(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842430
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置
(51)【国際特許分類】
F16L 3/00 20060101AFI20210308BHJP
F16L 3/12 20060101ALI20210308BHJP
F16L 3/13 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
F16L3/00 G
F16L3/12 Z
F16L3/13
【請求項の数】20
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-563012(P2017-563012)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-529891(P2018-529891A)
(43)【公表日】2018年10月11日
(86)【国際出願番号】EP2016073420
(87)【国際公開番号】WO2017055546
(87)【国際公開日】20170406
【審査請求日】2019年9月2日
(31)【優先権主張番号】102015116727.1
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508120916
【氏名又は名称】クロネス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シューベール,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス,ハーマン
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0084574(US,A1)
【文献】
仏国特許発明第1596785(FR,A)
【文献】
米国特許第01480085(US,A)
【文献】
実公昭46−014316(JP,Y1)
【文献】
特開平10−009226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
F16L 3/12
F16L 3/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料充填システムの構造体(4)に管路(100)を保持するための装置(1)において、前記装置(1)はクランプ(2)を備えており、前記クランプ(2)は、前記脚(20)の間に前記管路(100)をクランプ式に保持するための互いに相補的な形状の2本の脚(20)と、前記脚(20)を支持し、かつ前記クランプ(2)を前記飲料充填システムの前記構造体(4)に取り付けるために設けられたホルダ(24)と、を有し、
前記脚(20)および前記ホルダ(24)が、丸ワイヤから単一部品として折り曲げられており、
前記ホルダ(24)は、前記構造体(4)と前記管路(100)との間の距離を調整可能であることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記クランプ(2)が、前記脚(20)の間に前記管路(100)を挿入するための開口部(26)を有し、前記ホルダ(24)が、前記クランプ(2)の、前記開口部(26)と反対の方を向いている側に配設されることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記管路(100)が2本の前記脚(20)の間に収容されている状態において、前記クランプ(2)と前記管路(100)との接触点(102)は、平面視において、前記クランプ(2)の開口部(26)側に位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記管路(100)においてその長さに沿った勾配の確立を可能にするために、前記クランプ(2)の前記ホルダ(24)の寸法が、前記飲料充填システムの前記構造体(4)と前記管路(100)との間に、指定の距離が実現されうるようになっていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記クランプ(2)が接触点(102)で前記管路(100)に接触し、前記接触点(102)がその間に直線(110)を形成し、この直線(110)に平行な中心線(112)が前記管路(100)の管路軸(114)と交わり、前記接触点(102)のうちの一方と前記管路軸(114)を通る直線(116)と、前記中心線(112)とが角度(α)を形成し、前記角度(α)が10°〜20°の範囲内であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記角度(α)が17°であることを特徴とする、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記ホルダ(24)を前記飲料充填システムの前記構造体(4)にクランプ式に固定するためのクランピング装置(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記クランピング装置(5)が、前記クランプ(2)の前記ホルダ(24)の前記丸ワイヤからなる少なくとも2本の紐状部(22)のための溝(52)が付いたクランピング部品(50)を有することを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記クランピング部品(50)が、前記クランピング部品(50)を前記飲料充填システムの前記構造体(4)に固定するためのボルト(502)を有することを特徴とする、請求項8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記クランピング装置(5)がスペーサ(54)を有し、前記スペーサ(54)が、前記ホルダ(24)の前記丸ワイヤの紐状部(22)の間に挿入され、前記紐状部(22)の間に所定の間隔を設けられていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記スペーサ(54)が、EPDMから形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記スペーサ(54)が、クランピング部品(50)のボルト(502)を穿孔(542)内に収容することを特徴とする、請求項10または11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記クランピング装置(5)が、前記クランプ(2)の前記ホルダ(24)の前記丸ワイヤからなる少なくとも2本の紐状部(22)のための溝(560)が付いた保持部品(56)を有し、前記保持部品(56)が、前記飲料充填システムの前記構造体(4)に前記保持部品(56)を回転不能に収容するための回転防止装置(562)を有していることを特徴とする、請求項8または9に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記保持部品(56)が、クランピング部品(50)と協働し、前記クランプ(2)の前記ホルダ(24)の前記丸ワイヤからなる前記少なくとも2本の紐状部(22)が、前記クランピング部品(50)と前記保持部品(56)との間の溝(52、560)にクランプ固定されることを特徴とする、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
スペーサ(54)が前記紐状部(22)の間に収容されることを特徴とする、請求項14に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記ホルダ(24)は、前記クランプ(2)が前記クランピング装置(5)によって前記構造体(4)に完全には固定されていない状態において、前記構造体(4)に対して移動可能であるようになっていることを特徴とする、請求項7〜15のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記クランプ(2)が、脚(20)に少なくとも1つのロック受け(29)を有し、前記ロック受け(29)が、ロック要素(3)を収容するために設けられていることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記ロック受け(29)が、前記脚(20)と共に単一部品を形成する、前記丸ワイヤが折り曲げられたフックの形をしていることを特徴とする、請求項17に記載の装置(1)。
【請求項19】
ロック受け(29)が各脚(20)に設けられ、前記ロック要素(3)が2つのワイヤループ(30、32)を有し、前記ワイヤループ(30、32)がそれぞれ、前記ロック受け(29)の一方に引っ掛けることができ、前記ワイヤループ(30、32)が、ロックレバー(34)を介して互いに連結され、前記ロックレバー(34)が、第1のロック軸(340)を介して前記第1のワイヤループ(30)に旋回可能に連結され、第2のロック軸(342)を介して前記第2のワイヤループ(32)に旋回可能に連結され、2本の前記ロック軸(340、342)は一致していないことを特徴とする、請求項17または18に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記ロックレバー(34)は、ロック位置において、前記ロックレバー(34)の意図しない開放を防止する形で、前記ロックレバー(34)の先端が前記ワイヤループ(30)内に収容されるように折り曲げられていることを特徴とする、請求項19に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置に関し、詳細には、飲料充填システムにおいて充填媒体搬送路、作動媒体搬送路、および/または制御信号およびエネルギーの搬送路を保持するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
管路は、それを保持する構造体に、パイプクランプによって取り付けられることが知られている。こういったパイプクランプの設計は通常、管路がパイプクランプに挿入され、次に保持部品が装着されてから、その保持部品がパイプクランプにねじ止めされるようになっている。従来のパイプクランプでは、そのパイプクランプの2つの部品を接合するために、少なくとも2本のねじを締め付ける必要がある。各パイプクランプはまた、溶接されたねじ付きピンの形をしたホルダを有し、このホルダにより適用可能な支持構造体に固定されうる。
【0003】
従来のパイプクランプは、その複雑な設置に加えて、衛生に関連する欠点も有する。このような欠点は、飲料充填システムでは特に望ましくない。最大3本のむき出しのねじ、すなわち、クランプの2つの部品を連結するための2本のねじと、パイプクランプを支持構造体に固定するためのねじ付きピンが存在する。これにより、パイプクランプの清掃が困難になっている。
【0004】
さらに、従来のパイプクランプによると、それらが取り付けられている支持構造体とパイプクランプ自体との間に、アクセスできない領域が生じる。こういった領域は清掃がとにかく困難である。つまり、ねじ付きピンによって決まるパイプクランプと支持構造体との間の利用可能な空間は通常、非常に狭いため、満足な清掃が非常に複雑または実際には不可能である。パイプクランプがねじ付きピンを介して支持構造体に載置されている場合、その結果支持構造体自体にアクセスできない表面が生じる。この表面は清掃がとにかく困難である。
【0005】
さらに、パイプクランプの設置には時間がかかり、管の直径ごと、支持構造体に対するパイプクランプの位置ごとに、異なるパイプクランプを設ける必要がある。というのは、パイプクランプと支持構造体との間の距離に、ねじ付きピンも適合しなければならないからである。
【0006】
さらに、3箇所でねじを締め付ける必要があるため、例えば設置中の不正確さや公差のために引き起こされうる張力が、管路にかかりうる。
【0007】
かかるパイプクランプが、例えば特許文献1により知られている。
【0008】
特許文献2によると、ねじ式連結部を完全に省略可能な管路固定システムが知られており、管路を収容するための一体型プラスチック部品が設けられている。
【0009】
特許文献3によると、他のパイプ支持装置が知られている。この装置では、管路を挿入可能な金属プレートが設けられ、追加のロッククランプを提供することによってロックが実現されうる。この装置は、上記金属プレートを貫通するねじによって支持構造体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】ドイツ特許第2019109号
【特許文献2】ブラジル特許公開0705402−5号
【特許文献3】特開2014−119008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既知の現況技術を基にして、本発明の目的は、改善された衛生特性とともに簡素な設計を有する、飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する、飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置によって達成される。有利なさらなる発展形態が、従属請求項から明らかになる。
【0013】
したがって、飲料充填システムの構造体に管路を保持するための装置が提案され、この装置は、互いに相補的な形状の2本の脚を有する、上記脚の間に上記管路をクランプ式に保持するためのクランプと、上記脚を支持する、上記クランプを上記飲料充填システムの上記構造体に取り付けるために設けられたホルダと、を備える。本発明によると、上記脚および上記ホルダが、丸ワイヤから単一部品として折り曲げられている。
【0014】
脚とホルダが単一部品として丸ワイヤから折り曲げられているために、まず、上記装置の衛生上の特性が著しく改善されることが実現される。というのは、その装置が単一部品として設計され、丸ワイヤから形成されていることから、アンダーカット、接合部、溝、溶接部などの存在が、低減または排除されるからである。これにより、装置の清掃が容易になると同時に、流体が残留する水平表面が回避される。したがって、この装置により、著しい衛生改善の結果が得られうる。
【0015】
さらに、折り曲げられた丸ワイヤでできた脚とホルダを有するクランプの単一部品設計により、装置を特に効率的に製造し、したがって、費用対効果の高い形でクランプを提供することが可能になる。丸ワイヤには、衛生、弾性、耐温度性、耐食性および剛性に関するそれぞれの要件を満たす材料が選択されうる。したがって、クランプを柔軟に適合させることが可能になると同時に、そのことによってクランプの費用対効果の高い製造、したがって、費用対効果の高い提供が実現する。この場合、丸ワイヤとして従来の丸ワイヤを使用でき、その結果、複雑な半完成部品の製造なども省略できる。さらに、ワイヤを折り曲げる方法、特に丸ワイヤを特定の形状に折り曲げるための方法は周知であり、その結果、製造プロセス全体が単純化されうる。
【0016】
さらに、クランプの実装が、互いに相補的に折り曲げられた2本の脚が設けられ、その2本の脚の間に管路をクランプ式に保持できるように行われることから、適用可能な管路をクランプに押し込むだけで、その管路が直ちにクランプ式に保持されるため、設置が簡単になる。また上記の実装により、このクランプ装置は、管路を保持するためにねじを必要とせず、必要な作業ステップを低減できるため、特に従来使用されているパイプクランプと比較して、管路を保持するための装置の設置に必要なステップも減る。さらに、管路がクランプ式に保持されることにより、まず、管路を、互いに相補的になるように折り曲げられた2本の脚の間に保持でき、それから、クランプのホルダによって適切な高さで適用可能な支持構造体に固定できるため、設置中の管路の張力も回避される。
【0017】
ここで提案するクランプの設計により、さらに、クランプが設置されてからの、清掃がとにかく困難であるアクセスできない表面および空間の回避が実現されうる。
【0018】
上記クランプは、好ましくは、上記脚の間に上記管路を挿入するための開口部を有し、上記ホルダは、上記クランプの、上記開口部と反対の方を向いている側に配設される。この方策により、管路を、開口部からクランプに押し込むだけでよいため、簡単な設置の実現が可能になる。
【0019】
上記クランプの上記脚の寸法は、好ましくは、その2本の脚の間への管路の収容が、各脚と上記管路との接触点が上記管路の、上記開口部に面する側になるように行われうるようになっている。この方策により、摩擦だけでなく構造上の理由から、管路を脚の間にしっかりと保持可能なしっかりしたクランプを実現することが可能になる。
【0020】
ここで、保持力と挿入の容易さとの間に特に好ましい関係を実現するため、管路の中心軸と交わり、適当な一方の接触点を通る直線が、2つの接触点をつなぐ直線と平行な、管路の中心軸と交わる中心線と、一定の角度を形成する。この角度は10°〜20°の範囲にあり、特に好ましくは17°である。ホルダが直線状に設計されている場合、上記の中心線は、ホルダが延びる方向と垂直な、上記中心軸と交わる中心線と、一致する。
【0021】
上記クランプの上記ホルダの寸法は、好ましくは、上記クランプが固定されることになる上記飲料充填システムの上記構造体と上記管路との間に、指定の距離が実現されうるようになっている。この方策により、例えば、同じタイプのクランプを使用して、管路にその長さに沿って、勾配を簡単かつ確実に確立することが可能になる。これは、媒体を搬送する管路の場合に特に重要である。したがって、クランプのホルダは、管路に勾配を確立することを可能にしながら、管路が固定されるすべての位置で同じタイプのクランプを使用できるよう十分に長いと好ましい。
【0022】
好ましくは、ホルダを飲料充填システムの構造体にクランプ式に固定するためのクランピング装置が設けられる。こうして、クランプはホルダによって取り付けられ、上記のようにして飲料充填システムの構造体に保持されうる。
【0023】
この場合、クランピング装置は、クランプのホルダの丸ワイヤからなる少なくとも2本の紐状部のための溝が付いたクランピング部品を有すると有利である。特に好ましくは、クランピング部品は、様々な固定方式に柔軟に適合できるように、そのクランピング部品を飲料充填システムの構造体に固定するためのボルトを有する。
【0024】
上記クランピング装置は、好ましくはスペーサを有し、上記スペーサは、上記ホルダの上記丸ワイヤの紐状部の間に挿入され、上記紐状部の間に所定の間隔を設ける。上記スペーサは、好ましくはEPDMから形成され、特に好ましくは、上記クランピング部品のボルトを穿孔内に収容する。このスペーサにより、固定された状態にあるクランプの構造的完全性がさらに改善されうる。上記ボルトが収容されることから、ボルトの被覆が実現されうる。その結果、衛生特性がさらに改善される。上記スペーサはまた、汚染を防止するための充填要素としても機能する。
【0025】
好ましい一実施形態では、上記クランピング装置が、上記クランプの上記ホルダの上記丸ワイヤからなる少なくとも2本の紐状部のための溝が付いた保持部品を有する。上記保持部品はまた、上記飲料充填システムの上記構造体に上記保持部品を回転不能に収容するための回転防止装置を有し、上記保持部品は、特に好ましくは上記クランピング部品と協働し、上記クランプの上記ホルダの上記丸ワイヤからなる上記少なくとも2本の紐状部が、上記クランピング部品と上記保持部品との間の上記溝にクランプされ、特に好ましくは、それと同時にスペーサが上記紐状部の間に収容される。このように設計された保持部品によって、上記クランプは、飲料充填システムの構造体に、回転不能にしっかりと保持されうる。
【0026】
特に、クランピング装置を固定し、互いに平行に配置された2本の溝を設けることによって、クランプの2本の脚が弾性的に旋回されうる旋回点が、ホルダの2本の紐状部の下端にあるワイヤループの位置から、クランピング装置の位置へと、移動することが実現される。つまり、クランピング装置を固定することによって、脚の弾性変形を引き起こしうる梃子の腕の長さが短縮される。したがって、クランピング装置を固定することによっても、クランプに管路が固定される。
【0027】
この場合、ホルダの寸法は、好ましくは、クランプが、固定されていないクランピング装置に対して移動可能であるようになっている。これによって、高さまたは距離の調整を実現することが可能になり、その結果クランプの調整が単純化され、それによって管路とクランプの相対的な位置決めの調整が単純化される。
【0028】
ホルダを収容するためのクランピング装置が設けられることから、ホルダは、この後飲料充填システムの構造体に固定されるクランピング装置に対して、2本の脚の間にクランプ式に収容されている管路が張力を受けることなく保持されうるように、移動されうる。
【0029】
追加の有利なさらなる発展形態では、上記クランプが、脚に少なくとも1つのロック受けを有し、上記ロック受けが、ロック要素を収容するために設けられ、上記ロック受けが、好ましくは、上記脚と共に単一部品を形成する、上記丸ワイヤが折り曲げられたフックの形をしている。ロック受けを設けることにより、それに応じて、クランプ作用によってもたらされるロックに上乗せした、クランプのロックを実現することが可能になる。これにより、クランプにおける管路のよりいっそう確実なロックが得られる。
【0030】
他の好ましい実施形態では、クランプが、互いに相補的に折り曲げられた脚の各端に、それぞれ外側に折り曲げられた、ロック要素用の受け領域を有し、この2つの受け領域を連結するロック要素が設けられる。これにより、ロック要素が、脚の間に収容された管路を囲み、その結果、管路はクランプとロック要素とによって完全に取り囲まれ、装置内における管路のしっかりとした連結と、しっかりとした保持が実現される。
【0031】
好ましい一実施形態では、ロック受けが各脚に設けられ、上記ロック要素が2つのワイヤループを有し、上記ワイヤループはそれぞれ、上記ロック受けの一方に引っ掛けることができ、上記ワイヤループが、ロックレバーを介して互いに連結され、上記ロックレバーが、第1のロック軸を介して上記第1のワイヤループに旋回可能に連結され、第2のロック軸を介して上記第2のワイヤループに旋回可能に連結され、2本の上記ロック軸は一致していない。この方策により、ロック要素は、製造が簡単な、クランプの確実なロックに利用可能な形で提供されうる。
【0032】
上記ロックレバーは、有利には、ロック位置において、上記ロックレバーの意図しない開放を防止するために、上記ワイヤループの少なくとも一方によって覆い隠されるように折り曲げられている。これにより、設置状態では、ロックが確実に維持される。特に好ましくは、ロックレバーの設計とロックレバーをロック位置に保持する力が、ロック解除が工具によってのみ実現可能であるようなもの、少なくとも素手では実現できないようなものになっている。
【0033】
クランプは、好ましくは、中心軸に対して設計上完全に軸対称であり、この中心軸は、互いに相補的に折り曲げられた2本の脚の間における管路の挿入方向、すなわち管路がパチンと嵌まる方向と一致する。
【0034】
ホルダは、好ましくは、互いに平行な2本のワイヤレールを有し、これらのワイヤレールは、開口部と反対の方を向いている端部で、ループ状に終端する。その結果、丸ワイヤは、それ自体に対してほぼ平行に延びるように折り返される。ホルダの、この丸ワイヤからなる2本の紐状部が互いに平行に延びる領域で、クランピング装置を用いることにより、クランプが、クランピング装置に対してその長さを変えることが可能になる、飲料充填システムの構造体への取付ポイントを有することが実現しうる。このようにして、管路の張力がかからない設置が、第1のステップとして管路を挿入し、次いで、その管路が張力のかからない状態で保持されるまで、ホルダをクランピング装置に対して移動させることによって実現されうる。
【0035】
本発明の他の好ましい実施形態については、以下の図面の記述によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】ロック位置にあるロック要素が示されている、飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置の概略斜視図である。
【
図2】開放位置にあるロック要素が示されている、
図1の管路を保持するための装置の概略斜視図である。
【
図3】管路を保持するための複数のクランプが飲料充填システムの構造体に固定されている、飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置の概略平面図である。
【
図4】
図3に示されている管路を保持するための装置の断面図である。
【
図5】管路を保持するための装置のクランプをクランプ固定するためのクランピング装置の様々な構成部品の概略図である。
【
図6】管路を保持するための他の装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
好ましい実施形態の例を、各図を用いて以下に説明する。各図では、同一もしくは類似の要素、または同一の効果を有する要素は、同一の参照記号で示されている。冗長性を避けるために、こういった要素の繰り返しの説明は、以下の説明において部分的に省かれている。
【0038】
図1は、飲料充填システムにおいて、概略的に示されている管路100を保持するための装置1の概略斜視図である。
【0039】
装置1はクランプ2を備えており、このクランプ2に、概略的に示されている管路100がクランプ式に収容されている。クランプ2は、互いに相補的に折り曲げられた2本の脚20を有し、この脚20の間に管路100がクランプ式に収容され、その結果、クランプ作用自体によってクランプ2に管路100が保持される。これにより、管路は、2本の脚20の間にクランプ固定されるように、2本の脚20の間に形成された開口部26を通って挿入される。
【0040】
クランプ2の2本の脚20は、クランプ2のホルダ24に接続している。このクランプ2のホルダ24によって、以下に詳細に説明するように、クランプ2を飲料充填システムの構造体に固定することが可能になる。
【0041】
クランプ2は、概略
図1からすぐに分かるように、折り曲げることによって丸ワイヤから単一部品として形成される。各脚20は、ホルダ24の一方の紐状部22を形成するように延び、ホルダ24の2本の紐状部22は、互いに平行に形成されている。ホルダ24の2本の紐状部22はワイヤのループ28を介して互いに接続しており、ワイヤループ28はクランプ20の開口部26と向かい合っている。
【0042】
したがって、丸ワイヤは、一方の脚20からホルダ24の紐状部22を経由してループ28へと延び、ホルダ24の第2の紐状部22を経由して第1の脚20と相補的な脚20まで延びる。
【0043】
このようにして、丸ワイヤから折り曲げられたワイヤ部品の製造が、費用対効果の高い形で可能になる。丸ワイヤは、事例ごとに意図された用途に適している材料特性を有しうる。丸ワイヤは、例えば、適用可能なクランピング装置の弾性および剛性に関する要件を満たす材料から形成されうる。丸ワイヤの材料はさらに、材料の選択において衛生面も考慮できるように、所望の耐食性および表面特性を有しうる。
【0044】
すぐに分かることだが、クランプ2は特に衛生的な構造も有しうる。というのは、クランプ2が、折り曲げられた丸ワイヤの単一部品として設計されていることにより、汚れが蓄積する可能性のある接合部、溶接部、溝部、隆起部などを含まないからである。さらに、丸ワイヤを使用する設計によって、流体が残って衛生上の問題を引き起こしうる水平面の存在を回避することも可能である。
【0045】
クランプ2はまた、ロック要素3を収容するために設けられた2つのロック受け29を有する。ロック要素3は、クランプ2における管路100の完全に確実な収容を実現するために設けられており、その結果、管路100は、クランプ2のクランプ作用だけでなく、完全に囲まれることによって保持される。したがって、ロック要素3は、ロック受け29を介して脚20に更なる予張力を加えるように設計でき、これにより、高い荷重を受けても遊びが生じない管路100の収容が実現される。
【0046】
示されている例示的な実施形態では、各ロック受け29は、脚20と単一部品を形成する、丸ワイヤが折り曲げられたフックの形をしている。この方策により、ロック受け29もやはり、折り曲げられた単純なワイヤ部品として、クランプ2と単一部品に設計されうる。
【0047】
ロック要素3は2つのワイヤループ30、32を有し、これらのループはそれぞれ、そのループ部分がクランプ2のロック受け29の一方と係合し、それによってクランプ2に保持される。ロック要素3の2つのワイヤループ30、32は、ロックレバー34を介して互いに連結される。ロックレバー34は、第1のロック軸340によって第1のワイヤループ30と旋回可能に連結され、第2のロック軸342によって第2のワイヤループ32と旋回可能に連結される。この2本のロック軸340、342は一致しておらず、その結果、2本のロック軸340、342のうちの一方の周り、またはこれらのロック軸340、342の間にある軸の周りに、ロックレバー34が旋回動作することによって、2本のワイヤループ30、32は互いの相対位置を変えうる。2本のロック軸340、342の間の距離は、ロックレバー34の旋回の結果生じる移動が、ロック受け29におけるロック要素3の確実な予張力またはロックを実現するように選択される。したがって、ロックレバー34を旋回させることによって、ロック要素3が管路100にしっかりと押し付けられ、2つのロック受け29に互いに向かって予張力をかけることができ、その結果、2本の脚20における管路100の確実な取り付けが実現される。
【0048】
2本のロック軸340、342の位置、およびそれらの間の距離もやはり、ロックレバー34に閉鎖方向の閉鎖力が加わるように選択される。つまり、ロックレバー34は、それ自体がかける予張力によって、ロック位置に保持される。したがって、ロック要素3は自己ロック式であるように設計される。
【0049】
ロック要素3は、ロックされると、工具によってのみ開放される、すなわちロック解除できる。ロックレバー34は、少なくとも、素手では開放されないように設計されている。好ましい設計では、ロックレバー34にロック方向にかけられている力の強度もやはり、工具が無ければ開放されないようにするのに十分なものになっている。
【0050】
図2は、ロック要素3が開放され、ロックレバー34が解放位置に配置された状態にある、管路100を保持するための装置1を示している。これにより、ロック要素3の2つのワイヤループ30、32は、クランプ2のロック受け29に張力をかけることなく、その場所で緩く保持される。この状態を実現するために、2本のロック軸340、342が互いに向かって移動するようにロックレバー34が旋回されている。それに対応して2つのワイヤループ30、32が互いに引き離され、したがって
図1に示されているロックが解放される。これにより、ロック要素3はロック受け29から引き上げられ、管路100が取り外されうる。この状態で当然ながら、脚20の間に収容されている管路100をロックするために、ロック要素3をロック受け29に戻すこともできる。
【0051】
図1および
図2でさらに分かるのは、ホルダ24の領域において、2本の平行な紐状部22が設けられていることにより、参照符号Xで示されている領域内でホルダ24の固定が行われうるということである。つまり、ホルダ24のこの特定の設計により、クランプ2は、様々な位置で飲料充填システムの構造体に固定されうる。
【0052】
クランプ2の、ホルダ24の領域における飲料充填システムの構造体4への固定が、
図3に略図で示されている。飲料充填システムの構造体4は、支持スタンドの形で示されている。この支持スタンドは、いくつかの異なる寸法のクランプ2が取り付けられたパネル40を有している。パネル40は、好ましくは、流体が問題なく流れ出るように、上向きの水平表面を有さず、それによって容易な清掃と良好な衛生状態が可能になる。
【0053】
パネル40に取り付けられた様々なクランプ2はそれぞれ、その脚20の間にクランプ式に収容された管路100を保持する。つまり、ロック要素3は存在しない。代わりに、管路100は、クランプ作用と、クランプ2の固定による定位置固定のみによって保持される。
【0054】
クランプ2のホルダ24の寸法は、好ましくは、飲料充填システムの構造体すなわちパネル40と、管路100との間に、指定の距離を実現できるようになっている。この方策により、例えば、同じタイプのクランプを用いて簡単かつ確実に、管路100にその長さに沿って勾配を確立することが可能になる。これは、媒体を搬送する管路100の場合に特に重要である。したがって、クランプ2のホルダ24の長さは、好ましくは、管路100に勾配が確立されるのを可能にすると同時に、管路100が固定される全ての位置で同じタイプのクランプを使用できるようにするのに十分なものになっている。
【0055】
図3でさらに分かるのは、脚20と管路100との接触点102が、管路100の最大直径104の外側にあるということから、管路100のクランプ固定が行われるということである。つまり、管路100は、クランプ2の互いに対称的に形成された2本の脚20の間に、それらの脚20がある程度跳ね返るよう十分奥まで挿入され、それによってその間に管路100はしっかりとクランプ固定される。
【0056】
接触点102は、その間に直線110を形成する。この直線に平行な、中心線112が、管路100の管路軸114と交わる。中心線112は、管路軸114と接触点102を通る直線116との間に角度αを形成する。角度αは、好ましくは10°〜20°の範囲内にあり、特に好ましくは17°である。このようにして、クランプ2における管路100の高い保持力と挿入の容易さとの間に、特に好ましい関係が実現されうる。
【0057】
ホルダ24に関して、
図3の様々な例から容易に分かるのは、丸ワイヤからなる2本の平行な紐状部22によってホルダに形成される領域Xにより、高さの調整、すなわちパネル40で示されている飲料充填システムの構造体4に対する調整が可能になるということである。したがって、クランプ2の長さは、ホルダ24をクランピング装置5に対して移動させることによって簡単に調整されうる。これについて以下に説明する。
【0058】
クランプ2を飲料充填システムの構造体4にクランプ固定または保持するためのクランピング装置5の構造が、
図4および
図5に略図で示されている。
図5は、クランピング装置5の個々の構成部品を示している。
【0059】
したがって、クランピング装置5は、例えば、互いに平行に配設された2本の溝52を備えたクランピング部品50を有する。溝52は、ホルダ24の2本の紐状部22を収容するために設けられている。したがって、2本の溝52は、クランプ2に使用されている丸ワイヤの半径に対応する断面半径を有する。2本の案内溝52が平行に配置されているので、ホルダ24の2本の紐状部22は、2本の案内溝52に固定的に収容されると、互いに対して移動できない。その結果、2本の脚20の互いに対して可能となる弾性旋回の旋回軸が、ワイヤループ28から、クランピング部品50の位置すなわちクランピング装置5の位置に移動する。この方策により、可能となる弾性旋回の梃子全体が縮小され、その結果、2本の脚20の互いの弾性も小さくなり、それに対応して、クランピング装置5が取り付けられたときの管路100に対するクランプ効果が高まる。
【0060】
図5に、クランピング装置5の他の構成部品が、ホルダ24の2本の紐状部22の間に挿入されるスペーサ54の形で提供されている。したがって、スペーサ54もまた、2本の平行な溝52を有し、その断面半径はクランプ2の丸ワイヤの断面半径に対応する。スペーサ54はまた、穿孔542を有し、その穿孔にクランピング部品50のねじ付きボルト502が通されうる。
【0061】
クランピング装置5の構成部品として、保持部品56も提供される。これも、その面の一方に案内溝560を有し、その中にホルダ24の2本の紐状部22が挿入されうる。保持部品56の背面には、回転防止装置562が設けられ、それによって保持部品56を、パネル40上の細長い穴42に回転不能に保持でき、したがって飲料充填システムの構造体4に保持することが可能となる。
【0062】
したがって、例えば
図4に示されているように、クランプ2の丸ワイヤ、すなわちクランプ2のホルダ24の2本の紐状部22はそれぞれ、溝52、560に収容された状態で、クランピング部品50と保持部品56との間にクランプ固定される。紐状部22同士の間には、スペーサ54も設けられていると好ましい。保持部品56は、パネル40すなわちパネル40の細長い穴42に、回転不能に保持される。これにより、クランプ2はパネル40に確実にクランプ固定される。
【0063】
このようにして衛生設計の基本的指針も順守され、継ぎ目または表面がほとんど設けられず、表面は全て、流体が流出できるように傾斜した形で設けられる。
【0064】
スペーサ54は、好ましくはEPDMから形成され、その穿孔542によってクランピング部品50の清掃が困難なねじを覆う。
【0065】
図6は、装置1の他の設計を示している。ここでクランプ2は、上述したように設計されている。クランプ2のホルダ24の領域に、クランピング装置5が設けられ、クランピング装置5はクランピング部品50と保持部品56を有する。クランピング装置5は延長部58に保持され、延長部58は飲料充填システムの構造体4のねじ付きピン44にねじ込まれる。ねじ付きピン44は、好ましくは、構造体4にかしめられる。
【0066】
上述の保持部品と異なり、保持部品56は、その背面に回転防止装置を有しておらず、したがって、少なくともその設置の間、延長部58に回転可能に収容される。その結果、クランプ2の向きは特に柔軟性を有する。というのは、延長部58がねじ付きピン44の周りに回転でき、さらに、回転防止装置が無いためクランプ2がクランピング装置5の周りに回転できるからである。
【0067】
確実な密封および衛生的に許容可能な設計を実現するために、好ましくは、延長部58と飲料充填システムの構造体4との間のねじ付きピン44の周囲にシールが設けられる。良好な調整能を実現するために、このシールは、ねじ付きピン44の回りに延長部58が完全に回転した場合でも確実な密封を形成するように設計されると好ましい。
【0068】
適用可能な範囲内で、個々の実施形態で説明した全ての個々の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなしに、互いに組み合わせる、かつ/または交換することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 飲料充填システムにおいて管路を保持するための装置
2 クランプ
20 脚
22 ホルダの紐状部
24 ホルダ
26 クランプの開口部
28 ワイヤループ
29 ロック受け
3 ロック要素
30 ワイヤループ
32 ワイヤループ
34 ロックレバー
340 第1のロック軸
342 第2のロック軸
4 飲料充填システムの構造体
40 パネル
42 細長い穴
44 ねじ付きピン
5 クランピング装置
50 クランピング部品
52 溝
502 ねじ付きボルト
54 スペーサ
540 溝
542 穿孔
56 保持部品
560 溝
562 回転防止装置
58 延長部
100 管路
102 接触点
104 最大直径
110 接触点間の管路
112 中心線
114 管路軸
116 管路軸と接触点の間の直線
α 角度