発生している場合にはその錆の除去等の下地処理を行うことができる。
【0097】
更に、図12(c)に示すように、電磁弁403A、403Bのそれぞれを給気口4011側及び排気口4012側に設けた場合は、電磁弁403A、403Bの何れか一方を開状態とし、他方を閉状態とした上で、その他方を閉から開に切り換えることにより、電磁弁403Aのみを給気口4011側に設けた場合と、電磁弁403Bのみを排気口4012側に設けた場合との双方の作用効果を奏することができる。即ち、回転出力軸4aが所定の高速回転となるまでの立ち上がり時間を2段階に調整することが可能になる。また、回転出力軸4aを駆動する際には排気口4012側の電磁弁403Bのみで制御(即ち、メータアウト制御)し、当該回転出力軸4aを停止する際には給気口4011側の電磁弁403Aのみで制御(即ち、メータイン制御)するように構成することにより、回転出力軸4aを所定の時間で所定の回転状態に立ち上げることができると共に、当該回転出力軸4aの停止時のショックを緩和することもできる。
【0098】
また、アーム6は回転出力軸4aと同速度で回転することになるが、当該アーム6に作用する遠心力はその回転出力軸4aの角速度の2乗に比例することになる。そして、その角速度は、給気口4011側に電磁弁403Aのみを設けた場合も、排気口4012側に電磁弁403Bのみを設けた場合も、給気口4011側及び排気口4012側のそれぞれに電磁弁403A、403Bを設けた場合も、所定の時間で所定の回転状態になる。即ち、回転出力軸4aの回転開始後、所定の時間でアーム6に所定の遠心力が作用することになる。従って、エアモータ401の駆動開始から下地処理工具7が鋼管Pの円筒内周面等に達するまでの時間を所定の時間内に収めることができ、下地処理の能率を向上させることができる。
【0099】
また、給気口4011側に電磁弁403Aのみを設けた場合も、排気口4012側に電磁弁403Bのみを設けた場合も、給気口4011側及び排気口4012側のそれぞれに電磁弁403A、403Bを設けた場合も、回転出力軸4aの回転開始後、所定の時間でアーム6に所定の遠心力を作用させることができるので、当該アーム6を回転中心線5aに沿うように保持する磁石52eの吸引力に抗して、当該アーム6を鋼管Pの円筒内周面側にスムーズに揺動させることができる利点もある。
【0100】
なお、回転速度が立ち上がる過渡状態からその回転速度が定常状態に達した後の回転出力軸4aの角速度については、空気圧源から流出する空気の流量を図示しない流量調整弁で調整することで、所定の値に設定することができる。
【0101】
また、上記実施形態においては、アーム6を第1のアーム61及び第2のアーム62により構成した例を示したが、当該アーム6については、図13に示すように、直線状に延在する一つの部材によって構成したものであってもよい。第1のアーム61及び第2のアーム62で示した構成要素と共通する要素については、図13において図10等の符号と同一の符号を付して示すことで説明を省略する。また、アーム6以外の構成は、上述した実施形態で示したものと共通する。
【0102】
上記のように構成された一部材よりなるアーム6を備えた管体内下地処理装置1においても、上述した第1のアーム61及び第2のアーム62を有するアーム6を備えた管体内下地処理装置1と同様の作用効果を奏する。但し、一部材よりなるアーム6の場合は、図10に示すリブgの下面や、この下面に対して下方に隣接するフランジ継手部f1の内周面の部分や、図11に示す段部の下面f1aや、その下面f1aに対して下方に隣接するフランジ継手部f1の内周面f1bの部分についての下地処理は困難になる。
【0103】
更に、カメラ82及び照明手段83は、案内装置2の先端部における継手部8に設けた例を示したが、これらのカメラ82及び照明手段83については、より近くで下地処理工具7による下地処理の状況が確認可能なように、回転駆動部4における先端側の部位に設けるように構成してもよい。
【0104】
そして更に、照明手段83及びカメラ82については、図14及び図15に示すように、回転駆動部4の上方位置に、斜め下方(下地処理工具7に対応する主柱a(鋼管P)の内表面の部分を少なくとも照明及び撮影する方向)及び斜め上方(案内装置2の基端側の方向に位置する管体の内表面を少なくとも照明及び撮影する方向)の撮影が可能なように設けてもよい。この場合、照明手段83及びカメラ82は、下位継手部801及び上位継手部802のそれぞれに設けられることによって、斜め下方及び斜め上方の撮影が可能になっている。なお、下位継手部801に設けられた照明手段83及びカメラ82は第1照明手段83a及び第1カメラ82aと同義であり、上位継手部802に設けられた照明手段83及びカメラ82は第2照明手段83b及び第2カメラ82bと同義である。
【0105】
下位継手部801は、所定の厚さの円盤状に形成されたものであり、回転駆動部4の上端部における基端カバー40bの上に同軸状に取り付けられるようになっている。この下位継手部801の外周部近傍には、周方向に4等分する各位置に、第1カメラ82aの収納孔8aが設けられている。この収納孔8aは、下位継手部801における基端カバー40b側を向く下面に開口し、この開口部によって第1カメラ82aによる斜め下方の撮影を可能にしている。即ち、下位継手部801における各収納孔8aに設けられた第1カメラ82aによって、主柱aの内表面や、下地処理工具7による主柱aの内表面の下地処理状況等が確認可能になっている。
【0106】
更に、下位継手部801の下面には、各収納孔8aに近接した位置であって、当該下位継手部801の半径方向の中心寄りの位置に、第1照明手段83aが設けられている。各第1照明手段83aは、この例では3つのLEDによって構成されている。
【0107】
そして、回転駆動部4の外殻部40aには、各第1カメラ82a及び第1照明手段83aに対応する位置に、第1照明手段83aから発した光を主柱aの内表面側等に反射する反射板85が設けられている。各反射板85は、下位継手部801の下面において、各第1照明手段83a及び第1カメラ82aを、下位継手部801の中心寄りの位置側から台形状の凹状に囲むように形成されている。そして、各反射板85は、下位継手部801の下面から先端カバー40cに至るようにほぼ一定の幅で延在し、かつ先端カバー40cに向けて漸次浅くなるように形成されている。なお、先端カバー40cの上面位置における各反射板85の深さは、ほぼ零となっている。
【0108】
一方、上位継手部802は、下位継手部801と同一の形状に形成されており、当該下位継手部801の下面に対応する面が上方に向けられた状態で、当該下位継手部801上に同軸状に重ねられた状態で連結されるようになっている。即ち、上位継手部802の上面が下位継手部801の下面に対応するように上下対象となっていると共に、第2照明手段83b及び第2カメラ82bが第1照明手段83a及び第1カメラ82aと上下対象となるように設けられている。また、下位継手部801及び上位継手部802の外周面は円筒状の外板84によって覆われている。外板84は、化粧板や保護板等として機能すると共に、下位継手部801及び上位継手部802を同軸状に連結する部材として機能するようになっている。
【0109】
そして、上位継手部802は、連結用ケーシング80によって案内装置2に同軸状に連結されている。連結用ケーシング80は、案内装置2の外殻部21とほぼ同径の円筒状の外殻部80aを有し、その外殻部80aの基端部が案内装置2の先端カバー20aに連結されている。また、連結用ケーシング80は、その外殻部80aの先端部に先端カバー80bが設けられており、この先端カバー80bが上位継手部802に同軸状に連結されるようになっている。
【0110】
連結用ケーシング80の外殻部80aには、上位継手部802における各第2照明手段83b及び第2カメラ82bに対応する位置に、第2照明手段83bから発した光を主柱aの内表面側等に反射する反射板80cが設けられている。各反射板80cは、上位継手部802の上面において、各照明手段83及びカメラ82を、上位継手部802の中心寄りの位置側から台形状の凹状に囲むように形成されている。そして、各反射板80cは、上位継手部802の上面から先端カバー20aに至るようにほぼ一定の幅で延在し、かつ先端カバー20aに向けて漸次浅くなるように形成されている。なお、先端カバー20aの下面位置における反射板80cの深さは、ほぼ零になっている。
【0111】
ここで、周方向に4等分する各位置に設けられた第1照明手段83a及び第1カメラ82aのセットを第1撮影装置とし、第2照明手段83b及び第2カメラ82bのセットを第2撮影装置とすると、これらの第1及び第2撮影装置は、撮影用制御部(図示せず)によって制御されるようになっている。なお、4セットの第1撮影装置によって、主柱aの内表面を周方向に漏れなく写し出すことが可能になっている。第2撮影装置についても同様である。
【0112】
撮影制御装置は、自動表示切換回路と、手動表示切換回路の少なくとも2種類の表示切換回路が選択可能に構成されている。更に、自動表示切換回路は、第1の自動表示切換回路及び第2の自動表示切換回路の何れかに切り換え可能に構成されている。
【0113】
第1の自動表示切換回路に切り換えた状態においては、下位継手部801に設けられた4セットの第1撮影装置における第1照明手段83a及び第1カメラ82aがすべてON状態になると共に、各第1カメラ82aで撮影された映像が順次切り換えられて一台のモニターに表示されるようになっている。この場合、各カメラ82の映像は、所定の時間間隔をおいて、下位継手部801における周方向の一定の方向に順次切り換えられることになる。
【0114】
第2の自動表示切換回路に切り換えた状態においても、第1の自動表示切換回路の場合と同様に、上位継手部802に設けられた4セットの第2撮影装置における第2照明手段83b、第2カメラ82b及びモニター等が制御される。モニターについては、第1の自動表示切換回路の場合も、第2の自動表示切換回路の場合も同じものが用いられる。
【0115】
また、撮影制御装置は、上記第1の自動表示切換回路及び第2の自動表示切換回路の双方が同時に機能する第3の自動表示切換回路への切り換えを可能にするものであってもよい。この場合、モニターが一台である場合は、そのモニターの画面を例えば上下に分割して、下側に下位継手部801の各第1カメラ82aの映像を表示し、上側に上位継手部802の各第2カメラ82bの映像を表示することが可能である。また、下位継手部801の各第1カメラ82aの映像のみを表示するモニター及び上位継手部802の各第2カメラ82bの映像のみを表示するモニターをそれぞれ専用に設けるようにしてもよい。
【0116】
手動表示切換回路に切り換えた状態においては、下位継手部801及び上位継手部802における4セットずつの第1撮影装置及び第2撮影装置にうち、特定の1セットの撮影装置の照明手段83及びカメラ82を選択してON状態にすると共に、その特定のカメラ82の映像を一台のモニターに表示することが可能になっている。即ち、手動表示切換回路は、作業者が特定の例えば一つのカメラ82を選択することで、その映像をモニターに表示することが可能になっている。但し、2以上のセットの撮影装置を選択して、2以上のカメラの映像をモニターに表示するように構成してもよい。この場合のモニターについては、一画面を複数に分割して表示するようにしても、複数のモニターを用いて表示するようにしてもよい。
【0117】
上記のように照明手段83、カメラ82及び撮影制御装置等を備えた場合には、例えば第1の自動表示切換回路に切り換えることにより、主柱aの内表面を下地処理する様子を当該内表面の全周にわたって一台のモニターで確認することができる。しかも、手動表示切換回路によって、特定のカメラ82に切り換えることにより、主柱aの内表面における特定の部分を入念に監視しながら下地処理をすることができる利点もある。
【0118】
また、管体内下地処理装置1の全体を例えば引き上げる際には、第2の自動表示切換回路に切り換えることにより、主柱a内の上方を確認することができる。従って、主柱a内に上述したリブgが突出している場合でも、当該リブgに引っ掛かるのを防止しながら、管体内下地処理装置1を主柱a内から引き上げることができる。
【0119】
更に、第3の自動表示切換回路に切り換えることにより、主柱aの内表面の下地処理部分や、主柱aの内表面の上方部分を、モニター(一台でも二台以上でも可)で同時に確認することができるので、管体内下地処理装置1を例えば上方に移動しながら安全に主柱aの内表面について下地処理ができるという利点がある。
【0120】
従って、照明手段83、カメラ82及び撮影制御装置等を備えることにより、主柱a内の下地処理の高効率化を図ることができる。
【0121】
なお、下位継手部801及び上位継手部802については一体のもので構成してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 管体内下地処理装置
2 案内装置
2a 軸線
3 作業装置
4 回転駆動部
4a 回転出力軸
5 回転体
5a 回転中心線
6 アーム
7、71 下地処理工具
22 脚部
52e 磁石(一時保持手段)
53 揺動支持ピン
53a 軸線
60 回動ピン
60a 軸線
61 第1のアーム
61a 揚力発生部
62 第2のアーム
82 カメラ
82a 第1カメラ
82b 第2カメラ
83 照明手段
83a 第1照明手段
83b 第2照明手段
401 エアモータ
401a 給気ホース(空気流路)
401b 排気ホース(空気流路)
403A、403B 電磁弁
4011 給気口
4012 排気口
a 主柱
q 流れの方向
P 鋼管(管体)
α 迎角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16