(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842422
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】改善された導電特性を有するレーザーダイオード
(51)【国際特許分類】
H01S 5/10 20210101AFI20210308BHJP
【FI】
H01S5/10
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-543826(P2017-543826)
(86)(22)【出願日】2016年2月18日
(65)【公表番号】特表2018-506189(P2018-506189A)
(43)【公表日】2018年3月1日
(86)【国際出願番号】EP2016053442
(87)【国際公開番号】WO2016131910
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】102015203113.6
(32)【優先日】2015年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502327850
【氏名又は名称】フォルシュングスフェアブント ベルリン エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Forschungsverbund Berlin e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ, ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】デッカー, ヨナタン
(72)【発明者】
【氏名】クランプ, ポール
(72)【発明者】
【氏名】エルベルト, ゲッツ
【審査官】
村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05793521(US,A)
【文献】
米国特許第06148013(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーダイオード(10)であって、
少なくとも1つの活性層(12)、共振器(14)、及びアウトカップリング要素(16)と、
少なくとも1つのコンタクト層(18)と、を有し、
前記活性層(12)は、前記共振器(14)内に配置され且つ前記アウトカップリング要素(16)に動作可能に接続され、
前記コンタクト層(18)は、電荷キャリアを前記活性層(12)に結合するように構成され、
前記共振器(14)は、少なくとも第1セクション(20)及び第2セクション(22)を備え、
前記第2セクション(22)における前記活性層(12)の最大幅(W2)は、前記第1セクション(20)における前記活性層(12)の最大幅(W1)よりも、長く、
前記コンタクト層(18)の前記活性層(12)へ向かう方向への射影は、第1セクション(20)及び第2セクション(22)の両方と重なり、
前記第2セクション(22)は、複数の離間した抵抗素子(24)を備え、
前記抵抗素子(24)の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子(24)間の領域(26)における電気抵抗率よりも大きく構成され、
前記活性層(12)の縦軸(X1)に沿った抵抗素子(24)の幅(W3)が20μm未満であり、
前記活性層(12)上の前記抵抗素子(24)は、前記抵抗素子(24)を前記活性層(12)上に射影したとき、前記活性層(12)の少なくとも10%と重なるように構成され、
複数の前記抵抗素子(24)は、前記活性層(12)の縦軸(X1)方向において、互いに等距離に離間しており、
複数の前記抵抗素子(24)は、前記第2セクションの全域にわたって配置されており、
各前記抵抗素子は、前記活性層(12)の縦軸(X1)方向に沿う一定の範囲を有する、
レーザーダイオード(10)。
【請求項2】
各前記抵抗素子(24)の電気抵抗率は、均一であり、且つ、各前記領域(26)の電気抵抗率は、均一であり、
前記領域(26)は、前記活性層(12)の前記縦軸(X1)に沿った2つの前記抵抗素子(24)の間に位置している、
請求項1に記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項3】
全ての前記抵抗素子(24)が、前記第2セクション(22)内で互いに等距離に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項4】
前記抵抗素子(24)の電気抵抗の前記領域(26)の電気抵抗に対する比の値は、1000を上回る、
請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項5】
前記第1セクション(20)と前記第2セクション(22)は、2つの端面間の共振器内に配置され、
前記第2セクション(22)の最大幅の前記第1セクション(20)の最大幅に対する比の値は、30を上回る、
請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項6】
前記活性層(12)上の前記抵抗素子(24)は、前記抵抗素子(24)を前記活性層(12)上に射影したとき、前記活性層(12)の全表面の少なくとも50%と重なるように構成される、
請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項7】
前記活性層(12)の縦軸(X1)に沿った抵抗素子(24)の最大拡張幅(W3)は11μm以下である、
請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項8】
前記抵抗素子(24)は、互いに面平行な少なくとも2つの表面を備え、
前記表面の法線ベクトルは、前記活性層(12)の縦軸(X1)に平行に配向されている、
請求項1〜請求項7の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項9】
前記第1セクション(20)はリブ導波路領域(28)を含み、前記第2セクション(22)は台形領域(30)を含む、
請求項1〜請求項8の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10)。
【請求項10】
レーザーダイオード(34)であって、
共振器(38)内に配置された少なくとも1つの活性層(36)を備え、
前記活性層(36)は、第1端面(40)及び第2端面(42)に動作可能に接続され、
前記第2端面(42)は、アウトカップリング要素として設計され、
電荷キャリアを前記活性層(36)に結合させるための少なくとも1つのコンタクト層(44)と、複数の離間した抵抗素子(46)をさらに備え、前記複数の離間した抵抗素子(46)は、前記第1端面(40)と前記第2端面(42)の間に配置され、
前記レーザーダイオードは、前記共振器(38)の横軸(Y2)方向の幅が、縦軸(X2)方向において一定である、ブロードストライプレーザーダイオードであり、
前記抵抗素子(46)の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子(46)間の領域(48)における電気抵抗率よりも大きく構成され、
前記活性層(36)の縦軸(X2)に沿った抵抗素子(46)の最大拡張幅は20μm以下であり、
前記抵抗素子(46)は、前記共振器(38)の半分(50)に設けられ、
前記共振器(38)の半分(50)は、前記第1端面(40)に対向し、
前記抵抗素子(46)は、前記共振器(38)の半分(52)に設けられ、
前記共振器(38)の半分(52)は、前記第2端面(42)に対向し、
前記半分(50)の前記抵抗素子(46)の全表面は、前記半分(52)の前記抵抗素子(46)の全表面以上の面積を有し、
各前記抵抗素子(46)は、前記共振器(38)の幅に沿って延びる横軸(Y2)に沿う、等しい範囲を有しており、
複数の前記抵抗素子(24)は、前記活性層(12)の縦軸(X1)方向において、互いに等距離に離間しており、
各前記抵抗素子は、前記活性層(12)の縦軸(X1)方向に沿う一定の範囲を有する、
レーザーダイオード(34)。
【請求項11】
前記抵抗素子(46)は、互いに面平行な少なくとも2つの表面を備え、
前記表面の法線ベクトルは、前記活性層(36)の縦軸(X2)に平行に配向されている、
請求項10に記載のレーザーダイオード(34)。
【請求項12】
複数の前記抵抗素子(46)は、前記活性層(36)の縦軸(X2)に対して軸対称、又は、複数の前記抵抗素子(46)における中心に対して点対称に延在する、
請求項10又は請求項11に記載のレーザーダイオード(34)。
【請求項13】
コンタクト層(44)の横軸(Y2)方向の長さに対する抵抗素子(46)の横軸(Y2)方向の長さの比の値は0.6である、
請求項10〜請求項12の何れか1つに記載のレーザーダイオード(34)。
【請求項14】
前記縦軸(X2)に沿った前記抵抗素子(46)の最大拡張幅は6μmである、
請求項10〜請求項13の何れか1つに記載のレーザーダイオード(34)。
【請求項15】
請求項1〜請求項14の何れか1つに記載のレーザーダイオード(10,34)を少なくとも1つ備えるレーザー(54)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された導電特性を有するレーザーダイオード及び対応するダイオードレーザーに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な実装では、ダイオードレーザーは、熱伝導性のキャリアにはんだ付けされる。したがって、エピタキシャル層(通常はpドープされた面)は、最適な冷却のために支持体上に直接はんだ付けされる。この構成では、p側全体が電気的に接触し、これにより共通電圧で動作する。例えば材料加工に代表される多くの分野では、より高性能な大型システムが必要とされる。かかる目的のために、ダイオードレーザーは、より大きな平面領域(アレイ)に配置され、いわゆるレーザーバーを形成する。全てのレーザーバーは共同で制御される。
【0003】
改善された電気光学特性、例えば改善されたビーム品質を実現するために、レーザーダイオードの個々のセクションが頻繁に個別に制御される。このような既知の構成要素は、例えば、台形レーザーダイオードである。
【0004】
図1は、従来の台形レーザーダイオード56の概略図を示す。基板58上には、n型クラッド層62、n型導波路層64、活性領域66を有する層、p型導波路層68、p型クラッド層70が設けられている。さらに、台形レーザーダイオード56は、pドープドコンタクト領域72及びnドープドコンタクト領域74を有する。pドープドコンタクト領域72は、リブ導波路領域76及び台形領域78を備える。台形レーザーダイオード56は、前方端面80及び後方端面により区切られる。
【0005】
例えば、「C. Fiebig et al. IEEE JSTQE 15 (3) pp.978‐983 (2009), K. Paschke et al. IEEE JSTQE 11 (5) pp. 1223‐1226 (2005) and B. Sumpf et al. Opt. Quant. Electron. 35, pp. 21‐532 (2003)」に示されるように、ビーム品質、達成可能な最大性能及びこれらの変換効率は、リブ導波路領域76及び台形領域78に流入する電流比並びにこれらの形状に依存する。
【0006】
リブ導波路領域76及び台形領域78にそれぞれ流入する電流比は、リブ導波路領域及び台形領域の個別の制御を介して個々に設計された台形レーザー上に設定される。しかしながら、これは、より大きなシステムにおける冷却及び性能のスケーリングの点と同様に、製造コストにおいて不利な点をもたらす。共通の制御を可能にするためにリブ導波路76及び台形領域78が短絡されていても、性能、効率、ビーム品質等の特性が劣化する。これに対抗するための既知の措置は、特に、台形領域の縮小と同時にリブ導波路領域の拡張することからなる。しかし、これらの措置は、未だ不利な点を補うに至っていない。
【0007】
従来のブロードストライプレーザーダイオード84を
図2に示す。同様の設計に基づいて、
図1の台形レーザーダイオード56の場合と同じ参照符号を付している。ブロードストライプレーザーダイオード84はまた、前方端面80及び後方端面82を備える。基板58には、n型クラッド層62、n型導波路層64、活性領域66を有する層、p型導波路層68、p型クラッド層70が設けられている。さらに、ブロードストライプレーザーダイオード84は、pドープドコンタクト領域72及びnドープドコンタクト領域74を備える。
【0008】
例えば、「H.Wenzeletal.NJPhysics12,p085007(2010)」に示されるように、ホールバーニング効果が発生すると、ブロードストライプレーザーダイオードに対して良くない影響を及ぼすことが知られている。これは、(レーザープロセスにあまり寄与しない)レーザーダイオードの空間領域の形成を指す。例えば、空間的ホールバーニングによるゲインの局所的な減少、又は所望の周波数の増幅の低下(スペクトルホールバーニング)が挙げられる。縦方向のホールバーニングの問題は、例えば、「Feng,Appl.Phys.Lett.,66,2028」に示されるように、個別接触により解決される。しかし、かかる手法は複雑であり、それゆえコストがかかる。別の欠点は、熱レンズの形成である。光学媒質中の不均一な温度分布(例:電流の流れにより引き起こされ、その結果局所的な自己発熱が生じる)は、追加の導波路を生成し、その結果、発散角の望ましくない増加をもたらす(P. Crump et al., Semicond., Sci. Technol., 27, 045001 (2012))。
【0009】
熱レンズの問題は、例えば「E. O'Neill, Proc IEE 147, p. 31 (2000)」に示されるように、外部加熱素子(外部レーザ放射)によって解決される。しかし、かかる手法は複雑であり、それゆえコストがかかる。
【0010】
従って、本発明の目的は、異なる領域が共同で制御される場合に上記に関連する欠点を持たない改良された設計の台形レーザーダイオードを提供することである。本発明の他の目的は、ホールバーニング効果の発生及び熱レンズの形成を回避する改良された設計を有するブロードストライプレーザーダイオードを提供することである。さらに他の目的は、より安定した発光スペクトルを有する改良された設計を有するブロードストライプレーザーダイオードを提供することである。
【発明の概要】
【0011】
これらの目的は、独立請求項1及び6の特徴によって達成される。本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項に記載の特徴から生じる。本発明の第1の態様によれば、
レーザーダイオードであって、
少なくとも1つの活性層、共振器、及びアウトカップリング要素と、
少なくとも1つのコンタクト層及び活性層と、を有し、
前記活性層は、前記共振器内に配置され且つ前記アウトカップリング要素に動作可能に接続され、
前記コンタクト層は、電荷キャリアを前記活性層に結合するように構成され、
前記共振器は、少なくとも第1セクション及び第2セクションを備え、
前記第1セクションにおける前記活性層の最大幅と、前記第2セクションにおける前記活性層の最大幅が異なり、
前記コンタクト層の射影は、第1セクション及び第2セクションの両方と重なり、前記コンタクト層は、活性層に垂直に延在する第1軸に沿っており、
前記第2セクションは、複数の離間した抵抗素子を備える、レーザーダイオードが提供される。
また、本発明によれば、
前記抵抗素子の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子間の領域における電気抵抗率よりも大きく構成され、
前記活性層の縦軸に沿った抵抗素子の幅が20μm未満であり、
前記活性層上の前記抵抗素子の射影が、前記活性層の少なくとも10%と重なるように構成され、
前記活性層は前記第1軸に沿っている。
【0012】
本発明の利点は、第2セクションにおける全体的な電気抵抗が、第1セクションを流れる電流の割合が大きくなる程度に増加することである。個別解釈によるディメンションを使用することにより、第1セクションの電流部分と第2セクションの電流部分との間の最適な比率を設定することができる。第1セクションと第2セクションが共通に接触しているにも関わらず、最適な電流分布が設定される。
好ましくは、第1セクションは抵抗素子を含まない。
好ましくは、第2セクションは、第2セクション(増幅器セクションとも呼ばれる)内の電流密度が、各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域にわたって縦方向に均一であるように設計されることが好ましい。これは、動作中における各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域の最大電流密度及び最小電流密度が、好ましくは20%未満、さらに好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満であることを意味する。同様に、第2セクションは、第2セクション内における電気抵抗率が、各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域にわたって縦方向に均一であるように設計されることが好ましい。これは、好ましくは、縦方向(縦軸(
図3の軸X1)に沿った方向)に関し、各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域にわたって、特定の電気抵抗率の最大値が、特定の電気抵抗率の最小値と異なることを意味する。具体的には、20%未満、さらに好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、さらに好ましくは2%未満、さらに好ましくは1%未満異なる。その結果、電流密度を第1セクション(シングルモードセクションとも呼ばれる)でのみ増加させることができる。
好ましくは、第2セクションの長さは、(=第1セクションと第2セクションの長さの和)の50%より大きく、さらに好ましくは60%より大きく、これにより、十分な補強が実現される。
好ましくは、装置は台形状の増幅部を1つだけ有する。
好ましくは、「(出口)端面(最大幅領域)の領域内における台形状の第2セクションの幅」に対する「(対向)端面(最大幅)の領域内における第1セクションの幅」の比(商)の値が、10より大きく、さらに好ましくは25より大きく、さらに好ましくは30より大きく、さらに好ましくは50より大きく、さらに好ましくは75より大きく、さらに好ましくは100より大きい。これにより、特に高い増幅を達成することが可能になる。
好ましくは、デバイスは、半導体導波路層及び半導体クラッド層を含む。好ましくは、導波路層はヒ化アルミニウムガリウム(Al
xGa
(1‐x)Asmit0≦x≦1)を有する。好ましくは、クラッド層はヒ化アルミニウムガリウムを含む。
好ましくは、抵抗素子は、第2セクションの全領域にわたって(縦方向に)延在する。
すなわち、好ましくは、第2セクションの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%の第2の部分のほぼ全域に延在する。すなわち、好ましくは、少なくとも80%、さらに好ましくは、少なくとも90%、さらに好ましくは、少なくとも95%にわたって延在する。
【0013】
関連する設計パラメータの設定は、本発明の好ましい実施形態において特に重要である。このように、第1軸に沿った活性層上の抵抗素子への活性層の射影が重なる割合は、電流分布に影響を及ぼすのに有効なほど、十分に大きい。抵抗素子は、光損失又は電荷キャリア損失を最小限にするのに十分なほど狭くなければならない。
【0014】
好ましくは、第1軸に沿った活性層上の抵抗素子(活性層に垂直)への射影は、同一軸に沿った活性層の全射影面のうち、少なくとも20%、好ましくは、少なくとも30%、さらに好ましくは、少なくとも40%、さらに好ましくは、少なくとも50%重なる。また、好ましくは95%以下、特に好ましくは99%以下である。さらに、活性層の縦軸に沿った各抵抗素子の最大範囲は、15μm以下であることが好ましく、11μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることが特に好ましい。また、好ましくは1μm以上である。これは、かかる設計パラメータの設定により、改善された性能及び効率をもたらすことが分かったためである。
【0015】
抵抗素子は、好ましくは、使用されるエピタキシャル層構造の特定の電気抵抗率(以後、σ
cと称する。ここで、例えば、σ
c=1.0×10
‐3Ω・mとする)よりも著しく高い電気抵抗率を有する。好ましくは、抵抗素子の特定の電気抵抗率は、2σ
c(例:2.0×10
‐3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10σ
c(例:1.0×10
‐2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
2σ
c(例:1.0×10
‐1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
3σ
c(例:1.0×Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
4σ
c(例:1.0×10
1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
5σ
c(例:1.0×10
2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
6σ
c(例:1.0×10
3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
7σ
c(例:1.0×10
4Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
8σ
c(例:1.0×10
5Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
9σ
c(例:1.0×10
6Ω・m)より大きい。
【0016】
さらに好ましい実施形態では、第1セクションはリブ導波路領域として設計され、第2セクションは台形領域として設計される。これは、既知の台形レーザーの特性が、より高い性能及び改善されたビーム品質に関して使用され得るという利点を提供し、上記目的のために必要とされていた既知の台形レーザーの分散制御はもはや必要でなくなった。換言すると、リブ導波路領域(第1セクション)及び台形領域(第2セクション)は、電荷キャリアと結合又はアウトカップリングする共通の(1又は複数の)コンタクト層を有する。好ましくは、台形領域は、活性層の縦軸に対して軸対称且つ三角形に設計される。
【0017】
本発明の別の有利な実施形態では、抵抗素子は
、面平行な
少なくとも2つの表面
を備える。表面の法線ベクトルは、活性層の縦軸に平行に配向されている。これは、側方局所フィラメント化が減少するという利点を提供する。(縦方向にわたって)均一な層厚さを有する(好ましくは帯状の)抵抗素子が特に好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、各抵抗素子は
、面平行な
少なくとも2つの表面
を備える。かかる表面は、各抵抗素子の全長にわたって延在し、表面の法線ベクトルは、活性層の縦軸に平行に配向されている。これにより、フィラメント形成が有効に回避される。換言すると、かかる実施形態では、抵抗素子は各位置で一定の幅を有し、さらに、すべての抵抗素子は互いに平行に設けられる。これは、光損失及び電荷キャリア損失が最小限に抑えられるという利点も提供する。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、抵抗素子は互いに等距離に配置される。すなわち、抵抗素子は活性層の縦軸に沿って周期的に配置される。これは、第2セクションの電気的特性及び熱的特性を、各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域にわたって平均化し、活性層の縦軸(すなわち、縦方向)に沿って一定にし、ビーム品質を含むパフォーマンスの向上に寄与する。
【0020】
さらに好ましい実施形態では、抵抗素子の抵抗値に対する、隣接する抵抗素子間の領域における抵抗値の比の値が2より大きく、さらに好ましくは、10より大きく、さらに好ましくは、10
2より大きく、さらに好ましくは、10
3より大きく、さらに好ましくは、10
4より大きく、さらに好ましくは、10
5より大きく、さらに好ましくは、10
6より大きく、さらに好ましくは、10
7より大きく、さらに好ましくは、10
8より大きく、さらに好ましくは、10
9より大きい。
【0021】
さらに、本発明の少なくとも1つのレーザーダイオードを含むレーザーの提供も本発明の目的である。いくつかのレーザーダイオードを統合することにより、例えば材料処理に供されるシステムの全体的な性能を高めることができる。好ましい実施形態では、本発明による複数のレーザーダイオードは、システム全体の性能を高めるために、互いに組み合わせることができる。いわゆるアレイへの複数のレーザーダイオードの並列接続が特に好ましい。これにより、個々のレーザーダイオード又はボルトユニット内のレーザーダイオード(いわゆるレーザーバー)のコンタクト層を、共通の回路基板上に配置することができ、又は共同して制御することができる。さらに、複数のレーザーダイオード又はレーザーバーと、いわゆるスタックとの直列接続が好ましい。これは、水平面の制限に関し、設置スペースが縮小されるという利点をもたらす。また、他の観点では、レーザーダイオードの共通の制御は、ボルトユニットのレーザーダイオードの最下層及び最上層の各コンタクト層を接触させることにより実現される。これは、最大の性能密度と最小限の製造コストのためである。
【0022】
本発明のさらなる実施形態では、
レーザーダイオードであって、
共振器内に配置された少なくとも1つの活性層を備え、
前記活性層は、第1端面及び第2端面に動作可能に接続され、
前記第2端面は、アウトカップリング要素として設計され、
前記活性層に電荷キャリアに結合するように構成された少なくとも1つのコンタクト層(44)と、複数の離間した抵抗素子をさらに備え、前記複数の離間した抵抗素子は、前記第1端面と前記第2端面の間に配置され、
前記抵抗素子の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子間の領域における電気抵抗率よりも大きく構成される、レーザーダイオードが提供される。
また、本発明によれば、
前記活性層の縦軸に沿った抵抗素子の最大拡張幅は20μm以下であり、
前記抵抗素子の全表面は、前記抵抗素子の全表面以上の面積を有し、
前記抵抗素子は、前記共振器の半分に設けられ、
前記共振器の半分は、前記第1端面に対向し、
前記抵抗素子は、前記共振器の半分に設けられ、
前記共振器の半分は、前記第2端面に対向する。
【0023】
これにより、レーザーダイオード全体に電気エネルギーを供給するためのコンタクト層が単純な電気的接触である場合、レーザーダイオード内の電流分布が選択的に調整可能となる。
好ましい実施形態では、レーザーダイオードは、電荷キャリアを活性層の内外に結合させるためのコンタクト層を2つ有する。
【0024】
抵抗素子は、好ましくは、使用されるエピタキシャル層構造の特定の電気抵抗率(以後、σ
cと称する。ここで、例えば、σ
c=1.0×10
‐3Ω・mとする)よりも著しく高い電気抵抗率を有する。好ましくは、抵抗素子の特定の電気抵抗率は、2σ
c(例:2.0×10
‐3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10σ
c(例:1.0×10
‐2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
2σ
c(例:1.0×10
‐1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
3σ
c(例:1.0×Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
4σ
c(例:1.0×10
1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
5σ
c(例:1.0×10
2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
6σ
c(例:1.0×10
3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
7σ
c(例:1.0×10
4Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
8σ
c(例:1.0×10
5Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
9σ
c(例:1.0×10
6Ω・m)より大きい。
【0025】
ファセットは、共振器を制限する要素として、好ましくは平面を有する。共振器の半分は、(好ましくは)平面又は端面に平行に配向された分割平面によって画定される。換言すると、共振器の半分は、活性層の縦軸によって通常の交差がなされる。また、共振器の半分は、第1端面の平面から第2端面の平面までの途中に位置する。ここで、第2端面は、活性層の縦軸に沿った共振器の第2端面である。
【0026】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項に記載の特徴から生じる。
好ましい実施形態では、第2端面に対向する共振器の半分に設けられた抵抗素子の全表面は、第1端面に対向する共振器の半分に設けられた抵抗素子の全表面の90%、すなわち0.9倍である。第2のファセットに面する共振器の半分における抵抗素子の全表面は、第1のファセットに面する共振器の半分における抵抗素子の全表面の90%、すなわち0.9倍である。さらに好ましくは、かかる割合は、80%(又は0.8倍)、さらに好ましくは70%、さらに好ましくは66%、さらに好ましくは60%、さらに好ましくは50%、さらに好ましくは40%、さらに好ましくは30%、さらに好ましくは20%、さらに好ましくは10%である。
最後に、変形例は、抵抗素子が第1端面に対向する共振器の半分にのみ配置される態様を表す。これにより、第2端面に対向する共振器の半分に設けられた抵抗素子の全表面は、第1端面に対向する共振器の半分に設けられた抵抗素子の全表面の0%となる。これらの実施形態により、アウトカップリングファセットとして設計された第2端面の領域に対して調節可能な追加電流を供給し、それにより、ホールバーニング効果を打ち消すことができる。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、抵抗素子は、活性層の部分領域にわたってのみ、活性層の横軸に沿って延在する。活性層は同じ軸に沿って延在し、したがって抵抗素子よりも長い距離にわたって延在する。好ましくは、抵抗素子は、この横軸に対して軸対称又は点対称に延在する。このように、抵抗素子の存在しない領域が活性層のエッジに形成される。これにより、レーザーダイオードのエッジに追加の電流が供給され、これにより、電流に起因する熱レンズの形成を打ち消すことができる。
【0028】
好ましくは、「抵抗素子の拡張幅」に対する「活性層の縦軸に横向きな活性層の全幅」の比の値は、1〜0.1である。さらに好ましくは0.9〜0.5、さらに好ましくは0.8〜0.6である。本発明のさらなる有利な実施形態では
、面平行な
少なくとも2つの表面
を備える。表面の法線ベクトルは、活性層の縦軸に平行に配向されている。これにより、フィラメント化を低減することができる。特に好ましくは、抵抗素子は、(縦方向にわたって)均一な層厚さを有する帯形状である。
【0029】
好ましい実施形態では、各抵抗素子は
、面平行な
少なくとも2つの表面
を備える。かかる表面は、各抵抗素子の全長にわたって延在し、表面の法線ベクトルは、活性層の縦軸に平行に配向されている。これにより、フィラメント形成が有効に回避される。換言すると、かかる実施形態では、抵抗素子は各位置で一定の幅を有し、さらに、すべての抵抗素子は互いに平行に設けられる。これは、光損失及び電荷キャリア損失が最小限に抑えられるという利点も提供する。
【0030】
さらに好ましい実施形態では、抵抗素子は互いに等距離に配置される。すなわち、抵抗素子を備えた領域において、抵抗素子は活性層の縦軸に沿って周期的に配置される。これは、活性層の縦軸に沿った電気的及び熱的特性は、各抵抗素子及び2つの抵抗素子の間の各領域にわたって平均して一定となることに寄与する。これにより、パフォーマンス及びビーム品質が向上する。
【0031】
抵抗素子は、好ましくは、使用されるエピタキシャル層構造の特定の電気抵抗率(以後、σ
cと称する。ここで、例えば、σ
c=1.0×10
‐3Ω・mとする)よりも著しく高い電気抵抗率を有する。好ましくは、抵抗素子の特定の電気抵抗率は、2σ
c(例:2.0×10
‐3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10σ
c(例:1.0×10
‐2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
2σ
c(例:1.0×10
‐1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
3σ
c(例:1.0×Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
4σ
c(例:1.0×10
1Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
5σ
c(例:1.0×10
2Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
6σ
c(例:1.0×10
3Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
7σ
c(例:1.0×10
4Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
8σ
c(例:1.0×10
5Ω・m)より大きく、さらに好ましくは、10
9σ
c(例:1.0×10
6Ω・m)より大きい。
Λλ
0
【0032】
別の有利な実施形態では、レーザーダイオードは、単一のブロードストライプレーザーダイオードである。これは、既知の柔軟で安価に使用可能なレーザーダイオードの設計に基づいており、同時に性能及びビーム品質が向上又は改善される。さらに有利な実施形態では、抵抗素子が周期的に割り当てられる。かかる周期は、ブラッグの法則に対応する周期「Λ」である。これにより、波長が安定する。波長λ
0でダイオードレーザーを安定化させるのに必要な周期は、以下の式により計算できる。
【数1】
ここで、Nは格子配置を指し、n
effは考慮される光学モードの実効屈折率を指す。
【0033】
さらに、本発明の少なくとも1つのレーザーダイオードを含むレーザーの提供も本発明の目的である。いくつかのレーザーダイオードを統合することにより、例えば材料処理に供されるシステムの全体的な性能を高めることができる。好ましい実施形態では、本発明による複数のレーザーダイオードは、システム全体の性能を高めるために、互いに組み合わせることができる。好ましくは、いわゆるアレイ(又はレーザーバー)へ複数のレーザーダイオードが並列接続される。これにより、個々のレーザーダイオードのコンタクト層を、共通の回路基板上に配置することができ、又は共同して制御することができる。さらに、複数のレーザーダイオードの直列接続が、いわゆるスタック(又はボルトユニット)の形成に好ましい。これは、水平面の制限に関し、設置スペースが縮小されるという利点をもたらす。また、他の観点では、レーザーダイオードの共通の制御は、ボルトユニットのレーザーダイオードの最下層及び最上層の各コンタクト層を接触させることにより実現される。
【0034】
本発明の様々な態様において言及された特徴の有利な組み合わせにより、さらなる他の実施形態が得られる。かかる組み合わせは、他の特徴をいかなる順序で組み合わせてもよい。さらに、固体に基づく他の既知のレーザーダイオードレーザシステムへの有利な適用が可能である。さらに、固体に基づく他の既知のレーザーダイオード及びレーザーシステムへの有利な適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、以下の2つの例示的な実施形態及び添付の図面において、より詳細に説明される。
【
図1】従来の台形レーザーダイオード示す模式的な斜視図である。
【
図2】従来のブロードストライプレーザーを表す模式的な斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態のレーザーダイオードを表す模式的な斜視図である。
【
図4】本発明のさらに好ましいレーザーダイオードの例示的な実施形態を表す模式的な斜視図である。
【
図5】本発明のレーザーダイオードに用いられる抵抗素子の幅W3と最大レーザー性能Pの関係を表す例示的なグラフである。
【
図6】本発明のレーザーダイオード(重なり:50%)と、従来技術のレーザーダイオード(重なり:0%)の総電流Iと最大レーザー性能Pの関係を表す例示的なグラフである。
【
図7】抵抗素子のさらなる好ましい実施形態の概略図である。
【
図8】従来のブロードストライプレーザーダイオードの縦断面における光増幅Gの典型的な曲線である。
【
図9】従来のブロードストライプレーザーダイオードの横断面における温度Tの例示的な曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図3は、本発明の第1実施形態に係るレーザーダイオード10を示す。参照符号は、それらが同一の特徴に関連する場合、
図1で説明した従来技術のものと同一の符号を付している。レーザーダイオード10は、共振器14内に配置され且つアウトカップリング要素16に動作可能に接続された活性層12を有する。さらに、レーザーダイオード10は、電荷キャリアを活性層12に結合するための第1コンタクト層18と、電荷キャリアを活性層12から結合解除(以下、アウトカップリング)させるためのコンタクト層32を含む。さらに、レーザーダイオード10は、基板58と、n型クラッド層62と、n型導波路層64と、p型導波路層68と、p型クラッド層70を備える。それぞれの層の厚さ及び材料を表1に示す。
【表1】
【0037】
共振器14は、第1セクション20と第2セクション22とを備える。第1セクション20は、リブ導波路領域28を備え、第2セクション22は、台形領域30を備える。第1セクション20内の活性層12の最大幅W1(4μm)は、第2セクション22内の活性層12の最大幅W2(426μm)よりも小さい。第1セクション20内の活性層12の幅は一定であり、第2セクション22に向かうにつれ、最大幅W2まで均一に拡張する。第1セクション20の長さは2mmであり、第2セクション22の長さは4mmである。コンタクト層18の射影は、第1セクション20と第2セクション22の両方と重なっている。ここで、コンタクト層18は、活性層12に対して垂直に伸びる第1軸Z1に沿っている。第2セクション22は、複数の離間した抵抗素子24を備える。抵抗素子24は、
イオン注入されて
構成されたものであり、電気抵抗率は1×10
‐1Ω・mである。そして、抵抗素子24の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子24間の領域26における電気抵抗率よりも約100倍大きく構成される。Al
xGa
1‐xAsベースの例示的なダイオードレーザーの層構造が用いられる場合、全体の電気抵抗率は、例示的なブロードストライプレーザーダイオード84において、20Ω・mのときに共振器の長さが3mm、ストリップ幅が90μm、エピタキシャル層の厚さが5μmである。特定の電気抵抗率σ
Cは、約1.0×10
‐3Ω・mである。したがって、例えば、高ドープAl
0.85Ga
0.15As層の比抵抗(約4.2×10
‐4Ω・m)よりも幾分大きい。
【0038】
抵抗素子24は帯状である。換言すると、各抵抗素子24は
、面平行な
2つの表面
を備える。かかる表面は、各抵抗素子24の全長にわたって延在し、表面の法線ベクトルは、共振器14の縦軸X1に平行に配向されている。つまり、抵抗素子24は、互いに平行且つ共振器14に平行となるように設けられる。活性層12の縦軸X1に沿う抵抗素子24の幅W3は、各抵抗素子24の位置において5μmである。従って、その長さ方向又は横軸Y1に沿った抵抗素子24の幅は一定である。抵抗素子24は、周期的又は等間隔に配列されている。周期長は10μmである。第1軸Z1に沿った活性層12上への抵抗素子24の射影は、活性層と50%重なる。さらに、レーザーダイオード10は、1.2〜1.6ボルトの範囲、好ましくは1.4ボルト〜1.6ボルトの範囲の直流電圧で動作するように設計されている。
【0039】
図4は、本発明によるレーザーダイオード34のさらに好ましい例示的な実施形態を示す。これは、単一のブロードストライプレーザーダイオードである。なお、図中において、
図2に示される先行技術又は
図3に示される本発明のレーザーダイオード10と同一の特徴については、同じ符号を付している。様々な層60が基板58に設けられる。これらは、n型クラッド層62、n型導波路層64、p型導波路層68、p型クラッド層70を備える。この実施形態では、レーザーダイオード34は、共振器38内に配置された少なくとも1つの活性層36をさらに備え、第1端面40及び第2端面42に動作可能に接続される。第2端面42は、アウトカップリング要素として設計される。レーザーダイオード34は、コンタクト層44及びコンタクト層32をさらに備える。コンタクト層44は、p型コンタクト領域72として機能し、電流を活性層36に供給するように設計される。コンタクト層32は、n型コンタクト領域74として機能し、活性層36から電流を流出させるように設計される。それぞれの層の厚さ及び材料を表2に示す。
【表2】
【0040】
第1端面40と第2端面42の間には、複数の離間した抵抗素子46が周期的(周期長10μm)又は等間隔に配置される。ここで、抵抗素子46の特定の電気抵抗率は、隣接する抵抗素子46間の領域48の電気抵抗率より100倍大きい。抵抗素子46の特定の電気抵抗率は、1×10
‐1Ωm未満である。各抵抗素子46は
、面平行な
2つの表面
を備える。かかる表面は、各抵抗素子46の全長にわたって延在し、表面の法線ベクトルは、活性層36又は共振器38の縦軸X2に平行に配向されている。つまり、抵抗素子46は、互いに平行且つ共振器38に平行となるように設けられる。活性層32の縦軸X2に沿う抵抗素子46の拡張幅W3は、各抵抗素子24の位置において5μmである。従っ
て、かかる幅は一定である。抵抗素子46の長さLは60μmである。
【0041】
第2端面42に対向する共振器38の半分52に設けられた抵抗素子46の全表面は、第1端面40に対向する共振器38の半分50に設けられた抵抗素子46の全表面の約66%である。
【0042】
共振器38の半分50,52は、縦軸X2に沿って延在する。共振器38の全長にわたる活性層36の幅Wは一定であり、90μmである。抵抗素子46が設けられた領域では、抵抗素子46は互いに一定の距離を空けて設けられる。抵抗素子46は、縦軸X2から横軸Y2に沿って、縦軸X2に対して軸対称に延在する。各抵抗素子46の長さLは、横軸Y2に沿った活性層36の幅Wの65%である。したがって、各エッジ85は、抵抗素子46の存在しない領域を有する。かかる領域は、Y2に沿った範囲であり、活性層36の幅Wの35%に相当する。活性層36の幅Wに対する抵抗素子46の長さLの比の値は、0.7である。ここで、幅W及び長さLは、活性層の縦軸に平垂直である。さらに、レーザーダイオード34は、1.2〜1.6ボルトの範囲、好ましくは1.4ボルト〜1.6ボルトの範囲の直流電圧で動作するように設計されている。
【0043】
図5及び
図6は、本発明によるレーザーダイオードの最適設計パラメータを決定するために実行された測定の例示的な評価を示す。なお、図中において、
図3と同じ参照符号を付している。かかる測定では、台形領域30に抵抗素子24を備える台形レーザーを設けた。抵抗素24は、5μm〜15μmの異なる幅で作成した。第1軸Z1に沿った活性層12上への抵抗体24の投影は、活性層12との重なりが0%、30%及び50%で行った。
【0044】
本発明によるレーザーダイオード10における抵抗素子24の幅W3と最大レーザー性能Pの関係の例示的なグラフは、一定の重複Uに関して
図5に示される。ここで、重なりUは、軸Z1に沿った活性層12上への抵抗素子24の投影の重複である。また、抵抗素子24は、活性層12,36に垂直に延在し、活性層12の全表面が同じ軸Z1に沿って投影されている。この図は、一定電流Iで動作させた本発明によるレーザーダイオード10に基づいている。この場合、リブ導波路領域28と台形領域30を電気的に接触させた。かかる測定は、本発明のレーザーダイオード10を3つ用いて行われた。具体的には、レーザーダイオード10は、重なりUが50%で一定とし、抵抗体24の幅W3を5μm〜15μmまで変化させた。ここで、重なりが0%であるものは、従来の台形レーザーダイオードに相当し、比較対象として記載している。測定の結果、最大レーザー性能Pが従来技術の基準値を上回るような、抵抗素子24の幅W3の設計のための好ましいウィンドウ86を得た。抵抗体24の幅W3の好ましい範囲は、1μm〜9μm、さらに好ましくは3μm〜7μm、さらに好ましくは4μm〜6μmである。
【0045】
本発明によるレーザーダイオードの抵抗素子24の一定の幅W3における、重なりU対する最大レーザー性能Pの依存性の例示的なグラフが
図6に示される。ここで、重なりUは、軸Z1に沿った活性層12上への抵抗素子24の投影の重複である。また、抵抗素子24は、活性層12に垂直に延在し、活性層12の全表面が同じ軸Z1に沿って投影されている。かかる測定は、レーザーダイオード10を2つ用いて行われた。抵抗素子24の幅W3は5μmで一定であり、2つのレーザーダイオードの特性曲線を記録するために、台形(30)とリブ導波路領域(28)に供給する総電流Iを変化させた。
図6では、重なりUが0%のレーザーダイオード10(従来技術に相当)及び重なりUが50%のレーザーダイオード10の特性曲線が示されている。
図6に示されるように、重なりUが増加すると、最大性能Pも増加することが分かる。かかる測定結果より、重なりUは、10%より大きい、好ましくは30%より大きい、さらに好ましくは50%より大きい範囲において好ましいことが判明した。好ましくは95%以下、さらに好ましくは99%以下の重なりUまで有利な結果が得られた。
【0046】
図7は、抵抗24,46のさらなる好ましい実施形態の概略図を示す。構成要素及び参照符号は、
図4に準ずる。しかし、抵抗素子24,46の異なる形状は、本発明の全ての態様によるレーザーダイオードに適用可能である。
【0047】
図8は、X軸(
図2を参照)に沿った従来のブロードストライプレーザーダイオード84の縦断面における光増幅又はゲインGの例示的な曲線を示す。セクション平面はX‐Z平面内にあり、ブロードストライプレーザーダイオード84と中心で交差する。本発明によるレーザーダイオード34のさらに好ましい実施形態の設計ルールは、位置Xにおけるゲイン曲線から導き出すことができる。ここで、Xゼロ点(位置Xの原点)は、アウトカップリングファセット80平面内にある。
図8から明らかなように、領域Bでは光増幅又は利得Gが領域Aよりも著しく小さい。ここで、領域Bは、その大部分が前方端面80に対向している。また、領域Aは、その大部分が後方端面82に対向している。この例示的なケースでは、より小さいゲインGを有する領域Bは、共振器の全長の約63%、すなわち、前端面80から後端面82までの長さの約63%にわたって延在している。したがって、ゲインGの差を補償するために、領域Bにおける電流の流れの増加と、領域Aにおける電流の減少を実現することが目的となる。ここで、この典型的な場合には、領域Aは、後面82から前面80までの長さの約37%にわたって延在する。したがって、抵抗素子46は、領域Aに設けられることになる。この設計ルールは、例えば、電流の流れが低減されるべき領域に抵抗素子46を設けることにより、光増幅の任意の特性曲線に適用することができる。対応する設計手段は、抵抗素子が設けられていない領域を通る電流の流れの増加を効果的にもたらし、それにより、縦方向のホールバーニングに対して有利に作用する。抵抗素子46が設けられる領域Aの好ましい大きさは、後端面82から前端面80までの距離の10%より大きく、さらに好ましくは30%より大きく、さらに好ましくは50%より大きく、特に好ましくは60%より大きいものであることが判明した。これは、既知のブロードストライプレーザーダイオード84の典型的なゲイン分布に相当する。
【0048】
図9は、従来のブロードストライプレーザーダイオード84のY軸(
図2参照)に沿った横断面における温度Tの例示的な曲線を示す。セクション平面はY‐Z平面内にあり、ブロードストライプレーザーダイオードと中央で交差する。本発明によるレーザーダイオード34のさらに好ましい実施形態の設計ルールは、位置Yにおけるゲイン曲線から導き出すことができる。ここで、Yゼロ点(位置Yの原点)は、ブロードストライプレーザーダイオード84の中央に位置する。
図9に示す位置Yの0mmは、中方向においてレーザーダイオードの中心点に対応する。
図9から、この位置(位置Yの0mm)及び中心領域Cの温度Tが、他の領域の温度Tよりも高いことがわかる。さらに、
図9は、コンタクト領域72のエッジA1,A2の温度Tが、中央領域Cの温度Tよりも低いことを示している。この例示的なケースでは、領域Cは、コンタクト領域72の幅Wの約66%にわたって、Y方向に延在する。エッジA1,A2はそれぞれ、コンタクト領域72の幅Wの約17%の長さにわたって、Y方向に延在する。したがって、エッジA1,A2における電流の流れの増加と、領域Cにおける電流の減少を実現することが目的となる。したがって、抵抗素子46は、領域Cに設けられることになる。この設計ルールは、電流の流れが低減されるべき領域に抵抗素子46を設けることにより、温度の任意の特性曲線に適用することができる。対応する設計手段は、抵抗素子が埋め込まれていない領域を通る電流の流れの増加を効果的にもたらし、それにより、熱レンズの形成を効果的に妨げる。
【0049】
10:レーザーダイオード
12:活性層
14:共振器
16:アウトカップリング要素
18:コンタクト層
20:第1セクション
22:第2セクション
24:抵抗素子
26:領域
28:リブ導波路領域
30:台形領域
32:コンタクト層
34:レーザーダイオード
36:活性層
38:共振器
40:第1端面
42:第2端面
44:コンタクト層
46:抵抗素子
48:領域
50:半分
52:半分
54:レーザー
56:台形レーザーダイオード
58:基板
60:層
62:n型クラッド層
64:n型導波路層
66:活性領域
68:p型導波路層
70:p型クラッド層
72:pドープドコンタクト領域
74:nドープドコンタクト領域
76:リブ導波路領域
78:台形領域
80:前方端面
82:後方端面
84:ブロードストライプレーザーダイオード
85:エッジ
86:設計のウィンドウ
87:ローカルゲイン定数の理想的な均一縦分布
A:背面端面に対向する領域
A1:コンタクト領域のレフトエッジ
A2:コンタクト領域のライトエッジ
B:前方端面に対向する領域
C:コンタクト領域の中心領域
G:光増幅(ゲイン)
I:電流
L:長さ
P:レーザーの最大性能
T:温度
U:重なり
W:幅
W1:最大幅
W2:最大幅
W3:幅
X:縦軸(縦方向)
X1:縦軸(縦方向)
X2:縦軸(縦方向)
Y:横軸(横方向)
Y1:横軸(横方向)
Y2:横軸(横方向)
Z1:第1軸(垂直方向)
Z2:第1軸(垂直方向)
Z3:第1軸(垂直方向)
η:変換効率