(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維基材は、繊維母材層の一方の面の少なくともコンクリート等接触面には、水に溶解又は分散が可能な親水性物質層が存在し、繊維母材層の他方の面には平滑基材に吸着する吸着層が積層されている。吸着層は、独立発泡軟質樹脂層の表面発泡部が開口した状態であり、平滑基材に向けて押圧すると吸着することから、剥離シートは不要であり、砂塵が付いても簡単に落ちるため、貼り直しもできる。この点が本質的に粘着層とは異なる。
【0011】
吸着層は、例えば合成樹脂材料を発泡させ、この発泡体は独立気泡体からなり、かつ表面部の気泡体は外気と連通する開口を有する吸盤構造を形成したものが挙げられる。吸着層の厚さは1〜2mm程度が好ましい。気泡体の形状は特に制限されるものではなく、円球形状、扁平形状、その他任意の形状であって良く、また気泡体の大きさは、通常1〜100μm程度である。吸着層を構成する樹脂は軟質樹脂が好ましく、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、SBR、NR等の合成樹脂材料またはゴムを独立発泡させ、吸盤構造を形成したものが好ましい。
【0012】
本発明の繊維母材層は、少なくともコンクリート等接触面は水に溶解又は分散が可能な親水性物質層が存在していることにより、コンクリート等打設時の閉鎖空間に存在する空気は生コンクリート等の打設による圧力により繊維母材層内を効率よく抜くことができ、その後は前記繊維母材層中をブリーディング水が通り排水される。その後は繊維母材層内に生コンクリート等の成分が浸み込んでコンクリート等に一体化される。これにより、コンクリート等打設時の閉鎖空間の空気溜りを減少ないし消滅させることが出来ると共にブリーディング水が排水されることでコンクリート等の圧縮強度が高くなる。
本発明において、生コンクリート等は未固結コンクリート、未固結モルタル又はグラウト等を意味する。未固結コンクリート、未固結モルタル又はグラウト等の総称として「生コンクリート」ともいう。
【0013】
親水性物質層は、繊維母材層の表面の少なくともコンクリート等接触面に水に溶解又は分散された状態でコーティングされ乾燥された状態で存在しているのが好ましい。親水性物質が水に溶解又は分散された状態で繊維母材層の表面にコーティングされ乾燥された状態で存在していると、生コンクリート等が打設されたとき、再溶解する。この再溶解するまでの間に凹凸部の閉鎖空間の空気は繊維母材層を通じて移動する。その後、親水性物質は生コンクリート等の水分により再溶解し、繊維母材層内に生コンクリート等の成分が浸み込んでコンクリート等に一体化される。親水性物質層は、繊維母材層の全体に含浸されていても良い。
【0014】
親水性物質は、前記繊維母材層の表面に乾燥状態で1〜1000g/m
2の割合でコーティングするのが好ましい。さらに好ましくは10〜200g/m
2である。繊維素材にもよるが、コーティング量が1g/m
2未満では効率よく空気を抜きにくい。また1000g/m
2を超えると生コンクリート等の成分が浸み込みにくくなる。親水性物質は繊維母材層の表面に存在していればよく、含浸されていても良いし、層状態で存在していても良い。好ましくは繊維母材層の表面に含浸されていることである。この状態は、親水性物質を水に溶解又は分散した状態で繊維母材層表面にコーティングすることにより得られる。
【0015】
親水性物質は水溶性接着剤(糊)が好ましい。一例を挙げると、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルデンプン、酢酸ビニル系化合物、水溶性イソシアネート系化合物、イソブテン・無水マレイン酸共重合樹脂、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、澱粉、糖類、ゼラチン等である。これらの中でも、親水性に優れるポリビニルアルコール系を含む樹脂を好適に使用することができる。なお、樹脂の状態としては、例えば、エマルジョン、ラテックス、サスペンジョン、溶液などであることができる。なお、コーティングに適した粘度に調整する為にアンモニアなどによるアルカリ増粘、アクリル系、CMC系などの増粘剤を添加することも好ましい。なお、樹脂溶出を効果的に抑えるために、架橋剤(例えば、メラミン系、オキサゾリン系、イソシアネート系等)を樹脂に添加することができる。架橋剤以外にも、生コンクリート等との接触性を良好にするために、界面活性剤を添加することもできる。更に、撥油剤、浸透剤などの機能性薬剤を樹脂に添加することができる。
【0016】
前記機能を発揮させるため、一つの試験方法として空気抜き試験を採用できる。この試験は、繊維母材層を幅50mmの帯状テープ2枚をいずれかの位置で積層一体化し、小容器の内外面に沿ってU字形に配置し、大容器に入れた生コンクリートに前記小容器を逆にして被せ、振動を与えながら前記小容器を押し込んだときの前記小容器内の空気の減少量が99%以上であることが好ましい。この測定により、小容器内の空気がほぼ完全に抜けることが確認できる。前記試験方法において小容器内の空気の減少量が99%未満では閉鎖空間の空気溜まりが残存する恐れがある。この試験方法は実施例において具体的に説明する。
【0017】
本発明の繊維母材層を構成する繊維はいかなる繊維であっても良い。具体的には、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、モダアクリル繊維、ポリエステル繊維、全芳香族ポリエステル繊維、アクリル繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ乳酸、ノボロイド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリアリレート繊維、ポリベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリケトン繊維、およびポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、羊毛繊維、綿繊維、麻繊維、セルロース繊維、パルプ繊維等の有機繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、アスベ スト繊維、玄武岩繊維等の無機繊維、ステンレス、スチールなどの金属繊維を挙げることができるが、コンクリートのアルカリにも耐えられる繊維が好ましい。具体的にはビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル系繊維、及び炭素繊維から選ばれる少なくとも一つの繊維が好ましい。これらの繊維はコンクリート補強繊維としてよく知られているものもある。例えばビニロン繊維及びポリプロピレン繊維はチョップ(短繊維)としてプレキャストコンクリートに混合している。
【0018】
本発明の繊維母材層は、水分環境下に曝される場合は撥水処理を施しておいてもよい。撥水処理する場合はフッ素系撥水剤、シリコーン系撥水剤などがあり、いずれでもよいが、フッ素系撥水処理加工は撥水性が高く好ましい。撥水性はコンクリート等打設時に必要であり、洗濯耐久性などは要求されない。撥水処理は親水性物質をコーティングする前にしておくのが好ましい。
【0019】
前記繊維の好ましい繊度は1〜100deci texであり、さらに好ましくは3〜50deci texであり、とくに好ましくは5〜30deci texである。繊度が前記の範囲であれば腰があり、コンクリート等打設時にも好ましい通気度を維持できる。
【0020】
本発明の繊維母材層で閉鎖空間に存在する空気を効率よく抜きながら、生コンクリート等と一体化する機能は、繊維母材層を構成する繊維の平均繊維径から理論計算した理論平均細孔径とよく一致する。理論平均細孔径の計算は、Wrotnowskyの式によると、繊維母材層の平均細孔径Dpは、繊維母材層を構成している繊維の平均繊維径、繊維単体の密度、繊維母材層の密度が判れば、次式により計算できる。
【0021】
【数1】
Dp:理論平均細孔径(μm)
fd:平均繊維径(μm)
ρf:繊維単体の密度(g/cm
3)
ρs:繊維母材層の密度(g/cm
3)
【0022】
閉鎖空間に存在する空気やブリーディング水を効率よく抜きながら、生コンクリート等と一体化する機能を発揮するのに好ましい理論平均細孔径は10μm以上、500μm未満である。さらに好ましくは50〜200μmであり、とくに好ましくは70〜150μmである。理論細孔径が、30μm未満では、空気溜りの空気やブリーディング水を抜く機能は有するが、生コンクリート等が滲み込んで一体化しない傾向となる。一方、500μmより大きくなると、生コンクリート等が早く滲み込んで一体化する機能は有するが、空気溜まりの空気が抜けるよりも早く生コンクリート等が繊維母材層内に滲み込むため、通気性がなくなり空気を効率よく抜くことができない傾向となる。
【0023】
前記繊維母材層のいずれかの部分には補強層(基布又はスクリムともいう)が一体化されていてもよい。補強層を一体化すると寸法安定性が向上し、貼り付け工事の際の取扱い性が良好となる。補強層は繊維母材層の表層に配置しても良いし、内部に配置しても良い。表層に配置する場合は、壁面側に配置し、補強層の外側に吸着層を配置することもできる。補強層は織物、編み物、スパンボンド不織布、ネット、樹脂層などいかなる層であっても良い。補強層の素材も前記繊維母材層と同様なものを使用できる。
【0024】
前記繊維母材層の単位面積当たりの重量(目付)は50〜3000g/m
2の範囲が好ましい。さらに好ましい目付は100〜2000g/m
2であり、とくに好ましくは200〜1000g/m
2である。目付が前記の範囲であれば、コンクリート等打設時には閉鎖空間の空気溜まりを効率よく減少ないしは消滅でき、打設後はコンクリート等に一体化される効果も期待できる。
【0025】
前記繊維基材は帯状シート(テープ)が好ましい。厚さは5.3g/cm
2の荷重を掛けたときに0.1〜20mmが好ましく、さらに好ましくは0.5〜15mm、とくに好ましくは2〜8mmである。幅は5〜200mmが好ましく、さらに好ましくは10〜150mm、とくに好ましくは20〜100mmである。前記帯状シート(長尺状シート)はテープのように巻かれた状態が好ましい。テープ巻きしておくと現場で施工する際にも取扱いが便利である。
【0026】
前記繊維母材層は、コスト面から不織布が好ましい。不織布はいかなるものであってもよく、カードウェブ、エアレイ、湿式、スパンボンド、フラッシュ紡糸、メルトブロー、ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、ウォータージェット、ステッチボンド法又はこれらの方法を任意に組み合わせた方法による不織布を使用できる。
【0027】
繊維母材層は帯状テープとし、生コンクリートの圧力方向に複数列配列するとともに、前記複数列配列した帯状テープと交差する方向に1列以上の帯状テープを配列することが好ましい。このようにすると空気やブリーディング水通路のバイパス回路が形成され、生コンクリートの圧力方向に複数列配列した繊維母材層のいずれかの列が何らかの障害ができた場合でも、バイパス回路により空気やブリーディング水を抜くことができる。交差角は任意に選択できるが、好ましくは直交(90°)である。
【0028】
次に図面を用いて説明する。下記の図面において同一符号は同一物を示す。
図1Aは本発明の一実施態様の吸着層の平面図、
図1Bは同断面図である。吸着層1は、例えば合成樹脂材料を発泡させ、この発泡体は独立気泡体3を含み、かつ表面部の気泡体は外気と連通する開口を有する吸盤構造2が形成されている。吸着層1の吸盤構造2を樹脂シート等の平滑基材に向けて押圧すると吸着する。剥離シートは不要であり、砂塵が付いても簡単に落ちるため、貼り直しもできる。
【0029】
図2Aは、同、繊維基材10の断面図である。この繊維基材10の繊維母材6は、不織布層4a,4bとその内部に補強層(スクリム)5が一体化されて形成されている。一体化する方法は厚さ方向のニードルパンチ、水流交絡、溶融孔、熱ラミネート、接着材による加工などがある。繊維母材6の一方の面(不織布層4aの表面)には吸着材層1が形成されている。吸着材層1は、繊維母材6の表面に軟質発泡樹脂をコーティングして発泡させることにより塗工できる。繊維母材6の他方の面(不織布層4bの表面)には親水性物質層7が形成されている。親水性物質層7は一例としてポリビニルアルコール水溶液を繊維母材6の表面にコーティングすることにより形成できる。
【0030】
図2Bはさらに別の実施形態の繊維基材9であり、吸着材層1に開孔部8が形成されている例である。開孔部8があると、コンクリート等打設した後、コンクリート成分が繊維母材層6を通過し、開孔部8まで侵入できる。開孔部8は繊維母材6の表面に軟質発泡樹脂をコーティングした後にエンボスローラ等により形成できる。
図2Cは同繊維基材10の帯状テープ巻きの模式的斜視図である。トンネル施工時には帯状テープ巻きの状態で使用する。
【0031】
図3Aは本発明の一実施形態のトンネル頂部のコンクリート等打設工事を示す模式的説明図である。まず、トンネル掘削面にはコンクリートを吹き付け、その表面に防水樹脂シート41を貼り付ける。防水樹脂シート41に繊維基材10を長さ方向に貼り付ける。繊維基材10のコンクリート打ち込み面には親水性物質層がコーティングにより形成されている。繊維基材10は長さ方向と直交する方向にも貼り付ける。これにより、長さ方向の繊維基材10のいずれかが何らかの障害により空気やブリーディング水が移動できなくなったとしても、バイパス回路により閉鎖空間の空気やブリーディング水を抜くことができる。
【0032】
トンネル頂部の防水樹脂シート41と型枠43との空間に生コンクリート等42を奥側から手前方向に向けて所定距離(例えば10.5m)圧入する。このとき頂部に閉鎖空間の空気溜まり44があっても、繊維基材10を通じて脱気方向45に空気が抜ける。空気溜まり44は減少するか消滅し、その分生コンクリート等42で充填される。その後、繊維基材10を通ってブルーディング水が排水され、その後、繊維基材10の内部にも生コンクリート等は含浸される。これにより、繊維基材10はコンクリート等に一体化され、その後コンクリートは硬化する。
【0033】
図3B−Dは同コンクリート施工工程を示す模式的断面図である。まず
図3Bは生コンクリート等42の打設開始時であり、繊維基材10と空気溜まり44までは達していない。生コンクリート等42の打設による圧力が高まると
図3Cに示すように空気溜まりの空気は繊維基材10内を通過して抜ける。その後、
図3Dに示すように生コンクリート等42は繊維基材10の内部まで含浸し、コンクリート等に一体化される。この状態でコンクリートは硬化する。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0035】
<繊維基材の長さ方向の通気度測定試験>
図4Aに繊維基材の通気度測定装置24を示し、
図4Bに同通気度測定装置24の排気空気計測方法を示す。まず
図4Aに示すように、直径240mm、高さ140mm、内容積6リットル程度の小容器12の内壁側面から外壁側面に沿って幅30mm、長さ300mmにカットした繊維基材2を粘着テープでU字形に配置して止めた。
図4Aには説明の簡略化のため1本の繊維基材2を示したが、実際は2本の繊維基材2をU字形に配置して止めた。次に、水17を入れた大容器16(直径270mm、高さ150mm、内容積8.5リットル程度)の水面に小容器12を逆にして被せ、8g/cm
2の荷重15を掛けた。このようにすると、小容器12の空間部に溜まっていた空気13は繊維基材2内を通過して外部に排出され、その分小容器12の水面14が上昇し、大容器16内の水面18は低下する。そこで、
図4Bに示すように水17が入った大容器16の底から150mmの位置に小容器12を一気に沈め、この水面21の位置で小容器12の外面2か所に配置したセンサー19,20が水と接触して通電開始となるようにし(計測開始)、ここから荷重15で小容器12を沈め、大容器16の底から100mmの位置で水面22からセンサー19,20が離れて非通電となり、計測は終了する。この測定で約1.5リットルの空気が繊維基材を通じて排気され、通電開始から非通電となるまでの時間から通気度が測定できる。23は水面22のセンサー検知位置である。通気度は、次式より換算した。
通気度(cm
3/cm
2/s)=空気体積(1660cm
3)÷繊維基材断面積(cm
2)÷測定時間(秒)
【0036】
<繊維母材層の厚さ方向の通気度測定試験>
JIS L1096(2010)8.26A法(フラジール形式)に準拠し、フラジール型試験機(TEXTEST社製FX3300)を使用して、圧力125Pa、5cm
2で測定し、単位をcm
3/cm
2/sで算出した。
【0037】
<コンクリート等を使用した試験>
(1)未固結コンクリートの空気抜き試験
まず
図5Aに小容器32の内面に繊維基材の帯状テープ34を貼り付けた状態を示す。小容器32(内径290mm×高さ140mm:約6リットル)の内壁側面から外壁側面に沿って幅70mmの帯状テープ34を粘着剤でU字形に配置して止めた。繊維基材34の長さは小容器32の内面が350mm、外に出た部分が50mmであった。帯状テープ34の折れ曲がり先端部には保護のための粘着テープ35を貼り付けた。これは未固結コンクリート(生コンクリート)内に押し込む際の損傷を防止するためである。実際のコンクリート打設の際はこのような鋭角にはならないことから不要である。
【0038】
下記表1に示す成分を混合して未固結コンクリート31とし、40リットル容器30に約20cmの深さとなるように入れた(
図5B)。次に、小容器32を逆にして未固結コンクリート31の表面に置いた。小容器32の底には直径250mmの塩化ビニル硬質パイプ33を置いた(
図5C)。次に、小容器32がまっすぐに入るように押さえながら棒状バイブレータ36a,36bで振動を与え、小容器32を押し込んだ(
図5D)。この状態で小容器32を手で押し込み、小容器32内の空気が抜けて未固結コンクリート31と置換されるか否かを評価した。所要時間は15〜30秒であった。このように小容器32を逆にして未固結コンクリート31に入れると、小容器32の内部は空間になっており、トンネル頂部の閉鎖空間に存在する空気と同様に扱える。小容器32の押し込み力は未固結コンクリートの打設による圧力に見立てることができる。そして、小容器32を押し込み、小容器32内の空気が抜ける場合は、帯状テープ34内を空気が通過すると判断できる。小容器32を透明なプラスチック製とすれば、押し込んだ状態で空気が残ったかどうか評価できる。不透明な容器の場合は、小容器32をそのままの状態で持ち上げ、内部の生コンクリートを落とし、小容器32を観察することにより評価できる。具体的には小を、99%未満は不合格とした。
【0039】
(2)未固結コンクリートの含浸試験
上記において、押し込んだ状態で20分間静置させ、その後小容器を取り出して繊維基材を分解し、未固結コンクリートの成分が繊維基材内に含浸しているかを観察した。
【0040】
【表1】
W:上水道水
C:高炉セメントB種(密度3.0g/cm
3、太平洋セメント)
S:細骨材;佐伯砕砂(表乾密度2.62g/cm
3、吸水率1.50%、粗粒率2.75)
【0041】
<砂塵の付着試験>
巾50mmの帯状テープを長さ200mmに切断し、50gの砂塵(コンクリート粉末)を吸着層側にふりかけた後、素手で払い落とし砂塵の付着の有無を確認した。
【0042】
<貼り直し性の確認>
巾50mmの帯状テープを長さ200mmに切断し、厚さ1.0mmのEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)シートに貼り付けた後、帯状テープをEVAシートから剥がした。その後、再度帯状テープをEVAシートに貼り付け、貼り直しが可能かどうかの確認をした。
【0043】
(実施例1)
JNC社製、ポリプロピレン繊維(18.9decitex,繊維長51mm)をカードウェブとし、ニードルパンチ法により不織布とした。不織布の内層にスクリムを積層一体化した。スクリムは目付70g/m
2のポリエステル繊維製メッシュ織物とした。積層一体化はニードルパンチによって繊維を絡めることで行った。得られた繊維母材の厚さは5.0mm、目付680g/m
2であった。この繊維母材の一方の面にケン化度89%のポリビニルアルコール(PVA)10wt%水溶液を乾燥質量40g/m
2でコーティングし乾燥した
。他方の面に
図1A−Bに示す吸着層を形成した。吸着層はDIC社製のアクリル樹脂(DICNAL MFP20)を使用し、厚さ0.8mm、質量100g/m
2で形成した。吸着層表面の気泡体平均細孔径は、電子顕微鏡にて20箇所を観察した結果、21μmであった。
【0044】
(実施例2)
JNC社製、ポリプロピレン繊維(18.9decitex,繊維長51mm)をカードウェブとし、ニードルパンチ法により不織布とした。不織布の内層にスクリムを積層一体化した。スクリムは目付70g/m
2のポリエステル繊維製メッシュ織物とした。積層一体化はニードルパンチによって繊維を絡めることで行った。得られた繊維母材の厚さは5.0mm、目付680g/m
2であった。この繊維母材の一方の面にケン化度89%のポリビニル
アルコール(PVA)10wt%水溶液を乾燥質量40g/m
2でコーティングし乾燥した
。他方の面に
図1A−Bに示す吸着層を形成した。吸着層はDIC社製のアクリル樹脂(DICNAL MFP20)を使用し、厚さ1.0mm、質量100g/m
2で形成した。吸着層表面の気泡体平均細孔径は、電子顕微鏡にて20箇所を観察した結果、73μmであった。
【0045】
(実施例3)
JNC社製、ポリプロピレン繊維(18.9decitex,繊維長51mm)をカードウェブとし、ニードルパンチ法により不織布とした。不織布の内層にスクリムを積層一体化した。スクリムは目付70g/m
2のポリエステル繊維製メッシュ織物とした。積層一体化はニードルパンチによって繊維を絡めることで行った。得られた繊維母材の厚さは5.0mm、目付680g/m
2であった。この繊維母材の一方の面にケン化度89%のポリビニル
アルコール(PVA)10wt%水溶液を乾燥質量40g/m
2でコーティングし乾燥した
。他方の面に
図1A−Bに示す吸着層を形成した。吸着層はDIC社製のアクリル樹脂(DICNAL MF20)を使用し、厚さ1.7mm、質量200g/m
2で形成した。吸着層表面の気泡体平均細孔径は、電子顕微鏡にて20箇所を観察した結果、19μmであった。
【0046】
(比較例1)
JNC社製、ポリプロピレン繊維(18.9decitex,繊維長51mm)をカードウェブとし、ニードルパンチ法により不織布とした。不織布の内層にスクリムを積層一体化した。スクリムは目付70g/m
2のポリエステル繊維製メッシュ織物とした。積層一体化はニードルパンチによって繊維を絡めることで行った。得られた繊維母材の厚さは5.0mm、目付680g/m
2であった。この繊維母材の一方の面にケン化度89%のポリビニル
アルコール(PVA)10wt%水溶液を乾燥質量40g/m
2でコーティングし乾燥した
。他方の面に粘着層としてDIC社製両面テープ810HDを貼り付けた。
【0047】
図5A−Dに示す未固結コンクリートの空気抜き試験を行った。条件と結果を表2にまとめて示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2の結果から実施例1〜3、比較例1とも未固結コンクリートの空気抜き試験の脱気率は99%であり、ほぼ完全に脱気できた。また、未固結コンクリートの含浸試験においても、未固結コンクリートの成分が繊維基材内に含浸していた。
【0050】
砂塵の付着試験および貼り直し性の確認試験を行った。結果を表3にまとめて示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表3の結果から、本実施例1〜3の繊維基材に積層した吸着層は、独立発泡軟質樹脂層の表面発泡部が開口した状態であり、砂塵が付着しても簡単に払い落としができ、貼り直しもでき、剥離シートは不要できわめて好都合であった。一方、比較例1は、砂塵が付着し払い落としが出来ず、貼り直しも出来なかった。また、貼り付け作業時には剥離シートを剥がす必要があり、剥がした後はそれを回収する必要があった。