(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記デジタル信号を前記制御部格納筐体に非接触で送信する処理と前記電源電圧の制御量を示す制御信号を前記制御部格納筐体から非接触で受信する処理とを行う非接触伝送インターフェースをさらに具備する
請求項11記載のシステム。
前記非接触伝送インターフェースは、前記制御信号が搬送波に重畳された前記交流信号を非接触で前記制御部格納筐体から受信し、前記搬送波に基づいて生成した新たな交流信号に前記デジタル信号を重畳して前記制御部格納筐体に送信する
請求項15記載のシステム。
前記電源電圧発生部は、前記アナログ信号のサンプリングが指示されたときから前記比較回数が所定回数に達するまでの供給期間に亘って前記電源電圧を供給し、前記供給期間以外の期間において前記電源電圧の供給を停止し、
前記一定回数は前記所定回数を超えない
請求項15記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(変換時間に応じた電圧に制御する例)
2.第2の実施の形態(重み付け演算した変換時間に応じた電圧に制御する例)
3.第3の実施の形態(複数のADCの電源電圧を変換時間に応じて制御する例)
4.第4の実施の形態(複数のチップからなる電子機器において変換時間に応じた電圧に制御する例)
5.第5の実施の形態(複数の筐体からなる電子回路システムにおいて変換時間に応じた電圧に制御する例)
6.第6の実施の形態(センサを内蔵した筐体の電源電圧を変換時間に応じた電圧に制御する例)
7.第7の実施の形態(シリアル信号を送受信し、変換時間に応じた電圧に制御する例)
8.第8の実施の形態(電力およびデータを非接触で伝送し、変換時間に応じた電圧に制御する例)
【0029】
<1.第1の実施の形態>
[電子機器の構成例]
図1は、第1の実施の形態における電子機器100の一構成例を示すブロック図である。この電子機器100は、電源電圧発生部110、電源電圧算出部120、記憶部140、変換時間測定部150、ADC制御部160、変換データ処理部170およびアナログデジタル変換器200を備える。これらの回路は、例えば、同一の半導体チップに搭載される。
【0030】
アナログデジタル変換器200は、入力されたアナログ信号AINをデジタルの変換データDATAにAD(Analog to Digital)変換するものである。このアナログデジタル変換器200は、ADC制御部160から開始指示信号RUNが供給されるたびに、アナログ信号AINをサンプリングして変換データDATAにAD変換する。このAD変換において、アナログデジタル変換器200は、サンプリングしたアナログ信号AINと、内部で生成した参照信号とをN回(Nは整数)比較し、比較するたびに1ビットの比較結果を生成する。そして、アナログデジタル変換器200は、それらの比較結果からなるNビットのデータを変換データDATAとして生成し、変換データ処理部170に信号線209を介して供給する。ここで、Nは、AD変換の分解能と呼ばれるものであり、AD変換されたデジタル信号のビット数を示す。
【0031】
また、アナログデジタル変換器200は、アナログ信号AINと参照信号とが比較されるたびに計数値を計数する。アナログデジタル変換器200は、その計数値を示す比較カウンタ値NSTEPと、そのNSTEPを取り込むためのタイミング信号NRDYとを生成する。アナログデジタル変換器200は、これらを含む回数情報を変換時間測定部150に信号線208を介して供給する。
【0032】
ADC制御部160は、アナログデジタル変換器200を制御するものである。このADC制御部160は、ユーザや外部の機器によりAD変換が指示されると、所定のサンプリング周期T
splが経過するたびに開始指示信号RUNを生成してアナログデジタル変換器200と変換時間測定部150とに信号線169を介して供給する。
【0033】
変換時間測定部150は、アナログ信号AINがサンプリングされたときから、アナログ信号と参照信号との比較回数が一定の設定回数Sに達するまでの時間を変換時間T
CNVとして測定するものである。この変換時間測定部150は、比較カウンタ値NSTEPをタイミング信号NRDYに同期して取り込む。そして、変換時間測定部150は、比較カウンタ値NSTEPが設定回数Sに対応する値になるまでの時間を変換時間T
CNVとして測定し、その変換時間T
CNVを信号線159を介して記憶部140に供給する。ここで、設定回数Sには、アナログデジタル変換器200の分解能(N)以下の値が設定される。例えば、分解能Nが16ビットである場合、Sに16が設定される。また、変換時間T
CNVの単位は、例えば、マイクロ秒(μs)である。
【0034】
なお、アナログデジタル変換器200は、計数値(NSTEP)およびタイミング信号(NRDY)の両方を含む回数情報を出力しているが、一方のみを含む回数情報を出力する構成としてもよい。タイミング信号NRDYのみを出力する場合には、変換時間測定部150が、そのタイミング信号NRDYの出力回数を計数して比較回数を取得し、その回数が設定回数Sになるまでの時間を測定すればよい。
【0035】
記憶部140は、一定数の変換時間T
CNVを保持するものである。なお、記憶部140は、特許請求の範囲に記載の変換時間保持部の一例である。
【0036】
電源電圧算出部120は、変換時間T
CNVから電圧制御量ΔVを算出するものである。この電源電圧算出部120は、所定の電圧制御周期が経過するたびに記憶部140から、その周期内で測定された変換時間T
CNVを全てまたは間引いて読み出し、それらの統計量T
STAT(例えば、移動平均値)を算出する。ここで、電圧制御周期は、アナログデジタル変換器200の電源電圧を制御する周期であり、例えば、サンプリング周期以上の値に設定される。
【0037】
そして、電源電圧算出部120は、その統計量(T
STAT)と所定の目標時間T
TAGとから、次の式により電圧制御量ΔVを算出する。ここで、目標時間T
TAGは、サンプリング周期T
spl以下の値であり、その単位は、例えば、マイクロ秒(μs)である。
ΔT=T
STAT―T
TAG ・・・式1
ΔV=f(ΔT) ・・・式2
上式において、f()はΔTに対する積分要素と比例要素を持つ関数である。なお目標とする制御特性に応じて微分要素やむだ時間要素や非線形要素を加えて設計することも可能である。また、f()は入力値(ΔT)に対し負の相関で値を返す関数であり、ΔTが正、即ち変換時間の統計量T
STATが目標時間T
TAGより大きい場合にはΔVが更新前より小さい値になるように設定される。一例として、ΔTに対する積分要素出力が0の場合、ΔTが+0.1マイクロ秒であれば、ΔVに−0.1ボルトが設定され、ΔTが−0.1マイクロ秒であれば、ΔVに+0.1ボルトが設定される。電圧制御量ΔVはシステムに設定されている初期電圧V
sup0に加算され、次の式に示す電源電圧設定値VDD
setを生成する。
VDD
set=V
sup0+ΔV ・・・式3
電源電圧算出部120は電源電圧設定値VDD
setを示すデータを電源電圧発生部110に信号線129を介して供給する。
【0038】
また、電源電圧算出部120は、算出した電源電圧設定値VDD
setと電源電圧の初期電圧V
sup0とを示すデータを変換データ処理部170に信号線128を介して供給する。VDD
setおよびV
sup0の単位は、例えばボルト(V)である。
【0039】
電源電圧発生部110は、アナログデジタル変換器200の電源電圧VDDを電源電圧設定値VDD
setにしたがって生成して供給する。
【0040】
電源電圧発生部110に供給する大元の電源V
psは、商用電源を整流して得た直流であってもよいし、二次電池や一次電池であってもよい。
【0041】
式1乃至式3により、変換時間T
CNVの平均値T
AVGが長いほど、高い電圧に電源電圧VDDが制御される。この制御により、変換時間T
CNVがサンプリング周期T
spl以下の値(T
TAG)になるとき、すなわちサンプリング周期内に量子化が完了するときの電圧に電源電圧VDDが調整される。したがって、電源電圧発生部110は、サンプリング周期T
spl内に量子化が完了する最小限の電圧に電源電圧VDDを低下させることができる。これにより、アナログデジタル変換器200の消費電力を必要最小限に低下させることができる。
【0042】
変換データ処理部170は、変換データDATAに対して、符号化処理や、誤差の補正処理などの所定の処理を行うものである。
【0043】
アナログデジタル変換器200の電源電圧VDDが変動すると、一般にアナログデジタル変換器200の変換ゲインも変動する。ここで、変換ゲインは、アナログ信号の値に対する、デジタル信号(DATA)の値の比率を示す。電源電圧VDDをΔVにより制御したときの変換ゲインGaは、例えば、次の式により変化する。
Ga=Ga
0×V
sup0/VDD
set ・・・式4
上式において、Ga
0は、電源電圧VDDを制御しない場合のデフォルトの変換ゲインを示し、この例では変換ゲインは電源電圧に反比例する。
【0044】
変換ゲインが式4に基づいて変化する場合、変換データ処理部170は、次の式により変換データDATAに対して補正を行い、補正後の変換データDATA
correctを算出する。変換データ処理部170は、補正した変換データDATA
correctを処理結果として出力する。
DATA
correct=DATA×VDD
set/V
sup0 ・・・式5
【0045】
ここで、補正前の変換データDATAは、アナログ信号AINの電圧V
inに変換ゲインGaを乗じた値であるため、次の式が成立する。
DATA=V
in×Ga
=V
in×Ga
0×V
sup0/VDD
set ・・・式6
【0046】
式6を式5に代入すると、次の式が得られる。
DATA
correct=V
in×Ga
0 ・・・式7
上式に示すように、補正によって、電源電圧VDDの変動に依存しない変換データDATA
correctが得られる。これにより、動的に電源電圧を制御した電子機器100において、安定な変換ゲインを得ることができる。なお、変換ゲインの電源電圧依存性は式4に表される関係に限定せず任意の特性をとることができ、それに対する補償特性も式5の代わりに適切に設計可能である。
【0047】
[アナログデジタル変換器の構成例]
図2は、第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換器200の一構成例を示すブロック図である。このアナログデジタル変換器200は、サンプルホールド回路210、比較器220、ラッチ回路230、レジスタ250、DA変換器260、XOR(排他的論理和)ゲート270、ステートマシン280を備える。また、ステートマシン280は、カウンタ281およびシーケンサ282を備える。
【0048】
サンプルホールド回路210は、開始指示信号RUNが供給されるとアナログ信号AINをサンプリングして保持するものである。このサンプルホールド回路210は、保持したアナログ信号AINをサンプルホールド信号SHOUTとして比較器220の非反転入力端子(+)に供給する。
【0049】
比較器220は、比較器制御信号CMPに従ってサンプルホールド信号SHOUTと、DA変換器260からの参照信号DAOUTとの値(例えば、電圧値)を比較するものである。以下、サンプルホールド信号SHOUTの電圧を「入力電圧」と称し、参照信号DAOUTの電圧を「参照電圧」と称する。比較器220は、比較器制御信号CMPがハイレベルである場合に比較結果を示す差動信号をラッチ回路230およびXORゲート270に供給する。この差動信号は、互いに位相の異なる正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNを含む。一方、比較器制御信号CMPがローレベルである場合に比較器220は、正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNをいずれもハイレベルにして出力する。
【0050】
ラッチ回路230は、比較器220からの差動信号の示す1ビットの情報を保持するものである。このラッチ回路230はセット端子S、リセット端子Rおよび出力端子Qを備える。セット端子Sには正相信号COMPPが入力され、リセット端子Rには逆相信号COMPNが入力される。ラッチ回路230は、セット端子Sがハイレベルでリセット端子Rがローレベルである場合に「1」を保持し、その保持値の値のラッチ信号SROUTを出力端子Qからレジスタ250へ出力する。一方、セット端子Sがローレベルで、リセット端子Rがハイレベルである場合に、ラッチ回路230は、「0」のラッチ信号SROUTを出力端子Qから出力する。また、セット端子Sおよびリセット端子Rがいずれもハイレベルである場合にラッチ回路230は、出力端子Qの状態を保持する。
【0051】
なお、本構成例においては、比較器制御信号CMPの論理レベルに関わらず、比較器220の正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNが共にローレベルになることはないとすると、XORゲート270はNANDゲートで置換できる。
【0052】
また、本構成例において、比較器制御信号CMPがローレベルである場合に比較器220が、正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNの両方をハイレベルにしているが、これらを両方ともローレベルにして、ラッチ回路230の入力の論理極性を逆とする構成をとることもできる。この場合に比較器制御信号CMPの論理レベルに関わらず、比較器220の正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNが共にハイレベルになることはないとすると、XORゲート270はORゲートで置換できる。
【0053】
レジスタ250は、ライト制御信号rWRITEおよび比較カウンタ値NSTEPに従ってラッチ出力信号SROUTを保持するものである。このレジスタ250は、N個のフリップフロップを備え、それらのフリップフロップにNビットの変換データDATAを保持する。
【0054】
開始指示信号RUNが供給された場合にレジスタ250は、保持する変換データDATAを初期データにリセットする。例えば、変換データDATAは、最上位ビット(MSB:Most Significant Bit)が「1」で、残りの全ビットが「0」の初期データにリセットされる。
【0055】
また、ライト制御信号rWRITEの立上りエッジに同期してレジスタ250は、変換データDATAのうち比較カウンタ値NSTEPに対応する桁のビットをラッチ信号SROUTにより更新する。例えば、変換データのうちMSBから(N−1−NSTEP)桁目のビットがラッチ出力信号SROUTにより更新される。例えば、比較カウンタ値NSTEPが「N−1」であれば、MSBが更新される。比較カウンタ値NSTEPが「N−2」であれば、MSBの次のビットが更新される。
【0056】
そして、レジスタ250は、変換データDATAを更新するたびに更新後の変換データDATAを変換データ処理部170とDA変換器260とに出力する。また、ライト制御信号rWRITEの立上りエッジ以外の期間においてレジスタ250は、変換データDATAの状態を保持する。なお、レジスタ250は、特許請求の範囲に記載のデジタル信号保持部の一例である。
【0057】
DA変換器260は、レジスタ250から変換データDATAが出力されるたびに、変換データDATAに基づいて参照信号DAOUTの値を更新するものである。このDA変換器260は、変換データDATAが初期データである場合に、1/2×V
FSの参照信号DAOUTを出力する。ここでV
FSは、DA変換器260の振幅レベルの最大である。
【0058】
また、変換データDATAにおいてMSBからk(kは0乃至N−1の整数)ビット目が「1」に更新されると、次の式により参照信号DAOUTの値をV
DAOUT_kに更新する。
V
DAOUT_k=V
DAOUT_k-1+(1/2)
k+1×V
FS ・・・式8
上式において、V
DAOUT_k-1は、前回の参照電圧である。
【0059】
一方、変換データDATAのkビット目が「0」に更新されると、DA変換器260は、次の式により参照電圧をV
DAOUT_kに更新する。なお、DA変換器260は、特許請求の範囲に記載の参照信号供給部の一例である。
V
DAOUT_k=V
DAOUT_k-1−(1/2)
k+1×V
FS ・・・式9
例えば、MSBが初期データ「1」から「0」に更新されると、1/2×V
FSを1/4×V
FS下降させた1/4×V
FSが次の参照電圧V
DAOUT_1として供給される。なお、DA変換器260は、特許請求の範囲に記載の参照信号供給部の一例である。
【0060】
このように、アナログ信号を参照信号と逐次比較するアナログデジタル変換器200は、一般に逐次比較型のADCと呼ばれる。
【0061】
XORゲート270は、正相信号COMPPと逆相信号COMPNとの排他的論理和の信号をステップ制御信号READYとして生成するものである。このXORゲート270は、ステップ制御信号READYをシーケンサ282に供給する。
【0062】
本例では、比較器220は差動信号を出力し、XORゲート270がステップ制御信号READYを発生する構成をとっているが、比較器220がシングルエンド信号の比較結果と同時に比較完了信号を出力し、比較完了信号がステップ制御信号READYを置き換える構成をとることも可能である。その際にはXORゲート270は不要または、単に遅延合わせや論理極性合わせの目的でバッファまたはインバータに置換することも可能である。
【0063】
シーケンサ282は、比較器220、レジスタ250、カウンタ281を制御するものである。このシーケンサ282は、ステップ制御信号READYをカウンタ281に供給して計数を制御するとともに、そのステップ制御信号READYを反転した信号をライト制御信号rWRITEとしてレジスタ250に供給する。また、シーケンサ282は、開始指示信号RUNをサンプルホールド回路210およびレジスタ250およびカウンタ281に供給する。
【0064】
また、シーケンサ282は、開始指示信号RUNが供給されたときから、N回の比較が完了するとき(例えば、NSTEPが「0」のとき)までの期間に亘って、N個のパルスを比較制御信号CMPとして生成する。この比較制御信号CMPは、パルスジェネレータなどにより開始指示信号RUNの立ち下がりエッジとステップ制御信号READYの立ち上がりエッジに基づいて生成される。シーケンサ282は、比較制御信号CMPを比較器220に供給する。
【0065】
カウンタ281は、ステップ制御信号READYに同期して、比較カウンタ値NSTEPを計数するものである。この比較カウンタ値NSTEPは、比較器220において、サンプルホールド信号SHOUTが比較された回数を示す。また、カウンタ281は、開始指示信号RUNが供給されると、比較カウンタ値NSTEPを初期値(例えば、N)にリセットする。そして、カウンタ281は、ステップ制御信号READYに同期して比較カウンタ値NSTEPをデクリメントして、更新した比較カウンタ値NSTEPをレジスタ250およびシーケンサ282に供給する。また、カウンタ281は、ステップ制御信号READYに同期してタイミング信号NRDYを生成し、比較カウンタ値NSTEPとともに変換時間測定部150に供給する。なお、カウンタ281は、特許請求の範囲に記載の回数情報出力部の一例である。
【0066】
なお、カウンタ281は、比較カウンタ値NSTEPをそのまま出力しているが、符号化して符号化データを出力してもよい。この場合には、変換時間測定部150が、その符号化データを復号して処理すればよい。また、ステップ制御信号READYに同期して比較カウンタ値NSTEPを減少させるダウンカウンタをカウンタ281として用いているが、ダウンカウンタの代わりに、比較カウンタ値NSTEPを増加させるアップカウンタを用いてもよい。
【0067】
また、シーケンサ282は、
図3に例示するように、N回の比較が完了したときに変換終了信号EOCをさらに外部出力してもよい。
【0068】
上述したように、開始指示信号RUNが供給された後は、アナログデジタル変換器200内で生成したタイミング信号(CMP)に同期して比較器220が動作して変換データDATAが生成される。このように、内部で生成したタイミング信号に同期して動作するアナログデジタル変換器200は、自己タイミング型のADCと呼ばれる。
【0069】
[比較器の構成例]
図4は、第1の実施の形態における比較器220の一構成例を示す回路図である。この比較器220は、トランジスタ221乃至229を備える。トランジスタ221乃至224はP型のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタ、トランジスタ225乃至229はN型のMOSトランジスタを表す。
【0070】
トランジスタ221乃至224のソースには電源電圧VDDが印加される。トランジスタ221、224および229のゲートはシーケンサ282に接続される。また、トランジスタ227のゲートはサンプルホールド回路210に接続され、トランジスタ228のゲートはDA変換器260に接続される。
【0071】
トランジスタ222および225のゲートとトランジスタ223および224のドレインとが、トランジスタ226のドレインとラッチ回路230のセット端子Sに接続される。また、トランジスタ221および222のドレインとトランジスタ223および226のゲートとが、トランジスタ225のドレインとラッチ回路230のリセット端子Rとに接続される。トランジスタ225のソースはトランジスタ227のドレインに接続され、トランジスタ226のソースはトランジスタ228のドレインに接続される。また、トランジスタ227および228のソースは、トランジスタ229のドレインに接続され、トランジスタ229のソースは接地端子に接続される。
【0072】
このような構成により、比較器制御信号CMPが「0」である場合に、いずれもハイレベルの正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNが出力される。一方、比較器制御信号CMPが「1」であれば、サンプルホールド信号SHOUTと参照信号DAOUTとの比較結果を示す差動信号(COMPPおよびCOMPN)が出力される。
【0073】
[比較器の動作例]
図5は、第1の実施の形態における比較器220の動作の一例を示す図である。この比較器220は、比較器制御信号CMPが「0」である場合に、サンプルホールド信号の値に関わらずに、ハイレベルの正相信号COMPPおよび逆相信号COMPNを出力する。
【0074】
また、比較器制御信号CMPが「1」である場合に比較器220は、サンプルホールド信号SHOUTの電圧(入力電圧)と参照信号DAOUTの電圧(参照電圧)とを比較する。入力電圧が参照電圧より高ければ、比較器220は、ハイレベルの正相信号COMPPとローレベルの逆相信号COMPNとを出力する。一方、入力電圧が参照電圧以下であれば、比較器220は、ローレベルの正相信号COMPPとハイレベルの逆相信号COMPNとを出力する。
【0075】
図6は、第1の実施の形態におけるレジスタ250の動作の一例を示す図である。まずレジスタ250を構成するN個のフリップフロップは、開始指示信号RUNがハイレベルで所定の値に初期化される。
【0076】
次に開始指示信号RUNがローレベルのとき、ライト制御信号rWRITEがローレベルからハイレベルに遷移する立ち上がりエッジにおいて、レジスタ250は、比較カウンタ値NSTEPを参照し、変換データDATAのうちNSTEPに対応する桁のビットをラッチ出力信号SROUTにより更新する。それ以外の期間にはレジスタ250を構成するN個のフリップフロップのそれぞれの状態を保持する。
【0077】
[変換時間測定部の動作例]
図7は、第1の実施の形態における変換時間測定部150の動作の一例を示す図である。この変換時間測定部150は、開始指示信号RUNが立ち下がったときに変換時間の計時を開始する。変換時間の計測において、変換時間測定部150は、例えば、一定周波数のクロック信号CLKに同期して、計測時間を示すタイマカウンタ値TIMを計数する。
【0078】
開始指示信号RUNがローレベルで、比較カウンタ値NSTEPが設定回数Sを示す値(例えば、0)以外の値である場合に変換時間測定部150は、タイマカウンタ値TIMの計数(すなわち、計時)を継続する。また、比較カウンタ値NSTEPが設定回数Sを示す値(例えば、0)である場合に変換時間測定部150は、計時を終了し、計測時間(タイマカウンタ値TIM)を変換時間として出力する。
【0079】
また、開始指示信号RUNが立ち上りの際に比較カウンタ値NSTEPが設定回数Sを示す値(例えば、0)でなければ、変換時間測定部150は、計時を終了する。そして、変換時間測定部150は、直前の比較カウンタ値NSTEPから次の式を用いて変換時間T
CNVを算出し、出力する。
T
CNV={S/(S−NSTEP)}×T
spl ・・・式10
上式においてT
splは、サンプリング周期を示し、単位は、例えば、マイクロ秒(μs)である。
【0080】
例えば、設定回数Sが分解能と同一値「16」で、開始指示信号RUNが立ち上がったときのNSTEPが「1」の値であった場合には、(16/15)×T
splが変換時間T
CNVとして算出される。
【0081】
[アナログデジタル変換器の動作例]
図8は、第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換器200の動作の一例を示すタイミングチャートである。タイミングt
0において開始指示信号RUNが入力されると、サンプルホールド回路210は、そのアナログ信号AINをサンプリングして保持し、サンプルホールド信号SHOUTを生成する。同図において、一点鎖線はアナログ信号AINの軌跡を示し、実線はサンプルホールド信号SHOUTの軌跡を示す。
【0082】
また、タイミングt
0の直後に、比較カウンタ値NSTEPは初期値Nにリセットされ、変換データDATAは初期データにリセットされる。
【0083】
タイミングt
0の後のタイミングt
1において開始指示信号RUNが立ち下がると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを比較して、差動信号(COMPPおよびCOMPN)を生成する。XORゲート270は、差動信号からステップ制御信号READYを生成し、ラッチ回路230は、差動信号の示す比較結果を保持してラッチ出力信号SROUTを出力する。そして、シーケンサ282は、ステップ制御信号READYを反転してライト制御信号rWRITEを生成する。
【0084】
カウンタ281は、ステップ制御信号READYに従って比較カウンタ値NSTEPを「N−1」に更新する。レジスタ250は、ライト制御信号rWRITEに従って変換データDATAのMSBをラッチ出力信号SROUTによりB
N−1に更新する。
【0085】
レジスタ250によりMSBが更新されたタイミングt
2においてDA変換器260は、参照信号DAOUTを、そのMSBに基づいて調整する。
【0086】
タイミングt
3において参照信号DAOUTの調整が完了すると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを比較して、差動信号を再度生成する。XORゲート270は、差動信号からステップ制御信号READYを生成し、ラッチ回路230は、差動信号の示す比較結果を保持してラッチ出力信号SROUTを出力する。カウンタ281は、ステップ制御信号READYに従って比較カウンタ値NSTEPを「N−2」に更新し、レジスタ250は、ライト制御信号rWRITEに従って変換データDATA内のMSBの次のビットをラッチ出力信号SROUTによりB
N−2に更新する。
【0087】
レジスタ250においてMSBの次のビットがB
N−2に更新されたタイミングt
4においてDA変換器260は、参照信号DAOUTを、そのB
N−2に基づいて調整する。
【0088】
以下、同様に比較器220による比較と、DA変換器260による参照信号DAOUTの調整とが交互に行われる。
【0089】
図9は、第1の実施の形態における時間の経過に伴う参照電圧の調整過程の一例を示すグラフである。同図において、縦軸はサンプルホールド信号SHOUTおよび参照信号DAOUTの電圧を示し、横軸は時間を示す。
【0090】
タイミングt
0において開始指示信号RUNが入力されると、変換データDATAは初期データに初期化され、参照電圧(DAOUT)は1/2V
FSに初期化される。ここで、入力電圧(SHOUT)が参照電圧(1/2V
FS)より低いと、タイミングt
2において変換データDATAのMSBは「0」に更新される。また、DA変換器260は、更新されたMSBに基づいて参照信号DAOUTを1/4V
FS減少させる。
【0091】
入力電圧が、更新後の参照電圧(1/4V
FS)より高いと、タイミングt
4においてMSBから1ビット目が「1」に更新される。また、DA変換器260は、更新されたビット(「1」)に基づいて参照電圧を1/8V
FS増加させて3/8V
FSにする。
【0092】
そして、入力電圧が、更新後の参照電圧(3/8V
FS)より低いと、タイミングt
4においてMSBから2ビット目が「0」に更新される。また、DA変換器260は、更新されたビット(「0」)に基づいて参照電圧を1/16V
FS減少させる。
【0093】
以下、同様に入力電圧と参照電圧との比較結果に基づいて参照電圧が増減され、それらの比較結果からなる変換データDATAが生成される。
【0094】
図10は、第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換器200の動作の詳細を示すタイミングチャートである。タイミングt
0において開始指示信号RUNが入力されると、比較カウンタ値NSTEPは初期値Nにリセットされ、変換データDATAは初期データにリセットされる。同図においてDATA
N−1は、変換データDATAのMSBを示す。
【0095】
タイミングt
0の後のタイミングt
1において開始指示信号RUNが立ち下がると、比較器220は、差動信号(COMPPおよびCOMPN)を生成する。XORゲート270は、t
1からTC
N−1が経過したときに差動信号からステップ制御信号READYを生成し、ラッチ回路230は、差動信号の示す比較結果を保持してラッチ出力信号SROUTを出力する。そして、シーケンサ282は、ステップ制御信号READYを反転してライト制御信号rWRITEを生成する。ここで、TC
N−1は、比較器220の比較時間を表す。この比較時間は、比較器220の差動入力の振幅が小さいときには指数関数的に増大する成分を含む。
【0096】
カウンタ281は、ステップ制御信号READYに従って比較カウンタ値NSTEPを「N−1」に更新し、レジスタ250は、ライト制御信号rWRITEに従って変換データDATAのMSBをラッチ出力信号SROUTによりB
N−1に更新する。
【0097】
タイミングt
1からTC
N−1およびTD1が経過したタイミングt
2においてDA変換器260は、参照信号DAOUTを、そのMSBに基づいて調整する。そして、タイミングt
2からTD2が経過したt
3において参照信号DAOUTの調整が完了する。ここで、TD1およびTD2は、シーケンサ282が、遅延素子からなるディレイラインなどを用いて発生させた固定値である。
【0098】
図11は、第1の実施の形態における電源電圧が高いときの電子機器100の動作の一例を示すタイミングチャートである。タイミングt
0において開始指示信号RUNが入力されると、サンプルホールド回路210は、そのアナログ信号AINをサンプルホールドする。そして、タイミングt
1において開始指示信号RUNが立ち下がると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを比較する。その比較結果によりMSBが更新されたタイミングt
2においてDA変換器260は、参照信号DAOUTを、そのMSBに基づいて調整する。
【0099】
タイミングt
3において参照信号DAOUTの調整が完了すると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを再度比較する。その比較結果によりMSBの次のビットが更新されたタイミングt
4においてDA変換器260は、参照信号DAOUTを、そのビットに基づいて調整する。
【0100】
以下、同様に比較器220による比較と、DA変換器260による参照信号DAOUTの調整とが交互に行われる。そして、タイミングt
0からサンプリング周期t
splが経過する前のタイミングt
EOCにおいて比較カウンタ値NSTEPが「0」に更新され、AD変換が終了する。
【0101】
変換時間測定部150は、アナログ信号AINがサンプリングされたタイミングt
1において計時を開始する。そして、変換時間測定部150は、タイミング信号NRDYに同期して比較カウンタ値NSTEPを取り込む。例えば、タイミング信号NRDYがハイレベルに立ち上がったタイミングで比較カウンタ値NSTEPが取り込まれる。そして比較カウンタ値NSTEP「0」を取り込んだタイミングt
EOCにおいて計時を終了する。このように、変換時間測定部150は、タイミング信号NRDYに同期して制御されたタイミングで比較カウンタ値NSTEPを取り込むことにより、ステートマシン280でNSTEPにグリッチが発生するタイミングを避けて比較カウンタ値NSTEPを取り込むことができる。
【0102】
そして、変換時間測定部150は、計測した時間を変換時間T
CNVとして出力する。この変換時間T
CNVは、N回の比較のそれぞれに要した時間(TC
N−1など)と、N個のTD1およびTD2とからなる。前者は、
図10で前述したように比較器220の比較時間であり、後者はシーケンサ282で発生させた固定の遅延時間である。
【0103】
ここで、電源電圧VDDが低いほど、
図4に例示した比較器220内のトランジスタ(221等)のゲート−ソース間電圧V
GSが低くなり、そのV
GSの低下によりドレイン電流Idのばらつきが大きくなる。特に、V
GSが、閾値電圧V
thより低くなるサブスレッショルド領域において、Idの変動が非サブスレッショルド領域よりも大きくなる。このドレイン電流Idの変動により、トランジスタの動作時間が変動し、そのトランジスタを備える比較器220の比較時間が変動する。つまり、電源電圧VDDが低いほど、比較器220の比較時間のばらつきが大きくなり、その比較時間を含む変換時間T
CNVのばらつきが大きくなる。ばらついたT
CNVがサンプリング周期より長くなると、AD変換がサンプリング周期内に完了せずに変換データDATAの誤差が急激に増大する。
【0104】
そこで、電源電圧発生部110は、測定された変換時間T
CNVが長いほど高い電圧に電源電圧VDDを制御する。これにより、変換時間T
CNVのばらつきが減少して、サンプリング周期内にAD変換が完了し、変換データDATAにおいて誤差が許容値以下になる。
【0105】
仮に、特許文献1のように、変換時間T
CNVを測定しない場合、変換時間T
CNVのばらつきによる誤差が許容値を超えないようにアナログデジタル変換器200の電源電圧VDDを十分に高い値にする必要がある。このため、アナログデジタル変換器200の消費電力を、必要最小限に低減することが困難である。
【0106】
これに対して、電子機器100は、変換時間T
CNVを測定し、その変換時間T
CNVに応じた電圧に電源電圧VDDを制御するため、誤差が許容値を超えない最小限の値にアナログデジタル変換器200の消費電力を低減することができる。
【0107】
図12は、第1の実施の形態における電源電圧が高いときの変換データDATAの一例を示す図である。タイミングt
0において開始指示信号RUNが入力されると、変換データDATAは、左端のMSBのみが「1」の初期データにリセットされる。タイミングt
1において開始指示信号RUNが立ち下がると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを比較する。その比較結果によりMSBが例えば「0」に更新される。そして、DA変換器260は、更新後のMSBに基づいて参照信号DAOUTを調整する。
【0108】
タイミングt
3において参照信号DAOUTの調整が完了すると、比較器220は、入力電圧(SHOUT)と参照電圧(DAOUT)とを再度比較する。その比較結果によりMSBの次のビットが例えば「1」に更新される。そして、DA変換器260は、更新後のビットに基づいて参照信号DAOUTを調整する。
【0109】
電源電圧が比較的高い場合には、タイミングt
0からサンプリング周期t
splが経過する前のタイミングt
EOCにおいて全ビットが比較結果により更新され、AD変換が終了する。この場合、変換時間測定部150は、タイミングt
1からt
EOCまでの時間を計測して変換時間T
CNVとして出力し、電源電圧発生部110は、変換時間T
CNVに応じた電圧に電源電圧VDDを制御する。
【0110】
なお、変換時間測定部150は、アナログ信号の比較回数が分解能Nであるとき、すなわち比較カウンタ値NSTEPが「0」のとき(t
EOC)に計時を終了しているが、この構成に限定されない。
図13に例示するように、変換時間測定部150は、アナログ信号の比較回数が分解能N未満の所定値(例えば、15)であるとき、すなわち比較カウンタ値NSTEPが「1」のとき(t
30)に計時を終了してもよい。
【0111】
図14は、第1の実施の形態における電源電圧が低いときの電子機器100の動作の一例を示すタイミングチャートである。前述したように電源電圧VDDが低いほど、比較器220およびDA変換器260の動作時間のばらつきが大きくなる。このばらつきにより、タイミングt
0からサンプリング周期T
splが経過したタイミングt
sにおいて、N回の比較が完了していないものとする。
【0112】
この場合に変換時間測定部150は、タイミングt
sで計時を終了し、その直前の比較カウンタ値NSTEPから、式10を用いて変換時間T
CNVを算出する。このようにアナログデジタル変換器200が比較カウンタ値NSTEPを出力することにより、変換時間測定部150は、サンプリング周期内に変換が完了しない場合であってもNSTEPから変換時間T
CNVを推定することができる。
【0113】
図15は、第1の実施の形態における電源電圧が低いときの変換データDATAの一例を示す図である。前述したように電源電圧が比較的低い場合には、変換時間T
CNVのばらつきが大きくなり、タイミングt
0からサンプリング周期t
spl内にAD変換が完了しないことがある。例えば、タイミングt
0からサンプリング周期t
splが経過した時点(t
s)においても変換データDATAの最下位ビット(LSB:Least Significant Bit)が更新されず、初期値のままになる。この場合に変換時間測定部150は、タイミングt
sで計時を終了し、その直前の比較カウンタ値NSTEPから、式10を用いて変換時間T
CNVを算出する。
【0114】
図16は、第1の実施の形態における電子機器100の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、電子機器100に対してAD変換が指示されたときに開始する。電子機器100は、アナログ信号AINを変換データDATAに変換する量子化処理を行う(ステップS910)。また、電子機器100は、変換時間T
CNVを測定する(ステップS901)。
【0115】
そして、電子機器100は、サンプリング周期が経過したか否かを判断する(ステップS902)。サンプリング周期が経過していない場合(ステップS902:No)、電子機器100は、ステップS902を繰り返す。
【0116】
一方、サンプリング周期が経過した場合(ステップS902:Yes)、電子機器100は、電圧制御周期が経過したか否かを判断する(ステップS903)。電圧制御周期が経過した場合(ステップS903:Yes)、電子機器100は、変換時間T
CNVの統計量から、電圧制御量ΔVを算出し(ステップS904)、その電圧制御量ΔVにより電源電圧VDDを制御する(ステップS905)。
【0117】
電圧制御周期が経過していない場合(ステップS903:No)、または、ステップS905の後に電子機器100は、ステップS910以降を繰り返す。
【0118】
図17は、第1の実施の形態における量子化処理の一例を示すフローチャートである。アナログデジタル変換器200は、アナログ信号AINをサンプリングして保持し(ステップS911)、入力電圧と参照電圧とを比較する(ステップS912)。アナログデジタル変換器200は、比較カウンタ値NSTEPを減分し(ステップS913)、レジスタ250を比較結果により更新する(ステップS914)。
【0119】
そして、アナログデジタル変換器200は、参照電圧を比較結果に基づいて増減し(ステップS915)、N回の比較が完了したか否かを判断する(ステップS916)。サンプリング周期が経過していない条件の下、(
図16:ステップS902:No)、N回の比較が完了していない場合(ステップS916:No)、アナログデジタル変換器200は、ステップS912以降を繰り返す。
【0120】
N回の比較が完了した場合(ステップS916:Yes)、または、サンプリング周期が経過した場合(
図16:ステップS902:Yes)、アナログデジタル変換器200は、量子化処理を終了する。
【0121】
このように、本技術の第1の実施の形態によれば、電子機器100は、アナログ信号が比較された回数が一定回数に達するまでの時間を測定し、その時間に応じた電圧に電源電圧VDDを制御するため、電源電圧VDDを最小限の値に低下させることができる。これにより、アナログデジタル変換器200の消費電力を低下させることができる。
【0122】
[第1の変形例]
上述の第1の実施の形態では、電源電圧発生部110は、アナログデジタル変換器200内の比較器220やDA変換器260などの全ての回路の電源電圧を制御していた。この内、変換時間の変動に寄与が小さい部分には別途発生する定電圧電源を利用することも可能である。この第1の変形例の電子機器100は、アナログデジタル変換器200内の一部の回路の電源電圧のみを制御する点において第1の実施の形態と異なる。
【0123】
図18は、第1の実施の形態の第1の変形例におけるアナログデジタル変換器200の一構成例を示すブロック図である。第1の変形例のアナログデジタル変換器200は、電圧発生部240をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0124】
電圧発生部240は、電源電圧VDD'を発生してグランド電圧とともにDA変換器260に供給するものである。また、第1の変形例の電源電圧発生部110は、アナログデジタル変換器200内のDA変換器260以外の回路への電源電圧VDDのみを制御する。なお、電圧発生部240をアナログデジタル変換器200の内部に設けているが、外部に設けてもよい。また、電圧発生部240はDA変換器260のみに電源供給しているが、それ以外にも変換時間の変動に寄与が小さい部分に電源供給してもよい。
【0125】
このように、第1の変形例によれば、DA変換器の電源電圧VDD'がVDD制御に寄らず一定になり、式4に示したVDD制御に起因するアナログデジタル変換器200の変換ゲインの変動が発生しないため、式5に示す変換ゲインの補償を不要にできる。
【0126】
[第2の変形例]
上述の第1の実施の形態では、電源電圧発生部110は、アナログデジタル変換器200に対し、連続して電源電圧VDDを供給していた。しかし、消費電力を低減する観点から、電源電圧発生部110は、間欠的に電源電圧VDDを供給してもよい。この第2の変形例の電源電圧発生部は、間欠的に電源電圧VDDを供給する点において第1の実施の形態と異なる。
【0127】
図19は、第1の実施の形態の第2の変形例における電子機器100の一構成例を示すブロック図である。この第2の変形例の電子機器100は、電源電圧発生部110の代わりに電源電圧発生部111を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0128】
また、第2の変形例のアナログデジタル変換器200は、比較カウンタ値NSTEPおよびタイミング信号NRDYを電源電圧発生部111にさらに供給する。第2の変形例のADC制御部160は、開始指示信号RUNを電源電圧発生部111にさらに供給する。
【0129】
電源電圧発生部111は、開始指示信号RUNが立ち上がったときにアナログデジタル変換器200に電源を投入する。そして、電源電圧発生部111は、サンプリング周期内において、比較回数が最大値Nになったとき、すなわち比較カウンタ値NSTEPが「0」に遷移したことを検出したらアナログデジタル変換器200の電源を遮断する。ただし、サンプリング周期が経過したタイミングで比較カウンタ値NSTEPが「0」になっていなければ、電源供給が継続される。
【0130】
図20は、第1の実施の形態の第2の変形例における電子機器100の動作の一例を示すタイミングチャートである。タイミングt
0において開始指示信号RUNが立ち上がると、電源電圧発生部111は、アナログデジタル変換器200への電源電圧VDDの供給を開始する。そして、タイミングt
EOCにおいて比較カウンタ値NSTEPが「0」に遷移したことを検出したら電源電圧発生部111は、電源電圧VDDの供給を停止する。
【0131】
このように、本技術の第2の変形例によれば、電源電圧発生部111は、タイミングt
0から、NSTEPが「0」に遷移したことを検出するまでの期間において電源を供給し、その期間外は電源供給を停止するため、消費電力を低減することができる。
【0132】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、電源電圧算出部120は、変換時間T
CNVの平均値に基づいて電源電圧VDDを制御していた。しかし、変換データDATAが許容範囲以上の誤差を含んでいる場合には、そのときに測定される変換時間T
CNVは異常に大きな値をとる可能性が高く、その値を用いると電源電圧VDDが適切な値に制御されないおそれがある。第2の実施の形態の電子機器100は、変換時間T
CNVの異常値の影響を軽減した点において第1の実施の形態と異なる。
【0133】
図21は、第2の実施の形態における電子機器100の一構成例を示すブロック図である。この第2の実施の形態の電子機器100は、電源電圧算出部120の代わりに電源電圧算出部130を備え、記憶部140の代わりに記憶部141を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0134】
また、第2の実施の形態の変換データ処理部170は、変換データDATAを記憶部141にさらに供給する。記憶部141は、変換時間T
CNVが測定されるたびに、変換時間T
CNVと、そのときの変換データDATAとを対応付けて保持する。
【0135】
電源電圧算出部130は、変換データDATAに基づいて重み係数を決定し、その重み係数により変換時間T
CNVを重み付け演算して統計量(例えば、重み付け平均値)を求める。そして、電源電圧算出部130は、その統計量に応じた電圧制御量ΔVを算出する。
【0136】
図22は、第2の実施の形態における電源電圧算出部130の一構成例を示すブロック図である。この電源電圧算出部130は、電圧設定部131、重み付け平均演算部132および重み係数決定部133を備える。
【0137】
重み係数決定部133は、変換データDATAに基づいて重み係数を決定するものである。電圧制御周期が経過するたびに重み係数決定部133は、その周期内に生成された変換データDATAを記憶部141から読み出す。そして、重み係数決定部133は、変換データDATAごとに、重み係数を決定する。
【0138】
ここで、一般に比較器220は、反転入力端子(+)の電圧(SHOUT)と反転入力端子(−)の電圧(DAOUT)とが略一致した場合に出力が不定となる。この現象はメタステーブルと呼ばれる。比較器220でメタステーブルが発生すると、一般的なデジタル回路技術で構成する後段のラッチ回路230以降が誤動作して、変換データDATAが回路構成に依存する特定の値に張り付く危険性がある。そこで、重み係数決定部133は、メタステーブル起因の誤動作で生じる可能性のある変換データDATAについては、小さな重み係数を決定する。
【0139】
重み平均演算部132は、変換時間T
CNVの重み付け平均を算出するものである。この重み平均演算部132は、電圧制御周期が経過するたびに、その周期内に測定された変換時間T
CNVを記憶部141から読み出し、重み係数決定部133が決定した重み係数を使用してT
CNVの重み付け平均を算出する。重み平均演算部132は、算出した重み付け平均T
AVGを電圧設定部131に供給する。
【0140】
電圧設定部131は、重み付け平均T
AVGから電圧制御量ΔVを算出して電源電圧設定値VDD
setを設定するものである。この電圧設定部131は、式1および式2を使用して電圧制御量ΔVを算出する。電圧設定部131は、そのΔVから求めた電源電圧設定値VDD
setを示すデータを電源電圧発生部110に供給し、電源電圧設定値VDDsetおよび初期電圧V
sup0を示すデータを電源電圧発生部110および変換データ処理部170に供給する。
【0141】
図23は、第2の実施の形態における記憶部141に保持されるデータの一例を示す図である。記憶部141には、変換時間T
CNVに対応付けて、変換データDATAが保持される。例えば、変換時間T
CNV1が測定されたときに、変換データDATA
1が生成された場合に、変換時間T
CNV1に対応付けて変換データDATA
1が保持される。また、変換時間T
CNV2が測定されたときに、変換データDATA
2が生成された場合に、変換時間T
CNV2に対応付けて変換データDATA
2が保持される。
【0142】
図24は、第2の実施の形態におけるアナログ信号と変換データとの間の関係の一例を示すグラフである。同図における縦軸は、変換データDATAの値を示し、横軸は、入力電圧V
inを示す。
【0143】
この例では、入力電圧V
inが、上位ビットの比較をするための参照電圧と異なる値(例えば、V
in1)である場合、入力電圧V
inは、一定の変換ゲインにより変換データDATA(例えば、DATA
1)に変換される。しかし、入力電圧V
inが、上位ビットの比較をするための参照電圧と略一致する場合にはメタステーブルが生じ易い。例えば、最初の比較における参照電圧V
th1や、2回目の比較における参照電圧V
th2またはV
th3などと同一の入力電圧が入力されると、メタステーブルが生じてしまう。この場合には、アナログデジタル変換器200が誤動作して、回路構成に依存する特定の値(E1、E2等)を出力してしまう。この、誤動作が疑われる変換データE1やE2を伴う変換時間T
CNVに対しては比較的小さな重み係数を選択して、これらの重み係数により重み付け平均を行う。
【0144】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、電子機器100は、メタステーブルによる誤動作の結果で生じた可能性をもつ変換データに対し、重み係数を小さくして変換時間の重み付け演算を行うため、メタステーブルに起因する誤差の影響を軽減することができる。
【0145】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、電源電圧発生部110は、1つのアナログデジタル変換器200の電源電圧を制御していたが、複数のアナログデジタル変換器200の電源電圧を制御することもできる。この第3の実施の形態の電源電圧発生部110は、複数のアナログデジタル変換器200の電源電圧を制御する点において第1の実施の形態と異なる。
【0146】
図25は、第3の実施の形態における電子機器100の一構成例を示すブロック図である。この第3の実施の形態の電子機器100は、1つのアナログデジタル変換器200の代わりに、M個(Mは2以上の整数)のアナログデジタル変換器200からなるアナログデジタル変換部205を備える点において第1の実施の形態と異なる。
【0147】
第3の実施の形態のADC制御部160は、開始指示信号をM個のアナログデジタル変換器200に供給してAD変換を開始させる。ADC制御部160は、M個のアナログデジタル変換器200に同時にAD変換を開始させてもよいし、それぞれ異なるタイミングでAD変換を開始させてもよい。
【0148】
M個のアナログデジタル変換器200のそれぞれは、変換データを変換データ処理部170に供給し、回数情報(比較カウンタ値およびタイミング信号)を変換時間測定部150に供給する。
【0149】
また、第3の実施の形態の変換時間測定部150は、M個の比較カウンタ値からM個の変換時間を算出する。変換時間測定部150は、これらのM個の変換時間の統計量(平均値や最大値)STを記憶部140に保持させる。
【0150】
第3の実施の形態の電源電圧発生部110は、電源電圧周期内に算出された統計量STのそれぞれの統計量(T
AVG)を算出し、第1の実施の形態と同様の方法により電圧制御量を算出する。第3の実施の形態の電源電圧発生部110は、M個のアナログデジタル変換器200の電源電圧を一括して制御する。
【0151】
なお、電源電圧発生部110は、M個のアナログデジタル変換器200の電源電圧を一括して制御しているが、アナログデジタル変換器200ごとに、個別に電源電圧を制御してもよい。この場合に変換時間測定部150は、M個の変換時間の統計量を算出せずに、それぞれの時間をアナログデジタル変換器200ごとに記憶部140に保持させ、電源電圧算出部120は、アナログデジタル変換器200ごとに、個別に電圧制御量を算出する。
【0152】
ただし、M個のアナログデジタル変換器200が同一のチップに搭載されている場合には、プロセスおよび温度の条件が概ね同一になるため、最適な動作電圧も略同一になる。このため、同一のチップ上にM個のアナログデジタル変換器200が設けられている場合には電源電圧発生部110が、M個のアナログデジタル変換器200の電源電圧を一括して制御することが望ましい。
【0153】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、電源電圧発生部110は、複数のアナログデジタル変換器200の電源電圧を変換時間に応じた値に制御するため、複数のアナログデジタル変換器200の消費電力を低下させることができる。
【0154】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、電子機器100において、ADC制御部160やアナログデジタル変換器などの各回路を同一の半導体チップに設けていたが、これらを複数の半導体チップに分散して設けてもよい。この第4の実施の形態の電子機器100は、複数の半導体チップに分散して回路が設けられている点において第1の実施の形態と異なる。
【0155】
図26は、第4の実施の形態における電子機器100の一構成例を示すブロック図である。この電子機器100は、AD変換チップ101および制御チップ102を備える。このAD変換チップ101には、電源電圧発生部110およびアナログデジタル変換器200が設けられる。また、制御チップ102には、電源電圧算出部120、記憶部140、変換時間測定部150、ADC制御部160および変換データ処理部170が設けられる。また、AD変換チップ101および制御チップ102は、同一の筐体に格納される。
【0156】
このように、本技術の第4の実施の形態によれば、複数の半導体チップに回路を分散して設けたため、複数の半導体チップを備えた電子機器100において消費電力を低減することができる。
【0157】
<5.第5の実施の形態>
上述の第4の実施の形態では、AD変換チップ101および制御チップ102を同一の筐体に格納していたが、これらを異なる筐体に格納してもよい。この第5の実施の形態の電子回路システムは、AD変換チップ101および制御チップ102のそれぞれを異なる筐体に格納した点において第4の実施の形態と異なる。
【0158】
図27は、第5の実施の形態における電子回路システムの一構成例を示すブロック図である。この電子回路システムは、ADC格納筐体103および制御部格納筐体104を備える。このADC格納筐体103にはAD変換チップ101が格納され、制御部格納筐体104には制御チップ102が格納される。
【0159】
ADC格納筐体103および制御部格納筐体104は、信号線127、168、206および207により接続される。電源電圧算出部120は、信号線127を介して電源電圧発生部110に電源電圧設定値VDD
setを示すデータを送信し、アナログデジタル変換器200は、信号線206を介して回数情報(NSTEP等)を変換時間測定部150に送信する。また、ADC制御部160は、信号線168を介してアナログデジタル変換器200に開始指示信号RUNを送信し、アナログデジタル変換器200は、信号線207を介して変換データ処理部170に変換データDATAを送信する。
【0160】
電源電圧発生部110への電圧(V
PS)を供給する電源回路は、
図27において省略されている。この電源回路は、ADC格納筐体103内に設けてもよいし、制御部格納筐体104内に設けてもよい。
【0161】
このように、本技術の第5の実施の形態によれば、AD変換チップ101および制御チップ102のそれぞれを異なる筐体に格納したため、複数の筐体を備える電子回路システムにおいて消費電力を低減することができる。
【0162】
<6.第6の実施の形態>
上述の第5の実施の形態では、ADC格納筐体103の外部で生成されたアナログ信号をアナログデジタル変換器200がAD変換していたが、ADC格納筐体103の内部で生成したアナログ信号をAD変換することもできる。この第6の実施の形態の電源電圧発生部110は、アナログデジタル変換器200が、ADC格納筐体103の内部で生成したアナログ信号をAD変換する点において第5の実施の形態と異なる。
【0163】
図28は、第6の実施の形態における電子回路システムの一構成例を示すブロック図である。第6の実施の形態のADC格納筐体103は、センサアレイ305およびAD変換チップ101を備える。このセンサアレイ305は、M個のセンサ300を備える。また、AD変換チップ101は、M個のアナログデジタル変換器200を備える。これらのM個のアナログデジタル変換器200は、センサ300と1対1で接続される。なお、電子回路システムは、センサ300およびアナログデジタル変換器200の組をM組備えているが、1組のみ備える構成であってもよい。
【0164】
センサ300は、温度、光量、または、音量などの所定の物理量を測定するものである。このセンサ300は、測定値を示すアナログ信号を、対応するアナログデジタル変換器200へ送信する。
【0165】
また、ADC格納筐体103と制御部格納筐体104とは、信号線117、118、168、206および207により接続される。
【0166】
図29は、第6の実施の形態における制御部格納筐体104の一構成例を示すブロック図である。この制御部格納筐体104には、制御チップ102が設けられる。第6の実施の形態の制御チップ102は、電源電圧発生部110をさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。この電源電圧発生部110は、信号線117を介してセンサアレイ305に電源電圧を供給し、信号線118を介してAD変換チップ101に電源電圧を供給する。
【0167】
なお、第6の実施の形態では電源電圧発生部110を制御部格納筐体104に設けているが、第5の実施の形態と同様に、ADC格納筐体103に設けてもよい。
【0168】
このように、本技術の第6の実施の形態によれば、センサ300を内蔵したADC格納筐体103の電源電圧を電圧制御部110が制御するため、センサ300を内蔵した筐体において消費電力を低減することができる。
【0169】
<7.第7の実施の形態>
上述の第6の実施の形態では、ADC格納筐体103と制御部格納筐体104との間で比較カウンタ値および変換データなどの信号をパラレル形式で伝送していた。しかし、これらの信号のデータ量が多くなるほど信号線の本数が増加するおそれがある。この第7の実施の形態の電子回路システムは、筐体間の信号線の本数を削減した点において第6の実施の形態と異なる。
【0170】
図30は、第7の実施の形態における電子回路システムの一構成例を示すブロック図である。この第7の実施の形態の電子回路システムは、ADC格納筐体103に伝送インターフェース310をさらに格納した点において第1の実施の形態と異なる。
【0171】
伝送インターフェース310は、パラレル信号をシリアル信号に変換する機能と、シリアル信号をパラレル信号に変換する機能を持つ。この伝送インターフェース310は、変換データDATAや比較カウンタ値NSTEPなどのパラレル信号をAD変換チップ101から受け取り、そのパラレル信号をシリアル信号に変換する。そして、伝送インターフェース310は、そのシリアル信号を信号線319を介して制御部格納筐体104に送信する。また、伝送インターフェース310は、開始指示信号RUNを制御部格納筐体104から信号線319を介して受信し、AD変換チップ101に供給する。
【0172】
また、ADC格納筐体103と制御部格納筐体104とは、信号線116、117、118および319により接続される。
【0173】
図31は、第7の実施の形態における制御部格納筐体104の一構成例を示すブロック図である。第7の実施の形態の制御部格納筐体104は、伝送インターフェース180および制御チップ102を備える。
【0174】
伝送インターフェース180は、パラレル信号をシリアル信号に変換する機能と、シリアル信号をパラレル信号に変換する機能を持つ。この伝送インターフェース180は、ADC格納筐体103から信号線319を介してシリアル信号を受信し、そのシリアル信号を、変換データDATAや比較カウンタ値NSTEPなどのパラレル信号に変換する。伝送インターフェース180は、変換データDATA等を制御チップ102に供給する。また、伝送インターフェース180は、開始指示信号RUNを制御チップ102から受け取り、その信号を信号線319を介してADC格納筐体103に送信する。
【0175】
また、第7の実施の形態の電源電圧発生部110は、信号線116、117および118を介して、伝送インターフェース310、センサアレイ305およびAD変換チップ101に電源電圧を供給する。
【0176】
なお、第7の実施の形態では電源電圧発生部110を制御部格納筐体104に設けているが、第5の実施の形態と同様に、ADC格納筐体103に設けてもよい。この場合において伝送インターフェース180は、電圧制御量を示すパラレルの制御信号をシリアル信号に変換してADC格納筐体103に送信してもよい。
【0177】
このように、本技術の第7の実施の形態によれば、伝送インターフェース310がパラレル信号をシリアル信号に変換して制御部格納筐体104へ送信するため、筐体間でパラレル信号を送受信する場合よりも信号線の本数を削減することができる。
【0178】
<8.第8の実施の形態>
上述の第7の実施の形態では、ADC格納筐体103および制御部格納筐体104は、電力およびデータを有線で送受信していたが、これらを非接触で伝送してもよい。第8の実施の形態の電子回路システムは、筐体間で電力およびデータを非接触で送受信する点において第7の実施の形態と異なる。
【0179】
図32は、第8の実施の形態における電子回路システムの一構成例を示すブロック図である。第8の実施の形態のADC格納筐体103は、伝送インターフェース310の代わりに非接触伝送インターフェース320を備える点において第7の実施の形態と異なる。また、第8の実施の形態のAD変換チップ101は、電源電圧発生部110およびアナログデジタル変換部205を備える。このアナログデジタル変換部205には、M個のアナログデジタル変換器200が設けられる。
【0180】
非接触伝送インターフェース320は、電力およびデータを非接触で伝送するものである。この非接触伝送インターフェース320は、制御信号および開始指示信号RUNが搬送波に重畳された交流信号を制御部格納筐体104から非接触で受信する。そして、非接触伝送インターフェース320は、復調により交流信号から制御信号および開始指示信号RUNを取り出し、受電した電力に応じた電圧V
sup0とともにAD変換チップ101に供給する。
【0181】
また、非接触伝送インターフェース320は、受信した交流信号から搬送波を抽出し、その搬送波に基づいて交流信号を生成する。そして、非接触伝送インターフェース320は、AD変換チップ101からの比較カウンタ値NSTEP、タイミング信号NRDYおよび変換データDATAを、生成した交流信号に重畳して非接触で制御部格納筐体104に送信する。
【0182】
非接触伝送インターフェース320において非接触で電力およびデータを伝送する方式としては、電磁誘導方式、電磁界共鳴方式、電界結合方式などの各種の方式を用いることができる。また、各種の伝送方式において、Qi(登録商標)規格、PMA(Power Matters Alliance)規格、A4WP規格、NFC(Near Field Communication)規格などの各種の規格を用いることができる。
【0183】
図33は、第8の実施の形態における制御部格納筐体104の一構成例を示すブロック図である。第8の実施の形態の制御部格納筐体104は、電源電圧発生部110を備えず、伝送インターフェース180の代わりに非接触伝送インターフェース190を備える点において第7の実施の形態と異なる。
【0184】
非接触伝送インターフェース190は、電力およびデータを非接触で伝送するものである。この非接触伝送インターフェース190は、データ(VDD
set)を重畳した交流信号をADC格納筐体103に非接触で送信し、また、交流信号をADC格納筐体103から非接触で受信して、比較カウンタ値NSTEP等を取り出す。
【0185】
このように、本技術の第8の実施の形態によれば、非接触伝送インターフェース320が電力およびデータを非接触で制御部格納筐体104から受信するため、筐体間で信号線を配線する必要がなくなり、信号線を介さずに電力およびデータを伝送することができる。
【0186】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0187】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0188】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【0189】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)アナログ信号と参照信号とを比較して当該比較回数を示す回数情報を出力するアナログデジタル変換器と、
前記回数情報に基づいて電源電圧を生成して前記アナログデジタル変換器に供給する電源電圧発生部と
を具備するシステム。
(2)前記アナログ信号がサンプリングされたときから前記回数情報の示す前記比較回数が一定回数に達するまでの変換時間を測定する変換時間測定部をさらに具備し、
前記電源電圧発生部は、前記測定された変換時間に応じた前記電源電圧を生成し、
前記アナログデジタル変換器は、
前記アナログ信号と前記参照信号とを比較して前記比較結果を生成する比較器と、
前記比較結果が生成されるたびに当該比較結果を保持して当該保持値を示す信号をデジタル信号として出力するデジタル信号保持部と、
前記デジタル信号に基づいて前記参照信号の値を変更して前記比較器に供給する参照信号供給部と、
前記回数情報を出力する回数情報出力部と
を備える
前記(1)記載のシステム。
(3)前記回数情報出力部は、前記アナログ信号がサンプリングされたときから所定のサンプリング周期が経過するまでの期間に亘って前記回数情報を出力し、
前記変換時間測定部は、前記比較回数が前記一定回数に達する前に前記サンプリング周期が経過した場合には前記サンプリング周期内の前記比較回数と前記所定のサンプリング周期とから前記変換時間を求める
前記(2)記載のシステム。
(4)前記電源電圧発生部は、前記変換時間が長いほど高い前記電源電圧を生成する
前記(2)または(3)記載のシステム。
(5)前記変換時間と所定の目標時間との差分を求めて当該差分から前記電源電圧の設定値を算出する電源電圧算出部をさらに具備し、
前記電源電圧発生部は、前記設定値に従って前記電源電圧を生成する
前記(2)から(4)のいずれかに記載のシステム。
(6)所定の電圧制御周期内において測定された前記変換時間のそれぞれを保持する変換時間保持部をさらに具備し、
前記電源電圧算出部は、前記保持された変換時間のそれぞれの統計量を前記所定の電圧制御周期が経過するたびに算出して当該統計量と前記所定の目標時間との差分を求める
前記(5)記載のシステム。
(7)前記変換時間保持部は、前記変換時間のそれぞれに対応付けて前記デジタル信号をさらに保持し、
前記電源電圧算出部は、特定の値の前記デジタル信号に対して前記特定の値以外のデジタル信号より小さい重み係数を決定して当該重み係数により前記変換時間の重み付け演算を行う
前記(6)記載のシステム。
(8)前記電源電圧発生部は、前記参照信号供給部以外に電源電圧を供給する
前記(2)から(7)のいずれかに記載のシステム。
(9)前記電源電圧の値に基づいて前記変換データを補正する変換データ処理部をさらに具備する前記(8)記載のシステム。
(10)前記電源電圧発生部は、複数の前記アナログデジタル変換器のそれぞれの電源電圧を生成する
前記(2)から(9)のいずれかに記載のシステム。
(11)前記アナログデジタル変換器は、アナログデジタル変換チップに設けられ、
前記変換時間測定部は、制御チップに設けられる
前記(2)から(10)のいずれかに記載のシステム。
(12)前記アナログデジタル変換チップは、アナログデジタル変換器格納筐体に設けられ、
前記制御チップは、制御部格納筐体に設けられる
前記(11)記載のシステム。
(13)前記アナログ信号を生成するセンサと、
前記生成されたアナログ信号をサンプリングして保持するサンプルホールド回路と
をさらに具備し、
前記サンプルホールド回路は、前記アナログデジタル変換チップに設けられ、
前記アナログデジタル変換チップは、前記センサに接続され、
前記センサは、前記アナログデジタル変換器格納筐体に設けられる
前記(12)記載のシステム。
(14)前記デジタル信号をシリアル信号に変換して前記制御部格納筐体に送信する伝送インターフェースをさらに具備する
前記(12)または(13)に記載のシステム。
(15)前記デジタル信号を前記制御部格納筐体に非接触で送信する処理と前記電源電圧の制御量を示す制御信号を前記制御部格納筐体から非接触で受信する処理とを行う非接触伝送インターフェースをさらに具備する
前記(12)または(13)に記載のシステム。
(16)前記非接触伝送インターフェースは、前記制御部格納筐体から前記アナログデジタル変換器格納筐体の消費電力に応じた電力の交流信号を非接触で受電して前記比較器に供給する
前記(15)記載のシステム。
(17)前記非接触伝送インターフェースは、前記制御信号が搬送波に重畳された前記交流信号を非接触で前記制御部格納筐体から受信し、前記搬送波に基づいて生成した新たな交流信号に前記デジタル信号を重畳して前記制御部格納筐体に送信する
前記(16)記載のシステム。
(18)前記電源電圧発生部は、前記アナログ信号のサンプリングが指示されたときから前記比較回数が所定回数に達するまでの供給期間に亘って前記電源電圧を供給し、前記供給期間以外の期間において前記電源電圧の供給を停止し、
前記一定回数は前記所定回数を超えない
前記(2)から(17)のいずれかに記載のシステム。
(19)アナログ信号と参照信号とを比較して比較結果を生成する比較器と、
前記比較結果が生成されるたびに当該比較結果を保持して前記比較結果からなるデジタル信号を出力するデジタル信号保持部と、
前記デジタル信号に基づいて前記参照信号の値を変更して前記比較器に供給する参照信号供給部と、
前記アナログ信号が比較された回数を比較回数として示す回数情報を出力する回数情報出力部と
を具備するアナログデジタル変換器。
(20)アナログ信号と参照信号とを比較して当該比較回数を示す回数情報を出力するアナログデジタル変換手順と、
前記回数情報に基づいて電源電圧を生成して前記アナログデジタル変換器に供給する電源電圧発生手順と
を具備するシステムの制御方法。