(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリコシルヘスペレチンが、ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン、及び7−O−β−グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1記載の皮膚外用剤。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明するが、それらは本発明を実施する上での好ましい態様のあくまで例示であり、本発明は、それら実施態様に何ら限定されるものではない。
【0023】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤が有効成分として含むヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンとは、ヒトが日常的に継続的に安全かつ容易に、かつ、不快感なく外用でき、本発明の所期の作用効果が奏せられるものである限り、その由来、製法、純度等は、特段の制限なく用いることができる。なお、本発明はヘスペレチンやグリコシルヘスペレチン自体の製造方法に係る発明ではないことから、それらの製造方法の詳細は本願明細書においては割愛するけれども、その概要を述べれば下記のとおりである。
【0024】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤における有効成分であるヘスペレチンとしては、市販品はもとより、公知の製造方法によりミカン属の果実から調製したものを適宜用いることができる。また、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤における有効成分であるグリコシルヘスペレチンは、既述したとおり、ヘスペレチンに糖類が結合した化合物全般を意味する。具体的には、生体内酵素の作用によりヘスペレチンを生成する、ヘスペリジン、7−O−β−グルコシルヘスペレチン、及びα−グリコシルヘスペリジンを意味し、それらは、ヒトが安全かつ容易に、しかも、皮膚に対し刺激や不快感なく外用でき、工業的に安価かつ安定して提供できるものであって、本発明の所期の作用効果が奏せられるものである限り、市販品はもとより、従来公知の製造方法により得られるいずれのグリコシルヘスペレチンであっても用いることができる。
【0025】
次に、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤における他の有効成分であるグリコシルヘスペレチンとしては、ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン、7−O−β−グルコシルヘスペレチンなどの化合物を例示できる。前記ヘスペリジンは、ヘスペリジン含有植物である柑橘類の果実、果皮、種子、未熟果などを原料とし、水やアルコールなどの溶媒を用いて抽出することにより、工業的にその所望量を得ることができる。また、前記α−グリコシルヘスペリジンは、例えば、特開平11−346792号公報などに開示されるとおり、ヘスペリジンとα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵素を作用させて、α−グリコシルヘスペリジンを生成せしめ、これを採取することにより、工業的にその所望量を安価に得ることができる。更に、前記7−O−β−グルコシルヘスペレチンは、例えば、特許文献5などに開示されるとおり、糖転移酵素を作用させて得られるα−グリコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する酵素反応液にα−L−ラムノシダーゼを作用させて、7−O−β−グルコシルヘスペレチンを生成させ、これを採取することにより、工業的にその所望量を安価に製造することができる。
【0026】
本発明で用いるヘスペレチン及びグリコシルヘスペレチンとしては、既述したとおり、市販品はもとより、従来公知の製造方法により得られるいずれのものも用いることができるけれども、不純物のより少ない高純度品がより望ましい。以下、その理由について、グリコシルヘスペレチンを例にとって説明する。
【0027】
すなわち、本発明者等が新たに知見したこととして、従来公知のグリコシルヘスペレチンは、結晶化工程を経て得られる試薬級のグリコシルヘスペレチンは別にして、グリコシルヘスペレチンとともに、その製造原料に由来する共雑物、未反応原料、更には、その製造過程で副次的に生成する、生理学的許容性のイオン性化合物を量の多寡は別にして含む、謂わば、グリコシルヘスペレチン含有組成物であって、当該組成物は、雑味、着色、臭気などの原因物質となる成分を含んでいる。なお、本願明細書においては、以下、特に断りがない限り、グリコシルヘスペレチンを主体とし、その製造原料に由来する共雑物、未反応原料、或いは、その製造過程で副次的に生成する生理学的許容性のイオン性化合物とを含むグリコシルヘスペレチン含有成物を単にグリコシルヘスペレチンと言い、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンは、結晶化工程を経て得られる高純度グリコシルヘスペレチンも当然ながら含む。
【0028】
また、本発明者等は、従来公知のグリコシルヘスペレチンの欠点であった、雑味、着色などを解消する目的で、従来のグリコシルヘスペリジンに含まれる共雑物含量を低減するために、従来法の一部を改良することにより、雑味と着色が低減されたグリコシルヘスペレチン(以下、特に断りがない限り、「改良グリコシルヘスペレチン」と言う。)とその製造方法を確立し、特願2014−41066号明細書及び国際特許出願番号第PCT/JP2015/056230号パンフレットに開示した。改良グリコシルヘスペレチンは、ヒトが日常的に継続的に安全かつ容易に、しかも、不快感なく外用できるとともに、工業的に安価かつ安定に提供し得る優れた利点を有している。したがって、改良グリコシルヘスペレチンは、本発明を実施する上で最も好適なグリコシルヘスペレチンである。
【0029】
以下、改良グリコシルヘスペレチンの製造方法とその物性について説明する。
【0030】
改良グリコシルヘスペレチンは、(ア)ヘスペリジン及び澱粉部分分解物を含有する水溶液を調製する工程、(イ)得られた水溶液に糖転移酵素を作用させα−グルコシルヘスペリジンを含むグリコシルヘスペレチン含有組成物を生成させる工程、及び(ウ)生成したグリコシルヘスペレチン含有組成物を採取する工程を含む製造方法であって、前記(ア)乃至(ウ)の1又は2以上の工程を還元剤の存在下で実施するか、前記(ア)乃至(ウ)の1又は2以上の工程の前の始発原料及び/又は後の結果物に還元剤を添加することにより、製造することができる。以下、前記還元剤を用いる製造方法で得られる改良グリコシルヘスペレチン(以下、前記還元剤処理工程を経て調製されたグリコシルヘスペレチンを「還元剤処理品」と言う場合がある。)の製造原料、酵素反応(糖転移反応など)、還元剤処理、及び精製方法について逐次説明する。
【0031】
なお、詳細は後述するも、前記還元剤処理品とは、フルフラールを実質的に含まないグリコシルヘスペレチンを意味し、本願明細書においてフルフラールを実質的に含まないとは、従来品と比べ、フルフラール含量が有意に低いレベルであるグリコシルヘスペレチンを意味する。具体的には、後述する実験4の「(1)フルフラールの含量」に示すガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)を用いての分析手法(以下、『GC/MS分析法』と略記する。)により測定したとき、通常、200ppb(なお、1ppbは、10億分の1のこと)未満、好適には、100ppb未満、より好適には、50ppb未満、更に好適には、30ppb未満、より更に好適には、20ppb未満、特に好適には、15ppb未満、更に特に最適には、10ppb未満であることを意味する。なお、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンの内、フルフラール含量がGC/MS分析法の検出限界を下回るまでに低減されたものは、従来品と比べ雑味が有意に低減されていると共に、着色も顕著に低減された極めて高品質のグリコシルヘスペレチンである。しかし、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンとしては、最高純度のグリコシルヘスペレチンであることは必ずしも必要ではないことから、フルフラール含量が検出限界以下のレベルにまで低減されているものである必要性や、フルフラール不含有のものである必要性は必ずしもない。したがって、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンは、フルフラールを実質的に含んでいなければ良く、本発明の所期の目的を達成し得る限り、従来品と比べ有意に少ない量、若しくは検出限界以下のフルフラールを含有していてもよい。
【0032】
(製造原料)
還元剤処理品の製造原料であるヘスペリジンとしては、従来のグリコシルヘスペレチンの製造において用いられるヘスペリジンのいずれも用いることができ、高純度のヘスペリジンはもとより、比較的低純度のヘスペリジン含有植物由来の抽出物、搾汁液、又はその部分精製物などの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。
【0033】
前記ヘスペリジン含有植物とは、具体的には、例えば、ミカン類、オレンジ類、香酸柑橘類、雑柑橘類、タンゴール類、タンゼロ類、ブンタン類、キンカン類などのミカン科ミカン属に属する柑橘類を例示でき、ヘスペリジン含有部位としては、それら柑橘類の果実、果皮、種子、未熟果などを例示できる。
【0034】
製造原料の澱粉部分分解物としては、後述する糖転移酵素を作用させたとき、ヘスペリジンに糖転移し、グリコシルヘスペレチンとしてのα−グリコシルヘスペリジンを生成し得るものであればよく、例えば、アミロース、デキストリン、シクロデキストリン、マルトオリゴ糖などの澱粉部分分解物、更には、液化澱粉、糊化澱粉などから選ばれる1種又は2種以上の澱粉部分分解物が適宜選ばれる。
【0035】
また、後述する酵素反応において用いる澱粉部分分解物の使用量は、原料のヘスペリジンの質量に対し、通常、約0.1乃至約150倍、好適には、約1乃至約100倍、より好適には、約2乃至約50倍の範囲から選ばれる量が用いられる。酵素反応においては、澱粉部分分解物由来の糖をヘスペリジンへ糖転移させ、α−グリコシルヘスペリジンを効率的に生成させ、しかも、酵素反応系に未反応ヘスペリジンができるだけ残存しないように、ヘスペリジンに対し過剰量の澱粉部分分解物を用いるのが望ましい。その理由は、後述する精製工程において、澱粉部分分解物及びこれに由来する糖類等は、α−グリコシルヘスペリジンと比較的容易に分離できるのに対し、ヘスペリジンはα−グリコシルヘスペリジンと挙動をともにし、α−グリコシルヘスペリジンと分離し難いことから、水溶性が極めて低い、未反応のヘスペリジンの残存量が多いと、全体として、得られるグリコシルヘスペレチンの水溶性が低くなる不都合を生じるからである。
【0036】
(酵素反応)
本願明細書で言う酵素反応とは、前記製造原料としてのヘスペリジンと澱粉部分分解物に糖転移酵素を作用させてα−グリコシルヘスペリジンを生成させる酵素反応を意味する。
【0037】
前記酵素反応で用いる糖転移酵素としては、α−グルコシダーゼ(EC 3.2.1.20)、シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.19、以下、「CGTase」と言う。)、α−アミラーゼ(EC 3.2.1.1)などを例示できる。前記α−グルコシダーゼとしては、ブタの肝臓、ソバの種子などの動植物組織由来の酵素、又は、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)属などに属するカビ培養物由来のもの、又はサッカロミセス(Saccharomyces)属などに属する酵母などの微生物を栄養培地で培養して得られる培養物由来のものが、CGTaseとしては、例えば、バチルス(Bacillus)属、ジオバチルス(Geobacillus)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、サーモコッカス(Thermococcus)属、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、ブレビバチルス(Brevibacillus)属、及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属由来のものを例示できる。前記α−アミラーゼとしては、ジオバチルス属などに属する細菌、又は、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などのアスペルギルス(Aspergillus)属などに属するカビ培養物由来の1種又は2種以上のものを適宜組み合わせて用いることができる。これら糖転移酵素は、本発明の目的を達成し得る限り、天然又は遺伝子組換え型のいずれのものも採用でき、市販品がある場合には、それらも適宜用いることができる。また、前記糖転移酵素のいずれも、必ずしも精製して用いる必要はなく、通常、粗酵素であっても本発明の目的を達成し得る限り、いずれも用いることができる。
【0038】
また、前記天然又は遺伝子組換え型の糖転移酵素を用いるに際し、それら糖転移酵素に好適な澱粉部分分解物を採用することにより、α−グリコシルヘスペリジンの生成率を高めることができる。
【0039】
前記α−グルコシダーゼを用いる場合には、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどのマルトオリゴ糖、又はデキストロース・イクイバレント(DE)約10乃至約70の澱粉部分分解物が、CGTaseを用いる場合には、α−、β−、又はγ−シクロデキストリン又はDE1以下の澱粉糊化物からDE約60の澱粉部分分解物が、更には、α−アミラーゼを用いる場合には、DE1以下の澱粉糊化物からDE約30のデキストリンなどの澱粉部分分解物が好適に用いられる。
【0040】
酵素反応時のヘスペリジン含有溶液としては、ヘスペリジンをできるだけ高濃度に含有するものが望ましく、例えば、ヘスペリジンを懸濁状で含有する懸濁液か、水などの溶媒に室温以上の高温で溶解、若しくは、アルカリ剤を用いてpH7.0を越えるアルカリ側pHで溶解させた、ヘスペリジンを高濃度に含有する溶液が好適に用いられる。前記アルカリ剤としては、約0.1乃至約1.0規定の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、アンモニア水などの1種又は2種以上の強アルカリ性水溶液を適宜用いることができる。
【0041】
ヘスペリジンをアルカリ剤を用いて溶液状で用いる場合のヘスペリジン濃度は、通常、約0.005w/v%以上、好ましくは、約0.05乃至約10w/v%、より好ましくは、約0.5乃至約10w/v%、より更に好ましくは、約1乃至約10w/v%である。
【0042】
一方、ヘスペリジンをアルカリ剤を用いないで懸濁状で用いる場合には、ヘスペリジンを水などの溶媒に懸濁して懸濁状ヘスペリジンとし、その際のヘスペリジン濃度は、通常、約0.1乃至約2w/v%、より好適には、約0.2乃至約2w/v%、より好適には、約0.3乃至約2w/v%とする。
【0043】
ヘスペリジンと澱粉部分分解物に糖転移酵素を作用させるときの温度と時間は、酵素反応で用いるヘスペリジンと澱粉部分分解物の濃度、及び糖転移酵素の種類、至適温度、至適pH、或いは作用量などに依存して変わるものの、通常、約50乃至約100℃、好適には、約60乃至約90℃、より好適には、約70乃至約90℃、及び、約5乃至約100時間、好適には、約10乃至約80時間、より好適には、約20乃至約70時間の範囲とする。
【0044】
また、糖転移酵素をヘスペリジンを高濃度に含有するアルカリ性溶液に作用させるときのpHと温度は、糖転移酵素の種類、至適pH、至適温度、或いは作用量、及びヘスペリジンの濃度などに依存して変わるものの、糖転移酵素が作用し得るできるだけ高pH、高温、具体的には、pH約7.5乃至約10、好適には、pH約8乃至約10、及び約40乃至約80℃、より好適には、約50乃至約80℃の範囲とする。なお、アルカリ性溶液中のヘスペリジンは、分解を起し易いので、これを防ぐため、できるだけ遮光下、嫌気下にヘスペリジンを保つのが望ましい。
【0045】
更に、糖転移酵素を懸濁状ヘスペリジンに作用させるときのpHは、糖転移酵素の種類、至適温度、至適pH、或いは作用量、及び懸濁状ヘスペリジンの濃度などに依存して変わるものの、通常、pH約4乃至約7、好適には、pH約4.5乃至約6.5の範囲とする。
【0046】
また、更に必要ならば、酵素反応前のヘスペリジンの溶解度を高め、ヘスペリジンへの糖転移反応を容易にするために、ヘスペリジン高含有溶液、殊に、ヘスペリジン高含有水溶液中に水と相溶性の高い有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトール、アセトンなどの低級アルコール、低級ケトンなどの1種又は2種以上を適量共存させることも随意である。
【0047】
酵素量と反応時間とは密接な関係にあり、通常、経済性の観点から、約5乃至約150時間、好適には、約10乃至約100時間、より好適には、約20乃至約80時間で酵素反応を終了する酵素量を、用いる糖転移酵素の種類に応じて適宜設定すればよい。また、固定化された糖転移酵素を用いてバッチ式で繰り返し反応させるか、連続式で反応させることも随意である。
【0048】
前記糖転移酵素反応後に得られるα−グリコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する酵素反応液は、必要により、そのままで、又は、多孔性合成吸着樹脂により精製した後、グルコアミラーゼ(EC 3.2.1.3)、又はβ−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)などのアミラーゼによって部分加水分解し、α−グリコシルヘスペリジンのα−D−グルコシル基の数を低減させることができる。例えば、グルコアミラーゼを作用させる場合には、α−マルトシルヘスペリジン以上の高分子を加水分解し、グルコースを生成させるとともにα−グルコシルヘスペリジンを生成させ、蓄積させることができる。また、β−アミラーゼを作用させる場合には、α−マルトトリオシルヘスペリジン以上の高分子を加水分解し、マルトースを生成させるとともに、α−グルコシルヘスペリジンとα−マルトシルヘスペリジンとを含む混合物を生成させ、蓄積させることができる。
【0049】
一方、糖転移酵素反応後に得られるα−グリコシルヘスペリジンとヘスペリジンとを含有する酵素反応液に、グルコアミラーゼとα−L−ラムノシダーゼとを同時に、又はそのいずれか一方を先にして順次作用させることにより、α−グリコシルヘスペリジンのルチノース構造におけるグルコースに等モル以上α−結合したグルコースを離脱させ、α−グリコシルヘスペリジンをα−グルコシルヘスペリジンに変換させてα−グルコシルヘスペリジン含量を高めるとともに、水溶性の低いヘスペリジンを水溶性の高い7−O−β−モノグルコシルヘスペレチンに変えることにより、全体として、水溶性の高いグリコシルヘスペレチンとすることができる。
【0050】
糖転移酵素と同様、グルコアミラーゼとα−L−ラムノシダーゼについても、それら酵素量と酵素反応時間とは密接な関係にあり、通常、経済性の観点から、約5乃至約150時間、好適には、約10乃至約100時間、より好適には、約20乃至約80時間で酵素反応を終了させる酵素量を、酵素の種類に応じて適宜設定すればよい。また、固定化されたα−L−ラムノシダーゼを用いてバッチ式で繰り返し反応させるか、連続式で途切れなく反応させることも適宜実施できる。
【0051】
(還元剤処理)
本願明細書で言う還元剤処理とは、所定の還元剤を用いて、グリコシルヘスペレチンの雑味と着色(以下、「雑味・着色」と略記する場合がある。)、更には臭気を有意ないしは顕著に低減させるための処理を意味し、後述する還元剤を、(ア)ヘスペリジン及び澱粉部分分解物を含有する水溶液を調製する工程、(イ)得られた水溶液に糖転移酵素を作用させα−グルコシルヘスペリジンを含むグリコシルヘスペレチン含有組成物を生成させる工程、及び(ウ)生成したグリコシルヘスペレチン含有組成物を採取する工程の1又は2以上の工程で用いるか、前記(ア)乃至(ウ)の1又は2以上の工程の前の始発原料及び/又は前記工程後の結果物に、その所定量を添加することを意味する。
【0052】
改良グリコシルヘスペレチンの製造方法で用いられる還元剤としては、本発明の所期の目的を達成し得る限り、特段の制限はなく、斯界において汎用の無機系及び有機系の還元剤のいずれも用いることができる。しかしながら、還元剤処理品を含め、本発明で用いるグリコシルヘスペレチン又は高純度グリコシルヘスペレチンは、主として、ヒトに適用することを前提とするものであることから、その製造においては、安全性が高く、安定性、取り扱い性に優れた還元剤を用いるのが望ましい。
【0053】
本製造方法で好適に用いられる還元剤の具体的としては、例えば、ヒドロキシルアミン類、二酸化塩素、水素、水素化合物(硫化水素、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムカリウムなど)、硫黄化合物(二酸化硫黄、二酸化チオ尿素、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、硫酸鉄、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムなど)、亜硝酸塩、塩化スズ、塩化鉄、ヨウ化カリウム、過酸化水素、希釈過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド、亜塩素酸ナトリウム等の亜塩素酸塩などの無機系還元剤;及びフェノール類、アミン類、キノン類、ポリアミン類、蟻酸とその塩類、蓚酸とその塩類、クエン酸とその塩類、二酸化チオ尿素、ヒドラジン系化合物、還元性糖質、過酸化ベンゾイル、過硫酸ベンゾイル、水素化ジイソブチルアルミニウム、カテキン、ケルセチン、トコフェロール、没食子酸とそのエステル、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジチオトレイトール、還元型グルタチオン、及びポリフェノール類などの有機系還元剤を例示できる。前記無機系及び有機系の還元剤は、それらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0054】
前記無機系及び有機系の還元剤の内、前者の還元剤は、還元剤処理を経ずに調製されたグリコシルヘスペレチンが有していた雑味をより有意に低減でき、着色や異臭も、より顕著に低減された高品質のグリコシルヘスペレチンを提供することができる。なお、その理由は定かでないものの、以下のように推察される。すなわち、本製造方法の目的で用いる場合、有機系還元剤は無機系還元剤と比べ、雑味・着色の低減作用が低いか、或いは、有機系還元剤は有機物であることから、自体、雑味や着色の原因となる恐れがある上、有機系還元剤の分解物又は修飾物等が、還元剤処理品の精製工程で完全に除去されずに残存する場合、それらが最終製品のグリコシルヘスペレチンの品質に負の影響を与えるからではないかと考えられる。
【0055】
無機系還元剤の内、SO
2−イオン、HSO
3−イオン、SO
32−イオン、S
2O
42−イオン、又はS
2O
72−イオンと金属イオンとからなる、所謂、亜硫酸塩(亜硫酸塩類とも言う。)は、安全性、安定性、及び取り扱い性の点でも優れていることから、本製造方法においてより好適に用いることのできる還元剤である。殊に、無機系還元剤である亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、メタ亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及びメタ重亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩は、本発明において最も好適に用いることができる。
【0056】
また、前記還元剤は、改良グリコシルヘスペレチンの製造工程における1工程、又はその工程の前の始発原料及び/又は後の結果物に対して適用されるが、2以上の工程、又はそれら工程の前の始発原料及び/又は後の結果物に、その適量を適宜小分けして用いる場合には、より少ない量の還元剤で効率よく本製造方法の所期の目的を達成することができる。
【0057】
前記還元剤の添加量としては、合計で、前記(ア)乃至(ウ)のそれぞれの工程で、前記(イ)酵素反応後(糖転移酵素以外に他の酵素を用いる場合には、それら全ての酵素反応終了後を意味する)に得られる酵素反応液質量に対し、通常、0.001質量%以上(以下、特に断りがない限り、「質量%」を「%」と略記する。)、好適には、0.01乃至3%、より好適には、0.01乃至1%、更に好適には、0.01乃至0.5%に相当する範囲から選ばれる量が用いられる。なお、還元剤を前記(ウ)の工程より前に添加する場合には、通常、残存する還元剤は、精製工程で実質的に除去されることから、最終製品として得られる改良グリコシルヘスペレチン中には実質的に検出されない。前記全工程で添加される還元剤の量は、酵素反応後に得られる酵素反応液質量に対して、通常、合計で、0.001%以上、好適には、0.01%以上、より好適には、0.01乃至1%の範囲となるように、1回ないしは複数回にわけて添加される。添加する際の温度は、通常、前記(ア)乃至(ウ)の工程で採用されている温度であるが、別途、その温度を上回る温度とすることも可能である。具体的には、室温以上の温度、好適には、50℃以上、より好適には、70℃以上、より好適には、80℃以上、更に好適には、90乃至120℃を例示できる。
【0058】
(精製方法)
斯くして得られる酵素反応溶液は、これをそのまま、本発明で好適に用いられる改良グリコシルヘスペレチンとすることができる。しかし、通常、酵素反応溶液は、斯界において公知の分別方法、濾過方法、多孔性合成樹脂等を用いる精製方法、濃縮方法、噴霧方法、乾燥方法などの1種又は2種以上の手段を適宜組み合わせて、液状、固状、粉末状などの還元剤処理品とする。
【0059】
前記多孔性合成樹脂としては、多孔性で広い吸着表面積を有し、かつ非イオン性のスチレン−ジビニルベンゼン重合体、フェノール−ホルマリン樹脂、アクリレート樹脂、メタアクリレート樹脂などの合成樹脂を意味し、例えば、市販されているRohm & Haas社製の商品名:アンバーライトXAD−1、アンバーライトXAD−2、アンバーライトXAD−4、アンバーライトXAD−7、アンバーライトXAD−8、アンバーライトXAD−11、及びアンバーライトXAD−12などの樹脂;三菱化学株式会社製の商品名:ダイヤイオンHP−10、ダイヤイオンHP−20、ダイヤイオンHP−30、ダイヤイオンHP−40、ダイヤイオンHP−50、ダイヤイオンHP−2MG、セパビーズSP70、セパビーズSP207、セパビーズSP700、セパビーズSP800などの樹脂;及びIMACTI社製の商品名:イマクティSyn−42、イマクティSyn−44、及びイマクティSyn−46などの樹脂を例示できる。
【0060】
多孔性合成吸着剤を用いる精製方法による場合、酵素反応液を多孔性合成吸着剤を充填したカラムに通液すると、グリコシルヘスペレチンは多孔性合成吸着剤に吸着するのに対し、残存する澱粉部分分解物や水溶性糖類などは吸着されることなく、そのままカラムから流出する。この際、グリコシルヘスペレチンである、ヘスペリジン、7−O−β−グルコシルヘスペレチン、及びα−グリコシルヘスペリジンは、通常、挙動をともにし、多孔性合成吸着剤によってそれらを個別に分離することはできない。しかし、操作は煩雑となり、収率は低下するものの、多孔性合成吸着剤を充填したカラムに選択的に吸着したグリコシルヘスペレチンを希アルカリ、水などの溶媒で洗浄した後、比較的少量の有機溶媒又は有機溶媒と水との混合液、例えば、メタノール水溶液、エタノール水溶液などを通液すれば、α−グリコシルヘスペリジンがカラムから最初に溶出し、次いで、通液量を増すか有機溶媒濃度を高めることにより未反応ヘスペリジンが溶出してくる。斯くして得られたグリコシルヘスペレチン含有溶出液を蒸留処理して、有機溶媒を留去した後、所望の濃度まで濃縮すれば、ヘスペリジン含量が低減された、雑味等が低減されたグリコシルヘスペレチンが得られる。なお、前記有機溶媒によるグリコシルヘスペレチンの溶出操作は、同時に、多孔性合成吸着剤の再生操作にもなるので、用いる多孔性合成吸着剤の繰り返し使用を可能にする利点がある。
【0061】
また、酵素反応終了後、酵素反応液を多孔性合成吸着剤に接触させるまでの間に、例えば、反応液を加温して生じる不溶物を濾過して除去したり、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウムなどで処理して反応液中の蛋白性物質などを吸着除去したり、強酸性イオン交換樹脂(H型)、中塩基性又は弱塩基性イオン交換樹脂(OH型)などで処理して脱塩するなどの精製方法を組み合せて、グリコシルヘスペレチンの純度を高めた、液状の還元剤処理品を製造することができる。
【0062】
更に、前記液状のグリコシルヘスペレチンを公知の乾燥方法により乾燥し粉末化して、本発明で好適に用いられる粉末状のグリコシルヘスペレチンとすることも随意である。
【0063】
斯くして、前記還元剤処理工程を経ずに調製されたグリコシルヘスペレチン(以下、「還元剤非処理品」と言う場合がある。)の欠点であった特有の雑味が有意に低減され、しかも、着色や臭気も効果的に低減された還元剤処理品を製造することができる。また、本発明者等が確認したところによれば、還元剤非処理品に特有の雑味・着色、或いは、臭気は、前記精製方法を適用しただけでは実質的に変化しない。すなわち、還元剤非処理品の製造工程において汎用されている、例えば、前記多孔性合成吸着剤を用いる精製方法は、澱粉部分分解物や水溶性糖類だけでなく、水溶性の塩類などの夾雑物も同時に除去できる利点を有しているけれども、斯かる精製方法をいかに駆使しようとも、還元剤非処理品に特有の雑味・着色、或いは、臭気を有意ないしは顕著に低減することは困難である。想定される理由として、グリコシルヘスペレチン中に含まれる雑味等の原因物質は、多孔性合成吸着剤への吸脱着の挙動がグリコシルヘスペレチンと同様であり、グリコシルヘスペレチンと分離することができないからではないかと考えられる。
【0064】
また、本発明で好適に用いられる改良グリコシルヘスペレチン、殊に、還元剤処理品は還元剤非処理品と比べ、雑味が有意に低減されており、電気伝導度も低く、電気伝導度に関与するイオン性化合物含量が低減されている。なお、イオン性化合物としては、例えば、原材料としてのヘスペリジンに本来的に含まれているナリルチン、ジオスミン、ネオポンシリン、或いは、酵素反応生成物であるグルコシルナリルチン、グルコシルネオポンシリンなどの化合物やその分解物、或いは、その分解物と密接な関連性を有する化合物、更には、改良グリコシルヘスペレチンの製造原料に由来するか、又はその製造工程で副次的に生成すると考えられる、本発明において指標とするフルフラールをはじめ、フルフリルアルコール、及びヒドロキシメチルフルフラールなどのフルフラール類やその塩類などの他、溶液状態で、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムなどの金属の陽イオンを遊離する化合物などが挙げられる。なお、前記ナリルチン、ジオスミン、ネオポンシリン、グルコシルナリルチン、グルコシルネオポンシリンなどの成分は、通常、本発明で好適に用いられる還元剤処理品に微量ながら含まれている。なお、前記イオン性化合物のことを本出願明細書では、生理学的許容性のイオン性化合物と言う。
【0065】
以上述べた、還元剤処理品の製造方法において、還元剤を用いると雑味と着色、殊に、雑味が有意に低減された改良グリコシルヘスペレチンが得られるメカニズムは定かでないが、推定すれば以下のとおりである。
【0066】
(1)還元剤処理品を製造するに際し、その製造原料に由来して、雑味の原因物質が存在し、それらに還元剤が作用し、その原因物質がマスク、分解ないしは修飾され、雑味が有意に低減された改良グリコシルヘスペレチンが得られる。
(2)還元剤処理品の製造工程において、還元剤が、雑味の原因物質が生成するのを低減ないしは抑制するか、生成した雑味の原因物質をマスク、分解ないしは修飾し、雑味が有意に低減された改良グリコシルヘスペレチンが得られる。
(3)前記(1)及び(2)に示す雑味の原因物質が還元剤により修飾を受け、多孔性合成吸着剤などによる精製工程でグリコシルヘスペレチンと分離し易くなり、その結果、雑味が有意に低減された還元剤処理品が得られる。
【0067】
更に、本発明で好適に用いられる改良グリコシルヘスペレチンとしては、グリコシルヘスペレチン含有物と還元剤とを接触させ、グリコシルヘスペレチン含有物の雑味や臭気を有意に低減させたものも例示できる。斯かるグリコシルヘスペレチン含有物も本願明細書で言う還元剤処理品に包含される。また、グリコシルヘスペレチン含有物と還元剤とを接触させると、グリコシルヘスペレチン含有物の雑味が有意に低減できるとともに、着色や臭気をも効果的に顕著に低減することができる。グリコシルヘスペレチン含有物と還元剤との接触は、固状で接触させるよりも、水などの適宜溶媒を用いて、溶液状態又は懸濁状態で行うのがよい。また、前記還元剤を接触させるグリコシルヘスペレチン含有物としては、ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン、及び7−O−β−グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上を含有するグリコシルヘスペレチンを例示できる。前記グリコシルヘスペレチン含有物としては、乾燥固形物当たり、グリコシルヘスペレチンを、通常、50%以上100%未満、より好適には、60%以上100%未満、更に好適には、70%以上100%未満、より更に好適には、80%以上100%未満、更に好適には、90%以上100%未満含有するグリコシルヘスペレチンを例示できる。
【0068】
また、前記グリコシルヘスペレチン含有物と還元剤とを接触させるに際し、用いる還元剤は、還元剤処理品を製造する場合と同様のものを用いることができる。また、還元剤の使用量は、グリコシルヘスペレチンの乾燥固形物当たり、通常、0.00001%以上、好適には、0.0001乃至0.5%、より好適には、0.001乃至0.4%、より更に好適には、0.001乃至0.3%の範囲で添加し、それらを均一に混合し、グリコシルヘスペレチンと還元剤とを接触させることにより、前記還元剤処理を経ずに調製された還元剤非処理品であっても、それ特有の雑味等を有意ないしは顕著に低減することができる。
【0069】
更に、前記液状の還元剤処理品を公知の濃縮方法により濃縮し、シラップ状やペースト状の還元剤処理品とすることも、更に公知の乾燥方法により乾燥し、固状、顆粒状、又は粉末状の還元剤処理品とすることも随意である。
【0070】
以上述べたとおり、前記還元剤処理をした酵素反応液を前記精製方法に供することにより、還元剤非処理品の欠点であった特有の雑味等が有意ないしは顕著に低減された還元剤処理品を得ることができる。
【0071】
なお、前記製造方法により得られる還元剤処理品であって、フルフラールを実質的に含まないとともに、フェノールエーテルの一種である4−ビニルアニソール(別名:4−メトキシスチレン)(以下、「4−VA」と略記する。)を実質的に含まないものは、本発明で用いる改良グリコシルヘスペレチンの中でも雑味がより有意に低減されていることはもとより、着色や臭気もより顕著に低減されていることから、本発明においては最も好適に用いられる。前記4−VAは、改良グリコシルヘスペレチンの製造原料に起因して生成すると推定される成分であり、得られるグリコシルヘスペレチン中における含量は、通常、乾燥固形物当たり、30ppb未満であり、4−VA含量は、フルフラール含量が200ppb未満であるものにおいては、通常、フルフラール含量とパラレルの関係にある。なお、4−VAを実質的に含まないとは、フルフラールの場合と同様、還元剤処理品以外の還元剤非処理品などの他のグリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、4−VA含量が有意に低いレベルにあることを意味する。より具体的には、還元剤処理品における4−VA含量は、後述する実験4の「(2)4−VAの含量」に示すGC/MS分析装置を用いての分析手法により測定したとき、通常、乾燥固形物当たり、30ppb未満、好適には、15ppb未満、より好適には、10ppb未満、更に好適には、5ppb未満、より更に好適には、3ppb未満、より更に好適には、2ppb未満である。
【0072】
また、還元剤処理品は、還元剤非処理品と比べ、着色(以下、「着色度」と言う場合がある。)も顕著に低減されている優れた特徴を有している。グリコシルヘスペレチンの着色度は、後述する実験4の「(3)色調と着色度」に示す方法により測定され、その概要を示せば下記のとおりである。すなわち、グリコシルヘスペレチンを所定濃度含有する水溶液を密閉容器中で加熱処理した後、処理液の色調を肉眼観察するとともに、分光光度計により、波長420nmにおける吸光度(OD
420nm)及び波長720nmにおける吸光度(OD
720nm)を測定し、両波長における吸光度の差(OD
420nm−OD
720nm)を求め、その測定値を着色度とする。本発明で用いるグリコシルヘスペレチンの好適な態様としては、前記吸光度の差が0.24未満、好適には0.20以下、より好適には0.17以下、更により好適には0を超え0.15以下であるものを例示できる。なお、本測定法において、グリコシルヘスペレチンの水溶液を加熱するのは、還元剤非処理品が加熱により着色度が著しく増大する欠点があったことに鑑み、グリコシルヘスペレチンの加熱による着色を実状に即して評価する目的で設定されたものである。
【0073】
還元剤処理品は、グリコシルヘスペレチンと生理学的許容性のイオン性化合物を含むグリコシルヘスペレチン含有組成物であって、これを1w/v%水溶液とし、密閉容器中で100℃で30分間加熱した後、20℃としたときの電気伝導度が10μS/cm未満、好適には、8μS/cm未満、より好適には、6μS/cm未満、より更に好適には、0μS/cmを超え4.5μS/cm未満であるグリコシルヘスペレチン含有組成物である。
【0074】
また、前記製造方法により得られる還元剤処理品は、ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン、及び7−O−β−グルコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上のグリコシルヘスペレチンを主体とする組成物であって、好適には、当該組成物の乾燥固形物当たりのグリコシルヘスペレチン含量が合計で、通常、90%以上100%未満、好適には、93%以上100%未満、より好適には、95%以上100%未満、更には、97%以上100%未満、98%以上100%未満である。
【0075】
本願明細書で言うα−グリコシルヘスペリジン含量とは、α−グリコシルヘスペリジン含有組成物を試料とし、これを精製水により0.1%(w/v)になるよう希釈又は溶解し、0.45μmメンブランフィルターにより濾過した後、下記の条件による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供し、試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)を標準物質として用い、UV280nmにおけるクロマトグラムに出現したピークの面積と、ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン(α−グルコシルヘスペリジンなど)などの各成分の分子量に基づき計算し、無水物質量換算した組成における各成分の含量を意味する。当該HPLC分析によるグリコシルヘスペレチンの定量の概要は、下記(1)乃至(4)に示すとおりである。
【0076】
<HPLC分析条件>
HPLC装置:『LC−20AD』(株式会社島津製作所製)
デガッサー:『DGU−20A3』(株式会社島津製作所製)
カラム:『CAPCELL PAK C18 UG 120』
(株式会社資生堂製)
サンプル注入量:10μ1
溶離液:水/アセトニトリル/酢酸(80/20/0.01
(容積比))
流 速:0.7m1/分
温 度:40℃
検 出:UV検出器『SPD−20A』 (株式会社島津製作所製)
測定波長:280nm
データ処理装置:『クロマトパックC−R7A』 (株式会社島津製作
所製)
【0077】
(1)ヘスペリジン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比に基づいて算出する。
(2)α−グルコシルヘスペリジン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、α−グリコシルヘスペリジンとヘスペリジンの分子量比に基づいて算出する。
(3)7−O−β−グルコシルヘスペレチン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、7−O−β−グルコシルヘスペレチンとヘスペリジンの分子量比に基づいて算出する。
(4)その他のグリコシルヘスペレチン含量:HPLCにて分析し、そのピーク面積と、所定濃度の標準物質の試薬ヘスペリジン(和光純薬工業株式会社販売)のピーク面積との比と、その他のグリコシルヘスペレチンとヘスペリジンとの分子量比に基づいて算出する。
【0078】
また、前記製造方法により得られる還元剤処理品の内、α−グリコシルヘスペリジンがα−グルコシルヘスペリジンであるグリコシルヘスペレチンは、本発明における所期の作用効果、すなわち、既に生成した肌の黄ぐすみを改善する効果がより顕著に奏せられることから好ましい。更に、前記グリコシルヘスペレチンにおけるα−グルコシルヘスペリジンの好適な含量は、通常、当該組成物の固形物当たり、60乃至90%、好適には、70乃至90%、より好適には75乃至90%であり、それらは、α−グルコシルヘスペリジンの含量の下限が増すにつれ、上記の作用効果がより顕著に奏せられることから好ましい。
【0079】
更に、前記製造方法により得られる還元剤処理品の内、1w/v%水溶液とし、密閉容器中で100℃で30分間加熱した後、室温に調整し、幅1cmのセルに入れ、分光光度計により波長420nm(OD
420nm)及び波長720nm(OD
720nm)における吸光度を測定したときの両波長における吸光度の差(OD
420nm−OD
720nm)が0.24未満、好適には0.20以下、より好適には0.17以下、更により好適には0以上0.15以下であるものは、本発明における所期の作用効果、すなわち、既に生成した肌の黄ぐすみ低減作用がより顕著に奏せられることから好ましい。また、所定の還元剤処理工程を経ない製造方法により得られるグリコシルヘスペレチンと比べ、雑味・着色、及び臭気が有意ないしは顕著に低減されている点でも優れている。
【0080】
更に、前記製造方法により得られる還元剤処理品の内、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法で測定したときの還元剤処理品の固形物当たりのカルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウム含量が下記数値範囲にあるグリコシルヘスペレチン含有組成物、すなわち、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウム含量がそれぞれ、1ppm以下、0.1ppm以下、0.2ppm以下、及び0.4ppm以下;より好適には、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウム含量がそれぞれ、0.6ppm以下、0.06ppm以下、0.1ppm以下、及び0.3ppm以下;より更に好適には、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウム含量がそれぞれ、0ppm以上0.5ppm以下、0ppm以上0.05ppm以下、0ppm以上0.08ppm以下、及び0ppm以上0.2ppm以下であるものは、本発明における所期の作用効果、すなわち、既に生成した肌の黄ぐすみを改善する効果がより顕著に奏せられることから好ましい。また、従来の製造方法により得られるグリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味・着色、及び臭気が有意ないしは顕著に低減されている点でも優れている。
【0081】
還元剤処理品は、雑味が有意に、しかも、着色や臭気も顕著に低減されており、しかも、熱安定性にも優れていることから、例えば、これを80乃至100℃の高温で、30分間以上加熱しても、また、還元剤処理品を含有させる工程又はこれを含有させた本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を室温ないしは室温を若干上回る温度で数十分間乃至数カ月間に亘って保存しても、還元剤処理品に起因する雑味・着色、更には、臭気が、製造直後と比べ変化することなく保持されているか、それらの増大が効果的に抑制されている。更に、還元剤処理品は、耐酸性、耐熱性も良好である利点をも有している。
【0082】
以上述べたとおり、本発明で用いるグリコシルヘスペレチンは、還元剤処理品であろうと還元剤非処理品であろうと、通常、ヘスペレチン骨格を有する化合物である(1)α−グリコシルヘスペリジン(α−グルコシルヘスペリジンなど)及び(2)ヘスペリジン及び7−O−β−グルコシルヘスペレチンの一方又は双方を主成分として含む組成物、つまり、グリコシルヘスペレチン混合物であって、他に、その製造原料に由来するか、その製造工程で副次的に生成すると考えられる(3)ナリルチン、ジオスミン、ネオポンシリン、グルコシルナリルチンなどのフラボノイド、及び(4)塩類などの微量成分を含むものである。斯かるグリコシルヘスペレチンの内、本発明において好適に用いられる改良グリコシルヘスペレチンとしては、前記(1)及び(2)の成分の合計割合(%)(=グリコシルヘスペレチン含量)が、通常、乾燥固形物当たり、90%以上100%未満、好適には、93%以上100%未満、より好適には、95%以上100%未満、更には、97%以上100%未満、98%以上100%未満であるものが挙げられる。なお、改良グリコシルヘスペレチンは、ヘスペレチンを含むものであってもよい。
【0083】
本発明で用いる改良グリコシルヘスペレチンの純度、つまり、乾燥固形物当たりのグリコシルヘスペレチン含量の上限は、通常、工業的に比較的大量、安価かつ容易に提供できる99%、より安価に提供するには98%、更により安価に提供するには97%以下にまで低含量のものであってもよい。しかし、当該改良グリコシルヘスペレチンの乾燥固形物当たりのグリコシルヘスペレチン含量が低い場合には、高含量のものと比べ、必然的に多量用いられることとなり、その結果、操作が煩雑となり、取り扱い性が悪くなることから、グリコシルヘスペレチン含量の下限は、通常、90%以上、好適には、93%以上、より好適には、95%以上、より好適には、97%以上、更により好適には98%以上とするのが望ましい。
【0084】
本発明で用いる改良グリコシルヘスペレチンのより好適な実施態様としては、グリコシルヘスペレチンが、α−グルコシルヘスペリジンなどのα−グリコシルヘスペリジンである場合、乾燥固形物当たりのα−グリコシルヘスペリジン含量が50%以上100%未満であるものを例示できる。
【0085】
また、本発明で用いる改良グリコシルヘスペレチンにおけるα−グルコシルヘスペリジン含量の上限としては、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤をより安価に提供する場合には、通常、工業的に比較的大量、安価かつ容易に提供できる90%以下、より安価には85%以下、更により安価には80%以下の低含量のものであってもよい。また、α−グルコシルヘスペリジン含量の下限は、上記グリコシルヘスペレチン含量と同様の理由により、通常、60%以上、65%以上、又は70%以上とするのが望ましい。
【0086】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤には、有効成分であるヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチン以外の他の成分を配合することができる。前記他の成分としては、ナリンゲニン、グリコシルナリンゲニン(ナリンジン、グルコシルナリンジンなど);L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸の塩類、L−アスコルビン酸誘導体(L−アスコルビン酸2−グルコシドなど)などのL−アスコルビン酸類;レスベラトロール、ケルセチン、クロロゲン酸、アントシアニン、クルクミン、ケンフェロール、フラボノイド類などのポリフェノール;アーティチョーク葉エキス、明日葉エキス、イチゴ種子エキス、イチョウ葉エキス、温州みかんエキス、カシスエキス、キウイ種子エキス、クランベリーエキス、アセロラエキス、アムラエキス、アロニアエキスなどの植物エキス;アスタキサンチン、β−カロテンなどのカロテノイド;糖化反応自体を抑制する作用(以下、「糖化反応抑制作用」と言う。)を有する植物抽出物又は化合物;糖質;有機酸;及びアミノ酸を例示できる。殊に、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の有効成分であるヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンは、ナリンゲニン、グリコシルナリンゲニン(ナリンジン、グルコシルナリンジンなど)、L−アスコルビン酸類、マンニトール、N−アセチルグルコサミン、マルトース、マルトトリイトール、ラフィノース、マルトテトラオースなどの糖質、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルコン酸、グルクロノラクトン、ソルビン酸、及び安息香酸などの有機酸、及びグリシン及びグルタミン酸ナトリウムなどのアミノ酸などの1種又は2種以上の成分と併用した場合には、それら成分と共同的に作用して、黄ぐすみ低減作用を効果的に奏するか、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の有効成分であるヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンが奏する黄ぐすみ低減作用が、前記他の成分により効果的に増強されるか、それら他の成分が奏する黄ぐすみ低減作用と相まって、相加的ないしは相乗的な黄ぐすみ低減作用が発揮される。
【0087】
前記糖化反応抑制作用を有する植物抽出物又は化合物としては、アイブライト、アオミズ、アキグミ、アグリモニー、アグニ果実、アケビ、アサイ果実、アシュワガンダ、アスナロ、アセンヤクノキ、アベマキ、アマチャヅル、アニス、アメリカンマンサク、アリスチン、イカリソウ、イタドリ、イチョウ、イチヤクソウ、イチゴ、イトハユリ、イトフノリ、イヌビワ、イペ樹皮、イロハモミジ、イワトユリ、ウイキョウ、ウイッチヘーゼル、ウインターグリーン、ウコン、ウメ、ウラジロガシ、エピメジウム・ブレビコルヌム、エイジツ、エキナセア、エゾウコギ、エニシダ、エルカンプーレ、エルダー、エルバ・マテ、オウギヤシ、オウバク、オウレン、オオアザミ、オート麦、オオバタネツケバナ、オカヒジキ、オトメユリ、オニタ、オニユリ、オレガノ、オレンジ、カボチャ種子、カツアバ樹皮、カノコユリ、ガラナ、カルカデ、カンアオイ、カントウ、キキョウ、ギシギシ、クサギ、クスノハガシワ、クルマユリ、クルミ、コケモモ、コナギ、サガラメ、ザクロ、サツマイモ、サルサパリラ、サンザシ、サンショウソウ、シソ、シカクマメ、シモツケソウ、シャクヤク、ショウヨウダイオウ、シラヤマギク、シロザ、シロヨメナ、セイヨウオオバコ、セキセツソウ、ソバ、タカサゴユリ、タネツケバナ、ダビラ・ルゴサ、タモトユリ、チャデブグレ、チョウジ、チンネベリーセンナ、ツボクサ、デイジー、ディル、デビルスクロウ、ツワブキ、テッポウユリ、デビルスクロー根、テンチャ、トウニン、ドクダミ、トゲナシ、トチュウ茶葉、トマト、トルメンチラ、ナガバギシギシ、ニワトコ、ノウゼンハレン、ノコンギク、ハッカ、ハカタユリ、ハギ、ハスイモ、パッションフラワー、パッションフルーツ、パフィア根、パラミツ、ヒカンザクラ、ヒマワリ、ヒメウワバミソウ、ヒメユリ、ビラコ、ビンロウジュ、フキ、フジマメ、ブラックコホシュ、ベニバナボロギク、マタタビ、マチルス、マツ、マテバシイ、マテ茶、マドンナ・リリー、マリアアザミのソウ果、ミツバウツギ、ムベ、モズク、ヤナギ、ヤブカンゾウ、ヤマトゲバンレイシ、ヤマユリ、ヨウサイ、ヨメナ、ライチ種子、リーガル・リリー、リュウキュウチク、リュウキュウバライチゴ、リンゴ未熟果、リンデン花、ルイボス、レタス、レモン、レモングラス、レモンタイム、レモンバーベナ、レモンバーム、ローズヒップ、ローズピンクバッツ、ローズマリー、ローズレッド、ローレル、ロゼア、ロッグウッド、ワレモコウ、レンゲ草、柿葉、甘草葉、黒大豆種皮、黒米種子、月桃葉、細葉百合、西洋ヤナギ、杜仲葉の葉などの植物の抽出物;ハナフノリ、フクロフノリ、マフノリなどの海藻の抽出物;生コーヒー豆、甘藷焼酎粕、アガリクス菌糸体などの抽出物;及びエクオール、イソフラボン、1,4−アントラキノン、1−アミノ−2−ヒドロキシメチルアントラキノン、4−アミノフェノール、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、コウジ酸、3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸、カフェイン酸、イフェンプロジル、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸、6−ヒドロキシインドール、7−ヒドロキシ−4,6−ジメチルフタリド、α−リポ酸、4−ヒドロキシカルコン、真珠タンパク質加水分解物、アミノグアニジン、エリスロシンナトリウム、エルゴチオネイン、レスベラトロール、3,3´,5,5´−テトラヒドロキシスチルベンなどのヒドロキシスチルベン類、オキシインドール、カルノシン、サリチル酸、サルソリノール臭化水素酸塩、シナピン酸、トコフェリルニコチネート、ニコチン酸アミド、ノルジヒドログアイアレチン酸、プロアントシアニン、マンニトール、加水分解カゼイン、加水分解性タンニン、カテコール、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸、フェルリルカフェオイルキナ酸などのクロロゲン酸類、ロイコシアニジン、プルニン、プロシアニドール・オリゴマー、グルコシルルチンなどが挙げられる。前記成分の内、本発明でより好適に用いられる、糖化反応抑制作用を有する植物抽出物又は化合物としては、アシュワガンダ、アスナロ、アセンヤクノキ、イチョウ、ウインターグリーン、オウバク、オレンジ、カボチャ種子、カツアバ樹皮、クスノハガシワ、グルコシルルチン、コケモモ、シソ、ソバ葉、ダビラ・ルゴサ、ドクダミ、ヒメウワバミソウ、ベニバナボロギク、マタタビ、リュウキュウチク、リュウキュウバライチゴ、リンゴ未熟果、柿葉、甘草葉、月桃葉、杜仲葉の抽出物;及びエクオール、イソフラボン、イフェンプロジル、真珠タンパク質加水分解物、カテコール、カフェイン酸、及びプルニンなどを例示できる。本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤に配合することのできる前記他の成分の配合量は、当該黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の全質量当たり、通常、0.001%以上、好適には0.01乃至50%、より好適には0.01乃至30%、更に好適には0.01乃至20%、より更に好適には0.01乃至10%配合することができる。
【0088】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の剤形は任意であり、例えば、粉末状、固状、液状、クリーム状、及びペースト状などの形態にあるものを例示できる。具体的には、例えば、軟膏、乳液、クリーム剤、錠剤、顆粒剤、粉剤、スプレー剤、懸濁剤、ペースト剤、ゼリー剤、液剤、ジェル剤、浴用剤、ローション、ボディオイル、エッセンス、フェイスパウダー、パックなどを例示できる。ヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンを本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤に配合する方法としては、それら皮膚外用剤が完成するまでの工程で、例えば、混和、混捏、混合、添加、溶解、浸漬、浸透、散布、塗布、噴霧、注入などの公知の1種又は2種以上の方法を例示できる。
【0089】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤は、前記形態にある化粧品、医薬品、又は医薬部外品を例示でき、各種化粧品に適量配合して用いることも随意である。
【0090】
本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤におけるヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンの配合量は、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の適用頻度や対象者の肌の状態などによって、適宜設定することができる。しかし、通常、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤には、ヘスペレチン及び/又はグリコシルヘスペレチンから選ばれる1種又は2種以上の成分の全てをヘスペレチンと見做して質量換算(以下、本願明細書においては、単に「ヘスペレチン換算」と言う。)したとき、乾燥固形物当たり、合計で0.0001%を超え100%未満、好適には、0.001%を超え100%未満、より好適には、0.01%を超え100%未満、更に好適には、0.01乃至60%、より更に好適には、0.01乃至40%、より更に好適には、0.01乃至20%含むように配合する。また、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を対象者に外用する頻度及び期間は、通常、一日1乃至5回、好適には、一日1乃至3回(朝、昼又は晩(夜))とし、数日以上、好適には数週間以上、より好適には1カ月以上、より好適には2カ月以上、更に好適には3カ月以上に亘って、連日又は1日以上隔てて、継続的に適用するのが望ましい。なお、前記使用量の下限を下回ると所期の作用効果が著しく低下するか発揮されなくなる場合があること、また、前記使用量の上限を上回ると、使用量に見合った作用効果が発揮されなくなり、経済性の観点からも好ましくない。本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤の適用部位としては、外皮、殊に、粘膜以外の皮膚がとりわけ好適である。
【0091】
斯くして得られる、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤は、室温ないしは室温を若干上回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存する場合でも、それ自体はもとより、これを配合した各種組成物において、当該黄ぐすみ低減剤に起因する着色はもとより、臭気が全くないか、或いは、知覚できない程度にまで顕著に低減されている。
【0092】
以下、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤について、実験により更に詳細に説明する。
【0093】
<実験1:カルボニル化蛋白質低減物質のスクリーニング>
(1)概要
肌の深部にある真皮の蛋白質が過酸化物質などによって変性(カルボニル化)するとカルボニル化蛋白質が生じ、肌が黄色くくすんで見える、所謂、黄ぐすみが誘発されることが知られている。本実験おいては、後述するカルボニル化蛋白質モデルを用いて、黄ぐすみ低減作用を有する物質をスクリーニングした。
【0094】
(2)カルボニル化蛋白質モデル
カルボニル化蛋白質モデルとして、ウシ血清アルブミン(以下、「BSA」と言う。)をカルボニル化したカルボニル化蛋白質(以下、「カルボニル化BSA」と言う。)を調製し、試験に用いた。
<カルボニル化BSAの調製>
カルボニル化誘発剤としての次亜塩素酸ナトリウムを100μM含むリン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS(−)」と言う。)に、BSAを最終濃度が40mg/mLとなるように溶解し、37℃で一夜保ち、肌の黄ぐすみの原因物質であるカルボニル化蛋白質モデルとしてのカルボニル化BSAを生成させ、残存する次亜塩素酸ナトリウムを限外濾過膜(商品名『アミコンウルトラ10K』、メルクミリポア株式会社)により除去し、カルボニル化BSAを得た。本実験においては、このカルボニル化BSAをカルボニル化蛋白質モデルとして用いた。
【0095】
(3)被験試料
後述する実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物(以下、単に「グリコシルヘスペレチン含有組成物」と言う。)、グリコシルナリンゲニン含有組成物(特許第3967563号の方法により調製したモノグルコシルナリンジン67.6%及びナリンジン22.4%を含む組成物)、L−アスコルビン酸2−グルコシド(商品名『AA2G』、株式会社林原販売)、ナイアシンアミド(純度98.0%以上、試薬特級、和光純薬工業株式会社販売)、及び還元型グルタチオン(純度99%以上、シグマアルドリッチ社製)を被験試料として用いた。
【0096】
(4)カルボニル化蛋白質低減作用(黄ぐすみ低減作用)を有する物質のスクリーニング(単用試験)
本発明者等は、カルボニル化蛋白質生成抑制物質をスクリーニングする手法として用いられている公知の抗カルボニル化試験法を応用し、前記表1に示す被験試料について、下記手順により、それら化合物のカルボニル化蛋白質低減作用について調べた。すなわち、前記(2)で調製したカルボニル化BSAを10mg/mL含有する溶液100μLと、黄ぐすみ低減作用を有する候補物質として、前記(3)に示す被験試料のいずれかを0.1w/v%含有するようにPBS(−)に溶解した(全量1ml)。前記(2)で調製したカルボニル化BSAと被験試料を1:1の質量比で含む溶液(以下、「カルボニル化蛋白質低減試験用被験溶液」と言う。)の全量を37℃で16時間保った後、前記限外濾過膜を用いて濾過し、残存する抗酸化物質を除去した。次いで、ウエスタンブロット解析に基づき、蛋白質の酸化レベルを解析できるキット(商品名『OxyBlot
TM Protein Oxidation Detection Kit』、メルクミリポア株式会社製)を用いて、カルボニル化BSAの濃度をドットブロット法により測定した。なお、測定値(発光強度)は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)で開発された画像処理ソフトである『Image J』にて解析した。一方、被験試料を用いない以外は前記同様にして処理して得られたカルボニル化BSA含有PBS(−)溶液(以下、「対照」と言う。)のカルボニル化BSAの濃度を前記同様にして測定し、これに対する各被験試料を共存させた場合の測定値の割合をそれぞれ求めた。結果は表1及び
図1に示す。なお、被験物質無添加の対照のカルボニル化BSAの割合と比べ、カルボニル化BSAの割合が低いものほど、カルボニル化蛋白質低減作用が大であることを意味する。更に、表中の数値は、被験試料無添加の対照におけるカルボニル化BSAの測定値を1とし、これに対する各被験試料単独でのカルボニル化BSAの割合をそれぞれ示す。
【0098】
表1及び
図1から明らかなとおり、対照のカルボニル化BSAの割合を1としたとき、グリコシルヘスペレチン含有組成物、グリコシルナリンゲニン含有組成物、及びL−アスコルビン酸2−グルコシドのカルボニル化BSAの割合はそれぞれ、0.46、0.77、及び0.73であり、対照と比べ、カルボニル化BSAの割合は明らかに低値を示した。これは、グリコシルヘスペレチン含有組成物、グリコシルナリンゲニン含有組成物、及びL−アスコルビン酸2−グルコシドがカルボニル化BSA低減作用、つまり、カルボニル化蛋白質低減作用を有していることを示すものである。中でも、グリコシルヘスペレチン含有組成物のカルボニル化蛋白質低減作用は最も高いことが判明した。一方、ナイアシンアミド及び還元型グルタチオンは、いずれも対照と比べ、カルボニル化BSAの割合が高かったことから、ナイアシンアミド及び還元型グルタチオンにはカルボニル化蛋白質低減作用がないことが判明した。
【0099】
(5)カルボニル化蛋白質低減試験−その1(グリコシルヘスペレチン含有組成物と他の成分との併用試験)
前記(4)において、カルボニル化BSA低減作用が最も高かったグリコシルヘスペレチン含有組成物と、このグリコシルヘスペレチン含有組成物には及ばないものの、カルボニル化蛋白質低減作用を認めたグリコシルナリンゲニン含有組成物又はL−アスコルビン酸2−グルコシドとの併用試験を行った。すなわち、前記(4)で用いた、カルボニル化蛋白質低減試験用被験溶液に代えて、グリコシルヘスペレチン含有組成物の濃度が0.1、0.5、又は1.0w/v%、及びグリコシルナリンゲニン含有組成物又はL−アスコルビン酸2−グルコシドの濃度が0.1w/v%である、カルボニル化蛋白質低減試験用被験溶液を用いた以外は、前記(4)と同様にして試験した。結果は下記表2と表3、及び
図2と
図3にそれぞれ示す。なお、表中、「%」を付していない数字は、グリコシルヘスペレチン含有組成物及びグリコシルナリンゲニン含有組成物のいずれも無添加の対照におけるカルボニル化BSA(以下、「対照」と言う。)の測定値を1とし、これに対する、各被験試料を単用又は併用したときのカルボニル化BSAの割合をそれぞれ示す。
【0102】
表2と
図2の結果から明らかなとおり、グリコシルヘスペレチン含有組成物(0.1w/v%)とグリコシルナリンゲニン含有組成物(0.1w/v%)とを併用したとき、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合が0.53であったものが0.40に低下した。同様に、グリコシルヘスペレチン含有組成物(0.5w/v%又は1.0w/v%)とグリコシルナリンゲニン含有組成物(0.1w/v%)とを併用したとき、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合は0.24又は0.07からそれぞれ、0.10又は0.06に低下した。これらの結果から、グリコシルヘスペレチン含有組成物とグリコシルナリンゲニン含有組成物とを併用すると、グリコシルヘスペレチン含有組成物のカルボニル化BSA低減作用、つまり、カルボニル化蛋白質低減作用が増強されることが判明した。
【0103】
また、表3と
図3の結果から明らかなとおり、グリコシルヘスペレチン含有組成物(0.1w/v%)とL−アスコルビン酸2−グルコシド(0.1w/v%)とを併用したとき、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合が0.53であったものが0.81に増加し、この条件下では、グリコシルヘスペレチン含有組成物とL−アスコルビン酸2−グルコシドとの併用によるカルボニル化BSA低減作用は認められなかった。しかしながら、グリコシルヘスペレチン含有組成物(0.5w/v%又は1.0w/v%)とL−アスコルビン酸2−グルコシド(0.1w/v%)とを併用したとき、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合が0.24又は0.07であったものがそれぞれ、0.04又は0.02に低下した。これらの結果から、グリコシルヘスペレチン含有組成物とL−アスコルビン酸2−グルコシドとを併用すると、グリコシルヘスペレチン含有組成物のカルボニル化BSA低減作用、つまり、カルボニル化蛋白質低減作用が増強されることが判明した。
【0104】
これらの知見はいずれも、本発明者等によって独自に見出された新規な知見である。
【0105】
なお、具体的なデータは示さないが、後述する実施例2乃至6に示すグリコシルヘスペレチン含有組成物のいずれも、本実験で用いたグリコシルヘスペレチン含有組成物と同様の作用を有する。
【0106】
(6)カルボニル化蛋白質低減試験−その2(グリコシルヘスペレチン含有組成物と各種糖質との併用試験)
前記(5)において、グリコシルヘスペレチン含有組成物と、グリコシルナリンゲニン含有組成物又はL−アスコルビン酸2−グルコシドとを併用したとき、それらは共同的に作用して、カルボニル化蛋白質低減作用を示した。引き続き、本実験においては、グリコシルヘスペレチン含有組成物と併用したとき、そのカルボニル化蛋白質低減作用を高める化合物として、糖質に着目し、更に検索した。
【0107】
すなわち、下記表4に示す、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース(商品名『マルトースHHH』)、ラフィノース、マルトテトラオース、又はグリコシルトレハロース(商品名『トルナーレ(登録商標)』、グリコシルトレハロースを主成分とする化粧用基材)のいずれかを、前記(4)で用いたグリコシルナリンゲニン含有組成物及びL−アスコルビン酸2−グルコシドに代えて、無水物換算で0.1w/v%含有する溶液をカルボニル化蛋白質低減試験用被験溶液として用いた以外は、前記(4)と同様にして、前記糖質とグリコシルヘスペレチン含有組成物とを併用したときのカルボニル化蛋白質低減作用について調べた。結果を表5に示す。
【0110】
表5に示す結果から明らかなとおり、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合が0.51であったものが、グリコシルヘスペレチン含有組成物と、マルトース、マルトテトラオース、又はグリコシルトレハロースと併用すると、0.11、0.13、及び0.13に顕著に低減した。この結果は、マルトース、マルトテトラオース、及びグリコシルトレハロースには、グリコシルヘスペレチン含有組成物のカルボニル化BSA低減作用を顕著に増強する作用があることが判明した。一方、マンノース、N−アセチルグルコサミン、マルトース、ラフィノース、マルトテトラオース、及びグリコシルトレハロースをそれぞれ単独で使用したときのカルボニル化BSAの割合はそれぞれ、0.51、0.48、0.18、0.23、0.71、及び0.37であり、マルトース及びラフィノースはそれ自体、カルボニル化BSA低減作用を有していることが判明した。グリコシルヘスペレチン含有組成物をマルトテトラオースと併用したとき、マルトテトラオース単独でのカルボニル化BSAの割合は0.71に過ぎなかったが、グリコシルヘスペレチン含有組成物と併用したときには、0.71から0.13まで激減し、顕著なカルボニル化BSA低減作用が発揮されることが判明した。
【0111】
(7)カルボニル化蛋白質低減試験−その3(グリコシルヘスペレチン含有組成物と各種有機酸又はアミノ酸との併用試験)
本実験では、グリコシルヘスペレチン含有組成物と併用する化合物として、有機酸及びアミノ酸に着目し、試験を行った。表6に示す、乳酸、酒石酸、クエン酸、サリチル酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、グリシン、及びグルタミン酸ナトリウムのいずれかを、前記(4)で用いたグリコシルナリンゲニン含有組成物又はL−アスコルビン酸2−グルコシドに代えて、0.05w/v%含有する溶液をカルボニル化蛋白質低減試験用被験溶液として用いた以外は前記(4)と同様にして、グリコシルヘスペレチン含有組成物と前記有機酸又は前記アミノ酸のいずれか1種とを併用したときのカルボニル化蛋白質低減作用について調べた。その結果を表7に示す。
【0114】
表7に示す結果から明らかなとおり、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合は0.59であったが、グリコシルヘスペレチン含有組成物と、乳酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、グリシン、又はグルタミン酸ナトリウムと併用すると、0.35、0.35、0.16、0.49、0.25、0.26、0.44、0.32、及び0.28へと顕著に低減した。このことから、乳酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、グリシン、及びグルタミン酸ナトリウムには、グリコシルヘスペレチン含有組成物のカルボニル化BSA低減作用を顕著に増強する作用があることが判明した。なお、試験に供した有機酸及びアミノ酸のいずれも、それら単独で用いたときのカルボニル化BSAの割合は、0.71乃至1.08の範囲にあり、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独でのカルボニル化BSAの割合と比べ高値を示した。
【0115】
以上述べた実験結果から、グリコシルヘスペレチン含有組成物を、グリコシルナリンゲニン含有組成物、L−アスコルビン酸2−グルコシド、マルトース、マルトテトラオース、グリコシルトレハロース、乳酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、グリシン、又はグルタミン酸ナトリウムと併用すると、それらは共同的に作用して、グリコシルヘスペレチン含有組成物単独で用いた場合と比べ、顕著なカルボニル化蛋白質低減作用を発揮する。殊に、マルトテトラオース、乳酸、フェルラ酸、グルクロン酸、グルクロノラクトン、酢酸、ソルビン酸、安息香酸、グリシン、又はグルタミン酸ナトリウムとを併用すると、著しく高いカルボニル化蛋白質低減作用が発揮される。
【0116】
なお、具体的データは示さないが、後述する実施例2乃至6に示すグリコシルヘスペレチン含有組成物のいずれも、本実験で用いたグリコシルヘスペレチン含有組成物と同様の作用を示す。
【0117】
<実験2:ヒト外用試験−その1>
(1)概要
実験1で行った生体外試験において、グリコシルヘスペレチン含有組成物には顕著なカルボニル化蛋白質低減作用を認めたことから、実際にグリコシルヘスペレチン含有組成物をヒトの肌に外用した場合、既に生成したカルボニル化蛋白質に及ぼす作用について調べた。
【0118】
(2)塗布試験
24乃至38歳の健常な11名(男性7名、女性4名)を被験者とし、各被験者の利き腕と反対の上腕内側の皮膚(3cm×3.5cm)3カ所を被験部位(以下、被験者の頭部側から順に被験部位A、B、及びC」と言う。)とし、各自、表8に示す配合組成からなる試験液(pH5.7)を綿棒にて1日2回[朝と晩(晩は入浴後に)]被験部位Bに7日間塗布させ、試験開始後8日目に被験試料を塗布した各被験部位に角層テープストリッピング用テープ(商品名『角層チェッカー AST−01』、有限会社アサヒバイオメッド販売)を貼付してテープストリッピングを行い、角層蛋白質(以下、「試験終了後の角層蛋白質」と言う。)を採取した。なお、対照として、表8に示す対照液(pH5.7)を被験部位Cに塗布した以外は前記同様にして行い、角層蛋白質(以下、「対照の角層蛋白質」と言う。)を採取した。また、被験部位Aについては、予め試験開始時に角層テープストリッピング用テープを用いテープストリッピングを行い、角層蛋白質(以下、「試験開始時の角層蛋白質」と言う。)を採取した。
【0120】
<判定方法>
カルボニル化蛋白質低減作用の評価は、各被験者毎に、試験液を塗布した被験部位Bの「試験終了後の角層蛋白質」及び被験部位Aの「試験開始時の角層蛋白質」中のカルボニル化蛋白質(肌の黄ぐすみの原因物質)につき、実験1の「(2)カルボニル化蛋白質低減試験(単用試験)」に示すカルボニル化BSA濃度の測定方法と同様にして定量した。また、対照として、対照液を塗布した被験部位Cについても前記同様にしてカルボニル化蛋白質を定量した(以下、「対照の角層蛋白質」と言う。)。
【0121】
また、各被験者につき、試験液を塗布した「試験後の角層蛋白質」又は対照液を塗布した「対照の角層蛋白質」におけるカルボニル化蛋白質の量と、「試験開始時の角層蛋白質」におけるカルボニル化蛋白質の量との差分[(試験終了後の角層蛋白質又は対照の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量)−(試験開始時の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量)]、及び、比[(試験終了後の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量)/(試験開始時の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量)]をそれぞれ求め統計学的処理[t検定(片側)]を行った。
【0122】
<結果>
各被験者につき、試験液を塗布した被験部位におけるカルボニル化蛋白質(肌の黄ぐすみの原因物質)量について調べた結果を
図4及び
図5に示す。
図4に示すとおり、対照液を塗布した被験者の場合、試験終了後の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量は、試験開始時と比べ増加しており、これは、本試験期間中においても、被験者の肌のカルボニル化蛋白質の量が増加したことを示している。これに対し、試験液を塗布した被験者の場合、試験終了後の角層蛋白質中のカルボニル化蛋白質の量は、試験開始時と比べ低減していた。また、
図5から、対照液を塗布した被験者にあっては、試験開始時と比べ約1.1倍カルボニル化蛋白質の量が増加したのに対し、試験液を塗布した被験者の場合には、試験開始時と比べカルボニル化蛋白質の量が減少していたことから、試験液を塗布した被験者にあっては、カルボニル化蛋白質の量が顕著かつ有意に低減したことを意味する。すなわち、グリコシルヘスペレチン含有組成物を皮膚に塗布することにより、既に生成した肌のカルボニル化蛋白質を有意に低減できることが判明した。
【0123】
本実験は、僅か7日間という短期間の塗布試験であったにも拘わらず、斯くも顕著かつ有意な結果が得られたという事実は、グリコシルヘスペレチンが、既に生成した肌のカルボニル化蛋白質を顕著かつ有意に効果的に低減できることを如実に示している。また、本試験終了後、全被験者において、本試験に起因する皮膚等における異常は認められなかったことから、グリコシルヘスペレチンは、ヒトが安心して日常的に継続して外用できる安全な物質であると判断される。なお、具体的データは示さないが、後述する実施例2乃至6に示すグリコシルヘスペレチン含有組成物はもとより、本願明細書中に示す他のグリコシルヘスペレチン及びヘスペレチンのいずれも、本実験で用いたグリコシルヘスペレチン含有組成物と同様、既に生成した肌のカルボニル化蛋白質低減作用を有する。
【0124】
本実験は、24乃至38歳の健常な被験者を用いて、グリコシルヘスペレチンが、既に生成した肌のカルボニル化蛋白質低減作用を有することを明らかにしたものである。一方、本実験とは別に行った試験結果によれば、グリコシルヘスペレチンが奏するカルボニル化蛋白質低減作用は、若年層よりも高齢層(40歳以上)においてより顕著に認められる。これは、加齢に伴い皮膚の代謝が低下し、黄ぐすみの原因物質であるカルボニル化蛋白質が肌に徐々に蓄積され、肌に黄ぐすみが生じることを勘案すれば、カルボニル化蛋白質量が多い高齢層にグリコシルヘスペレチンを適用した場合、グリコシルヘスペレチンが奏するカルボニル化蛋白質低減作用がより顕著に表れることは自明の理である。
【0125】
<実験3:ヒト外用試験−その2>
(1)概要
実験2の「ヒト外用試験−その1」に引き続き、ヒトの目元の皮膚を被験部位とし、グリコシルヘスペレチンがヒトの皮膚の黄ぐすみに及ぼす影響について調べた。
(2)塗布試験
25乃至49歳の健常ではあるが、日常生活で精神的ストレスを感じている女性16名を被験者とし、無作為に8名ずつ2群(A群、B群と言う。)に分け、両群の各被験者に対し、左右いずれか同じ側の目元を被験部位とし、この被験部位に表9に示す配合組成からなる本発明の化粧水A(A群用)又は対照の化粧水B(B群用)を1日2回[朝と晩(晩に入浴する場合には、入浴後に化粧水A又はBを塗布)]被験部位に1回当たり3mLを手にとって塗布する処置(以下、「使用」と言う。)を計8週間に亘って連日実施するよう指示し、使用開始前、使用4週後、及び使用8週後に下記に示す皮膚色測定を行い、化粧水A及び化粧水Bが黄ぐすみに及ぼす影響を調べた。なお、本試験期間中、被験者全員に対し、(a)被験部位をこするなどの物理的刺激を避けること、(b)過度の日焼けを避けること、(c)過度の運動を避けること、(d)スキンケア剤として、化粧水A、B以外のものは使わないこと、及び(e)使用開始前、使用4週後、及び使用8週後に皮膚色測定を行う前夜には飲酒をしないことを厳守させた。
【0126】
<判定方法:色差測定(皮膚色測定)>
被験部位の皮膚色を色差計(商品名『コニカミノルタ分光測色計 CM−2600d』、コニカミノルタ社製)を用いて測定した。色差測定における解析対象は、L*a*b*表示系における「L*値」及び「b*値」とした。なお、L*値は明度を表し、b*値は肌の黄みの程度を表わす指標である。
【0127】
A群の8名の内、2名は、被験者個人の都合により試験途中で脱落したため、A群のデータ解析は6名の測定結果に基づいて行った。また、B群は8名の測定結果に基づいてデータ解析を行った。被験者の目元の皮膚における色差測定(皮膚色測定)によるL*値の測定値と、使用開始後からの変化量(ΔL*値)を、それぞれ表10及び表11に示した。また、被験者の目元の皮膚における色差測定によるb*値の測定値と、使用開始前からの変化量(ΔL*値)をそれぞれ、表12及び表13に示す。
【0133】
<結果>
表10に示すとおり、対照の化粧水Bを使用した被験者の目元の皮膚におけるL*値の平均値は、使用開始前が63.37であったものが、使用4週後には63.77、使用8週後の時点では63.70を示し、L*値に実質的な変化は認められなかった。これに対し、グリコシルヘスペレチンを含有する化粧水Aを使用した被験者の目元の皮膚におけるL*値の平均値は、使用開始前63.42であったものが、使用4週後の時点で64.31、使用8週後の時点で64.27を示し、使用開始前と比べ明らかに高いL*値を示した。また、表11に示すとおり、対照の化粧水Bを使用した被験者のL*値の変化量(ΔL*値)は、使用開始前の0を基準に、使用4週後、及び使用8週後の時点においてそれぞれ、0.40及び0.33であった。これに対し、本発明の化粧水Aを使用した被験者のΔL*値は、使用開始前の0を基準に、使用4週後、及び使用8週後の時点においてそれぞれ、0.90及び0.86であった。このように、前記化粧水Aを使用した被験者のΔL*値である0.90及び0.86のいずれも、対照の化粧水BのΔL*値である0.40及び0.33の約2倍以上もの高値を示した。ここで、L*値は肌の明るさの指標であることを勘案すると、本発明のグリコシルヘスペレチン含有組成物を含有する化粧水Aは、ヒトの肌の明るさを効果的に改善する作用を有することが判明した。
【0134】
また、表12に示すとおり、対照の化粧水Bを使用した被験者の目元の皮膚における、使用開始前、使用4週後、及び使用8週後のb*値はそれぞれ、17.33、17.03、及び17.25と、使用開始前と後とで実質的な変化は認められなかった。これに対し、本発明のグリコシルヘスペレチンを含有する化粧水Aを使用した被験者の目元の皮膚におけるb*値の平均値は、使用開始前が18.41であったものが、使用4週後、及び使用8週後の時点においてそれぞれ、17.84、及び17.70と、使用開始前と比べ顕著な減少が認められた。そして、その減少の程度は、表13に示すとおり、対照の化粧水Bを使用した被験者のb*値の変化量(Δb*値)の平均値が−0.30及び−0.08であったのに対し、本発明のグリコシルヘスペレチン含有組成物を含有する化粧水Aを使用した被験者のそれは、使用4週後及び使用8週後の時点においてそれぞれ、−0.57及び−0.70であった。このように、化粧水Aを使用した被験者のΔb*値の変化量は、対照の化粧水Bのそれと比べ、使用4週後には約2倍となり、また使用8週後には、実に、約9倍となった。このように、化粧水Aは、ヒトの肌における黄ぐすみを極めて顕著に改善する作用を有することが判明した。
【0135】
本実験結果から、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤は、これをヒトの肌に適用すると、色差測定(皮膚色測定)において、肌の黄ぐすみの指標であるb*値を顕著に低下させるとともに、肌の明るさの指標であるL*値を改善することから、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤によれば、肌の黄ぐすみを改善し、透明感のある健康的な色調の肌とすることができる。なお、本発明の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤が奏するヒトの肌の黄ぐすみ改善作用は、本剤使用開始前の肌の黄ぐすみが高値である被験者において、より顕著に認められる傾向を示した。
【0136】
<実験4:グリコシルヘスペレチンの物性>
グリコシルヘスペレチンとして、後述する実施例2、4、5及び6の方法において、還元剤を用いない以外はそれら実施例に記載された方法と同様にして調製した4種類の粉末状グリコシルヘスペレチン(被験試料1乃至4)と、実施例2の方法において、還元剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを0.1、0.09、0.07又は0.04%用いた以外は、実施例2の方法と同様にして調製した4種類の粉末状グリコシルヘスペレチン(被験試料5乃至8)を用いた。なお、被験試料1は、所定の還元剤を用いないで調製されたもので、α−グルコシルヘスペリジン、ヘスペリジン、及びその他の成分含量は実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチンのそれとほぼ同等であり、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチンと同等品である。
【0137】
(1)フルフラールの含量
被験試料1乃至8のそれぞれにつき、下記手順及び装置を用いてフルフラール含量を求めた。
【0138】
<A.試料の調製>
(ア)50mL容共栓付三角フラスコに被験試料としてのグリコシルヘスペレチンを0.5g採取する。
(イ)次いで、脱イオン水を5.0mL加えグリコシルヘスペレチンを溶解し、サロゲート物質(分析に際し、被験試料の回収率を調べるための指標)として、濃度0.0025%のシクロヘキサノールを20μLを加える。
(ウ)更に、塩化ナトリウムを1.5g加え溶解し、ジエチルエーテルを3mL加え、700rpmで10分間攪拌する。
(エ)全量を分液漏斗に移し取り、10分間静置した後、ジエチルエーテル相を回収し、硫酸ナトリウムにて脱水後、窒素気流下、約200μLとなるまで濃縮する。
(オ)濃縮液1μLを採取し、GC/MS分析装置に供する。
(カ)対照として、グリコシルヘスペレチンに代えて試薬級フルフラールを用いた以外は被験試料と同様、(ア)乃至(オ)の処理を行う。
【0139】
<GC/MS分析条件>
GC/MS分析装置:『Clarus 680 GC』及び『Claru s SQ8T』(いずれもパーキンエルマー社製)
カラム:VF−WAXms[30m(カラム長)×0.25mm(内径)、膜厚0.25μm](AGILENT J&W社製)
検出器:質量分析器
キャリアー:ヘリウムガス
線速度35cm/秒
昇温条件:40℃で3分間保持し、40℃〜80℃まで5℃/分の割合で昇温し、80℃〜200℃まで10℃/分の割合で昇温し、200℃で7分間保持し、200℃〜220℃まで10℃/分の割合で昇温し、更に、220℃で8分間保持する。
サロゲート物質:シクロヘキサノール
内部標準物質:ヘンエイコサン
抽出溶媒:ジエチルエーテル
【0140】
<B.試料中のフルフラールの定量>
GC/MS分析法で得られた、対照の試薬特級フルフラール(和光純薬工業株式会社製)についての測定データを元に検量曲線を作成し、これに基づいて、被験試料のフルフラール含量を求めた。
【0141】
(2)4−VAの含量
被験試料1乃至8のそれぞれにつき、下記試薬、手順、及び装置を用いて4−VA含量を測定した。なお、その測定は、平成18年7月28日付、食安基発第0728008号厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課長通知『清涼飲料水中のベンゼンについて』に準じて行った。
【0142】
<A.試薬、各種溶液の調製>
(ア)塩化ナトリウム(水質試験用、和光純薬工業株式会社販売)
(イ)シクロヘキサノール標準原液の調製
シクロヘキサノール(試薬一級、片山化学工業株式会社販売)をメタノール(局方一般試験法用)に溶解して0.01質量%シクロヘキサノール溶液(以下、「シクロヘキサノール標準原液」と言う。)を調製した。
(ウ)内部標準液
前記シクロヘキサノール標準原液とメタノールを用いて、0.0004質量%シクロヘキサノール溶液(以下、「内部標準液1」と言う。)及び0.00004質量%シクロヘキサノール溶液(以下、「内部標準液2」と言う。)を調製した。
(エ)標準原液の調製
4−VA(和光純薬工業株式会社販売)をメタノールに溶解し、0.0005質量%4−VA溶液(以下、「標準液A」と言う。)及び0.00005質量%4−VA溶液(以下、「標準液B」と言う。)をそれぞれ調製した。
(オ)検量線作成用標準原液の調製
前記標準液A、B、前記内部標準液1、及びメタノールを用いて、4−VA濃度が0.05、0.1、0.2、0.5又は1.0μg/mLである5種類の検量線作成用混合標準原液を調製した。
(カ)検量線作成用標準液の調製
20mL容ヘッドスペースバイアル5本にそれぞれ超純水を10mL加え、更に前記5種類の検量線作成用混合標準原液のいずれかを10μL加え、更に塩化ナトリウム3.0gを添加し、直ちに密栓し、撹拌溶解し、5種類の検量線作成用標準液を調製した。
【0143】
<B.被験試料の調製>
20mL容ヘッドスペースバイアル8本に被験試料1乃至8のいずれかを乾燥固形物換算で0.20g精秤し、これに超純水を加え全量を10.0gとし、撹拌溶解した。得られた水溶液に前記内部標準液2を10μL加え、更に塩化ナトリウムを3.0g添加し、直ちに密栓し、撹拌溶解し、被験試料1乃至8のいずれかを含む8種類の被験試料を調製した。
【0144】
<C.4−VAの定量方法>
(ア)測定条件
<GC/MS分析条件>
・GC/MS分析装置:『Clarus SQ8TGC/MS』(パーキンエルマー社製)
・ヘッドスペースサンプラー:『TurboMatrix Trap 40』パーキンエルマー社製)
・カラム:VF-WAXms[カラム長30m×内径0.25mm、膜厚0.25μm)(AGILENT J&W社製)
・検出器:質量分析器
・キャリアー:ヘリウムガス
・線速度:35cm/秒
・カラム注入口温度:200℃
・昇温条件:40℃で3分間保持し、40℃〜80℃まで5℃/分の割合で昇温し、80℃〜200℃まで10℃/分の割合で昇温し、200℃で7分間保持し、200℃〜220℃まで10℃/分の割合で昇温し、更に、220℃で8分間保持する。
・バイアルオーブン温度:60℃
・ニードル温度:140℃
・トランスファーライン温度:205℃
・バイアル加熱時間:30分間
<検出法>
・イオン化[Electron Impact(EI)]法
・SIM選択イオン(Selected Ion Monitoring)
m/z 134, 119 (4−VA)
m/z 82, 57 [シクロヘキサノール(試薬一
級、片山化学工業株式会社販売)]
【0145】
(イ)4−VAの定量
前記5種類の検量線作成用標準液と前記8種類の被験試料における4−VAと内部標準(シクロヘキサノール)のピーク高さ比と、別途作成しておいた4−VAの検量線とに基づき、前記被験試料における4−VA濃度を求め、それに基づいて被験試料1乃至8における4−VA含量を算出した。
【0146】
(3)色調と着色度
被験試料1乃至8の水溶液それぞれにつき、色調を肉眼観察するとともに、下記手順により、着色度を求めた。すなわち、被験試料1乃至8のそれぞれにつき、1%水溶液とし、その40mLを密閉容器(50mL容)中で100℃で30分間加熱した後、27℃とし、幅1cmのセルに入れ、分光光度計(商品名『UV−2600』、株式会社島津製作所製)により、波長420nm(OD
420nm)及び波長720nm(OD
720nm)における吸光度を測定し、両波長における吸光度の差(OD
420nm−OD
720nm)を求め、その値を着色度とした。なお、吸光度差の数値が小さいほど、着色度が低いことを意味する。
【0147】
(4)電気伝導度
次いで、これら被験試料1乃至8のそれぞれにつき、1w/v%水溶液となるように純水に溶解し、密閉容器中で100℃で30分間加熱した後、得られた被験試料1乃至8の水溶液をそれぞれ20℃に冷却し、20℃での電気伝導度を電気伝導度計(商品名『CM−50AT』、東亜ディーケーケー株式会社製)により測定した。
【0148】
(5)イオン性化合物の含量
イオン性化合物を定量することは容易ではないので、簡便法として、下記手法により、陽イオン金属元素の含量を求めた。すなわち、被験試料1乃至8のそれぞれにつき、約0.5gを50mL容器(商品名『ファルコンチューブ』、日本ベクトンディッキンソン株式会社製)に精秤し、超純水20mLに加熱溶解し、これに精密分析用の60%硝酸水溶液を0.54mL添加し、70℃で14時間加熱し、室温まで冷却した後、超純水にて全量を50mLとし、下記分析装置と測定条件下で金属元素含量を求めた。なお、対照は超純水のみを用いた。
【0149】
<装置及び測定条件>
・誘導結合プラズマ発光分光分析装置:『CIROS−120』(Spectro社製)
・プラズマ電力:1,400W
・プラズマガス(Ar):13.0 L/分
・補助ガス(Ar):1.0 L/分
・ネブライザーガス(Ar):1.0 L/分
・ポンプ動作:1.0 mL/分
・金属元素含量(ppm)の算出方法:{(被験試料の測定値)−(対照の測定値)}×希釈倍率
【0150】
前記(1)乃至(5)の結果を表14に示す。なお、被験試料1乃至8のグリコシルヘスペレチンの組成は、実施例1、3、4又は5に示すものと実質的に同等であることから、表14にはその組成の記載を割愛した。
【0152】
表14から明らかなとおり、被験試料1乃至4のフルフラール含量はいずれも300ppb超であったのに対し、被験試料5乃至8はいずれも、約10ppbであった。また、被験試料1乃至4の4−VA含量はいずれも40ppb超であったのに対し、被験試料5乃至8はいずれも約2ppb以下であった。
【0153】
また、表14に示すとおり、被験試料1乃至4(還元剤非処理品)の水溶液の色調(肉眼観察による)は淡黄色であったが、被験試料5乃至8(還元剤処理品)の水溶液は、被験試料1乃至4と比べ明らかに淡い色調であった。また、分光光度計による着色度は、被験試料1乃至4の水溶液の着色度はいずれも、0.24以上であったのに対し、被験試料5乃至8の水溶液はいずれも0.20以下と低値であった。更に、被験試料5乃至8の着色度は、用いた還元剤の量が多いものほど低値を示した。
【0154】
更に、表14から明らかなとおり、被験試料1乃至4の水溶液の電気伝導度は、約11乃至約12μS/cmと10μS/cm超であったのに対し、被験試料5乃至8の水溶液は、約3乃至約7μS/cmと10μS/cm未満であった。
【0155】
なお、表14から明らかなとおり、被験試料5乃至8の金属元素(カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウム)含量はそのいずれも、被験試料1乃至4と比べ明らかに低く、この結果は、電気伝導度の測定結果とも良く整合していた。
【0156】
以上の結果から、還元剤処理品は、還元剤非処理品と比べ、フルフラール含量が有意に低減され、4−VA含量、着色度、電気伝導度、及び金属元素含量も顕著に低減されていることが判明した。
【0157】
<実験5:グリコシルヘスペレチンの雑味及び着色と、フルフラール及び4−VAの含量との関係>
グリコシルヘスペレチンの雑味及び着色と、フルフラール及び4−VAの含量との関係を調べる目的で下記の試験を行った。
【0158】
(1)被験試料の調製
後述する実施例5の方法及び実施例1の方法に準じて、還元剤処理品であるグリコシルヘスペレチン(以下、「試料A」と言う。)と、還元剤非処理品であるグリコシルヘスペレチン(以下、「試料B」と言う。)とをそれぞれ調製した。次いで、便宜上、試料A、Bを適宜割合で配合し、フルフラール含量が段階的に異なる、表16に示す3種類のグリコシルヘスペレチン試料(以下、「被験試料9乃至11」と言う。)を調製した。
【0159】
(2)フルフラール及び4−VAの含量
実験4の「(1)フルフラールの含量」及び「(2)4−VAの含量」に示す測定方法にしたがって、被験試料9乃至11のフルフラール含量と4−VA含量とをそれぞれ測定した。
【0160】
(3)着色判定試験
28乃至57歳の健常な男女9人(女性2人、男性7人)をパネルとし、被験試料9乃至11及び試料B(以下、「対照」と言う。)を用いて着色についての評価試験を行った。すなわち、被験試料9乃至11及び対照をそれぞれ蒸留水に1%水溶液となるように室温で溶解し、それらを各パネリストに肉眼観察させ、各パネリストが各被験試料につき、対照と比べ、「着色が低減されている」と評価した場合には「判定A1」、「着色が低減されていない」と評価した場合には「判定B1」と判定させ、その結果を表15に示した。
【0161】
(4)官能試験
前記男女9人をパネルとし、被験試料9乃至11及び対照の雑味について官能試験を行った。すなわち、被験試料9乃至11及び対照をそれぞれ蒸留水に1%水溶液となるように室温で溶解し、それらを各パネリストに試飲させ、各パネリストが、各被験試料につき対照と比べ、「雑味が改善されている」と評価した場合には「判定A2」と判定させ、「雑味が改善されていない」と評価した場合には「判定B2」と判定させ、その結果を表15に示した。
【0163】
表15の結果から明らかなとおり、グリコシルヘスペレチンの雑味は、フルフラール含量が200ppb近傍を境に有意かつ顕著に改善され、4−VA含量については30ppb近傍を境に有意かつ顕著に改善されていた。また、グリコシルヘスペレチンの着色についても同様であった。
【0164】
これらの結果から、フルフラール含量が200ppb未満であって、4−VA含量が30ppb以下であるグリコシルヘスペレチンは、従来品と比べ、雑味が有意に低減され、着色が顕著に低減されたグリコシルヘスペレチンであることが判明した。言い換えると、フルフラール含量及び4−VA含量は、雑味が有意に低減され、着色が顕著に低減されたグリコシルヘスペレチンを峻別するための指標とすることができることが判明した。すなわち、フルフラール含量が200ppb未満であって、4−VA含量が30ppb以下であるグリコシルヘスペレチンを指標とすることにより、本発明のグリコシルヘスペレチンを容易に得ることができる。
【0165】
因みに、既述の実験4の結果を示す表14、及び後述する実施例1乃至8に示す粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物の雑味と、フルフラール含量及び4−VA含量との関係について取り纏めたものを下記表16に示す。表16中、還元剤処理品である被験試料5乃至8(前記表14参照)、及び実施例2乃至8の粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物(以下、纏めて「還元剤処理試料」と言う。)のフルフラール含量は、191ppb以下、4−VA含量は28.7ppb以下であり、還元剤非処理品に特有の雑味が有意に低減されていた。これに対し、還元剤非処理品である被験試料1乃至5の粉末状グリコシルヘスペレチン(以下、纏めて「還元剤非処理試料」と言う。)のフルフラール含量は、308ppb以上、4−VA含量は40.0ppb以上であり、還元剤非処理品に特有の雑味を有していた。
【0166】
下記表16に示す結果は、実験4の結果とよく整合し、これら一連の結果に基づき、フルフラール含量及び/又は4−VA含量を指標とし、フルフラール含量が200ppb未満及び/又は4−VA含量が30ppb未満であるものを峻別すれば、還元剤非処理品と比べ、雑味が有意に低減されたグリコシルヘスペレチンを得ることができると判断される。
【0168】
表16の結果から、還元剤処理品は、還元剤非処理品と比べ、雑味が有意に低減され、更には、着色や臭気も顕著に低減されているので、本発明に係る黄ぐすみ低減剤に好適に配合して用いることができる。
【0169】
<実験6:官能試験>
(1)被験試料の調製
実験4で用いた還元剤処理品である被験試料5乃至8の内、フルフラール含量、着色度、電気伝導度、及び金属元素含量のそれぞれが中間に位置する値を示した被験試料6と、還元剤非処理品である被験試料1乃至4の内、フルフラール含量、着色度、電気伝導度、及び金属元素含量が最も低値を示した被験試料1を用いて、28乃至59歳の健常な男女8名(女性2名、男性6名)をパネルとする下記(2)に示す官能試験を行った。すなわち、還元剤非処理品(被験試料1)と還元剤処理品(被験試料6)をそれぞれ1w/v%水溶液となるように室温でRO水(逆浸透膜を通した水)に溶解し、非加熱被験試料1、6とし、これらを下記試験に供するまで密閉容器中にて保管した。また、非加熱被験試料1、6をそれぞれ、容器に入れ密閉し、沸騰水浴中で30分間加熱し、室温まで冷却したものを加熱被験試料1、6とした。
【0170】
(2)官能試験
各パネリストに、室温に調整した、前記(1)で得た非加熱被験試料1、6(各10mL)及び加熱被験試料1、6(各10mL)について、試飲前に、(a)着色と(b)臭気とを各自に評価させた。その後、各パネリストには、各被験試料を試飲する前に白湯で口を漱がせた後、(c)苦味(渋み、えぐみ、収斂味を含む)、(d)後味、及び(e)試飲時の臭気について各自に評価させた。評価基準は下記表17に示すとおりである。なお、非加熱被験試料6に対しては、非加熱被験試料1を対照とし、加熱被験試料6に対しては、加熱被験試料1を対照とし、前記(a)乃至(e)の各評価項目につき、各パネリストに評価させた。結果はそれぞれ、表18及び表19に示す。
【0174】
なお、表18、19に示す評価結果には、還元剤非処理品(加熱/非加熱被験試料1)自体についての(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の評価結果を示していないが、評価基準に示すとおり、表18、19に示す評価結果は、還元剤非処理品を基準として、還元剤処理品を評価したものであることから、還元剤非処理品自体の評価結果は、各評価項目につき、評価基準に示すスコア(5段階評価)で言えば、中間の「3」である。
【0175】
一方、表18の評価結果から明らかなとおり、非加熱被験試料6、すなわち、加熱処理をしていない還元剤処理品は、(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の各評価項目につき、5段階評価で最高の「1」と評価したパネル数はそれぞれ、8人中、4人、3人、0人、3人、及び4人(合計14人)であった。一方、表18の評価結果に示す加熱被験試料6、すなわち、加熱処理した還元剤処理品は、(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の各評価項目につき、5段階評価で「1」と評価したパネル数はそれぞれ、8人中、6人、4人、3人、4人、及び5人(合計22人)であった。この結果は、還元剤処理品は、還元剤非処理品に固有の苦味、着色のみならず、臭気が効果的に低減された高品質のグリコシルヘスペレチンであることを示している。
【0176】
同様に、表19の評価結果から明らかなとおり、非加熱被験試料6(加熱処理をしていない還元剤処理品)は、(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の評価項目につき、5段階評価で最低の「5」及びその最低レベルより1段階高い「4」と評価したパネル数はいずれも0人(合計0人)であった。一方、表18の評価結果から明らかなとおり、加熱被験試料6(加熱処理した還元剤処理品)は、(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の評価項目につき、5段階評価で最低の「5」及びその最低レベルより1段階高い「4」と評価したパネル数はいずれも0人(合計0人)であった。この結果は、還元剤処理品は、還元剤非処理品と比べ、雑味・着色のみならず、臭気が効果的に低減された高品質のグリコシルヘスペレチン含有組成物であることを示している。
【0177】
これらの結果から、還元剤処理品は、還元剤非処理品と比べ、加熱/非加熱を問わず、還元剤非処理品に特有の(a)着色、(b)臭気、(c)苦味、(d)後味、及び(e)臭気の全ての評価項目において著しく優れているとともに、その優劣の差は、加熱した場合、より顕著な差として現れることが判明した。
【0178】
なお、前記実験4に示す被験試料5、7及び8についても本実験6の「(2)官能試験」に供したところ、前記被験試料6とほぼ同等の結果が得られた。
【0179】
このように、還元剤処理品は、還元剤非処理品に特有の苦味と後味、つまり、雑味が有意に低減されているとともに、還元剤非処理品と比べ、着色と臭気も顕著に低減されていることが判明した。
【0180】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はそれらにより何等限定されるものではない。
【実施例1】
【0181】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
原料として、特開平11−346792号公報の実施例A−2に記載された方法と同様にして、ヘスペリジン1質量部に対しデキストリン(DE20)を7質量部用い、バチルス・ステアロサーモフィルス由来のシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(株式会社林原製)をデキストリングラム当り20単位加え、pH6.0、75℃に維持し、24時間反応させ、シラップ状グリコシルヘスペレチン含有組成物を得、これにグルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス株式会社製)をグリコシルヘスペレチン含有組成物固形物グラム当り100単位加え、50℃、5時間反応させた。次いで、得られたシラップ状グリコシルヘスペレチン含有組成物を減圧濃縮し、粉末化して、粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を固形物当り、原料のヘスペリジン質量に対し約60%の収率で得た。本品は、α−グルコシルヘスペリジン77.0質量%、ヘスペリジン15.5質量%、その他の成分を7.5質量%含有していた。
【0182】
本品のフルフラール含量は310ppb、4−VA含量は40.0ppb、着色度は0.24、及び電気伝導度は約11μS/cmであった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約3ppm、約0.2ppm、約0.4ppm、及び約1ppm含有していた。
【0183】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。
【実施例2】
【0184】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
1規定水酸化ナトリウム水溶液4質量部を80℃に加温し、この温度を維持しつつ、ヘスペリジン1質量部及びデキストリン(DE20)7質量部を加え、30分間撹拌しつつ溶解させ、pHを9.0とし、これにジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273、寄託日:1973年7月30日)由来のCGTaseをデキストリングラム当り30単位加え、pH6.9、50℃に維持しつつ18時間反応させ、ヘスペリジンの約70%をα−グリコシルヘスペリジンに変換させた。次いで、得られた酵素反応液
に対し、還元剤としてのピロ亜硫酸ナトリウムを0.05質量%添加し、100℃で30分間加熱するともに、残存する酵素を加熱失活させた後、グルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス株式会社製)を酵素反応液の固形分グラム当り100単位加え、pH5.0、55℃に維持しつつ5時間反応させ、α−グルコシルヘスペリジンを生成させた。得られた酵素反応液を加熱して残存する酵素を失活させ、濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名『ダイヤイオンHP−10』(三菱化学株式会社販売)を充填したカラムに空間速度(SV)2で通液した。その結果、溶液中のα−グルコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとが多孔性合成吸着剤に吸着し、D−グルコース、塩類などは吸着することなく流出した。次いで、カラムに精製水を通液し、カラムを洗浄した後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら更に通液し、α−グルコシルヘスペリジン含有画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、淡黄色の粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を固形物当り原料のヘスペリジン質量に対して約70%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グルコシルヘスペリジンを80.0質量%、ヘスペリジンを12.3質量%、その他の成分を7.7質量%含有していた。
【0185】
本品のフルフラール含量は12ppb、4−VA含量は2ppb、着色度は0.19、及び電気伝導度は約6μS/cmであった。また、本品は乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.4ppm、約0.05ppm、約0.1ppm、及び約0.1ppm含有していた。
【0186】
また、本品は、所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味と着色とが有意に低減され、臭気も顕著に低減されている上、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱しても、雑味・着色はもとより、臭気も効果的に低減されている優れた特性を有している。
【0187】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例3】
【0188】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
1規定水酸化ナトリウム水溶液4質量部を80℃に加温し、この温度を維持しつつ、これにヘスペリジン1質量部、デキストリン(DE10)4質量部、及び亜硫酸ナトリウム0.06質量部を順次添加し、30分間撹拌しつつ溶解させ、0.01規定塩酸溶液にて中和した後、直ちにジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTaseをデキストリングラム当り20単位加え、pH6.0、75℃に維持し、攪拌しつつ、24時間反応させた。得られた酵素反応液をサンプリングして、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘスペリジンの約69%が、α−グリコシルヘスペリジンに変換していた。次いで、得られた酵素反応液に還元剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを0.03%となるように添加し、90℃で120分間加熱した後、グルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス株式会社製)を当該中間生成物グラム当り50単位加え、pH5.0、55℃に維持しつつ10時間反応させ、α−グルコシルヘスペリジンを生成させた。得られた酵素反応液を加熱して残存する酵素を失活させ、濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名『ダイヤイオンHP−10』(三菱化学株式会
社販売)を充填したカラムにSV2で通液した。その結果、溶液中のα−グルコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとが多孔性合成吸着剤に吸着し、糖類や塩類などは吸着することなく流出した。次いで、カラムに精製水を通液し、カラムを洗浄した後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら更に通液し、α−グルコシルヘスペリジン含有画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、淡黄色の粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を固形物当り原料のヘスペリジン質量に対して約68%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グルコシルヘスペリジン79.0%、ヘスペリジン14.0%、その他の成分を7.0%含有していた。
【0189】
本品のフルフラール含量は、11ppbであり、4−VA含量は1.5ppb、着色度は0.14、及び電気伝導度は約4μS/cmであった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.4ppm、約0.06ppm、約0.1ppm、及び約0.1ppm含有していた。
【0190】
本品は、所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味と着色とが有意に低減され、臭気も顕著に低減されている上、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱しても、雑味・着色はもとより、臭気も効果的に低減されている優れた特性を有している。
【0191】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例4】
【0192】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
1規定水酸化ナトリウム水溶液4質量部を80℃に加温し、この温度を維持しつつ、これに還元剤として亜硫酸ナトリウム0.1質量部、ヘスペリジン1質量部、及びデキストリン(DE10)4質量部を順次添加し、30分間撹拌しつつ溶解し、これに0.01規定塩酸溶液を加えて中和した後、直ちにジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTaseをデキストリングラム当り20単位加え、pH6.0、75℃に維持し、攪拌しつつ、24時間反応させたところ、ヘスペリジンの約72%がα−グリコシルヘスペリジンに変換していた。得られた酵素反応液を加熱して残存する酵素を失活させ、濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名『ダイヤイオンHP−20』(三菱化学株式会社販売)を充填したカラムにSV2で通液した。その結果、溶液中のα−グリコシルヘスペリジンと未反応ヘスペリジンとが多孔性合成吸着剤に吸着し、D−グルコース、塩類などは吸着することなく流出した。次いで、カラムに精製水を通液し、カラムを洗浄した後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら更に通液し、α−グリコシルヘスペリジン含有画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、淡黄色の粉末状α−グリコシルヘスペリジン含有組成物を、固形物当り、原料のヘスペリジン質量に対して約71%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グリコシルヘスペリジン76.0%、ヘスペリジン18.5%、その他の成分を5.5%含有していた。
【0193】
本品のフルフラール含量は10ppb、4−VA含量は3.0ppb、着色度は0.17、及び電気伝導度は約4μS/cmであった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.3ppm、約0.04ppm、約0.1ppm、及び約0.05ppm含有していた。
【0194】
また、本品は、所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味と着色とが有意に低減され、臭気も顕著に低減されている上、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱しても、雑味と着色はもとより、臭気も効果的に低減されている優れた特性を有している。
【0195】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例5】
【0196】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
ヘスペリジン1質量部、デキストリン(DE8)10質量部、及び還元剤としてピロ亜硫酸ナトリウム0.05質量部を水500質量部に添加し、pH9.5、90℃で70分間加熱し、次いで、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTaseをデキストリングラム当り30単位加え、pH8.2、65℃に維持し、攪拌しつつ、40時間保持しつつ、この酵素反応が終了する直前に、ピロ亜硫酸ナトリウム0.05質量部を添加し、85℃で加熱し、酵素を失活させた後、これにグルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス株式会社製)を酵素反応液固形物グラム当り100単位加え、pH5.0、55℃に維持しつつ5時間反応させ、α−グルコシルヘスペリジンを生成させた。得られた酵素反応液を加熱して残存する酵素を失活させた。次いで、得られた酵素反応液に、α−L−ラムノシダーゼとしてヘスペリジナーゼ(商名『可溶性ヘスペリジナーゼ<タナベ>2号』、田辺製薬製)を0.5質量部を添加し、pH4に調整し、55℃で24時間反応させ、得られた酵素反応液にピロ亜硫酸ナトリウム0.01質量部を添加し、加熱して酵素を失活させた後、濾過し、濾液を多孔性合成吸着剤、商品名『ダイヤイオンHP−10』(三菱化学株式会社販売)を充填したカラムにSV2で通液した。その結果、溶液中のα−グルコシルヘスペリジン、7−O−β−グルコシルヘスペレチン、及び未反応ヘスペリジンとが多孔性合成吸着剤に吸着し、D−グルコース、塩類などは吸着することなく流出した。次いで、カラムに精製水を通液し、カラムを洗浄した後、エタノール水溶液濃度を段階的に高めながら更に通液し、α−グルコシルヘスペリジン画分を採取し、減圧濃縮し、粉末化して、淡黄色の粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を固形物当り原料のヘスペリジン質量に対して約70%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グルコシルヘスペリジン81.9%、ヘスペリジン0.5%、7−O−β−グルコシルヘスペレチン8.9%、及びその他の成分を8.7%含有していた。
【0197】
本品のフルフラール含量は9ppb、4−VA含量は2.0ppb、着色度は0.16、及び電気伝導度は約4μS/cmであった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.3ppm、約0.03ppm、約0.05ppm、及び約0.05ppm含有していた。
【0198】
本品は、所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味と着色とが有意に低減され、臭気も顕著に低減されている上、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱しても、雑味と着色はもとより、臭気も効果的に低減されている優れた特性を有している。
【0199】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例6】
【0200】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
ヘスペリジン50質量部と次亜硫酸ナトリウム1質量部とを0.25規定水酸化ナトリウム水溶液0.9質量部に80℃で加熱溶解し、DE8のデキストリン150質量部を添加し溶解し、pH9.0に調整した後、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTaseをデキストリン1質量部当たり15単位加え、60℃まで加温しながらpH8.3に調整し、6時間反応させた。その後、pH7.0に調整し、68℃に加温して40時間反応させた。酵素反応終了後、酵素を加熱失活させた後、濾過して酵素反応液を得た。酵素反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析したところ、反応前の溶液中のヘスペリジンの72%がα−グルコシルヘスペリジンに変換しており、残り28%は未反応のままであった。酵素反応液に、α−L−ラムノシダーゼとしてヘスペリジナーゼ(商品名『可溶性ヘスペリジナーゼ<タナベ>2号』、田辺製薬製)を2質量部を添加し、pH4に調整し、55℃で24時間反応させた後、グルコアミラーゼ(商品名『グルコチーム』、ナガセケムテックス株式会社製)を1質量部加え、更に55℃で24時間反応させた。酵素反応終了後、得られた酵素反応液を加熱して酵素を加熱失活させ、中間極性多孔性吸着樹脂(商品名『アンバーライトXAD−7』、Rohm & Haas社製)を充填したカラムにかけ、カラムを水洗し、80v/v%エタノール水溶液にて樹脂吸着成分を溶出した。溶出液中のエタノールを除去した後、凍結乾燥し、α−グルコシルヘスペリジンを82.0%、7−O−β−グルコシルヘスペレチン8.0%、ヘスペリジンを1.0%、及びその他の成分を9.0%含む粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を得た。
【0201】
本品のフルフラール含量は10ppb、4−VA含量は1.5ppb、着色度は0.15、及び電気伝導度は10μS/cm未満であった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.4ppm、約0.04ppm、約0.1ppm、及び約0.2ppm含有していた。
【0202】
本品は、所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べ、雑味と着色とが有意に低減され、臭気も顕著に低減されている上、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱しても、雑味と着色はもとより、臭気も効果的に低減されている優れた特性を有している。
【0203】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例7】
【0204】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
酵素反応液に対し、還元剤としてのメタ亜硫酸カリウムを0.001%添加した以外は実施例1と同様にして、淡黄色の粉末状グリコシルヘスペレチンを固形物当り原料のヘスペリジン質量に対して約69%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グルコシルヘスペリジン79.5%、ヘスペリジン13.8%、その他の成分を6.7%含有していた。
【0205】
本品のフルフラール含量は180ppb、4−VA含量は20.0ppb、着色度は0.23、及び電気伝導度は10μS/cm未満であった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.5ppm、約0.08ppm、約0.1ppm、及び約0.3ppm含有していた。
【0206】
本品は、実施例2乃至5で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物と比べると劣るものの、還元剤非処理品と比べ、着色や臭気も顕著に低減されている上、雑味が有意に低減されているとともに、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱した後も、還元剤非処理品と比べ、雑味が有意に低減されていることはもとより、着色や臭気も効果的に顕著に低減されている優れた特性を有している。
【0207】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例8】
【0208】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
メタ亜硫酸カリウムを亜硫酸水素ナトリウムに代えた以外は実施例7と同様にして、淡黄色の粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物を、乾燥固形物当り、原料のヘスペリジン質量に対して約65%の収率で得た。なお、本例で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物は、α−グルコシルヘスペリジン77.2%、ヘスペリジン16.5%、その他の成分を6.3%含有していた。
【0209】
本品のフルフラール含量は191ppb、4−VA含量は28.7ppb、着色度は0.23、及び電気伝導度は10μS/cm未満であった。また、本品は、乾燥固形物当たり、カルシウム、カリウム、マグネシウム、及びナトリウムをそれぞれ、約0.5ppm、約0.07ppm、約0.09ppm、及び約0.4ppm含有していた。
【0210】
本品は、実施例2乃至6で得られた粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物の物性と比べると劣るものの、本品は、還元剤非処理品と比べ、着色や臭気も顕著に低減されている上、雑味が有意に低減されているとともに、90乃至100℃の比較的高温の条件下で30分間加熱した後も、還元剤非処理品と比べ、雑味が有意に低減されていることはもとより、着色や臭気も効果的に顕著に低減されている優れた特性を有している。
【0211】
本品又はこれを含有させた化粧品、医薬部外品、及び医薬品をヒトに外用することにより、従来、困難と考えられていた、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できる。また、本品は、安全かつ容易に長期間に亘って使用できる利点を有している。また、本品は、前記温度範囲かそれを下回る温度で、数十分間乃至数カ月間保持又は保存した場合でも、本品に由来する雑味・着色はもとより臭気が効果的に低減されているとの優れた作用効果が発揮される。
【実施例9】
【0212】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
実施例2乃至8で得た7種類の粉末状の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤のいずれかを1質量部、アントシアニン0.001質量部、精製水30質量部、及び適量のpH調製剤を添加し撹拌し、pH7.0に調整し、精密濾過し、無菌容器に無菌的に充填して、7種類の本発明の液状の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を得た。
【0213】
本品は、着色、異臭が実質的になく、ヒトが日常的に継続的に容易に不快感なく外用することができる。本品は、一回当たり、約0.01乃至約0.05mL/cm
2をヒトの皮膚に日常的に外用することにより、既に生成した肌の黄ぐすみ低減作用が効果的に発揮される。
【実施例10】
【0214】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
実施例2乃至8で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物のいずれかを0.01質量部及びヘスペレチン0.0001質量部を精製水50質量部に均一に混合し、加熱滅菌し、無菌容器に充填して、7種類の液状の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を得た。
【0215】
本品のいずれも、着色、異臭が実質的になく、ヒトが日常的に継続的に容易に不快感なく外用することができる。本品は、一回当たり、約0.01乃至約0.05mL/cm
2をヒトの皮膚に日常的に外用することにより、既に生成した肌の黄ぐすみ低減作用が効果的に発揮される。
【実施例11】
【0216】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
所定の還元剤を用いないで製造された、実施例1で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物1質量部に対し、亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、及び二酸化イオウから選ばれる1種又は2種以上の還元剤を合計で0.0005質量部添加し、精製水50質量部に均一に溶解し、精密濾過し、無菌容器に充填し、複数種類の液状の黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を得た。
【0217】
本品は、室温乃至比較的高温の環境下で数十分間乃至数カ月間保存後も、本品に起因する雑味・着色、臭気の増大ないしは変化が実質的に認められず、保存安定性及び熱安定性に優れている。
【0218】
また、本品は、着色、異臭が実質的になく、ヒトが日常的に継続的に容易に不快感なく外用することができる。本品は、一回当たり、約0.01乃至約0.05mL/cm
2をヒトの皮膚に日常的に外用することにより、既に生成した肌の黄ぐすみ低減作用が効果的に発揮される。
【実施例12】
【0219】
<黄ぐすみ低減用皮膚外用剤>
粧原基又は粧配規を満たす以下の成分を、以下の配合にしたがって常法により混合し、8種類のスプレータイプの黄ぐすみ低減用皮膚外用剤を製造した。
【0220】
<配合>
・実施例1乃至8で得た粉末状グリコシルヘスペレチン含有組成物
のいずれか1種 0.1質量部
・ヒアルロン酸ナトリウム液(1%、粧配規) 15質量部
・トレハロース(粧配規) 0.5質量部
・L−シスチン(粧配規) 0.05質量部
・セージエキス(粧配規) 1.0質量部
・モモ葉エキス(粧配規) 0.5質量部
・ポリオキシエチレン(20)ポリオキシポリプロピレン(8)
セチルエーテル(粧配規) 0.3質量部
・精製水(粧配規) 残余
合計 100質量部
【0221】
本品を100mL容噴霧容器に充填し、液状スプレーを得た。本スプレーは、黄ぐすみを低減させたい所望の肌の部位に、その適量を1日当たり1乃至5回、連日又は隔日で数日から数カ月に亘って適用すると、既に生成した肌の黄ぐすみを効果的に低減できるとともに、皮膚への水分の浸透性にも優れ、肌の保湿性を保つのにも優れており、さっぱりとした使用感の基礎化粧品として有用である。また、本スプレーは、穏やかな清浄作用をも示すことから、低刺激性の清浄用スプレーとしても有用である。