(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ハードディスク装置は、更なる薄型化が要求されており、ハードディスク装置の駆動源に用いられるスピンドルモータも薄型化が求められている。このような薄型化の観点から、軸方向の寸法が制約された状況では、軸方向で、ベースプレートの段差部の高さと、磁気吸引板の厚みとに相当する寸法を必要とする特許文献1の構成は好ましくない。また、強い磁気吸引力を必要とした場合には、厚い磁気吸引板が必要となることから、特許文献1の構成は、構造的にも実用的とはいえない。
【0007】
特許文献2では、スラストヨークの外周端部のみを静止部材に固着することから、必要な結合強度を得るために、磁気吸引板の上方に環状の凸突部を突出させる必要がある。薄型化の観点からは、磁気吸引板の上方に余分な突部が突出する特許文献2の構成は好ましくない。
【0008】
以上の事情を考慮して、本発明は、薄型化を阻害させずにベースプレートへの磁気吸引板の接着強度を向上させる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シャフトが保持され、前記シャフトが延在する方向に隆起した、環状の突部が形成されたベース部材と、前記ベース部材に固定され、複数のステータコイルが巻回された環状のステータコアと、前記シャフトに取りつけられ、前記ステータコアの径方向外側に隙間を有して対向する位置に配置されたロータマグネットを有するロータと、前記ベース部材における前記ロータマグネットと軸方向において対向する位置に配置された環状の磁気吸引板とを備え、
前記環状の磁気吸引板は、前記環状の突部の内周面または外周面に接着剤により固定され、前記環状の突部のうち周方向にわたり点在する複数の地点では、当該突部の先端部が前記磁気吸引板の
側面に
向かって倒れるように塑性変形し
、前記先端部が形成する傾斜面と前記磁気吸引板の側面とによって前記環状の突部の基端部側から先端部側に向かって尖った楔型の空間が形成されており、前記楔型の空間に前記接着剤が充填されているスピンドルモータである。
【0010】
本発明において、前記環状の突部のうち、変形している前記先端部は、当該突部の基端部に比較して変形量が大きい構成は好ましい
。
【0011】
本発明において、前記磁気吸引板の内周面は、相対的な粗面と相対的な平滑面とを有し、前記環状の突部は、前記粗面の少なくとも一部と対向している構成は好ましい
。
【0013】
他の本発明は、シャフトが保持されたベース部材と、前記ベース部材に固定され、複数のステータコイルが巻回された環状のステータコアと、前記シャフトに取りつけられ、前記ステータコアの径方向外側に隙間を有して対向する位置に配置されたロータマグネットを有するロータと、前記ベース部材の前記ロータマグネットと軸方向において対向する位置に配置された環状の磁気吸引板とを備えたスピンドルモータの製造方法であって、前記環状の磁気吸引板を、前記ベース部材に設けられた環状の突部の内周面または外周面に配置する工程と、前記環状の突部における複数の箇所で、当該突部の先端部を前記磁気吸引板の
側面に
向かって倒れるように塑性変形
させることにより、前記先端部が形成する傾斜面と前記磁気吸引板の側面とによって前記環状の突部の基端部側から先端部側に向かって尖った楔型の空間を形成する工程とを含み、前記環状の突部の前記先端部の形成が、前記磁気吸引板が前記ベース部材上に配置される前または後の段階において行われるスピンドルモータの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄型化を阻害させずにベースプレートへの磁気吸引板の接着強度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(構成)
図1には、スピンドルモータ100を、シャフトを含む面で切断した断面の右側の状態が示されている。
図1では、左半分の構造が図示省略されているが、図示省略した左側は、右側と同様な構造を有している。以降、シャフトの中心軸に垂直な方向(径方向)を「X軸方向」、シャフトの中心軸に平行な方向(軸方向)を「Y軸方向」という場合がある。
【0017】
図1に例示される通り、スピンドルモータ100は、筐体の一部を構成するベースプレート101を備えている。ベースプレート101は、金属(例えばアルミニウム合金)により構成されている。ベースプレート101には、ステータコア102が固定されている。
【0018】
ステータコア102は、環状に加工された板状の軟磁性材料(例えば、電磁鋼板)を軸方向に複数枚積層した構造を有している。ステータコア102は、周方向に沿って配置され、径方向外側に延在する複数の極歯(突極)を有している。各極歯には、駆動コイルとなるステータコイル103が巻回されている。なお、ここでいう軸は、ロータハブ106の回転中心およびシャフト105の中心軸と一致する。
【0019】
ベースプレート101の中心には、軸方向に貫通する孔が設けられ、この孔には、金属製の軸受構成部材104が固定されている。軸受構成部材104は、カップ状に形成され、その中心に開口部を有している。軸受構成部材104の中心の開口部の内側には、金属製のシャフト105が固定されている。すなわち、シャフト105は、ベースプレート101に回転できない状態で保持されている。シャフト105の軸受構成部材104と接触した部分の上部には、ロータを構成するロータ部材の一例であるロータハブ106が、シャフト105に対して回転自在な状態で保持されている。
【0020】
ロータハブ106は、例えば、磁性体であるフェライト系ステンレス鋼で形成され、略円筒形状の内側円筒壁部106aと、径外側の方向に延在した円板形状の円板部106bと、円板部106bの径方向外側の周縁から軸方向下方、すなわち、Y軸方向負側に延在する円筒形状の外側円筒壁部106cとを含んで構成される。例えば、ハードディスク装置の場合、円板部106b及び外側円筒壁部106cの外側に磁気ディスクが配置される。ロータハブ106は、複数の部材の組み合わせで構成することも可能である。例えば、ロータハブ106のうち、内側円筒壁部106aを個別の部材として形成し、円板部106bと外側円筒壁部106cとを一体に形成してもよい。また、内側円筒壁部106aと円板部106bを一体に形成し、外側円筒壁部106cを個別の部材としてもよい。
【0021】
シャフト105の外周面とロータハブ106の内周面との少なくとも一方には、動圧発生溝が設けられ、ラジアル動圧軸受部が形成される。シャフト105の外周面とロータハブ106の内周面との間には微小隙間が設けられる。シャフト105の外周面とロータハブ106の内周面とは、微小間隙を介して径方向で相互に対向し、この微小間隙には潤滑剤が充填される。ラジアル軸受部の流体軸受構造によって流体に動圧を発生させることで、ロータハブ106の滑らかな回転が実現される。
【0022】
ロータハブ106の軸方向における下面(ロータハブ106のうちY軸方向負側の面)と、軸受構成部材104の軸方向における上面(Y軸方向正側の面)との一方または両方には、動圧発生溝が設けられ、スラスト軸受部が形成される。ロータハブ106の下面と軸受構成部材104の上面との間には微小隙間が設けられ、ロータハブ106の下面と、軸受構成部材104の上面とは、微小間隙を介して軸方向で対向する。微小間隙には潤滑剤が充填されている。ロータハブ106が回転すると、上記の動圧溝によって動圧が発生し、ロータハブ106はシャフト105に対して非接触状態で回転する。また、上記の潤滑剤の漏れを防止するために、エンドキャップ108と毛細管現象を利用した毛細管シール107が設けられている。
【0023】
ロータハブ106における外側円筒壁部106cの径方向内側には、ステータコア102の極歯の先端部に隙間を有した状態で対向したロータマグネット109が配置されている。ロータマグネット109は、環状の形状を有し、周方向に沿ってSNSN・・・と着磁された永久磁石である。本実施形態では、ロータハブ106とロータマグネット109とにより、スピンドルモータ100におけるロータが構成されている。
【0024】
ベースプレート101におけるロータマグネット109に軸方向で隙間を有して対向する部分に磁気吸引板110が配置されている。磁気吸引板110は、軟磁性鋼板等の磁性材料で構成され、環状の形状を有し、略矩形の断面形状を有している。ベースプレート101には、軸方向上側(Y軸方向正側)に隆起した環状の突部101aが設けられている。磁気吸引板110は、環状の突部101aの外周面に、接着剤を介して固定されている。
【0025】
以上のように構成されたスピンドルモータ100では、ステータコイル103に供給する駆動電流の極性を周期的に切り替えることで、ステータコイル103が生成する磁力とロータマグネット109との間で作用する磁気吸引力と磁気反発力とが周期的に切り替わり、ロータハブ106がステータコア102に対して回転する。この際、ロータマグネット109と磁気吸引板110との間で磁気吸引力が作用し、回転するロータハブ106の軸方向における安定性が得られる。
【0026】
次に、ベースプレート101の環状の突部101aと磁気吸引板110との相互の位置関係について説明する。
図2は、
図1の磁気吸引板110の部分を拡大した図である。
図2(A)に例示されるように、変形前の状態において、環状の突部101aの外周面は軸(シャフト105)に平行であり、環状の突部101aの内周面は、軸方向上方(Y軸方向正側)に向かうほど、内径が拡大する斜面(テーパ面)101bとなっている。以降の説明では、環状の突部101aのうち、径方向外側の面を「外周面」といい、径方向内側の面を「内周面」ということがある。
【0027】
続いて、ベースプレート101に磁気吸引板110を取り付ける工程の一例を説明する。実施形態に係るスピンドルモータの製造方法は、ベースプレート101に磁気吸引板110を取り付ける工程を含む。
図3は、ベースプレート101への磁気吸引板110を取り付ける工程の一例を段階的に示す断面図である。まず、ベースプレート101と磁気吸引板110の対向する面とのうち、一方または両方に接着剤を塗布する。
【0028】
次に、ベースプレート101に磁気吸引110を配置する。ここでは、環状の突部101aの外側に磁気吸引板110を配置する(
図3(A))。この段階においては、
図2(A)に例示されるように、環状の突部101aの外周面と磁気吸引板110の内周面との間は、接着剤111が存在できる程度の僅かな隙間が存在している。
図2(A)には、接着剤111を介して磁気吸引110をベースプレート101に配置した状態を拡大して示している。
【0029】
次に、環状の突部101aの斜面101bを、治具112で軸方向に押圧し、環状の突部101aの複数の箇所を磁気吸引板110の方向に変形させる。この工程では、まず斜面112aを有する押し付け用の治具112を、環状の突部101aの上方から、環状の突部101aの斜面101bに近づけ、斜面112aを斜面101bに接触させる。この状態が
図3(B)に示されている。ここで、治具112は、環状の突部101aの周方向における均等な間隔を有する3か所を部分的に押圧する。
【0030】
そして、
図3(B)の状態から、治具112を軸方向で下降させ、環状の突部101aの斜面101bを、治具112の斜面112aで上方から押圧する。この結果、環状の突部101aが、
図2(B)に示されるように、径方向外側(磁気吸引板110に対向する側)の方向に塑性変形し、環状の突部101aの外側角部101cが磁気吸引板110の内周面に対向した状態で近接または接触する。
図2(B)には、
図2(A)の状態において、環状の突部101aの軸方向における上方の先端部が、径方向外側に変形した状態が示されている。この状態では、環状の突部101aは、基端部から先端部にかけて径外側(磁気吸引板110の側)の方向に湾曲あるいは傾いた形状を有している。
【0031】
なお、
図2(B)では、径方向外側に向かって変形した環状の突部101aの外側角部101cが、磁気吸引板110の内周面に僅かな隙間を介して近接する状態(非接触である状態)が例示されているが、以上の例示以外に、
図3(C)に例示されるように、両者が接触した状態であってもよい。
図3(C)には、環状の突部101aの外側角部101cが磁気吸引板110に接触した状態が示されている。
【0032】
図4は、
図1において、シャフト105、ロータハブ106およびステータコア102を取り外した状態おける上面図(Y軸方向正側から負側を見た図)である。
図4におけるA−A’で切断した断面が
図2に対応する。
図4には、環状の突部101aが3か所で径方向外側に塑性変形し、周方向にわたり3か所の変形部114が形成された状態が示されている。
【0033】
以上の説明から理解される通り、上述した工程では、複雑な製造装置を必要とせずに、環状の突部101aの変形が確実に行われる。以上の工程によれば、コスト増を招かずに高い生産性が得られる。また、高い加工精度が得られる。
【0034】
(試験結果)
表1に環状の突部101aの変形を行わない場合と、変形を行う場合の接着強度(接着剤による磁気吸引板110のベースプレート101への接着強度)を調べた結果を示す。なお、表1に結果を示す試験では、環状の突部101aの変形は、変形後に環状の突部101aと磁気吸引板110とが近接するように設定している。表1における「油分なし」は、接着面に油分が残存しないように洗浄を行った場合であり、「油分あり」は、接着面に意図的に油分を塗布した場合である。変形の有無は、「変形なし」が
図2(A)の場合、「変形あり」が
図2(B)の場合である。
【0036】
表1のデータは、接着剤が硬化した後に磁気吸引板110を軸方向に引っ張り、磁気吸引板110が外れた際の引っ張り力を調べたものである。なお、表1には、接着強度として、前記引っ張り力の値(単位:ニュートン[N])が記載されている。
【0037】
また、表1には、磁気吸引板110が外れる要因の一つである油分が存在している異常時を想定した試験の結果も示されている。これまでの不良解析の知見によれば、油分の存在により、磁気吸引板110のベースプレート101への接着強度が極度に低下することが判っている。
【0038】
表1の結果から、
図2(B)に示すように環状の突部101aを変形させ、外側角部101cを磁気吸引板110に近接させることで、ベースプレート101への磁気吸引板110の接着強度を高められることが判る。特に、油分が存在している場合、環状の突部101aの変形を行うことで、行わない場合の6倍程度の接着強度が得られることが判る。
【0039】
(考察)
表1に示す接着強度の向上効果が得られた理由は、以下の様に考えられる。まず、磁気吸引板110は、軟磁性鋼板(例えば、電磁鋼板)を打ち抜き加工することで得られる。この打ち抜き加工の際、磁気吸引板110の外周面および内周面における厚み方向(軸方向)の断面は、切断面と破断面となる。ここで、抜き打ち加工時に抜き型の刃(パンチ)が最初に接触する側から切断面→破断面の順序となる。
【0040】
破断面は、面粗さが粗いことから「粗面」と表現し得る。他方、切断面は、破断面と比較して面粗さが良いことから「平滑面」表現し得る。本実施形態の場合、
図2に示すように、磁気吸引板110の上部110a(環状の突部101aの先端部側)が切断面、磁気吸引板110の下部110b(環状の突部101aの基端部側)が破断面となる場合と、その逆に磁気吸引板110の上部110aが破断面、磁気吸引板110の下部110bが切断面となる場合の2通りがある。ここで、上記2通りの何れの場合であっても、環状の突部101aの外周面が磁気吸引板110の上記破断面と径方向で対向するように各部の寸法や製造条件の設定がされている。なお、一例であるが、破断面の面粗さは、Ra 6.3aよりも低く、例えばRa 3.2 であり、切断面(せん断面)はRa 1.6aよりも低く、例えばRa 0.8程度となる。
【0041】
なお、
図2では、切断面と破断面の割合が1:1の場合が示されているが、この割合は、磁気吸引板101の材質、寸法、打ち抜き加工の条件、打ち抜き加工装置の性能等によって異なり、必ずしも1:1になる訳ではない。また、切断面あるいは破断面であるかは、拡大写真や顕微鏡による観察で確認することができる。
【0042】
上述の通り、切断面は平滑面であり、アンカー効果が低く接着剤の食いつきが悪い。これに対して、破断面は粗面であり、アンカー効果が作用し、接着剤の食いつきがよい。よって、磁気吸引板110の接着面(この場合は、内周面)の少なくとも一部に、接着剤に対するアンカー効果が働く。
【0043】
他方でベースプレート101の表面は、電着塗装された上で切削加工が施された切削面であり、磁気吸引板110の内周面および外周面に比較して平滑性が相対的に高い。よって、環状の突部101aの接着面は、平滑性が良いことに起因してアンカー効果が弱く、接着剤の食いつきが良くない。よって、
図2(A)の場合、接着剤が環状の突部101aから剥離し易く、磁気吸引板110のベースプレート101への固着力が相対的に弱い。
【0044】
これに対して、
図2(B)の場合、環状の突部101aの先端部が磁気吸引板110の厚み方向(軸方向)の中央付近114に向かって倒れ込むように変形しており、その部分で接着層の径方向における厚みが相対的に薄くなっている。
【0045】
ここで、磁気吸引板110の上部110a(環状の突部101aの先端部側)が切断面、磁気吸引板110の下部110b(環状の突部101aの基端部側)が破断面となる場合、符号110bの部分における接着剤は、磁気吸引板110の符号113の部分への固着性が良く、磁気吸引板110が上方に引っ張られても、径方向で括れた符号114の部分に硬化した接着剤が引っかかる状態となり、磁気吸引板110の上方への離脱が生じ難い。
【0046】
すなわち、
図2(B)の構造では、環状の突部101aの変形部分において、下部110b(基端部)に比較して上部110a(先端部)程変形量が多く、環状の突部101aと磁気吸引板110との間の径方向における距離は、環状の突部101aの基端部で大きく、環状の突部101aの先端部近くで最少となっている。この構造では、環状の突部101aの基端部から先端部に向かって(Y軸方向正の方向に向かって)、接着剤111の径方向における厚みが徐々に薄くなり、外側角部101cの部分(符号114の部分)で接着剤111の径方向における厚みが最小(場合によっては、厚みゼロ)となっている。このため、磁気吸引板110に固着し硬化した接着剤111が環状の突部101aの先端部に向かって尖った楔型となる。また、符号110bの部分が破断面の場合、符号113の部分で磁気吸引板110に対する接着剤の食い付きが良い。この構造では、磁気吸引板110をベースプレート101から引き離そうとした際に、符号114の部分で引っかかりが生じる。そのため、磁気吸引板110をベースプレート101から引き離そうとした際の抵抗が大きくなる。
【0047】
また、符号110aの部分が破断面の場合、符号114の部分で接着剤111が磁気吸引板110に食い付き良く固着する。この場合も硬化した接着剤111が上記の場合と同様に、環状の突部101aの先端部に向かって尖った楔型となり、磁気吸引板110をベースプレート101から引き離そうとした際に符号114の部分で引っかかりが生じる。そのため、磁気吸引板110をベースプレート101から引き離そうとした際の抵抗が大きくなる。
【0048】
いずれの場合も磁気吸引板110の内周面は、相対的な粗面と相対的な平滑面とを有し、環状の突部101aは、前記粗面の少なくとも一部と対向している。このため、磁気吸引板110が環状の突部101aと径方向で対向する内周面に、接着剤へのアンカー効果が作用する部分が必ず存在し、上述した磁気吸引板110をベースプレート101から引き離そうとした際の抵抗が大きくなる構造が得られる。
【0049】
このように、環状の突部101aの変形を行うことで接着強度を確保することが可能となる。そして、磁気吸引板110に粗面が存在する場合には、接着強度を高める効果はさらに顕著となる。これらの作用効果は、磁気吸引板の外周面側に環状の突部が設けられている場合も同様に得られる。
【0050】
また、
図2(b)の構造は、環状の突部101aの先端部の位置が磁気吸引板110から軸方向ではみ出さないので、スピンドルモータ100の薄型化が阻害されない。すなわち、軸に垂直な方向から見て、変形した環状の突部101aの先端部が磁気吸引板110と重なる位置にあり磁気吸引板110から軸方向に突出しないので、スピンドルモータ100の薄型化が阻害されない。また、環状の突部101aの変形は、低コストで行えるので、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0051】
(その他)
環状の突部101aの径方向内側に磁気吸引板110を配置する構造も可能である。この場合、磁気吸引板110の外周面が環状の突部101aの内周面に対向する。また、環状の突部101aの先端は、径方向内側に配置された磁気吸引板110の方向に変形した(湾曲した)形状となる。
【0052】
環状の突部101aの複数個所における変形を、磁気吸引板110をベースプレート101に配置する前の段階で行ってもよい。また、ベースプレートを鋳造で作成し、その際に環状の突部101aにおける複数の変形部分を同時に作成することも可能である。
【0053】
環状の突部101aにおける変形部分の数は、周方向における均等な3カ所の位置に限定されず、周方向における均等な4か所以上であってもよい。ただし、その数が多くなるにつれて、狙い通りの変形を生じさせることが困難になる傾向が大きくなる。そのため、ハードディスク装置用のスピンドルモータにおける環状の突部101aにおける変形部分の数の上限は9カ所程度となる。
【0054】
磁気吸引板110をベースプレート101に設置する前の段階で、環状の突部101aの先端部を磁気吸引板110の方向に変形する工程を行うことも可能である。
【0055】
ここでは、本発明を軸固定型スピンドルモータに適用した場合を説明したが、本発明は、軸回転型スピンドルモータにも適用が可能である。この場合、ベースプレートにシャフトが回転自在な状態で保持される。また、軸回転型スピンドルモータでは、ロータはシャフトに対して回転せず、ロータはシャフトと一体となって回転する。