特許第6842351号(P6842351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842351
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】カルバートの施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20210308BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   E21D11/10 B
   E03F3/04 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-85467(P2017-85467)
(22)【出願日】2017年4月24日
(65)【公開番号】特開2018-184724(P2018-184724A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】仙石 貴久
(72)【発明者】
【氏名】森井 定和
(72)【発明者】
【氏名】西浦 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】福永 佳裕
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−026894(JP,A)
【文献】 特開平05−321571(JP,A)
【文献】 特開2013−129985(JP,A)
【文献】 特開昭60−033978(JP,A)
【文献】 特開2005−126918(JP,A)
【文献】 特開昭63−194070(JP,A)
【文献】 特開2010−053574(JP,A)
【文献】 特開昭51−115033(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0019818(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E03F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバートの施工方法であって、
インバートを施工し、施工された該インバートの延長方向に亘って所定の間隔を置いて複数の支保工を立設する第一のステップ、
複数の前記支保工に支持させるようにしてカルバート用の鉄筋を配筋して配筋済み区間を形成する第二のステップ、
前記配筋済み区間の一部区間に亘って下型枠を備えたセントルを配設し、該下型枠上にコンクリートを打設して該一部区間のカルバートを施工し、該配筋済み区間の他部区間に前記セントルもしくは別途のセントルを設置して該他部区間のカルバートを施工する第三のステップ、からなるカルバートの施工方法。
【請求項2】
前記第三のステップでは、前記下型枠を備えたセントルを配設することに加えて上型枠を備えたセントルも配設して双方のセントルでカルバート用の鉄筋を挟み、該下型枠と該上型枠の内部にコンクリートを打設する、請求項1に記載のカルバートの施工方法。
【請求項3】
前記第一のステップでは、前記インバートに前記支保工の下部を埋設して立設し、前記第三のステップでは、該支保工もコンクリートに埋設される、請求項1または2に記載のカルバートの施工方法。
【請求項4】
前記第一のステップでは、前記インバートを施工後、複数の前記支保工を備えた移動式の支保工ユニットを移動させ、
前記第二のステップでは、前記支保工ユニットから鉄筋を吊り下げるようにして配筋をおこない、
前記第三のステップでは、前記下型枠を備えたセントルが配設される前に前記支保工ユニットを前記他部区間に移動させる、請求項1または2に記載のカルバートの施工方法。
【請求項5】
カルバートの曲線区間の施工において、前記第三のステップでは、前記一部区間に対して複数の前記セントルを配設する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカルバートの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバートの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のカルバートの施工方法がたとえば特許文献1〜4に開示されている。従来のカルバートの一般的な施工方法としては、インバートを施工した後に側壁施工用の下型枠を組み付け、もしくは、下型枠を備えたセントルを設置し、下型枠に対してスペーサー等を介して鉄筋を配筋し、外型枠を設置した後に下型枠上にコンクリートを打設してカルバートの一部区間を施工し、打設コンクリートが硬化した後に下型枠を脱型して他部区間の施工に移行する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−133593号公報
【特許文献2】特開2015−45202号公報
【特許文献3】特開2004−232328号公報
【特許文献4】特開2011−26894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定延長のカルバートの施工においては施工区間を複数に分割し、各施工区間を順次施工していくものであるが、上記するように、インバートを施工した後に各施工区間の施工に際して下型枠の設置がカルバート施工の最初に位置付けられ、コンクリートの強度発現まで下型枠の脱型ができず、したがって、配筋工程およびコンクリート打設とその養生工程が完了するまで他部区間の施工に移行できないといった課題がある。この課題を解消するには、多数の型枠を用意する方策や、下型枠を備えたセントルを複数用意する方策等が考えられるが、これらの方策では工費が嵩むといった別途の課題が生じ得る。また、別途の方策としてプレキャストコンクリートを適用する方策が考えられるが、プレキャスト製品であることから製作コストが嵩むこと、プレキャスト製品の工場からの運搬や組立にもコストが嵩むことからトータルの施工コストが嵩んでしまい、カルバートの規模が大きくなるにつれてこの課題が一層顕著になるといった課題がある。
【0005】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、工費を高騰させることなく工期の短縮を図ることのできるカルバートの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成すべく、本発明によるカルバートの施工方法は、インバートを施工し、施工された該インバートの延長方向に亘って所定の間隔を置いて複数の支保工を立設する第一のステップ、複数の前記支保工に支持させるようにしてカルバート用の鉄筋を配筋して配筋済み区間を形成する第二のステップ、前記配筋済み区間の一部区間に亘って下型枠を備えたセントルを配設し、該下型枠上にコンクリートを打設して該一部区間のカルバートを施工し、該配筋済み区間の他部区間に前記セントルもしくは別途のセントルを設置して該他部区間のカルバートを施工する第三のステップ、からなるものである。
【0007】
本発明の施工方法は、正面視矩形のボックスカルバートやアーチカルバートなどを施工対象とするものであり、一部区間における型枠設置と配筋、コンクリート打設および養生の後に他部区間に移行する従来の施工方法に代わり、鉄筋を支持する支保工を立設して配筋済み区間の施工を先行して進め、配筋済み区間のうちの一部区間のコンクリート打設を順次おこなっていくことに特徴を有する施工方法である。このように、型枠設置やコンクリート打設および養生と配筋が分離され、型枠設置とコンクリート打設および養生とは関係なく配筋済み区間の施工を進めることにより、カルバートの全延長の施工に要する工期を従来の施工方法に比して大幅に短縮することができ、施工延長が長くなるにつれてこの効果はより一層顕著になる。
【0008】
本発明において、インバートの施工を第一のステップに置いているが、これは、施工対象のカルバートの全延長に亘るインバートを一気に施工することの他に、全延長の一部区間を配筋済み区間に設定した際にこの配筋済み区間のインバートを施工することも含む意味である。
【0009】
第一のステップではさらに、インバートの延長方向に亘って所定の間隔を置いて複数の支保工を立設する。施工対象のカルバートの全延長に亘ってインバートが施工されている場合は複数の支保工をこの全延長に亘って立設してもよく、インバートが全延長の一部区間である配筋済み区間に施工されている場合はこの配筋済み区間において複数の支保工が立設される。ここで、支保工にはH型鋼やI型鋼などの形鋼が適用でき、その分担範囲の鉄筋重量を支持できる剛性仕様のものが適用される。
【0010】
この支保工の立設方法としては、以下二つの形態を挙げることができる。その一つの形態は、前記第一のステップにおいて前記インバートに前記支保工の下部を埋設して立設し、前記第三のステップにおいて該支保工をコンクリートに埋設させる形態である。この立設形態では、インバートの施工の際に支保工の下部を当該インバートに埋設させることから、所定延長のインバートが施工された際に、同時に当該所定延長の中で所定間隔を置いて複数の支保工が立設されることになる。この形態によれば、カルバートの側壁内に所定間隔で鋼材が埋設されることから、剛性の高いカルバートが施工できる。
【0011】
一方、支保工の立設方法の他の形態は、前記第一のステップにおいて前記インバートを施工後、複数の前記支保工を備えた移動式の支保工ユニットを移動させ、前記第二のステップにおいて前記支保工ユニットから鉄筋を吊り下げるようにして配筋をおこなう形態である。この形態によれば、複数の支保工を備えた移動式の支保工ユニットを設置して配筋をおこない、配筋施工完了後に支保工ユニットを他部区間に移動させる(逃がす)ことから、支保工がカルバートの側壁内に埋設されることがなく、支保工(鋼材)費用の削減を図ることができる。
【0012】
いずれの形態であれ、支保工が設置された後、第二のステップにおいてはカルバート用の鉄筋を支保工に支持させるようにして配筋し、配筋済み区間を形成する。この配筋済み区間の形成方法も多様であり、インバートが施工対象のカルバートの全延長に亘って施工され、支保工も全延長に亘って間隔を置いて立設されている場合は、全延長に亘って一気に配筋済み区間を形成してもよいし、その一部を配筋済み区間として形成し、当該配筋済み区間のコンクリート打設等の際にこのコンクリート打設にラップするようにして隣接するエリアを次の配筋済み区間として形成するなどの方法で、先行して形成された配筋済み区間のコンクリート打設等と後行の配筋済み区間の形成をラップ施工してもよい。また、この配筋済み区間の配筋施工においては、支保工に足場を組み付けてクレーンで運ばれた鉄筋を配筋してもよいし、複数の支保工の内側に鉄筋組立用台車を設置し、これを足場として配筋をおこなってもよい。
【0013】
配筋済み区間の配筋施工が完了したら、第三のステップにおいて、配筋済み区間の一部区間に亘る延長のセントルであって下型枠を備えたセントルを当該一部区間の配筋下に設置することにより、一部区間の下型枠が短時間で設置される。下型枠を備えたセントルを設置後、必要に応じて配筋の外側に外型枠を設置する。型枠設置後、下型枠上にコンクリートを打設して当該一部区間のカルバートを施工する。
【0014】
コンクリート打設後、一定の養生期間を待つまでもなく、配筋済み区間の他部区間にセントルを設置して当該他部区間のカルバートを施工する。たとえば、配筋済み区間の延長をtとし、一部区間の延長(セントルの延長)がt/3のときには、延長がt/3の二つの他部区間が存在することになり、この配筋済み区間の施工に際してセントルを二度移動させて、最初の一部区間の施工、次の一つ目の他部区間の施工、最後の二つ目の他部区間の施工が順におこなわれる。なお、他部区間の施工に使用されるセントルは、一部区間の施工で使用されていたセントルをそのまま使用してもよいし、別途のセントルを使用してもよい。一部区間の施工で使用されていたセントルをそのまま使用する場合は、一部区間のコンクリート養生に際して下型枠を当該一部区間に残してきていることから、新規の下型枠をセントルに設置してその使用がおこなわれる。
【0015】
また、本発明によるカルバートの施工方法の他の実施の形態において、前記第三のステップでは、前記下型枠を備えたセントルを配設することに加えて上型枠を備えたセントルも配設して双方のセントルでカルバート用の鉄筋を挟み、該下型枠と該上型枠の内部にコンクリートを打設するものである。
【0016】
下型枠を備えたセントルを配設することに加えて上型枠を備えたセントルも配設することで、型枠の設置に要する時間が極めて短時間でよく、より一層の工期短縮を図ることができる。
【0017】
また、本発明によるカルバートの施工方法の他の実施の形態は、カルバートの曲線区間の施工において、前記第三のステップでは、前記一部区間に対して複数の前記セントルを配設するものである。
【0018】
カルバートはその全延長において、直線区間のみならず曲線区間を有しているのが一般的である。直線区間の施工に要する期間を短縮するには、可及的に長尺なセントルを使用するのがよい。その一方で、曲線区間の施工に際してはその曲率にもよるものの長尺なセントルの使用は一般にできないことから、たとえば直線区間の施工に際して15m程度の長尺のセントルを使用する場合において、曲線区間の施工ではその1/3の5m程度の短尺のセントルを使用するのがよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカルバートの施工方法によれば、鉄筋を支持する複数の支保工をインバートに立設して当該支保工に鉄筋を支持させるようにして配筋済み区間の施工を先行して進め、配筋済み区間のうちの一部区間のコンクリート打設を順次おこなっていくことにより、型枠設置やコンクリート打設および養生と配筋が分離され、型枠設置やコンクリート打設および養生とは関係なく配筋済み区間の施工を進めることができ、カルバートの全延長の施工に要する工期を従来の施工方法に比して大幅に短縮することができ、この工期短縮にともなって工費の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のカルバートの施工方法が適用されるカルバートの線形を説明した模式図である。
図2】本発明のカルバートの施工方法の実施の形態1の第一のステップを説明した斜視図である。
図3】施工方法の第二のステップを説明した正面図である。
図4】施工方法の第二のステップを説明した斜視図である。
図5】施工方法の第三のステップを説明した正面図である。
図6図5に続いて施工方法の第三のステップを説明した正面図である。
図7】施工された一部区間のカルバートの斜視図である。
図8】本発明のカルバートの施工方法の実施の形態2を説明した正面図であって、(a)は第一のステップおよび第二のステップを説明した図であり、(b)は第三のステップを説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照してカルバートの施工方法の実施の形態1,2を説明する。なお、図示例の施工方法は、下型枠を備えたセントルに加えて上型枠を備えたセントルも使用する施工方法であるが、上型枠を備えたセントルを使用せず、上型枠は現場にて組み付ける施工方法であってもよいことは勿論のことである。また、図示例の施工対象はアーチカルバートであるが、ボックスカルバート等、その他の形態のカルバートが施工対象であってもよいことは勿論のことである。
【0022】
(カルバートの施工方法の実施の形態1)
図1は本発明のカルバートの施工方法が適用されるカルバートの線形を説明した模式図であり、図2はカルバートの施工方法の実施の形態1の第一のステップを説明した斜視図であり、図3,4はそれぞれ施工方法の第二のステップを説明した正面図と斜視図であり、図5,6は順に施工方法の第三のステップを説明した正面図である。
【0023】
図1で示すように、カルバート10は、直線区間と曲線区間を有し、直線区間は、その施工においてカルバートの配筋を連続的におこなう延長tの配筋済み区間を複数有し、一方で、曲線区間は延長t/3の配筋済み区間を複数有している。たとえば、直線区間の延長tを30mとした際に、後述する型枠を搭載したセントルとして延長15m程度のものを延長区間に適用する一方で、曲線区間で使用する型枠を搭載したセントルは延長t/3の10m程度のものを適用することで曲線区間でもセントルの適用を可能にする。
【0024】
図2〜7を参照して、カルバートの施工方法の実施の形態1を説明するに当たり、図1で示す延長tの直線区間の施工を取り上げて説明する。なお、他の直線区間や曲線区間は、先行して施工された直線区間の施工で使用されるセントル等を使用して順次施工してもよいし、各区間で固有のセントル等を使用して各区間を並行して施工してもよく、区間ごとの施工順序は多様である。
【0025】
図2で示すように、延長tの直線区間に亘ってインバート1を施工し、この際に、インバート1の断面における主筋を構成する縦筋1aの端部を重ね継手長さだけ上部に張り出しておく。
【0026】
そして、このインバート1の施工に当たり、所定の間隔でアーチ状の線形を有する形鋼からなる支保工2の端部をインバート1内に埋設するようにして立設する。図示例では、延長tの施工区間内に五つの支保工2を等間隔で配設している。なお、インバート1は土圧作用時の応力低減の観点から所定の曲率を有しており、実際の施工では、たとえば原地盤を掘り込んでインバート1を施工し、埋戻しをおこなうとともに、インバート1の内側にはカルバート内部の平坦な床面を形成するべく、床コンクリートCが施工されており、鉄筋組立台車の移動車輪やセントルの移動車輪が案内される不図示の案内レールが床コンクリートCに形成される(以上、第一のステップ)。
【0027】
次に、図3で示すように、立設している支保工2の内側に鉄筋組立台車M1を移動させて位置決めし、鉄筋組立台車M1を足場として、作業員が鉄筋の配筋をおこなう。この配筋に際しては、インバート1の縦筋1aと重ね継手接続するようにしてアーチ側壁の縦筋3aを配筋し、この縦筋3aに直交する方向(カルバートの延長方向)に延びる横筋3bを縦筋3aに組み付け、横筋3bを所定間隔で立設している支保工2に支持させる。すなわち、支保工2にアーチ側壁の縦筋3aおよび横筋3bを支持させながら配筋をおこなうことにより、図4で示すように配筋済み区間を形成する。なお、図示を省略するが、L形鋼等の形鋼からなる補助材を各支保工2に掛け渡し、この補助材にも縦筋3aを接続して支保工2間の鉄筋の位置決め姿勢のより一層の安定を図ってもよい(以上、第二のステップ)。
【0028】
図4において、延長tに亘る配筋済み区間は、延長が同じ(ともにt/2)一部区間と他部区間に分かれている。この一部区間(および他部区間)は、型枠を搭載したセントルの延長区間であり、したがって、一部区間に亘って型枠を搭載したセントルが位置決めされ、この一部区間でのコンクリート打設が実行される。
【0029】
具体的には、図5で示すように、下型枠K1を搭載した下型枠搭載セントルST1をアーチ側壁筋の内側に位置決めし、上型枠K2を搭載した上型枠搭載セントルST2をアーチ側壁筋の外側に位置決めする。このように、下型枠搭載セントルST1と上型枠搭載セントルST2を同時に使用することで、型枠の設置を短時間でおこなうことができ、工期の大幅な短縮を図ることができる。
【0030】
一部区間に下型枠K1と上型枠K2が設置されたら、これらの型枠内にコンクリートを打設し、硬化を待つ。この際、図6で示すように、双方のセントルST1,ST2から下型枠K1と上型枠K2を取り外して養生中のアーチ側壁4の内外面に残置し、双方のセントルST1,ST2は隣接する他部区間のコンクリート打設のために移動させる。より具体的には、双方のセントルST1,ST2にはそれぞれ別途の下型枠K1と上型枠K2を搭載して他部区間に移動させ、一部区間のときと同様に双方の型枠内にコンクリートを打設し、硬化を待って他部区間のアーチ側壁4を施工する(以上、第三のステップ)。なお、図7には一部区間のコンクリートが硬化した状態を示している。
【0031】
このように、図示する施工方法は、所定延長の型枠を搭載したセントルST1,ST2を使用してカルバートのアーチ側壁4を施工するに当たり、先行してセントルST1,ST2の延長よりも長い延長の配筋済み区間を形成しておき、その一部区間のコンクリート打設が終了した後にその養生期間を待たずしてセントルST1,ST2を配筋済み区間の他部区間に移動させてコンクリート打設をおこなう方法である。この施工方法では、型枠設置やコンクリート打設および養生と関係なく配筋を先行して進めることにより、型枠の設置とコンクリート打設、さらにはコンクリート養生までの工程が施工のクリティカルパスを形成するものでなくなることから、工程の自由度が高まるとともに工期を大幅に短縮することができる。
【0032】
また、所定間隔で配設された形鋼からなる支保工2がアーチ側壁4内に埋め込まれていることから、断面剛性の高い(アーチ)カルバートが施工される。
【0033】
(カルバートの施工方法の実施の形態2)
図8は本発明のカルバートの施工方法の実施の形態2を説明した正面図であって、図8(a)は第一のステップおよび第二のステップを説明した図であり、図8(b)は第三のステップを説明した図である。
【0034】
図8で示す施工方法は、実施の形態1の施工方法のようにインバート内に支保工の端部を埋設して支保工を立設する方法ではなく、台車に複数の支保工が搭載された支保工ユニット台車を位置決めし、支保工ユニット台車にてアーチ側壁筋を支持しながらその配筋をおこなう方法である。
【0035】
図8(a)で示すように、支保工ユニット台車M2を使用する。この支保工ユニット台車M2は、たとえば、図2で示す所定間隔を置いた支保工2を二つ〜五つ備えた延長を有しており、支保工ユニット台車M2の延長と同じ延長のアーチ側壁筋(縦筋3aと横筋3bから構成される)を移載し、縦筋3aをインバート1の縦筋1aの端部と重ね継手接続する。なお、必要に応じて、アーチ側壁筋に型鋼等からなる控え部材を取り付け、任意箇所から控え部材で控えを取ることで、当該アーチ側壁筋の立設姿勢の安定性を確保してもよい。
【0036】
この方法で配筋済み区間に亘る配筋を完了後、支保工ユニット台車M2を逃がし、図8(b)で示すように下型枠搭載セントルST1と上型枠搭載セントルST2を一部区間に亘って位置決めし、コンクリート打設をおこなう。以後、実施の形態1にかかる施工方法と同様に、双方のセントルST1,ST2から下型枠K1と上型枠K2を取り外して養生中のアーチ側壁4の内外面に残置し、双方のセントルST1,ST2はそれぞれ別途の下型枠K1と上型枠K2を搭載して他部区間に移動させ、一部区間のときと同様に双方の型枠内にコンクリートを打設し、硬化を待って他部区間のアーチ側壁4を施工する。
【0037】
実施の形態2にかかる施工方法では、複数の支保工を備えた移動式の支保工ユニットを設置して配筋をおこない、配筋施工完了後に支保工ユニットを他部区間に移動させる(逃がす)ことから、支保工がカルバートの側壁内に埋設される実施の形態1にかかる施工方法に比して支保工(鋼材)費用の削減を図ることができる。
【0038】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
1…インバート、1a…縦筋、2…支保工、3a…縦筋(カルバート用の鉄筋)、3b…横筋(カルバート用の鉄筋)、4…アーチ側壁、10…カルバート、M1…鉄筋組立台車、ST1…下型枠搭載セントル(セントル)、ST2…上型枠搭載セントル(セントル)、K1…下型枠、K2…上型枠、M2…支保工ユニット台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8