(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
間に内部流路が形成された回転部及び固定部と、ガスを吸入口から前記内部流路を通じて排気口に向けて送る排気機構と、前記内部流路の検出対象位置において堆積物が所定の厚さに達したことを検出するための主センサと、を有する真空ポンプであって、
前記主センサは、
前記所定の厚さに対応する間隔で前記内部流路に配置された少なくとも一対の電極と、
前記一対の電極に接続され、前記一対の電極間の静電容量を検出する静電容量検出回路と、を有し、
前記静電容量検出回路は、前記静電容量の増加率が低下したことに基づき、前記内部流路内の堆積物が前記所定の厚さに達したと判定する、ことを特徴とする真空ポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、比誘電率は化学物質により異なる。上記の静電容量型膜厚センサでは、析出物の比誘電率を用いて析出物の厚さを推定しているため、正確に析出物の厚さを推定するためには、析出物の化学組成を特定する必要がある。しかしながら、半導体の製造に用いられる原料等は半導体により異なる。このため、ポンプ内の流路に析出する析出物の化学組成は一定ではなく、正確に析出物の化学組成を特定することは困難である。このため、引用文献1、2に記載された静電容量型膜厚センサでは、正確に析出物の厚さを推定することができず、流路内に析出物が所定の厚さまで堆積したことを検知することが難しかった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、流路内の析出物の化学組成を特定でない場合であっても、流路内に析出物が所定の厚さまで堆積したことを検知することができるセンサを備えた真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の真空ポンプは、間に内部流路が形成された回転部及び固定部と、ガスを吸入口から内部流路を通じて排気口に向けて送る排気機構と、内部流路の検出対象位置において堆積物が所定の厚さに達したことを検出するための主センサと、を有する真空ポンプであって、主センサは、所定の厚さに対応する間隔で内部流路に配置された少なくとも一対の電極と、一対の電極に接続され、一対の電極間の静電容量を検出する静電容量検出回路と、を有し、静電容量検出回路は、静電容量の増加率が低下したことに基づき、内部流路内の堆積物が所定の厚さに達したと判定する、ことを特徴とする。
【0008】
主センサを構成する一対の電極に堆積した析出物の間に隙間がある場合(すなわち、一対の電極の間が析出物により埋まっていない場合)には、真空ポンプが駆動されて各電極の堆積物が堆積するのに応じて静電容量が増加する。これに対して、主センサを構成する一対の電極の間が堆積物で埋まって隙間がなくなった場合には、真空ポンプを駆動しても、電極間の静電容量のほとんど増加しなくなる。このため、上記構成の本発明によれば、静電容量の増加率が低下したことを検知することにより、一対の電極の間が堆積物で埋まった状態になったことを検出することができ、これにより、堆積物の化学組成にかかわらず、内部流路内の堆積物が所定の厚さに達したことを検知することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、電極の間隔は、検出対象位置における回転部及び固定部の間隔の1〜2倍に設定されている。
堆積物はそれぞれの電極の表面に堆積するため、静電容量の増加率が低下した時点では、各電極に電極間の距離の半分の厚さまで堆積物が堆積したと推定することができる。したがって、ただ単に電極の回転部及び固定部の間が閉塞されるかどうかを検知する場合には、電極の間隔は、検出対象位置における回転部及び固定部の間隔の2倍に設定することが考えられる。しかしながら、このように回転部及び固定部の間が閉塞される程度まで析出物が堆積してしまうと、析出物により回転部が破損するおそれがある。これに対して、上記構成の本発明によれば、電極の間隔が検出対象位置における回転部及び固定部の間隔の1〜2倍に設定されているため、回転部及び固定部の間が閉塞される前に堆積物が所定の厚さまで堆積したことを検知することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、一対の電極は、平板状であり、平行に配置されている。
このような構成の本発明によれば、平板状の電極の間に堆積した堆積物の厚さが所定の厚さに達したことを判定できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、一対の電極は、円筒状であり、同心同軸に配置されている。
このような構成の本発明によれば、円筒状の電極の間に堆積した堆積物の厚さが所定の厚さに達したことを判定できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、主センサは、排気機構の出口と真空ポンプの排気口とを結ぶ排気口側流路内に配置されている。
析出物は、排気機構の出口と真空ポンプの排気口との間で最も堆積する。このため、上記構成の本発明によれば、最も析出物が堆積する場所に主センサを設けることにより、確実に析出物が堆積することにより不具合を防止することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、主センサは、排気口側流路のうち、真空ポンプの排気口から最も遠い部分に配置されている。
析出物は、排気口側流路の中でも、真空ポンプの排気口から最も遠い部分に堆積する。このため、上記構成の本発明によれば、最も析出物が堆積する場所に主センサを設けることにより、確実に析出物が堆積することにより不具合を防止することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、一対の電極は、内部流路内を流れるガスの流れ方向に延びるように配置されている。
上記構成の本発明によれば、電極間にガスがスムーズに流れ、センサによりガスの流れを妨げることを抑止できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、排気機構は、最後段にネジ溝ポンプを含み、ネジ溝ポンプの出口近傍にガス抜き孔が設けられている。
ネジ溝ポンプの出口近傍では圧力が高くなる。ここで、析出物は圧力が高い部位で析出しやすいため、検出対象位置と、主センサが設けられた位置とで圧力差が大きいと、正確な析出物の厚さの検知ができない。これに対して、上記構成の本発明によれば、ネジ溝ポンプの出口近傍にガス抜き孔が設けられているため、ネジ溝ポンプの出口近傍と、主センサが設けられた位置と圧力差を低減し、より正確な析出物の厚さの検知を行うことができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、内部流路内に配置され、静電容量検出回路に接続された一対の電極を含む副センサをさらに有し、副センサの一対の電極の間隔は、主センサの一対の電極の間隔よりも短く設定されている。
上記構成の本発明によれば、副センサの間が析出物で埋められた時点の静電容量に基づき、析出物の比誘電率(誘電率)を求めることができ、この析出物の比誘電率と、主センサの電極間の静電容量に基づき、主センサの電極に堆積した析出物の厚さを推定することができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、主センサの一対の電極間の印加電圧が100V以下となるように構成されている。
パッシェンの法則によれば、電極間の印加電圧が100Vを超えると、真空ポンプの流路内の圧力において、放電が発生するおそれがある。これに対して、上記構成の本発明によれば、電極間の印加電圧が100V以下であるため、電極間で放電が生じることを防止できる。
【0018】
本発明において、好ましくは、主センサの一対の電極の表面には絶縁層が形成されている。
上記構成の本発明によれば、電極表面に導電性物質が堆積したとしても、電極間で短絡が生じることを防止できる。
【0019】
本発明において、好ましくは、主センサの静電容量検出回路と一対の電極とは、検出時のみ通電される。
粉状の反応性物質やガス状の反応原料は帯電することがあり、析出物は反対の電荷に帯電した電極に堆積しやすい。これに対して、上記構成の本発明によれば、電極が検出時のみ帯電するため、粒子が電極に堆積しやすくなるのを防止できる。
【0020】
本発明の主センサは、上記の真空ポンプに用いられる主センサである。
【0021】
本発明のネジ溝ステータは、上記の真空ポンプに用いられ、ネジ溝ポンプを構成する、ネジ溝ステータである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、流路内の析出物の化学組成が一定でない場合であっても、流路内に析出物が所定の厚さまで堆積したことを検知することができるセンサを備えた真空ポンプが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による真空ポンプの一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による真空ポンプを示す鉛直断面図である。
図1に示すように、本実施形態の真空ポンプ1は、ケーシング12A及びベース12Bにより構成された空間内に、ターボ分子ポンプ部T及びネジ溝ポンプ部Sからなる排気機構8を有し、ケーシング12Aの頂部に形成された吸入口2から内部流路6を通じてベース12Bの側部に形成された排気口4に向けてガスを送るものである。真空ポンプ1は、ケーシング12A及びベース12Bにより構成された空間内に、回転部14と、ケーシング12Aに固定された固定部16と、を有し、これら回転部14と固定部16との間に吸入口2から排気口4まで延びる内部流路6が形成されている。
【0025】
回転部14は、モータ10によって回転されるシャフト18と、シャフト18に固定されたロータ部20とを有する。ロータ部20は、吸入口2側に設けられた複数のロータ翼20Aと、排気口4側に設けられた円筒部20Bとを有する。ロータ翼20Aは、シャフト18の軸線に垂直な平面に対して傾斜するように、放射状に延びたブレードからなる。円筒部20Bは円筒状の部位であり、ロータ部20はステンレスやアルミニウム合金などの金属により構成されている。
【0026】
モータ部10は、例えば、DCブラシレスモータであり、シャフト18の周りに設けられた複数の永久磁石10aと、永久磁石10aの周囲に設けられた複数の電磁石10bとを有する。電磁石10bの電流を順に切り替えることにより、永久磁石10aの周囲に回転磁界を生成することにより、永久磁石10aがこの回転磁界に追従し、シャフト18が回転される。
【0027】
また、モータ部10の上下には、シャフト18をラジアル方向に軸支する、ラジアル軸受部24、26が設けられている。ラジアル軸受部24、26としては、シャフト18の周囲に設けられた複数の電磁石24a、26aと、シャフト18の電磁石24a、26aに対向する位置に設けられたターゲット24b、26bにより構成される。ラジアル軸受部24、26は、ターゲット24b、26bに電磁石24a、26aが吸引されることにより、シャフト11をラジアル方向に非接触で支持する。
【0028】
また、ラジアル軸受部26の下方には、スラスト軸受部28が設けられている。スラスト軸受部28は、シャフト18に設けられたアーマチュアディスク28aと、アーマチュアディスク28aの上下に設けられた電磁石28bとを備える。スラスト軸受部28は、電磁石28bの磁力によりアーマチュアディスク28aが吸引されることにより、シャフト11をスラスト方向に非接触で支持する。なお、ラジアル軸受部24及びスラスト軸受部28の近傍には位置センサ(図示せず)が設けられており、この位置センサによりシャフトの位置を検出し、シャフト11が所定の位置となるように、ラジアル軸受部24、26及びスラスト軸受部28の電磁石24a、26a、28bへ供給する電力を制御する。
【0029】
固定部16は、吸入口2側に設けられたステータ翼30と、排気口4側に設けられたネジ溝ステータ32とを有する。ステータ翼30は、シャフト18の軸線に垂直な平面に対して傾斜し、ケーシング2の内周面から中心に向かって延びる複数のブレードにより構成される。ターボ分子ポンプ部T内では、ステータ翼30と、ロータ翼20Aとが上下方向に交互に配置されている。
【0030】
ネジ溝ステータ32は、円筒状の部材であり、内周面にらせん溝32aが形成されている。らせん溝32aは、吸入口2側から排気口4に向かって、徐々に溝の深さが小さくなっている。
図4は、本実施形態の真空ポンプのネジ溝ステータのらせん溝の排気口側の端部を展開して示す図である。同図に示すように、ネジ溝ステータ32のらせん溝32aの出口(すなわち、ネジ溝ステータ32の下縁部)には、ガス抜き孔としての切り欠き32bが形成されている。
【0031】
図5は、ネジ溝ステータの出口にガス抜き孔が設けられていない場合のらせん溝内のガスの圧力分布を示す図である。同図に示すように、らせん溝内のガスは、出口に向かって圧力が高くなり、出口近傍に高圧の領域が生じてしまう。これに対して、上述した通り、ネジ溝ステータ32のらせん溝32aの出口に切欠き32bを形成することにより、高圧の領域の発生を抑制することができる。
【0032】
ネジ溝ステータ32の下面と、ベース12Bとの間には、ネジ溝ポンプ部Sの出口と排気口4とを結ぶ排気口側流路40が形成されている。
上記構成により、真空ポンプ1は、モータ部10により回転部14が固定部16に対して回転されると、前段のターボ分子ポンプ部Tでは、ロータ翼20Aにより気体分子が弾き飛ばされ、ステータ翼30の間を通過する方向にガスが送られる。そして、ネジ溝ポンプ部Sにおいて、ネジ溝ステータ32のらせん溝32aに沿って圧縮されながら送られる。これにより、吸入口2からガスが吸入され、排気機構8により内部流路6を送られ、排気口4から排出される。
【0033】
また、本実施形態の真空ポンプ1は、内部流路6の検出対象位置における堆積物が所定の厚さに達したことを検知するための検知システムを有する。排気口側流路40の真空ポンプの排気口4の水平方向反対側(排気口4から最も遠い部分)には、検知システムを構成する主センサ42が設けられ、主センサ42の近傍には副センサ(不図示)が設けられている。
【0034】
図2は、本実施形態の真空ポンプの検知システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、検知システム50は、主センサ42と、副センサ44と、制御装置52とを有する。制御装置52は、PCなどの計算処理装置であり、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置48を有する。また、制御装置52内には、静電容量検出回路46が形成されており、静電容量検出回路46は表示装置48に接続されている。なお、副センサ44は省略することも可能である。
【0035】
図3は、本実施形態の真空ポンプの主センサの構成を示す鉛直断面図である。
図3に示すように、主センサ42は、一対の電極54、56と、各電極54、56に接続されたコネクタ58、60とを有する。下方の電極56は、絶縁素材からなるベースプレート62上に水平に載置されており、上方の電極54は下方の電極56上に配置された絶縁素材からなるスペーサ55により、電極54,56の間隔が所定の間隔となるように水平に支持されている。主センサ42は、ベースプレート62がネジ64によりベース12Bに固定されている。
【0036】
排気口側流路40では、ネジ溝ステータ32のらせん溝32aを通ったガスが周方向に流れる。上述の通り、主センサ42を構成する電極54、56は水平に支持されており、ガスの流れ方向に設けられている。
【0037】
一対の電極54、56は、金属板からなり、表面には、例えば、アルマイトやPTFE(テフロン(登録商標))などの絶縁層が形成されている。各電極54、56にはベース12Bに埋設されたコネクタ58、60が接続されており、コネクタ58、60から延びる電線66A,66Bは、制御装置52の静電容量検出回路46に接続されている。
【0038】
副センサ44は電極68、70を有し、その構成は主センサ42と電極間の距離のみが異なり、その他は主センサ42と同じである。電極68、70に接続された電線72A,72Bは、制御装置52の静電容量検出回路46に接続されている。
【0039】
静電容量検出回路46は、一対の電極間の静電容量を検知するための回路であり、真空ポンプ1の累積駆動時間tを計測するとともに、駆動時間がΔt経過するごとに、主センサ42及び副センサ44の静電容量C
m(t)、C
s(t)を測定する。そして、静電容量検出回路46は、各時間における静電容量C
m(t)、C
s(t)に基づき、静電容量の増加率dC
m(t)、dC
s(t)を算出する。さらに、静電容量検出回路46は、この静電容量の増加率dC
m(t)、dC
s(t)に基づき、析出物が所定の厚さまで到達したかどうかを検出する。
なお、静電容量検出回路46により主センサ42の静電容量を測定する際に一対の電極54、56に印加する印加電圧は100V以下となるように設定されている。また、静電容量検出回路46により副センサ44の静電容量を測定する際に一対の電極68、70に印加する印加電圧も、100V以下となるように設定されている。また、静電容量検出回路46と、主センサ42の一対の電極54、56及び副センサ44の一対の電極68、70とは、静電容量を検出する間のみ通電しており、静電容量の検出の間は遮断されている。
【0040】
本実施形態では、検出対象位置としてらせん溝32aの出口を設定し、検知システム50によりらせん溝32aの出口における析出物が所定の厚さまで到達したかどうかを検出する場合について説明する。
まず、本実施形態の検知システムにより、析出物が所定の厚さまで到達したかどうかを検出する原理について説明する。
一対の平板状の金属からなる電極の静電容量Cは、C=ε
0×ε
S×S/Lにより算出することができる。上記の式における、ε
0は真空の誘電率を示し、ε
Sは一対の電極の間の物質の比誘電率であり、Sは電極の面積であり、Lは電極の距離である。
【0041】
図6は、主センサの一対の電極に堆積物が堆積する様子を示す図であり、
図7は、経過時間と、主センサの一対の電極の静電容量との関係を示すグラフである。なお、経過時間とは、電極に堆積物が堆積していない時点をt
0とした真空ポンプの駆動時間である。
図6(a)に示すように、初期の時刻t=t
0では、電極には堆積物が堆積していない。このため、
図7に示すように、主センサ42の一対の電極54、56の間には、真空ポンプ1により吸引するガスが存在しており、静電容量は小さい値となっている。次に、
図6(b)に示すように、時刻t=t
1では、電極54、56の表面に堆積物Aが析出する。このように電極54、56の表面に析出すると、堆積物Aの比誘電率ε
Sは真空ポンプ1の内部流路6を流れるガスよりも大きいため、
図7に示すように一対の電極54、56の静電容量が増加する。
図6(b)に示すように、電極54、56にそれぞれ析出した堆積物の間に隙間がある間は、静電容量は増加し続ける。これに対して、時刻t=t
2において、
図6(c)に示すように電極54、56にそれぞれ析出した堆積物Aの間に隙間がなくなると、電極54、56の間の物質の比誘電率ε
Sが変化しなくなるため、
図7に示すように、時間当たりの静電容量の増加率が低下する。本実施形態の検知システムでは、静電容量検出回路46により主センサ42及び副センサ44における静電容量を検出し、この静電容量の時間当たりの増加率が低下した場合に、主センサ42及び副センサ44の各電極54、56、68、70に、各電極の間隔の半分の厚さまで堆積物が堆積したと判定する。
【0042】
これら主センサ42の一対の電極54、56の間隔d
m、及び、副センサ44の一対の電極68、70の間隔d
sは以下のようにして、検出対象位置における堆積物の危険とされる所定の厚さに対応して決められる。上述の通り、本実施形態では、らせん溝32aの出口における析出物が所定の厚さまで到達したかどうかを検出する。らせん溝32aの出口と、主センサ42及び副センサ44とが設けられる位置が非常に近く、らせん溝32aの出口と、主センサ42及び副センサ44とが設けられる位置ではガスの圧力や温度がほぼ等しい状態となっている。このような場合には、主センサ42の電極54、56の間の間隔d
mは、らせん溝32aの出口における回転部14及び固定部16の間隔(すなわち、円筒部20Bと、らせん溝32aの溝底部の間隔)の1〜2倍に設定する。これは、固定部16に堆積した析出物が回転部14と接触して回転部14を破損しないためである。
【0043】
また、検出対象位置と、主センサ42及び副センサ44が設けられる位置とが離間している場合には、検出対象位置と、主センサ42及び副センサ44が設けられる位置におけるガスの温度や圧力を考慮して決定する。これは、ガスに含まれる成分は、温度や圧力により析出量が異なるためである。
【0044】
また、副センサ44の電極68、70の間隔d
sは、例えば、主センサ42の電極54,56の間隔d
mの0.5倍など、主センサ42の電極54,56の間隔d
mよりも小さい間隔に設定する。これは、後述するように副センサ44の静電容量に基づき堆積物Aの比誘電率を推定するためである。
【0045】
以下、本実施形態の真空ポンプの検知システムにより、検出対象位置における堆積物が所定の厚さまで堆積したか否かを判定する方法を説明する。
図8は、検出対象位置における堆積物が所定の厚さまで堆積したか否かを判定する方法を説明するためのフローチャートである。
まず、真空ポンプの初めての使用時、又は、内部の堆積物を除去するメンテナンスを行った後、静電容量検出回路46の累積駆動時間tをt=0とし、静電容量検出回路46の測定時間t
m=0に設定する(S0)。
【0046】
次に、累積駆動時間tがt
mに到達すると、静電容量検出回路46と、主センサ42の一対の電極54、56及び副センサ44の一対の電極68、70とを通電状態に切り替え、時刻tにおける主センサ42及び副センサ44の静電容量C
m(t)、C
s(t)を測定する(S1)。なお、主センサ42及び副センサ44の静電容量C
m(t)、C
s(t)の測定が完了したら、再び静電容量検出回路46と、主センサ42の一対の電極54、56及び副センサ44の一対の電極68、70との接続を遮断する。
【0047】
そして、t>0の場合には、測定した主センサ42及び副センサ44の静電容量C
m(t)、C
s(t)に基づき、時刻tにおける静電容量の増加率dC
m(t)、dC
s(t)を算出する(S2)。主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t)は、例えば、dC
m(t)=(C
m(t)−dC
m(t−Δt))/Δtとして算出すればよく、副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t)=(C
s(t)−dC
s(t−Δt))/Δtとして算出すればよい。
【0048】
次に、時刻tにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t)と、時刻t−Δtにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t−Δt)とを比較する(S3)。時刻tにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t)が、時刻t−Δtにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t−Δt)と等しい、または、dC
s(t−Δt)よりも大きい場合(dC
s(t)≧dC
s(t−Δt))には、後述する、主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t)と、時刻t−Δtにおける主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t−Δt)とを比較するステップ(S7)へ進む。また、S3において、時刻tにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t)が、時刻t−Δtにおける副センサ44の静電容量の増加率dC
s(t−Δt)よりも小さい場合(dC
s(t)<dC
s(t−Δt))には、副センサ44の一対の電極68、70の間が析出物で埋まったと推定されるため、堆積物の比誘電率を算出するステップ(S4)へ進む。
【0049】
堆積物の比誘電率を算出するステップ(S4)では、副センサ44の一対の電極68、70の間隔d
sと、測定した副センサ44の静電容量C
sとに基づき、一対の電極68、70の間に堆積した析出物の比誘電率ε
Sを算出する。析出物の比誘電率ε
Sは、例えば、上述の式C=ε
0×ε
S×S/Lに基づき算出することができる。なお、S1〜S8のステップは、S7においてdC
m(t)<dC
m(t−Δt)となるまで繰り返されるが、堆積物の比誘電率を算出するステップ(S4)は一度行った後は、省略することができる。
【0050】
次に、上記算出した比誘電率ε
Sと、主センサ42の静電容量C
m(t)とに基づき、主センサ42に堆積した析出物の厚さを推定する(S5)。そして、表示装置48に推定した主センサ42に堆積した析出物の厚さを表示する。この際、例えば、析出物の堆積の速度(時間当たりの堆積物の厚さの増加率)に基づき、真空ポンプ1を、今後どの程度の時間駆動すると、主センサ42の一対の電極54、56の間が堆積物で閉塞されるか、すなわち、検出対象位置において堆積物が所定の厚さまで堆積するか、を表示するとよい。
【0051】
次に、時刻tにおける主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t)と、時刻t−Δtにおける主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t−Δt)とを比較する(S7)。時刻tにおける主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t)が、時刻t−Δtにおける主センサ42の静電容量の増加率dC
m(t−Δt)と等しい、または、dC
m(t−Δt)よりも大きい場合(dC
m(t)≧dC
m(t−Δt))には、t
m=t
m+Δtとして(S8)、S2に戻る。
【0052】
また、S7においてdC
m(t)<dC
m(t−Δt)となった場合には、静電容量検出回路46により主センサ42の一対の電極54、56の間が堆積物により埋まったと判定し、表示装置48により内部流路6の検出対象位置における堆積物が所定の厚さに達した旨の表示を行う。作業員は表示装置48に内部流路6の検出対象位置における堆積物が所定の厚さに達した旨、表示された場合には、真空ポンプ1を解体してメンテナンスを行う。なお、S7は、S3においてdC
s(t)<dC
s(t−Δt)と判定されるまで省略することも可能である。
【0053】
以上説明したように、主センサ42を構成する一対の電極54、56に堆積した析出物の間に隙間があると、真空ポンプ1が駆動されて堆積物が堆積するのに応じて静電容量が増加する。これに対して、主センサ42を構成する一対の電極54、56の間が堆積物で埋まり、隙間がなくなると、それ以降は真空ポンプ1を駆動しても、電極54、56間の静電容量のほとんど増加しなくなる。このため、本実施形態によれば、静電容量検出回路46が、主センサ42の一対の電極54、56の静電容量の増加率が低下したことを検知することにより、一対の電極54、56の間が堆積物で埋まった状態になったことを検出することができ、これにより、堆積物の化学組成にかかわらず、内部流路6内の堆積物が所定の厚さに達したことを検知することができる。
【0054】
また、上記実施形態では、主センサ42の一対の電極54、56の間隔は、検出対象位置における回転部14及び固定部16の間隔の1〜2倍に設定されている。堆積物Aはそれぞれの電極54、56の表面に堆積するため、静電容量の増加率が低下した時点では、各電極54、56に電極間の距離の半分の厚さまで堆積物が堆積したと推定することができる。したがって、ただ単に電極54、56の回転部14及び固定部16の間が閉塞されるかどうかを検知する場合には、電極54、56の間隔は、検出対象位置における回転部14及び固定部16の間隔の2倍に設定することが考えられる。しかしながら、このように回転部14及び固定部16の間が閉塞される程度まで析出物が堆積してしまうと、析出物により回転部16が破損するおそれがある。これに対して、上記実施形態によれば、電極54、56の間隔が検出対象位置における回転部14及び固定部16の間隔の1〜2倍に設定されているため、回転部14及び固定部16の間が閉塞される前に堆積物が所定の厚さまで堆積したことを検知することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、一対の電極54、56は、平板状であり、平行に配置されており、これにより、平板状の電極54、56の間に堆積した堆積物の厚さが所定の厚さに達したことを判定できる。
【0056】
析出物は、排気機構8の出口と真空ポンプ1の排気口4との間で最も堆積する。これに対して、上記実施形態では、主センサ42が、排気機構8の出口と真空ポンプ1の排気口4とを結ぶ排気口側流路40内に配置されているため、確実に析出物が堆積することにより不具合を防止することができる。
【0057】
析出物は、排気口側流路40の中でも、真空ポンプ1の排気口4から最も遠い部分に堆積する。これに対して、上記実施形態では、主センサ42は、排気口側流路40のうち、真空ポンプ1の排気口4から最も遠い部分に配置されているため、確実に析出物が堆積することにより不具合を防止することができる。
【0058】
また、上記実施形態によれば、一対の電極54、56は、内部流路6内を流れるガスの流れ方向に延びるように配置されているため、電極間にガスがスムーズに流れ、センサによりガスの流れを妨げることを抑止できる。
【0059】
ネジ溝ポンプ部Sの出口近傍では圧力が高くなる。ここで、析出物は圧力が高い部位で析出しやすいため、検出対象位置と、主センサ42が設けられた位置とで圧力差が大きいと、正確な析出物の厚さの検知ができない。これに対して、上記実施形態によれば、ネジ溝ポンプ部Sのらせん溝32aの出口近傍にガス抜き孔として切り欠き32bが設けられているため、ネジ溝ポンプ部Sの出口近傍と、主センサ42が設けられた位置と圧力差を低減し、より正確な析出物の厚さの検知を行うことができる。
【0060】
上記実施形態によれば、内部流路6内に配置され、静電容量検出回路46に接続された一対の電極68、70を含む副センサ44をさらに有し、副センサ44の一対の電極68、70の間隔は、主センサ42の一対の電極54、56の間隔よりも短く設定されている。これにより、副センサ44の間が析出物で埋められた時点の静電容量に基づき、析出物の誘電率を求めることができ、この析出物の誘電率と、主センサ42の電極54、56間の静電容量に基づき、主センサ42の電極54、56に堆積した析出物の厚さを推定することができる。
【0061】
パッシェンの法則によれば、電極間の印加電圧が100Vを超えると、真空ポンプ1の内部流路6内の圧力において、放電が発生するおそれがある。これに対して、上記実施形態によれば、電極54、56間の印加電圧が100V以下であるため、電極54、56間で放電が生じることを防止できる。
【0062】
上記実施形態によれば、主センサ42の一対の電極54、56の表面に絶縁層が形成されているため、電極54、56の表面に導電性物質が堆積したとしても、電極54、56間で短絡が生じることを防止できる。
【0063】
粉状の反応性物質やガス状の反応原料は帯電することがあり、析出物は反対の電荷に帯電した電極に堆積しやすい。これに対して、上記実施形態によれば、主センサ42の静電容量検出回路46と一対の電極54、56とは、検出時のみ通電されるため、粒子が電極54、56に堆積しやすくなるのを防止できる。
【0064】
なお、上記実施形態では、主センサ42及び副センサ44の一対電極として板状の部材を用いていたが、一対の電極の形状はこれに限られない。
図9は、別の実施形態の主センサの一対の電極の形状を示し、(A)は中心軸に垂直な平面における断面図であり、(B)は中心軸に沿った平面における断面図である。
図9に示すように、主センサ42及び副センサ44の電極として、同心同軸に配置された半径の異なる円筒状の金属部材154、156を用いてもよい。このような電極を用いて検出対象位置において堆積物が所定の厚さに達したことを検知する場合には、外側の円筒状の金属部材154の内径と、内側の円筒状の金属部材156の外径との差を、所定の厚さに対応する間隔に設定すればよい。
上記実施形態によれば、円筒状の電極(金属部材154、156)の間に堆積した堆積物の厚さが所定の厚さに達したことを判定できる。
【0065】
なお、上記実施形態では、ネジ溝ステータ32は、円筒状の部材であり、内周面にらせん溝32aが形成されているとしたが、これに限定されず、円筒部20Bの外周面にらせん溝32aが形成され、ネジ溝ステータ32の内周面に溝が無い場合もある。
【0066】
また、ネジ溝ステータ32が円筒部20Bの内側に配置される場合には、外周面にらせん溝32aが形成される。
【0067】
なお、本発明に関わる主センサ、真空ポンプは、上述したターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部を組み合せた複合タイプの真空ポンプの他、ターボ分子ポンプ部のみの真空ポンプにも適用可能である。
【0068】
また、本発明の実施形態及び各変形例は、必要に応じて組み合わせる構成にしてもよい。また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が当該改変されたものにも及ぶことは当然である。