(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842314
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】収納箱
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20210308BHJP
A62C 13/78 20060101ALI20210308BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20210308BHJP
E05C 19/16 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C13/78 A
H01F7/02 R
E05C19/16 D
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-24774(P2017-24774)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-130210(P2018-130210A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】根之木 正浩
【審査官】
飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−030630(JP,A)
【文献】
特開2002−271052(JP,A)
【文献】
特開2009−291507(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3189611(JP,U)
【文献】
特開2011−019972(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0139934(US,A1)
【文献】
中国実用新案第207708378(CN,U)
【文献】
特開2016−055073(JP,A)
【文献】
特開2001−250714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00−99/00
E05C 19/16
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、前記筐体内に所定の防災機器が収納される収納
箱に於いて、
前記筐体の開口枠に、磁気吸着面を前記筐体の外側に向けて配置されたマグネットキャッチと、
前記扉に設けられ、前記扉の閉鎖位置で前記マグネットキャッチの前記磁気吸着面に吸
着される磁気吸着受け面を有するマグネット受け部材と、
前記磁気吸着受け面に相対する前記磁気吸着面の面積を変更するように、前記筐体の開口枠に対するマグネットキャッチの位置又は前記扉に対する前記マグネット受け部材の位置を調整自在に配置する位置調整機構と、
が設けられたことを特徴とする収納箱。
【請求項2】
筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、前記筐体内に所定の防災機器が収納される収納
箱に於いて、
前記扉に磁気吸着面を前記筐体の内側に向けて配置されたマグネットキャッチと、
前記筐体の開口枠に設けられ、前記扉の閉鎖位置で前記マグネットキャッチの前記磁気吸着面に吸着される磁気吸着受け面を有するマグネット受け部材と、
前記磁気吸着受け面に相対する前記磁気吸着面の面積を変更するように、前記扉に対する前記マグネットキャッチの位置又は前記筐体の開口枠に対する前記マグネット受け部材の位置を調整自在に配置する位置調整機構と、
が設けられたことを特徴とする収納箱。
【請求項3】
請求項1又は2記載の収納箱に於いて、
前記マグネット受け部材は、前記磁気吸着受け面の一部に抜き穴が形成され、
前記位置調整機構は、前記磁気吸着受け面の前記抜き穴に相対する前記磁気吸着面の面積を変更するように、前記マグネットキャッチ又は前記マグネット受け部材を位置調整自在に配置することを特徴とする収納箱。
【請求項4】
請求項3記載の収納箱に於いて、
前記マグネット受け部材の前記抜き穴を矩形としたことを特徴とする収納箱。
【請求項5】
請求項1乃至4何れかに記載の収納箱に於いて、
位置調整自在に配置される前記マグネットキャッチ又は前記マグネット受け部材は、両端に通し穴が形成された取付片が延在され、
前記位置調整機構は、
位置調整自在に配置される前記マグネットキャッチ又は前記マグネット受け部材に相対する前記開口枠又は前記扉に配置された挟み板部材と、
前記開口枠又は前記扉に位置調整自在に配置される前記マグネットキャッチ又は前記マグネット受け部材の位置調整方向に向かう長穴として形成されたスライド穴と、
前記取付片の前記通し穴及び前記開口枠又は前記扉の前記スライド穴を介して前記挟み込み板部材に位置調整して配置された前記マグネットキャッチ又は前記マグネット受け部材を固定する固定部材と、
を有することを特徴とする収納箱。
【請求項6】
請求項1乃至5何れかに記載の収納箱に於いて、
前記筐体内に消火器が収納された消火器箱として構成されたことを特徴とする収納箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、筐体内に消火器等の防災機器が収納される収納箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置する消火栓装置は、開閉自在な消火栓扉を備えた筐体の消火栓収納部に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類が収納され、また、開閉自在な消火器扉を備えた消火器収納部に例えば2本の消火器が収納されている。
【0003】
火災を伴う車両事故が発生した場合には、事故車両の運転者等の利用者は、例えば、消火器収納部の消火器扉を開いて消火器を取り出して初期消火等の消火作業を行うことができる。
【0004】
消火器収納部に設けられた消火器扉は、例えば、マグネットキャッチを用いた閉鎖機構により、磁気吸着力により消火器扉を閉鎖状態に保持しており、消火器を使用する際には、消火器扉の設けられたハンドルに手を入れて手前に引くことで、磁気吸着が解除され、簡単かつ容易に消火器扉を開いて消火器を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−055073号公報
【特許文献2】特開2001−250714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の消火栓装置におけるマグネットキャッチを用いた消火器扉の閉鎖機構にあっては、筐体開口枠側にマグネットキャッチを取付け、これに相対した消火器扉側に磁気吸着受けプレートを取付ることで、消火器扉を閉鎖位置に吸着保持させているが、消火器扉及び筐体開口枠の寸法のばらつき等により、消火器扉を閉鎖した際のマグネットキャッチと磁気吸着受けプレートの間隔がばらつき、所定の閉鎖保持力を得ることができない場合がある。
【0007】
このような場合には、マグネットキャッチの下側に調整用のプレートを入れて下駄をはかせることで位置を調整しているが、手間と時間がかかり、また、磁気吸着力が段階的にしか調整できないため、精度の高い閉鎖保持力の調整ができず、例えば、振動試験を行った場合に、試験振動に耐えられずに消火器扉が開いてしまうといった不具合がある。
【0008】
このような問題は消火栓装置の消火器扉に限らず、マグネットキャッチを用いた屋内設置される消火器箱や適宜の防災機器を収納した収納箱でも同様となる。
【0009】
本発明は、磁気吸着による扉の閉鎖保持力を簡単且つ容易に調整可能とする防災機器を収納した収納箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明の収納箱)
本発明は、筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、筐体内に所定の防災機器が収納される収納箱に於いて、
筐体の開口枠に、磁気吸着面を
筐体の外側に向けて配置されたマグネットキャッチと、
扉に設けられ、扉の閉鎖位置でマグネットキャッチ
の磁気吸着面に吸着される磁気吸着受け面を有
するマグネット受け部材と、
磁気吸着受け面に相対する磁気吸着面の面積を変更するように、
筐体の開口枠に対するマグネットキャッチ
の位置又は扉に対するマグネット受け部材の位置を調整自在に配置する位置調整機構と、
が設けられたことを特徴とする。
【0011】
(第2発明の収納箱)
本発明の他の形態にあっては、筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、筐体内に所定の防災機器が収納される収納箱に於いて、
扉に磁気吸着面を
筐体の内側に向けて配置されたマグネットキャッチと、
筐体の開口枠に設けられ、扉の閉鎖位置
でマグネットキャッチの磁気吸着面に吸着される磁気吸着受け面を有
するマグネット受け部材と、
磁気吸着受け面に相対する磁気吸着面の面積を変更するように、
扉に対するマグネットキャッチ
の位置又は筐体の開口枠に対するマグネット受け部材の位置を調整自在に配置する位置調整機構と、
が設けられたことを特徴とする。
【0012】
(マグネット受け部材の抜き穴)
マグネット受け部材は
、磁気吸着受け面の一部に抜き穴が形成され、
位置調整機構は
、磁気吸着受け面の抜き穴に相対する磁気吸着面の面積を変更するように、マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材を位置調整自在に配置する。
【0013】
(マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材と位置調整機構)
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材は、両端に通し穴が形成された取付片が延在され
、
位置調整機構は、
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材に相対する開口枠
又は扉に配置された挟み込み板部材と、
開口枠
又は扉に
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材の位置調整方向に向かう長穴として形成されたスライド穴と、
取付片の通し穴及び開口枠
又は扉のスライド穴を介して挟み込み板部材に
位置調整して配置されたマグネットキャッチ又はマグネット受け部材を固定する
固定部材と、
を備える。
【0014】
(矩形の抜き穴)
マグネット受け部材の抜き穴を矩形とする。
【0015】
(消火器箱)
筐体内に消火器が収納された消火器箱として構成される。
【発明の効果】
【0016】
(第1発明の収納箱による基本的な効果)
本発明は、筐体の開口に開閉自在な扉が設けられ、筐体内に所定の防災機器が収納される収納箱に於いて、筐体の開口枠に、磁気吸着面を
筐体の外側に向けて配置されたマグネットキャッチと、扉に設けられ、扉の閉鎖位置でマグネットキャッチ
の磁気吸着面に吸着される磁気吸着受け面を有
するマグネット受け部材と、
磁気吸着受け面に相対する磁気吸着面の面積を変更するように、
筐体の開口枠に対するマグネットキャッチ
の位置又は扉に対するマグネット受け部材の位置を調整自在に配置する位置調整機構とが設けられため、マグネット受け部材
の磁気吸着受け面に相対する磁気吸着面の面積を
増加させるように位置調整することで、磁気吸着面と
磁気吸着受け面の相対する面積が増加して吸着保持力を強くすることができ、一方、マグネット受け部材
の磁気吸着受け面に相対する磁気吸着面の面積を
減少させるように位置調整することで、磁気吸着面と
磁気吸着受け面の相対する面積が減少して吸着保持力を弱くすることができ、磁気吸着による扉の閉鎖保持力を簡単且つ容易に最適な状態に調整可能とする。
【0017】
(第2発明の収納箱による基本的な効果)
本発明の他の形態にあっては、扉にマグネットキャッチを設け、開口枠にマグネット受け部材を設けている点で第1発明と相違するが、その効果は前述した第1発明と基本的に同じになる。
【0018】
( マグネット受け部材の抜き穴による効果)
また、マグネット受け部材は
、磁気吸着受け面の一部に抜き穴が形成され、位置調整機構は
、磁気吸着受け面の抜き穴に相対する磁気吸着面の面積を変更するように、マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材を位置調整自在に配置するようにしたため、磁気吸着
受け面の抜き穴に対し磁気吸着面が露出する度合から磁気吸着力の変化を推定することが可能となり、磁気吸着力の調整が簡単且つ容易にできる。
【0019】
( マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材と位置調整機構の効果)
また、
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材は、両端に通し穴が形成された取付片が延在され
、位置調整機構は、
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材に相対する開口枠
又は扉に配置された挟み込み板部材と、開口枠
又は扉に
位置調整自在に配置されるマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材の位置調整方向に向かう長穴として形成されたスライド穴と
、取付片の通し穴及び開口枠
又は扉のスライド穴を介して挟み込み板部材に
位置調整して配置されたマグネットキャッチ又はマグネット受け部材を固定する
固定部材とが設けられたため、マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材の位置調整は、挟み
込み板部材への
固定(締め込み
)でマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材を開口枠
又は扉に固定している
固定部材
(ねじ)を緩めることで、開口枠
又は扉のスライド穴に沿ってマグネットキャッチ
又はマグネット受け部材が移動可能となり、最適な閉鎖保持力が得られる位置に調整し、調整位置で
固定部材
(ねじ)を締め込んで固定すればよく、マグネットキャッチ
又はマグネット受け部材を取り外す必要がないことから、簡単且つ容易に磁気吸着による閉鎖保持力が調整できる。
【0020】
(矩形の抜き穴)
また、マグネット受け部材の抜き穴を矩形としたため、マグネットキャッチの移動量に対する磁気吸着力の変化が概ね比例した関係となり、マグネットキャッチをどの程度移動したら磁気吸着力がどの程度増減するかが把握しやすく、閉鎖保持力の調整作業を容易にする。
【0021】
(消火器箱による効果)
また、筐体内に消火器が収納された消火器箱として構成された場合、例えばトンネル用の消火器箱とした場合の振動試験をクリアするための閉鎖保持力の調整が簡単且つ適切にできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】消火器収納部に消火器扉が設けられた消火栓装置の実施形態を示した説明図
【
図3】マグネットキャッチとマグネット受け
部材を用いた消火器扉の閉鎖保持機構を示した説明図
【
図4】マグネットキャッチの位置調整による閉鎖保持力の調整状態を3段階に分けて示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
[消火栓装置の概要]
図1は消火器収納部に消火器扉が設けられた消火栓装置の実施形態を示した説明図、
図2は
図1の消火器扉を開いた状態を示した説明図である。
【0024】
図1に示すように、消火栓装置10は、消火栓側と消火器側に筐体12−1,12−2を分割した構造であり、前面に分割した化粧板14−1,14−2を各々装着し、筐体12−1,12−2に対し必要な機器及び部材を組付けた後に連結固定し、この状態でトンネル現場に搬入して架台11上に設置している。
【0025】
右側の化粧板14−1の扉開口部16は上下に2分割し、下側扉開口部にヒンジ18により下向きに開く前傾式の消火栓扉20が配置され、上側扉開口部にヒンジ22により上向きに開く保守扉として機能する上扉24が配置され、その内部にノズル付きのホースと消火栓弁を含むバルブ類が収納部されている。
【0026】
扉開口部16の左側には、ヒンジ26により右に横開きする電装品扉28が設けられ、ここに赤色表示灯30、発信機(手動通報装置)32及び応答ランプ34が設けられ、また電装品扉28の内側には電話ジャックが設けられている。
【0027】
電装品扉28の左側には、ヒンジ36により左に横開きする消火器扉38が設けられ、内部に2本の消火器を収納可能としている。消火器扉38は扉閉鎖保持機構40により閉鎖位置に保持されており、扉右端の略中央に設けたハンドル42を手前に引くことで、磁気吸着による閉鎖保持を解除して消火器扉38を左側に開くことができる。また、消火器扉38の下側には覗き窓44が設けられ、外部から消火器の収納状態の有無を確認可能としている。
【0028】
消火器扉38に設けられた扉閉鎖保持機構40は、消火器扉38を開いた
図2に示すように、電装品扉28の右側縦方向に窪み形成された開口枠46に配置されたマグネットキャッチ48と、消火栓扉38の内側に配置されたマグネット受け部材50により構成される。
【0029】
[扉閉鎖保持機構の第1実施形態]
図3はマグネットキャッチとマグネット受け
部材を用いた消火器扉の扉閉鎖保持機構の第1実施形態を示した説明図であり、第1発明に対応する。ここで、
図3(A)は
マグネット受け部材を備えた消火器扉の断面を示し、
図3(B)は
マグネット受け部材が配置された消火器扉の内側を示し、
図3(C)はマグネットキャッチが配置された開口枠の部分をし、
図3(D)はマグネットキャッチが配置された開口枠の部分を断面で示している。
【0030】
(マグネット受け部材)
図3(A)(B)に示すように、マグネット受け部材50は、
図2に示したように、開放された状態で消火器扉38の内側左端に固定されており、鉄板等の磁性材料で作られた縦長の矩形プレート部材であり、内側にフラットなマグネット受け面52が形成されており、このマグネット受け面52の上側に矩形の抜き穴54が形成されている。
【0031】
(マグネットキャッチと位置調整機構)
図3(C)(D)に示すように、電装品扉28の左端縦方向に窪み形成された開口枠46には、磁気吸着面56を外側に向けてマグネットキャッチ48が配置されている。マグネットキャッチ48は、箱型ケース58の底部両端に通し穴62が形成された取付片60が延在され、箱型ケース58内に永久磁石とヨーク板64が収納され、ヨーク板64の上端は前方の磁気吸着面56に3枚ずつ上下に分かれて突出されている。
【0032】
マグネットキャッチ48は位置調整機構により消火器扉38側に配置されたマグネット受け部材50の抜き穴54に対する磁気吸着面56の面積を変更するように、開口枠46に高さ方向で位置調整自在に配置されている。
【0033】
マグネットキャッチ48の位置調整機構は、マグネットキャッチ48に相対する開口枠46の裏面側に配置された挟み込み板部材66と、開口枠46にマグネットキャッチ48の位置調整方向となる高さ方向に向かう長穴として上下両側に形成された一対のスライド穴68と、箱型ケース58の取付片60の通し穴及び開口枠46のスライド穴68を介して挟み込み板部材66にねじ込んで締め付け固定する2本のねじ部材70とで構成される。
【0034】
位置調整機構によるマグネットキャッチ48の位置調整は、挟み込み板部材66に締め込むことでマグネットキャッチ48を固定しているねじ部材70を緩めると、スライド穴68に沿ってマグネットキャッチ48が裏側の挟み込み板部材66と共に上下方向に移動可能となり、スライド穴68に対するスライド範囲で適宜の位置に移動し、移動した位置でねじ部材70を締め込むことで、所望の調整位置に固定できる。
【0035】
この場合、ねじ部材70をマグネットキャッチ48がスライドできるように緩めるだけで良く、マグネットキャッチ48を開口枠46から取り外す必要がなく、このためマグネットキャッチ48の位置調整が簡単且つ容易にできる。
【0036】
(位置調整機構による閉鎖保持力の調整)
図4はマグネットキャッチの位置調整による閉鎖保持力の調整状態を3段階に分けて示した説明図であり、
図4(A)は閉鎖保持力を最大とした場合を示し、
図4(B)は閉鎖保持力を中程度とした場合を示し、
図4(C)は閉鎖保持力を最小とした場合を示す。
【0037】
図4(A)は、開口枠46のマグネットキャッチ48を消火器扉38のマグネット受け部材50に対し、ねじ部材70がスライド穴68の下端に当たる下限位置に移動して固定した状態であり、この下限位置でマグネットキャッチ48の外側の磁気吸着面56の上下のヨーク板64がマグネット受け部材50に形成された矩形の抜き穴54に位置せず、ヨーク板64がマグネット受け面52に全て位置することで磁気吸着範囲72が最大となり、最大の磁気吸着力が発生し、消火器扉38の閉鎖保持力が最大に調整できる。
【0038】
図4(C)は、開口枠46のマグネットキャッチ48を消火器扉38のマグネット受け部材50に対し、ねじ部材70がスライド穴68の上端に当たる上限位置に移動して固定した状態であり、この上限位置でマグネットキャッチ48の外側の磁気吸着面56の上側半分のヨーク板64がマグネット受け部材50に形成された矩形の抜き穴54に位置して磁気吸着力が発生しておらず、マグネットキャッチ48の外側の磁気吸着面56の下側半分のヨーク板64がマグネット受け部材50の磁気吸着受け面52に位置して磁気吸着力が発生している。このため
図4(A)に示した最大の磁気吸着力に対し、
図4(C)の場合は、概ね半分となる最小の磁気吸着範囲76となり、最小の磁気吸着力に低下させており、消火器扉38の閉鎖保持力が最小に調整できる。
【0039】
図4(B)は、開口枠46のマグネットキャッチ48を消火器扉38のマグネット受け部材50に対し、ねじ部材70がスライド穴68の真ん中付近となるように移動して固定した状態であり、この位置でマグネットキャッチ48の外側の磁気吸着面56の上側のヨーク板64の上半分がマグネット受け部材50に形成された矩形の抜き穴54に位置して磁気吸着力が発生しておらず、磁気吸着範囲74により
図4(A)に示した最大の磁気吸引力と
図4(C)に示した最小の磁気吸引力の中間程度の磁気吸引力となり、この磁気吸引力に対応した消火器扉38の閉鎖保持力に調整できる。
【0040】
[扉閉鎖保持機構の第2実施形態]
本発明による消火器扉における扉閉鎖保持機構の第2実施形として、
図3に示した第1実施形態とは逆に、マグネットキャッチ48の磁気吸着面56を内側に向けて消火器扉38の内側に配置し、磁気吸着受け面52の一部に抜き穴54が形成された板状のマグネット受け部材50を開口枠46に配置し、位置調整機構により開口枠46に配置されたマグネット受け部材50の抜き穴54に相対するマグネットキャッチ48の磁気吸着面56の面積を変更するように、マグネットキャッチ48を消火器扉38に位置調整自在に配置する。
【0041】
この場合にも、
図4に示した第1実施形態の場合と同様に、マグネット受け部材50の抜き穴54に相対するマグネットキャッチ48の磁気吸着面の面積を減少させるように位置調整することで磁気吸着による扉閉鎖保持力を強くすることができ、一方、マグネット受け部材50の抜き穴54に相対するマグネットキャッチ48の磁気吸着面56の面積を増加させるように位置調整することで磁気吸着による閉鎖保持力を弱くすることができ、磁気吸着による扉の閉鎖保持力を簡単且つ容易に最適な状態に調整可能とする。
【0042】
[本発明の変形例]
上記の実施形態は、マグネット受け部材に抜き穴を設け、マグネット受け部材の抜き穴に相対する磁気吸着面の面積を変更するようにマグネットキャッチを位置調整しているが、マグネット受け部材に抜き穴を設けず、マグネットキャッチの磁気吸着面がマグネット受け部材の相対する面から外れるように位置調整することで、磁気吸着面積を変更するようにしても良い。
【0043】
また、マグネット受け部材を設置する場所、例えば扉の素材が鋼板等の磁気吸着部材であった場合、扉に設けるマグネット受け部材の板厚を適切に設定することで、マグネットキャッチによる磁気吸着力がマグネット受け部材を設置する場所の素材に及ばない距離とすることができ、磁気吸着部材にマグネット受け部材を配置していても、それに影響されることなく磁気吸着力を調整することができる。
【0044】
上記の実施形態にあっては、マグネット受け部材を固定し、マグネットキャッチを位置調整機構により位置調整自在に設けているが、これに限定されない。例えばマグネットキャッチを固定し、マグネット受け部材を位置調整機構又は両面テープ等により位置調整自在に設けても良い。
【0045】
このようにマグネット受け部材を位置調整機構により位置調整自在とする構成は、前述した第2実施形態では、消火器扉に位置調整機構を備えたマグネットキャッチを配置しているが、消火器扉にはマグネットキャッチを固定し、開口枠に位置調整機構を備えたマグネット受け部材を配置することで、扉閉鎖保持構造がより簡単に実現できる。
【0046】
また、上記の実施形態は、消火栓装置に一体に設けられた消火器収納部の消火器扉を例にとっているが、トンネル内に単独で設置される消火器箱についても適用でき、更に、ビル等の屋内に設置されている消火器箱や消火栓収納箱などの適宜の防災機器が収納された収納箱に適用できる。
【0047】
また、本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0048】
10:消火栓装置
11:架台
16:扉開口部
18,22,26,36:ヒンジ
20:消火栓扉
24:上扉
28:電装品扉
35:消火器収納部
38:消火器扉
40:扉閉鎖保持機構
42:ハンドル
44:覗き窓
46:開口枠
48:マグネットキャッチ
50:マグネット受け部材
52:マグネット受け面
54:抜き穴
56:磁気吸着面
58:箱型ケース
60:取付片
62:通し穴
64:ヨーク板
66:挟み込み板部材
68:スライド穴
70:ねじ部材