(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記候補基準点を抽出するステップは、前記生体信号の波形の所定の時間区間内で決定された最も大きい信号値又は最も小さい信号値に基づいて前記候補基準点を決定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理方法。
前記尖度を決定するステップは、前記生体信号の波形の中の前記第1基準点から第1基準点に隣接する第1候補基準点の間の距離に基づいて前記第1基準点に対応する尖度を決定し、
前記生体信号の波形の中の前記第2基準点から第2基準点に隣接する第2候補基準点の間の距離に基づいて前記第2基準点に対応する尖度を決定することを特徴とする請求項1に記載の生体信号処理方法。
前記第1基準点に対応する尖度を決定するステップは、前記生体信号の波形から前記第1基準点と第1基準点に隣接する第1候補基準点とを連結する第1ラインと、前記第1基準点と第1基準点に隣接する他の第1候補基準点とを連結する第2ラインとが形成する角度に基づいて前記第1基準点に対応する尖度が決定されることを特徴とする請求項3に記載の生体信号処理方法。
前記パルス方向を決定するステップは、現在の基準点が第1基準点であるか、あるいは第2基準点であるか否か、及び前記現在の基準点に対応する尖度に基づいて現在のパルス方向の強度を決定するステップと、
次の基準点が第1基準点であるか、あるいは第2基準点であるか否か、及び前記次の基準点に対応する尖度と前記現在のパルス方向の強度とに基づいて次のパルス方向の強度を決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の生体信号処理方法。
前記生体信号の特徴点を決定するステップは、前記生体信号のパルス方向が前記第1パルス方向であると決定された場合、前記第1パルス方向に対応する第1特徴点の決定方式により前記生体信号の特徴点を決定し、
前記生体信号のパルス方向が前記第2パルス方向であると決定された場合、前記第2パルス方向に対応する第2特徴点の決定方式により前記生体信号の特徴点を決定することを特徴とする請求項7に記載の生体信号処理方法。
前記生体信号の特徴点を決定するステップは、前記パルス方向に応じて第1基準点又は第2基準点のうちいずれか1つに基づいて前記生体信号の特徴点を決定することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の生体信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る生体信号処理方法及びその装置並びにコンピュータ読出可能記録媒体を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0014】
各図面で提示した同一の参照符号は同一の部材を示す。
本実施形態で用いる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いるものであって、実施形態を限定しようとする意図はない。
単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。
本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0015】
異なる定義がなされない限り、技術的であるか又は科学的な用語を含むここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであって、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
図面を参照して説明する際に、図面符号に関係なく同一の構成要素には同一の参照符号を付与し、それに対する重複説明を省略する。本実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が実施形態の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0016】
以下の実施形態は、生体信号から特徴点のような信号特徴を抽出し、抽出された信号特徴を用いて生体情報を決定するために適用される。
本明細書では、説明の便宜のために光電式容積脈波(Photoplethysmogram:以下、PPGと記す)から信号特徴を抽出する実施形態を中心に説明するが、実施形態の範囲がこれに限定されることはない。
例えば、実施形態は、心電図(Electrocardiography:ECG)、酸素飽和度、心弾(動)図(Ballistocardiogram:BCG)、脳電図(Electroencephalogram:EEG)、筋電図(Electromyogram:EMG)などの生体信号だけではなく、他のタイプの生体信号から信号特徴を抽出する過程にも適用され得る。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る生体信号を測定するウェアラブル装置を示す図である。
バンドタイプ又は腕時計タイプのウェアラブル装置100は、ユーザの手首に着用されてユーザの体から生体信号を測定して分析することができる。
ウェアラブル装置100は、非侵襲的方式(noninvasive manner)で生体信号を継続的にモニタリングする。
生体信号は、ユーザ身体に対する生体的情報を含む信号として、PPG、ECG、又はEMGなどの形態に測定される。
測定された生体信号に基づいてユーザの健康に関する様々な生体情報を推定することができる。
【0018】
一実施形態によれば、ウェアラブル装置100は、センサを用いて手首からPPG信号を測定し、測定されたPPG信号から進行波又は反射波の形態に関する様々な信号特徴を抽出した後、抽出された信号特徴に基づいて血圧、血管硬化度などの心血管系情報を推定する。
センサは、ウェアラブル装置100のストラップに位置して手首の橈骨動脈(radial artery)内の血流量の変化をPPG信号として測定する。
PPG信号は、心拍による血流量の変化情報を含む。
ウェアラブル装置100は、PPG信号の変化を分析してユーザの心拍数を算出し、算出された心拍数に基づいて心血管系情報を推定する。
又は、ウェアラブル装置100は、PPG信号に基づいて決定された心拍数、血圧などに基づいてユーザに運動コーチング情報を提供することもできる。
【0019】
PPG信号のような生体信号の測定は、ユーザの呼吸及びユーザの意図的な動きから影響を受けるため、生体信号から有用な情報を取得するためには生体信号から特徴点を正確に抽出することが要求される。
また、モバイル環境では少ないリソースを使用し、生体信号の特徴点を早く抽出することが要求される。
下記で説明する実施形態は、上記の要求事項を全て満たし得るソリューションを提供する。
【0020】
図2A及び
図2Bは、本発明の一実施形態に係るセンサを用いて測定されたPPG信号の一例を示すグラフである。
PPG信号の測定は、モーションアーチファクトのようなノイズに敏感である。
センサを用いて測定されたPPG信号には、目的とする生体情報に関する信号成分だけではなく、呼吸活動及び身体の動きによるノイズ成分が含まれることがある。
図1に示すように、手首にウェアラブル装置100を着用したユーザが手首を動かす場合(例えば、手首を回転する場合)にPPG信号の逆転現象が生じ得る。
橈骨動脈上の皮膚表面とPPG信号を検出するためのセンサとの間の圧力が変化した時、又はセンサの検出位置が皮膚表面上で変更した時にPPG信号の逆転現象が発生する可能性がある。
【0021】
図2Aは、ユーザが手首を中立位置にした時(親指が子指よりも上側にある状態)に測定されたPPG信号波形を示す。
PPG信号のパルス方向が上側に向かっている。
図2Bは、ユーザが手首を中立状態で回転させた時に測定されたPPG信号の波形を示す。
図2Bに示されたPPG信号の波形は、
図2Aとは相違して、PPG信号のパルス方向が下側に向かっている。
このように、PPG信号の波形は手首の姿勢などにより逆転し、PPG信号から信号特徴を正確に抽出するためにはPPG信号のパルスがどちらの方に向かっているかを決定することが重要である。
以下で説明する実施形態によれば、生体信号から信号特徴の検出においてパルス方向を考慮することによって信号特徴をより正確に抽出するようにする。
【0022】
図3及び
図4は、本発明の一実施形態に係る生体信号処理方法の動作を説明するためのフローチャートである。
本発明の一実施形態に係る生体信号処理方法は、
図14に示す生体信号処理装置1400によって実行される。
図3及び
図4に示した動作は、図に示すように順次に実行されたり又は説明された実施形態の範囲及び技術的な思想から離脱することなく、一部の動作が実行されないか、動作の順序が変更され得る。
図3及び
図4に示した動作は、並列的又は同時に実行されてもよい。
また、上記で説明した
図1及び
図2に対する内容は、下記の
図3及び
図4に対する説明にも適用される。
【0023】
ステップS310において、生体信号処理装置は、選択的に生体信号に対して前処理を行う。
生体信号処理装置は、生体信号から直流成分(DC component)を除去し、直流成分が除去された生体信号をフィルタリングして生体信号から高周波ノイズを除去する。
【0024】
ステッS320において、生体信号処理装置は、生体信号波形から基準点を抽出する。
基準点は、測定された生体信号波形で生体情報を含むものとして考慮される。
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、生体信号波形から候補基準点を一次的に抽出し、候補基準点のうち一定の基準を満たす基準点を決定する。
【0025】
生体信号処理装置は、生体信号波形からピーク(peak)(又は、極大点)に対応する複数の第1候補基準点とトラフ(trough)(又は、極小点)に対応する複数の第2候補基準点を抽出する。
ピークは信号値が増加してから減少する点であり、トラフは信号値が減少してから増加する点である。
例えば、生体信号処理装置は、生体信号波形の所定の時間区間内で決定された最も大きい信号値に基づいて第1候補基準点を決定し、所定の時間区間内で決定された最も小さい信号値に基づいて第2候補基準点を決定する。
生体信号処理装置は、互いに隣接する第1候補基準点のうち信号値が最も大きい第1候補基準点を第1基準点として決定し、互いに隣接する第2候補基準点のうち信号値が最も小さい第2候補基準点を第2基準点として決定する。
【0026】
ステッS330において、生体信号処理装置は、抽出された基準点(第1基準点及び第2基準点)に基づいて生体信号のパルス方向を決定する。
例えば、生体信号処理装置は、生体信号のパルスが第1パルス方向(例えば、上側)及び第2パルス方向(例えば、下側)のいずれか一方に向かっているかを決定する。
パルス方向を決定するために、生体信号処理装置は、各基準点に対応する尖度(pulse sharpness)を用いることができる。
尖度は、基準点を中心に生体信号のパルスがどれ程急激に変化するか、又はどれ程尖っているかを示す。
生体信号処理装置は、第1基準点及び第2基準点のそれぞれに対応する尖度を決定し、決定された尖度に基づいてパルス方向を決定する。
【0027】
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、第1基準点の尖度の和と第2基準点の尖度の和とを比較し、第1基準点の尖度の和が第2基準点の尖度の和よりも大きい場合には生体信号のパルス方向が第1パルス方向であると決定し、その他の場合には生体信号のパルス方向が第2パルス方向であると決定する。
他の実施形態によれば、生体信号処理装置は、第1基準点の尖度及び第2基準点の尖度に基づいてパルス方向の強度を算出し、パルス方向の強度を用いて生体信号のパルス方向を決定する。
これについては、
図4を参照して以下で詳しく説明する。
【0028】
図4を参照すると、ステップS410において、生体信号処理装置は、第1基準点及び第2基準点のそれぞれに対応する尖度を決定する。
生体信号処理装置は、生体信号波形で第1基準点から該当の第1基準点に隣接する第1候補基準点の間の距離に基づいて該当の第1基準点に対応する尖度を決定する。
ここで、尖度は、第1基準点と該当の第1基準点に隣接する第1候補基準点を連結する第1ラインと、該当の第1基準点と該当の第1基準点に隣接する他の第1候補基準点を連結する第2ラインとによって形成される角度によって決定される。
これと同様に、生体信号処理装置は、生体信号波形で第2基準点から該当の第2基準点に隣接する第2候補基準点の間の距離に基づいて該当の第2基準点に対応する尖度を決定する。
【0029】
他の実施形態によれば、生体信号処理装置は、生体信号波形で第1基準点から第1基準点に隣接する第2候補基準点の間の距離に基づいて尖度を決定してもよい。
ここで、尖度は、第1基準点と該当の第1基準点に隣接する第2候補基準点を連結する第1ラインと、該当の第1基準点と該当の第1基準点に隣接する他の第2候補基準点を連結する第2ラインとによって形成される角度によって決定される。
これと同様に、生体信号処理装置は、生体信号波形で第2基準点から該当の第2基準点に隣接する第1候補基準点の間の距離に基づいて該当の第2基準点に対応する尖度を決定する。
【0030】
次に、ステップS420において、生体信号処理装置は、第1基準点の尖度及び第2基準点の尖度に基づいてパルス方向の強度を決定する。
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、現在の基準点が第1基準点であるか又は第2基準点であるか否か、及び現在の基準点に対応する尖度に基づいて現在のパルス方向の強度を決定する。
その後、生体信号処理装置は、次の基準点が第1基準点であるか又は第2基準点であるか否か、及び次の基準点に対応する尖度及び現在のパルス方向の強度に基づいて次のパルス方向の強度を決定する。
このような工程により生体信号処理装置は、生体信号波形で第1基準点及び第2基準点が示されるごとにパルス方向の強度を継続的にアップデートする。
例えば、パルス方向の強度は、数式(4)に基づいて算出され、これについては後述にて説明する。
【0031】
次に、ステップSS430において、生体信号処理装置は、決定されたパルス方向の強度に基づいて生体信号のパルス方向を決定する。
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、パルス方向の強度が閾値(例えば、0)よりも大きい場合には生体信号波形が第1パルス方向であると決定し、パルス方向の強度が閾値以下である場合には生体信号波形が第1パルス方向と異なる第2パルス方向であると決定する。
【0032】
再度、
図3を参照すると、ステッS340において、生体信号処理装置は、生体信号のパルス方向が決定されれば、パルス方向に対応する特徴点の決定方式により生体信号の特徴点を決定する。
例えば、生体信号処理装置は、生体信号のパルス方向が第1パルス方向であると決定された場合には、第1パルス方向に対応する第1特徴点の決定方式により生体信号の特徴点を決定し、生体信号のパルス方向が第2パルス方向であると決定された場合には、第2パルス方向に対応する第2特徴点の決定方式により生体信号の特徴点を決定する。
例えば、第1特徴点の決定方式と第2特徴点の決定方式は、全体的な特徴点の決定過程に類似するが、適用されるパラメータ値に差が存在したり、又は決定方式が全く異なることがある。
【0033】
一実施形態によれば、生体信号処理装置は生体信号波形に低域通過フィルタを適用し、生体信号のパルス方向に基づいて生体信号波形に対して時間による傾きの和を決定することができる。
傾きの和は、数式(5)に基づいて算出され、これについては後述にて説明することにする。
生体信号処理装置は、傾きの和と閾値とを比較し、比較結果の傾きの和が閾値よりも大きい時点を識別する。
ここで、閾値は、生体信号の変化に応じてその大きさが適応的に変化し得る。
例えば、閾値の大きさは生体信号の大きさに比例して変化する。
そのため、生体信号の変化が大きいとしても該当の変化に適応的に閾値も変化するため、生体信号波形から特徴点をより正確に検出することができる。
生体信号処理装置は、識別された時点の周辺区間で生体信号の信号値が最も大きいか又は最も小さい信号値を探索し、探索された信号値を生体信号の特徴点として決定する。
【0034】
他の実施形態によれば、生体信号のパルス方向が決定された場合、生体信号処理装置は、パルス方向に基づいて以前に決定された基準点の内から特徴点を決定することもできる。
例えば、パルス方向が上側方向にあると決定された場合、生体信号処理装置は、以前に決定された第1基準点のうち尖度が閾値よりも大きい第1基準点を特徴点として決定する。
反対に、パルス方向が下側であると決定された場合、生体信号処理装置は、以前に決定された第2基準点のうち尖度が閾値よりも大きい第2基準点を特徴点として決定する。
上記のような工程により、複雑な算出なしに生体信号の特徴点を迅速に決定でき、低周波のノイズを完全に除去しなくても生体信号の特徴点を正確に決定きる。
また、生体信号の変動及び逆転に強い特徴点を決定できる。
【0035】
以下、
図5〜
図13では、センサを用いて測定されたPPG信号から特徴点を決定する工程の一例を説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る様々な状態で測定されたPPG信号波形の一例を示すグラフである。
PPG信号波形は、ユーザの状態に応じて多様に示され得る。
図5を参照すると、(a)は手首を中立位置にした時に測定されたPPG信号、(b)は手首を中立状態で回転した時に測定されたPPG信号、(c)は息を平常時より深くして手首を回転した位置から再び中立状態に戻す時に測定されたPPG信号、(d)は息を平常時より深くして手首を中立状態で回転させた時に測定されたPPG信号波形を示す。
(c)及び(d)は、PPG信号波形が(a)及び(b)に比べて相対的に激しく示される。
【0036】
図6は、本発明の一実施形態に係るPPG信号の前処理工程を説明するためのグラフである。
生体信号処理装置は、PPG信号が測定されれば、測定されたPPG信号から直流成分を除去する。
例えば、生体信号処理装置は、センサを用いて継続的にサンプリングされるPPG信号値の平均値を元(raw)のPPG信号から除去することでPPG信号から直流成分を除去することができる。
図6において、波形610は、各(a)、(b)、(c)、(d)の区間でセンサを用いて測定された元のPPG信号波形を示し、波形620は元のPPG信号から直流成分を除去した結果波形を示す。
直流成分を除去した後、生体信号処理装置は、低域通過フィルタを直流成分の除去されたPPG信号に適用して高周波ノイズを除去し得る。
例えば、生体信号処理装置は、10Hzのカットオフ周波数を有するハミングウィンドウ(Hamming window)を直流成分の除去されたPPG信号に適用する。
ハミングウィンドウによってPPG信号から10Hz以上の高周波成分が除去される。
【0037】
図7は、本発明の一実施形態に係るPPG信号波形から候補基準点を抽出する工程を説明するためのグラフである。
生体信号処理装置は、測定されたPPG信号波形710から候補基準点として局部的なピーク及びトラフを抽出する。
ここで、ピークは第1候補基準点720に対応し、トラフは第2候補基準点730に対応する。
【0038】
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、以下に示す数式(1)によりPPG信号波形710から第1候補基準点720及び第2候補基準点730を抽出する。
【数1】
ここで、x(t)は時間tでサンプリングされて記録されたPPG信号であり、iは0を含まない整数である。
x(t)が第1候補基準点720又は第2候補基準点730である場合、p(t)はx(t)の値を有し、その他の場合には、p(t)が「0」の値を有する。
【0039】
数式(1)によれば、時間tを中心とする時間区間でサンプリングされた11個のPPG信号値のうち最も大きい信号値の位置が第1候補基準点720として決定され、最も小さい信号値の位置が第2候補基準点730として決定される。
ただし、iの範囲は上記の数式(1)に定義された範囲に限定されることなく可変され得る。
このような工程により抽出された候補基準点のうちの一部は、PPG信号のパルス成分に対応しないことがある。
したがって、抽出された候補基準点で目的とするPPG信号のパルス成分に対応する基準点を追加的に決定する工程が求められ、これについては
図8を参照して説明することにする。
【0040】
図8は、本発明の一実施形態に係る抽出された候補基準点で第1基準点及び第2基準点を決定し、尖度を決定する工程を説明するためのグラフである。
生体信号処理装置は、PPG信号波形810から抽出された各候補基準点と隣接する他の候補基準点とを比較することによって不要な候補基準点を除外し、パルス方向を決定するための基準となる基準点を決定する。
【0041】
例えば、生体信号処理装置は、隣接する第1候補基準点(825、830、835)のうち最も信号値の大きい第1候補基準点830を第1基準点として決定する。
実際のPPG信号のパルス成分に該当する第1候補基準点の信号値は、隣接する他の第1候補基準点の信号値よりも大きい。
また、生体信号処理装置は、隣接する第2候補基準点(840、845、850)のうち最も信号値の小さい第2候補基準点845を第2基準点として決定する。
実際のPPG信号のパルス成分に該当する第2候補基準点の信号値は、隣接する他の第2候補基準点の信号値よりも小さい。
図8には、上記のような工程により決定された第1基準点(830、855、860、865、870)と第2基準点(845、875、880、885、890)が示されている。
【0042】
基準点が決定されれば、各基準点に対する尖度が決定される。
例えば、第1基準点830と第1基準点830に隣接する各第1候補基準点(825、835)を連結するラインが形成され、2つのラインが形成している角度に基づいて第1基準点830の尖度が算出される。
これと同様に、第2基準点845と第2基準点845に隣接する第2候補基準点(840、850)を連結するラインが形成され、2つのラインが形成している角度に基づいて第2基準点845の尖度が算出され得る。
尖度を算出する工程については、以下の
図9を参照してより詳しく説明する。
【0043】
図9は、本発明の一実施形態に係る尖度を決定する工程をより詳しく説明するためのグラフである。
一実施形態によれば、各基準点の尖度はコサイン法則を用いて算出され得る。
例えば、PPG信号波形910で決定された第1基準点920と、第1基準点920に隣接する第1候補基準点930を連結したラインb、第1基準点920と第1基準点920に隣接する他の第1候補基準点940を連結したラインc、及び第1候補基準点930と他の第1候補基準点940を連結したラインaによって形成された三角形を仮定する。
三角形を用いて第1基準点920の尖度が量的に算出され得る。
【0044】
一実施形態によれば、第1基準点920の尖度は、ラインbとラインcにより形成される角度θに基づいて決定され、角度θは以下に示す数式(2)のような第2コサイン法則によって定義される。
【数2】
【0045】
ここで、三角形を形成しているラインa、b及びcの長さは、生体信号波形910で各点(920、930、940)に対応する時間と信号値を用いて算出され得る。
「−100」から「+100」の間の範囲を有するよう、角度θに100を乗算してθ値を整数化し、θ値を整数化することによって消費電力をより低減させる。
整数化されたθ値が「−100」に近いときにθは鈍角を示し、反対に、整数化されたθ値が「+100」に近いときはθが鋭角を示す。
整数化されたθ値に基づいて第1基準点920に対する尖度が決定される。
整数化されたθ値が大きいほど尖度は大きくなり、ここで、尖度が大きいことはパルスがより尖っていることを示す。
反対に、整数化されたθ値が小さいほど尖度が小さくなり、ここで、尖度が小さいことはパルスがより緩やかであることを示す。
【0046】
他の実施形態によれば、ラインbとラインcによって形成される角度θは以下に示す数式(3)によって定義されてもよい。
【数3】
ラインa、b、及びcの長さを求めるためには平方根演算が必要であるが、数式(3)によってラインa、b、及びcの長さに対する平方根演算を行わなくても角度θを概略的に推定することができる。
そのため、算出量がより節減される。そして、求められたθ値に基づいて第1基準点920に対する尖度を決定することができる。
【0047】
上記のような工程により決定された各基準点に対する尖度を
図10に示す。
図10では、便宜上、各基準点の尖度に100を乗算して尖度が「−100」〜「+100」の間の値を有するようにした。
基準点の尖度が「+100」に近いほど基準点を含んでいるパルスの成分はより尖る。
図10に示したPPG信号波形1010は、PPG信号のパルス方向が上側方向にある場合である。
パルス方向が上側方向にある場合、第1基準点(1020、1025、1030、1035、1040)の尖度は、主に、第2基準点(1045、1050、1055、1060、1065)の尖度よりも大きい値を有する。
反対に、パルス方向が下側の場合、第2基準点(1045、1050、1055、1060、1065)の尖度は、主に、第1基準点(1020、1025、1030、1035、1040)の尖度よりも小さい値を有する。
【0048】
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、第1基準点(1020、1025、1030、1035、1040)の尖度を合算した第1尖度和と、第2基準点(1045、1050、1055、1060、1065)の尖度を合算した第2尖度和とを比較してPPG信号波形1010のパルス方向を決定する。
第1尖度和が第2尖度和よりも大きい場合、生体信号処理装置はPPG信号波形1010のパルス方向が上側に向かうものと決定する。
反対に、第2尖度和が第1尖度和よりも大きい場合、生体信号処理装置はPPG信号波形1010のパルス方向が下側に向かうものと決定する。
【0049】
他の実施形態によれば、生体信号処理装置は、第1基準点(1020、1025、1030、1035、1040)の尖度、及び第2基準点(1045、1050、1055、1060、1065)の尖度に基づいてパルス方向の強度を決定し、決定されたパルス方向に基づいてPPG信号波形1010のパルス方向を決定する。
パルス方向の強度は、PPG信号波形1010でパルスが上側又は下側のいずれかの方向にどれ程強く形成されたかを示す。
【0050】
生体信号処理装置は、例えば、以下に示す数式(4)に基づいてパルス方向の強度を算出する。
【数4】
ここで、d
newは現在のパルス方向の強度を示し、d
oldは以前のパルス方向の強度を示す。
【0051】
d
newは基準点が検出されるごとに加重値βに基づいてアップデートされる。
βが大きいほどd
newはd
oldに影響をより少なく受ける。
数式(4)において、分母である(β+1)はd
new値を正規化するために用いられる。
sは現在の基準点が第1基準点であれば「+1」の値を有し、第2基準点であれば「−1」の値を有する。
生体信号処理装置は、d
newの値が「0」よりも大きい場合にはPPG信号波形1010のパルス方向が上側に向かうものと決定し、反対にd
new値が「0」よりも小さい場合にはPPG信号波形1010のパルス方向が下側に向かうものと決定する。
【0052】
図11は、本発明の一実施形態に係る前処理が実行されたPPG信号に対して決定されたパルス方向の強度を示す図である。
図11を参照すると、(a)区間で、PPG信号波形1110のパルス方向は上側に向かっているため、パルス方向の強度1120が「0」よりも大きい値を示す。
(b)区間で、PPG信号波形1110のパルス方向が下側に向うものとして逆転し、(a)区間におけるパルス方向の強度1120が少しずつ減少し、結局は「0」よりも小さくなることを示している。
(c)、(d)区間で、PPG信号波形1110は深い呼吸などにより激しく揺れていることを示す。
しかし、生体信号処理装置は、PPG信号波形1110の急激な揺動に関係なく、(c)、(d)区間でパルス方向の強度1120を正確に算出し、これによってPPG信号波形1110のパルス方向も正確に決定することができる。
【0053】
図12及び
図13は、本発明の一実施形態に係るパルス方向に応じてPPG信号の特徴点を決定する工程を説明するためのグラフである。
PPG信号のパルス方向が決定された後に、パルス方向を考慮して生体信号(又は、
図6を参照して説明した前処理工程が実行された生体信号)に対して特徴点が決定される。
一実施形態によれば、生体信号処理装置は、PPG信号波形に低域通過フィルタを適用し、生体信号のパルス方向に基づいてPPG信号波形に対する傾きの和を決定する。
【0054】
例えば、生体信号処理装置は、下記に示す数式(5)に基づいて時間による傾きの和SSFを算出する。
【数5】
ここで、wはPPG信号波形に適用されるウィンドウの長さを示し、y
kは低域通過フィルタが適用されたPPG信号を示す。
Δy
kは「y
k−y
k−1」を示す。
傾きの和を用いることによって、別途の高域通過フィルタを使用しなくてもPPG信号波形から特徴点を正確に決定することができる。
【0055】
生体信号処理装置は、数式(5)による傾きの和SSFと閾値に基づいてPPG信号の特徴点を決定することができる。
ここで、閾値は、PPG信号の変化により適応的に変化し得る。
例えば、閾値が現在のPPG信号の信号値に比例して変化する。
【0056】
例えば、閾値は、下記に示す数式(6)により適応的に決定される。
【数6】
ここで、AT
kは時間kにおける閾値を示し、S
rはPPG信号波形における傾き変化率を示す。
V
prevは以前のパルス信号値を示し、std
PPGはPPG信号の標準偏差を示す。
F
sはサンプリング周波数を示す。
数式(6)によれば、PPG信号が閾値よりも大きくなるまで閾値は小さくなる。
そのため、呼吸や身体的な動きによってPPG信号の信号値が大きく変動する場合でも正確に特徴点を検出することができる。
【0057】
図12に示すように、PPG信号波形1210のパルス方向が上側に向かっているものと決定された場合、数式(5)により傾きの和1220が算出される。
PPG信号波形1210の変化により、数式(6)に基づいた閾値1230が適応的に決定され、閾値1230に基づいてPPG信号波形1210から特徴点1240を決定する。
例えば、傾きの和1220から閾値1230よりも大きい位置が識別され、PPG信号波形1210から該当の識別された位置を中心にする一定時間区間で最も大きい信号値を有する信号の位置が特徴点として決定される。
【0058】
図13に示すように、PPG信号波形1310のパルス方向が下側に向かっているものと決定された場合、数式(5)において、Δu
kは−Δu
kに代替されて正の傾き値1320が取得される。
その後、
図12と同様に、PPG信号波形1310の変化により数式(6)に基づいた閾値1330が適応的に決定され、閾値1330に基づいてPPG信号波形1310から特徴点1340が決定される。
例えば、傾きの和1320から閾値1330よりも大きい位置が識別され、PPG信号波形1310から該当の識別された位置を中心にする一定時間区間で最も小さい信号値を有する信号の位置が特徴点として決定される。
上記のような工程により、PPG信号波形のパルス方向がいずれの方向に向かってもPPG信号波形から特徴点を正確かつ迅速に検出することができる。
【0059】
図14は、本発明の一実施形態に係る生体信号処理装置の概略を示すブロック図である。
図14を参照すると、生体信号処理装置1400は、センサ1450からセンサ1450によって検知された生体信号を受信して、受信した生体信号から特徴点を検出する。
検出された特徴点に関する情報は、生体情報推定装置1440に伝えられ、生体情報推定装置1440は、特徴点に関する情報に基づいて血圧、心拍数などのような生体情報を推定する。
例えば、血圧及び心拍数のような生体情報はディスプレイ1430上に表示される。
【0060】
一実施形態によれば、生体信号処理装置1400は、
図1に示したウェアラブル装置100に内蔵されて動作し、1つ以上のプロセッサ1410及びメモリ1420を含む。
プロセッサ1410は、
図1〜
図13を参照して前述した1つ以上の動作を行う。
例えば、プロセッサ1410は生体信号の波形から基準点を抽出し、抽出された基準点に基づいて生体信号のパルス方向を決定した後、パルス方向に対応する特徴点の決定方式により生体信号の特徴点を決定する。
プロセッサ1410は、基準点のそれぞれに対応する尖度を決定し、尖度に基づいて生体信号の特徴点を決定する。
このようなプロセッサ1410は、複数の論理ゲートのアレイに実現され、他の形態のハードウェアでも具現できることは本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば理解できるのであろう。
【0061】
メモリ1420は、
図1〜
図13を参照して前述した1つ以上の動作を行うための命令を格納し、さらに/又は、生体信号処理装置1400が運用されながら取得されたデータと結果を格納する。
一部の実施形態において、メモリ1420は、非一時的なコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、高速ランダムアクセスメモリ及び/又は不揮発性コンピュータで読み取り可能な記録媒体(例えば、1つ以上のディスク記録デバイス、フラッシュメモリデバイス、又は、その他の非揮発性固体メモリデバイス)を含み得る。
【0062】
例えば、プロセッサ1410は、血圧及び心拍数のような生体情報を生成し、生体情報はディスプレイ1430上に表示される。
ディスプレイ1430は、ユーザ入力を受信したりユーザインタフェースを実現する1つ以上のハードウェアコンポーネントを含み得る。
ディスプレイ1430は、ディスプレイ領域、ジェスチャキャプチャー領域、タッチ検出ディスプレイ、及び構成可能な領域の内のいずれかの組み合わせを含み得る。
ディスプレイ1430は、生体信号処理装置1400に内蔵されたり、又は生体信号処理装置1400から取り外され外部周辺機器であり得る。
【0063】
以上、前述した本発明の実施形態は、ハードウェア構成要素、ソフトウェア構成要素、又はハードウェア構成要素及びソフトウェア構成要素の組み合わせで具現される。
例えば、本実施形態で説明した装置及び構成要素は、例えば、プロセッサ、コントローラ、ALU(arithmetic logic unit)、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor)、マイクロコンピュータ、FPA(field programmable array)、PLU(programmable logic unit)、マイクロプロセッサ、又は命令(instruction)を実行して応答する異なる装置のように、1つ以上の汎用コンピュータ又は特殊目的コンピュータを用いて具現される。
【0064】
処理装置は、オペレーティングシステム(OS)及びオペレーティングシステム上で実行される1つ以上のソフトウェアアプリケーションを実行する。
また、処理装置は、ソフトウェアの実行に応答してデータをアクセス、格納、操作、処理、及び生成する。
理解の便宜のために、処理装置は1つが使用されるものとして説明する場合もあるが、当該技術分野で通常の知識を有する者は、処理装置が複数の処理要素(processing element)及び/又は複数類型の処理要素を含むことが分かる。
例えば、処理装置は、複数のプロセッサ又は1つのプロセッサ及び1つのコントローラを含む。
また、並列プロセッサ(parallel processor)のような、他の処理構成も可能である。
【0065】
ソフトウェアは、コンピュータプログラム、コード、命令、又はこれらのうちの1つ以上の組み合わせを含み、所望通りに動作するように処理装置を構成し、独立的又は結合的に処理装置に命令する。
ソフトウェア及び/又はデータは、処理装置によって解釈され、処理装置に命令又はデータを提供するためのあらゆる類型の機械、構成要素、物理的装置、仮想装置、コンピュータ格納媒体又は装置、或いは送信される信号波を介して永久的又は一時的に具現化される。
ソフトウェアは、ネットワークに接続されたコンピュータシステム上に分散され、分散された方法で格納されるか又は実行され得る。
ソフトウェア及びデータは、1つ以上のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納される。
【0066】
本実施形態による生体信号処理方法は、多様なコンピュータ手段を介して実施されるプログラム命令の形態で具現され、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録される。
記録媒体は、プログラム命令、データファイル、データ構造などを単独又は組み合わせて含む。
記録媒体及びプログラム命令は、本発明の目的のために特別に設計して構成されたものでもよく、コンピュータソフトウェア分野の技術を有する当業者にとって公知のものであり使用可能なものであってもよい。
【0067】
コンピュータ読み取り可能な記録媒体の例としては、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、及び磁気テープのような磁気媒体、CD−ROM、DVDのような光記録媒体、フロプティカルディスクのような磁気−光媒体、及びROM、RAM、フラッシュメモリなどのようなプログラム命令を保存して実行するように特別に構成されたハードウェア装置を含む。
【0068】
プログラム命令の例としては、コンパイラによって生成されるような機械語コードだけでなく、インタプリタなどを用いてコンピュータによって実行される高級言語コードを含む。
ハードウェア装置は、本発明の動作を実行するために1つ以上のソフトウェアモジュールとして作動するように構成してもよく、その逆も同様である。
【0069】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。