(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2記載の倒立型揮散装置の揮散体は、下容器の中で空間的に余裕をもって配置されているために、揮散体の位置に自由度が生じ、下容器内の望ましい位置からずれる、例えば、
図11、12に示されるように、揮散体の一部が揮散用開口部からはみ出たり、ボトルと下容器との嵌合部に揮散体の一部が挟まる事態が生じる場合があった。揮散用開口部からはみ出た揮散体は、倒立型揮散装置に触れる使用者の手指やカーテン等を汚す原因ともなるし、ボトルと下容器との嵌合部に揮散体の一部が挟まると、液体製剤が揮散体に十分供給されず十分な揮散および拡散効果が得られない原因ともなり、その点で改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、倒立型揮散装置の揮散体を、底面及び該底面と略垂直に連なる壁面を形成するように下容器内に固定保持することにより、揮散体が下容器内の望ましい位置からずれることなく、正しい位置に配置することができ、望む安定した揮散および拡散効果が得られることを見出し、上記課題を解決する本発明の倒立型揮散装置を完成するに至った。
【0007】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.液体製剤を収容し、吸液芯を有したボトルと、
前記ボトルの下部に組み付けられた下容器と、
前記ボトルと前記下容器との間に、底面及び該底面と略垂直に連なる壁面を形成するように前記下容器内に固定保持された揮散体を備え、
前記揮散体は、前記液体製剤の供給を受けるために前記吸液芯の下端部面と面接
触し、かつ、その密度が0.19〜0.30g/cm3であることを特徴とする倒立型揮散装置。
2.前記下容器内に液溜り室を有し、前記揮散体は前記液溜り室の液体製剤を吸液する吸液部を有することを特徴とする
1.記載の倒立型揮散装置。
3.前記吸液部が、前記揮散体に一体成形または別体に成形され、前記液溜り室に向けて突出するように配置されていることを特徴とする
2.記載の倒立型揮散装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の倒立型揮散装置は、揮散体が下容器内に固定保持されているので、揮散体が下容器内の望ましい位置からずれることなく配置され、揮散体が倒立型揮散装置からはみ出す等の好ましくない事態を生じさせず、使用者やカーテン等の周囲のものを汚すこともない。
また、本発明の倒立型揮散装置は、揮散体が下容器内の正しい位置以外に動く空間的な余裕がないので、どの使用者がセッティングしても、揮散体は下容器の正しい位置に一律に配置することができる。
また、揮散体は揮散用開口部の内側に接触または接触する程度の近傍に位置するため、優れた揮散および拡散効果を発揮し、しかも、好適な揮散効率を長期間維持することができる。さらに、揮散体はコンパクトな形状でありながら十分な揮散面積を有するので、限られた空間においても十分な揮散および拡散効果を得ることができる。
下容器内の正しい位置に配置された揮散体は、液体製剤の供給を十分量受けることが可能となるので、望む安定した揮散および拡散効果が得られる。特に、揮散体の密度を特定の範囲のものとすることにより、使用時のボトルの吸液芯と揮散体との距離を一定に保つことが出来るので、安定した揮散および拡散効果をさらに向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の倒立型揮散装置について、好適な一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明に係る倒立型揮散装置の一実施形態を示す外観斜視図、
図2は、
図1に示した倒立型揮散装置の縦断面図、そして、
図3は
図1に示した倒立型揮散装置の揮散体の外観斜視図である。なお、
図1は、下記に説明するように、液溜り室23を有する場合の倒立型揮散装置を示す図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態である倒立型揮散装置10は、ボトル11と下容器12とを備えており、全体として略直方体状に形成されている。
【0014】
ボトル11は、倒立型揮散装置10の本体の略直方体状部分の上半部を形成しており、内部に液体製剤13が収容され、倒立状態で下容器12に組み付けられている。
ボトル11は、その壁面から液体が実質的に漏出することはない。ボトル11を形成する材料としては、液体製剤13が漏れないものであれば、プラスチック、紙、金属、セラミック、ガラス等の1種以上を用いることができる。また、ボトル11を形成する際には、上記材料と共に、色素、紫外線吸収剤(遮断材)を混ぜたり、模様を付したり、蓄光材、光散乱材、ラメ等を入れたりしてもよい。
【0015】
液体製剤13が含有する有効成分(芳香成分、消臭成分等を含む)としては、例えば、緑茶抽出エキス(例えば、カテキン、タンニン、ポリフェノール等)、グレープフルーツエキス、柿抽出エキス、シソ抽出エキス、マッシュルームエキス、竹抽出エキス、シャンピニオンエキス、納豆抽出エキス、除虫菊エキス等の植物抽出エキス(この他にも、例えば、ツバキ、バラ、キク、マツ、スギ、オオバコ等から得られるエキス)、ハッカオイル、ペパーミントオイル、ユーカリオイル、ティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ローズマリーオイル、ベルガモットオイル、ローズウッド、リツェアクベバ、マジョラムオイル、スペアミントオイル、カモミールオイル、オウシュウヨモギオイル、パインオイル、スターアニスオイル、α−ピネン、青葉アルコール、青葉アルデヒド、ゲラニオール、サビネン、リナロール、テルピネオール、ラズベリーケトン、クミンアルデヒド、ヒノキチオール、シトロネロール、シトロネラール、1,8−シネオール、ボルネオール、α−カジノール、L−メントール、チモール、シトラール、バニリン、ベンズアルデヒド、安息香酸、カンファー、リナリルアセテート、イグサ、ヒノキ、シトロネラ、レモン、レモングラス、オレンジ、グレープフルーツ等の植物精油、これらを含む消臭剤(例えば、商品名「スーパーピュリエール」(パナソニックエコソリューションズ化研社製)、商品名「フレッシュシライマツ」(白井松新薬社製)、商品名「スメラル」(環境科学開発社製)、商品名「パンシル」(リリース科学工業社製))、この他、合成香料、調合香料、メタクリル酸ラウリル、メチル化サイクロデキストリン、イオン系消臭剤、ミネラル系消臭剤等が挙げられる。
また、液体製剤13にはフィトンチッドを用いることもできる。このフィトンチッドとしては次の各種樹木の葉、花、根、材より得られるものが挙げられる。例えば、ネズコ、ヒノキ、ニオイヒバ、アスナロ、チャボヒバ、ハイビャクシン、サワラ、ヒノキアスナロ、ネズミサシ、カイヅカイブキ、オキナワハイネズ、エンピツジャクシン等のヒノキ科、トドマツ、エゾマツ、シラベ、ハイマツ、アカエゾマツ、トウヒ、モミ、ツガ、ストローブマツ、アオトウヒ、ヒマラヤスギ、カラマツ、ダイオウショウ、イヌカラマツ、アカマツ等のマツ科、イチョウ等のイチョウ科、イヌマキ等のイヌマキ科、スギ、コウヤマキ、コウヨウザン等のスギ科、カヤ、キャラボク、イチイ等のイチイ科、クスノキ、タブノキ、ヤブニッケイ、シロダモ、シロモジ等のクスノキ科、ノリウツギ等のユキノシタ科、ミヤマシキミ、サンショウ等のミカン科、シキミ等のシキミ科、アセビ等のツツジ科、クヌギ、シラカシ、スダジイ等のブナ科等が挙げられる。さらに、これらの葉油、材油である、4−テルピネオール、α−ピネン、リモネン、サビネン、γ−テルピネン、エレモール、α−テルピニルアセテート、cis−ツヨン、フェンコン、ボルニルアセテート、カンフェン、β−フェランドレン、ゲラニルアセテート、ゲルマクレンD、β−エレメン、(+)−カンファー、カリオフィレン、1,8−シネオール、α−テルピネオール、δ−カジネン、β−オイデスモール、α−ムロレン、クリプトメリオール、クリプトメリジオール、テルピネオール、δ−カジノール、T−ムウロロール、ツヨプセン、セドロール、ウィドロール、カルバクロール、ヒノキチオール、サフロール、リナロール、セドレン、フィロクダデン、α−カジネン、フェンケン、ボルネオール、ネズコン、β−ピネン、ミルセン、ツヤ酸メチルエステル、ツヤ酸、α−ツヤプリシン、ゲルマクレン等が挙げられる。
そして、上記有効成分は、所望の効果を得るために1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その具体的な効果としては、芳香、消臭、除菌、抗菌、防カビ、防腐、殺菌、殺虫、殺卵、産卵阻害、追い出し、精神安定、鎮痛、清涼、抗ヒスタミン作用、抗アレルギー症、抗耳鼻咽喉諸症、抗睡眠時無呼吸症候群、眠気覚まし、ダイエット等が挙げられ、有効成分は上記した効果を複数兼ね備えていることもある。その具体例として、ハッカオイル、ユーカリオイル、シトロネラオイル、ラベンダーオイル、カモミールオイル、グレープフルーツオイル、オウシュウヨモギオイル、パインオイル、ティーツリーオイル、スターアニスオイルの植物精油を組み合わせて、または全てを配合することもできる。
【0016】
液体製剤13中の有効成分の含有量は、液体製剤13の全重量に対して、一般的に0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%である。また、液体製剤13は溶剤を適量含有し、特に、液体製剤13の全重量に対してエタノール含有水溶液を20〜40重量%含有していることが好ましい。さらに、その他の添加剤として、硬化油、グリセリンまたはその誘導体、脂肪酸またはその誘導体、溶剤以外のアルコール、多価アルコールまたはこれらの誘導体、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等)、色素(例えば、タール色素、ベンガラ色素、天然色素等)、防腐剤(例えば、メチルパラベン、フェノキシエタノール、塩化ベンゼトニウム、有機窒素硫黄ハロゲン系化合物、PCMX、TBZ等)、消泡剤(例えば、シリコーン樹脂等)等を含有することもできる。これらその他の添加剤の液体製剤13中での含有量は、一般的に10重量%以下である。液体製剤13は、さらに、キレート剤、粘度調整剤、比重調整剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等を含有してもよい。液体製剤13は、上記各成分を、水、アルコール、有機溶媒等を用いて適宜調整することができる。さらに、液体製剤13は、必要に応じて、防虫成分、殺虫成分、忌避成分、殺菌成分(抗菌成分)等を含有してもよい。なお、液体製剤13中の有効成分の含有量は、本発明を達成できるものであれば任意であり、特に制限はされない。
(液体製剤13の処方例)
有効成分 0.1〜10重量%(好ましくは0.1〜5重量%)
界面活性剤 0.1〜20重量%(好ましくは0.5〜10重量%)
防腐剤 0〜1重量%(好ましくは0〜0.5重量%)
消泡剤 0〜1重量%(好ましくは0〜0.1重量%)
溶剤 適量(好ましくはエタノール20〜40%含有水溶液)
合計 100重量%
なお、上記の処方例中において、好ましいとして記載した範囲で調製されたものは、消防法における危険物適用除外の対象とすることができる。さらに、溶剤中のエタノール含量を減らすなどして、引火点を61℃以上とすることで海上輸送上の引火性液体危険物に該当しないものにもでき、保管上、輸送上においてメリットを得ることができる。
上記の各成分は、本明細書に記載のものから選択して用いられる。
【0017】
下容器12は、倒立型揮散装置10の本体の略直方体状部分の下半部を形成している。下容器12は、その側部の全周に複数の揮散用開口部15が形成されている。
【0018】
図2に示すように、ボトル11は、下端部寄りの外周部に、下容器12に形成された係止突起16に嵌め付けられる係合部17が形成されている。また、ボトル11の下端部には、開口部18が形成されており、この開口部18が、吸液芯19を装着した中栓20によって閉塞されている。また、ボトル11の上部は、外観装飾性を向上させるように花を模した形状が形成されている。
なお、ボトル11の下端部には、倒立型揮散装置10の使用前に吸液芯19を密封するために、
図2中に仮想線で示されるキャップ21が螺合される。中栓20には、例えば、金属、プラスチック等の各種の材質を用いることができる。金属を用いる場合はパッキン等を用いて、漏れを防ぐ必要がある。また、プラスチック製であれば、基本的にどのような樹脂であってもよく、経済性、使用性から考えて、ポリエチレンが好ましく、このポリエチレンは特に限定されるものではないが、直鎖状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレンの単体またはこれらの混合物であっても良い。また、混合割合は任意である。さらに、必要に応じて可塑剤が添加される。これは生産性を高めるためである。
【0019】
吸液芯19は液体製剤13を吸液する吸液部材である。吸液芯19を形成する材料としては、無機材料および有機材料のいずれでもよいが、好ましくは樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)、アクリル樹脂(以下、PAともいう。)、ポリプロピレン、ポリエチレンの1種あるいは2種以上を挙げることができる。特に、吸液芯19としては、気液の交換ができる特性を有するものがよい。ここで、気液の交換ができる特性を有する吸液芯とは、ボトル11内の液体製剤13が吸液芯内部に浸透してボトル11外部に排出されるとともに、ボトル11外部から空気等の気体が吸液芯内部に浸透してボトル11内部で吸液芯外部に排出される特性を有する吸液芯のことを意味する。気液の交換ができる特性を有する吸液芯は、多孔性材料であることが好ましく、例えば、PETまたはPAを用いた多孔性材料であることが好ましい。また、気液の交換ができる特性を有する吸液芯の空隙率、断面の大きさ等は、ボトル11内部の液体製剤13の量、液体製剤13の粘度等の諸条件により適宜設定することが好ましい。気液の交換ができる特性を有する吸液芯を吸液芯19として用いる場合は、その吸液芯19が通常空隙率20%以上を有することが好ましく、空隙率20〜80%がより好ましく、空隙率30〜80%を有することがさらに好ましい。なお、吸液芯19の芯径は、2〜15mmで、特に4〜12mmが好ましい。また、吸液芯19の長さは、10〜30mmで、特に10〜20mmが好ましい。
【0020】
下容器12には、吸液芯19に対向する位置に揮散体22が組み付けられており、揮散体固定保持部14が形成されている。また、下容器12は、揮散体22の下方に液溜り室23を有していてもよく、下容器12が液溜り室23を有する場合には、揮散体22は、吸液部26を有する。
揮散体22は、基部24と、4つの揮散部25と、吸液部26とを一体成形、即ち、同一材料で一体的に成形したものである。揮散体22は、ボトル11の下端部(即ち、吸液芯19)と基部24の上面が面接触するように、さらに、基部24と4つの揮散部25が略垂直を形成するように、即ち、底面(基部24)及び該底面と略垂直に連なる壁面(4つの拡散部25)を形成するように、下容器12内の揮散体固定保持部14により下容器12に固定保持され、吸液芯19を介してボトル11から液体製剤13の供給を受け、液体製剤13を4つの揮散部25から揮散させる。ここで略垂直とは、垂直方向から±10°以内の実質上90°と認められる角度を意味する。
4つの揮散部25は、四角形の板形状に形成されている基部24の4個の端縁から略垂直方向に、揮散用開口部15の内側に接触または接触する程度の近傍まで延長する。
揮散体固定保持部14は、揮散部25の外側の面と接して揮散体22を固定保持することも1つの態様であるが、2つの揮散部25がなす角に揮散体固定保持部14が組み込まれることにより揮散体22を固定保持する態様が好ましく、
図1は後者の態様を示す図である。
吸液部26は、基部24における2個の端縁に沿って、予め定められた幅寸法を有するように切られ、基部24の下面から液溜り室23に向けて突出するように折り曲げられている。吸液部26は、液溜り室23に収容された液体製剤13を揮散体22に戻す機能を有する。
【0021】
揮散体22としては、液体製剤13を保持でき、且つ液体製剤13の有効成分を揮散させることができるものであればいずれの材質のものでも使用でき、具体的には、樹脂、パルプ、不織布等といった有機材料、ガラス繊維、ガラス粉等といった無機材料等からなる多孔性材料を用いることができる。特に好ましい揮散体22の材料としては、パルプ、不織布等が挙げられる。また、揮散体22は、複数の材料からなっていてもよい。例えば、揮散体22は、パルプを主原料としバインダーで接着させたものであって、表面の強度および保形性の向上のために表裏面にティッシュ状のパルプ材、不織布等を張った構成とすることが好ましい。また、揮散体22に予め所定量の液体製剤13を保持させておくことで、使用開始時に開封と同時に、保持された液体製剤13の有効成分が揮散する効果を得られるようにしてもよい。揮散体22の厚みは、2〜12mmが好ましく、特に3〜10mmが好ましい。また、揮散体22には、緑茶粉や活性炭粉、コーヒー豆粉等の消臭機能や抗菌機能を有する成分を混合、付着させたものを使用してもよい。さらに、有効成分や添加剤を所望の担体に含有、保持させた受容体(可溶性や難溶性)を揮散体22に保持させ、供給された液体製剤13により受容体を徐々に溶解させるようにしてもよい。なお、揮散体22には、吸液能が大きな、親水性及び親油性の少なくとも一方を有するポリマー粉、ポリマー繊維等を使用してもよい。この場合、本発明を達成できる範囲で液溜り室23を最小化又は省略化することができる。
【0022】
ここで、使用前の倒立型揮散装置10は、吸液芯19を密封するキャップ21が揮散体22を押圧しているため、キャップ21の厚み分の凹みが揮散体22の基部24の上面部に生じる。しかしながら、使用時にこのキャップ21を取り外すことにより、押圧により生じた基部24の上面部の凹みが復元し、吸液芯19と基部24の上面部とが面接触して、揮散体22は吸液芯19を介して液体製剤13の供給を受けることになる。
ここで、上記特許文献1、2記載の倒立型揮散装置50の揮散体は、下容器内で空間的に余裕をもって配置されており、4つの揮散部65それぞれが揮散用開口部55に向ってつぼみが開くように広がる。すなわち、基部64と揮散部65との接続部が形成する角度が90°より大きな角度となることから、揮散体の自由度が高く、使用前のキャップ61により生じた基部64の上面の凹みは復元しやすくなっている。
一方、本発明に係る倒立型揮散装置10の揮散体22は、基部24と4つの揮散部25が略垂直を形成するように、下容器12内の揮散体固定保持部14により下容器12内に固定保持されているために、揮散体22の材質によっては基部24の上面の凹みが、上記特許文献1、2記載の倒立型揮散装置のものよりも、復元し難い場合がある。
そこで、揮散体22の密度を、0.19〜0.50g/cm
3の範囲のものとすることが好ましい。揮散体22の密度が0.19g/cm
3以上であれば、使用前に生じた基部24の上面部の凹みが使用時に復元し、吸液芯19と基部24の上面部とが十分に面接触して、揮散体22は吸液芯19を介して液体製剤13の供給を受けることが可能となる。また、揮散体22は、その密度が0.60g/cm
3以上であると、ボトル11と下容器12が嵌合せず、無理に嵌合させようとするとボトル11と下容器12が変形し組み付けることができなくなるので、その密度は0.50g/cm
3以下でなければならない。密度が0.19〜0.50g/cm
3の揮散体22は液体製剤13を十分に吸液することが可能となる。さらに、揮散体22の密度は、0.19〜0.30g/cm
3であることがより好ましい。
【0023】
本発明に係る倒立型揮散装置10は、液溜り室23を省略してもよいが、有している場合について以下に説明する。液溜り室23は有底であって、上部が開放されており、開放された上部に揮散体22が組み付けられている。液溜り室23は、揮散体22にボトル11からの液体製剤13が染み込み、揮散体22が飽和状態になってその液保持能力を超えたときに、その超えた分の量の液体製剤13を一旦収容する機能を有する。それ故、吸液部26の先端部は、液溜り室23に溜まった液体製剤13を全て無駄なく吸液するために、液溜り室23の底板27に当接するように配置されることが好ましい。
一方、液溜り室23は、その容積とほぼ同サイズの吸液部26に替えてもよい。この場合、液体製剤13を揮散体22に戻す吸液部を省略することができる。
【0024】
図3に示すように、揮散体22は、基部24の4個の端縁から略垂直上方に向けて突出した4つの揮散部25が4枚の四角形の板状に形成されている。揮散体22は、例えば四角形の板状材料に切り込みを入れるだけで、基部24と、4つの揮散部25と、吸液部26とが形成できる。そのため、吸液部26は、揮散体22を製造するときに同時に作製できるので、生産性の向上を図ることができる。また、吸液部26は、基部24と一体成形されているため、液溜り室23に収容されている液体製剤13を効率良く揮散体22に戻すことができる。
【0025】
このような倒立型揮散装置10では、ボトル11に蓄えられた液体製剤13が、吸液芯19に含浸され、次いで揮散体22に含浸されることにより、ボトル11から定量的に出液される。そして、揮散体22の4つの揮散部25から、揮散用開口部15を通じて、液体製剤13の有効成分を含んだ空気が外部に拡散される。そして、温度上昇により、ボトル11内上部のヘッドスペース内の気体が膨張すると、ボトル11内部の液体製剤13が吸液芯19を通じて揮散体22に過剰に供給されることがある。その際、揮散体22が飽和状態になってその液保持能力を超えると、その超えた分の量の液体製剤13が液溜り室23に一旦収容される。そして、液溜り室23に収容された液体製剤13は、毛細管現象によって吸液部26により揮散体22に戻される。従って、液溜り室23に収容された液体製剤13は、揮散体22に戻されるため、液溜り室23に溜まったままになることがない。それ故、倒立型揮散装置10によれば、液体製剤13が漏れ出すことが防止され、液体製剤13を無駄なく使い切ることができる。
【0026】
もちろん、液体製剤13が漏れないようにするために、揮散用開口部15を無くすようにしたり、或いは揮散用開口部15を極端に小さい開口面積にしたりすることも考えられるが、揮散用開口部15の開口面積は、揮散量に大きく影響を及ぼすため、例えば揮散用開口部15の開口面積を小さくした場合、揮散量が少なくなり、液体製剤が香料である場合には、香りの強度や香りの持続性が悪化して好ましくない。また、液体製剤13が漏れないようにするために、下容器12の液体製剤13が供給される部分の容積を大きくすることも考えられるが、そうすると、倒立型揮散装置10全体のデザインがアンバランスになり、意匠上好ましくなく見た目が悪くなるばかりか、容積の増大に伴って揮散体の体積も大きくする必要があり、価格面で不利となる。なお、揮散用開口部15には、その開口面積を調整する手段を設けるようにしてもよい。また、揮散用開口部15の具体的な開口面積は、10〜60cm
2がよく、15〜50cm
2がより好ましい。
【0027】
以上、説明したように、本発明に係る一実施形態である倒立型揮散装置10によれば、揮散体22が下容器12内に固定保持されているので、揮散体が下容器12内の望ましい位置からずれることなく配置され、揮散体22が倒立型揮散装置10からはみ出す等の好ましくない事態を生じさせず、使用者やカーテン等の周囲のものを汚すこともない。さらに、下容器12内の揮散体固定保持部14より、どの使用者がセッティングしても揮散体22は下容器12の正しい位置に一律に配置することができる。
また、揮散体22は揮散用開口部15の内側に接触または接触する程度の近傍に位置するため、優れた揮散および拡散効果を発揮し、しかも、好適な揮散効率を長期間維持することができる。さらに、揮散体22は、基部24と4つの揮散部25が略垂直を形成しコンパクトな形状でありながら十分な揮散面積を有するので、限られた空間においても十分な揮散および拡散効果を得ることができる。
下容器12内の正しい位置に配置された揮散体22は、液体製剤13の供給を十分量受けることが可能となるので、望む安定した揮散および拡散効果が得られる。特に、揮散体22の密度を0.19〜0.50g/cm
3とすることにより、使用前に生じた基部24の上面部の凹みが使用時に復元し、吸液芯19と基部24の上面部とが十分に面接触して、揮散体22は吸液芯19を介して液体製剤13の供給を受け、揮散体22は液体製剤13を十分に吸液することが可能となる。
【0028】
さらに、本発明の倒立型揮散装置10は、使用する場所や使用する目的等に応じて、ボトル11や下容器12の形状を別の意匠性のある形状に変更することができる。その一例として、
図4、5には、倒立型揮散装置10の別の態様を示した。
本発明は、これら実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態等を組み合わせた形態とするなど、適宜、変形、改良等が可能である。例えば、吸液芯19の上端部にガス吸着剤(例えば、活性炭、ゼオライト等)が封入されたガス透過性容器を嵌着させてもよい。そうすれば、ボトル11内の内圧を調整することができる。このため、倒立型揮散装置10を陳列、保管する際に液漏れが生じることを防止することができる。また、ボトル11の上部または全体に外観装飾性を向上させる模様を設けてもよい。そうすれば、使用する場所や目的に応じた美観を向上させることができる。
また、揮散体22の吸液芯19と面接触する面を液拡散シートで覆ってもよい。そうすれば、液体製剤13が液拡散シートによって揮散体22に均一に拡散され、また、液体製剤13が短時間に広い面積に拡がるので香立ち速度を向上させることができる。
揮散体22の揮散部25は、基部24と略垂直を形成する形状であれば、意匠性を持った形状等に成形してもよい。また、吸液部26は、基部24、揮散部25のいずれから突出、形成されたものでもよく、必要に応じて複数設けてもよい。さらに、揮散体22の揮散部25に揮散孔を複数設けることで、揮散効率を向上させることができる。
【実施例】
【0029】
以下、試験例等により、本発明の倒立型揮散装置における揮散体について、さらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、実施例において、特に明記しない限り部は重量部を意味する。
【0030】
<揮散体の密度>
本発明の倒立型揮散装置における揮散体について、最適な密度の範囲を確認するため試験を行った。
(1)試験検体
下記含有量に基づき試験検体1、2を得た。
「試験検体1」
有効成分 1.2重量%
界面活性剤 2.0重量%
防腐剤 0.1重量%
溶剤 適量(エタノール含有水溶液)
合計 100重量%
「試験検体2」
有効成分 1.6重量%
界面活性剤 1.0重量%
防腐剤 0.1重量%
溶剤 適量(エタノール含有水溶液)
合計 100重量%
(2)試験方法1(復元性)
下記表1に示す密度が異なるポリエステル製もしくはパルプ製の揮散体を使用して、キャップ装着時に生じる凹みを人為的に付け試験揮散体としたものを複数個使用して試験を行った。また、試験検体として、試験検体1または2をそれぞれ使用した。
試験検体を充填したボトルと、試験揮散体を下容器内の所定の位置に固定保持し、ボトルと下容器を嵌合した。24時間後に試験揮散体が試験検体を吸液しているかを確認した。(試験揮散体の凹みが復元し吸液芯と試験揮散体が十分に面接触すると、ボトル内から試験揮散体が試験揮散体に送液される。)
試験結果は、試験を実施した複数個の試験揮散体全てが吸液している場合には○、1つでも吸液していない試験揮散体があった場合には×として表1に示す。なお、試験検体1または2の種類により復元性試験の結果に違いはなかった。
(3)試験方法2(吸液性)
試験揮散体として、大きさが「56mm×60mm×4mm」「56mm×60mm×8mm」であり、密度が下記表1に示すポリエステル製もしくはパルプ製のものをそれぞれ複数個使用して試験を行った。また、試験検体として、試験検体1または2をそれぞれ使用した。
試験揮散体の「56mm×厚み(4mm、8mm)」からなる面を底面として、該底面から10mmを試験検体に浸漬し、24時間後に試験揮散体の天面が試験検体を吸液していることを確認した。
試験結果は、試験を実施した複数個の試験揮散体全てが吸液している場合には○、1つでも吸液していない試験揮散体があった場合には×として表1に示す。なお、揮散体は、その厚みに関わらず同じ密度のものは同じ吸液性を示し、試験検体1または2の種類により吸液性試験の結果に違いはなかった。
【0031】
【表1】
【0032】
試験結果より、本発明の倒立型揮散装置の揮散体において、密度が0.19cm
3以上の揮散体を採用することにより、使用前にキャップにより生じた凹みも良好に復元し、液体製剤を良好に吸液することが確認できた。