【文献】
太田雄介、外,「高熱伝導性グラファイトシートの特性と応用」,MATERIAL STAGE,日本,2011年 7月10日,Vol.11, No.4,P.57-61
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両用ライトは、光源としてLEDが使用されるようになり、より高出力型化が進むにつれて光源の発熱量も大きくなってきている。筐体内の光源で発生する熱を放熱する手段として、筐体外に設置されるヒートシンクにヒートパイプのような熱伝導部材を通じて光源からの熱を外部に放熱する方法が知られている。車両用ライトは、筐体の内側に光源が配置されており、熱が筐体内に籠りやすい構造となっているので、これに用いられる放熱部材は高い放熱能力を備えることが必要である。しかも、車両用ライトは、車輛の走行中、常に振動が与えられる環境に置かれるため、その放熱部材は、長時間走行時の振動にも耐えうる、振動に強いものであることが望まれる。このような耐振動性を有する放熱部材を車両用ライトに使用することによって、LEDの寿命を長くすることができる。
【0003】
特許文献1には、LEDランプユニットと、これと熱的に接続される熱伝導性材料からなる放熱部材とを含んでいる車両用ライトが開示され、ランプユニット支持体を通じて放熱部材に熱を伝導する構造が開示される。また、放熱部材としてグラファイトを含有した樹脂が例示されている。放熱部材を中空構造にすることによって空冷し、十分な放熱性能を確保することが開示されている。また、特許文献2には、車両用ライトの光軸の角度調整を容易にする方法として、熱伝導部材をフレキシブルな材料にすることが開示されており、その一例としてグラファイトシートが挙げられている。
【0004】
一方、ヘッドランプ用樹脂製リフレクターとして、プラスチックもしくは強化プラスチックを素材として成形した基体に可とう性黒鉛シートを貼り付け、さらにベースコート、トップコートを施したものが特許文献3に開示され、可とう性黒鉛シートの密度が0.7乃至1.9g/cm
3であると記載されている。特許文献3は、リフレクターの温度分布を均一にすることを目的としており、上記のごとく黒鉛シートの密度を規定した理由は取り扱い性や生産性を考慮してのことである。また、密度が大きい黒鉛シートは生産性が困難であると記載されている。
【0005】
また、航空機、ロケット、人工衛星等の航空宇宙分野に使用される機器は、電子化が進み、地上との通信も年々増加している。その結果、電子機器の発熱量は増加し、発熱源を冷却するために、ヒートシンクやヒートパイプのような熱伝導部材が用いられてきた。しかし、航空宇宙分野に使用される機器は、離着陸時に、非常に強い衝撃や振動を受ける。そのため、この分野でも、振動に強い熱伝導部材が望まれている。
【0006】
さらに、近年サーバーやスーパーコンピュータは、インターネット、IoTの普及により、年々、処理能力が増加し、発熱量も増加している。これら機器には冷却のためにファンが用いられるが、強制ファンを使用することで機器の振動が増加している。このため、これらの機器においても、振動に強い熱伝導部材が望まれている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
(本発明の放熱体)
本発明の放熱体は、発熱体が発する熱を放熱するために用いられる放熱体であり、グラファイトシートを含む材料から構成され、かつ、当該材料の密度が1.5g/cm
3以上となっている。
【0025】
従来のグラファイトシートを含む放熱体は、長時間継続的に振動を受ける用途及び強い振動を受ける用途において使用すると、放熱特性が低下してしまう問題があった。従来の放熱体を例えば車両用ライトに使用すると、長時間の走行後に、その放熱特性の低下によりLEDなどの光源の寿命が短くなり、信頼性が劣るという問題があった。本発明者らはこの課題を解決すべく、放熱材の材質に着目し検討を行った。その結果、放熱材の材質によっては、長時間の走行により与えられた振動により放熱材が劣化し、放熱特性が低下することがわかった。そこで、放熱材を、少なくともグラファイトシートを含む材料から構成したうえで、当該材料として密度の大きいものを選択したところ、長時間の振動を与えた後であっても、放熱特性の低下が抑制されること、及び、そのような放熱材を車両用ライトに用いた場合には、長時間の振動を与えた後でも、光源の温度が上昇しにくいことがわかった。
【0026】
当業者であれば、グラファイトシートとして密度の小さいものを使用したほうが、柔軟性に優れ、衝撃にも耐えうると考えるところ、本発明者らがさまざまな密度のシート材料を作成し、これに促進試験により振動を与えた後、LEDと接続させてその温度を確認してみたところ、それとは逆で、むしろ密度は大きいほうがよく、その下限値としては1.5g/cm
3に設定することが適当であることを見出した。このことは、本発明の実施例に示されているように、実験データによって明らかとなっている。
【0027】
本発明で使用するグラファイトシートとしては、特に限定されず、高分子系グラファイトシート、または、原料である天然黒鉛をエキスパンドして得られるグラファイトシート、等を用いることができるが、天然黒鉛を原料とするグラファイトシートは通常、密度を大きくすることが困難であるので、高分子系グラファイトシートを用いることが好ましい。また、高分子系グラファイトシートは強度も高く、かつ、高い熱伝導性を有しているので、より高い放熱特性を実現することができ、好ましい。さらには、高分子系グラファイトシートは、同程度の密度を有する天然黒鉛を原料とするグラファイトシートを用いた材料と比較しても、より長時間の振動に耐えうる材料となる。これは、グラファイトシートの結晶構造の違いが影響しているものと推察される。
【0028】
本発明において使用するグラファイトシートを製造する方法は、特に限定されないが、高分子系グラファイトシートの製造方法としては、高分子フィルム(例えば、ポリイミド樹脂)を熱処理することによって、作製する方法が挙げられる。具体的には、まず、出発物質である高分子フィルムを減圧下または不活性ガス雰囲気下で1000℃程度の温度に予備加熱処理して炭素化させることで、炭素化フィルムを形成する。その後、当該炭素化フィルムを不活性ガス雰囲気下で2800℃以上の温度にて熱処理してグラファイト化させることで、良好なグラファイト結晶構造を有し、かつ、熱伝導性に優れたグラファイトシートを得ることができる。
【0029】
本発明で用いるグラファイトシートの面方向の熱伝導率は、1000W/(m・K)以上であることが好ましく、1100W/(m・K)以上であることがより好ましく、1200W/(m・K)以上であることがさらに好ましく、1300W/(m・K)以上であることが特に好ましい。
【0030】
前記グラファイト化の後にプレス加圧の工程を加える、あるいは、前記炭素化の焼成時間を短くするなどの方法を採用することで、得られるグラファイトシートの密度は大きくなる傾向にある。一方、高分子フィルムに無機フィラーを添加する、あるいは、前記炭素化の焼成時間を長くすると、得られるグラファイトシートの密度は小さくなる傾向にある。これらのファクターをコントロールして、目的とする密度のグラファイトシートを得ればよい。
【0031】
本発明におけるグラファイトシートを含む材料は、1層以上のグラファイトシートのみからなる単層シート又は積層シートであって、グラファイトシート以外の材を含まないものでもよい。また、本発明におけるグラファイトシートを含む材料は、グラファイトシートの表面の少なくとも一部または全面が樹脂層又は金属層で被覆されていてもよい。樹脂層又は金属層で被覆することにより、グラファイトの強度が改善される場合がある。グラファイトシートを被覆する樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、粘着性樹脂などが使用できる。被覆する樹脂の種類は特に制限されず、公知のものを用いることができる。グラファイトシートを被覆する金属の種類についても特に限定されないが、例えば、アルミニウムや銅などが挙げられる。また、被覆する樹脂層の厚みは特に制限されないが、分厚いものを用いると密度が低下するだけでなく、堅くなって振動に耐えない傾向にあるため、100μmより薄いことが好ましい。被覆する金属層の厚みについても特に限定されないが、100μmより薄いことが好ましい。
【0032】
グラファイトシートを含む材料の密度は、50mm×50mmのサンプルにて、重量と厚みを測定し、重量を体積で割ることにより算出する。
【0033】
このようなグラファイトシートを含む材料の密度は1.5g/cm
3以上であるが、好ましくは1.7g/cm
3以上、さらに好ましくは1.9g/cm
3以上である。1.5g/cm
3未満であると、十分な放熱性能を備え、かつ長時間の振動による劣化を防ぐことができる材料を提供することが困難となる。上限値は特に限定されないが、工業的に製造しやすい理由から、2.3g/cm
3以下であることが好ましく、2.2g/cm
3以下であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明の放熱体において、グラファイトシートを含む材料は、継続的な振動が与えられた後でも放熱特性が低下しにくいものであり、この観点から、振幅1mm、周波数10Hzの振動を24時間与えることによる熱抵抗の上昇値が、0.67℃/W未満であることが好ましい。より好ましくは0.40℃/W未満であり、さらに好ましくは0.20℃/W未満である。この値が小さい程、振動による放熱特性の低下が抑制されていることを意味する。この値は、前記所定の振動を与える前後で、グラファイトシートを含む材料の熱抵抗を計測して、その差(振動試験後の熱抵抗値−振動試験前の熱抵抗値)を求めることで算出できる。
【0035】
また、本発明は、さらにグラファイトシートを含む材料のガスの発生量でも規定することができる。本発明者らは、放熱体を、後述する車両用ライトに用いた場合において、放熱体が筐体内に露出している面から発生するガスが原因で、アウトレンズへの光線透過率が低下し、また、LEDを汚染してLEDの性能低下を招くことがあることを突き止め、これを防止するのに適した材料の選択を行った。その結果、1×10
−2Pa以下の真空下で120℃、24時間放置した後における重量減少率が0.2%未満となっている材料であれば、全光線透過率の低下が抑制されることがわかった。この重量減少率が0.2%未満となっていることにより、アウトレンズから透過する光量を維持することが可能となるが、より好ましくは、0.1%未満、さらに好ましくは0.05%未満である。前述のとおり、ガスが発生しないほうがより光を透過するため、好ましい下限値はない。前記重量減少率を達成する方法としては、前述のグラファイトシートの製造において、グラファイトシートの密度を1.5g/cm
3以上にしてガス成分の原因物質の吸着を抑える方法や、高分子フィルムを不活性雰囲気下で十分焼成することにより、ガス成分を予め除去しておく方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の放熱体は、シート状の部材であるが、グラファイトシート1層の単層シート、又は、2層以上のグラファイトシートからなる積層シート、1層以上のグラファイトシートと樹脂層又は金属層とを積層してなる積層シートである。各積層体では、各層同士は接合していてもよいが、接合していなくてもよい。接合させる場合には、接着剤を用いればよい。また、シートの全面を接合させてもよいが、一部の表面を接合させることでもよい。
【0037】
外部環境に露出する表面積を大きくために、本発明の一態様に係る放熱体は、例えば、山折と谷折を繰り返した凹凸構造を有するフィン構造とすることができる。本発明の放熱体はグラファイトシートを使用しているため、このように表面積を大きくしても軽量化することが可能となる。フィン構造を固定する目的で、フィン構造を支持する固定板を設置することもできる。
【0038】
また、本発明の別の形態に係る放熱体は、グラファイトシートの複数枚、あるいは、樹脂層又は金属層で被覆されたグラファイトシートの複数枚を分離して、各シート間に空間を設けた形状のフィン構造とすることもできる。
【0039】
本発明の放熱体は、長時間に及ぶ継続的な振動や強い振動を受けた時でも、放熱特性の低下が抑制され、高い放熱特定を維持できるという利点を有するので、そのような振動を受ける用途で好適に使用することができる。そのような用途の具体例としては、例えば、自動車、鉄道等の車両や、航空機、ロケット、人工衛星等の航空宇宙分野に使用されて振動を受ける機器や、サーバーやスーパーコンピュータのようなファンで強制空冷して振動を受ける機器であって、発熱体を含み、放熱の必要がある機器を挙げることができる。
【0040】
本発明の放熱体を含む構造体は、発熱体と、これを内包する筐体と、筐体の外部に配置される前記放熱体に熱を伝えるための連結部を有するものである。そのような構造体の一例として、以下では車両用ライトについて説明を行なうが、本発明の構造体はこれに限定されるものではない。
【0041】
(本発明の一実施形態に係る車両用ライトの構成)
本発明の一実施形態に係る車両用ライトは、筐体の内側に配置される光源と、該光源から伸びる連結部と、筐体の外側に配置され、連結部を介して光源の発する熱を筐体外へ放熱するヒートシンクとを備えた車両用ライトであって、前記ヒートシンクとして、本発明の放熱体を用いるものである。
【0042】
光源は筐体内に配置されている。用いる光源の種類は特に限定されないが、耐振動性に優れることからLEDランプを用いることが好ましい。筐体の一部にはアウターレンズが備わっていて、光を透過させる。
【0043】
この光源は、該光源から伸びる連結部を介して光源で発生する熱を放熱するヒートシンクに接続している。連結部は筐体内に配置されるが、ヒートシンクの少なくとも一部は筐体外に露出していて、光源の熱を放熱する。ヒートシンクは筐体背面に設置することができ、ヒートシンクの底面は筐体内側に向いており、ヒートシンクのフィン部は筐体外に露出させることができる。このような構造にすると走行風による強制空冷ができるので好ましい。従って、本発明において、ヒートシンクが筐体の外側に配置されるということは、ヒートシンクの少なくとも一部が筐体外部に露出していることを意味する。
【0044】
光源は、連結部に直接支持されることもできるが、光源を支持する別の材料を介して連結部と繋がっていてもよい。
【0045】
(連結部)
本発明では、光源の熱をヒートシンクに伝える連結部は、熱を伝える材料から構成されるものであれば特に限定されないが、ヒートシンクと同様、グラファイトシートを含む材料から構成されることが好ましい。連結部に用いる材料も密度が1.5g/cm
3以上となっていることが好ましい。さらに、1×10
−2Pa以下の真空下で120℃、24時間放置した後の重量減少率が0.2%未満となっている材料であることが好ましい。連結部に用いられるグラファイトシートは、本発明の放熱体の製造方法と同様にして製造できる。また、連結部が光源の支持体を兼ねてもよく、その場合は、複数枚のグラファイトシートを、接着層を介して積層し、所望の形状に加工した連結部とすることで、連結部に強度を付与することができる。連結部もヒートシンクも密度が1.5g/cm
3以上であり、かつ1×10
−2Pa以下の真空下で120℃、24時間放置した後の重量減少率が0.2%未満となっていることで、長期走行時の振動によっても劣化せず、アウトレンズを通じての光透過率の低下を招かない車両用ライトにすることがより容易になる。また、連結部もグラファイトシートを含む材料とすることで、光軸調整のアクチュエーターを小型化することができる。
【0046】
連結部とヒートシンクがともにグラファイトシートを含む材料から構成される場合、
図1の正面図および
図2の側面図に示されるように、連結部2とヒートシンク3を、連続して一体化した構造にすることができる。この場合、例えば、単層シートもしくは積層シートの一端から山折と谷折を繰り返した凹凸構造を有するフィン部を形成することでヒートシンク3を構成し、もう一方の端部を、光源1からヒートシンク3に熱を伝導するに適した形状にして連結部2を形成することができる。
【0047】
あるいは、
図3の正面図および
図4の側面図に示されるように、連結部2は、複数枚のグラファイトシートから構成される積層シートで構成し、連結部2から伸長して連結部2と一体化したヒートシンク3では、グラファイトシートを1枚ずつに分離して各シート間に空間を設けてフィン部を形成することでヒートシンク3を構成することもできる。このようにすれば、ヒートシンクが外部環境に露出する面積が増加するので、放熱をより効率よく実現することができる。
【0048】
以上説明した本発明の一実施形態に係る車両用ライトは、光源の発熱により筐体内で発生する熱を十分放熱することができるとともに、長時間走行の振動にも耐えうるのでライトの信頼性が大幅に向上する。また、ライト前面に位置するレンズを通じる光の透過率の低下を防ぐこともできるので、よりライトの信頼性が高くなる利点もある。
【実施例】
【0049】
<模擬ライト1の製造>
グラファイトシートを含む材料を積層した状態とし、その一端において山折りと谷折りを繰り返し、
図1の正面図および
図2の側面図に示されるように、連結部2とヒートシンク3を形成した。ヒートシンク3の一方の側面にはヒートシンクの形状が保持されるように固定板5である樹脂製の板を設置し、これにヒートシンク3をネジで固定した。重ねたシートの、ヒートシンク3とは反対側の一端は、グラファイトシート同士が熱を伝えやすくするよう、すべてのグラファイトシート同士を70mm角の両面テープ(日栄化工製、厚み10μm)により接着した。接着させた領域の中心部には光源1であるLEDを搭載した。更に、ヒートシンク3以外の連結部2全体を筐体4である樹脂製カバーで密閉した。
【0050】
<模擬ライト2の製造>
グラファイトシートを含む材料を積層した状態とし、その一端においてグラファイトシートを1枚ずつに分離してフィン構造を形成し、
図3の正面図および
図4の側面図に示されるように、連結部2とヒートシンク3を形成した。ヒートシンク3とは反対側の一端は、グラファイトシート同士が熱を伝えやすくするよう、すべてのグラファイトシート同士を70mm角の両面テープ(日栄化工製、厚み10μm)により接着した。接着させた領域の中心部には光源1であるLEDを搭載した。
【0051】
<材料の密度の測定>
グラファイトシートを含む材料から50mm角のシートを切り出してその重量を測定した。また、マイクロメーターで9点の厚み平均を算出して体積を計算し、重量を体積で割ることで密度を算出した。密度は、小数点第2位を四捨五入して、小数点第1位まで算出した。
【0052】
<材料のガス量の測定>
グラファイトシートを含む材料を約5g用意し、予め重量(X)を測定した。これを1×10
−2Pa以下の真空下、120℃、24時間置いた後、再度重量(Y)を測定した。以下の計算式(1)により、重量減少率を定量化してガス量を測定した。
(X−Y)/X×100 ・・・(1)
【0053】
重量減少率が0.05%未満であればA、0.05%以上0.1%未満であればB、0.1%以上0.2%未満であればC、0.2%以上であればDとし、A、BもしくはCであればガス量が少なく優れていると判断した。
【0054】
<全光線透過率の減少値>
ポリカーボネート製の半球形レンズ(レンズ厚み3mm)を用意し、予め全光透過率(TV0)を測定した。測定には、スガ試験機製の可視光線透過率計(HA−TR)を使用し、400〜700nmの可視光波長領域を測定範囲とした。
【0055】
次に、
図6に示すように、50mm角サイズのグラファイトシートを含む材料の一部21を10枚用意し、アルミ板9の上に重ねて置いた。更に、これにアウトレンズ8である半球形レンズを被せ、この状態で、120℃で1週間加熱した。その後、室温まで冷ましてから半球形レンズの全光透過率(TV1)を再測定し、TV0とTV1の差から全光透過率の減少値を計算した。小数点第1位を四捨五入して、そのときの減少値が2%未満であればA、2%以上10%未満であればB、10%以上であればCとし、AもしくはBであれば全光透過率の減少値が小さく優れていると判断した。
【0056】
<振動試験>
グラファイトシートを含む材料を
図5に示すように、光源部1付近の連結部2を、振動試験機6である小型卓上試験機(アズワンより入手、型番CV−101)に固定した。固定板5を動かないようにこれも固定し、この状態で振動試験機6を振動させた。振動は振幅方向7の方向に、振幅1mm、周波数10Hzで、24時間行った。
【0057】
<振動試験によるLEDの上昇温度>
図1に示す状態で、光源1である出力15WのLEDを点灯させて、定常状態になったときのLEDの温度(T0)を熱電対で側温した。
【0058】
次に、振動試験を行った後、再度、光源1である出力15WのLEDを点灯させて、このときのLEDの温度(T1)を熱電対で側温した。T1とT0の温度差から、振動試験によるLEDの上昇温度を計算し、小数点第1位を四捨五入して、そのときの上昇温度が3℃未満であればA、3℃以上10℃未満であればB、10℃以上であればCと評価し、AもしくはBであれば上昇温度が小さく、優れていると判断した。
【0059】
<振動試験による熱抵抗の上昇値>
前記上昇温度(℃)を出力(W)で割って、振動試験による熱抵抗の上昇値を算出した。熱抵抗の上昇値が0.2℃/W未満であればA、0.2℃/W以上0.67℃/W未満であればB、0.67℃/W以上であればCと評価し、AもしくはBであれば、熱抵抗の上昇値が小さく、優れていると判断した。
【0060】
(実施例1)
75μm厚みのカネカ社製ポリイミドフィルムを、窒素雰囲気下で1000℃まで加熱して炭素化フィルムを得た。その後、当該炭素化フィルムをアルゴンガス雰囲気下で2800℃の温度にて熱処理した。これを40MPaでプレス処理をすることで、40μm厚みに調整した人工グラファイトシートを得た。
【0061】
上記で得た人工グラファイトシートを、70mm×250mmのサイズに切り出したものを20枚用意し、この20枚を積層してグラファイトシートを含む材料(密度1.9g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
実施例1に用いた人工グラファイトシート両面にPEEKテープ(寺岡製作所製、トータル厚み10μm)を貼り付け、実施例1と同じサイズに切り出したものを20枚用意し、この20枚を積層してグラファイトシートを含む材料(密度1.7g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
実施例1に用いた人工グラファイトシート両面にPIテープ(寺岡製作所製、トータル厚み17μm)を貼り付け、実施例1と同じサイズに切り出したものを20枚用意し、この20枚を積層してグラファイトシートを含む材料(密度1.6g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例4)
75μm厚みのカネカ社製ポリイミドフィルムを、窒素雰囲気下で1000℃まで加熱して炭素化フィルムを得た。その後、当該炭素化フィルムをアルゴンガス雰囲気下で2800℃の温度にて熱処理した。これを20MPaでプレス処理をすることで、50μm厚みに調整した人工グラファイトシートを得た。
【0065】
上記で得た人工グラファイトシートを用いた以外は、実施例1と同様にして、グラファイトシートを含む材料(密度1.6g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例5)
実施例1で人工グラファイトシートの代わりに天然グラファイトシート(東洋炭素製PF、厚み40μm)を用い、その両面にアルミテープ(寺岡製作所製、トータル厚み80μm)を貼り付け、実施例1と同じサイズに切り出したものを20枚用意し、この20枚を積層してグラファイトシートを含む材料(密度1.8g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例6)
75μm厚みのカネカ社製ポリイミドフィルムを、窒素雰囲気下で1000℃まで加熱して炭素化フィルムを得た。その後、当該炭素化フィルムをアルゴンガス雰囲気下で2800℃の温度にて熱処理した。これを40MPaでプレス処理をすることで、40μm厚みに調整した人工グラファイトシートを得た。
【0068】
上記で得た人工グラファイトシートを、70mm×250mmのサイズに切り出したものを20枚用意し、この20枚を積層してグラファイトシートを含む材料(密度1.9g/cm
3)を製造し、模擬ライト2で評価した。評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
75μm厚みのカネカ社製ポリイミドフィルムを、窒素雰囲気下で1000℃まで加熱して炭素化フィルムを得た。その後、当該炭素化フィルムをアルゴンガス雰囲気下で2800℃の温度にて熱処理して60μm厚みのグラファイトシートを得た。
【0070】
実施例1のグラファイトシートの代わりに、このようにして得られたグラファイトシートを用いる以外は実施例1と同様にして、グラファイトシートを含む材料(密度1.3g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
(比較例2)
実施例1で人工グラファイトシートの代わりに天然グラファイトシート(東洋炭素製PF、厚み40μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、グラファイトシートを含む材料(密度1.0g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
(比較例3)
実施例1で人工グラファイトシートの代わりに天然グラファイトシート(東洋炭素製PF−UHP、厚み40μm)を用いる以外は実施例1と同様にして、グラファイトシートを含む材料(密度1.0g/cm
3)を製造し、模擬ライト1で評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
(比較例4)
75μm厚みのカネカ社製ポリイミドフィルムを、窒素雰囲気下で1000℃まで加熱して炭素化フィルムを得た。その後、当該炭素化フィルムをアルゴンガス雰囲気下で2800℃の温度にて熱処理して60μm厚みのグラファイトシートを得た。
【0074】
実施例1のグラファイトシートの代わりに、このようにして得られたグラファイトシートを用いる以外は実施例1と同様にして、グラファイトシートを含む材料(密度1.3g/cm
3)を製造し、模擬ライト2で評価した。評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】