(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高分子系湿度センサの相対湿度に対する変化特性情報は、前記駆動回路から出力される出力周波数から算出される前記高分子系湿度センサの静電容量であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の湿度測定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感湿膜などのセンサ素子は、ゴミや水滴などの付着物を防止するために保護部材で覆われている。しかしながら、感湿膜に対する空気中の水分の出入りを確保しなければならず、屋外での気象変化に伴い、どうしてもゴミや水滴などの付着物がセンサ素子に付着してしまうが、付着物によってセンサ異常が生じても検出する手立てがなかった。
【0005】
そこで、本発明者等は、付着物によってセンサ素子の感度特性(感湿膜の静電容量の変化特性)が変わり、測定精度が低下することを見出すと共に、試行錯誤の結果、高分子系湿度センサの駆動(発振)周波数の違いによって、付着物に対するセンサ素子の感度特性の変化に違いが生じることを発見した。このような知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、高分子系湿度センサに対する付着物によるセンサ異常を検出することができる湿度測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の高分子系湿度センサの湿度測定システムは、前記高分子系湿度センサに第1駆動周波数で交流電圧を印加する第1駆動回路と、前記高分子系湿度センサに前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数で交流電圧を印加する第2駆動回路と、前記第1駆動回路と前記第2駆動回路とを切り替えるスイッチと、前記第1駆動回路及び前記第2駆動回路から出力される各出力周波数に基づいて、前記高分子系湿度センサの相対湿度に対する変化特性情報をそれぞれ算出する制御ユニットと、を有する。
【0008】
前記制御ユニットは、前記高分子系湿度センサに印加される交流電圧の駆動周波数が低いほど、付着物による前記高分子系湿度センサの変化特性が大きくなる所定の関係に基づいて、前記第1駆動回路の出力周波数に基づく第1変化特性情報と、前記第2駆動回路の出力周波数に基づく第2変化特性情報とを比較し、前記高分子系湿度センサのセンサ異常を検出することを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)において、前記第1駆動回路は、前記第2駆動回路よりも駆動周波数が高く設定された前記高分子系湿度センサの測定駆動回路として、前記第2駆動回路は、前記センサ異常を判別するための異常検出用駆動回路として、構成することができる。
【0010】
(3)上記(1)において、前記第2駆動回路は、前記高分子系湿度センサの測定駆動回路として、前記第1駆動回路は、前記第2駆動回路よりも駆動周波数が高く設定された前記センサ異常を判別するための異常検出用駆動回路として、構成することができる。この場合、前記制御ユニットは、前記高分子系湿度センサが異常であると判別された場合に、測定駆動回路を前記第1駆動回路に切り替えて、相対湿度を継続して測定するように制御することができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)において、前記制御ユニットは、前記第1変化特性情報と前記第2変化特性情報との差分と、所定の閾値とを比較して前記高分子系湿度センサの異常を判定するとともに、前記差分が前記所定の閾値よりも大きい場合に、前記高分子湿度センサによる湿度測定を許容しないように制御しつつ、前記差分が前記所定の閾値よりも小さい場合は、前記高分子湿度センサによる継続的な湿度測定を許容するように制御することができる
【0012】
(5)上記(1)から(4)において、前記高分子系湿度センサの相対湿度に対する変化特性情報は、前記駆動回路から出力される出力周波数から算出される前記高分子系湿度センサの静電容量とすることができる。
【0013】
(6)本発明の湿度センサ異常検出方法は、第1駆動周波数で交流電圧を印加した際の高分子系湿度センサの相対湿度に対する第1変化特性情報を算出するステップと、前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数で交流電圧を印加した際の高分子系湿度センサの相対湿度に対する第2変化特性情報を算出するステップと、前記高分子系湿度センサに印加される交流電圧の駆動周波数が低いほど、付着物による前記高分子系湿度センサの変化特性が大きくなる所定の関係に基づいて、前記第1変化特性情報と前記第2変化特性情報とを比較して、前記高分子系湿度センサのセンサ異常を判別するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高分子系湿度センサの付着物によるセンサ異常を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1から
図6は、第1実施形態を示す図である。
図1は、本実施形態の湿度測定システムの構成図である。湿度測定システムは、観測場所に設置される気象観測装置やラジオゾンデなどの高層気象を観測する装置に搭載されたりする。湿度測定システムは、湿度センサHS、湿度センサHSの駆動回路100及び制御ユニット200を含んで構成されている。
【0018】
本実施形態の湿度センサHSは、高分子系湿度センサであり、静電容量変化型の湿度センサである。湿度センサHSは、コンデンサと似た構造を有し、2枚の電極板の間に誘電体として高分子の感湿膜を挟んだ構造となっている。湿度の変化によりセンサ素子の静電容量が変化する性質(湿度変化によって感湿膜の誘電率が変化すると静電容量が変化する性質)を利用し、その変化を電気信号として取り出して、湿度(相対湿度%RH)を測定する。
【0019】
駆動回路100は、湿度センサHSに所定の電圧を印加する。このとき、直流電圧によるセンサ素子の分極を抑制するため、交流電圧を所定の周波数(駆動周波数)で印加する。駆動回路100は、不図示のバッテリ(電源)に接続され、直流電圧をインバータICで交流電圧に変換して湿度センサHSに印加する。
【0020】
駆動回路100は、
図1に示すように、複数の駆動回路を含んで構成されている。駆動回路100は、2つのスイッチSW1,SW2を備えており、湿度センサHSに対する抵抗R1又は抵抗R2の各接続経路を、スイッチSW2で切り換えることができる。ここで、抵抗R1及び抵抗R2は、異なる抵抗値に設定されているため、発振周波数を任意に変更可能な駆動回路が構成される。
図1の例において、2点鎖線で示した経路が、第1駆動回路120と第2駆動回路130とを示しており、湿度センサHS及び抵抗R1が接続されることで第1駆動回路120として駆動し、湿度センサHS及び抵抗R2が接続されることで第2駆動回路130として駆動する。
【0021】
このように本実施形態の第1駆動回路120及び第2駆動回路130は、1つの駆動回路で構成され、スイッチSW2によって異なる抵抗値である抵抗R1,R2のいずれか一方と接続することで、第1駆動回路120と第2駆動回路130とを切り替えることができる。
【0022】
第1駆動回路120及び第2駆動回路130は、例えば、CMOS等のデジタルICの駆動回路である。インバータIC1,IC2は、例えば、シュミットインバータである。インバータIC1,IC2は、スレッショルド電圧(VT+,VT−)を持ち、インバータIC1の入力がLowレベルからHiレベルに変化するとき、出力電圧が反転する。コンデンサC(湿度センサHSの電気容量)は、抵抗R1又は抵抗R2を通じて充電され、電圧(コンデンサ電圧)が徐々に上昇する。電圧がVT+に達すると、インバータIC1,IC2の出力電圧が反転し、Loレベルになるので、充電から放電状態に変わる。そして、電圧は、放電により徐々に低下し、電圧がVT−に達すると、再び、インバータIC1,IC2の出力電圧が反転し、Hiレベルになり、充電状態になる。本実施形態では、インバータIC1,IC2、及び抵抗R1,R2により、所定周波数の交流電圧を発生させる発振回路が構成されている。なお、抵抗R3は、保護抵抗である。
【0023】
また、スイッチSW1は、湿度センサHSに接続される接続経路と、基準コンデンサC1に接続される接続経路と、を切り換える。本実施形態の駆動回路100は、第1駆動回路120及び第2駆動回路130と共に、基準駆動回路110が設けられている。基準駆動回路110は、湿度センサHSではなく、基準コンデンサC1及び抵抗R1(又は抵抗R2)が接続された接続経路であり、
図1の例において点線で示した経路である。なお、基準駆動回路110では、上述したコンデンサCが基準コンデンサC1である発振回路が形成されることになる。
【0024】
基準駆動回路110は、基準コンデンサC1が接続され、2つの駆動回路120,130は、各々湿度センサHSに接続される。基準コンデンサC1及び湿度センサHSに印加する交流電圧の出力周波数(F1,F2,F3)が、制御ユニット200に出力される。
【0025】
制御ユニット200は、駆動回路100のスイッチSW1,SW2の切り換え制御を行う。スイッチSW2を切り換えることで、湿度センサHSに印加される駆動周波数を切り替えることができ、スイッチSW1を切り換えることで、基準駆動回路110と、第1駆動回路120及び第2駆動回路130と、の間を切り換えることができる。3つの駆動回路110,120,130それぞれから出力される出力周波数(F1,F2,F3)は、制御ユニット200に入力される。
【0026】
本実施形態では、3つの駆動回路110,120,130は、異なる駆動周波数に設定されており、第1駆動回路120の駆動周波数は、第2駆動回路130の駆動周波数よりも高く設定されている。例えば、基準駆動回路110が3.7kHz、第1駆動回路120が10kHz、第2駆動回路130が6kHzとすることができる。第1駆動回路120と第2駆動回路130との間の駆動周波数の大小関係以外は、適宜任意の駆動周波数に設定することができる。
【0027】
また、本実施形態の3つの各駆動回路のインバータIC1,IC2は、全て同じインバータであり、温度依存性等のインバータ回路固有の特性も同じものを使用している。
【0028】
次に、制御ユニット200について説明する。
図1に示すように、制御ユニット200は、制御部210、メモリ220、周波数比演算部230、周波数比−湿度変換部240及び判定部250を含んで構成されている。制御部210は、本実施形態の湿度測定システム全体の制御を行い、駆動回路100の駆動動作(スイッチSW1,SW2の切り換え制御を含む)の制御を行う。メモリ220は、記憶領域であり、各種情報を記憶する。
【0029】
湿度センサHSの測定原理は、上述したように、湿度の変化によるセンサ素子の静電容量の変化を捉えればよい。このため、相対湿度[%RH]と湿度センサHSの静電容量との変化特性を予め実験等で求めておき、例えば、マップとしてメモリ220に記憶しておく。そして、同じ駆動周波数の条件において湿度センサHSの静電容量Cpを求めれば、マップと照合して、相対湿度[%RH]を算出することができる。
【0030】
例えば、第1駆動回路120の出力周波数をF2は、以下の式1で表され、出力周波数F2を用いて、湿度センサHSの電気容量Cpを算出することができる。
【数1】
【0031】
上記式1において、R
Rは、R1とR3の合成抵抗である。aは、インバータIC2の回路固有の特性定数である。特性定数aは、例えばインバータ電圧、インバータの入力High電圧閾値、インバータの入力Low電圧閾値に基づく回路固有の定数などに基づいて算出することができる。
【0032】
上記式1により、1つの駆動回路で湿度を検出することができるが、特性定数aは回路固有の定数であり、温度依存性があり変動する。そこで、2つの駆動回路を用いた周波数比較方式により、特性定数aに起因する温度依存性を改善することができる。
【0033】
例えば、スイッチSW2により抵抗R1側の接続経路の状態で、スイッチSW1の切り換え制御を行い、基本駆動回路110と第1駆動回路120とを交互に接続して駆動周波数の時分割制御を行い、湿度センサHSに印加された交流電圧の出力周波数F2と基準コンデンサC1に印加された出力周波数F1とを交互に取得する。時分割制御により得られる各出力周波数は、周波数比演算部230に出力される。
【0034】
基準駆動回路110から出力される出力周波数F1は、上記式(1)と同様に算出することができる。上記式(1)において、湿度センサHSの電気容量Cpを基準コンデンサC1の電気容量に置き換えて算出される周波数が、出力周波数F1となる。このとき、特性定数aは同値である。
【0035】
そして、周波数比演算部230は、各駆動回路110,120の出力周波数の比(周波数比η)を算出する。このように構成することで、算出された周波数比ηは、インバータIC1,IC2の特性定数aの変動による検出誤差が排除される。メモリ220には、予め実験等で求められた、相対湿度[%RH]と2つの出力周波数の比である周波数比ηとの変化特性がマップとして記憶されており(例えば、
図2)、周波数比−湿度変換部240は、周波数比演算部230で算出された周波数比ηを用いてメモリ220に記憶された変化特性マップと照合して相対湿度[%RH]を算出する。周波数比−湿度変換部240は、算出した相対湿度[%RH]を湿度値として、メモリ220に時間情報と共に記憶したり、所定の表示装置に出力したりすることができる。
【0036】
なお、湿度測定における周波数比較方式は、上記手法に限らず、既知の手法を適宜適用することができる。また、湿度測定は、周波数比較方式に限らずに、湿度センサHSの電気容量Cpを用いた湿度測定に、温度補正を適用した既知の手法を適用することもできる。
【0037】
次に、本実施形態の湿度センサHSのセンサ異常チェック方法(異常検出方法)について説明する。
図3は、湿度センサHSの静電容量値と相対湿度(%RH)との関係を示す図であり、センサ素子に付着物があるときの特性の変化を示す図である。
図4は、
図3に対しセンサ素子に付着物がないときの特性を示す図である。
【0038】
図3及び
図4では、2kHz、5kHz、10kHz、20kHz、50kHz、100kHzの各駆動周波数における実験結果を示している。当該実験に用いた湿度センサHSのセンサ素子の主な基本仕様は、使用湿度範囲:0〜100%RH、使用温度範囲:−20〜+80℃、使用周波数範囲:2〜200kHz、電圧:1.0V以下、直線性:±2%RH、ヒステリシス特性:3%RH以下、温度依存性:−0.35%RH/deg以内、静電容量値:188.0pF±10%、容量変化値:1.086±0.03、応答速度:20秒以内である。
【0039】
湿度センサHSのセンサ素子(感湿膜及び電極)は、フィルムやフィルタなどの保護部材によって覆われており、付着物の付着を防止している。しかしながら、何らかの理由でセンサ素子にゴミやイオン性物質(例えば、塩分、糖分、洗剤等)などの付着物が付着すると、高分子系感湿膜が汚染され、湿度センサの特性が変化することが、
図3及び
図4の実験結果及び検討の結果、わかった。
【0040】
図3及び
図4を比較すると、
図3において、付着物が付着しても、相対湿度70%未満まではその特性にあまり変化が見られないが、相対湿度70%以上の領域では、静電容量値に対する相対湿度が高湿度側に偏向していた。特に、湿度センサHSの駆動周波数が低いほど、より高湿度側に偏向し、駆動周波数が高い程、高湿度側への偏向度合いが小さかった。
【0041】
したがって、異なる2つの駆動周波数を用いて各々取得された湿度センサHSの静電容量値を比較し、静電容量値に所定値以上の差分が生じていれば、付着物による湿度測定精度の低下を把握することができることになる。例えば、10kHz未満の駆動周波数(例えば、6kHz)で算出される静電容量Cp1と、10kHz以上の駆動周波数(例えば、10kHz)で算出される静電容量Cp2との差分を算出し、差分が
図3の偏向に基づいて予め設定された閾値よりも大きければ、付着物によるセンサ異常が生じているものと判別することができる。
【0042】
そこで、本実施形態では、湿度測定を行うための第1駆動回路120(測定駆動回路)に加えて、第2駆動回路130(異常検出用駆動回路)が、付着物によるセンサ異常チェックのために設けられている。上述のように、常時行う湿度測定の駆動回路として第1駆動回路120が高駆動周波数(≧10kHz)に設定され、第2駆動回路130が低駆動周波数(<10kHz)に設定されている。高駆動周波数の第1駆動回路120を測定用駆動回路に用いることで、付着物による湿度測定精度の低下を抑制することができると共に、異常検出用駆動回路である第2駆動回路130によって駆動周波数をあえて下げて、センサ異常チェックを行えるように構成されている。
【0043】
なお、本実施形態のセンサ異常チェック処理は、
図1に示す判定部250が行い、判定部250には、周波数比−湿度変換部240を介して、各駆動回路120,130からの湿度値(RH1,RH2)がそれぞれ入力される。判定部250は、湿度値RH1,RH2を比較し、閾値α(α1,α2)を用いてセンサ異常チェック処理を行う。
図3及び
図4に示すように、異なる2つの駆動周波数を用いて各々取得された湿度センサHSの静電容量値を比較して、本実施形態のセンサ異常チェック処理を行うこともできる。
【0044】
なお、上述したように、駆動周波数が高い程、付着物による湿度測定精度が低下し難いので、閾値αに対してある程度の幅を持たせることができる。具体的には、差分が閾値α1よりも大きければ、「仮異常」であるとして、センサ異常をアラートすると共に、湿度センサHSの交換を促すように制御する。但し、高い駆動周波数での相対湿度の測定を許容する。差分が閾値α2(>α1)よりも大きければ、「異常」であるとして、センサ異常をアラートすると共に、相対湿度の測定を許容しない。すなわち、湿度値RH1,RH2の差分が閾値α2よりも大きければ、湿度測定を許容しないように制御しつつ、湿度値RH1,RH2の差分が閾値α2よりも小さければ、継続的な湿度測定を許容するように制御する。
【0045】
図5は、湿度センサHSのセンサ異常チェック処理を示すフローチャートである。
【0046】
図5に示すように、制御部210は、周波数比−湿度変換部240によって算出された直近の湿度値が90%RH以上であるか否かを判別する(S101)。判別の結果、湿度値が90%RH以上である場合に(S101のYES)、チェックモードに移行し、センサ異常チェック処理を開始する(S102)。なお、
図5の例では、チェックモード移行の閾値として90%RHを設定しているが、
図3及び
図4の例に示すように、70%RHよりも大きな値を閾値として設定してもよい。つまり、本実施形態では、一例として、閾値として90%RHを設定し、湿度値が大きくなるほど大きな乖離が生じる特性に基づき、センサ異常検出を精度良く行うように構成している。
【0047】
制御部210は、スイッチSW2を抵抗R1側に接続し、スイッチSW1を交互に切り換えながら基準駆動回路110と第1駆動回路120を駆動させ、出力周波数F1とF2を周波数比演算部230に入力させる。そして、周波数比−湿度変換部240で出力周波数F1を基に出力周波数F2を湿度値RH1に変換する。その後、スイッチSW2を抵抗R2側に接続し、スイッチSW1を交互に切り換えながら基準駆動回路110と第2駆動回路130を駆動させ、出力周波数F1とF3を周波数演算部230に入力させる。そして、周波数比−湿度変換部240で出力周波数F1を基に出力周波数F3を湿度値RH2に変換する。変換された湿度値RH1,RH2は判定部250に入力される(S103,S104)。
【0048】
判定部250は、算出された湿度値RH1、RH2の差分(RH1−RH2)を算出し、差分が閾値α1よりも小さいか否かを判別する(S105)。差分が閾値α1よりも小さいと判別されたとき、ステップS106に進み、「正常判定」をチェック結果として出力する。
【0049】
一方、差分が閾値α1よりも大きいと判別されたとき、ステップS107に進み、差分が閾値α2よりも小さいか否かを判別する。差分が閾値α2よりも小さいと判別されたとき、すなわち、α1<差分<α2と判別された場合、ステップS108に進み、「仮異常判定」をチェック結果として出力すると共に、アラート処理(S109)を行う。ステップS109のアラート処理としては、例えば、所定の表示部に、継続使用は問題ないが、湿度センサHSに異常が検出された旨を表示したり、ランプを点灯させたりして、湿度センサHSの仮異常を知らせる。
【0050】
さらに、ステップS107において、差分が閾値α2よりも大きいと判別されたとき、ステップS110に進み、「異常判定」をチェック結果として出力すると共に、アラート処理(S111)を行う。ステップS111のアラート処理は、ステップS109とは異なり、例えば、センサ異常によって相対湿度の測定ができない旨の表示処理やランプの点灯処理などをする。そして、「異常判定」の結果は、制御部210に入力される。制御部210は、「異常判定」の結果に基づいて、例えば、相対湿度の測定を禁止したり、測定自体を禁止せずに、測定された相対湿度に対して湿度センサHSが異常状態であることを示す情報を付加して、センサ出力値に異常がある旨を知らせるように制御することができる。
【0051】
図6は、本実施形態の変形例におけるセンサ異常チェック処理を示すフローチャートである。
図6の例は、低駆動周波数の第2駆動回路130を測定駆動回路として設定し、高駆動周波数の第1駆動回路120を異常検出用駆動回路として使用する。この場合、第1駆動回路120によって駆動周波数を上げて、センサ異常チェックを行い、かつ「仮異常」が検出された時点で、測定駆動回路を高駆動周波数の第1駆動回路120に切り替えて(S112)、付着物による湿度測定精度の低下を抑制しながらの継続的な湿度測定を行えるようにしている。なお、
図6において、ステップS103Aは、
図5のステップS104に対応し、ステップS104Aは、
図5のステップS103にそれぞれ対応している。その他の処理については同様であるので、同符号を付して説明を省略する。
【0052】
このように本実施形態の湿度測定システムは、駆動周波数が異なる2つの駆動回路が設けられ、高分子系の湿度センサHSに印加される交流電圧の駆動周波数が低いほど、付着物による湿度センサHSの変化特性が大きくなる関係に基づいて、第1駆動回路120の出力周波数から算出される湿度値RH1(第1変化特性情報)と、第2駆動回路130の出力周波数から算出される湿度値RH2とを比較して、湿度センサHSのセンサ異常を判別する。このように構成することで、付着物による湿度センサHSのセンサ異常を判別することができる。
【0053】
また、測定駆動回路が、異常検出用駆動回路よりも駆動周波数が高く設定されているので、付着物によるセンサ異常に対する測定精度の低下を抑制しながら、湿度センサHSのセンサ異常を検出することができる。
【0054】
また、測定駆動回路が、異常検出用駆動回路よりも駆動周波数が低く設定されている場合は、センサ異常(仮異常)の際に測定駆動回路を高駆動周波数の駆動回路に切り替えることで、相対湿度を継続して測定するようにすることができる。
【0055】
また、同様に、例えば、周波数比演算部230で演算された周波数比を用いてセンサ異常チェック処理を行うこともできる。
【0056】
例えば、基準駆動回路110と第1駆動回路120との間の周波数比η1と、基準駆動回路110と第2駆動回路130との間の周波数比η2と、をそれぞれ求め、相対湿度90%RH以上領域で、周波数比η1と周波数比η2との間の所定値以上の差分が生じていれば、
図5及び
図6に示したセンサ異常チェック処理を行うことができる。
【0057】
この場合、湿度測定のための周波数比演算部230による演算処理をそのまま利用して例えば、制御部210が
図5及び
図6に示した「正常」、「仮異常」、「異常」の各判定処理やアラート処理を行うことができる。したがって、判定部250を別途設ける必要がなく、回路構成を簡略化することができる。