(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中和用放電電極は、前記集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する複数の棒状放電部を有する放電電極体を有することを特徴とする請求項1に記載のトンネル工事用電気集塵機。
前記ブラケットは、前記中和用放電電極を下流側に支持する第1ブラケットと、該第1ブラケットが取り付けられるとともに前記筐体の下流側端部に取り付けられる第2ブラケットとを備え、該第2ブラケットは、断面三角形状に形成されるとともに、前記中和用放電電極を下流側に支持した前記第1ブラケットを前記断面三角形状の内側に取り付けた状態で、前記中和用放電電極及び前記第1ブラケットが前記第2ブラケットの下流側となるように、前記筐体の下流側端部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のトンネル工事用電気集塵機。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事中に発生する粉塵を捕集できる車載式の電気集塵機としては、例えば、特許文献1に示すものが提案されている。
特許文献1に示すトンネル掘削工事用電気集塵機は、車両の荷台に載置して用いられて、トンネル掘削工事中に発生する粉塵を捕集するものであり、粉塵を帯電させて集塵極板に捕集する集塵ユニットと、集塵ユニットに粉塵を誘引するファンユニットと、ファンユニットで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備えている。
【0003】
そして、集塵ユニットは、放電電極に電圧を印加し、帯電部電極との間で発生するコロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させる帯電部と、電界を形成し、帯電した粉塵をクーロン力によって集塵極板に捕集する集塵部とを備えている。
このトンネル掘削工事用電気集塵機によれば、ファンユニットで誘引された空気とともに、集塵ユニット内に吸い込まれた粉塵は、帯電部の放電電極と帯電部の集塵電極との間で発生するコロナ放電によって電荷を与えられて帯電する。そして、帯電した粉塵は、空気の流れにより、帯電部の下流側に配置された集塵部に移動する。次いで、帯電した粉塵が集塵部で形成される電界のクーロン力によって集塵極板に捕集されることで、トンネル掘削工事中に発生する粉塵を捕集することができる。
【0004】
ここで、このようなトンネル掘削工事用電気集塵機において、帯電部で帯電される粉塵は、全てが集塵部で捕集されるわけではなく、未捕集の帯電した粉塵が集塵部の下流側に放出される。この帯電された粉塵は、集塵部下流側の装置部分に付着しやすい。
また、帯電部で帯電された粉塵が100%に近い状態で集塵部で捕集されたとしても、一度、集塵部で捕集された粉塵が何らかの原因で集塵部から離れるという再飛散があり、この再飛散した粉塵も帯電している。
従って、トンネル掘削工事用電気集塵機において、帯電した粉塵が集塵部下流側の装置部分に付着し、汚れの原因となっていた。
【0005】
帯電した粉塵が集塵部下流側の装置部分に付着するのを防止する集塵装置として、例えば、特許文献2に示すものが知られている。
特許文献2に示す集塵装置は、粉塵を帯電させる荷電部と、その下流側に設けられて粉塵を除去する集塵部とを備え、集塵部から吹出される荷電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する電荷中和手段として針状電極を集塵部下流側に設けている。
この集塵装置によれば、放電電流が小さくオゾンをほとんど発生させないで帯電粉塵を中和でき、帯電した粉塵が集塵部下流側の装置部分に付着するのを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この従来の特許文献2に示す集塵装置にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献2に示す集塵装置の場合、電荷中和手段としての針状電極を集塵部の下流側であって送風ファンの上流側に設けている。このため、装置の大型化は避けられず、中和性能は安定しない。なぜなら、電荷中和手段で中和できるエリアは非常に狭く電荷中和手段の中和電極の周辺に限られるので、中和装置は大型化する。また、集塵部の運転状況により帯電した粉塵の放出量の多い場所、少ない場所が存在するため、集塵部の近傍に電荷中和手段を設置すると、集塵部から漏れ出た帯電粉塵を効率よく中和することは困難になる。
【0008】
従って、このような問題点に着目してなされたものであって、装置を大型化することなく集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の中和効率を高めることができるトンネル工事用電気集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトンネル工事用電気集塵機は、車両の荷台に載置して用いられて、トンネル掘削工事中に発生する粉塵を捕集するトンネル工事用電気集塵機であって、前記粉塵を帯電させて集塵電極に捕集する集塵ユニットと、該集塵ユニットの下流側に設置され、前記集塵ユニットに前記粉塵を誘引するファンを有するファンユニットと、前記ファンで誘引した空気を吐出する吐出ダクトユニットとを備え、前記ファンの下流側に、前記集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する電荷中和手段を設置したことを要旨とする。
【0010】
このトンネル工事用電気集塵機によれば、未捕集の帯電した粉塵が集塵ユニットの下流側に放出されたり、あるいは一度集塵ユニットで捕集された粉塵が何らかの原因で集塵ユニットから離れて再飛散した場合であっても、これら帯電した粉塵は、電荷中和手段によって中和され、帯電した粉塵が装置部分に付着するおそれを回避することができる。そして、電荷中和手段は、ファンの下流側に設置されているから、ファンで帯電粉塵が撹拌されているので、空間電位は電荷中和手段の断面のどの部位で測定しても変化がなく一様な電位が形成されているエリアでの中和が可能になるので、装置が大型化することはない。
【0011】
また、このトンネル工事用電気集塵機において、前記ファンユニットは、前記ファンを収容する筐体を備え、前記電荷中和手段は、前記ファンの下流側に位置する前記筐体の下流側端部に設置されることが好ましい。
このトンネル工事用電気集塵機によれば、電荷中和手段をファンの下流側に設置する際に、電荷中和手段を簡単に設置することができる。
また、このトンネル工事用電気集塵機において、前記電荷中和手段は、前記集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する放電電極と、該放電電極を下流側に支持した状態で前記放電電極を前記筐体の下流側端部に取り付けるブラケットとを備えていることが好ましい。
このトンネル工事用電気集塵機によれば、集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する放電電極を、筐体の下流側端部にブラケットにより簡単かつ適切に取り付けることができる。
【0012】
また、集塵部の洗浄を集塵部の近傍に設置した洗浄手段によって水で洗浄する場合が多いが、その際に洗浄水(水滴)が電荷中和手段に流入し、放電電極に付着してしまうことがある。この場合、帯電粉塵の除電不良となり、除電効率が安定しなかったり、電荷中和手段が破損してしまうといった不都合がある。また、集塵部で除去できなかった帯電粉塵が放電電極に付着してしまうこともある。この場合も、帯電粉塵の除電不良となり、安定した中和ができなかったり、電荷中和手段が破損してしまうことがある。これに対し、ブラケットにより、放電電極を下流側に支持した状態で放電電極を筐体の下流側端部に取り付けたので、洗浄水(水滴)及び集塵部で除去できなかった帯電粉塵が放電電極に付着するのをブラケットにより阻止できる。これにより、長期間にわたって安定した中和を行うことができるとともに電荷中和手段の破損を防止することができる。
【0013】
また、このトンネル工事用電気集塵機において、前記放電電極は、前記集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する複数の棒状放電部を有する放電電極体を有することが好ましい。
このトンネル工事用電気集塵機によれば、各棒状放電部近傍の空気のイオン化を確実に行うことができる。
【0014】
更に、このトンネル工事用電気集塵機において、前記ブラケットは、前記放電電極を下流側に支持する第1ブラケットと、該第1ブラケットが取り付けられるとともに前記筐体の下流側端部に取り付けられる第2ブラケットとを備え、該第2ブラケットは、断面三角形状に形成されるとともに、前記放電電極を下流側に支持した前記第1ブラケットを前記断面三角形状の内側に取り付けた状態で、前記放電電極及び前記第1ブラケットが前記第2ブラケットの下流側となるように、前記筐体の下流側端部に取り付けられることが好ましい。
【0015】
このトンネル工事用電気集塵機によれば、ファンの出口側(下流側)は乱流域であり、第2ブラケットの内外の圧力差及びカルマン渦により第2ブラケットの内側への空気の流れが生じる。これにより、第2ブラケットの内側にある放電電極から放出されるイオンによって帯電粉塵を効率的に中和することができる。また、第2ブラケットにより、前記放電電極を下流側に支持した前記第1ブラケットを断面三角形状の内側に取り付けた状態で、放電電極及び第1ブラケットが第2ブラケットの下流側となるように、筐体の下流側端部に取り付けたので、洗浄水(水滴)及び集塵部で除去できなかった帯電粉塵が放電電極に付着するのを第2ブラケット及び第1ブラケットにより確実に阻止でき、長期間にわたってより安定した中和を行うことができるとともに電荷中和手段の破損を防止することができる。
【0016】
また、このトンネル工事用電気集塵機において、前記放電電極は、放電電極支持部材を介して前記第1ブラケットに取り付けられることが好ましい。
このトンネル工事用電気集塵機によれば、放電電極を簡単かつ確実に第1ブラケットに取り付けることができる。
また、このトンネル工事用電気集塵機において、前記電荷中和手段は、両極性の高圧電源を用いて前記集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出することが好ましい。
このトンネル工事用電気集塵機によれば、集塵部で捕集されなかった帯電粉塵と、集塵部で捕集された後、集塵部から離れた再飛散した帯電粉塵(集塵部で捕集されなかった帯電粉塵と逆極性に帯電した帯電粉塵)との双方の帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出し、当該双方の帯電粉塵の中和を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るトンネル工事用電気集塵機によれば、装置を大型化することなく集塵ユニットから吹出される帯電粉塵の中和効率を高めることができるトンネル工事用電気集塵機を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1に示すトンネル工事用電気集塵機1は、トンネル掘削工事中に発生するコンクリート吹き付けの際の粉塵や、発破による粉塵の捕集に用いるものである。
ここで、トンネル工事用電気集塵機1は、
図1に示すように、集塵室2、ファンユニット6及び吐出ダクトユニット7の3つのユニットを有し、これらは車両50の荷台51の後部から前方に向けて(上流側から下流側に向けて)この順に配置されて、車両50の荷台51上に載置固定される。
【0020】
集塵室2は、粉塵を帯電させて集塵電極(図示せず)に捕集する部位であり、その空気吸込口3を車両50の後方側に向けて、荷台51上の後部に配置されている。この集塵室2の空気吸込口3側の面には、ゴミなどの大きな異物を捕集するために、保護網20(
図1(b)参照)が空気吸込口3を覆うように設けられている。
そして、集塵室2に、接続ダクト21を介して粉塵を誘引するファンユニット6が連結されている。さらに、このファンユニット6には、吐出ダクトユニット7が、車両50の荷台51の長手方向に沿って略並行な姿勢で連結されている。そして、この吐出ダクトユニット7の空気吐出口8が、車両50の前方に向けて開口している。
【0021】
このファンユニット6は、集塵室2に粉塵を誘引するファン6Aと、ファン6Aを駆動するモータ6Bとを筐体6a内に収容し、ファン6Aで誘引した空気が集塵室2側から吐出ダクトユニット7側に向けて吐出される。
ここで、電気集塵機1は、接続ダクト21が、集塵室2側の開口部が大きく、吐出側に向かうにつれて荷台51上から離隔するように縮径されている。これにより、ファンユニット6及びこれに続く吐出ダクトユニット7は、荷台51の前方側の上方に離隔して配置されるとともに、集塵室2の上部(集塵ユニット2A〜2Dの部分)、ファンユニット6及び吐出ダクトユニット7が、順に上流側から下流側に向けてほぼ流路が直線的になるように連結される。
【0022】
また、ファンユニット6が荷台51上から離隔して配置されることによって形成された空間には、集塵室2用の高電圧電源盤9と、ファンユニット6及び高電圧電源盤9の起動停止の制御を行う制御盤10とが配設されている。高電圧電源盤9と制御盤10とを一体にして電気集塵機盤としている。そして、これら高電圧電源盤9、制御盤10及び集塵室2は、架台11上に載置されて荷台51上に固定される。そして、荷台51上から離隔されたファンユニット6(及び吐出ダクトユニット7)は、高電圧電源盤9及び制御盤10の左右の支柱12によって下方から支持される。なお、架台11上の略中央部には、水を噴霧して、集塵室2の後述する帯電部4や集塵部5に付着した粉塵を洗い流すための洗浄装置13が設けられている。
【0023】
ここで、集塵室2は、複数の集塵ユニットを内部に備えており、この例では、車両50の幅方向に2つ×高さ方向に4つの合計8個の集塵ユニット2A〜2Hを配置している(
図1(b)参照)。
そして、各集塵ユニット2A〜2Hは、空気吸込口3側に配置される帯電部4と、この帯電部4の下流側に順に接続される複数の集塵部5とを備えている。帯電部4は、放電電極(図示せず)に電圧を印加し、帯電部集塵電極(図示せず)との間で発生するコロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させる。各集塵部5は、放電電極(図示せず)と集塵電極(図示せず)との間で電界を形成し、帯電した粉塵をクーロン力によって集塵電極に捕集する。
【0024】
このように構成されたトンネル工事用電気集塵機1において、トンネル掘削工事中に、トンネル工事用電気集塵機1を稼働すると、ファンユニット6のファン6Aの稼働によって空気吸込口3から集塵室2内に、コンクリート吹き付け粉塵や発破による粉塵が吸い込まれる。ここで、保護網20を通過して、集塵室2内に吸い込まれた粉塵は、集塵ユニット2A〜2Hに導かれる。
各集塵ユニット2A〜2Hでは、前述したように、帯電部4にて発生するコロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させる。帯電した粉塵は、空気の流れにより各集塵部5に移動し、各集塵部5で形成されるクーロン力によって集塵電極に捕集される。
しかしながら、帯電部4で帯電される粉塵は、全てが集塵部5で捕集されるわけではなく、未捕集の帯電した粉塵が集塵部5の下流側に放出される。この帯電された粉塵は、集塵部5の下流側の装置部分に付着しやすい。ここで、集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵は、マイナスに帯電している。
【0025】
また、帯電部で帯電された粉塵が100%に近い状態で集塵部5で捕集されたとしても、一度集塵部5で捕集された粉塵が何らかの原因で集塵部5から離れるという再飛散があり、この再飛散した粉塵も帯電している。この帯電した粉塵は、集塵部5の下流側の装置部分に付着し、汚れの原因となる。ここで、集塵部5で捕集された後、集塵部5から離れた再飛散した帯電粉塵は、前述の集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵と逆の極性のプラスに帯電している。
そこで、本実施形態に係るトンネル工事用電気集塵機1においては、
図1に示すように、ファンユニット6のファン6Aの下流側に、集塵ユニット2A〜2Hから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する複数(本実施形態にあっては2つ)の電荷中和手段30を設置している。
【0026】
以下、これら電荷中和手段30について、
図1乃至
図7を参照して詳細に説明する。
複数の電荷中和手段30は、
図1(d)及び
図2に示すように、ファン6Aの下流側に位置する、ファンユニット6の筐体6aの下流側端部に幅方向(
図1(d)における左右方向)に沿って所定ピッチで設置される。
各電荷中和手段30は、両極性の高圧電源を用いて集塵ユニット2A〜2Hから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出するものであり、
図2に示すように、上下方向に延びる、集塵ユニット2A〜2Hから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する中和用放電電極31と、この中和用放電電極31を下流側に支持した状態で中和用放電電極31をファンユニット6の筐体6aの下流側端部に取り付けるブラケット34とを備えている。
【0027】
中和用放電電極31は、
図5(a),(b),(c)に示すように、集塵ユニット2A〜2Hから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する複数の棒状放電部32aを所定のピッチで上下方向に沿って配置した長尺状の放電電極体32と、放電電極体32を保持する保持部33とを備えている。放電電極体32には、保持部33に形成された2つの貫通孔33aを介して高圧ケーブルCが接続されている。
各電荷中和手段30においては、放電電極体32の周囲にアース電極を設けていない。放電電極体32の各棒状放電部32aには、プラス及びマイナスの電圧がかけられているが、帯電粉塵が集塵ユニット2A〜2Hから漏れ出てこない場合は空気イオンはプラスマイナス中立となる。しかし、集塵ユニット2A〜2Hから帯電粉塵が漏れ出た時、各棒状放電部32aとその周囲に大きな電位差が生じ、各棒状放電部32a近傍で電位を打ち消す空気イオンが発生し、帯電粉塵を中和する。
【0028】
ここで、集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵は、マイナスに帯電しているので、この場合、各棒状放電部32aからプラスの空気イオンを放出して中和する。一方、集塵部5で捕集された後、集塵部5から離れた再飛散した帯電粉塵は、前述の集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵と逆の極性のプラスに帯電しているので、この場合、各棒状放電部32aからマイナスの空気イオンを放出して中和する。
また、ブラケット34は、
図2乃至
図4に示すように、中和用放電電極31を下流側に支持するように中和用放電電極31が取り付けられる第1ブラケット35と、第1ブラケット35が取り付けられるとともにファン6Aの下流側に位置する筐体6aの下流側端部に取り付けられる第2ブラケット36とを備えている。
【0029】
ここで、第1ブラケット35は、金属板で形成され、
図6(a),(b)に示すように、中和用放電電極31に対応して上下方向に延びる矩形状の平板部35aと、平板部35aの両縁から斜め外方に延びる一対の傾斜板部35b,35cとを備えている。一対の傾斜板部35b,35cの延長部は互いに交差するがその際の頂角は、直角となる。そして、平板部35aには、後述の複数の放電電極支持部材37を取り付けるための複数対(本実施形態にあっては3対)の取付けねじ用ねじ孔35dが上下方向に沿って所定ピッチで形成されている。また、各傾斜板部35b、35cには、
図6(a),(c)に示すように、第1ブラケット35を第2ブラケット36に取り付けるための複数の取付けねじ用貫通孔35eが上下方向に沿って所定ピッチで形成されている。
【0030】
また、第2ブラケット36は、金属板で形成され、
図3、
図4及び
図7(a),(b),(c)に示すように、上下方向に延びる矩形状の第1平板部36aと、第1平板部36aの側縁から第1平板部36aに対して直角をなすように上下方向に延びる矩形状の第2平板部36bとを備え、横方向で切断して上方から見た際に、頂角が直角となる断面直角二等辺三角形状をなしている。そして、第1平板部36aの上端及び第2平板部36bの上端には、直角二等辺三角形状の第3平板部36cが取り付けられるとともに、第1平板部36aの下端及び第2平板部36bの下端にも、直角二等辺三角形状の第4平板部36dが取り付けられている。そして、第2ブラケット36の第1平板部36a及び第2平板部36bには、第1ブラケット35に形成された複数の取付けねじ用貫通孔35eと対応する位置に、第1ブラケット35を第2ブラケット36に取り付けるための複数の取付けねじ用切欠き36eが上下方向に沿って所定ピッチで形成されている。また、第2ブラケット36の第3平板部36c及び第4平板部36dのそれぞれには、
図7(b)に示すように、第2ブラケット36を筐体6aの下流側端部に取り付けるための取付けねじ用切欠き36fが形成されている。
【0031】
ここで、中和用放電電極31は、
図3及び
図4に示すように、複数(本実施形態にあっては、3つ)の放電電極支持部材37を介して第1ブラケット35の平板部35aに取り付けられる。
具体的に説明すると、各放電電極支持部材37は、
図3及び
図4に示すように、中和用放電電極31を支持する電極支持部37aと、電極支持部37aを第1ブラケット35の平板部35aに取り付ける取付部37bとを備えている。中和用放電電極31の第1ブラケット35への取付けに際し、先ず、各放電電極支持部材37の取付部37bを、
図3及び
図4に示すように、取付けねじ38bを取付けねじ用ねじ孔35dに螺号させることにより、第1ブラケット35の平板部35aに取り付ける。この際に、
図4に示すように、各放電電極支持部材37が一対の傾斜板部35b,35cが延びている側の内側になるように取付部37bを平板部35aに取り付ける。その後、中和用放電電極31を各放電電極支持部材37の電極支持部37aに支持する。このとき、
図3及び
図4に示すように、各取付けねじ38aを電極支持部37aの雌ねじ部に螺合することによって中和用放電電極31の保持部33を締め付ける。これにより、中和用放電電極31は、複数の放電電極支持部材37を介して第1ブラケット35の平板部35aに取り付けられる。
【0032】
そして、中和用放電電極31が取り付けられた第1ブラケット35は、
図3及び
図4に示すように、第2ブラケット36に取り付けられる。
具体的に説明すると、中和用放電電極31が取り付けられた第1ブラケット35を、
図4に示すように、第2ブラケット36の断面直角二等辺三角形状に形成された第1平板部36a及び第2平板部36bの内側に配置する。そして、複数の取付けねじ39aを、第2ブラケット36の外側から第2ブラケット36の取付けねじ用切欠き36e及び第1ブラケット35の取付けねじ用貫通孔35eを挿通し、第1ブラケット35の内側から複数のナット39bで締め付ける。これにより、中和用放電電極31が取り付けられた第1ブラケット35が第2ブラケット36に取り付けられる。これにより、各電荷中和手段30が完成する。
【0033】
そして、各電荷中和手段30は、ファン6Aの下流側に位置する、ファンユニット6の筐体6aの下流側端部に設置される。
具体的に説明すると、各電荷中和手段30の第2ブラケット36の第3平板部36cを、
図2に示すように、筐体6aの下流側端部に形成された環状の突出縁部6aaの上側部分に第1取付部材40aを介して取付け、第2ブラケット36の第4平板部36dを、前記突出縁部6aaの下側部分に第2取付部材40bを介して取付ける。第1取付部材40aは、突出縁部6aaの上側部分に固定されており、第2ブラケット36の第3平板部36cを取付けねじ41aにより取付けねじ用切欠き36fを介して取り付ける。また、第2取付部材40bは、突出縁部6aaの下側部分に固定されており、第2ブラケット36の第4平板部36dを取付けねじ41bにより取付けねじ用切欠き36fを介して取り付ける。
【0034】
ここで、第2ブラケット36は、
図2及び
図4に示すように、放電電極31を下流側に支持した第1ブラケット35を断面直角二等辺三角形状の内側に取り付けた状態で、放電電極31及び第1ブラケット35が第2ブラケット36の下流側となるように、筐体6aの下流側端部に取り付けられる。
これにより、各電荷中和手段30は、ファン6Aの下流側に位置する、ファンユニット6の下流側の吐出ダクトユニット7内に設置される。
【0035】
次に、このように構成されたトンネル工事用電気集塵機1の作用・効果について説明する。
トンネル工事用電気集塵機1をトンネル工事に用いる際には、車両50の荷台51上に載置した状態で、トンネル内の切羽近くまで自走によって移動させる。そして、車両50の後部側(上流側)を切羽側に向け、車両50の前部側(下流側)をトンネル入口側に向けた姿勢で停車させる。この状態でトンネル工事用電気集塵機1を稼働させる。集塵室2、ファンユニット6及び電荷中和手段30等の所定の運転操作は、制御盤10によって行う。
【0036】
トンネル工事用電気集塵機1を稼働すると、ファンユニット6のファン6Aの駆動によって空気吸込口3から集塵室2内に、コンクリート吹き付け粉塵や発破による粉塵が吸い込まれる。このとき、ゴミなどの大きな異物は、空気吸込口3を覆う保護網20によって捕集される。そして、保護網20を通過して、集塵室2内に吸い込まれた粉塵は、各集塵ユニット2A〜2Hに導かれる。各集塵ユニット2A〜2Hでは、帯電部4にて発生するコロナ放電によって粉塵に電荷を与えて帯電させる。帯電した粉塵は、空気の流れにより各集塵部5に移動し、各集塵部5で形成されるクーロン力によって集塵極板に捕集される。
【0037】
このようにして粉塵が捕集された後の空気は、接続ダクト21、ファンユニット6、及び吐出ダクトユニット7を順に通過して、吐出ダクトユニット7の空気吐出口8から吐出される。なお、集塵運転が終わったときには、集塵室2に設けられた洗浄装置13から水を噴出して、集塵ユニット2A〜2Hに付着した粉塵を洗い流す。
一方、帯電部4で帯電された粉塵の全てが集塵部5で捕集されずに、未捕集の帯電した粉塵が集塵部5の下流側に放出されたり、あるいは一度、集塵部5で捕集された粉塵が何らかの原因で集塵部5から離れて再飛散したりした、帯電した粉塵は、接続ダクト21を通過して、ファンユニット6に導かれる。そして、この帯電した粉塵は、ファン6Aの下流側に設置された複数の電荷中和手段30に導かれる。ここで、各電荷中和手段30が、集塵室2から吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出し、帯電粉塵を中和する。
【0038】
これにより、中和された粉塵が空気とともに吐出ダクトユニット7を通過して、吐出ダクトユニット7の空気吐出口8から吐出される。
このように、ファン6Aの下流側に、集塵室2から流入する帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する電荷中和手段30を設置したので、未捕集の帯電した粉塵が集塵部5の下流側に放出されたり、あるいは一度集塵部5で捕集された粉塵が何らかの原因で集塵部5から離れて再飛散した場合であっても、これら帯電した粉塵は、電荷中和手段30によって中和され、帯電した粉塵が装置部分に付着するおそれを回避することができる。
【0039】
ここで、電荷中和手段30は、ファン6Aの下流側に設置されているから、ファン6Aで帯電粉塵が撹拌されているので、空間電位は電荷中和手段30の断面のどの部位で測定しても変化がなく一様な電位が形成されているエリアでの中和が可能になるので、確実な中和が可能となる。また、断面風速の最も速い部位での中和なので装置をコンパクトにすることが可能となる。
また、電荷中和手段30は、ファン6Aの下流側に位置する、ファンユニット6の筐体6aの下流側出口に設置されているので、電荷中和手段30をファン6Aの下流側に設置する際に、電荷中和手段30を簡単に設置することができる。 また、電荷中和手段30は、集塵室2から流入する帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する中和用放電電極31と、中和用放電電極31を下流側に支持した状態で中和用放電電極31を筐体6aの下流側端部に取り付けるブラケット34とを備えている。このため、集塵室2から流入する帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する中和用放電電極31を、筐体6aの下流側端部にブラケット34により簡単かつ適切に取り付けることができる。
【0040】
また、集塵ユニット2A〜2Hの近傍に設置した洗浄装置13によって水で洗浄するが、電荷中和手段30が集塵ユニット2A〜2Hの近傍に設置されていると、洗浄の際に洗浄水(水滴)が電荷中和手段30に流入し、中和用放電電極31に付着してしまうことがある。この場合、帯電粉塵の除電不良となり、除電効率が安定しなかったり、電荷中和手段30が破損してしまうといった不都合がある。また、集塵部5で除去できなかった帯電粉塵が中和用放電電極31に付着してしまうこともある。この場合も、帯電粉塵の除電不良となり、安定した中和ができなかったり、電荷中和手段30が破損してしまうことがある。これに対し、電荷中和手段30をファン6Aの下流側に設置した上で、ブラケット34により、中和用放電電極31を下流側に支持した状態で中和用放電電極31を筐体6aの下流側端部に取り付けたので、洗浄水(水滴)及び集塵室2から流入する帯電粉塵が中和用放電電極31に付着するのをブラケット34により阻止できる。これにより、長期間にわたって安定した中和を行うことができるとともに電荷中和手段30の破損を防止することができる。
【0041】
更に、中和用放電電極31は、集塵室2から流入する帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する複数の棒状放電部32aを有する放電電極体32を有するので、各棒状放電部32a近傍の空気のイオン化を確実に行うことができる。
また、ブラケット34は、中和用放電電極31を下流側に支持する第1ブラケット35と、第1ブラケット35が取り付けられるとともに筐体6aの下流側端部に取り付けられる第2ブラケット36とを備えている。そして、第2ブラケット36は、断面直角二等辺三角形状に形成されるとともに、放電電極31を下流側に支持した第1ブラケット35を断面直角二等辺三角形状の内側に取り付けた状態で、中和用放電電極31及び第1ブラケット35が第2ブラケット36の下流側となるように、筐体6aの下流側端部に取り付けられる。
【0042】
このため、帯電粉塵を含む空気が、
図4中の矢印で示すように、電荷中和手段30において上流側から下流側に流れる際に、断面直角二等辺三角形状を構成する第1平板部36a及び第2平板部36bの頂角側から第2ブラケット36の外側面に衝突する。そして、かかる空気は、第2ブラケット36の当該外側面を左右方向に広がりつつ流れ、第1平板部36a及び第2平板部36bの端部を超えたあたりで内側に巻き込まれる。つまり、ファン6Aの出口側(下流側)は乱流域であり、第2ブラケット36の内外の圧力差及びカルマン渦により第2ブラケット36の内側への空気の流れが生じる。これにより、第2ブラケット36の内側にある放電電極31から放出されるイオンによって帯電粉塵を効率的に中和することができる。また、第2ブラケット36により、中和用放電電極31を下流側に支持した第1ブラケット35を断面直角二等辺三角形状の内側に取り付けた状態で、中和用放電電極31及び第1ブラケット35が第2ブラケット36の下流側となるように、筐体6aの下流側端部に取り付けたので、洗浄水(水滴)及び集塵部5で除去できなかった帯電粉塵が放電電極31に付着するのを第2ブラケット36及び第1ブラケット35により確実に阻止でき、長期間にわたってより安定した中和を行うことができるとともに電荷中和手段30の破壊を防止することができる。
【0043】
また、中和用放電電極31は、放電電極支持部材37を介して第1ブラケット35に取り付けられるので、中和用放電電極31を簡単かつ確実に第1ブラケット35に取り付けることができる。
また、各電荷中和手段30は、両極性の高圧電源を用いて集塵ユニット2A〜2Hから吹出される帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出する。このため、集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵と、集塵部5で捕集された後、集塵部5から離れた再飛散した帯電粉塵(集塵部5で捕集されなかった帯電粉塵と逆極性に帯電した帯電粉塵)との双方の帯電粉塵の電荷と逆極性のイオンを放出し、当該双方の帯電粉塵の中和を行うことができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、これに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、電荷中和手段30は、ファン6Aの下流側に設置されればよく、ファン6Aの下流側に位置する筐体6aの下流側端部に設置される必要は必ずしもない。電荷中和手段30の設置位置としては、筐体6aの下流側端部よりも上流側のファン6Aの下流側直近に設置されることが好ましい。これにより、集塵部5から漏れ出た帯電粉塵を筐体6aの下流側端部よりも上流側で中和することができ、帯電粉塵の装置部分への付着をより効率的に防止することができる。
【0045】
また、電荷中和手段30を構成する放電電極31の、筐体6aの下流側端部への取り付け方は、必ずしも図示したブラケット34を用いる必要はない。
また、第2ブラケット36は、断面三角形状であればよく、必ずしも断面直角二等辺三角形状とする必要はない。