特許第6842375号(P6842375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842375
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20210308BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20210308BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   F25B47/02 530H
   F25B1/00 321B
   B60H1/22 651A
   B60H1/22 651C
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-116065(P2017-116065)
(22)【出願日】2017年6月13日
(65)【公開番号】特開2019-1244(P2019-1244A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年5月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】狩野 靖明
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0318373(US,A1)
【文献】 特開2001−246930(JP,A)
【文献】 特開2013−23210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 47/02
B60H 1/22
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
冷媒を放熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
冷媒を吸熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させるための室外熱交換器と、
制御装置を備え、
該制御装置により少なくとも、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器に流して放熱させ、該放熱器から出た冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器に流し、該室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行する車両用空気調和装置において、
冷媒を吸熱させて車両の発熱機器を冷却するための発熱機器用熱交換器と、
前記圧縮機の吐出側から分岐し、前記圧縮機から吐出された冷媒を、前記放熱器を経ること無く前記室外熱交換器に流すためのホットガス除霜用回路を備え、
前記制御装置は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器と前記ホットガス除霜用回路に流し、前記放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒と前記ホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く前記室外熱交換器に流し、該室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、前記発熱機器用熱交換器に流し、該発熱機器用熱交換器にて吸熱させる暖房/除霜モードを実行することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記圧縮機の吐出側に設けられた流量制御弁を備え、
前記制御装置は、前記流量制御弁により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器と前記ホットガス除霜用回路に分配する割合を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記圧縮機から吐出された全ての冷媒を前記ホットガス除霜用回路に流入させ、前記室外熱交換器に流して放熱させると共に、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記発熱機器用熱交換器と前記吸熱器に流して吸熱させる除霜モードを実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器と前記ホットガス除霜用回路に流し、前記放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒と前記ホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く前記室外熱交換器に流し、該室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、前記発熱機器用熱交換器と前記吸熱器に流し、該発熱機器用熱交換器と吸熱器にて吸熱させる除湿/除霜モードを実行することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記暖房モードにおいて、前記放熱器から出た冷媒の一部は分流され、減圧された後、前記発熱機器用熱交換器に流入し、該発熱機器用熱交換器にて吸熱することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器にて放熱させ、減圧した後、前記吸熱器に流して吸熱させる冷房モードを実行すると共に、
該冷房モードにおいて、前記室外熱交換器から出た冷媒の一部は分流され、減圧された後、前記発熱機器用熱交換器に流入し、該発熱機器用熱交換器にて吸熱することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
高圧側の冷媒の一部を分流し、減圧した後、前記圧縮機の圧縮途中に戻すためのインジェクション回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内を空調する所謂ヒートポンプ方式の空気調和装置、特に電気自動車やハイブリッド自動車に好適な車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化から、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV、PHEV)が普及するに至っている。このような車両では、車室内の暖房にエンジン排熱を利用することができないため、冷媒を圧縮して吐出する電動式の圧縮機と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる放熱器(室内凝縮器)と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器(蒸発器)と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房モードや、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、吸熱器において吸熱させる冷房モード等を切り換えて実行するヒートポンプ式の車両用空気調和装置が開発されている。
【0003】
ここで、暖房モードでは室外熱交換器が蒸発器として機能するため、特に冬季等の低外気温時には空気中の水分が霜となって室外熱交換器に付着し、暖房性能を著しく悪化させると共に、最悪の場合には空調運転の停止を招く結果となる。そこで、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒(ホットガス)を放熱器と室外熱交換器に流し、車室内を暖房しながら室外熱交換器の除霜を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−5532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の車両用空気調和装置では圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒を、減圧装置を介して室外熱交換器に流入させていた。そのため、室外熱交換器に流入する冷媒の温度/圧力は圧縮機から吐出された直後よりも低くなり、その分除霜に時間がかかるようになると共に、車室内の快適性も損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、室外熱交換器の除霜時間の短縮を図ることができ、車室内の快適性も維持することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させるための室外熱交換器と、制御装置を備え、この制御装置により少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、この放熱器から出た冷媒を減圧した後、室外熱交換器に流し、この室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行するものであって、冷媒を吸熱させて車両の発熱機器を冷却するための発熱機器用熱交換器と、圧縮機の吐出側から分岐し、圧縮機から吐出された冷媒を、放熱器を経ること無く室外熱交換器に流すためのホットガス除霜用回路を備え、制御装置は、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に流し、放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器に流し、この室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器に流し、この発熱機器用熱交換器にて吸熱させる暖房/除霜モードを実行することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において圧縮機の吐出側に設けられた流量制御弁を備え、制御装置は流量制御弁により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に分配する割合を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、圧縮機から吐出された全ての冷媒をホットガス除霜用回路に流入させ、室外熱交換器に流して放熱させると共に、放熱した当該冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器と吸熱器に流して吸熱させる除霜モードを実行することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に流し、放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器に流し、この室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器と吸熱器に流し、これら発熱機器用熱交換器と吸熱器にて吸熱させる除湿/除霜モードを実行することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において、暖房モードにおいては放熱器から出た冷媒の一部が分流され、減圧された後、発熱機器用熱交換器に流入し、この発熱機器用熱交換器にて吸熱することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において、制御装置は、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、減圧した後、吸熱器に流して吸熱させる冷房モードを実行すると共に、この冷房モードにおいては室外熱交換器から出た冷媒の一部が分流され、減圧された後、発熱機器用熱交換器に流入し、この発熱機器用熱交換器にて吸熱することを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において高圧側の冷媒の一部を分流し、減圧した後、圧縮機の圧縮途中に戻すためのインジェクション回路を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させるための室外熱交換器と、制御装置を備え、この制御装置により少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、この放熱器から出た冷媒を減圧した後、室外熱交換器に流し、この室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを実行する車両用空気調和装置において、冷媒を吸熱させて車両の発熱機器を冷却するための発熱機器用熱交換器と、圧縮機の吐出側から分岐し、圧縮機から吐出された冷媒を、放熱器を経ること無く室外熱交換器に流すためのホットガス除霜用回路を備え、制御装置が、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に流し、放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器に流し、この室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器に流し、この発熱機器用熱交換器にて吸熱させる暖房/除霜モードを実行するようにしたので、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒を放熱器に流して車室内を暖房しながら、室外熱交換器を除霜することができるようになる。
【0015】
この場合、室外熱交換器には放熱器を経た冷媒に加えて、圧縮機から吐出された高温の冷媒がホットガス除霜用回路を経て減圧されること無く、流入するので、室外熱交換器の着霜は迅速且つ効果的に融解除去されるようになる。また、室外熱交換器から出た冷媒は減圧された後、発熱機器用熱交換器に流入して発熱機器から熱を汲み上げるので、車室内の暖房と室外熱交換器の除霜に必要な熱量が確保され、車両の発熱機器は良好に冷却されることになる。これらにより、総じて室外熱交換器の除霜時間の短縮と、快適な車室内空調を実現することができるようになる。
【0016】
また、請求項2の発明の如く、圧縮機の吐出側に流量制御弁を設け、制御装置が流量制御弁により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に分配する割合を制御するようにすれば、例えば車室内の暖房要求に応じて放熱器に流す割合とホットガス除霜用回路に流す割合を調整することで、快適な車室内空調と室外熱交換器の除霜時間短縮をより適切に両立させることが可能となる。
【0017】
また、請求項3の発明の如く制御装置が、圧縮機から吐出された全ての冷媒をホットガス除霜用回路に流入させ、室外熱交換器に流して放熱させると共に、放熱した当該冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器と吸熱器に流して吸熱させる除霜モードを実行するようにすれば、搭乗者が車室内に居ない場合は除霜モードを実行することで、圧縮機から吐出された高温の冷媒をホットガス除霜用回路から全て室外熱交換器に流し、強力に室外熱交換器を除霜することができるようになる。この場合も、室外熱交換器から出た冷媒は発熱機器用熱交換器にて発熱機器から熱を汲み上げ、吸熱器にて空気流通路内の空気から熱を汲み上げるので、室外熱交換器は迅速に除霜されることになる。
【0018】
また、請求項4の発明の如く制御装置が、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器とホットガス除霜用回路に流し、放熱器にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器に流し、この室外熱交換器から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器と吸熱器に流し、これら発熱機器用熱交換器と吸熱器にて吸熱させる除湿/除霜モードを実行するようにすれば、例えば前述した暖房/除霜モード中等に車室内の除湿要求が生じた場合には、除湿/除霜モードに切り換えることで、吸熱器にて空気流通路内の空気を除湿し、車室内の快適性を担保することができるようになる。
【0019】
また、請求項5の発明の如く暖房モードにおいて、放熱器から出た冷媒の一部が分流され、減圧された後、発熱機器用熱交換器に流入し、この発熱機器用熱交換器にて吸熱するようにすれば、暖房モードにおいても発熱機器から熱を汲み上げて放熱器にて空気流通路内の空気を加熱することができるようになり、車室内の暖房性能の向上と車両の発熱機器の冷却の双方を実現することが可能となる。
【0020】
また、請求項6の発明の如く制御装置が、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器にて放熱させ、減圧した後、吸熱器に流して吸熱させる冷房モードを実行するときに、この冷房モードにおいても室外熱交換器から出た冷媒の一部を分流し、減圧した後、発熱機器用熱交換器に流入させ、この発熱機器用熱交換器にて吸熱させるようにすることで、車室内を冷房しながら車両の発熱機器の冷却も行うことができるようになる。
【0021】
そして、請求項7の発明の如く高圧側の冷媒の一部を分流し、減圧した後、圧縮機の圧縮途中に戻すためのインジェクション回路を設けることで、特に外気温が低く、圧縮機に吸い込まれる冷媒の密度が低くなる環境下において、圧縮機から吐出される冷媒の流量の増加を実現し、車室内の暖房と除霜性能の向上を図ることができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明を適用した一実施形態の車両用空気調和装置の構成図である。
図2図1の車両用空気調和装置のコントローラの電気回路のブロック図である。
図3図2のコントローラによる暖房モードの冷媒の流れを説明する図である。
図4図3の暖房モードでのP−h線図である。
図5図2のコントローラによる除湿モードの冷媒の流れを説明する図である。
図6図2のコントローラによる冷房モードの冷媒の流れを説明する図である。
図7図6の冷房モードでのP−h線図である。
図8図2のコントローラによる暖房/除霜モードの冷媒の流れを説明する図である。
図9図8の暖房/除霜モードでのP−h線図である。
図10図2のコントローラによる除湿/除霜モードの冷媒の流れを説明する図である。
図11図2のコントローラによる除霜モードの冷媒の流れを説明する図である。
図12図11の除霜モードでのP−h線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、外部電源からバッテリに充電(プラグイン)された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房を行い、更に、除湿や冷房、除霜等の各運転モードを選択的に実行するものである。
【0024】
尚、車両として係る電気自動車に限らず、エンジン(内燃機関)と走行用の電動モータを併用する所謂ハイブリッド自動車や、エンジンにて走行する通常の自動車にも本発明の車両用空気調和装置1は有効である。
【0025】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内の空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられて圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る第1の室外膨張弁6と、冷房時には放熱器(冷媒を放熱させる放熱器)として機能し、暖房時には蒸発器(冷媒を吸熱させる蒸発器)として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13(13A〜13Q)により接続され、冷媒回路Rが構成されている。尚、この冷媒回路R内には所定量の冷媒とオイルが封入されている。また、室外熱交換器7には、外気と冷媒とを熱交換させるための室外送風機15が設けられている。
【0026】
この場合、圧縮機2の吐出側の冷媒配管13Aには流量制御弁14の冷媒入口が接続されており、この流量制御弁14の一方の冷媒出口が冷媒配管13Bを介して放熱器4の冷媒入口に接続されている。放熱器4の冷媒出口に接続された冷媒配管13Cは、電磁弁16と逆止弁17を介してインジェクション熱交換器18の第1の流路18Aの冷媒入口に接続されている。この場合、逆止弁17はインジェクション熱交換器18側が順方向とされている。冷媒配管13Cの電磁弁16の冷媒上流側には、冷媒配管13Dが分岐接続されており、この冷媒配管13Dは電磁弁19を介して室外熱交換器7の冷媒入口に接続されている。
【0027】
流量制御弁14の他方の冷媒出口は冷媒配管13Eを介して電磁弁19の冷媒下流側の冷媒配管13Dに接続されている。これら冷媒配管13Eと冷媒配管13Dの一部により本発明におけるホットガス除霜用回路21が構成される。流量制御弁14は、冷媒入口に流入した冷媒を、一方の冷媒出口と他方の冷媒出口に分配し、且つ、各冷媒出口に分配する冷媒量を、それぞれ0〜100%の範囲で連続的に制御することができる弁である。
【0028】
インジェクション熱交換器18の第1の流路18Aの冷媒出口には冷媒配管13Fが接続されており、この冷媒配管13Fは電磁弁22、逆止弁23、及び、前記第1の室外膨張弁6を介して電磁弁19の冷媒下流側の冷媒配管13Dに接続されている。この場合、逆止弁23は第1の室外膨張弁6側が順方向とされている。
【0029】
室外熱交換器7の冷媒出口には冷媒配管13Gが接続されており、この冷媒配管13Gは電磁弁24を介してアキュムレータ12の冷媒入口に接続されている。そして、アキュムレータ12の冷媒出口が圧縮機2の吸込側の冷媒配管13Iに接続されている。冷媒配管13Gの電磁弁24の冷媒上流側には、冷媒配管13Jが分岐接続されており、この冷媒配管13Jは逆止弁26を介して逆止弁17の冷媒下流側の冷媒配管13Cに接続されている。この場合、逆止弁26は冷媒配管13C側が順方向とされている。
【0030】
冷媒配管13Fの電磁弁22の冷媒上流側には、冷媒配管13Kが分岐接続されており、この冷媒配管13Kは前記室内膨張弁8を介して吸熱器9の冷媒入口に接続されている。吸熱器9の冷媒出口には冷媒配管13Lが接続されており、この冷媒配管13Lは逆止弁27を介してアキュムレータ12と電磁弁24の間の冷媒配管13Gに接続されている。
【0031】
冷媒配管13Kの室内膨張弁8の冷媒上流側には、冷媒配管13Mが分岐接続されており、この冷媒配管13Mは電磁弁28(手動式の弁でも良い)、第2の室外膨張弁29を介して発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aの冷媒入口に接続されている。この発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aの冷媒出口には冷媒配管13Nが接続されており、この冷媒配管13Nは冷媒配管13Lの逆止弁27の冷媒下流側に接続されている。
【0032】
逆止弁17とインジェクション熱交換器18の間の冷媒配管13Cには、冷媒配管13Pが分岐接続されており、この冷媒配管13Pは電磁弁32、第3の室外膨張弁33を介してインジェクション熱交換器18の第2の流路18Bの冷媒入口に接続されている。この第2の流路18Bの冷媒出口には冷媒配管13Qが接続されており、この冷媒配管13Qは逆止弁34を介して圧縮機2の中間圧部に接続されている。この逆止弁34は圧縮機2側が順方向とされており、これら冷媒配管13P、電磁弁32、第3の室外膨張弁33、インジェクション熱交換器18の第2の流路18B、冷媒配管13Q、逆止弁34により、圧縮機2の圧縮途中に冷媒を戻すためのインジェクション回路36が構成される。
【0033】
発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bは発熱機器冷却装置37の一部を構成する。この発熱機器冷却装置37は、発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bと、この第2の流路31Bと発熱機器39との間に渡る熱媒体循環回路40と、この熱媒体循環回路40内で熱媒体を循環させる循環ポンプ38とから構成され、冷媒によって冷却される熱媒体を循環ポンプ38で発熱機器39に循環し、当該発熱機器39を冷却する装置である。尚、この発熱機器39としては、例えば車両に搭載された前記バッテリや走行用の電動モータ、当該電動モータの制御用インバータ等が挙げられる。また、使用する熱媒体としては水、HFO−1234fのような冷媒、クーラント等の液体、空気等の気体が採用可能である。
【0034】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口41で代表して示す)、この吸込口41には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ42が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ42の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)43が設けられている。
【0035】
また、放熱器4の空気上流側における空気流通路3内には、内気や外気の放熱器4への流通度合いを調整するエアミックスダンパ44が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、フット、ベント、デフの各吹出口(図1では代表して吹出口46で示す)が形成されており、この吹出口46には上記各吹出口からの空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ47が設けられている。
【0036】
次に、図2において52は、マイクロプロセッサを備えたマイクロコンピュータから構成された制御装置としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ52の入力には車両の外気温度を検出する外気温度センサ53と、外気湿度を検出する外気湿度センサ54と、吸込口41から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ56と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ57と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ58と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ59と、吹出口46から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ61と、圧縮機2の吐出冷媒圧力を検出する吐出圧力センサ62と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ63と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ64と、放熱器4の温度を検出する放熱器温度センサ66と、放熱器4の冷媒圧力を検出する放熱器圧力センサ67と、吸熱器9の温度を検出する吸熱器温度センサ68と、吸熱器9の冷媒圧力を検出する吸熱器圧力センサ69と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ71と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ72と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調操作部(エアコン操作部)73と、室外熱交換器7の温度を検出する室外熱交換器温度センサ74と、室外熱交換器7の冷媒圧力を検出する室外熱交換器圧力センサ76の各出力が接続されている。
【0037】
また、コントローラ52の入力には更に、インジェクション回路36に流入し、インジェクション熱交換器18の第2の流路18Bを経て冷媒配管13Qから圧縮機2の圧縮途中に戻るインジェクション冷媒の温度を検出するインジェクション温度センサ77と、該インジェクション冷媒の圧力を検出するインジェクション圧力センサ78の各出力も接続されている。
【0038】
一方、コントローラ52の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)43と、吸込切換ダンパ42と、エアミックスダンパ44と、吹出口切換ダンパ47と、第1の室外膨張弁6と、第2の室外膨張弁29と、第3の室外膨張弁33と、室内膨張弁8と、流量制御弁14と、各電磁弁16、19、22、24、28、32と、循環ポンプ38が接続されている。そして、コントローラ52は各センサの出力と空調操作部72にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
【0039】
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ52は実施例では暖房モードと、除湿モードと、冷房モードと、暖房/除霜モードと、除湿/除霜モードと、除霜モードの各運転モードを切り換えて実行する。以下、各運転モードの動作について説明する。
【0040】
(1)暖房モード
先ず、図3及び図4を用いて暖房モードの動作を説明する。コントローラ52により、或いは、空調操作部73へのマニュアル操作により暖房モードが選択されると、コントローラ52は流量制御弁14を制御して、圧縮機2から吐出された全て(100%)の冷媒が放熱器4に流入するようにし、電磁弁16、22、24、28、32を開き、電磁弁19を閉じる。また、第1〜第3の室外膨張弁6、29、33は開いてその弁開度を制御する状態とし、室内膨張弁8は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、43を運転し、エアミックスダンパ44は室内送風機43から吹き出された空気が放熱器4に通風される状態とする。また、発熱機器冷却装置37の循環ポンプ38を運転する。
【0041】
これにより、図3中矢印で示す如く、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は流量制御弁14を経た後、全て放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0042】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13C、電磁弁16、逆止弁17を流れ、一部はインジェクション回路36の冷媒配管13Pに分流され、主にはインジェクション熱交換器18の第1の流路18Aを経て冷媒配管13Fに入る。この冷媒配管13Fに入った冷媒は、電磁弁22、逆止弁23を順次経て、第1の室外膨張弁6に至る。第1の室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。
【0043】
室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13G及び電磁弁24を経てアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Iから圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0044】
また、インジェクション熱交換器18の第1の流路18Aを出た冷媒の一部は分流され、冷媒配管13K、冷媒配管13M、電磁弁28を順次経て、第2の室外膨張弁29に至る。第2の室外膨張弁29に流入した冷媒はそこで減圧された後、発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入する。発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入した冷媒は蒸発し、第2の流路31Bに循環されている熱媒体から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。
【0045】
そして、第1の流路31Aを出た冷媒は冷媒配管13N、冷媒配管13Lを経てアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Iから圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bで冷媒から吸熱され、冷却された熱媒体は熱媒体循環回路40を経て発熱機器39に至り、この発熱機器39と熱交換して当該発熱機器39から熱を汲み上げ、自らは温度が上昇した後、循環ポンプ38により発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bに向かい、発熱機器39自体は冷却される。これにより、外気と発熱機器39から汲み上げた熱が放熱器4に搬送され、この放熱器4にて加熱された空気が吹出口46から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0046】
一方、インジェクション回路36の冷媒配管13Pに流入した冷媒は、電磁弁32を経て第3の室外膨張弁33で減圧された後、インジェクション熱交換器18の第2の流路18Bに入り、そこで第1の流路18Aを流れる冷媒(放熱器4から出た冷媒回路Rの高圧側の冷媒)と熱交換し、吸熱して蒸発する。蒸発したガス冷媒はその後、冷媒配管13Q、逆止弁34を経て圧縮機2の圧縮途中に戻り、アキュムレータ12から吸い込まれて圧縮されている冷媒と共に更に圧縮された後、再度圧縮機2から冷媒配管13Aに吐出されることになる。
【0047】
図4にこの暖房モードにおける冷媒回路RのP−h線図を示す。図4においてX1で示す線がインジェクション回路36で圧縮機2に戻される冷媒である。インジェクション回路36から圧縮機2の圧縮途中に冷媒を戻すことにより、圧縮機2から吐出される冷媒量が増大するので、低外気温環境下で圧縮機2に吸い込まれる冷媒の密度が低くなっても、放熱器4における暖房能力を確保することができるようになる。
【0048】
コントローラ52は、実施例では放熱器圧力センサ67(又は吐出圧力センサ62)が検出する冷媒回路Rの高圧側の圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、目標吹出温度、放熱器温度センサ66が検出する放熱器4の温度、放熱器圧力センサ67が検出する放熱器4の冷媒圧力に基づいて第1及び第2の室外膨張弁6、29の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度を制御する。
【0049】
(2)除湿モード
次に、図5を参照しながら除湿モードの動作について説明する。コントローラ52により、或いは、空調操作部73へのマニュアル操作による除湿要求があって除湿モードが選択されると、コントローラ52は上記暖房モードの状態において室内膨張弁8を開き、弁開度を制御する状態とする。これにより、冷媒配管13Kに流入した冷媒の一部は前述同様に冷媒配管13Mに流れ、残りは図5中矢印で示すように室内膨張弁8に至るようになる。そして、室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機43から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0050】
吸熱器9で蒸発した冷媒は、逆止弁27を経て発熱機器用熱交換器31からの冷媒と合流した後、冷媒配管13L、アキュムレータ12、冷媒配管13Iを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(リヒート)されるので、これにより車室内の除湿が行われることになる。
【0051】
コントローラ52は吐出圧力センサ62又は放熱器圧力センサ67が検出する冷媒回路Rの高圧側の圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ68が検出する吸熱器9の温度に基づいて第1、及び、第2の室外膨張弁6、29の弁開度を制御する。
【0052】
(3)冷房モード
先ず、図6及び図7を用いて冷房モードの動作を説明する。コントローラ52により、或いは、空調操作部73へのマニュアル操作により冷房モードが選択されると、コントローラ52は流量制御弁14を制御して、圧縮機2から吐出された全ての冷媒が放熱器4に流入するようにし、電磁弁16、22、24、32を閉じ、電磁弁19、28を開く。また、室内膨張弁8、及び、第2の室外膨張弁29は開いてその弁開度を制御する状態とする(第1及び第3の室外膨張弁6、33の弁開度は問わない)。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、43を運転し、エアミックスダンパ44は室内送風機43から吹き出された空気が放熱器4に通風されない状態とする。また、発熱機器冷却装置37の循環ポンプ38を運転する。
【0053】
これにより、図6中矢印で示す如く圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は流量制御弁14を経た後、全て放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されないので、ここは通過するのみとなる。この放熱器4を出た冷媒は、冷媒配管13Cを経て冷媒配管13Dに入り、電磁弁19を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中に放熱し、凝縮して液化する。
【0054】
そして、室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Gから冷媒配管13Jに流れ、逆止弁26を経て逆止弁17の冷媒下流側の冷媒配管13Cに流入する。冷媒配管13Cに流入した冷媒はインジェクション熱交換器18の第1の流路18Aを経て冷媒配管13Fに入り、次に冷媒配管13Kに入る。尚、電磁弁32は閉じているので冷媒はインジェクション回路36には分流されない。
【0055】
冷媒配管13Kに流入した冷媒の一部は分流されて前述同様に冷媒配管13Mに流れ、残りは室内膨張弁8に至る。そして、室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機43から吹き出された空気は冷却される。一方、冷媒配管13Mに分流された冷媒は、電磁弁28を経て第2の室外膨張弁29に至る。第2の室外膨張弁29に流入した冷媒はそこで減圧された後、発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入する。発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入した冷媒は蒸発し、第2の流路31Bに循環されている熱媒体を冷却して、前述同様に発熱機器39を冷却する。
【0056】
そして、第1の流路31Aを出た冷媒は冷媒配管13Nに流出する。また、吸熱器9で蒸発した冷媒は逆止弁27を経て発熱機器用熱交換器31からの冷媒と合流した後、冷媒配管13L、アキュムレータ12、冷媒配管13Iを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却された空気は吹出口46から吹き出されるので、これにより車室内が冷房されることになる。
【0057】
図7にこの冷房モードにおける冷媒回路RのP−h線図を示す。図7においてX2で示す線は吸熱器9と発熱機器39からの吸熱分であるので、この冷房モードにおいても車両に搭載された発熱機器39の冷却を行うことができるようになる。コントローラ52は吸熱器温度センサ68が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0058】
(4)暖房/除霜モード
次に、図8及び図9を用いて暖房/除霜モードの動作を説明する。前述した暖房モードでは室外熱交換器7で冷媒が蒸発するため、外気中の水分が霜となって付着し、外気との熱交換性能が悪化する。そこで、実施例ではコントローラ52は、暖房モード中に空調操作部73へのマニュアル操作で除霜要求が行われた場合、又は、室外熱交換器7の冷媒の蒸発温度の低下に基づいて着霜状態を判定し、着霜している場合には運転状態を暖房/除霜モードに切り換える。
【0059】
この暖房/除霜モードでは、コントローラ52は流量制御弁14を制御して、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒が放熱器4とホットガス除霜用回路21の双方に流入するようにし、電磁弁19、28、32を開き、電磁弁16、22、24を閉じる。また、第2、及び、第3の室外膨張弁29、33は開いてその弁開度を制御する状態とし、室内膨張弁8の弁開度は全閉とする(第1の室外膨張弁6の弁開度は問わない)。そして、圧縮機2、及び、室内送風機43は運転し、エアミックスダンパ44は室内送風機43から吹き出された空気が放熱器4に通風される状態とする。また、室外送風機15は停止し、発熱機器冷却装置37の循環ポンプ38を運転する。
【0060】
これにより、図8中矢印で示す如く圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は流量制御弁14で分流され、一部は放熱器4に流入し、残りはホットガス除霜用回路21に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱される。放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Cを経て減圧されること無く、電磁弁19から冷媒配管13Dに流入する。
【0061】
一方、ホットガス除霜用回路21に流入した高温高圧のガス冷媒は、放熱器4を経ること無く、且つ、減圧されること無く冷媒配管13E内を流れ、電磁弁19の冷媒下流側の冷媒配管13Dで放熱器4からの冷媒と合流した後、室外熱交換器7に流入する。このようにして室外熱交換器7には高温の冷媒が減圧されること無く流入するので、室外熱交換器7は加熱され、強力に除霜されることになる。
【0062】
この室外熱交換器7に流入した冷媒は当該室外熱交換器7に成長した霜の融解に熱を使われて冷却され、凝縮液化した後、冷媒配管13G、冷媒配管13J、逆止弁26を経て逆止弁17の冷媒下流側の冷媒配管13Cに入る。冷媒配管13Cに入った冷媒の一部はインジェクション回路36の冷媒配管13Pに分流され、主にはインジェクション熱交換器18の第1の流路18Aを経て冷媒配管13Fに入る。この冷媒配管13Fに入った冷媒は冷媒配管13Kに流れ、次に冷媒配管13M、電磁弁28を順次経て、第2の室外膨張弁29に至る。
【0063】
第2の室外膨張弁29に流入した冷媒はそこで減圧された後、発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入する。発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入した冷媒は蒸発し、第2の流路31Bに循環されている熱媒体から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。そして、第1の流路31Aを出た冷媒は冷媒配管13N、冷媒配管13Lを順次経てアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が冷媒配管13Iから圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
【0064】
発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bで冷媒から吸熱され、冷却された熱媒体は熱媒体循環回路40を経て発熱機器39に至り、この発熱機器39と熱交換して当該発熱機器39から熱を汲み上げ、自らは温度が上昇した後、循環ポンプ38により発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bに向かい、発熱機器39自体は冷却される。これにより、発熱機器39から汲み上げた熱が放熱器4や室外熱交換器7に搬送され、この放熱器4にて加熱された空気が吹出口46から吹き出されるので、車室内の暖房が行われ、室外熱交換器7は除霜されることになる。
【0065】
一方、インジェクション回路36の冷媒配管13Pに流入した冷媒は、電磁弁32を経て第3の室外膨張弁33で減圧された後、インジェクション熱交換器18の第2の流路18Bに入り、そこで第1の流路18Aを流れる冷媒(放熱器4から出た冷媒回路Rの高圧側の冷媒)と熱交換し、吸熱して蒸発する。蒸発したガス冷媒はその後、冷媒配管13Q、逆止弁34を経て圧縮機2の圧縮途中に戻り、アキュムレータ12から吸い込まれて圧縮されている冷媒と共に更に圧縮された後、再度圧縮機2から冷媒配管13Aに吐出されることになる。
【0066】
図9にこの暖房/除霜モードにおける冷媒回路RのP−h線図を示す。図9においてX1で示す線が前述同様にインジェクション回路36で圧縮機2に戻される冷媒である。インジェクション回路36から圧縮機2の圧縮途中に冷媒を戻すことにより、圧縮機2から吐出される冷媒量が増大するので、低外気温環境下で圧縮機2に吸い込まれる冷媒の密度が低くなっても、放熱器4における暖房能力と室外熱交換器7の除霜能力を確保することができるようになる。
【0067】
コントローラ52は、実施例では放熱器圧力センサ67(又は吐出圧力センサ62)が検出する冷媒回路Rの高圧側の圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、目標吹出温度、放熱器温度センサ66が検出する放熱器4の温度、放熱器圧力センサ67が検出する放熱器4の冷媒圧力に基づいて第2の室外膨張弁29の弁開度と流量制御弁14による冷媒の分配割合を制御する。
【0068】
この場合、例えばコントローラ52は車室内の暖房要求がある場合(目標吹出温度より車室内の温度が低く、その差が大きい、或いは、目標吹出温度から算出される目標放熱器圧力より放熱器4の圧力が低く、その差が大きい等)は、放熱器4に流す冷媒量をホットガス除霜用回路21に流す冷媒量よりも多くする。一方、例えば車室内の暖房要求が無い、或いは、小さい場合(上記差が小さい等)には、コントローラ52はホットガス除霜用回路21に流す冷媒量を放熱器4に流す冷媒量よりも多くして室外熱交換器7の除霜を優先する。
【0069】
(5)除湿/除霜モード
次に、図10を参照しながら除湿/除霜モードの動作について説明する。上記暖房/除霜モードにおいてコントローラ52により、或いは、空調操作部73へのマニュアル操作による除湿要求があった場合、コントローラ52は除湿/除霜モードに切り換える。この除湿/除霜モードでは、コントローラ52は上記暖房/除霜モードの状態において室内膨張弁8を開き、弁開度を制御する状態とする。これにより、冷媒配管13Kに流入した冷媒の一部は前述同様に冷媒配管13Mに流れ、残りは図10中矢印で示すように室内膨張弁8に至るようになる。そして、室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機43から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0070】
吸熱器9で蒸発した冷媒は逆止弁27を経て発熱機器用熱交換器31からの冷媒と合流した後、冷媒配管13L、アキュムレータ12、冷媒配管13Iを順次経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(リヒート)されるので、これにより室外熱交換器7の除霜を行いながら、車室内の除湿が行われることになる。その他は暖房/除霜モードの場合と同様である。
【0071】
(6)除霜モード
また、例えば車両を停車して外部電源からバッテリに充電している間、車室内に搭乗者が居ない状態で室外熱交換器7の除霜を行う等の場合には、コントローラ52は除霜モードを実行する。次に、図11及び図12を参照しながら除霜モードについて説明する。この除霜モードでは、コントローラ52は流量制御弁14を制御して、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒の全て(100%)がホットガス除霜用回路21に流入するようにし、電磁弁28、32を開き、電磁弁16、19、22、24を閉じる。
【0072】
また、室内膨張弁8、第2、及び、第3の室外膨張弁29、33は開いてその弁開度を制御する状態とする(第1の室外膨張弁6の弁開度は問わない)。そして、圧縮機2、及び、室内送風機43は運転し、エアミックスダンパ44は室内送風機43から吹き出された空気が放熱器4に通風されない状態とする。また、室外送風機15は停止し、発熱機器冷却装置37の循環ポンプ38を運転する。
【0073】
これにより、図11中矢印で示す如く圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は、その全てが流量制御弁14からホットガス除霜用回路21に流入する。ホットガス除霜用回路21に流入した高温高圧のガス冷媒は、放熱器4を経ること無く、且つ、減圧されること無く冷媒配管13E内を流れ、電磁弁19の冷媒下流側で冷媒配管13Dに入り、室外熱交換器7に流入する。このようにして室外熱交換器7には大量の高温冷媒が減圧されること無く流入するので、室外熱交換器7は強力に加熱され、迅速に除霜されることになる。
【0074】
この室外熱交換器7に流入した冷媒は当該室外熱交換器7に成長した霜の融解に熱を使われて冷却され、凝縮液化した後、冷媒配管13Gから冷媒配管13Jに入り、逆止弁26を経て逆止弁17の冷媒下流側の冷媒配管13Cに入る。冷媒配管13Cに入った冷媒の一部はインジェクション回路36の冷媒配管13Pに分流され、主にはインジェクション熱交換器18の第1の流路18Aを経て冷媒配管13Fに入る。この冷媒配管13Fに入った冷媒は冷媒配管13Kに流れ、一部は冷媒配管13M、電磁弁28を順次経て、第2の室外膨張弁29に至り、残りは室内膨張弁8に至る。
【0075】
第2の室外膨張弁29に流入した冷媒はそこで減圧された後、発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入する。発熱機器用熱交換器31の第1の流路31Aに流入した冷媒は蒸発し、第2の流路31Bに循環されている熱媒体から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。そして、第1の流路31Aを出た冷媒は冷媒配管13Nに流出する。
【0076】
また、室内膨張弁8に流入した冷媒はそこで減圧された後、吸熱器9に流入する。吸熱器9に流入した冷媒は蒸発し、空気流通路3内を流通する空気から熱を汲み上げる(ヒートポンプ)。吸熱器9で蒸発した冷媒は逆止弁27を経て発熱機器用熱交換器31からの冷媒と合流した後、冷媒配管13L、アキュムレータ12、冷媒配管13Iを順次経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返すことになる。
【0077】
発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bで冷媒から吸熱され、冷却された熱媒体は熱媒体循環回路40を経て発熱機器39に至り、この発熱機器39と熱交換して当該発熱機器39から熱を汲み上げ、自らは温度が上昇した後、循環ポンプ38により発熱機器用熱交換器31の第2の流路31Bに向かい、発熱機器39自体は冷却される。これにより、空気流通路3を流通する空気と発熱機器39から汲み上げた熱が室外熱交換器7に搬送されるので、室外熱交換器7は迅速に除霜されることになる。
【0078】
一方、インジェクション回路36の冷媒配管13Pに流入した冷媒は、電磁弁32を経て第3の室外膨張弁33で減圧された後、インジェクション熱交換器18の第2の流路18Bに入り、そこで第1の流路18Aを流れる冷媒(放熱器4から出た冷媒回路Rの高圧側の冷媒)と熱交換し、吸熱して蒸発する。蒸発したガス冷媒はその後、冷媒配管13Q、逆止弁34を経て圧縮機2の圧縮途中に戻り、アキュムレータ12から吸い込まれて圧縮されている冷媒と共に更に圧縮された後、再度圧縮機2から冷媒配管13Aに吐出されることになる。
【0079】
図12にこの除霜モードにおける冷媒回路RのP−h線図を示す。図12においてもX1で示す線が前述同様にインジェクション回路36で圧縮機2に戻される冷媒である。インジェクション回路36から圧縮機2の圧縮途中に冷媒を戻すことにより、圧縮機2から吐出される冷媒量が増大するので、低外気温環境下で圧縮機2に吸い込まれる冷媒の密度が低くなっても、室外熱交換器7の除霜能力を確保することができるようになる。
【0080】
コントローラ52は室外熱交換器7の温度が所定の除霜終了温度に上昇した時点で除霜モードを終了する。尚、前述した暖房/除霜モード、除湿/除霜モードも同様であり、室外熱交換器7の温度が除霜終了温度に上昇したことで暖房モード、除湿モードにそれぞれ移行することになる。
【0081】
以上のように本発明では、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流して放熱させ、この放熱器4から出た冷媒を減圧した後、室外熱交換器7に流し、この室外熱交換器7にて吸熱させる暖房モードを実行する車両用空気調和装置1において、冷媒を吸熱させて車両の発熱機器39を冷却するための発熱機器用熱交換器31と、圧縮機2の吐出側から分岐し、圧縮機2から吐出された冷媒を、放熱器4を経ること無く室外熱交換器7に流すためのホットガス除霜用回路21を備え、コントローラ52が、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4とホットガス除霜用回路21に流し、放熱器4にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路21に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器7に流し、この室外熱交換器7から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器31に流し、この発熱機器用熱交換器31にて吸熱させる暖房/除霜モードを実行するようにしたので、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒を放熱器4に流して車室内を暖房しながら、室外熱交換器7を除霜することができるようになる。
【0082】
この場合、室外熱交換器7には放熱器4を経た冷媒に加えて、圧縮機2から吐出された高温の冷媒がホットガス除霜用回路21を経て減圧されること無く、流入するので、室外熱交換器7の着霜は迅速且つ効果的に融解除去されるようになる。また、室外熱交換器7から出た冷媒は減圧された後、発熱機器用熱交換器31に流入して発熱機器39から熱を汲み上げるので、車室内の暖房と室外熱交換器7の除霜に必要な熱量が確保され、車両の発熱機器39は良好に冷却されることになる。これらにより、総じて室外熱交換器7の除霜時間の短縮と、快適な車室内空調を実現することができるようになる。
【0083】
また、実施例では圧縮機2の吐出側の冷媒配管13Aに流量制御弁14を設け、コントローラ52が流量制御弁14により、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4とホットガス除霜用回路21に分配する割合を制御するようにしたので、実施例の如く車室内の暖房要求に応じて放熱器4に流す割合とホットガス除霜用回路21に流す割合を調整することで、快適な車室内空調と室外熱交換器7の除霜時間短縮をより適切に両立させることが可能となる。
【0084】
また、実施例ではコントローラ52が、圧縮機2から吐出された全ての冷媒をホットガス除霜用回路21に流入させ、室外熱交換器7に流して放熱させると共に、放熱した当該冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器31と吸熱器9に流して吸熱させる除霜モードを実行するようにしたので、搭乗者が車室内に居ない場合は除霜モードを実行することで、圧縮機2から吐出された高温の冷媒をホットガス除霜用回路21から全て室外熱交換器7に流し、強力に室外熱交換器7を除霜することができるようになる。この場合も、室外熱交換器7から出た冷媒は発熱機器用熱交換器31にて発熱機器39から熱を汲み上げ、吸熱器9にて空気流通路3内の空気から熱を汲み上げるので、室外熱交換器7は迅速に除霜されることになる。
【0085】
また、実施例ではコントローラ52が、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4とホットガス除霜用回路21に流し、放熱器4にて冷媒を放熱させ、放熱した当該冷媒とホットガス除霜用回路21に流入した冷媒を減圧すること無く室外熱交換器7に流し、この室外熱交換器7から出た冷媒を減圧した後、発熱機器用熱交換器31と吸熱器9に流し、これら発熱機器用熱交換器31と吸熱器9にて吸熱させる除湿/除霜モードを実行するようにしたので、例えば前述した暖房/除霜モード中等に車室内の除湿要求が生じた場合には、除湿/除霜モードに切り換えることで、吸熱器9にて空気流通路3内の空気を除湿し、車室内の快適性を担保することができるようになる。
【0086】
また、実施例では暖房モードにおいて、放熱器4から出た冷媒の一部が分流され、減圧された後、発熱機器用熱交換器31に流入し、この発熱機器用熱交換器31にて吸熱するようにしているので、暖房モードにおいても発熱機器39から熱を汲み上げて放熱器4にて空気流通路3内の空気を加熱することができるようになり、車室内の暖房性能の向上と車両の発熱機器39の冷却の双方を実現することが可能となる。
【0087】
また、実施例ではコントローラ52が、圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7にて放熱させ、減圧した後、吸熱器9に流して吸熱させる冷房モードを実行するときに、この冷房モードにおいても室外熱交換器7から出た冷媒の一部を分流し、減圧した後、発熱機器用熱交換器31に流入させ、この発熱機器用熱交換器31にて吸熱させるようにしたので、車室内を冷房しながら車両の発熱機器39の冷却も行うことができるようになる。
【0088】
そして、実施例では冷媒回路Rの高圧側の冷媒の一部を分流し、減圧した後、圧縮機2の圧縮途中に戻すためのインジェクション回路36を設けているので、特に外気温が低く、圧縮機2に吸い込まれる冷媒の密度が低くなる環境下において、圧縮機2から吐出される冷媒の流量の増加を実現し、車室内の暖房と除霜性能の向上を図ることができるようになる。
【0089】
尚、上記実施例ではコントローラ52が暖房モード、除湿モード、冷房モード、暖房/除霜モード、除湿/除霜モード、除霜モードの各運転モードを実行するようにしたが、請求項1や請求項2の発明ではそれに限らず、暖房モードと暖房/除霜モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置1や、それらに除湿モード、冷房モード、除霜モードを組み合わせて実行するものにも本発明は有効である。
【0090】
また、実施例では暖房モードや冷房モードにおいて発熱機器39を冷却するようにしたが、請求項5や請求項6、及び、それに関連する請求項7以外の発明は、それらの運転モードにおいて発熱機器39を冷却しない場合にも有効である。また、請求項7以外の発明は、インジェクション回路36を有しない車両用空気調和装置1にも有効である。
【0091】
更に、上記実施例で説明した冷媒回路Rの構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 第1の室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
13 冷媒配管
16、19、22、24、28、32 電磁弁
21 ホットガス除霜用回路
29 第2の室外膨張弁
31 発熱機器用熱交換器
33 第3の室外膨張弁
36 インジェクション回路
37 発熱機器冷却装置
39 発熱機器
40 熱媒体循環回路
43 室内送風機(ブロワファン)
44 エアミックスダンパ
R 冷媒回路
図1
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