特許第6842316号(P6842316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842316Ni基合金、ガスタービン材およびクリープ特性に優れたNi基合金の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842316
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】Ni基合金、ガスタービン材およびクリープ特性に優れたNi基合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 19/05 20060101AFI20210308BHJP
   C22F 1/10 20060101ALI20210308BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20210308BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20210308BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20210308BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   C22C19/05 C
   C22F1/10 H
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   F01D5/28
   F01D25/00 L
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 650A
   !C22F1/00 651B
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-27525(P2017-27525)
(22)【出願日】2017年2月17日
(65)【公開番号】特開2018-131667(P2018-131667A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】320005154
【氏名又は名称】日本製鋼所M&E株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】大川 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】高澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】前田 榮二
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌人
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−084812(JP,A)
【文献】 特開2015−030916(JP,A)
【文献】 特開2014−019916(JP,A)
【文献】 特開2015−155561(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119832(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/028671(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/183670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 19/05
C22F 1/10
C22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、Cr:15.00〜25.00%、Co:5.00〜15.00%、Mo:1.00〜12.00%未満、Ti:1.50〜2.50%、Al:1.00〜2.00%、Nb:0.20〜1.00%、C:0.0010〜0.10%、質量ppmで、P:10〜200ppm、B:30〜250ppm、N:30〜200ppmを含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有し、
析出炭化物によって粒界強化されており、
合金内の粒界の長さに対して炭化物で被覆された粒界の長さの割合で定義される粒界被覆率が85%以上であり、
750℃・333MPaにおける最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下であることを特徴とするNi基合金。
【請求項2】
前記Pの含有量が質量ppmでP:20〜150ppmであることを特徴とする請求項1記載のNi基合金。
【請求項3】
750℃・333MPaにおけるクリープ破断時間が600時間以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のNi基合金。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載のNi基合金からなることを特徴とするガスタービン材。
【請求項5】
請求項1または2の組成のNi基合金を溶体化処理後、1010〜1050℃の温度と760〜790℃の温度で2回時効処理を行い、析出炭化物によって粒界強化されており、
合金内の粒界の長さに対して炭化物で被覆された粒界の長さの割合で定義される粒界被覆率が85%以上であり、750℃・333MPaにおける最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下である、クリープ特性に優れるNi基合金を得ることを特徴とするクリープ特性に優れるNi基合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高温特性に優れたNi基合金、ガスタービン材およびクリープ特性に優れたNi基合金の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Ni基合金は高温において優れた機械的特性を示し、ガスタービンをはじめとする各種機械装置の高温部材として広範に用いられている。Ni基合金は一般的にAlやTi、或いはNbやTaを少量添加することで、結晶粒内にNi(Al,Ti)からなるγ’(ガンマプライム)相、あるいはNi(Al,Ti,Nb)からなるγ”(ガンマダブルプライム)相と呼ばれる析出層を微細析出させて優れた強度を発現させている。しかし、使用温度が高くなるのに伴い、合金内においては結晶粒内よりも結晶粒界(以下粒界と略記する)がクリープ変形における弱化因子となるため、より高温で使用するには粒界を適切に強化する必要がある。粒界を強化するためには、析出物など何らかの異相を粒界に生成させる必要がある。さらに、それらの異相が粒界を被覆している割合、すなわち粒界被覆率を相応の値以上にしなければ、所望の特性を確保することはできない。
【0003】
従来、粒界の強度を高めるための方法として、炭化物や硬質相を粒界に分散させる方法が提示されている。例えば、当社出願の特許文献1では、粒界にMCあるいはM23型(M:金属元素、C:炭素)の炭化物を、粒界の炭化物の面積率を結晶粒内の炭化物の面積率で除した値として定義される炭化物面積比率が0.6〜3.0を満たすように析出させ、火力発電タービンロータ用Ni基超合金の粒界強化を図っている。しかし該文献で扱う炭化物面積比率は結晶粒内の炭化物量に左右され、粒界のみを効果的に強化していない可能性がある。
【0004】
特許文献2では炭化物を用いて粒界強化を図っているが、粒界被覆率が不明であり、最適な粒界強化が施されていない可能性がある。また、炭化物を塊状にするための特殊な熱処理工程を必要としており、製造コストを押し上げるおそれがある。
さらに特許文献3ではアルミナからなる硬質相を粒界に分散させて強化を図っているが、硬質相の粒界被覆率が明示されておらず、粒界強化が最適になされているか不明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−219339号公報
【特許文献2】特開2005−314728号公報
【特許文献3】特開2008−179845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、これまで粒界強化によってクリープ特性の向上を図ったNi基合金はいくつか開発されているが、所望するクリープ特性、および製造コスト抑制の観点から最適な手法が確率されているとは言い難い。
【0007】
本発明はこれらの状況を解決するためになされたものであり、高温特性に優れたNi基合金、ガスタービン材およびクリープ特性に優れたNi基合金の製造方法を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のNi基合金のうち、第1の形態は、 質量%で、Cr:15.00〜25.00%、Co:5.00〜15.00%、Mo:1.00〜12.00%未満、Ti:1.50〜2.50%、Al:1.00〜2.00%、Nb:0.20〜1.00%、C:0.0010〜0.10%、質量ppmで、P:10〜200ppm、B:30〜250ppm、N:30〜200ppmを含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成を有し、
析出炭化物によって粒界強化されており、
合金内の粒界の長さに対して炭化物で被覆された粒界の長さの割合で定義される粒界被覆率が85%以上であり、
750℃・333MPaにおける最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下であることを特徴とする。
【0009】
他の形態のNi基合金の発明は、前記形態の本発明において、前記Pの含有量が質量ppmでP:20〜150ppmであることを特徴とする。
【0012】
他の形態のNi基合金の発明は、前記形態の本発明において、750℃・333MPaにおけるクリープ破断時間が600時間以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明のガスタービン材は、前記各形態に記載のNi基合金からなることを特徴とする。
【0015】
本発明のクリープ特性に優れるNi基合金の製造方法は、前記形態の組成のNi基合金を溶体化処理後、1010〜1050℃の温度と760〜790℃の温度で2回時効処理を行い、析出炭化物によって粒界強化されており、合金内の粒界の長さに対して炭化物で被覆された粒界の長さの割合で定義される粒界被覆率が85%以上であり、750℃・333MPaにおける最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下である、クリープ特性に優れるNi基合金を得ることを特徴とする。
【0016】
以下に、本発明で規定した技術的事項の作用および限定理由について説明する。なお、合金組成のうち、P、B、Nの含有量は質量ppmで示し、それ以外の各元素の含有量は質量%で示す。
【0017】
Cr:15.00〜25.00%
Crは合金の耐酸化性、耐食性、強度を高めるために必要な元素である。また、Cと結合して炭化物を生成し高温強度を高める。しかし、含有量が多すぎるとマトリクスの不安定化を招き、σ相やα−Crなどの有害なTCP相の生成を助長して延性や靭性に悪影響をもたらす。したがって、Crの含有量は15.00〜25.00%に限定する。
なお、同様の理由で、Cr含有量の下限を18.00%、上限を22.00%とするのが望ましい。
【0018】
Co:5.00〜15.00%
CoはAl、Ti、Nb、Wといった合金元素の分配係数を1に近づけて合金の偏析性を改善する元素である。Coを5.00%以上含まないと上記の効果が十分得られず、15.00%を超えると鍛造性を悪化させるだけでなく、ラーベス相を生成しやすくなるため、高温でのマトリクスの組織を却って不安定にするとともに高温組織安定性を悪化させる。したがってCoの含有量は5.00〜15.00%の範囲に限定する。
なお、同様の理由で、Co含有量の下限を8.00%、上限を12.00%とするのが望ましい。
【0019】
Mo:1.00%〜12.00%
Moは主にマトリクスに固溶してこれを強化するとともに、γ’相に固溶して同相のAlサイトに置換することにより同相の安定性を高めるので、高温強度と組織安定性をともに高めるのに有効である。Mo含有量が1.0%未満では上記効果が不十分であり、12%以上になるとラーベス相を生成しやすくなるため、高温でのマトリクスの組織を却って不安定にするとともに高温組織安定性を悪化させる。したがって、Moの含有量は1.0〜12.00%未満の範囲に限定する。
なお、同様の理由で、Mo含有量の下限を5.00%、上限を10.00%とするのが望ましい。
【0020】
Ti:1.50〜2.50%
Tiは主にMC炭化物を形成して合金の結晶粒粗大化を抑制するとともに、Niと結合してγ’相を析出させ、合金の析出強化に寄与する。しかし過度に含有させると高温でのγ’相の安定性を低下させ、さらにη相を生成し強度や延性、靭性、高温長時間での組織安定性を損ねる。したがって、Tiの含有量は1.50〜2.50%の範囲に限定する。
なお、同様の理由で、Ti含有量の下限を1.80%、上限を2.20%とするのが望ましい。
【0021】
Al:1.00〜2.00%
AlはNiと結合してγ’相を析出させ、合金の析出強化に寄与する。しかし含有量が多すぎるとγ’相が粒界に凝集して粗大化し、高温での機械的特性を著しく損ねるほか、熱間加工性も低下させる。従って、Al含有量は1.00〜2.00%に限定する。
なお、同様の理由で、Al含有量の下限を1.30%、上限を1.70%とするのが望ましい。
【0022】
Nb:0.20〜1.00%
Nbはγ´相を安定化させ強度増大に寄与する元素であるが、過剰に含有させると有害相であるη相、δ相およびLaves相の析出が助長され、組織安定性が著しく低下する。したがって、Nbの含有量は0.20〜1.00%に限定する。同様の理由で下限は0.30%、上限は0.70%とすることが望ましい。
【0023】
P:10〜200ppm
Pは粒界炭化物を増加させる効果があると考えられる。粒界炭化物を析出させ最小クリープ速度を小さくする効果等を得るには、炭化物による粒界被覆率が80%以上必要であり、そのためには10ppm以上のP含有量が必要である。しかし、過剰に含有させるとPの粒界偏析が過多となり粒界の整合性を低下させ、延性低下などを引き起こす可能性がある。したがって、Pの含有量の上限は200ppmに限定する。
なお、同様の理由で、P含有量の下限を20ppm、上限を150ppmとするのが望ましい。
【0024】
C:0.0010〜0.10%
Cは炭化物を形成して合金の結晶粒粗大化を抑制し、粒界に析出して高温強度を向上させる添加元素であるが、含有量が少ないと強度の向上に十分な効果がないため少なくとも0.0010%以上の含有が必要である。しかし、含有量が多すぎると過剰な炭化物が形成されてγ´相など他の有用な析出量が減少するなど悪影響が懸念されるので、上限は0.10%とする。なお、同様の理由により下限を0.010%、上限を0.070%とするのが望ましい。
【0025】
B:30〜250ppm
Bは粒界に偏析して高温特性に寄与するので所望により含有させる。但し、多過ぎる含有は硼化物を形成し易くなり、逆に粒界脆化を招く。したがって、所望により含有させるBの含有量は250ppm以下とする。なお、上記作用を十分に得るためには、30ppm以上含有するのが望ましく、また上記と同様の理由により、さらに下限を40ppm、上限を200ppmとするのが望ましい。
【0026】
N:30〜200ppm
Nは粒界に窒化物を形成してクリープ強度を向上させると考えられるが、含有量が少ないと十分な効果が得られないため少なくとも30ppm以上の含有量が必要である。しかし、含有量が多すぎると過剰の窒化物が生成し延性低下を招くため、上限を200ppmとする。同様の理由により、下限を40ppm、上限を150ppmとすることが望ましい。
【0027】
クリープ破断時間:750℃・333MPaにおけるクリープ破断時間が600時間以上
最小クリープ速度:1.5×10−5−1以下
上記数値を満たすことで、非常に優れたクリープ特性を示す。
【0028】
(製造条件)
上記組成のNi基合金に対し、溶体化処理後、1010〜1050℃の温度と760〜790℃の温度で2回時効処理を行うことにより、炭化物による粒界被覆率が85%以上で、クリープ特性に優れるNi基合金が得られる。
なお。溶体化処理は、処理が行われる合金の組成によっても異なるが、例えば1080〜1100℃の温度で処理を行うことができる。この範囲であれば結晶粒が粗大化せずJIS G0551に準拠した結晶粒度が5程度の整細粒となる。
時効処理では、第1回目で温度が1010℃未満で、あるいは、1050℃を超えると、γ´相が十分成長できず上記の強度を確保することができない。第2回目で温度が760℃未満であると、M23型の炭化物が過剰に析出し、790℃を超えると、MC型炭化物が粗大化することによって、いずれも高温延性の低下など悪影響をもたらすおそれがあるため、上記時効における温度が望ましい。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、従来と同様の熱処理によっても容易に粒界に析出し、かつ粒界被覆率を高められる析出物が得られ、炭化物を適切な粒界被覆率となるように粒界に析出させ、最小クリープ速度が小さく、クリープ破断時間が長いNi基合金を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例における発明合金と比較合金のクリープ破断時間とP含有量の関係を示したものである。
図2】同じく、発明合金と比較合金の最小クリープ速度とP含有量の関係を示したものである。
図3】同じく、発明合金と比較合金の粒界近傍のFE−SEM画像による図面代用写真である。
図4】同じく、発明合金と比較合金の粒界被覆率とP含有量の関係を示したものである。
図5】同じく、発明合金と比較合金の粒界被覆率とクリープ破断時間および最小クリープ速度の関係を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
本発明のNi基合金は、質量%で、Cr:19〜21%、Co:9〜11%、Mo:1〜10%、Ti:1.8〜2.2%、Al:1.1〜1.5%、Nb:0.3〜0.7%、C:0.04〜0.08%、P:30〜140ppm、B:30〜70ppm、N:40〜80ppmを含有し、残部がNiおよび不可避不純物からなる組成に調製する。
【0032】
本発明のNi基合金は、常法により溶製することができ、本発明としては溶製の方法が特に限定されるものではない。
該Ni基合金は、溶製後、溶体化処理、時効処理を行う。
溶体化は、例えば1080〜1100℃で、5〜8時間の条件で行うことができる。
また、時効処理は、2段で行う処理が望ましく、1段目で1010〜1050℃の温度で20〜24時間、2段目で760〜790℃の温度で8〜12時間で行うことができる。1段目の時効後、一度冷材まで空冷して2段目の時効温度に昇温することを推奨する。
【0033】
また、Ni基合金は所望により鍛造等の加工を行うことができる。加工における条件は、本願発明は特に限定されるものではない。
【0034】
製造されたNi基合金は、析出炭化物によって粒界強化されており、合金内の粒界の長さに対して炭化物で被覆された粒界の長さの割合で定義される粒界被覆率が85%以上である。
750℃・333MPaにおけるクリープ破断時間が600時間以上であり、750℃・333MPaにおける最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下である特性を有しており、クリープ特性に優れている。
【0035】
この実施形態による主たる効果として、750℃において最小クリープ速度が小さく、クリープ破断時間が長いNi基合金を提供することが可能となる。さらに従たる効果として、該発明合金をガスタービン等の高温機器の部材として適用することにより、機器の寿命延伸や信頼性の向上が図れるものと期待される。
【実施例1】
【0036】
以下に、本発明の実施例を図表に基づき説明する。
素材は真空誘導溶解法で溶製した50kg丸型インゴットであり、発明合金3種と比較合金3種を溶製した。これらの素材を鍛造比3.0により鍛造して板とした。
表1に発明材と比較材の化学成分(その他残部、不可避不純物)を示す。なお、成分中、P、B、Nは質量ppmで示し、その他の成分は質量%で示している。
【0037】
【表1】
【0038】
鍛造板を適当な大きさに切り出し、1100℃×5時間の溶体化処理と、1050℃×24時間および790℃×8時間の2段時効を行い試験材とした。続いて試験材を機械加工し、クリープ試験片とした。
【0039】
クリープ特性はクリープレート試験を行って評価した。試験温度は750℃とし、試験応力は333MPaとした。得られたクリープ速度−時間曲線から最小クリープ速度と破断時間を求めた。
【0040】
組織観察は電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて行い、各試料につき倍率3000倍で10視野程度撮影し、それぞれの視野内の全粒界長さに対して析出物で被覆された粒界長さの比を求め、これを平均して粒界被覆率とした。
【0041】
表2に各試験材の粒界被覆率、クリープ破断時間および最小クリープ速度を示す。
図1図2にそれぞれ各試験材のクリープ破断時間と最小クリープ速度のP含有量依存性を示す。同図より、発明合金1〜3は、比較合金1よりもクリープ破断時間は長く、最小クリープ速度は小さくなることが判った。
図3にFE−SEMで観察した各試験材の粒界近傍の写真を示す。各試験材ともに粒界に炭化物が認められた。
図4にP含有量と粒界被覆率との関係を示す。粒界被覆率はP含有量が増えるのに伴い増加し、P含有量が32ppmにおいて約96%の極大値を示した後は、P含有量に関わらず約88%で一定となった。
図5に粒界被覆率と最小クリープ速度およびクリープ破断時間の関係を示す。粒界被覆率と最小クリープ速度およびクリープ破断時間の間には良い相関が認められ、粒界被覆率が85%以上ではクリープ破断時間が600時間以上かつ最小クリープ速度が1.5×10−5−1以下のクリープ特性を得られることが判った。
【0042】
【表2】
図1
図2
図3
図4
図5