特許第6842321号(P6842321)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842321
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】ビタミンD受容体活性化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/752 20060101AFI20210308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210308BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20210308BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20210308BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20210308BHJP
   A61K 131/00 20060101ALN20210308BHJP
【FI】
   A61K36/752
   A61P43/00 111
   A61P17/16
   A61K8/9789
   A61Q17/04
   A61K131:00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-32212(P2017-32212)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135309(P2018-135309A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(72)【発明者】
【氏名】萬治 愛子
(72)【発明者】
【氏名】古元 香津代
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/752
A61K 8/9789
A61P 17/16
A61P 43/00
A61Q 17/04
A61K 131/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/NAPRALERT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンダリンオレンジ果皮エキス又はグレープフルーツ果実エキスから選択される1以上を含有するビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用組成物 。
【請求項2】
タミンDレセプター(VDR)が皮膚細胞のレセプターである請求項1に記載のビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用組成物を含むビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用の皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載のビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用組成物を含むビタミンDレセプター(VDR)遺伝子の発現増幅用の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビタミンD受容体活性化用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、脂溶性ビタミンの一種であり、主な生理作用として小腸、腎臓、骨におけるカルシウム代謝調節が知られている。皮膚においてもビタミンDは表皮細胞の分化促進、増殖抑制とバリア機能に重要な役割を担っている。細胞内に取り込まれたビタミンDはビタミンD受容体(以下「VDR」)と結合し、標的遺伝子の転写活性を引き起こす。VDRは、リガンド誘導型の転写制御因子として働き、リガンドと結合したVDRは、レチノイドXレセプターとヘテロダイマーを形成し、DNA上のVDR認識配列と作用することにより、遺伝子発現を転写レベルで制御している。
【0003】
VDRは核内受容体スーパーファミリーの一員であり、ヒトのVDRは427個のアミノ酸からなる分子量50kDaのタンパク質として公知である。
VDRに活性型ビタミンDが結合すると、9−シス−レチノイン酸が結合したレチノイドX受容体(RXR)とヘテロダイマー(ヘテロ二量体)を形成し、ビタミンD標的遺伝子のプロモーター上流に存在する特異的エンハンサー配列であるビタミンD応答配列(vitamin D response element:VDRE)に結合する。
リガンドが結合して核内受容体の構造が変化するとコアクチベーター(転写共役活性化因子)が結合できるようになり、転写を促進できるようになる。
活性型ビタミンD3(1α,25(OH)2ビタミンD3:Calcitriol)と結合したVDRは9−シス−レチノイン酸に結合したレチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成してビタミンD標的遺伝子の上流にあるビタミンD応答配列に結合する。このヘテロ二量体に転写共役活性化因子(コアクチベーター)などの多くのタンパク質が結合して転写活性が亢進する。
ビタミンD受容体の活性化による増殖抑制には、細胞周期のG0/G1停止とアポトーシスが関与し、細胞分化も増殖抑制に伴って誘導されると考えられている。
【0004】
このようなVDRと細胞周期の関係性が明らかになるにつれVDRの活性化や抑制、及びその利用について種々の提案がなされるようになった。
特許文献1には、育毛剤や除毛剤のスクリーニングのため、毛包形成・毛幹形成への関与遺伝子を探索し、その結果、成長期毛包における発現が休止期毛包に比べ5倍以上亢進している遺伝子としてVDR受容体遺伝子を挙げ、これを活性化する物質を探索することが提案されている。
特許文献2には、心臓血管系、免疫系、腎臓系、又は骨格系のような生理系を標的とする、それらに関連した疾患を治療するための新たなビタミンD受容体アゴニストとなる新たな構造を有する化合物が提案されている。
特許文献3には、エイジツエキス、ユキノシタエキス、レイシエキス、ノバラ油、マジョラムエキス、紫根エキスから選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とするVDR活性化剤が提案されている。
特許文献4には、VDR活性化剤が肺腺癌細胞に対する有効性物質であること、このVDR活性化作用を評価するため、肺腺癌細胞におけるTTF−1の発現量又は遺伝子増幅を調べることが有用であることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−304491号公報
【特許文献2】特表2012−524091号公報
【特許文献3】特開2015−202066号公報
【特許文献4】特開2008−263837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、皮膚に対する紫外線や活性酸素の影響を検討する過程で、これらの物理的、化学的刺激が皮膚細胞のVDRの活性を低下させる現象を知見した。そしてこの低下したVDR活性を回復させ、さらに活性化する物質として種々の物質のスクリーニングを行い複数のVDR活性化作用を有する物質を見いだした。
すなわち、本発明は新たなVDR活性化作用を有する組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の構成からなる。
(1)柑橘類抽出物、キウイ抽出物、クチナシ抽出物から選択される1以上の物質を含有するビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(2)柑橘類抽出物がグレープフルーツ、マンダリンオレンジ、ユズ、シークワーサーのいずれかである(1)に記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(3)活性化されるビタミンDレセプター(VDR)が皮膚細胞に発現しているレセプターである(1)又は(2)に記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(4)抽出物が果実又は果皮抽出物である(1)〜(3)のいずれかに記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(5)抽出物が水又はアルコール抽出物である(1)〜(4)のいずれかに記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(6)アルコールが1,3−ブチレングリコールである(5)に記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物を含むVDR活性化用の皮膚外用剤。
(8)(1)〜(6)のいずれかに記載のビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物を含むVDR活性化用の皮膚化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、あらたなビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物及び皮膚外用剤、皮膚化粧料及び皮膚用医薬部外品が提供される。また、本発明者らの研究により、VDRは夜間に活性化されることが判明した。したがって本発明の組成物の最大効果を発揮させるために、夜間に投与する組成物として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】紫外線が、皮膚細胞のVDR活性を低下させることを試験した結果を示すグラフである。
図2】過酸化水素(活性酸素)が、皮膚細胞のVDR活性を低下させることを試験した結果を示すグラフである。
図3】各種抽出物のVDR活性化を試験した結果を示すグラフである。
図4】紫外線照射によるVDR遺伝子発現の低下をグレープフルーツ抽出物が抑制していることを示すグラフである。
図5】過酸化水素によるVDR遺伝子発現の低下をグレープフルーツ抽出物が抑制していることを示すグラフである。
図6】同調培養したNB1RGB細胞中の時計遺伝子BMAL1、PERIOD2(PER2)の同調後0時間(T0)、18時間(T18)、24時間(T24)、30時間(T30)の変動を示すグラフである。
図7】VDR遺伝子の発現の概日変動を測定した結果を示すグラフである。
図8】HaCaT細胞におけるグレープフルーツ抽出物添加24時間経過後の時計遺伝子BMAL1(左)、PER2(右)の発現量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、柑橘類抽出物、キウイ抽出物、クチナシ抽出物から選択される1以上の物質を含有するビタミンDレセプター(VDR)活性化用組成物に係る発明である。ビタミンDは、ヒトにおいては、皮膚で7−デヒドロコレステロールから光化学的に生成される。したがって皮膚のVDRが活性化されることで、ビタミンDの利用効率が上昇し、ビタミンD欠乏症の予防にも有用である。
柑橘類には、VDR活性化作用があり、なかでもグレープフルーツ、マンダリンオレンジ、ユズ、シークワーサーに強いVDR活性化作用が存在する。
したがって、本発明に使用する柑橘類としては、ミカン科に属する植物の果実又は果皮の抽出物を使用できる。なかでも前記のグレープフルーツ、マンダリンオレンジ、ユズ、シークワーサーの果実又は果皮の抽出物が好ましい。
グレープフルーツは、学名をCitrus paradisiとする、ミカン科ミカン属の柑橘類である。主として亜熱帯を原産とし、日本国内で広く輸入販売されている。
マンダリンオレンジ類は、学名をCitrus reticulataとする、ミカン科ミカン属の柑橘類である。果皮が薄く手でむくことができるのが特徴である。この類にはポンカンやデコポン(シラヌイ)、タンジェリン、ダンシータンジェリン、地中海オレンジなどが含まれる。したがって本発明においては、これらの柑橘の総称としての用語「マンダリンオレンジ」を使用する。
ユズは、学名をCitrus junosとする、ミカン科ミカン属の柑橘類である。ホンユズとも呼ばれる。
シークワーサー(シークワッシャーあるいはシークヮーサーともいう)は、学名をCitrus depressaとする、ミカン科ミカン属の植物であって、琉球諸島及び台湾に自生する柑橘類である。果実は、ヒラミレモンの別名があり、沖縄県全域において広く食されている。
【0011】
さらに、本発明においては、キウイ抽出物及びクチナシ抽出物にもVDR作用を見いだしており、これらの果実も本発明に使用できる。
キウイは、マタタビ科マタタビ属の雌雄異株の落葉蔓性植物の果実であり、マタタビ属のActinidia deliciosaを指して特にキウイフルーツとも呼ぶ。本発明においては、キウイフルーツとして利用されているものであれば、どのような品種であっても良い。
クチナシ(梔子、巵子、支子)は、学名をGardenia jasminoidesとする、アカネ科クチナシ属の常緑低木である。野生では森林の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い。乾燥果実は、生薬・漢方薬の原料(山梔子・梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。
【0012】
本発明のVDR活性化用組成物は、前記の柑橘類の抽出物、またはキウイ抽出物及びクチナシ抽出物のいずれか1以上を有効成分として含有する。
【0013】
柑橘類の果実、キウイ果実、クチナシ果実は、全体であってもよく、その一部であってもよい。果実は、果肉又は果皮であってもよい。さらに、果実は、そのまま原料として用いてもよく、破砕物であってもよい。また、果実の搾汁残渣であってもよい。
【0014】
抽出は、極性の溶媒を使用する。使用可能な極性溶媒として、水、C1−C4のアルコール、例えばエタノール、ブタノール、グリセロール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、が例示できる。好ましくは、1,3−ブチレングリコールである。また、これらの溶媒の混合物であっても良い。特に好ましくは水と1,3−ブチレングリコールの1:1の混合溶媒である。
【0015】
溶媒の温度や原料に対する溶媒の重量比率、又は抽出時間などの抽出方法は、原料及び使用する溶媒に対しそれぞれを任意に設定することができる。溶媒の温度としては−4℃から100℃の範囲で任意に設定できるが、原料中に含まれる成分の安定性の点から、4〜40℃付近が好ましい。又、原料に対する溶媒の重量比率も、例えば原料:溶媒が、4:1〜1:100の範囲内で任意に設定することができ、特に1:1〜1:20の重量比率が好ましい。
【0016】
本発明に用いる各抽出物は、溶媒抽出後、さらに適宜精製操作を施すことも可能であり、精製操作としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)添加による分解、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、イオン交換、親水性吸着、疎水性吸着、サイズ排除、配位子交換、アフィニティー等のクロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた濾過、加圧又は減圧、加温又は冷却、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等が例示でき、これらを任意に選択し組み合わせた処理操作を行うことができる。
1,3−ブチレングリコールを用いた抽出の場合も、抽出液から減圧濃縮などの方法で濃縮した濃縮物を本発明のVDR活性化用組成物とすることができる。
【0017】
本発明のVDR活性化用組成物を皮膚外用剤や皮膚化粧料とすることができる。この場合の形状としては、液状、固形状、粉末状、ペースト状等いずれの形状でも良く、抽出状況にあわせて最適な外用剤及び化粧料としての形状を任意に選択することができる。
【0018】
本発明の組成物を含む外用剤及び化粧料には、抽出物の含有量として、VDR活性化作用を有することが確認できる範囲であれば特に制限はない。製剤として、一般的には製剤重量当たり0.01mg/g〜200mg/gとなるように配合する。
これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。医薬あるいは化粧料用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水、油脂等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
【実施例】
【0019】
以下に、試験例、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
1.試験例1(ヒト表皮角化細胞株を用いた外部刺激によるVDR活性影響試験)
1)細胞培養
ヒト成人男性皮膚から樹立された不死化角化細胞(ケラチノサイト)株であるHaCaT細胞(Deutsches Krebsforschungszentrumより購入)を35mmディッシュに1.6×10cellsの細胞密度で播種し、2日間前培養した。
細胞は37℃、5%二酸化炭素、95%空気雰囲気下にて培養を行った。培地は不活性化したウシ胎児血清(FBS)(Hyclone Laboratories)10%、Penicillin−Streptomycin(Sigma Aldrich)1%を添加した培地DMEM(Life Technologies)を用いた。
なお、通常培養には、100mmディッシュに細胞を播種し80〜90 %コンフルエント時に0.05%Trypsin−EDTA(Sigma Aldrich)にて剥離し継代を行った細胞を用いた。
【0020】
2)紫外線又は活性酸素刺激
前記培養後、外部刺激として紫外線(UVB 10mJ/cm)照射、もしくは過酸化水素5mM添加し1時間処理を行った。細胞はD−PBSにて洗浄の後TRIzol Reagent(Life Technologies)にて細胞を溶解し回収した。なお過酸化水素は、活性酸素を発生するため、この試験では細胞に対する活性酸素の影響を知ることができる。
【0021】
3)RNA抽出
回収した細胞溶液は抽出まで−80℃にて保存した。total RNAの抽出はTRIzol Reagentのプロトコルに準じて行った。
【0022】
4)cDNA合成
cDNAの合成はPrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。
5×PrimeScript RT Master mix:total RNA (250ng):RNase−free水を1:1:3の割合で混合し、サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて逆転写(37℃ 15分)、逆転写酵素の熱失活(85℃ 5秒)を行い合成した。合成したcDNAは−20℃にて保存した。
【0023】
5)VDR活性の測定
VDR遺伝子の増幅発現を指標としてVDR活性を測定した。
PCR反応はLightCycler 480 System(Roche Diagnostics)を用いて行った。
プライマーはPrimer−BLASTを用いて設計し、eurofins Genomicsより購入した。
PCR Forward Primer: GCTTGTCAAAAGGCGGCAG
PCR Reverse Primer: ACCCAAAGGCTTCTGGTCC
増幅反応はSYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。すなわち、SYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(2X)にPCR Forward Primer(0.4mM)、PCR Reverse Primer(0.4mM)、およびcDNAを混合し、RNase−free水を加え調整した。PCR反応は初期変性95℃、PCR反応(95℃ 5秒、60℃ 30秒、40サイクル)、融解曲線分析(95℃ 5秒、60℃ 1分)を行い後冷却(50℃ 30秒)した。増幅効率は、比較Ct法(ΔΔCt法)を用いて算出した。なお試験結果は、controlに対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を用いて行った。有意水準はp<0.05とした。
【0024】
6)結果
図1に紫外線によるVDR活性への影響試験結果を、図2に過酸化水素水添加によるVDR活性への影響試験結果を示した。
この試験結果から、紫外線及び活性酸素(過酸化水素)によって皮膚角層のVDR活性が抑制されることが明らかとなった。すなわち、皮膚は日常的に紫外線や活性酸素に曝露しているため、当然皮膚細胞に発現するVDR活性は低下するものと予想された。
【0025】
2.試験例2(VDR活性化作用を有する物質の探索試験)
市販されている各種の抽出エキスのVDR活性化作用を試験した。
(1)試験試料
次の11種の植物抽出エキスを試験試料とした。
1.摘果グレープフルーツ/テクノーブル:グレープフルーツ果実エキス
(グレープフルーツ)
2.セイヨウサンザシB/一丸ファルコス:セイヨウサンザシ果実エキス
(セイヨウサンザシ)
3.テンニンカ果実抽出液BG80/丸善製薬:テンニンカ果実エキス(テンニンカ)
4.ファルコレックス キウイB/一丸ファルコス:キウイエキス(キウイ)
5.キュアパッション/一丸ファルコス:クダモノトケイソウ果実エキス
(パッションフルーツ)
6.タイソウリキッドB/一丸ファルコス:ナツメ果実エキス(タイソウ)
7.ガデニールイエローNE/一丸ファルコス:クチナシ果実エキス(クチナシ)
8.ファルコレックス ノバラB/一丸ファルコス:カニナバラ果実エキス
(カニナバラ)
9.ユズセラミドB/一丸ファルコス:ユズ果実エキス(ユズ)
10.マンダリンクリア/一丸ファルコス:マンダリンオレンジ果皮エキス(オレンジ)
11.シークワーサーエキスBG/日油:シイクワシャー果皮エキス(シークワーサー)
なお記載は、商品名/販売者:原料部位(植物名)の順。
【0026】
(2)試験方法
試験例1と同様の条件で実施した。
1)細胞培養
ヒト成人男性皮膚から樹立された不死化角化細胞(ケラチノサイト)株であるHaCaT細胞(Deutsches Krebsforschungszentrumより購入)を35mmディッシュに1.6×10cellsの細胞密度で播種し、2日間前培養した。
細胞は37℃、5%二酸化炭素、95%空気雰囲気下にて培養を行った。培地は不活性化したウシ胎児血清(FBS)(Hyclone Laboratories)10%、Penicillin−Streptomycin(Sigma Aldrich)1%を添加した培地DMEM(Life Technologies)を用いた。
なお、通常培養には、100mmディッシュに細胞を播種し80〜90%コンフルエント時に0.05%Trypsin−EDTA(Sigma Aldrich)にて剥離し継代を行った細胞を用いた。
【0027】
2)試験試料の添加
その後、各試験試料を1質量%になるように添加し、24時間培養した。細胞はD−PBSにて洗浄の後TRIzol Reagent(Life Technologies)にて細胞を溶解し回収した。
【0028】
3)RNA抽出
回収した細胞溶液は抽出まで−80℃にて保存した。total RNAの抽出はTRIzol Reagentのプロトコルに準じて行った。
【0029】
4)cDNA合成
cDNAの合成はPrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。
5×PrimeScript RT Master mix:total RNA(250ng):RNase−free水を1:1:3の割合で混合し、サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて逆転写(37℃ 15分)、逆転写酵素の熱失活(85℃ 5秒)を行い合成した。合成したcDNAは−20℃にて保存した。
【0030】
5)VDR活性の測定
VDR遺伝子の増幅発現を指標としてVDR活性を測定した。
PCR反応はLightCycler 480 System(Roche Diagnostics)を用いて行った。
プライマーはPrimer−BLASTを用いて設計し、eurofins Genomicsより購入した。
用いたプライマーの配列は試験例1と同様とした。
増幅反応はSYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。すなわち、SYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(2X)にPCR Forward Primer (0.4mM)、PCR Reverse Primer(0.4mM)、およびcDNAを混合し、RNase−free水を加え調整した。PCR反応は初期変性95℃、PCR反応(95℃ 5秒、60℃ 30秒、40サイクル)、融解曲線分析(95℃ 5秒、60℃ 1分)を行い後冷却(50℃ 30秒)した。増幅効率は、比較Ct法(ΔΔCt法)を用いて算出した。なお試験結果は、controlに対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を用いて行った。有意水準はp<0.05とした。
【0031】
6)結果
図3にVDR活性化を測定した結果を示す。なお測定結果は、試験試料無添加のHaCaT細胞のVDR活性を1とする相対値で示す。
試験に用いた試料のなかで、柑橘類抽出物は全てVDR活性を上昇させた。またキウイ抽出物、クチナシ抽出物も高値を示した。柑橘類ではオレンジ抽出物及びグレープフルーツ抽出物が高値を示した。これらの抽出物は、紫外線や活性酸素によって低下したVDRを活性化するのに有用である。
【0032】
3.試験例3(グレープフルーツ抽出物が紫外線及び過酸化水素によるVDR発現低下作用を抑制する効果を有することを確認した試験)
(1)試験方法
試験例1と同様に、35mmディッシュに、HaCaT細胞を1.6×10cellsの細胞密度で播種した。1日間前培養の後、試験例で陽性となったグレープフルーツエキスを1%濃度で添加し、24時間培養を行った。
培養終了後、細胞をD−PBSで洗浄し、紫外線(UVB 10mJ/cm)照射し、グレープフルーツ未添加の培地にて24時間培養を行った。
また、対照として前培養の後、細胞をD−PBSで洗浄し、グレープフルーツ未添加の培地にて過酸化水素を5mM添加し1時間処理を行った。
各処理後の細胞は、D−PBSにて洗浄の後TRIzol Reagent(Life Technologies)にて細胞を溶解した。回収した細胞溶液は、抽出まで−80℃にて保存した。試験例1と同様にtotal RNAを抽出し、cDNAを合成し、さらにVDRの遺伝子発現を検出した。
【0033】
(2)結果
1)紫外線に対する効果
紫外線によるVDR発現低下に対する効果試験結果を図4に示す。40〜50%コンフルエント状態の表皮角化細胞において、グレープフルーツ抽出物を24時間前処理した細胞と、グレープフルーツ抽出物無処理の細胞とを比較した。UVB 10mJ/cm2照射24時間後に、無処理の細胞は有意にVDRの発現低下を示した。一方、グレープフルーツ前処理した細胞は、紫外線によるVDRの発現低下を抑制することができた。
【0034】
2)過酸化水素(活性酸素)に対する効果
過酸化水素によるVDR発現低下に対する効果試験結果を図5に示す。紫外線に対する試験と同様に、40〜50%コンフルエント状態の表皮角化細胞において、グレープフルーツ抽出物を24時間前処理した細胞と、グレープフルーツ抽出物無処理の細胞とを比較した。過酸化水素5mM添加1時間後に、無処理の細胞は、有意にVDRの発現低下を示した。一方、グレープフルーツ前処理した細胞は、過酸化水素によるVDRの発現低下を抑制することができた。
【0035】
4.試験例4(VDR遺伝子が概日リズムを持つ遺伝子であることの確認試験)
VDR遺伝子が概日リズムを持つ遺伝子であることを明らかにした。
1)試験対象細胞及び細胞培養
ヒト新生児由来線維芽細胞株であるNB1RGB細胞(理化学研究所バイオリソースセンターより購入)を35mmディッシュに1.6×10cellsの細胞密度で播種し、2日間前培養した。
細胞は37℃、5%二酸化炭素、95%空気雰囲気下にて培養を行った。培地は不活性化したウシ胎児血清(FBS)(Hyclone Laboratories)10%、Penicillin−Streptomycin(Sigma Aldrich)1%を添加した培地MEM α,Nucleosides(Life Technologies)を用いた。
なお、通常培養には、100mmディッシュに細胞を播種し80〜90%コンフルエント時に0.05%Trypsin−EDTA(Sigma Aldrich)にて剥離し継代を行った細胞を用いた。
【0036】
2)細胞の同調培養
35mmディッシュにNB1RGBを1×10cellsになるように播種し、3日間前培養を行った。そして、MEM αに100nM Dexamethasone(Sigma Aldrich)を添加した培地にて2時間培養した。その後、再度100nM Dexamethasone未添加のMEM αに培地を交換し、所定の時間培養を行い、NB1RGB細胞を同調させた。
【0037】
3)時計遺伝子のリズム確認
時計遺伝子BMAL1、PER2を指標に、VDR遺伝子が概日リズムを有している細胞であることを確認した。同調後0時間(T0)、18時間(T18)、24時間(T24)、30時間(T30)において細胞を回収し、試験例1、2と同様にしてRNAを回収した。このRNAを用いて、BMAL1、PER2遺伝子発現の変動を指標としてリズムの確認を行った。
【0038】
4)RNA抽出
回収した細胞溶液は抽出まで−80℃にて保存した。total RNAの抽出はTRIzol Reagentのプロトコルに準じて行った。
【0039】
5)cDNA合成
cDNAの合成はPrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。
5×PrimeScript RT Master mix:total RNA(250ng):RNase−free水を1:1:3の割合で混合し、サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて逆転写(37℃ 15分)、逆転写酵素の熱失活(85℃ 5秒)を行い合成した。合成したcDNAは−20℃にて保存した。
【0040】
6)時計遺伝子BMAL1、PER2活性の測定
BMAL1、PER2遺伝子の増幅発現を指標としてBMAL1、PER2活性を測定した。
PCR反応はLightCycler 480 System(Roche Diagnostics)を用いて行った。
プライマーはPrimer−BLASTを用いて設計し、eurofins Genomicsより購入した。
用いたプライマーの配列は以下の通りである。
(BMAL1)PCR Forward Primer: GAGGTGACCAAGTCCAGAG
PCR Reverse Primer: GGGACATGAAATCACTGATGG
(PER2)PCR Forward Primer: GACATGAGACCAACGAAAACTGC
PCR Reverse Primer: AGGCTAAAGGTATCTGGACTCTG
増幅反応はSYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。すなわち、SYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(2X)にPCR Forward Primer(0.4mM)、PCR Reverse Primer(0.4mM)、およびcDNAを混合し、RNase−free水を加え調整した。PCR反応は初期変性95℃、PCR反応(95℃ 5秒、60℃ 30秒、40サイクル)、融解曲線分析(95℃ 5秒、60℃ 1分)を行い後冷却(50℃ 30秒)した。増幅効率は、比較Ct法(ΔΔCt法)を用いて算出した。なお試験結果は、controlに対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を用いて行った。有意水準はp<0.05とした。
測定結果を図6に示す。24時間サイクルで変動していることが確認された。したがってNB1RGB細胞は、時計遺伝子の制御下で、概日リズムを持って生育活動しているものと判断した。
【0041】
7)DNAマイクロアレイ
同調後0時間(T0)、18時間(T18)、24時間(T24)、30時間(T30)において回収したtotal RNA(n=4)をWhole Human Genome Ver.2 4×44K(Agilent Technologies)を用い、アジレント遺伝子発現マイクロアレイ1色法プロトコル ver.6.9(Agilent Technologies)に準じて行った。
【0042】
8)網羅的遺伝子発現解析
スキャンされたマイクロアレイの生データはGeneSpring GX ver.14.5(Agilent Technologies)にインポートし、Percentile Shift 75%で正規化、T0の中央値をベースラインになるように補正を行った。また、解析にはT18対T24、T24対T30が1.5倍以上変化する遺伝子を抽出した。
【0043】
9)概日リズムを持つ遺伝子の抽出
時計遺伝子と同調する概日リズムを持つ遺伝子を同定するために、Whole Human Genome Ver.2 4×44K(Agilent Technologies)を用いて概日リズムを持つ遺伝子のスクリーニングを行った。その結果、時計遺伝子BMAL1と同様の変動を示す遺伝子(T18対T24が1.5倍減少、T24対T30が1.5倍増加)5041遺伝子、PER2と同様の変動を示す遺伝子(T18対T24が1.5倍増加、T24対T30が1.5倍減少)173遺伝子を同定した。
【0044】
変動数の多い、BMAL1様変動を示す遺伝子について、GeneSpring GX ver.14.5(Agilent Technologies)を用いてpathway解析を行った。有意水準p<0.05とし、有意に相同性を示したpathway解析結果を下記の表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
VDR遺伝子は、概日リズムを有する遺伝子であることが確認できた。
【0047】
10)VDR遺伝子の発現リズム
VDR遺伝子の発現変動を指標としてVDRの発現リズムを確認した。
11)RNA抽出
回収した細胞溶液は抽出まで−80℃にて保存した。total RNAの抽出はTRIzol Reagentのプロトコルに準じて行った。
【0048】
12)cDNA合成
cDNAの合成はPrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。
5×PrimeScript RT Master mix:total RNA(250ng):RNase−free水を1:1:3の割合で混合し、サーマルサイクラー(MJ Research)を用いて逆転写(37℃ 15分)、逆転写酵素の熱失活(85℃ 5秒)を行い合成した。合成したcDNAは−20℃にて保存した。
【0049】
13)VDR活性の測定
VDR遺伝子の増幅発現を指標としてVDR活性を測定した。
PCR反応はLightCycler 480 System(Roche Diagnostics)を用いて行った。
プライマーはPrimer−BLASTを用いて設計し、eurofins Genomicsより購入した。
用いたプライマーの配列は試験例1と同様とした。
増幅反応はSYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(TaKaRa)を用い、プロトコルに準じて行った。すなわち、SYBR Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(2X)にPCR Forward Primer(0.4mM)、PCR Reverse Primer(0.4mM)、およびcDNAを混合し、RNase−free水を加え調整した。PCR反応は初期変性95℃、PCR反応(95℃ 5秒、60℃ 30秒、40サイクル)、融解曲線分析(95℃ 5秒、60℃ 1分)を行い後冷却(50℃ 30秒)した。増幅効率は、比較Ct法(ΔΔCt法)を用いて算出した。なお試験結果は、controlに対する分散性をF検定にて確認後、等分散性と仮定できる場合Student’sのt検定、仮定できない場合にはWelchのt検定を用いて行った。有意水準はp<0.05とした。
測定結果を図7に示す。
VDRは18〜24時に低下し、その後上昇するという周期を持っている。したがってVDR活性化用組成物は、この遺伝子のリズムに合わせて、活性が低下したとき投与すれば効果的であることが判明した。
【0050】
5.試験例5(グレープフルーツ抽出物が概日リズム遺伝子を活性化することの確認試験)
1)試験方法
試験例1と同様に、35mmディッシュにHaCaT細胞を1.6×10cellsの細胞密度で播種した。2日間前培養の後、グレープフルーツエキス1%を添加し、24時間培養した。細胞はD−PBSにて洗浄の後TRIzol Reagent(Life Technologies)にて細胞を溶解し細胞溶解液を回収した。試験例4に記載した手法で、時計遺伝子BMAL1、PER2の発現量を測定した。
【0051】
2)結果
時計遺伝子BMAL1、PER2の24時間経過後の発現量を図8に示す。グレープフルーツ抽出物の添加によりBMAL1は有意な発現亢進を示した。しかし、PER2は発現変動を示さなかった。
このBMAL1の結果は、試験例4で示すように、時計遺伝子様変動遺伝子であるVDRの低下がグレープフルーツ抽出物の添加によって活性化され、これに伴って生体リズムを制御するBMAL1遺伝子が活性化されるためと考えられる。一方PER2は試験例4に示すように24時間目には亢進しており、グレープフルーツ抽出物による作用は影響しなかったものと考えられる。
すなわちグレープフルーツ抽出物は、VDR遺伝子を活性化させ、これに伴ってBMAL1遺伝子に作用を及ぼすものと考えられた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8