特許第6842409号(P6842409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842409染料を含む化成被覆組成物および化成被覆組成物による金属表面の被覆方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842409
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】染料を含む化成被覆組成物および化成被覆組成物による金属表面の被覆方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/34 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   C23C22/34
【請求項の数】19
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2017-515938(P2017-515938)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公表番号】特表2017-532453(P2017-532453A)
(43)【公表日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015048025
(87)【国際公開番号】WO2016048608
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年6月22日
(31)【優先権主張番号】62/054,694
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】チェルニショフ,ドミトリー
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−292874(JP,A)
【文献】 特表2014−515783(JP,A)
【文献】 特開昭59−007957(JP,A)
【文献】 特表2014−508197(JP,A)
【文献】 特開2005−194627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00−22/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化成被覆組成物により金属表面を被覆する方法であって、
金属表面化成被覆組成物を金属表面に適用することを含み、ここで当該化成被覆組成物は、
(i)式(III)の構造を有するジルコニウム含有化合物、
[ZrL14]b (III)
ここで
L1は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2、または-OR4であり、ここでR4は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字bは、1から100の整数であり、但し
(a)L1が[=O]1/2の場合、第2のL1基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のジルコニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL1は、結合して酸素とジルコニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(b)bが2以上である場合、各繰り返し単位[ZrL14]における少なくとも1つのL1は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するZr-O-Zr結合を形成するという条件であり、
式(IV)の構造を有するチタニウム含有化合物、
[TiL24]c (IV)
ここで
L2は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2または-OR5であり、ここでR5は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字cは、1から100の整数であり、但し
(a)L2が[=O]1/2の場合、第2のL2基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のチタニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL2は、結合して酸素とチタニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(b)cが2以上である場合、各繰り返し単位[TiL24]における少なくとも1つのL2は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するTi-O-Ti結合を形成するという条件であり、および
式(V)の構造を有するケイ素含有化合物、
[X[-R1-Si(R2)aL33-a]r]s (V)
ここで
Xは、一価、二価または多価の基を含む価数rの官能基であり、
R1は各々が独立して、12までの炭素原子を含み、任意にて1以上のヘテロ原子を含む、直鎖状、分岐状または環状の二価炭化水素基であり、但しXとシリル基のケイ素原子とがR1の炭素原子と共有結合によりR1に結合して、官能基Xとシリル基との間に架橋を形成するという条件であり、
R2は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルの基からなる群から選択される一価の基であり、
L3は各々が独立して、F-、[-O-]1/2または-OR3であり、ここでR3は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、
rは1から4の整数であり、
sは1から100の整数であり、そして、
aは、0、1または2であり、但しsが2以上である場合、繰り返し単位[X[-R1-Si(R2)aL33-a]rにおける少なくとも1つのL3は、[-O-]1/2基であり、繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するSi-O-Si結合を形成するという条件である、
からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤、
(ii)水、ならびに
(iii)少なくとも1つの式(I)の構造を有する水溶性染料、
【化1】

ここで
G1は、1から20の炭素原子を含み、少なくとも1つの酸素または窒素ヘテロ原子を含む有機基であり、
Aは窒素原子または(-)3C-R*であり、ここでR*は、それぞれ10までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルまたはアリールの基から選択される一価の基であり、
R6は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはカルボアルコキシアルキルの基、あるいは水素であり、
R7は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R8は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、またはアミノスルホニルの基、あるいは水素であり、
R9は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R10は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R11は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはアルコキシカルボニルアルキルの基、あるいは水素であり、
R12は、1から6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、そして
nは、1から3の整数である、を含むものであり、
当該化成被覆組成物が金属表面に適用されると、当該染料は裸眼で可視であり、および/またはその存在が検出可能であり、その強度は光学機器によって測定可能であり、但し少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)がケイ素含有化合物である場合、ケイ素含有化合物は金属フッ化物含有化合物と組み合わせて使用される条件である、方法。
【請求項2】
適用された化成被覆組成物の所定の領域内の水溶性染料の強度を光学機器によって測定して、染料の測定強度を提供すること、および
染料の測定強度を使用して、適用された化成被覆の厚さおよび/または均一性を計算することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、ジルコニウム含有化合物およびチタニウム含有化合物の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、0.01から80重量パーセントの量で存在し、ここで重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、0.01から80重量パーセントの量で存在し、ここで重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づいており、そしてH2ZrF6、(NH4)2ZrF6、Na2ZrF6、K2ZrF6、ZrO[NO3]2、Zr[SO4]2、ZrOSO4およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、0.01から80重量パーセントの量で存在し、ここで重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づいており、そしてH2TiF6、(NH4)2TiF6、Na2TiF6、K2TiF6、Ti[SO4]2、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
sは1の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ケイ素含有化合物は、フッ化ジルコネートまたはフッ化チタネートと組み合わせて使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
染料(iii)の溶解度は、0.0001グラムまでの染料が25℃の蒸留水100グラムに溶解するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
水溶性染料(iii)は、0.0001から5重量パーセントの量であり、ここで重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
化成被覆組成物は、25℃で少なくとも48時間の期間にて連続して乱されずに保管された後に、化成被覆組成物のキログラム当たり1000ミリグラムを超える量の沈殿物での有害な量の沈殿物を有さない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
化成被覆組成物は、クロムのない化成被覆組成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
化成被覆組成物を金属表面に適用するステップに続き、金属表面が水で洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
化成被覆組成物であって、
(i)式(III)の構造を有するジルコニウム含有化合物、
[ZrL14]b (III)
ここで
L1は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2、または-OR4であり、ここでR4は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字bは、1から100の整数であり、但し
(a)L1が[=O]1/2の場合、第2のL1基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のジルコニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL1は、結合して酸素とジルコニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(b)bが2以上である場合、各繰り返し単位[ZrL14]における少なくとも1つのL1は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するZr-O-Zr結合を形成するという条件であり、
式(IV)の構造を有するチタニウム含有化合物、
[TiL24]c (IV)
ここで
L2は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2または-OR5であり、ここでR5は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字cは、1から100の整数であり、但し
(a)L2が[=O]1/2の場合、第2のL2基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のチタニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL2は、結合して酸素とチタニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(b)cが2以上である場合、各繰り返し単位[TiL24]における少なくとも1つのL2は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するTi-O-Ti結合を形成するという条件であり、および
式(V)の構造を有するケイ素含有化合物、
[X[-R1-Si(R2)aL33-a]r]s (V)
ここで
Xは、一価、二価または多価の基を含む価数rの官能基であり、
R1は各々が独立して、12までの炭素原子を含み、任意にて1以上のヘテロ原子を含む、直鎖状、分岐状または環状の二価炭化水素基であり、但しXとシリル基のケイ素原子とがR1の炭素原子と共有結合によりR1に結合して、官能基Xとシリル基との間に架橋を形成するという条件であり、
R2は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルの基からなる群から選択される一価の基であり、
L3は各々が独立して、F-、[-O-]1/2または-OR3であり、ここでR3は各々が独立して、16までの炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、
rは1から4の整数であり、
sは1から100の整数であり、そして、
aは、0、1または2であり、但しsが2以上である場合、繰り返し単位[X[-R1-Si(R2)aL33-a]rにおける少なくとも1つのL3は、[-O-]1/2基であり、繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するSi-O-Si結合を形成するという条件である、
からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤、
(ii)水、ならびに
(iii)少なくとも1つの式(I)の構造を有する水溶性染料、
【化2】

ここで
G1は、1から20の炭素原子を含み、少なくとも1つの酸素または窒素ヘテロ原子を含む有機基であり、
Aは窒素原子または(-)3C-R*であり、ここでR*は、それぞれ10までの炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルまたはアリールの基から選択される一価の基であり、
R6は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはカルボアルコキシアルキルの基、あるいは水素であり、
R7は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R8は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、またはアミノスルホニルの基、あるいは水素であり、
R9は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R10は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R11は、それぞれが10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されたアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはアルコキシカルボニルアルキルの基、あるいは水素であり、
R12は、1から6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、そして
nは、1から3の整数である、を含むものであり、
当該被覆組成物を金属表面に適用した場合、当該染料は裸眼で可視であり、および/またはその存在は検出可能であり、その強度は光学機器により測定可能であり、但し少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)がケイ素含有化合物である場合、ケイ素含有化合物は金属フッ化物含有化合物と組み合わせて使用される条件である、化成被覆組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、ジルコニウム含有化合物およびチタニウム含有化合物の混合物である、請求項14に記載の化成被覆組成物。
【請求項16】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、0.01から80重量パーセントの量で存在し、ここで重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づいている、請求項14に記載の化成被覆組成物。
【請求項17】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、H2ZrF6、(NH4)2ZrF6、Na2ZrF6、K2ZrF6、ZrO[NO3]2、Zr[SO4]2、ZrOSO4、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の化成被覆組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、H2TiF6、(NH4)2TiF6、Na2TiF6、K2TiF6、Ti[SO4]2、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の化成被覆組成物。
【請求項19】
請求項14に記載の化成被覆組成物が表面に適用された、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、およびアルミニウムからなる群から選択される基材を含む地の金属基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の被覆組成物に関する。特に本発明は、金属基材、特に鋼、亜鉛被覆鋼およびアルミニウム表面のための非クロム酸塩、非金属リン酸塩化成被覆に関し、ここで化成被覆の成分に加え、化成被覆は染料を含み、表面の化成被覆の均一性および厚さを決定するための手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腐食を防止し、塗料または他の被覆の表面への接着を改善するための、金属表面を調製する様々な市販の被覆組成物が知られている。例えば、金属表面に防食性を付与するため、および/または塗装作業の前に金属表面を調製するために、化成被覆は商業的適用にて使用されている。しかしながら、シラン化成被覆のようないくつかの化成被覆は無色であり、非常に低い被覆重量で適用され、人間の目視検査または比色測定装置によって検出することは極めて困難である。
【0003】
基板上の薄膜の存在を決定する方法は公知である。被覆が表面に適用されたかどうかを決定するため、金属膜被覆中の特定の蛍光染料が使用されている。具体的には、蛍光増白剤、例えばスチルベンおよびクマリンが、クロムを含まない金属被覆に添加されている。蛍光増白剤は、UV光下で被覆された金属の紫外(UV)観察し、目視にて化成被覆の存在を検出することを可能にする。これらの方法は、被覆が基材に適用されているかどうかを決定し、重要な品質管理事項である被覆の厚さの定性的な決定を提供する性能において有用である。
【0004】
しかしながら残念なことに、スチルベンおよびクマリンを使用した被覆の厚さを定量することは好ましくない。なぜならこれらの化合物は、被覆の厚さを決定するために較正されたシステムで使用されるとき、必要とされる精度を示しないことが多いからである。商業的に適した被覆厚さ測定システムでは高い精度が要求される。被覆の本来の蛍光は、被覆の蛍光強度の測定を妨げる可能性がある。
【0005】
加えて多くの有機染料は、水系化成被覆に容易に溶解せず、しばしば化成被覆の安定性に影響を及ぼす。化成被覆にこれらの有機染料を添加すると、化成被覆で他の成分の沈殿またはゲル化が生じ、化成被覆組成物を不安定にする。沈殿またはゲル化が不均一な被覆、あるいは空隙または不十分に被覆された表面の形成をもたらすことから、化成被覆の不十分な貯蔵寿命は、これらの化成被覆の有用性に影響を及ぼすことになる。これらの不安定な化成被覆が使用されると、耐腐食性が低く、塗料または他の被覆の金属基材へ接着が乏しくなることになる。したがって、多くの有機染料における上述した問題を回避しながら、品質管理の本質的な側面として、これらの化成被覆の存在、均一性および厚さを迅速に検出することができることが必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、鋼、亜鉛被覆鋼およびアルミニウムのような金属基材の表面を被覆するための化成被覆に関し、検出可能、定量化可能でありかつ金属基材の腐食抵抗性および/または金属基材の接着特性を向上させる化成被覆の形成を提供する。
【0007】
本明細書での1つの実施態様において、金属表面を被覆する化成被覆が提供され、ここで化成被覆は、
(i)ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物およびケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤、
(ii)水、および
(iii)少なくとも1つの水溶性染料を含むものであって、当該化成被覆組成物が金属表面に適用されると、染料は裸眼で可視であり、および/またはその存在が検出可能であり、その強度は光学機器によって測定可能であり、ただし、少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)がケイ素含有化合物である場合、ケイ素含有化合物は金属フッ化物含有化合物と組み合わせて使用されるものである。
【0008】
本発明の方法は、本明細書に記載の化成被覆を金属表面に適用すること、そして任意にて、化成被覆組成物が適用された所定の領域内の水溶性染料の強度を光学機器によって測定して、染料の測定強度を提供すること、および染料の測定強度と、適用された化成被覆の厚さおよび/または均一性を関連させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書での「バス(bath)」という用語の使用は、実施例で定義されるそれぞれの番号の化成被覆組成物を指す。
【0010】
図1図1は、シリケートクリーナーで洗浄し、実施例1に記載の0.5、1、2および4分間の滞留時間、化成被覆のバス1により被覆した4つのアルミニウム片の一組の写真であり、左端の写真はブラックライトの下で観察され、右端の写真は昼光の下で観察されたものである。
【0011】
図2図2は、ブラックライトの下での、実施例3の化成被覆のバス2により被覆したHDGパネルおよび比較例4のブランクの一組の写真である。
【0012】
図3図3は、ブラックライトの下での実施例5の化成被覆組成物のバス2により被覆されたHDGパネルおよび比較例6のブランクの一組の写真である。
【0013】
図4図4は、アルカリエッチングクリーナーで洗浄し、実施例7の化成被覆のバス1により被覆されたパネルおよび比較例9のブランクの一組の写真である。
【0014】
図5図5は、実施例10でバス1により被覆され、比較例11でバス5により被覆されて調製されたパネル、および比較例12のブランクの一組の写真である。
【0015】
図6図6は、実施例13でアルカリエッチクリーナーにより洗浄され、バス1により被覆され、比較例14でバス7により被覆されて調製されたパネル、および比較例15のブランクの一組の写真である。
【0016】
図7図7は、比較例16、バス9により、比較例17、バス11により調整されたパネル、および比較例18のブランクの一組の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明によれば、化成被覆組成物、具体的にはクロムのない、より具体的にはリン酸塩のない検出可能な化成被覆が、所望の金属表面を前記化成被覆組成物に接触させることにより金属基材にもたらされ、ここで前記化成被覆組成物は、
(i)ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物およびケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤、
(ii)水、および
(iii)少なくとも1つの水溶性染料を含むものであって、 当該化成被覆組成物が金属表面に適用されると、染料は裸眼で可視であり、および/またはその存在が検出可能であり、その強度は光学機器によって測定可能であり、ただし、少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)がケイ素含有化合物である場合、ケイ素含有化合物は金属フッ化物含有化合物と組み合わせて使用されるもの、が見出されている。
【0018】
基材としては、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼、アルミニウムおよびその他の金属が挙げられる。具体的には、染料は適用されたときに裸眼で可視であり、化成被覆の化学的または物理的特性を損なうことなく、化成被覆の均一な堆積を可能にし、そして化成被覆の均一性および厚さの質的特徴づけの容易な手段を提供する。
【0019】
本発明の水性の検出可能な化成被覆は、地の金属および塗装された金属の耐腐食性の改善、塗装された金属に対して適用された被覆の接着性をもたらす。本発明の文脈において、「地の金属」という用語は、本発明の化成被覆で処理されるが、塗装されていない金属表面を示す。
【0020】
本明細書の1つの具体的な実施態様において、本明細書中の全ての範囲は、それらの間の全ての範囲、ならびに前記範囲および/またはその部分範囲の終点の任意の組み合わせを含むことができることが理解されよう。
【0021】
本明細書で使用される表現「化成被覆組成物」は、水と、ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物およびケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤を含む。
【0022】
本発明の化成被覆組成物は、ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物およびケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1の金属腐食防止剤、水および少なくとも1つの水溶性染料を必要とし、ここでケイ素含有化合物は、少なくとも1つの金属フッ化物化合物と組み合わせて使用される。より具体的には、ケイ素含有化合物は、官能基を含むアルコキシシランおよび/またはその加水分解物および/または縮合物である。化成被覆は、コロイド状金属酸化物、安定化剤、官能基を含有しないアルコキシシランアジュバント、およびpH調整剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含むことができる。
【0023】
本明細書における1つの実施態様において、
(i)0.01から80重量パーセントの量の少なくとも1つの金属腐食防止剤であって、
(a)式(III)
[ZrL14]b
の構造を有するジルコニウム含有化合物、
ここで
L1は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2、または-OR4であり、ここでR4は各々が独立して、約16までの炭素原子、より具体的には1から12の炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字bは、1から100、より具体的には1から15、さらにより具体的には1の整数であり、但し
(iii)L1が[=O]1/2の場合、第2のL1基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のジルコニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL1は、結合して酸素とジルコニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(iv)cが2以上である場合、各繰り返し単位[ZrL14]における少なくとも1つのL1は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するZr-O-Zr結合を形成するという条件であり、
(b)式(IV)
[TiL24]c
の構造を有するチタニウム含有化合物、
ここで
L2は各々が独立してNO3-、-F、[-O-]1/2、[=O]1/2、または-OR5であり、ここでR5は各々が独立して、約16までの炭素原子、より具体的には1から12の炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、そして
下付き文字cは、1から100、より具体的には1から15、さらにより具体的には1の整数であり、但し
(iv)L2が[=O]1/2の場合、第2のL2基は[=O]1/2基であり、構造[=O]1/2を有する同一のチタニウム原子に結合しており、構造[=O]1/2を有する2つのL2は、結合して酸素とチタニウム原子との間に二重結合を形成し、そして
(v)cが2以上である場合、各繰り返し単位[TiL24]における少なくとも1つのL2は、[-O-]1/2基であり、そして繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他の[-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するTi-O-Ti結合を形成するという条件であり、
(c)式(V)
[X[-R1-Si(R2)aL33-a]r]s
の構造を有するケイ素含有化合物、
ここで
Xは、一価、二価または多価の基を含む価数rの官能基であり、
各R1は、独立して、約12までの炭素原子、より具体的には1から6の炭素原子を含み、任意にて1以上のヘテロ原子を含む、直鎖状、分岐状または環状の二価炭化水素基であり、但しXとシリル基のケイ素原子とがR1の炭素原子と共有結合によりR1に結合して、官能基Xとシリル基との間に架橋を形成し、
各R2は、独立して、約16までの炭素原子、より具体的には1から12の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルの基からなる群から選択される一価の基であり、
各L3は、独立して、F-、[-O-]1/2 または -OR3であり、ここで各R3は、独立して、約16までの炭素原子、より具体的には1から12の炭素原子を含む、アセチル、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ置換アルキルおよびヒドロキシル置換アルキルの基、ならびに水素からなる群から選択され、
rは1から4の整数であり、
sは1から100、より具体的には1から15、さらにより具体的には1の整数であり、そして、
aは、0、1または2であり、但しsが2以上である場合、繰り返し単位[X[-R1-Si(R2)aL33-a]rにおける少なくとも1つのL3は、[-O-]1/2基であり、繰り返し単位における各[-O-]1/2は、異なる繰り返し単位における他のr [-O-]1/2基と結合して、繰り返し単位を結合するSi-O-Si結合を形成するという条件であり、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されるもの、
(ii)水、ならびに、
(iii)水溶性染料、ここで前記染料は、約0.0001から約5重量%の量の、正電荷および対イオンであって1から約6の炭素原子を含むカルボン酸に由来するものを有する水溶性染料であり、そして、式(1)
【化1】

の構造を有し、
ここで
G1は、1から約20の炭素原子を含み、少なくとも1つの酸素または窒素ヘテロ原子を含む有機基であり、
Aは窒素原子または(-)3C-R*であり、ここでR*は、それぞれ約10までの炭素原子、より具体的には1から8の炭素原子を含む、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルまたはアリールの基から選択される一価の基であり、
R6は、約10までの炭素原子、より具体的には1から7の炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはカルボアルコキシアルキルの基、あるいは水素であり、
R7は、約10までの炭素原子、より具体的には1から7の炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R8は、約10までの炭素原子、より具体的には1から7の炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、またはアミノスルホニルの基、あるいは水素であり、
R9は、約10までの炭素原子、より具体的には1から8の炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R10は、約10までの炭素原子、より具体的には1から8の炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニルの基、あるいは水素であり、
R11は、約10までの炭素原子、より具体的には1から8の炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはアルコキシカルボニルアルキルの基、あるいは水素であり、
R12は、1から約6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、そして
nは、1から3の整数であり、
あるいは式(II)
【化2】

の構造を有し、
ここで
R12は、1から約6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、
R23は、水素、1から約6の炭素原子のアルキル基、6から約10の炭素原子のアリール基、7から約12の炭素原子のアラルキル基、またはヒドロキシカルボニル基(-C(=O)OH)で置換された、もしくはアルコキシカルボニル基-C(=O)OR26基で置換された、6から約12の炭素原子のアリール基であって、ここでR26は、1から約4の炭素原子のアルキル基であり、
R24は、水素、1から約6の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル、または構造-NR27R28を有するアミノであって、ここでR27およびR28は、それぞれ独立して、水素または1から約6の炭素原子のアルキル基であり、
R25は、水素、1から約6の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル、または構造-NR27R28を有するアミノであって、ここでR27およびR28は、それぞれ独立して、水素または1から約6の炭素原子のアルキル基であり、そして
mは、1から3の整数であり、
ここで(a)、(b)および(c)は、化成被覆組成物の全成分の合計が100重量%であるような量で存在し、ここで各成分の重量%は、化成被覆組成物の総重量に基づいており、但し金属腐食防止剤(i)がケイ素含有化合物である場合、化成被覆組成物は、少なくとも1つの金属フッ化物含有化合物を含み、そしてここで前記化成被覆組成物は、約25℃で保管した場合、少なくとも48時間の期間は、有害な量の沈殿物を含有しない、を含む化成被覆が提供される。
【0024】
本明細書での1つの非限定的な実施態様において、少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、H2ZrF6、(NH4)2ZrF6、Na2ZrF6、K2ZrF6、ZrO[NO3]2、Zr[SO4]2、ZrOSO4およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0025】
本明細書での1つの他の非限定的な実施態様において、少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)は、H2TiF6、(NH4)2TiF6、Na2TiF6、K2TiF6、Ti[SO4]2、およびこれらの混合物からなる群から選択されるチタニウム含有化合物である。
【0026】
1つの実施態様において、当該腐食防止剤は、ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物、またはこれらの混合物である。
【0027】
本明細書で使用される「安定な懸濁液」という表現は、約10から約70℃の温度、より具体的には約15から約35℃、さらにより具体的には25℃の温度での連続した乱されない保管での少なくとも2日間の期間において、可視沈降またはゲル化などの物理的外観の変化をほとんどまたは全く示さない懸濁液を含む。1つの実施態様において、安定な懸濁液は、他の成分の添加のない化成被覆自体であってもよいし、あるいは安定な懸濁液は、非限定的な例の安定化剤等のような任意の追加成分を添加した化成被覆であってもよいということが本明細書において理解されよう。本明細書における1つの非限定的な実施態様において、用語の「化成被覆」、「化成被覆組成物」または「組成物」は互換的に使用されることができ、また「安定な懸濁液」という表現は、化成被覆組成物と共に使用され、組成物が懸濁液を含有する場合には、懸濁液が安定な懸濁液であることを示すことができることが理解されよう。本明細書に記載される様々な成分の量の範囲は、化成被覆の全重量に基づいていることが本明細書において理解されよう。
【0028】
本明細書で使用される「安定化成被覆組成物」という表現は、約10から約70℃の温度、より具体的には約15から約35℃、さらにより具体的には25℃の温度での連続した、乱されない保管での少なくとも2日間の期間において、可視沈降またはゲル化などの物理的外観にほとんどまたは全く変化を示さない化成被覆組成物を含む。
【0029】
本明細書で使用される「本発明の化成被覆組成物」という表現は、5 mg/m2以上の量で適用された場合に、裸眼または光学的方法を用いて水溶性染料を含有する化成被覆組成物のその存在を基材の表面上で測定することができる組成物を含む。光学的方法は、光感知装置または可視光検出装置のような光学機器を使用する任意の方法である。1つの実施態様において、光感知装置は、比色計、例えば蛍光検出器などの光輝性装置およびリン光性検出器などであり、ここで前記組成物を含む基材に放射エネルギーを照射し、有機水溶性染料をより高い電子状態に励起し、過剰なエネルギーを放出して基底電子状態に戻し、したがって人間の裸眼で可視でありえる。
【0030】
本明細書で使用の「人間の裸眼で可視である」という表現は、化成被覆組成物によって被覆された基材の少なくとも一部分において、色の存在または不在が人間の裸眼により可視であることであり、ここで色は人間の裸眼で検出可能な電磁放射線の波長である。この波長範囲の電磁放射線は、可視光または単に光と称される。本明細書では、人間の裸眼は、約390から約700nmの波長を有する色または可視光の存在を検出する。周波数の観点では、これは430-790THz付近の帯域に相当する。
【0031】
本明細書で使用される表現「光学機器」は、本明細書に記載されている任意の光感知装置または可視光検出装置である。
【0032】
本明細書において「水溶性」とは、25℃の蒸留水に添加して混合すると、1相の混合物(溶液)を形成する化合物を意味する。1つの実施形態において、水溶性染料は、水と1相の混合物を形成する染料であり、ここで1相の混合物は、25℃の蒸留水100グラム当たり0.0001グラム以上、より具体的には25℃の蒸留水100グラム当たり0.0001グラムから100グラムの染料を含むものである。
【0033】
本明細書で使用の「検出可能な」という表現は、人間の裸眼が、染料を含有する金属の表面が染料を含有しない金属表面と比較したとき異なる色を有すると識別できること、および/または光学機器が光の吸光度を検出し、ここで吸光度は、25℃での染料に当たる放射線の染料を透過する放射線に対する対数比であり、放射線は390から約700nmの範囲であることを意味する。1つの実施形態では、吸光度は0.01以上である。
【0034】
本明細書で使用される表現「強度」は、ある量の染料を含む金属表面と、染料を含有しない金属表面との間の色の差を意味し、人間の裸眼が強度を検出するために使用される場合、その差は、前記量の染料を含有する金属表面の色を、金属表面の表面に堆積した既知の量の染料を含む金属表面である、基準とあわせることより測定され、そして光学機器を使用して強度を検出する場合、光学機器は、25℃で390から約700nmの波長の放射線において、染料を含有しない金属表面(ブランク)の吸光度の総積分から、染料を含有する金属表面の吸光度の総積分の差を測定する。金属表面上の染料の量の基準は、重量測定により決定され、ここで蒸留水に溶解した染料で表面を被覆し、110℃で20分間乾燥させた後、金属基板の重量から表面を被覆する前の金属基板の重量を引算し、その重量差を染料溶液で被覆された金属表面の面積で割算することによって計算される。
【0035】
本明細書で使用の「均一性」という用語は、本発明の化成被覆で被覆された所定の領域における光の強度と、本発明の化成被覆で被覆された異なる所定の領域における光の強度との差を意味し、ここで比較される所定の領域は、同一の領域を有している。1つの実施態様において、所定の領域は、1平方ミリメートルから1平方メートル、より具体的には1平方センチメートルから100平方センチメートル、さらにより具体的には10平方センチメートルである。1つの実施態様において、2つの所定の領域間の色の強度の差が10%未満、より具体的には1%未満である場合、化成被覆組成物で被覆された金属表面は均一であり、ここで当該パーセントは、2つの所定の領域の色の強度を引算し、その差を2つの所定の領域の色の強度の平均で割算することによって決定される。
【0036】
本明細書で使用される「有害な量の沈殿物」という表現は、本明細書に記載されるような安定な懸濁液を形成しない固体または液体の形成を含む。有害な量の沈殿物は、約25℃で保管したとき少なくとも48時間保管後に、化成被覆組成物のキログラム当たり約1000ミリグラムより多い量の沈殿物であり、より具体的には、化成被覆組成物のキログラム当たり約100ミリグラムより多い量、さらにより具体的には化成被覆組成物のキログラム当たり約10ミリグラムより多い量の沈殿物を含む。1つの実施形態において、沈殿物の量は重量測定により決定される。重量測定法は、化成被覆組成物1kgを、予め計量された50ミクロンの孔サイズを有する乾燥した吸収性フィルターパッドを通して濾過し、前記パッドを110℃のオーブン中で1時間乾燥させて、重量増加を測定することを含む。予め乾燥したフィルターパッドと、濾過および乾燥後のフィルターパッドの重量との差は、沈殿物の量である。50ミクロンの吸収性フィルターパッドは、化成被覆組成物から直径が50ミクロン以上の粒子を濾過するのに十分な大きさの孔を有する多孔質材料である。
【0037】
本明細書で使用される「厚さ」という表現は、被覆された表面の面積当たりの乾燥した化成被覆組成物の重量を意味する。1つの実施形態では、厚さは、一連の基準を使用し、色の強度対乾燥した化成被覆組成物の較正曲線を構築することによって決定され、ここで色の強度は光学機器を用いて決定され、そして厚さは重量測定により決定され、ここで化成被覆組成物にて被覆され、110℃で20分間乾燥された金属パネルの重量と、被覆前の金属パネルの重量との間の重量差を、被覆表面の面積で割算する。
【0038】
本明細書の1つの実施態様において、金属腐食防止剤(i)は、一般式(VI)を有するケイ素含有化合物であり、
【化3】

ここで
Xは、一価、二価または多価の基を含む価数rの官能基であり、ここで各R1は、独立して、12までの炭素原子、より具体的には約10までの炭素原子、最も具体的には約8までの炭素原子の直鎖状、分岐状または環状の二価の有機基であって、任意にて1以上のヘテロ原子、例えば非限定的な例のO、N、P、Cl、Br、I、およびSなどを含み、但しXとシリル基のケイ素原子とは、R1の炭素原子と共有結合を介してR1基に結合しており、これによって官能基Xとシリル基との間に架橋を形成し、
各R2はそれぞれ独立して、16までの炭素原子、より具体的には約12までの炭素原子、最も具体的には約8までの炭素原子を含む、アルキル、アリールまたはアラルキルであり、
各R3はそれぞれ独立して、約16までの炭素原子、より具体的には約12までの炭素原子、最も具体的には約8までの炭素原子を各々の全てが含む、アセチル、アルキル、アルコキシ置換アルキルまたはヒドロキシル置換アルキル、あるいは水素であり、
rは1から4、より具体的には1または2、最も具体的には1の整数であり、
aは0、1または2、より具体的には0または1、最も具体的には0である。
【0039】
本明細書での1つの実施態様において、腐食防止剤(i)が、非限定的な例の式(VI)のシランのようなケイ素含有化合物である場合、化成被覆組成物は、金属フッ化物含有化合物をさらに含む。1つの非限定的な例において、金属フッ化物含有化合物は、フッ化ジルコネートおよびフッ化チタネートのうちの少なくとも1つである。
【0040】
本明細書の化成被覆は、1つの非限定的な実施形態において、有機官能性シランあるいはその加水分解物および/または部分縮合物もしくは完全縮合物である1つ以上のケイ素含有化合物、例えば非限定的な例としてのウレイドシラン、を含む。
【0041】
本明細書の1つの実施形態において、「有機官能性シラン」という表現は、任意のアルコキシシランであって、ケイ素原子に結合したアルコキシ官能基に加えて、シランは、炭化水素基を介してケイ素原子に結合し、任意にてヘテロ原子を含む追加の官能基を有し、但しヘテロ原子を含む炭化水素基は、炭素原子を介してケイ素に結合しているものであることが理解されるであろう。
【0042】
本明細書の1つの実施形態において、ウレイドアルコキシシランは、有機官能性シランのより具体的な実施形態であり、本明細書における任意の実施形態で使用することができることが理解されるであろう。本明細書の1つの実施形態において、本明細書に記載の組成物および/または方法のいずれかにおいて、ウレイドシランは、1つの非限定的な実施形態にて、有機官能性シランであり得る。
【0043】
1つの実施形態において、有機官能性シランは、任意の水で、具体的には任意の組成物に存在する水および/または本明細書に記載の方法で加水分解され得るアルコキシシランおよび/またはアシルオキシシランであって、前記の組成物および/または方法において、その加水分解物および/または部分縮合物もしくは完全縮合物の存在を生じるものである。さらに別の実施形態において、加水分解物は、有機官能性シランの部分的および/または完全な加水分解生成物である。別のさらなる実施形態において、本明細書に記載の有機官能性シランの加水分解と同様に、加水分解物は、部分加水分解物および/または完全縮合加水分解物を生じ得る、当業者に公知の縮合反応を含み得る縮合反応を受けることができる。本明細書の別の実施形態において、本明細書に記載の有機官能性シランの加水分解レベルは、シランが水分に曝されると直ちに生じる量から有機官能性シランの完全な加水分解までの量であり得る。
【0044】
R1の非限定的な例は、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレンおよびアルカリーレンの基である。
【0045】
1つの実施態様において、Xは官能基であり、限定されるものではないが例えば、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、チオカルバメート、ジチオカーバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネート、シアヌレート、イソシアヌレート、-NHC(=O)OR2 、または -NHC(=O)SR2であって、ここでR2は、それぞれ16までの炭素原子、より具体的には約12までの炭素原子、さらにより具体的には約8までの炭素原子を含むアルキル、アリールまたはアラルキルである。
【0046】
1つの実施態様において、本明細書の一価官能基Xのセットとしては、限定されるものではないが、メルカプト;アシルオキシ、例えばアクリロキシ、メタクリロキシ、およびアセトキシ;グリシドキシ、-O-CH2-C2H3O;エポキシシクロヘキシルエチル、-CH2-CH2-C6H9O;エポキシシクロヘキシル、-C6H9O;エポキシ、-CR (-O-)CR2;ヒドロキシ;カルバメート、-NR(C=O)OR;ウレタン、-O(C=O)NRR;一価ウレイド-NR(C=O)NR2; シリル、-Si(R2)a(OR3)3-a、ここで、R2、R3およびaは定義通りである;シリルアルキル、-C6H9(C2H4Si(R2)a(OR3)3-a)2、ここでaは定義通りであり、ここでC6H9はシクロヘキシルを示す;ならびに、一価イソシアヌラート (-N)(NR)(NR)C3O3、ここでRの各々は、水素、1から約6の炭素原子のアルキル、3から約10の炭素原子のシクロアルキル、2から約6の炭素原子のアルケニル、6から約10の炭素原子のアリーレン、または7から約12の炭素原子のアルカリーレンからなる群から独立して選択される、が挙げられる。
【0047】
本明細書の別の実施形態において、二価官能基Xのセットとしては、限定されるものではないが、カルバメート、-(-)N(C=O)OR、ウレイド-NR(C=O)NR-、および二価イソシアヌレート、(-N)2(NR)C3O3が挙げられ、ここでRは、水素、1から約6の炭素原子のアルキル、3から約10の炭素原子のシクロアルキル、2から約6の炭素原子のアルケニル、6から約10のアリーレンまたは7から約12の炭素原子のアルカリーレンからなる群から独立して選択される。
【0048】
本明細書のさらに別の実施形態において、三価官能基Xのセットとしては、カルバメート、(-)2NC(=O)O-、ウレイド、(-)2NC(=O)NR-、および三価イソシアヌレート(-N)3C3O3が挙げられ、ここでRの各々は、水素、1から約6の炭素原子のアルキル、3から約10の炭素原子のシクロアルキル、2から約6の炭素原子のアルケニル、6から約10の炭素原子のアリーレン、または7から約12の炭素原子のアルカリーレンからなる群から独立して選択される。
【0049】
本明細書のさらなる実施形態において、四価官能基Xのセットとしては、限定されるものではないが、ウレイド、(-)2N(C=O)N(-)2が挙げられる。
【0050】
具体的な実施態様において、有機官能性シランは、一価ウレイド-NR(C=O)NR2;二価ウレイド-NR(C=O)NR-および(-)2N(C=O)NR2;三価ウレイド(-)2NC(=O)NR-;四価ウレイド(-)2N(C=O)N(-)2;ならびに三価イソシアヌレート(-N)3C3O3であり、ここでRは、水素、1から約6の炭素原子のアルキル、3から約10の炭素原子のシクロアルキル、2から約6の炭素原子のアルケニル、6から約10の炭素原子のアリーレン、または7から約12の炭素原子のアルカリーレンからなる群から独立して選択される。
【0051】
具体的な実施態様において、rは1から4、より具体的には1から2、さらにより具体的には1の整数である。
【0052】
1つの実施態様において、金属腐食防止剤(i)は、本明細書に記載の非限定的な例のウレイドアルコキシシランのような、ウレイドアルコキシシランである。本明細書の1つのより具体的な実施態様において、存在し、使用されうるウレイドシラン(本明細書に記載のウレイドアルコキシシランの非限定的な例のような)材料に関しては、式(VII)に記載のウレイドシランが挙げられ、
【化4】

ここで
各Rは独立して、水素、1から6の炭素原子のアルキル、3から6の炭素原子のシクロアルキル、2から6の炭素原子のアルケニル、6から約10の炭素原子のアリーレン、または7から約12の炭素原子のアルカリーレン、そして具体的には、カルボニルとR1との間の架橋である窒素原子に結合したRは独立して、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルおよびシクロヘキシルからなる群から選択され、
R1は、12までの炭素原子の二価の置換または非置換の脂肪族または芳香族の基であり、具体的にはR1は、1から約10の炭素原子のアルキレン、2から約6の炭素原子のアルケニレン、6から約10の炭素原子のアリーレン、および7から約12の炭素原子のアルキルアリーレンからなる群の中から選択され、そしてより具体的には、R1は、独立して、メチレン、エチレン、プロピレン、2-メチルプロピレン、または2,2-ジメチルブチレンであり、
各R2は、独立して、1から約10の炭素原子、さらにより具体的には1から約6の炭素原子の一価の炭化水素基であり、そしてさらにより具体的には、非限定的な例のメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、フェニル、またはベンジルのようなアルキル、アリールおよびアラルキルの基、より具体的には、1から約4の炭素原子の低級アルキル、最も具体的にはメチルであり、
各R3は独立して、水素、約16までの、炭素原子の直鎖または分岐アルキル、直鎖または分岐アルコキシ置換アルキル、直鎖または分岐アシルからなる群から選択され、具体的にはR3は独立して、水素、エチル、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびアセチルからなる群から選択され、そして1つの実施態様において、少なくとも1つのR3は、水素またはアセチル以外であり、
aは、0、1、または2である。
【0053】
1つの実施形態において、本明細書で使用される場合、用語「置換された」脂肪族または芳香族は、脂肪族または芳香族であって、その炭素骨格が骨格内に位置するヘテロ原子、または炭素骨格に結合したヘテロ原子、または炭素骨格に結合したヘテロ原子含有基を有することができるものである。1つの実施形態において、ヘテロ原子のいくつかの非限定的な例は、酸素、窒素またはそれらの組み合わせである。
【0054】
本明細書の1つの別の具体的な実施態様において、本開示で用いられるウレイドシラン(例えば、非限定的な例のウレイドアルコキシシラン)は、構造(VIII)を有するもののようなガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランであり、
【化5】

これはまた、本明細書に記載の組成物および方法において使用することができる、その加水分解物および/またはその部分的もしくは完全な縮合物を調製するために使用することができる。
【0055】
他の具体的な実施態様において、ウレイドシランの1つの非限定的な例は、3-ウレイドプロピルトリエトキシシランでありえ、これはその加水分解物および/またはその部分縮合物もしくは完全縮合物の製造にも使用することができ、本明細書に記載の組成物および方法において使用することができる。純粋な3-ウレイドプロピルトリエトキシシランは、ワックス状の固体材料である。利用するためには、固体材料を可溶化する溶媒または手段が必要である。本明細書での1つの具体的な実施態様として、市販の3-ウレイドプロピルトリエトキシシランは、非限定的な例のメタノールに溶解され、その結果、それは純粋な化合物ではなく、同一のケイ素原子に結合したメトキシ基とエトキシ基の両方を含む。1つの実施態様において、市販の3-ウレイドプロピルトリエトキシシランをメタノールに溶解して、メタノールがウレイドプロピルトリアルコキシシランおよびメタノールの溶液の50重量%溶液を構成するようにする。本明細書の別の具体的な実施形態において、完全に加水分解されると、シランの同一性は一致することになる。
【0056】
1つの実施態様において、金属腐食防止剤(i)は、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニル-トリス(2-メトキシエトキシシラン)、スチリルエチルトリメトキシシラン、ガンマ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-(アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-メタクリルオキシプロピル-トリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ベータ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-チオオクタノイルプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-チオオクタノイルプロピルトリエトキシシラン、ビス-(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルジメトキシエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメトキシジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルメトキシエトキシシラン、ガンマ-カルバマートプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-カルバマートプロピルトリエトキシシラン、イソシアヌレート プロピルトリメトキシシラン、ビス-(トリメトキシシリルプロピル)ウレア、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)ウレア、2-シアノエチルトリメトキシシラン、2-シアノエチルトリエトキシシラン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0057】
1つの具体的な実施態様において、金属腐食防止剤(i)は、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルジメトキシエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメトキシジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルメトキシエトキシシラン、N,N’-ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N’-ビス-(3-ジイソプロポキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N-ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N-ビス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N-ビス-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N-ビス-(3-ジイソプロポキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N,N’-トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N,N’-トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N,N’-トリス-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N,N’-トリス-(3-ジイソプロポキシシリルプロピル)ウレア、N,N,N,’N’-テトラキス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア、N,N,N,’N’-テトラキス-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア、N,N,N,’N’-テトラキス-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)ウレア、N,N,N,’N’-テトラキス-(3-ジイソプロポキシメチルシリルプロピル)ウレア、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0058】
1つの具体的な実施態様において、金属腐食防止剤(i)は、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルジメトキシエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメトキシジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-ウレイドプロピルメチルメトキシエトキシシラン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0059】
本明細書における1つの他の実施態様において、本明細書の安定な懸濁液は、有害な大気汚染物質を実質的に含まないことができる。「実質的に有害な空気汚染物質(HAPまたはHAPs)を含まない」という語句は、上述した、有機官能性シラン、テトラアルコキシジルコネートおよび/またはテトラアルコキシチタネートの加水分解物または部分および/もしくは完全縮合物の水溶液からHAPを除去した後、より具体的にはHAPが除去されていない有機官能性シラン、テトラアルコキシジルコネートおよび/またはテトラアルコキシチタネートの加水分解物または部分および/もしくは完全縮合物の同等の水溶液と比較してより低いレベルのHAPをもたらす除去後に存在するHAPのレベルである。1つの具体的な実施態様において、このようなHAPの除去は、非限定的な例の窒素のような不活性ガスを散布することによってなされ得る。1つの具体的な実施態様において、そのような散布は、約2から約96時間、より具体的には約4から約72時間、さらにより具体的には約6から約48時間、最も具体的には約8から約24時間の期間にて実施することができる。本明細書の別の実施形態では、HAPの除去として本明細書で使用できるいくつかの他の技術は、減圧および/または蒸留である。
【0060】
1つのより具体的な実施態様において、有害な空気汚染物質は、具体的には約1重量%未満、より具体的には約0.2重量%未満、さらにより具体的には約0.05重量%未満、最も具体的には約0.01重量%未満のレベルのHAPを含み、前記重量パーセントは 検出可能な組成物の総重量に基づいている。
【0061】
本明細書における1つの具体的な実施態様において、HAPは、米国の1990年の大気浄化法改正でHAPsとして特定されている塗料に使用されるあらゆる化合物である。1つの具体的な実施態様において、HAPは、上記の有機官能性シラン(a)の加水分解から形成される副生成物であり得る。1つの具体的な実施態様において、HAPsとしては、アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、アクリロニトリル、塩化アリル、アニリン、ベンゼン、1,3-ブタジエン、カプロラクタム、カテコール、クメン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチルエーテル、ジエタノールアミン、ジメチルアミノ - アゾベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルフタレート、エピクロロヒドリン、エチルアクリレート、エチルベンゼン、エチレンジブロミド、エチレンイミン、ホルムアルデヒド、ヘキサクロロベンゼン、n-ヘキサン、ヒドロキノン、イソホロン、無水マレイン酸、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチレンクロリド、ナフタレン、ニトロベンゼン、2-ニトロプロパン、ペンタクロロフェノール、フェノール、プロピレンオキシド、スチレン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、トルエン、2,4-トルエンジイソシアネート、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、2,4,6-トリクロロフェノール、ビニルアセテート、塩化ビニル、キシレン、m-キシレン、o-キシレン、p-キシレンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。一例は、ガンマ-ウレイドプロピルトリメトキシシランの加水分解からのメタノールの放出である。
【0062】
他の具体的な実施態様において、HAPを実質的に含まないか、または約1重量%未満、より具体的には約0.2重量%未満、さらにより具体的には約0.05重量%未満、最も具体的には約0.01重量%未満のHAPのレベルを含有し、前記重量パーセントは検出可能な組成物の全重量に基づくものであることに加えて、本明細書の検出可能な組成物は、揮発性有機化合物(VOC)をさらに低くすることができる。1つの具体的な実施態様において、VOCは、上述した有機官能性シラン、テトラアルコキシジルコネートおよび/またはテトラアルコキシチタネートの加水分解から形成される副生成物であり得る。1つの具体的な実施態様において、VOCは、あらゆる大気光化学反応に関与するあらゆる有機化合物であって、米国環境保護庁(EPA)が取るに足らない光化学反応性を有すると指定しているもの以外のあらゆる有機化合物である。1つの具体的な実施態様において、VOCは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノールおよびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。本明細書でのさらなる実施態様において、VOCの低いレベルは、具体的には約10重量パーセント未満、より具体的には約5重量パーセント未満、なおより具体的には約2重量パーセント未満、最も具体的には約1重量パーセント未満のVOCレベルであり、前記重量パーセントは 組成物の総重量に基づいている。
【0063】
金属表面への被覆の適用のような、被覆の適用において、VOCは、除外された溶媒および水に対する補正と共に、パーセント不揮発からEPA Method 24に基づき計算される。不揮発分は、ASTM規格D2369およびD3960に基づいて測定される。1つの実施態様において、一般的に、測量した材料のサンプルを測量した皿に入れ、110℃の対流オーブン中に1時間入れる。次に、皿に残っている重量を測定する。VOCの量は、それから試料の重量と皿の重量の合計から皿に残っている重量を差し引くことによって計算することができる。パーセントVOCは、上記で測定された重量の差をサンプルの重量で割算し、その商に100%を乗じることによって計算される。1つの実施態様において、適用により具体的であり、本明細書に記載の他のものを除いて低いVOCを示すグリコールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトールおよびそれらの組み合わせである。
【0064】
本明細書の1つの実施態様において、ケイ素含有化合物とともに使用される金属フッ化物含有化合物(iv)は、溶解したフルオロメタレートアニオンであり、より具体的には、TiF6-2, ZrF6-2、HfF6-2、SiF6-2、AlF6-3、GeF6-2、SnF6-2、BF4-およびそれらの混合物からなる群から選択されるものであり、最初の2つがより好ましく、フルオロジルコネートが最も好ましい。このようなアニオンは、酸または塩として本発明の化成被覆に導入することができ、概して経済性のために好ましく、化成被覆の正味の酸性度が好ましいため、本発明による化成被覆またはその前駆体組成物に溶解された任意の原料物質中の上記のフルオロメタル酸イオンのいずれかと全体の化学量論的等価物は、発生する可能性がある実際の電離度に関係なく、金属フッ化物含有成分の一部として考慮されるべきである。金属含有化合物のカチオンは、水素、アンモニウムイオン、アルカリおよびアルカリ金属カチオンからなる群から選択される。別の実施形態において、金属フッ化物含有化合物(iv)は、フッ化物のアルカリ金属塩またはアルカリ金属塩であり得る。それらの化学的性質とは無関係に、化成被覆組成物中の金属フッ化物含有化合物の総量は、化成被覆組成物の総重量に基づき、少なくとも0.001重量%、より具体的には0.001重量%から10重量%、さらにより具体的には0.01重量%から5重量%、さらにより具体的には0.1重量%から1重量%の量で存在する。
【0065】
本明細書の1実施形態において、コロイド状金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化セリウム、シリカ、チタニア、酸化ジルコニウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。シリカは、水性コロイド状シリカなどのシリカゾル材料、具体的には酸性pHであってもよい。シリカゾル材料のいくつかの非限定的な例は、CabotCorporation、ならびにWacker Chemie、Degussa、Nissan Chemical、およびNalco Chemical Companyなどの他の供給元から購入できるものである。1つの特定の非限定的な例の有効なシリカゾルCab-O-Sperse A205は、Cabot Corporationから入手可能な脱イオン水中の高純度ヒュームドシリカの水性分散液である。Cab-O-Sperse A205は、約5-7のpH、約12%の固形分、100センチポイズ(cPs)未満の粘度(cPs)および約1.07の比重を有する。本明細書の1つの実施態様において、コロイド状金属酸化物はシリカを含むと理解される。1つの実施態様において、コロイド状金属酸化物は酸化セリウムである。
【0066】
本明細書の1つの実施形態において、酸化セリウムは、市販されている酸化セリウムゾルであってもよい。1つの具体的な実施形態において、市販されている酸化セリウムゾルは、水性コロイド懸濁液中に酸化セリウム粒子を含む。本明細書の1つのより具体的な実施形態において、例として挙げることができるいくつかの非限定的な市販の酸化セリウムゾルとしては、Rhodiaから入手可能なコロイド状酸化セリウム硝酸塩および酸化セリウムアセテート、ならびにNyacol Nano Technologies Inc.から入手可能なそれらの酸化セリウムゾルが挙げられる。本明細書の1つのより具体的な実施形態において、酸化セリウムゾルは、20重量%の酸化セリウム粒子を含む。さらに別の具体的な実施形態において、いくつかの非限定的で例示的な酸化セリウムゾルは、約100ナノメートル(nm)未満、より具体的には約50nm未満、最も具体的には約20nm未満の粒径を有するものを含む。別の具体的な実施形態において、酸化セリウムゾルのいくつかの非限定的で例示的なpHは、1から約9、より具体的には1から約6、最も具体的には2から約4のオーダーのpH値を有するものである。さらに別のより具体的な実施形態において、他の金属酸化物、例えば金属酸化物ゾルのいくつかの他の非限定的な例として、ZnO、ZrO2、TiO2、Al2O3およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0067】
1つのより具体的な実施態様において、コロイド状金属酸化物を含む安定な懸濁液は、具体的には約0.001から約36重量%、より具体的には約0.01から約30重量%、最も具体的には約0.1から約20重量%のコロイド状金属酸化物を含むことができ、前記重量パーセントは、前記安定な懸濁液の総重量に基づいている。本願明細書のさらに別の実施態様において、コロイド状金属酸化物は、シリカ、さらに具体的にはシリカゾルをさらに含むことができる。
【0068】
本明細書の1つの実施態様において、より具体的なコロイド状酸化セリウムは、NyacolNano Technologiesから供給されることができ、以下の特徴を有する:
【表1】
【0069】
さらに水溶性染料(iii)は、それが化成被覆に適合するように、本明細書に記載された様々なパラメータを有するものである。本明細書で使用される染料(iii)は、蛍光染料または単に可視染料であり得る。蛍光染料は人間の裸眼で可視であるものの、可視染料は蛍光成分を含まないようなものであることが理解されよう。
【0070】
本明細書の1つの実施態様において、水溶性染料(iii)は可視染料であり、金属基材の金属表面のような基材上に所望の厚さを被覆する際に、人間の裸眼によって視覚的に検出可能な可視光下での特徴的な色を有することができるようなものである。これは、本発明の方法による被覆の厚さを定量する能力と共に、被覆が基材上に存在するかどうかの定性的決定を可能にする。
【0071】
水溶性染料(iii)が蛍光染料である場合、少量の染料が安定な懸濁液中で使用された場合でも、安定な懸濁液(被覆組成物)が非常に薄い場合でも検出可能な蛍光を生じるようなものとする。染料が蛍光を発する光の波長は、染料が蛍光を発するときに発する光の波長とは異なるべきである(すなわち、重複してはならない)。これにより、染料を蛍光させるために使用される光による蛍光の強度の測定に過度の干渉がないことが保証される。
【0072】
水溶性染料(iii)の別のパラメータ
【0073】
水溶性染料(iii)の別のパラメータは、染料が化成被覆を妨害するものではなく、例えば、懸濁液を25℃の温度で少なくとも約48時間、 より具体的には約48時間から少なくとも約18ヶ月の期間にわたって沈殿を形成しないまたはゲルをもたらさない、そしてさらに、化成被覆または金属表面との化学反応をもたらさないものである。1つの実施形態において、水溶性染料(iii)は有機化合物であり、コロイド状金属酸化物水性コロイド懸濁液(例えば、酸化セリウム水性コロイド懸濁液)の不安定化をもたらさない、すなわち安定な懸濁液である。1つの実施形態において、水溶性染料(iii)は、それがアセテート対イオンを有するようなものである。本明細書の別の実施態様において、水溶性有機染料(iii)は安定であり、すなわち、本明細書で使用される安定性の定義は、約10℃から約70℃の温度で、より具体的には約15℃から約35℃の温度で、さらにより具体的には25℃で、継続して乱されない保管での少なくとも2日間の期間に可視沈降またはゲル化などの、組成物中の物理的外観にほとんどまたは全く変化を示さない化成被覆組成物中の水溶性染料を含む。水溶性染料は、検出可能な組成物中でコロイド状金属酸化物の沈殿を生じないようなものである。
【0074】
水溶性染料のさらに別のパラメータは、化成被覆におけるその使用が、染料を含まない化成被覆と少なくとも同じ均一性で基材上に堆積する化成被覆を提供することである。被覆のこの均一性は、1つの実施形態では、人間の裸眼での目視検査によって決定することができる。
【0075】
水溶性染料(iii)の1つの他のパラメータは、化成被覆に使用される場合、当該染料は、人間の裸眼による化成被覆の均一性および厚さの定性的特徴付け、および/または一連の基準を用いた人間の裸眼による化成被覆の均一性および厚さの定量的特徴付けを提供する。
【0076】
1つの実施態様において、水溶性染料(iii)は、約1000ppm未満、より具体的には約750ppm未満、さらにより具体的には約500ppm未満、最も具体的には約100ppm未満の量で化成被覆中に存在しなければならず、ここで1つの実施態様において、上記の各範囲は、1ppm、5ppm、10ppmまたは25ppmのいずれかの低い方の端点を有することができる。
【0077】
水溶性染料(iii)の他の1つのパラメータは、化成被覆に使用される場合、染料は、染料を含まない同一の化成被覆と同じ物理的、機械的および腐食特性をもたらすものである。適切な物理的、機械的および腐食特性のいくつかは、試験方法によって測定された粉末被覆または液体被覆(本明細書に記載の化成被覆など)で上塗りされた前処理された溶融浸漬亜鉛メッキまたはAl試験パネルのものであり、試験方法としては、限定されるものではないが、EN ISO6272による耐衝撃性試験、またはEN ISO 1520によるエリクセンカッピング試験またはEN ISO 7253による耐腐食性試験が挙げられる。
【0078】
本明細書の1つの非限定的な実施形態では、本発明に記載の染料(iii)の適用方法は、適用後および検査前に化成被覆を水ですすぐことが求められる。さらに、標的染料(例えば蛍光増白剤363)の適用は、図1に示されるように、有機官能性シラン/ジルコネートのバスでの滞留時間と共にどのように被覆重量が増加するかを人間の裸眼で見ることを可能にする。
【0079】
1つの具体的で非限定的な実施態様において、水溶性染料(iii)は、正電荷および対イオンであって1から約6の炭素原子、より具体的には1から約3の炭素原子を含むカルボン酸に由来するものを有し、非限定的な例として、ギ酸、酢酸等である。
【0080】
1つの非限定的な実施態様において、染料(iii)は一般式(I)を有する水溶性染料であり、
【化6】

ここで
G1は、1から約20の炭素原子を有し、および少なくとも1つの酸素または窒素のヘテロ原子を含む有機基であり、
Aは、窒素原子または(-)3C-R*であり、ここでR*は、約10までの炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキルまたはアリール基から選択される一価の基であり、
R6は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはカルボアルコキシアルキル基、あるいは水素であり、
R7 は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、あるいは水素であり、
R8は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニル、アリールスルホニル、またはアミノスルホニル基、あるいは水素であり、
R9は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、あるいは水素であり、
R10は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、アルコキシ、アリールアルキルスルホニルまたはアリールスルホニル基、あるいは水素であり、
R11は、約10までの炭素原子を含む、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアラルキル、ハロゲンもしくはアルコキシ基で任意置換されるアリール、シアノアルキル、カルバマートアルキルまたはアルコキシカルボニルアルキル基、あるいは水素であり、
R12は1から約6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、そして
nは、1から3、より詳細には1または2、最も詳細には1の整数である。
【0081】
1つの実施態様において、G1は一般式(IX)の一価有機基であり:
【化7】

ここで
R13は、1から約6の炭素原子を含むアルキルもしくはアルコキシ基、ハロゲン、水素であり、あるいはR14と共に16までの炭素原子を含む縮合アリール基、または16までの炭素原子を含む構造(IX)の芳香環に結合した-O-CH2-O-基または-O-CH2CH2-O-基を含む環を形成し、
R14は、1から6の炭素原子を含むアルキルもしくはアルコキシ基、水素、ハロゲン、カルボキシル、カルボアルコキシ、アミノカルボニル、カルバマート、スルホニル、アルキルスルホニル、アミノスルホニルであり、あるいはR13またはR15と共に、約16までの炭素原子を含む縮合アリール基、または16までの炭素原子を含む構造(IX)の芳香環に結合した-O-CH2-O-基または-O-CH2CH2-O-基を含む環を形成し、
R15は、1から約6の炭素原子のアルキルもしくはアルコキシ基、ハロゲンまたは水素であり、あるいはR14またはR16と共に、約16までの炭素原子を含む縮合アリール基を形成し、あるいはR14またはR16と共に、約16までの炭素原子を含む構造(IX)の芳香環に結合した-O-CH2-O-基もしくは-O-CH2CH2-O-基を含む縮合環、または2H-[1,2,3]トリアゾールに由来する2から約12の炭素原子の一価の基を形成し、
R16は、1から約6の炭素原子のアルキルもしくはアルコキシ基、ハロゲンまたは水素であり、あるいはR15と共に、16までの炭素原子を含む縮合アリール基、または約16までの炭素原子を含む構造(IX)の芳香環に結合した-O-CH2-O-基もしくは-O-CH2CH2-O-基を含む環を形成し、そして
R17は、1から約6の炭素原子のアルキル基、水素、または約8までの炭素原子のアルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基である。
【0082】
別の実施態様において、G1は、一般式(X)の1価の有機基であり、
【化8】

ここで
R18、R19、R20、R21およびR22の各々は、独立して、1から約6の炭素原子のアルキル基または水素である。
【0083】
1つの実施態様において、化学式(X)の水溶性有機染料(iii)は、-CR*と等しいAを有し、G1は式(X)の基である。
【0084】
他の実施態様において、化学式(X)の水溶性有機染料(iii)は、-CR*と等しいAを有し、G1は式(X)の基であり、ここでR18、R19およびR20は、各々メチルであり、R21およびR22は各々水素である。
【0085】
別の実施態様において、化学式(X)の水溶性有機染料(iii)は、窒素であるAを有し、G1は式(X)の基である。
【0086】
別の非限定的な実施態様において、水溶性染料(iii)は一般式(II)を有し、
【化9】

ここで
R12は、1から約6の炭素原子を含むアルキル基または水素であり、
R23は、水素、1から約6の炭素原子のアルキル基、6から約10の炭素原子のアリール基、7から約12の炭素原子のアラルキル基、またはヒドロキシカルボニル基(-C(=O)OH)もしくはアルコキシカルボニル基(-C(=O)OR26)で置換された6から約12の炭素原子のアリール基であって、R26が1から約4の炭素原子のアルキル基であるものであり、
R24は、水素、1から約6の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル、または構造-NR27R28を有するアミノであって、R27およびR28が、それぞれ独立して、水素または1から約6の炭素原子のアルキル基であるものであり、
R25は、水素、1から約6の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル、または構造-NR27R28を有するアミノであって、R27およびR28が、それぞれ独立して、水素または1から約6の炭素原子のアルキル基であるものであり、そして
mは1から3、より具体的には1または2であり、最も具体的には1の整数である。
【0087】
さらに別の実施態様において、式(II)の水溶性染料(iii)は、-NR27R28と等しいR24およびR25を有し、ここでR27 およびR28の各々は、独立して、水素または1から約3の炭素原子のアルキル基であり、R23はC6H4-CO2Hである。
【0088】
本明細書の1つのさらなる実施態様において、水溶性染料(iii)は、キサンテニウム、1H-ベンゾイミダゾール、3H-インドール、2-アリリデン-2,3-ジヒドロ-1H-インドールおよび/またはベンゾフランに由来する。
【0089】
1つの実施態様において、水溶性染料(iii)は、ベンゾイミダゾール染料である。本開示におけるベンズイミダゾロン染料は、有機顔料のアゾ-ベンズイミダゾロンのクラスであり、これらはジアゾニウム塩(diazoniimisalt)前駆体(またはジアゾ成分)としての置換芳香族アミンおよびベンズイミダゾロン官能部分を含むカップリング剤から一般に生じる。アゾ-ベンズイミダゾロン顔料は、主としてカップリング成分の化学組成に応じて、黄色−赤色−褐色にわたる色相を有する色をもたらすことが知られている。ベンゾイミダゾロン染料のいくつかの非限定的な例は、ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、またはベンズイミダゾロンレッドである。本明細書の1つの実施態様において、染料は蛍光染料、ベンズイミダゾロン染料またはそれらの混合物である。
【0090】
本明細書の別の実施態様において、本明細書で使用される水溶性染料(iii)は、AmericanDyestuff Corporationから入手可能なアメジン ローダミン B 液体(Amezine Rhodamine B Liquid)、アメジン ブリリアント R レッド P液体(Amezine Brilliant R Red P Liquid)、アメホワイト BAC 液体(Amewhite BAC Liquid)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0091】
1つの非限定的な実施態様において、水溶性色素(iii)は、ピラニン型UV染料トレーサーおよび/またはローダミンWT型UV染料トレーサー以外のものであってもよい。
【0092】
本明細書のさらなる実施態様において、水溶性染料(iii)は、CAS番号:95078-19-6で識別される蛍光増白剤363から選択されることができる。本明細書のさらなる実施態様において、水溶性染料(a)は、CAS番号:95078-19-6で識別される蛍光増白剤363; アメホワイト BAC 液体(AmewhiteBAC liquid)、アメジン ローダミン B 液体染料(AmezineRhodamine B Liquid Dye)またはアメジン ブリリアント R レッドP 液体(Amezine Brilliant R Red P Liquid)およびそれらの混合物から選択されることができる。
【0093】
本明細書の1つの実施態様において、水溶性染料(iii)の記載は、化成被覆組成物を金属表面に適用するとき、染料が裸眼で可視であり、および/またはその存在およびその強度が光学機器によって測定可能であることが本明細書において理解されよう。
【0094】
1つの実施態様において、水(ii)は、具体的には脱イオン水である。
【0095】
本明細書の1つの実施態様において、化成被覆はクロムを含まず、および/またはリン酸塩を含まない。本明細書のさらに別の実施形態では、化成被覆は水洗浄に対して耐性がある。
【0096】
1つの実施態様において、本明細書の化成被覆は、水溶性染料(iii)が水溶性有機染料(iii)以外の水溶性有機染料により置換された同等の化成被覆よりも、少なくとも約2倍、より具体的には少なくとも約3倍、最も具体的には少なくとも約5倍の安定性の期間を示すことができる。本明細書の1つの実施態様において、化成被覆は、25℃の温度で、少なくとも約48時間、より具体的には約48時間から約5年間、さらにより具体的には約72時間から約3年間、さらにより具体的には約96時間から約2年、最も具体的には約1週間から約18ヶ月の安定性の期間を有することができる。
【0097】
1つの具体的な実施態様において、金属腐食防止剤(i)、水(ii)、水溶性染料(iii)、および本明細書に記載の化成被覆のコロイド状金属酸化物などの任意の添加剤に加えて、当該組合せの保存期間は、安定化剤を随意に添加することによって顕著に改善され得る。1つの具体的な実施態様において、特定の安定化
剤の添加により、化成被覆の保存期間を延ばすことができる。
【0098】
本明細書の1つの他の実施態様において、本明細書で使用される「安定化剤」という語句は、(1)水に可溶性であり、(2)有害大気汚染物質でなく、場合によってはさらにVOCでなく、そして(3)化成被覆組成物における金属含有化合物(b)または他の成分の沈殿またはゲル化を遅延させる物質であると理解されるべきである。
【0099】
本明細書の1つの別の実施態様において、安定化剤の水への溶解度は、安定化剤および水性組成物の少なくとも2つの区別される層の形成に起因する可視の相分離は少なくとも存在せず、安定化剤は、特定の安定化剤を具体的に使用される量にて使用した結果として組成物における沈殿またはゲル化を遅延させることができるようなものである。より具体的な実施態様において、安定化剤は、完全な混和性から約1重量%、より具体的には約50から約2重量%、最も具体的には約30から約1重量%の水における溶解度を有することができ、前記重量パーセントは、組成物の総重量に基づくものである。
【0100】
本明細書のさらに別の実施形態において、有機官能性シラン、その加水分解物および/または縮合物などの金属腐食防止剤(i)の沈殿またはゲル化の遅延は、ある期間内に沈殿またはゲル化を有する前記安定化剤を除く同等の組成物と比較して、同じ期間における可視の沈殿またはゲル化を排除することを含むことができる。
【0101】
他の具体的な実施態様において、多くの安定化剤を例として挙げることができる。本明細書における1つの実施態様において、安定化剤のいくつかの非限定的な例として、例えば、アルコール、グリコール、トリオール、ポリオール、グリコールエーテル、エステル、ケトン、ピロリドン、またはポリエーテルシランおよびこれらの組み合わせが挙げられ、但し安定化剤はHAPでなない物質に限定される。
【0102】
より具体的な実施態様において、上記のポリエーテルシランは、一般式R6O(EO)7.5-CH2-CH2-CH2-Si-(OMe)3、または R6O(EO)3-CH2-CH2-CH2-Si-(OMe)3の少なくとも1つであり、ここで(EO)は定義通りであり、R6はメチルであり、そして(OMe)はメトキシ基である。本明細書の別の実施態様において、本明細書に記載の安定化剤のいずれか1つ以上は、本明細書に記載の組成物および/または方法のいずれかで使用することができる。
【0103】
1つの実施形態では、ポリエーテルシランは、一般式R6O(EO)m-[CH2]n-Si-(OR)3であり、ここでmは1から約20であり、nは1から約12であり、RおよびR6はそれぞれ独立して、1から約16の炭素原子、より具体的には1から約12の炭素原子、最も具体的には1から約8の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状の有機基であり、EOはオキシエチレン基である。
【0104】
本明細書のより具体的な実施形態において、具体的な安定化剤のいくつかの非限定的な例として、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリ(プロピレングリコール)、1,5-ペンタンジオール、エステルジオール 204、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンアリルエーテル、グリセロールエトキシレート、グリセロールエトキシレート- コ- プロポキシレートトリオール、グリセロールプロポキシレート、ペンタエリスリトール、1-メトキシ-2-プロパノール (プロピレングリコールメチルエーテル)、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、 2-ブトキシエタノール、ジ(プロピレングリコール)ブチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)モノブチルエーテル、ジ(プロピレングリコール) ジメチルエーテル、メチルアセテート、エチルアセテート、エチルラクテート、2-メトキシエチルアセテート、2-ブトキシエチルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、MeO(EO)7.5-CH2-CH2-CH2-Si-(OMe)3、ここでMeOはメトキシであって(EO)は上記定義通りである、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される安定化剤が挙げられる。
【0105】
他の具体的な実施態様において、安定性を増加する量にて使用されたときの安定化剤は、安定化剤を添加しない同等の組成物の少なくとも2倍の前記化成被覆の安定性の期間を提供する。さらにより具体的な実施態様において、安定化剤は、安定化剤を添加していない同等の組成物の少なくとも3倍の前記組成物の安定性の期間を提供する。もっとも具体的な実施態様において、安定化剤は、安定化剤を添加していない同等の組成物の少なくとも5倍の前記組成物の安定期間を提供する。1つのより具体的な実施態様において、安定化剤は、室温において、具体的には少なくとも約48時間、より具体的には約48時間から約5年間、さらにより具体的には約72時間から約3年間、さらにより具体的には約96時間から約2年、最も具体的には約1週間から約18ヶ月の組成物の安定性の期間を提供する。
【0106】
別の実施態様において、安定化剤に関する用語「安定性を増加する量」は、上記で定義した安定性の期間を提供する安定化剤の量であると理解されるべきである。より具体的な実施態様において、「安定性を増加する量」は、そのような量より少ない量の同一の安定化剤を使用する同等の組成物と比較して、本明細書に記載の検出可能な組成物中の縮合物の沈降またはゲル化の遅延をもたらす安定化剤の量であると理解されるべきである。安定化剤、金属含有化合物(b)および本明細書に記載の他の組成物成分のような因子により、安定性を増加する量が大きく変化することは理解されよう。本明細書の1つの実施態様において、安定性を増加する量は、安定化剤の任意の量を超える任意の追加の量であり、それは、金属含有化合物(b)、例えば有機官能性シラン、テトラアルコキシジルコネートおよび/またはテトラアルコキシチタネートなどの加水分解において生じてもよく、また金属含有化合物(b)の部分的および/または完全な縮合物の水溶液の安定性を増加させることが本明細書にて理解されるであろう。
【0107】
本明細書の1つの別の実施態様において、本明細書に記載の化成被覆組成物は、クロムおよび/またはリン酸塩を実質的に含まない。本明細書の1つの具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物は高引火点を有することができる。さらなる具体的な実施態様において、高引火点は、少なくとも約21℃、より具体的には約25℃を超え、最も具体的には約30℃を超える引火点を含み得る。本明細書の1つの実施態様において、高引火点は、約24から約50℃、より具体的には約24から約38℃、最も具体的には約30から約38℃の引火点を含むことができる。引火点は、ASTM D93-13e1、Pensky-Martens Closed-Cupテスターの標準試験方法により決定される。
【0108】
本明細書の別の具体的な実施態様において、さらに、上記成分に対する任意のシランアジュバントとして、本明細書に記載の化成被覆組成物および方法は、使用溶液中にSi-O結合をもたらすC1-C4アルコキシシラン化合物を含み得る。本明細書の別の具体的な実施態様において、そのようなSi-O結合は、本明細書に記載のアジュバントおよびシランのSi-O-Si結合を含むことができる。本明細書の別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の組成物および方法は、少なくとも1つのC1-C4アルコキシシラン化合物、より具体的には少なくとも2つのC1-C4アルコキシシラン化合物を含むことができる。
【0109】
1つのより具体的な実施態様において、これらのアジュバント化合物は、式(XI)で表すことができ、
【化10】

ここでR29は、1から約10の炭素原子、より具体的には1から約8の炭素原子、最も具体的には1から約4の炭素原子を有する1価の炭化水素基、またはOR33であり、そして各R33は、C1-C4アルキルから独立して選択される。本明細書の1つのさらにより具体的な実施形態において、式(XI)のいくつかの非限定的な例として、現在のところ、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)またはメチルトリエトキシシランが挙げられ得る。
【0110】
本明細書の1つの実施態様において、式(XI)のこれらの化合物および当該式に包含される他の化合物は、溶液(例えば水溶液)中で加水分解してSi-O結合源をもたらす。本明細書の1つの別の実施態様において、本明細書に記載の化成被覆組成物および方法は、本明細書に記載の水性酸化セリウムゾル中に存在する任意の水に加えて特に水をさらに含むことができる。
【0111】
本明細書の1つの実施態様において、本明細書に記載の化成被覆は、約0.0001から約5重量%、より具体的には約0.0005から約2重量%、最も具体的には約0.001から約1重量%の量の水溶性染料(iii);具体的には約0.01から約80重量%、より具体的には約0.1から約60重量%、最も具体的には約1から約40重量%の量の金属腐食防止剤(i)、具体的には有機官能性シランおよび/または加水分解物および/またはその部分的もしくは完全な縮合物、ならびに具体的には約0.01から約10重量%、より具体的には約0.05から約5重量%、最も具体的には約0.1から約1重量%の量の金属フッ化物含有成分(iv)と組み合わせて使用されるもの;具体的には約0.001から約36重量%、より具体的には約0.01から約25重量%、最も具体的には約0.1から約20重量%の量のコロイド状金属酸化物;ならびに化成被覆組成物の総重量が100重量パーセントになるのに十分な量の水(ii);任意にて、具体的には約1から約50重量%、より具体的には約2から約40重量%、最も具体的には約3から約30重量%の量の安定化剤;そして任意にて、具体的には約0.01から約15重量%、より具体的には約0.1から約10重量%、最も具体的には約0.1から約5重量%の量のシランアジュバントを含むことができ、前記重量パーセントの全ては化成被覆の全重量に基づいている。化成被覆(および本明細書に記載の他の化成被覆)に使用される成分および任意成分のそれぞれの量は合計100重量%であり、上述した範囲の量(および本明細書に記載されている他の化成被覆組成物に列挙されている他の量)は、これを達成するために必要であれば調整されることは、本明細書にて理解されるであろう。他の実施態様において、本明細書に記載の方法は、化成被覆組成物について上述した同一の組成量を使用することができる。
【0112】
1つのより具体的な実施態様において、いくつかの非限定的な例の例示的化成被覆組成物は、実質的にクロメートおよび/または具体的には実質的にフォスフェートを含まず、そして
(a)約0.01から約80重量%、より具体的には約0.1から約70重量%、最も具体的には約3から約60重量%の金属腐食防止剤(i)、ここで前記腐食防止剤(i)は、ウレイドシランまたはその加水分解物および/またはその部分的もしくは完全な合物の形態であり、ならびに約0.01から約10重量%、より具体的には約0.05から約5重量%、最も具体的には約0.1から約1重量%の金属フッ化物含有成分(iv)、
(b)化成被覆組成物のすべての成分の合計が100重量%になる十分な量の水(ii)、
(c)約0.0001から約5重量%、より具体的には約0.0005から約2重量%、最も具体的には約0.001から約1重量%の水溶性染料(iii)、例えば非限定的な例の蛍光増白剤363 CAS: 95078-19-6、
(d)約0.001から約36重量%、より具体的には約0.01から約25重量%、最も具体的には約0.1から約20重量%のコロイド状金属酸化物、
(e)任意にて、約25重量%まで、より具体的には約0.1から約20重量%、最も具体的には約1から約15重量%の量の安定化剤、
(f)任意にて、約25重量%まで、より具体的には約0.01から約20重量%、最も具体的には約1から約15重量%の量のシランアジュバント、具体的にはC1-C4アルコキシシラン化合物またはその加水分解物、ならびに
(g)任意にて、最小量のpH調整剤、前記最小量のpH調整剤は、具体的には、約0.001から約1.2重量%、より具体的には約0.01から約1.0重量%、最も具体的には約0.01から約0.6重量%であり、前記の重量パーセントは、化成被覆組成物の総重量に基づいている、を含む。
【0113】
本明細書の1つの実施態様において、化成被覆組成物は、本質的に
(a)構造
【化11】

を有する約0.01から約80重量%の量の少なくとも1つのウレイドシラン、
ここでRは独立して水素または1から約4の炭素原子のアルキル、あるいはそれらの縮合化合物であり、ならびに約0.1から約1重量%の量の少なくとも1つの金属フッ化物含有成分(iv)、
(b)化成被覆組成物のすべての成分の合計が100重量%となるような量の水(ii)、
(c)約0.001から約2重量%の量の水溶性染料(iii)、ならびに
(d)約0.001から約36重量%の量の酸化セリウム粒子、ここでウレイドシランの重量は各ウレイドシラン成分の重量の合計であり、重量パーセントは化成被覆組成物の全重量に基づくものである、からなる化成被覆組成物である。
【0114】
本明細書の最も具体的な実施態様において、以下の範囲(重量パーセント)の成分:
(a)約3から約60重量%の金属腐食防止剤(i)、ここで前記腐食防止剤(i)がウレイドシランまたはその加水分解物であり、および約0.1から約1重量%の金属フッ化物含有成分(iv);
(b)化成被覆組成物の全成分の総重量が100重量%になるような量の水(ii);
(c)約0.001から約1重量%の水溶性染料(iii)、例えば非限定的な例の蛍光増白剤363 CAS: 95078-19-6;
(d)約0.001から約10重量%のケイ素および/またはセリウムの酸化物の粒子;
(e)約1から約15重量%の安定化剤;
(f)約1から約15重量%のシランアジュバント;ならびに
(g)少量のpH調整剤(調節剤)、ここで少量は、pH調整剤について上述した最小量に等しいもの、を有する化成被覆が提供される。
【0115】
本明細書の1つの実施態様において、上記の重量パーセントの量の成分を有する本明細書に記載の組成物は、化成被覆組成物(例えば、100重量パーセント)の合計の重量パーセントを基準にした重量パーセントの量にて存在する。
【0116】
さらなる実施態様において、本質的に
(a)約0.01から約80重量パーセントの量の少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)、ここで前記腐食防止剤(i)は、構造
【化12】

を有するウレイドシラン、ここでRは独立して水素または1から約4の炭素原子のアルキルであり、あるいはそれからの縮合化合物、ならびに約0.01から約10重量%の少なくとも1つの金属フッ化物含有成分(iv);
(b)化成被覆組成物の総重量が100重量パーセントとなるような量の水(ii);
(c)約0.001から約1重量%の量の式(I)または(II)の構造を有する少なくとも1つの水溶性有機染料(iii);
(d)約0.001から約36重量%の量の酸化セリウム粒子;ならびに
(e)約1から約20重量%の量の安定化剤、ここでウレイドシランの重量は各ウレイドシラン成分の重量の合計であり、重量%は化成被覆の全重量に基づくものである、からなる化成被覆が本明細書において提供される。
【0117】
本明細書の1つの実施態様において、上記重量パーセントの量の成分を有する本明細書に記載の化成被覆組成物は、組成物の総てを合わせた重量パーセント(例えば、100重量パーセント)に基づく重量パーセント量にて存在する。
【0118】
本明細書の他の実施態様において、ウレイドシラン、(水性)セリウムゾルおよび金属フッ化物含有成分が最初に混合される混合プロセス(方法)から、非限定的な例のMeOHのような有害な空気汚染物質(HAPS)が除去される。別の実施形態では、この混合によって形成された相当量のMeOHまたは他の揮発性物質を除去した後、安定化剤および場合により水を反応混合物に添加して生成物の安定性を高める。1つの具体的な実施態様において、安定化剤、特に水の沸点より高い沸点を有するものは、MeOHおよび/または他の揮発性物質の除去の前に添加することもできる。メタノールは有害大気汚染物質(HAP)および揮発性有機化合物(VOC)である。
【0119】
本明細書の1つの実施態様において、
(a)少なくとも1つの金属腐食防止剤(i)、ここで前記金属腐食防止剤(i)は、有機官能性シランおよび/またはその加水分解物および/または部分的もしくは完全な縮合物であり、ならびに金属フッ化物含有成分(iv);
(b)水(ii);
(c)正電荷および対イオンであって1から約6の炭素原子を含むカルボン酸に由来するものを有する水溶性有機染料(iii);そして
ここで該組成物は、25℃で保管した場合、有害な量の沈殿物を少なくとも48時間の期間において含まない、を含む化成被覆組成物もまた提供される。有機官能性シラン成分(a)、金属フッ化物含有成分(iv)、染料(c)および水(b)、任意の安定化剤、任意のアジュバント、任意のpH調整剤、方法、被覆された基材、および 本明細書で提供される任意の他の記載の本明細書に記載されたすべての選択肢は、コロイド状酸化物成分の非存在下での化成被覆組成物に等しく適用されることが、本明細書において理解されるであろう。
【0120】
本明細書の1つの具体的な実施態様において、現在の本明細書に開示されたいくつかの非限定的な例示的方法は、(i)ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物、およびケイ素含有化合物からなる群から選択される金属腐食防止剤、但し金属腐食防止剤がケイ素含有化合物である場合、化成被覆組成物は金属フッ化物含有化合物(iv)も含有する、(ii)水、水溶性染料(iii)を含む水性ゾルと所望の金属表面を接触させることを含む。
【0121】
本明細書の別の実施態様において、本明細書に記載の化成被覆組成物および/または方法は、スチールおよびアルミニウムなどの金属および亜鉛被覆鋼の化成被覆を提供するのに使用することができ、ここで前記化成被覆は、非限定的な例の塗料のようなさらなる被覆に対する接着性を改善し、同様に前記金属に対する改善された腐食保護を提供する。さらに別の実施形態において、本明細書の化成被覆および/または方法によって処理された金属は、建設および冷延鋼などに使用されるシートメタルのような被覆金属シートの商業的および工業的用途に使用することができる。基材の形状は、シート、プレート、バー、ロッドまたは所望の任意の形状の形態であり得る。
【0122】
本明細書においては、基材に適用される化成被覆組成物の均一性および/または厚さを決定する方法であって、
(a)金属表面化成被覆を基材の金属表面に適用すること、ここで前記化成被覆は、
(i)ジルコニウム含有化合物、チタニウム含有化合物、及びケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つの金属腐食防止剤、ここで前記ケイ素含有化合物は、金属フッ化物含有化合物(iv)と組み合わせて使用され、
(ii)水、および
(iii)水溶性染料であって、化成被覆組成物を金属表面に適用すると、染料が裸眼で可視であり、および/または光学機器により、その存在が検出可能であり、またその強度が測定可能であるもの、
ここで25℃で保管したときに、少なくとも48時間の期間において有害な量の沈殿物を含有しない、を含み、
(b)化成被覆組成物が適用された所定の領域内での水溶性染料(iii)の強度を光学機器により測定し、測定された染料の強度を提供すること、
(c)測定された染料の強度を、適用された化成被覆の厚さおよび/または均一性に関連付けること、を含む方法が提供される。
【0123】
本願発明において、化成被覆は、
(a)金属腐食防止剤(i)を水(ii)に添加し、ここで前記腐食防止剤が有機官能性シランおよび/またはその加水分解物および/またはその部分的もしくは完全な縮合物であり、そして該混合物を混合して水溶液を形成すること、
(b)ステップ(a)の有機官能性シランを加水分解する、または部分的にもしくは完全に縮合すること、
(c)金属フッ化物含有成分(iv)およびコロイド状金属酸化物をステップ(b)に添加すること、
(d)ステップ(b)またはステップ(c)のいずれかに本明細書に記載のパラメータを有する水溶性有機染料(iii)を添加すること、ならびに任意にて
(e)ステップ(a)から(d)のいずれかに安定化剤を添加すること、を含む方法により調製される。
【0124】
1つの実施態様において、化成被覆のpHは、具体的には約3から約9、より具体的には約4から約6である。
【0125】
本発明では、化成被覆が、金属基材の外面の少なくとも一部に堆積(例えば、被覆)される。金属基材の全外面が、化成被覆で被覆される。
【0126】
本明細書では、
(a)金属腐食防止剤(i)、ここで前記金属腐食防止剤(i)は、有機官能性シランまたはその加水分解物および/または部分的もしくは完全な縮合物;
(b)水(ii);
(c)本明細書に記載のパラメータを有する水溶性有機染料(iii);
(d)金属フッ化物含有成分(iv);ならびに
(e)コロイド状金属酸化物を含む化成被覆であって、25℃で保管した場合に、少なくとも48時間の期間において、有害な量の沈殿物を含有しない化成被覆にて被覆された金属基材が提供される。
【0127】
化成被覆は、バッチまたは連続プロセスでの、スプレー、浸漬またはロールコーティングなどの任意の従来の適用技術により、金属基材の表面に適用することができる。適用における化成被覆の温度は、典型的には約10℃から約85℃、好ましくは約15℃から約60℃である。
【0128】
連続プロセスは、典型的には、コイルコーティング産業において使用され、またミル用途にも使用される。化成被覆は、これら従来のプロセスのいずれかによって適用することができる。例えば、コイル業界では、基材を洗浄し、すすぎ、そして通常、化学コーターを用いてロールコーティングすることによって処理溶液と接触させる。処理片は、その後、加熱によって乾燥され、従来のコイルコーティングプロセスによって塗装および焼き付けされる。
【0129】
処理溶液のミル適用は、浸漬、スプレー、またはロールコーティングにより、新たに製造された金属片に適用されることができる。過剰な化成被覆は、通常、リンガロールで除去される。化成被覆が金属表面に適用された後、金属は、室温または高温で乾燥されて水分が除かれ、成分のそれ自体および表面との縮合反応を促進して、基材の表面上に乾燥して硬化した化成被覆を形成する。代わりに、処理された基材を約65℃から約125℃で2から約60秒間加熱して、その上に化成被覆の乾燥残留物、例えば前処理被覆を有する、被覆された基材を製造することができる。基材が既にホットメルト製造プロセスから加熱されている場合、処理された基材の適用後加熱は、乾燥を促すためには必要とされない。検出可能な組成物を乾燥するための温度および時間は、化成被覆および基材の種類における成分(i)、(ii)、(ii)、および任意の他の添加剤のパーセンテージなどの変数による。
【0130】
基材が金属基材である場合、金属基材の表面に化成被覆を堆積させる前に、典型的には、表面を完全に洗浄および脱脂することにより金属表面から異物が除去される。表面は、機械的摩耗などの物理的手段、または、市販のアルカリまたは酸性洗浄剤、例えばメタケイ酸ナトリウムおよび水酸化ナトリウムで表面を洗浄/脱脂するなどの化学的手段によって洗浄することができる。洗浄剤の非限定的な例は、ペンシルバニア州ピッツバーグのPPG Industries、Inc.から市販されているリン酸塩洗浄剤のCHEMKEEN 163である。洗浄工程の後、金属基材は、通常、水、具体的には脱イオン水ですすいで、残渣を除去する。金属基材は、エアーナイフを使用して空気乾燥させることができ、基材を高温に短時間曝すことにより水を瞬間的になくすことによって、またはスキージロールの間に基材を通過させることによって、空気乾燥することができる。
【0131】
本明細書のさらに別の具体的な実施態様において、本明細書に記載の化成被覆は、処理された金属表面に適用され、処理された表面に約0.5ミリグラム/平方フィート(5mg/平方メートル)以上の化成被覆の重量をもたらし、より具体的には、約0.5から約500ミリグラム/平方フィート(約5から約5,400mg /平方メートル)の重量、より具体的には約3から約300ミリグラム/平方フィート(約32から約3,200mg/平方メートル)の重量を処理された金属表面にもたらす。
【0132】
化成被覆を基材上に適用した後、それは、当業者に公知の方法を用いて、室温でまたは熱に暴露することにより乾燥および/または硬化させることができる。本明細書の1つの非限定的な実施態様において、化成被覆は、その適用後に水洗することができるが、そのような水洗ステップはまた除外することができ、化成被覆は、単にドリップドライさせるか、または本明細書に記載の他の乾燥手段のいずれかを使用することができる。1つの実施態様において、表面を洗浄するために使用される水の量は、金属表面の表面に付着していない化成被覆を除去するのに必要な任意の量であってよく、化成被覆の内容および金属表面のタイプに大きく依存し、当業者によって決定されうるものである。
【0133】
上述したように、適用後の化成被覆は水洗に耐性でありえ、すなわち、水洗の使用では、金属表面から実質的な量またはすべての化成被覆が除去されない。1つの実施態様において、化成被覆は、水洗前の金属表面に適用した化成被覆の重量に基づき、依然として、少なくとも80重量%、より具体的には少なくとも90重量%、最も具体的には少なくとも95重量%の量で存在することになる。
【0134】
染料の測定された強度を提供するため、光学機器により化成被覆組成物が適用された所定の領域内の水溶性染料の強度を測定することは、化成被覆により基材を被覆したのち、または化成被覆が乾燥および/または硬化した後に実施されることができる。
【0135】
1つの実施態様において、適用された化成被覆組成物の所定の領域内の水溶性染料を測定することは、例えば比色計または蛍光光度計などの機器により行うことができる。
【0136】
目視観察が使用される場合、水溶性有機染料(iii)は、電磁放射線スペクトルの可視範囲の色彩を付与する着色染料、または紫外線ランプまたは可視光ランプなどの外部放射線源で励起される蛍光染料であり得る。人間の裸眼は、異なる色の強度を区別することができる。化成被覆で処理された基材の表面を走査する人間の裸眼は、任意の化成被覆を含むまたは含まない基材上の色または領域における不均一性を決定することができる。これらの領域は有色染料の色を有するまたは有さないか、あるいは励起されると蛍光を発するまたは発しないからである。
【0137】
「光学機器」は、比色計、蛍光計、リン光検出器、および他の既知の技術の光学機器のような、本明細書に記載の任意の光学方法を含むことができることが本明細書にて理解されるであろう。水溶性染料の強度は、それぞれ別個の光学的方法で測定されることができ、それぞれの光学的機器により測定されうる色の定量可能な値が得られる。1つの実施態様において、強度は、既知の色の強度を有する基準と比較した、それぞれの光学機器によって決定された色の定量可能な値の比較測定値となる。
【0138】
定量的な測定が必要な場合、較正手順は、染料(iii)の測定された可視強度を、有色染料成分を含む化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性と「関連づける」ために行われる。少なくとも3つの較正標準が、既知の化成被覆の重量または厚さ、および/または望ましい化成被覆の重量または厚さおよび/または均一性の範囲を表す均一にて作製される。ブランク基材の2つのサンプル、標的検出可能な組成物の重量/厚さおよび/または均一性を表す2つのサンプル、低化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性を表す2つのサンプル、ならびに高化成被覆の重量または厚さおよび/または均一性を表す2つのサンプルを含む、より統計的に有意な8つの較正標準サンプルが利用されることが好ましい。これらの較正標準は、当業者に公知の被覆方法を用いて調製することができる。色強度は、様々な色強度のこれらの標準を取り、サンプルの色強度を既知の重量/厚さおよび/または均一性の標準と一致させる目視観察を用いて、化成被覆を含む基材のサンプルとそれらを比較することにより測定される。一致がなされると、重量/厚さおよび/または均一性は、標準を調製するために使用された重量/厚さおよび/または均一性の量を参照することによって決定される。各較正標準の化成被覆重量は、当業者に知られている任意の適切な方法を用いて独立して検証することができる。好ましい独立した方法は、基材の表面上の元素を測定するXRF(X線)蛍光分光計の使用であろう。この方法の例として、様々な量の化成被覆で被覆され、そして乾燥された基材は、例えばFocus -5+検出器、管電圧4kV、管電流750uA、測定時間5分でのOxfordTwin-XベンチトップXRF分光計のようなXRF(X線)蛍光分光計を用いて分析することができる。ピーク面積は、1秒当たりのカウントで表され、以前に測定された標準のセットの較正曲線上に補間される。この標準は、スピンコーティングまたはドローダウンバーのような基材の表面上に非常に正確な量の化成被覆を堆積させる被覆方法によって調製することができる。
【0139】
蛍光光度計が使用される場合、水溶性有機染料(iii)は、化成被覆中に分散された蛍光染料である。検出器が人間の眼である目視観察はまた、染料が紫外線または可視光ランプなどの外部放射線源で励起された場合、水溶性の蛍光性有機染料(iii)を検出するのにも使用することができる。
【0140】
化成被覆組成物の均一性は、着色標準の方法を使用し、処理された基材の異なる部分(領域)(例えば、所定の領域)を観察することによって決定することができる。特定の既知の(所定の)領域に視覚的観察を集中させ、次いでその色の強度を基準と比較するために、穴を有するシート器具のようなマスクを使用することができる。マスクは、処理された基材の周囲の着色領域が観察に導入されうるといったバイアスを防止する。さらに、観察される領域に応じた均一性は、マスク内の穴のサイズを変化させることにより決定することもできる。均一性は、そしてマスクの領域のサイズに関連して評価することができる。複雑な形状では、この方法は、化成被覆の異なる浸潤性およびウィッキングにより変化し得る、平坦平面上の角における化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性の不偏決定を可能にする。
【0141】
蛍光は、当該分野で公知の方法によって測定することができる。典型的には、検出ステーションは、化成被覆の蛍光成分が検出可能なレベルで蛍光を発するのに十分な波長と強度の光を化成被覆上に放射するための光源、および、化成被覆の蛍光成分の蛍光によって生成された光を収集し、収集した光を化成被覆の蛍光の強度を示すアナログまたはデジタル信号に変換する検出器を含む。光源と検出器は、プローブヘッド内に一緒に収容することができる。
【0142】
蛍光は、当該分野で公知の方法によって測定することができる。典型的には、検出ステーションは、化成被覆の蛍光成分が検出可能なレベルで蛍光を発するのに十分な波長と強度の光を化成被覆上に放射するための光源、および、化成被覆の蛍光成分の蛍光によって生成された光を収集し、収集した光を化成被覆の蛍光の強度を示すアナログまたはデジタル信号に変換する検出器を含む。光源と検出器は、プローブヘッド内に一緒に収容することができる。
【0143】
光源は、紫外および/または可視スペクトル領域において電磁放射線を放出する。好ましい光源は、照明されたサンプルに250から400nmの放出線のみが入射するように、光学的にフィルターされた水銀蒸気ランプである。代わりに光源としては、限定されるものではないが、キセノンランプ、重水素ランプ、中空陰極ランプ、タングステンランプ、イオンレーザ、固体レーザ、ダイオードレーザ、および発光ダイオードなどが挙げられる。使用される光源のエネルギーまたはエネルギー範囲は、サンプルに組み込まれた蛍光剤の1つ以上の電子吸収帯のエネルギーまたはエネルギー範囲と一致するが、同一の蛍光剤の蛍光発光のものと一致しないことが好ましい。
【0144】
検出器は、化成被覆の蛍光成分の蛍光によって生成された光を収集し、収集した光を化成被覆の蛍光の強度を示すアナログまたはデジタルの電気信号に変換する。検出器は、前述の光源からの光で照明された後にサンプルにより反射され、放射される光の収集およびスペクトルフィルタリングのための光学系を含む。スペクトルフィルタリング光学系は、サンプル中の蛍光剤の蛍光発光と一致するエネルギーまたはエネルギー範囲の光を光ファイバに転送しながら、光源のエネルギーまたはエネルギー範囲と一致するエネルギーまたはエネルギー範囲の光を除外することが好ましいが、必須ではない。サンプル中の蛍光染料の蛍光発光と一致するこのエネルギーまたはエネルギー範囲の光は、光ファイバを介して主検出器ユニットに伝達することができる。検出器ユニットは、サンプル中の蛍光剤の蛍光発光と一致するエネルギーまたはエネルギー範囲の電磁放射線を分離して測定する、当業者に知られている任意の手段を含むことができる。主検出器ユニットの1つの実施形態は、フォトダイオードアレイを有する単一のモノクロメータを備える分光器である。光ファイバを出る光はモノクロメータに入り、グレーティングを用いてエネルギーにより分散され、フォトダイオードアレイ上に結像されて電気信号を生成する。
【0145】
信号は、化成被覆の蛍光強度と化成被覆の厚さおよび重量および/または均一性との間の所定の関係性に基づいて、化成被覆の厚さの読み取り値に信号を変換する汎用または専用コンピュータなどのコンピュータ装置に移動する。信号は、まず化成被覆の蛍光強度の測定値に変換される。化成被覆の厚さは、化成被覆の厚さおよび重量と化成被覆の蛍光強度との間の所定の数学的関係を表す式に蛍光強度の測定値を入力することによって決定される。任意にて、コンピュータ装置は、化成被覆の厚さが臨界範囲外にあるときに作動される警報装置に接続されてもよい。
【0146】
化成被覆が適用されることがあり、そして化成被覆の蛍光は、その品目の製造中の異なる時間に測定されることがあるため、適用(被覆)ステーションおよび検出ステーションは、製造ラインで、または同じ建物または地理的場所内であっても連続である必要はない。例えば、金属ロールまたはシートをミル内で被覆することができ、化成被覆の厚さは、化成被覆の適用直後に、またはその後の乾燥または硬化工程の直後に決定することができる。
【0147】
化成被覆の初期厚さが所望の臨界厚さを下回る場合、追加の化成被覆を適用ために、検出ステーションの後に被覆ステーションを設けることができる。このステーションは、通常の運転中は作動しないが、化成被覆の厚さが臨界厚さを下回ると、手動または自動で作動させることができる。この第2の被覆ステーションにより適用される化成被覆の量は、結果として厚すぎる化成被覆となる基材の過剰被覆を防止するために可変である。第2の被覆ステーションによって適用される化成被覆の厚さは、検出ステーションで予め測定された基材上の最初に施された化成被覆の厚さを参照することによって自動的に制御され得る。典型的には、このステーションの作動は自動的であり、作動は、第1の被覆ステーションの不十分な作動のラインのオペレータに通知するための警報と一致する。
【0148】
あるいは、被覆の性質および製造プロセスのロジスティックスに応じて、被覆の厚さの決定は、被覆ステップの後、および多くの介在ステップを伴って、行うことができる。例えば、金属は、化成被覆の厚さが決定される前に、スリット、切断、成形、打ち抜き、溶接または他の方法で処理することができる。多くの場合、これは、下地の金属基材を保護するのに十分な厚さで、化成被覆が製造品に残っているかどうかを確かめるために望ましい。例えば、鋼片が、海外で製造され、被覆され、そして国内にて製造業者に販売され、その製造業者は金属を加工し、そして続く化成被覆の適用前に、金属表面上の化成被覆の厚さを確認することがある。いずれの場合でも、化成被覆層が所望の厚さであることを保証するために、検出ステーションに、上述した第2の被覆ステーションが続くことができる。
【0149】
測定された蛍光信号強度を、蛍光成分を含む化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性と相関させるために、較正手順が実行される。望ましい化成被覆の重量または厚さおよび/または均一性を示す、既知の検出可能な組成物の重量または厚さおよび/または均一性を有する、少なくとも3つの較正標準が製造される。ブランク基材の2つのサンプル、標的化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性を表す2つのサンプル、低化成被覆の重量/厚さおよび/または均一性を表す2つのサンプル、ならびに高化成被覆の重量または厚さを表す2つのサンプルを含む、より統計的に有意な8つの較正標準サンプルが利用されることが好ましい。これらの較正標準は、当業者に公知の被覆方法を用いて調製することができる。蛍光強度の測定値は、前述した測定装置(検出器)を用いて測定される。測定された蛍光強度は、蛍光発光スペクトルの最大のエネルギーにおける強度として、または蛍光発光スペクトル下の面積として表すことができる。各較正標準サンプルにおいて、統計的に有意な数、例えば6の反復測定が実施されることが好ましいが、必須ではない。次いで、各較正標準サンプルにおける化成被覆の重量を、当業者に公知の任意の適切な方法を用いて独立して検証する。好ましい独立した方法は、基材の表面上の元素を測定するXRF(X線)蛍光分光計の使用であろう。この方法の例として、様々な量の化成被覆で被覆され、そして乾燥された基材は、例えばFocus -5+検出器、管電圧4kV、管電流750uA、測定時間5分によるOxfordTwin-XベンチトップXRF分光計のようなXRF(X線)蛍光分光計を用いて分析することができる。ピーク面積は、1秒当たりのカウントで表され、以前に測定された標準のセットの較正曲線上に補間される。この標準は、スピンコーティングまたはドローダウンバーのような基材の表面上に非常に正確な量の化成被覆を堆積させる被覆方法によって調製することができる。検証された被覆の重量対実測された蛍光強度のプロットは、較正プロットをもたらす。化成被覆の重量または厚さと蛍光強度との間の関係の数式は、プロット上の点を通じた最良適合線から当業者によって導き出すことができる。
【0150】
比色計が使用される場合、水溶性染料(iii)は有色染料である。比色計は、化成被覆中の特定の波長の光の吸光度を測定する装置である。化成被覆中の有色水溶性染料(iii)の濃度は、ランベルト・ベールの法則を用いて決定することができ、これは染料の濃度は染料の濃度に比例するとしている。比色計の重要な部分は、光源(しばしば通常の低電圧フィラメントランプ)、調整可能なアパーチャ、カラーフィルタのセット、使用溶液を保持するキュベット、透過光を測定するための検出器(通常はフォトレジスタ)、ならびに、検出器からの出力を表示するメーターである。例えばミノルタCR-400携帯型装置のような、液体溶液および乾燥物質の色を測定するための多くの比色計が市販されている。
【0151】
比色計を、化成被覆を含有する処理された基材の表面上に置き、作動させる。比色計は、色および色の強度の分析を提供する。
【0152】
上述したように、既知の量の化成被覆を含有する注意深く調製された基材の標準を用いて、比色計を較正することができる。
【0153】
1つの具体的な実施態様において、地のまたは被覆された金属基材の表面上の化成被覆の重量を決定する方法は、
(i)異なる濃度の一連の化成被覆を調製すること、
(ii)一連の金属基材を化成被覆で被覆すること、
(iii)任意にて、オンライン被覆プロセスで使用されるのと同じ乾燥条件で化成被覆を乾燥すること、
(iv)処理された金属基材および被覆された領域のそれぞれの表面上の化成被覆の量を決定すること、以下の式を使用した重量測定法で化成被覆の量を計算し、
化成被覆の重量= (w2-w1)/(被覆された表面の面積)
基材の一方の面のみが被覆されている場合、または
化成被覆の重量= (w2-w1)/[(2)(被覆された表面の面積)]
基材の二つの面が被覆されている場合、
あるいはXRF標準較正曲線を使用して最小二乗線形回帰方程式を作成するXRF法を使用して、金属基材上の化成被覆の量を決定する、
(v)コニカ・ミノルタ・クロマメーターCR-400のような比色計を用いて、既知の化成被覆の重量での被覆された基材のそれぞれのCIE L*a*b*色空間のa*値を測定すること、
(vi)a*値を化成被覆の重量に対してプロットし、最小二乗線形回帰方程式を計算すること、
(Vii)比色計を用いて前記a*値を決定することにより、前記の地のまたは被覆された金属基板上の化成被覆を測定すること、
(viii)ステップ(vi)の式を用いて、地のまたは被覆された金属基材上の化成被覆の量を計算すること、を含む。
【0154】
本明細書における開示は、以下の実施例と関連して記載され、実施例は本明細書中の開示の特定の実施形態の例示であると見なされるべきであるが、本開示を限定すると見なされるべきではない。本明細書中のパーセントは、他に示されない限り、検出可能な組成物の全重量に基づく重量パーセントである。
【実施例】
【0155】
実施例1
被覆された材料のルミネッセンスによる被覆厚さの決定

本明細書のすべての実施例で使用した化成被覆バス:
【表2】
【0156】
表1の成分を攪拌しながら添加することにより、化成被覆バスを調製した。化成被覆バスを室温で1時間置いた後、さらなる実験作業を行った。3005 Al合金基材のサンプルをキシレンで洗浄し、弱アルカリ性のシリケートクリーナーにより70℃で2分間洗浄した。Al合金基材のAl片を、新規に調整して時間を置いた、表1に記載の化成被覆バスに浸漬した。
【0157】
Al片合金の4つのサンプルを、表1の化成被覆組成物、バス1に、室温でそれぞれ0.5、1、2および4分の滞留時間にて曝した。反応バス1から取り出した後、4つのAl片のそれぞれを、最低でもすすぎ水に30秒間の浸漬時間で、新規の脱塩水に数回浸漬した。その後、4つのAl片を多量の脱塩水ですすいだ。次いで、4つのAl片を実験室オーブン中にて60℃で2分間乾燥させた。
【0158】
化成被覆組成物、バス1、で被覆された上記の0.5、1、2および4分間滞留時間での4つのAl片の平均被覆重量は、重量測定で測定され、以下の表2に要約されている。
【0159】
重量測定の重量は、浸漬前の洗浄されたAl片を測定し(m1)、そして浸漬、すすぎおよび乾燥後のパネルを測定する(m2)ことにより決定した。Al片における実際の被覆重量は、m2−m1で引算し、その結果の値を浸漬に曝した試験表面の面積で割算することにより計算した。
【0160】
【表3】
【0161】
化成被覆で処理された4つのAI片の化成被覆の生じた堆積の検査は、UV-ブラックライトランプの下および昼光の下で行われ、4つのAl片の画像は、図1に示すように、昼光およびUVブラックライト下で撮影された。
【0162】
図1に示すように、最も暗い0.5分間の滞留時間の被覆パネルから、最も明るい4分間の滞留時間の被覆パネルへと光発光の強度が増加することが見られ、堆積した被覆重量と良好に一致していた。これに対応して、本明細書に記載の方法は、被覆厚さの予備的な定性的評価のために使用できることが明らかとなった。
実施例2
ジルコニウム含有化成被覆の調製
【0163】
化成被覆組成物のバス2は、表3に従って調整された。
【表4】
【0164】
表3の成分を攪拌しながら添加することにより、化成被覆組成物であるバス2を調製した。化成被覆材料を、室温で1時間置いてから、さらなる実験作業を行った。金属片の3005 Al合金パネルを実施例1に従って被覆した。化成被覆組成物の生じた堆積の検査は、最も暗い0.5分の浸漬時間の被覆パネルから、最も明るい4分の浸漬時間の被覆パネルへと光発光の強度が増加していることを示しており、これは堆積した被覆重量の増加と良好に一致していた。
実施例3
ブラックライト下で観察される化成被覆組成物のバス1による金属
【0165】
3005 Al合金の代わりに溶融亜鉛めっき(HDG)鋼板が使用され、バス1での1分の浸漬時間のみが、被覆パネルを調製するのに使用され、そして図2のバス1により被覆した金属において示されるように、ブラックライト下で分析を行った以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。バス1により被覆された金属よりわかるように、金属の完全かつ均一な被覆が存在しており、本発明の被覆の均一性を検出するのにブラックライトがどのように使用されることができるかを示している。
比較例4
ブラックライト下での化成被覆のない金属
【0166】
ブランク基準(ブランク)として、実施例1に記載の洗浄方法に従ってHDGパネルを洗浄した。ブランクパネルは化成被覆組成物中に浸漬されず、そして図2のブランク(Blank)と記載されたパネルに示すように、ブランクパネルをブラックライト下に曝した。明らかなように、ブランク金属は、ブラックライト下で様々な発光不規則性を示しており、比較例4に対して実施例3の優位性を示している。
実施例5
ブラックライト下での化成被覆組成物のバス2による金属
【0167】
3005 Al合金の代わりに溶融亜鉛めっき(HDG)鋼板が使用され、バス2の1分の浸漬時間のみがなされ、図3のバス2により被覆した金属に示されるように、ブラックライト下で光発光の分析がなされた以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。バス2の化成被覆(シランなし)で被覆された金属から明らかなように、金属の完全かつ均一な被覆は存在していない。
比較例6
ブラックライト下の化成被覆のない金属
【0168】
ブランク基準(ブランク)として、実施例1に記載の洗浄方法に従ってHDGパネルを洗浄した。ブランクパネルは化成被覆バスに浸漬されず、図3のブランクのパネルに示すようにブラックライト下に晒された。明らかなように、ブランク金属はブラックライト下で様々な発光不規則性を示しており、これは被覆されていないことを示しており、例6に対する実施例5の優位性を示している。
実施例7
ブラックライト下で観察される染料を含む化成被覆で被覆された金属
【0169】
化成被覆組成物のバス1を、実施例1に従って調製した。シリケートクリーナーの代わりに、60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナーに浸漬することによる洗浄を利用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。バス1の1分間の滞留のみが、光発光分析に使用された。図4のバス1で被覆された金属から明らかなように、染料の存在は、金属が本発明の化成被覆で被覆されているか否かの容易な決定を提供する。この調査の結果は、特定のUV染料トレーサーの存在は、金属フッ化物およびシラン含有化成被覆材料の化成被覆層を可視化するのに必須であることを示している。
比較例8
ブラックライト下で観察される染料のない化成被覆で被覆された金属
【0170】
UV-染料トレーサーを添加しなかったことを除き、実施例1のバス1に従って化成被覆組成物のバス3を調製した。実施例7に記載の方法に従って堆積実験が行われた。上記の実施例7と比較して、バス3中に特定の染料が存在しないことで、化成被覆組成物の存在またはその均一性を検出しなかった。
比較例9
化成被覆で被覆されていない金属
【0171】
ブランク基準(ブランク)として、シリケートクリーナーの代わりに、60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナーに浸漬することによる洗浄を利用したことを除き、実施例1の堆積実験に従った3005Al合金パネルを使用した。ブランクパネルは化成被覆組成物中に浸漬されなかった。パネルは、図4に示すように、UV-ブラックライトランプ下で検査された。
実施例10
ブラックライト下で観察される本発明の染料を含有する化成被覆で被覆された金属
【0172】
化成被覆組成物のバス1を、実施例1に従って調製した。シリケートクリーナーを使用する代わりに、60℃で2分間、弱アルカリエッチングクリーナーに浸漬することによる洗浄を利用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。さらなる分析のため被覆されたパネルを調製するために、3分の滞留時間のみが使用された。図5のバス1で被覆された金属において明らかなように、本発明の特定の染料の1つが存在することにより、金属が本発明の化成被覆で被覆されているか否かについて容易な判断をもたらす。本発明の結果より、特定のUV染料トレーサーの存在は、金属フッ化物およびシラン含有化成被覆材料のための化成被覆層を視覚化するのに必須であることが示されている。
比較例11
ブラックライト下で観察される本発明の範囲外の染料を含有する化成被覆組成物で被覆された金属
【0173】
UV染料トレーサーのピラニン(トリナトリウム-8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリスルフォネート)が実施例1で使用されたのと同一の等モル量が添加されたのを除き、化成被覆組成物のバス5は、実施例1に従って調製された。シリケートクリーナーを使用する代わりに、60℃で2分間、弱アルカリエッチングクリーナーに浸漬する洗浄を利用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。バス5での3分の浸漬時間のみが、パネルを被覆するのに使用された。バス5にて被覆されたパネルを上述の実施例10と比較すると、本発明の範囲外の染料の使用では、化成被覆の容易な検出をもたらさない。ピラニン改変バス(バス5)の場合、可視UV蛍光は観察されなかった。
比較例12
ブラックライト下で観察される化成被覆で被覆されていない金属
【0174】
ブランク基準として、実施例1の堆積実験に従って洗浄された3005Al合金パネルを利用した。ブランクパネルは、化成被覆バスに浸漬しなかった。このパネルをUVブラックライトランプの下で観察し、ブランクのパネルと記されて図5に示されている。
実施例13
ブラックライト下で観察される本発明の染料を含有する化成被覆で被覆された金属
【0175】
化成被覆組成物のバス1は、実施例1に従って調製した。60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナーに浸漬することによりパネルを洗浄し、バス1のパネルの滞留時間3分のみを使用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。本発明の染料は、ブラックライト下で化成被覆において可視であり、化成被覆の存在を詳細に示した。
比較例14
ブラックライト下で観察される本発明以外の染料を含有する化成被覆で被覆した染料
【0176】
UV染料トレーサーのローダミン WT(9-(2,4-ジカルボキシフェニル-3,6-ビス(ジエチルアミノ)-キサンチリウムクロライドジナトリウム塩)を実施例1に示す同じ等モル量で添加したのを除き、化成被覆組成物のバス7は、実施例1に従って調製された。60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナーに浸漬することによりパネルを洗浄し、バス7の滞留時間3分のみを使用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。調査の結果、本発明ではないUV染料トレーサーが化成被覆における堆積効果を可視化できないことが示された。ローダミン染料を含有する化成被覆組成物のバス7の場合、可視のUV蛍光は観察されなかった。
比較例15
ブラックライト下で観察される化成被覆で被覆されていない金属
【0177】
ブランク基準として、実施例1の堆積実験に従って洗浄された3005Al合金パネルを利用した。ブランクパネルは化成被覆バスに浸漬されなかった。図6のブランクと記載されたパネルに示されるように、UVブラックライトランプ下でパネルを検査した。
比較例16
ブラックライト下で観察される本発明以外の染料を含有する化成被覆で被覆された金属
【0178】
UV染料トレーサーTinopal(登録商標)CBS SP Slurry33(独自の4,4’-ジスチリルビフェニル誘導体)を実施例1に示したのと同じ等モル量で使用したのを除き、化成被覆組成物のバス9が実施例1に従って調製された。60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナー中に浸漬することによってパネルを洗浄し、バス9での3分間の滞留時間のみを使用した以外は、実施例1に記載の方法に従って堆積実験を行った。検査の結果、UV染料トレーサーTinopal(登録商標)CBS SP Slurry33の導入は、後述の例17のバス11と比較した場合、いくらかの化成被覆の可視化を可能にしたが、実施例3の図2のバス1、実施例7の図4のバス1、または実施例10の図5のバス1のものよりもはるかに低かったことが示された。
比較例17
ブラックライト下で観察される染料を含有しない化成被覆で被覆された金属
【0179】
UV染料トレーサーが添加されない以外は、化成組成物のバス11は実施例1に従って調製された。60℃で2分間、弱アルカリ性のエッチングクリーナー中に浸漬することによりパネルを洗浄し、バス11に3分間の滞留のみを使用した以外は、堆積実験は実施例1に記載の方法に従って行われた。
比較例18
ブラックライト下で観察される化成被覆で被覆されていない金属
【0180】
ブランク基準として、実施例1の堆積実験に従って洗浄された3005Al合金パネルを利用した。ブランクパネルは、化成被覆組成物に浸漬しなかった。ブランクパネルとして記されている図7に示されるように、パネルはUVブラックライトランプ下で観察された。
実施例19−22
染料および金属含有成分を含有する化成被覆組成物で被覆した金属
【0181】
化成被覆組成物は、表4の成分を撹拌下で添加することによって調製される。その後、化成被覆バスは室温で1時間置いた後、さらなる実験作業を行う。3005 Al合金基材のサンプルを、キシレンおよび弱アルカリ性のシリケートクリーナーで、70℃で2分間洗浄する。Al合金基材のAl片は、新規に調製されて置かれた化成被覆バスの各々に浸漬される。それぞれの化成被覆バスに浸漬した後、各Al片を反応バスから取り出し、各Al片を別々の新規な脱塩水バスに数回、別々に浸漬する(すすぎバスにて最低30秒の浸漬時間)。その後、各Al片を大量の脱塩水ですすぐ。次いで、Al片を実験室オーブン中にて60℃で2分間乾燥させる。
【0182】
【表5】
【0183】
本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であり、その要素に対して均等物が代替され得ることが理解されるであろう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの改変を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施態様に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施態様を含むものであることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7