特許第6842464号(P6842464)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842464
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】石膏処理装置及び石膏処理方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 11/036 20060101AFI20210308BHJP
   B01J 8/24 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   C04B11/036
   B01J8/24 311
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-532892(P2018-532892)
(86)(22)【出願日】2017年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2017025828
(87)【国際公開番号】WO2018030077
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2020年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-157062(P2016-157062)
(32)【優先日】2016年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160359
【氏名又は名称】吉野石膏株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094835
【弁理士】
【氏名又は名称】島添 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】二藤 幸治
(72)【発明者】
【氏名】竹中 彪
(72)【発明者】
【氏名】吉田 優
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/136485(WO,A1)
【文献】 特表2005−528310(JP,A)
【文献】 米国特許第4915623(US,A)
【文献】 米国特許第5013237(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B11/00−036
B01J8/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形又は環状の水平断面又は水平輪郭の内壁面を備えた反応器と、該反応器内の反応域に石膏粉体を供給する石膏供給部と、前記反応域の底部に配置され、該反応域に上向き気流を供給する気流供給部とを有し、前記反応域の底部に堆積した前記石膏粉体を前記上向き気流により攪拌する石膏処理装置において、
前記反応域の中央領域に位置する支持部から前記内壁面に向かって延びる複数の固定羽根を有し、
該固定羽根は、前記反応域の周方向に角度間隔を隔てて配列されており、
隣り合う前記固定羽根は、前記反応域に流入した前記上向き気流を該反応域の径方向外方且つ周方向に偏向するように傾斜した前記気流及び石膏粉体の流動路を形成することを特徴とする石膏処理装置。
【請求項2】
隣り合う前記固定羽根は、前記反応域の外周帯域に向かって開放し且つ鉛直方向に対して全体的に傾斜して上下方向に延びて上方に開放する前記流動路を形成することを特徴とする請求項1に記載の石膏処理装置。
【請求項3】
前記反応器又は反応域の中心軸線を中心とした前記固定羽根の下部外端及び下部内端の角度位置に関し、前記上向き気流の偏向方向において後方に位置する前記固定羽根の下部外端が、前記上向き気流の偏向方向において前方に位置する前記固定羽根の下部内端よりも偏向方向前方の角度位置に位置するように位置決めされ、或いは、前記支持部に支持される前記固定羽根の基端部は、隣接する前記固定羽根の基端部と平面視において互いに重なり合い、隣り合う前記固定羽根の重なり領域(η)が前記支持部廻りに形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の石膏処理装置。
【請求項4】
前記角度間隔は、10〜60度の範囲内の角度に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の石膏処理装置。
【請求項5】
前記固定羽根は、前記反応域に堆積した前記石膏粉体の堆積層に少なくとも部分的に埋没する高さ位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の石膏処理装置。
【請求項6】
前記固定羽根は、湾曲した前記流動路を形成する湾曲板からなり、該流動路は、前記上向き気流とともに上方に流動する前記石膏粉体を周方向且つ径方向外方に偏向することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の石膏処理装置。
【請求項7】
前記反応器は、前記反応域の底面を形成する隔壁を有し、前記上向き気流のための気体が圧力下に供給されるプレナムチャンバが、前記隔壁と前記反応器の底壁との間に形成され、前記隔壁は、前記プレナムチャンバに供給された前記気体の動圧を少なくとも部分的に静圧に転換する通気抵抗を有するとともに、前記反応域の気圧と前記プレナムチャンバの気圧との差圧に相応して該プレナムチャンバの気体を前記反応域に流入せしめる通気性を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の石膏処理装置。
【請求項8】
前記プレナムチャンバは、区画壁によって複数のプレナムチャンバ部分に分割され、各プレナムチャンバ部分には、前記上向き気流の供給部が夫々配設されており、前記プレナムチャンバ部分は、選択的に前記上向き気流を前記反応域に流入せしめることを特徴とする請求項7に記載の石膏処理装置。
【請求項9】
前記固定羽根の下縁部は、平面視において湾曲し、前記下縁部の外端部は、前記内壁面を構成する前記反応器の周壁から所定の水平距離(dc)を隔てて離間しており、前記水平距離(dc)は、前記周壁の内径(da)に対し、該内径(da)×0.2〜0.05の範囲内の寸法に設定されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の石膏処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された石膏処理装置を用いた石膏処理方法において、
前記反応域の底部から前記反応域に流入した上向き気流を前記固定羽根によって前記反応域の径方向外方且つ周方向に案内し、該上向き気流の偏向によって前記石膏粉体を前記反応域の径方向外方且つ周方向に流動せしめ、これにより、前記石膏粉体を容器本体の周方向に付勢し、或いは、前記内壁面の近傍に生じる前記石膏粉体の周方向の運動を助勢することを特徴とする石膏処理方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載された石膏処理装置を用いた石膏処理方法において、
前記石膏供給部を構成する石膏供給路を石膏焼成装置又は石膏焼成炉に接続し、該石膏焼成装置又は石膏焼成炉によって焼成された焼石膏を前記反応域に供給し、該焼石膏を改質処理し又は均質化処理することを特徴とする石膏処理方法。
【請求項12】
所定温度及び/又は所定湿度に調整された空気又はガス、或いは、所定量以上の水分を含有する湿潤空気又は湿潤ガスを前記上向き気流として前記反応域に流入せしめることを特徴とする請求項10又は11に記載の石膏処理方法。
【請求項13】
円形又は環状の水平断面又は水平輪郭の内壁面を備える反応器を使用し、該反応器の反応域に石膏粉体を供給し、該反応域の底面から上向き気流を流出させて前記反応域の石膏粉体を攪拌し、前記石膏粉体の改質処理、均質化処理、加水処理、晒し処理、添加剤混合、焼成又は水分調節を行う石膏処理方法において、
前記反応域の中央領域に配置された支持部によって複数の固定羽根を支持し、該固定羽根を前記反応域の周方向に角度間隔を隔てて配列し、
前記反応域の底面から該反応域に流入した前記上向き気流を前記固定羽根によって前記反応域の径方向外方且つ周方向に案内し、前記上向き気流の偏向によって前記石膏粉体を前記反応域の径方向外方且つ周方向に流動せしめ、これにより、前記石膏粉体を前記反応器の周方向に付勢し、或いは、前記内壁面の近傍における前記石膏粉体の周方向の運動を助勢することを特徴とする石膏処理方法。
【請求項14】
前記反応器又は反応域の中心軸線を中心とした前記固定羽根の下部外端及び下部内端の角度位置に関し、前記上向き気流の偏向方向において後方に位置する前記固定羽根の下部外端が、前記上向き気流の偏向方向において前方に位置する前記固定羽根の下部内端よりも偏向方向前方の角度位置に位置するように位置決めされ、これにより、反応器又は反応域の周方向に向かう前記石膏粉体の運動を妨げるような径方向外方の気流運動が抑制され、或いは、隣接する前記固定羽根の基端部が平面視において互いに重なり合うように該固定羽根が配置され、隣り合う前記固定羽根の重なり領域(η)が、前記支持部の外周域に形成され、該重なり領域(η)は、前記上向き気流が前記支持部の近傍において上方に吹き抜けるのを妨げることを特徴とする請求項13に記載の石膏処理方法。
【請求項15】
前記反応域の底面を形成する隔壁を設け、前記上向き気流のための気体が圧力下に供給されるプレナムチャンバを前記隔壁と前記反応器の底壁との間に形成し、前記プレナムチャンバに供給された気体の動圧を前記隔壁の通気抵抗により少なくとも部分的に静圧に転換するとともに、前記反応域の気圧と前記プレナムチャンバの気圧との差圧に相応して該プレナムチャンバの気体を前記隔壁の通気性により前記反応域に前記上向き気流として流入せしめることを特徴とする請求項13又は14に記載の石膏処理方法。
【請求項16】
前記プレナムチャンバを区画壁によって複数のプレナムチャンバ部分に分割し、各プレナムチャンバ部分に前記気体を選択的に供給し、各プレナムチャンバ部分により前記上向き気流を前記反応域に形成することを特徴とする請求項15に記載の石膏処理方法。
【請求項17】
石膏焼成装置又は石膏焼成炉によって焼成された焼石膏を前記石膏粉体として前記反応域に供給し、前記焼石膏の石膏粉体を前記上向き気流によって攪拌して該焼石膏を改質処理し又は均質化処理することを特徴とする請求項13乃至16のいずれか1項に記載の石膏処理方法。
【請求項18】
所定温度及び/又は所定湿度に調整された空気又はガス、或いは、所定量以上の水分を含有する湿潤空気又は湿潤ガスを前記上向き気流として前記反応域に流入せしめることを特徴とする請求項13乃至17のいずれか1項に記載の石膏処理方法。
【請求項19】
前記石膏粉体に含まれる二水石膏及び/又は無水石膏の脱水反応又は水和反応を進行させて該石膏粉体を改質処理し又は均質化処理することを特徴とする請求項13乃至18のいずれか1項に記載の石膏処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏処理装置及び石膏処理方法に関するものであり、より詳細には、石膏の粉粒体又は粉体(以下、「石膏粉体」という。)の堆積層を上向き気流により流動化し、石膏粉体の改質、均質化、添加剤混合、加水処理、水分調節又は焼成等の石膏処理を行う石膏処理装置及び石膏処理方法(apparatus and method for treating gypsum)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石膏を原料として製造される石膏ボード、石膏板等の石膏系面材が、建築物の内装材料等の用途に広く普及している。石膏は、結晶水の存在形態に応じて、二水石膏(硫酸カルシウム二水和物)、半水石膏(硫酸カルシウム半水和物)及び無水石膏(硫酸カルシウム無水物)に大別されるが、石膏系面材の製造原料としては、二水石膏を焼成してなる焼石膏(stucco, calcined gypsum or calcined plaster)が一般に使用される。焼石膏は、化学石膏又は天然石膏等の原料石膏を単独で焼成し、或いは、異種の原料石膏を混合して加熱(焼成)する焼成工程により製造される。半水石膏等を製造する石膏焼成炉として、特許第2571374号公報(特許文献1)等に記載される如く、直火式焼成炉(直接加熱式焼成炉)や、間接加熱式焼成炉等の石膏焼石装置が使用される。二水石膏(CaSO4・2H2O)は、焼成工程により、半水石膏(CaSO4・1/2H2O)に転移する。一般に、焼成工程によって得られる焼石膏は、半水石膏の他に、未焼成分(二水石膏)及び過焼成分(III型無水石膏(CaSO4))等を含有する。
【0003】
石膏焼成炉又は石膏焼成装置の炉内又は反応器内に生成したプロセスガス(高温多湿ガス)を焼石膏と一緒に同一流路で給送し、焼石膏及びプロセスガスを石膏プラスタークーラーに導入する技術が、特表2013−535401号公報(特許文献2)等に記載されている。この石膏プラスタークーラーは、焼石膏を均質化するとともに、焼石膏スラリー化時における練混水量を低減することを企図した石膏処理装置である。石膏プラスタークーラーは、比較的多量の水分(水蒸気)を含む焼成装置のプロセスガスを焼石膏と一緒に石膏プラスタークーラーの安定化ゾーンに導入するように構成される。このような石膏プラスタークーラーによれば、プロセスガス中の水分によって焼石膏中のIII型無水石膏を安定化ゾーンで半水石膏に転換するとともに、石膏粉体を全体的に回転流動させて石膏粉体の粒度分布を改善し得ると想定される。
【0004】
また、石膏焼成装置から導出された焼石膏に含まれる未焼成部分(二水石膏)及び過焼成部分(無水石膏)を半水石膏に転換して、焼石膏の成分を実質的に半水石膏のみに均質化する石膏処理装置として、ホモジナイザ(焼石膏均質化装置)が知られている。ホモジナイザは、二水石膏及び無水石膏を半水石膏とともに滞留させる反応域を有し、所定温度又は所定湿度に調整された空気等が反応域に導入される。焼石膏中の二水石膏及び無水石膏は、反応域において攪拌され、脱水又は水和により、半水石膏に転換する。この結果、二水石膏及び無水石膏の比率が低下し、焼石膏中の半水石膏の割合が増大するので、焼石膏は、「焼きむら」の少ない半水石膏に均質化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2571374号公報
【特許文献2】特表2013−535401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記石膏プラスタークーラー及びホモジナイザ等の石膏処理装置は、半水石膏、二水石膏及び無水石膏を含む焼石膏の堆積層を空気又はプロセスガス等の気流により流動化し、石膏同士の熱交換等により、焼石膏中の二水石膏及び無水石膏の脱水反応又は水和反応を進行せしめ、二水石膏及び無水石膏を半水石膏に転換するように機能する。しかしながら、空気やプロセスガスを反応域に導入し又は流入せしめる導入方法又は流入方法をいかに改良し又は改善し得たとしても、焼石膏を十分に攪拌し難く、このため、焼石膏の均質化を促進する上で限界が生じていた。
【0007】
また、上記石膏プラスタークーラーにおいては、石膏粉体の回転運動のためにクーラー本体を全体的に回転させる回転駆動装置や、その制御系等を必要とするので、装置構成が複雑化し且つ大型化する結果、装置系の維持管理の煩雑化や、装置のランニングコストの増大等の問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、反応域の底部から流出する上向き気流によって反応域底部の石膏粉体堆積層を流動化する流動層方式の石膏処理装置及び石膏処理方法において、石膏粉体の流動性を活性化し又は向上し、石膏粉体の改質又は均質化等の石膏処理を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成すべく、円形又は環状の水平断面又は水平輪郭の内壁面を備えた反応器と、該反応器内の反応域に石膏粉体を供給する石膏供給部と、前記反応域の底部に配置され、該反応域に上向き気流を供給する気流供給部とを有し、前記反応域の底部に堆積した前記石膏粉体を前記上向き気流により攪拌する石膏処理装置において、
前記反応域の中央領域に位置する支持部から前記内壁面に向かって延びる複数の固定羽根を有し、
該固定羽根は、前記反応域の周方向に角度間隔を隔てて配列されており、
隣り合う前記固定羽根は、前記反応域に流入した前記上向き気流を該反応域の径方向外方且つ周方向に偏向するように傾斜した前記気流及び石膏粉体の流動路を形成することを特徴とする石膏処理装置を提供する。
【0010】
本発明は又、上記構成の焼石膏均質化装置を用いた焼石膏均質化方法において、(1)前記反応域の底部から前記反応域に流入した上向き気流を前記固定羽根によって前記反応域の径方向外方且つ周方向に案内し、該上向き気流の偏向によって前記石膏粉体を前記反応域の径方向外方且つ周方向に流動せしめ、これにより、前記石膏粉体を容器本体の周方向に付勢し、或いは、前記内壁面の近傍に生じる前記石膏粉体の周方向の運動を助勢することを特徴とする石膏処理方法、或いは、(2)前記石膏供給部を構成する石膏供給路を石膏焼成装置又は石膏焼成炉に接続し、該石膏焼成装置又は石膏焼成炉によって焼成された焼石膏を前記反応域に供給し、該焼石膏を改質処理し又は均質化処理することを特徴とする石膏処理方法を提供する。
【0011】
他の観点より、本発明は、円形又は環状の水平断面又は水平輪郭の内壁面を備える反応器を使用し、該反応器の反応域に石膏粉体を供給し、該反応域の底面から上向き気流を流出させて前記反応域の石膏粉体を攪拌し、前記石膏粉体の改質処理、均質化処理、加水処理、晒し処理(大気暴露)、添加剤混合、焼成又は水分調節を行う石膏処理方法において、
前記反応域の中央領域に配置された支持部によって複数の固定羽根を支持し、該固定羽根を前記反応域の周方向に角度間隔を隔てて配列し、
前記反応域の底面から該反応域に流入した前記上向き気流を前記固定羽根によって前記反応域の径方向外方且つ周方向に案内し、前記上向き気流の偏向によって前記石膏粉体を前記反応域の径方向外方且つ周方向に流動せしめ、これにより、前記石膏粉体を前記反応器の周方向に付勢し、或いは、前記内壁面の近傍における前記石膏粉体の周方向の運動を助勢することを特徴とする石膏処理方法を提供する。
【0012】
本発明の上記構成によれば、反応域底部から反応域に流入した上向き気流は、固定羽根の偏向作用又は案内作用によって反応域の径方向外方且つ周方向に偏向して反応器外周域に流動し、反応域の内壁面近傍の焼石膏を周方向に付勢し、或いは、内壁面近傍の焼石膏の周方向運動を助勢する。本発明の石膏処理装置及び石膏処理方法によれば、上向き気流の偏向により反応域全体の石膏粉体が攪拌されるので、石膏粉体の流動性を活性化し又は向上し、石膏粉体の改質又は均質化等の石膏処理を促進することができる。例えば、本発明の構成をホモジナイザ(焼石膏均質化装置)に適用した場合、均質化後の焼石膏中の半水石膏の割合が増大し、従って、石膏焼成炉において焼成された焼石膏を「焼きむら」の少ない半水石膏に均質化することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応域の底部から流出する上向き気流によって反応域底部の石膏粉体堆積層を流動化する流動層方式の石膏処理装置及び石膏処理方法において、石膏粉体の流動性を活性化し又は向上し、石膏粉体の改質又は均質化等の石膏処理を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の好適な実施形態に係るホモジナイザの構成を示す縦断面図である。
図2図2は、図1のI−I線におけるホモジナイザの断面図である。
図3図3は、図1のII−II線におけるホモジナイザの断面図である。
図4図4は、図1に示すホモジナイザの底面図である。
図5図5は、ホモジナイザの反応域に配設された固定羽根の形態を示す斜視図である。
図6図6は、固定羽根の構造を示す部分拡大平面図である。
図7図7は、固定羽根の構造を示す部分拡大正面図である。
図8図8は、固定羽根の変形例を示すホモジナイザの横断面図である。
図9図9は、各プレナムチャンバ部分の給気口の作動形態(作動例)を概念的に示すプレナムチャンバの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましくは、隣り合う上記固定羽根は、上記反応域の外周帯域に向かって開放し且つ鉛直方向に対して全体的に傾斜して上下方向に延びて上方に開放する上記流動路を形成する。本発明の好適な実施形態によれば、反応器又は反応域の中心軸線を中心とした固定羽根の下部外端及び下部内端の角度位置に関し、上記上向き気流の偏向方向において後方に位置する固定羽根の下部外端が、上向き気流の偏向方向において前方に位置する固定羽根の下部内端よりも偏向方向前方の角度位置に位置するように位置決めされ、これにより、石膏粉体の反応器周方向の運動を妨げるような径方向外方の気流運動(径方向外方に直進する気流)が抑制される。本発明の他の好適な実施形態によれば、上記支持部に支持される固定羽根の基端部は、隣接する固定羽根の基端部と平面視において互いに重なり合い、隣り合う固定羽根の重なり領域(η)が支持部廻りに形成される。重なり領域(η)は、上向き気流が支持部の近傍において上方に吹き抜けるのを妨げる。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、固定羽根の角度間隔は、10〜60度の範囲内の角度、好ましくは、20〜45度の範囲内の角度に設定され、各固定羽根の最上部は、反応域に堆積した石膏粉体堆積層(流動層)の上面(設計レベル)の下方に位置決めされる。なお、固定羽根の数が過少であると、各々の固定羽根の負荷又は応力が大きく、固定羽根の基部の破損又は損傷等が発生することが懸念され、他方、固定羽根の数が過大であると、隣接する固定羽根の間の間隔が縮小する結果、固定羽根に対する石膏の付着が発生することが懸念される。このため、固定羽根の枚数は、固定羽根の負荷又は応力や、固定羽根に対する石膏の付着等を考慮して適切な数に設定することが望ましい。
【0017】
好ましくは、石膏粉体堆積層(流動層)の上面の設計レベル(ha)は、固定羽根最上部の設計レベル(hb)×1.0〜1.25の範囲内に設定される。なお、流動層上面及び固定羽根最上部の設計レベルは、面から測定した高さ方向の寸法である。また、流動層上面は、装置の作動中に不規則に挙動するが、流動層上面の設計レベルは、定常運転時又は通常運転時における設計上又は理論上の設定レベル又は平均レベルである。即ち、固定羽根は、流動層上面(設計レベル)の下方に好ましく配置することができ、従って、固定羽根は、設計上は、動層に実質的に完全に埋没する高さ位置に好ましく配置し得る。
【0018】
更に好ましくは、固定羽根は、湾曲した流動路を形成する湾曲板からなり、流動路は、上向き気流とともに上方に流動する石膏粉体を周方向且つ径方向外方に偏向する。好適には、固定羽根の上縁部は、平面視において湾曲するとともに、反応域の径方向外方に向かって全体的に下方に傾斜し、固定羽根の下縁部は、平面視において湾曲するとともに、実質的に水平に延びる。固定羽根全体の直径(db)は、反応域周壁の直径(da)よりも小さく、固定羽根及び反応域周壁は、所定の水平距離(dc)を隔てて離間する。固定羽根の直径(db)は、好ましくは、反応域周壁の内径(da)×0.6〜0.9の範囲内、更に好ましくは、反応域周壁の内径(da)×0.7〜0.8の範囲内に設定される。
【0019】
好適には、上記反応器は、反応域の底面を形成する隔壁を有し、上向き気流のための気体が圧力下に供給されるプレナムチャンバが、隔壁と前記反応器の底壁との間に形成される。隔壁は、プレナムチャンバに供給された気体の動圧を少なくとも部分的に静圧に転換する通気抵抗を有するとともに、反応域の気圧とプレナムチャンバの気圧との差圧に相応してプレナムチャンバの気体を反応域に流入せしめる通気性を有する。プレナムチャンバを給気圧力緩衝用の圧力緩衝ゾーン又はバッファゾーンとして把握しても良い。好ましくは、プレナムチャンバは、区画壁によって複数のプレナムチャンバ部分に分割され、各プレナムチャンバ部分には、上向き気流の供給部が夫々配設される。プレナムチャンバ部分は、選択的に上向き気流を反応域に流入せしめる。このような構成によれば、様々なパターンで上向き気流を反応域に供給することができる。例えば、各プレナムチャンバ部分の上向き気流の時間差等により、段階的又は周期的に変化する上向き気流を反応域に形成し、これにより、反応域の攪拌作用を段階的又は周期的に変化させることができる。
【0020】
以下に説明する本発明の好適な実施形態においては、本発明の構成は、ホモジナイザに適用される。ホモジナイザにおいては、所定温度及び/又は所定湿度に調整された空気又はガス、或いは、所定量以上の水分を含有する湿潤空気又は湿潤ガスが、上向き気流として反応域に流入する。石膏焼成装置又は石膏焼成炉によって焼成された焼石膏を石膏粉体として反応域に供給し、焼石膏の石膏粉体を上向き気流によって攪拌することにより、焼石膏中の二水石膏及び/又は無水石膏の脱水反応又は水和反応が進行し、焼石膏を改質処理し又は均質化処理することができる。
【実施形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1図4は、本発明の好適な実施形態に係るホモジナイザの構成を示す縦断面図、I−I線断面図、II-II線断面図及び底面図である。図5は、ホモジナイザの反応域に配設された固定羽根の形態を示す斜視図である。
【0023】
ホモジナイザ1は、円形又は環状の水平断面又は水平輪郭の内壁面を備えた円筒形反応器2を有する。反応器2の内壁面は、反応域αを画成する。反応器2は、平面視円形の頂壁2a及び底壁2bと、上下の円筒状周壁2c、2dとから構成される。頂壁2aは周壁2cと一体化し、底壁2bは周壁2dと一体化しており、上下の周壁2c、2dは接合部2eにおいて一体的に接合されている。石膏供給部を構成する焼石膏供給口3が頂壁2aに配設される。焼石膏供給口3は、焼石膏供給管Sgを介して石膏焼成炉(図示せず)に接続され、石膏焼成炉の焼石膏Gaが焼石膏供給口3を介して反応器2内の反応域αに投入又は導入される。
【0024】
石膏焼成炉は、例えば、二水石膏を焼石膏に焼成するコニカルケトル型の石膏焼成炉である。一般に、石膏焼成炉は、二水石膏を概ね半水石膏に焼成してなる焼石膏Gaを炉外に送出するが、二水石膏を完全に半水石膏に焼成することは、実際には困難であり、通常は、未焼成分として二水石膏を含有するとともに、過焼成分として無水石膏を含有する不均質な粉体又は粒体である。なお、石膏焼成炉の構成については、本出願人の特許出願に係る日本国特許出願2015−35905号(PCT国際出願PCT/JP2016/054065号)の明細書及び図面等に詳細に記載されているので、同特許出願を引用することにより、更なる詳細な説明は、省略する。
【0025】
反応器2は、図3に示す如く、底壁2bに固定された鉛直区画壁4を有する。区画壁4は、平面視において反応器2の中心軸線CLから周壁2dまで放射状に延びる。本例においては、区画壁4は、中心軸線CLを中心に45度の角度間隔を隔てて配置される。図1図2及び図5に示す如く、反応器2は、反応域αの底面を形成する水平な通気性隔壁5を有する。隔壁5は、区画壁4の上端部に支持される。区画壁4及び隔壁5は、反応域αと底壁2bとの間に複数の給気プレナムチャンバ又は給気バッファ域β(以下、「プレナムチャンバβ」という。)を画成する。好ましくは、区画壁4は、4〜16程度の数のプレナムチャンバβを形成するように配設される。
【0026】
本例においては、図3に示す如く、平面視扇状の8つのプレナムチャンバβが中心軸線CL廻りに均等に形成される。各プレナムチャンバβに夫々開口する給気口6が、底壁2bに配設される。図1及び図4に示す如く、気流供給部を構成する調整空気供給管Saが各給気口6に接続される。調整空気供給管Saは、加熱コイル等の空気加熱手段や、給気ブロワ又は給気ファン等の給気手段を備えた調整空気供給源(図示せず)に接続される。調整空気供給源は、比較的多量の水分を含む湿潤空気を調整空気流Aiとして調整空気供給管Saに送出する。調整空気流Aiの調整空気は、前述の上向き気流(後述する調整空気流Af)を形成するための気体である。各給気口6は、調整空気供給源より供給された調整空気流Aiを各プレナムチャンバβに圧力下に供給する。給気口6が吐出する調整空気の温度は、調整空気の湿度により異なるが、調整空気は、反応器2内で結露しない程度の温度を有することが好ましい。なお、このような調整空気に換えて、焼石膏を焼成する焼成装置に生成し且つ焼石膏から分離された高温多湿ガスを使用することも可能である。このような高温多湿ガスは、例えば、100〜150℃程度の温度を有する。
【0027】
隔壁5は、図1の部分拡大図に示す如く、基材50を上下の被覆材51、52で被覆してなるシート状又は板状の複合材料である。基材50及び被覆材51、52は、プレナムチャンバβに供給された給気流(調整空気流Ai)の動圧を少なくとも部分的に静圧に転換する通気抵抗を有するとともに、反応域αとプレナムチャンバβの差圧に相応してプレナムチャンバβの空気を反応域αに流入せしめる通気性を有する。従って、隔壁5は、図1及び図5に示す如く、プレナムチャンバβ及び反応域αの差圧に相応して給気流(調整空気流Af)を隔壁5の全域から均等に反応域αに流入せしめる。
【0028】
基材50として繊維集合体、不織布又はフェルト等の繊維質材料を好適に使用し得る。好ましくは、ガラス繊維不織布等の耐熱性不織布が基材50として使用される。また、被覆材51、52として、織布、パンチングメタル、メッシュ材料等を好適に使用し得る。隔壁5の厚さtは、5〜10mm、例えば、6mmに設定される。隔壁5の圧力損失は、好ましくは、200〜500mmH2Oの範囲内の値に設定される。
【0029】
調整気流Afが、上向き気流として隔壁5から反応域αに流入し、焼石膏Gbを攪拌する。調整空気流Afは、反応域αに堆積した焼石膏Gbが跳躍流動するような流勢を有することが望ましく、調整空気流Afの流速は、そのような流勢が得られるように好ましく設定し得る。好ましくは、反応域αに流入する給気流Afの流速は、0.05m/s〜1m/sに設定される。
【0030】
図1に示す如く、焼石膏Gaが焼石膏供給管Sgによって焼石膏供給口3に供給される。焼石膏Gaは焼石膏供給口3から反応域αに連続的(又は断続的)に投入又は導入され、焼石膏Gbの流動層(焼石膏層)Mとして水平隔壁5上に堆積する。反応域αの攪拌作用、熱交換作用及び加水作用により均質化した焼石膏Gcを機外に送出する焼石膏送出口7が、反応器2の周壁2cの下部に配設される。焼石膏送出口7は、重量制御式ロータリーフィーダ等の粉体定量供給機8を備える。粉体定量供給機8は、反応域αの焼石膏Gcを連続的(又は断続的)に機外又は系外に導出し、焼石膏Gcは、後続工程の装置(加水装置、冷却装置、粉砕装置等)に供給され、或いは、サイロ等の貯蔵装置に供給される。なお、図1においては、後続工程の装置と関連した管路及び機器類や、ホモジナイザ1の排気系及び制御系を構成する管路、配線及び機器類等は、図示を省略されている。
【0031】
流動層(焼石膏層)Mの焼石膏Gbは、隔壁5から流出した給気流(調整空気流)Af、Agによって跳躍流動し、反応域αにおいて攪拌される。ホモジナイザ1は、焼石膏Gbの跳躍流動を促進して流動層Mの上方域を焼石膏跳躍流動域γとして機能せしめるとともに、焼石膏Gbを反応域αの周方向に跳躍移動せしめる手段として、周方向に間隔を隔てて反応域αの下部領域に整列配置された複数又は多数の固定羽根(ガイドベーン)10を備える。なお、給気流Agは、固定羽根10によって偏向される給気流Afの偏向流である。また、跳躍流動は、流動層Mの上面がダイナミックに流動し、焼石膏Gbの粉体が上部空間(焼石膏跳躍流動域γ)に跳ね上がって落下する状態又は形態の流動である。
【0032】
図1図2及び図5に示す如く、固定羽根10の支持部を構成する中空円筒状の支柱40が、反応域αの中央領域において反応域αの底面に立設される。支柱40は、固定羽根10を支持、各固定羽根10は、支柱40の外周面に等間隔に固定される。従って、固定羽根10の基部は、反応域αの中央領域に位置する。支柱40は、中心軸線CLを中心とした真円形断面を有し、支柱40の上端は、流動層Mの上面Ma(レベルha)の下方に位置する。支柱40の下部は、区画壁4に支持される等間隔(45度間隔)の柱状基部41と、柱状基部41の間に形成される開口部42とから構成される。開口部42は、支柱40の内部領域43と支柱40の外側領域44とを相互連通させ、焼石膏Gbの一部が内部領域43に長時間滞留するのを防止する。
【0033】
図1及び図5に示すように、固定羽根10は、上面Maの下側において支柱40の外周域に配置される。固定羽根10の最上部(図6及び図7に示す固定羽根10の上部内端18)は、レベルhbの高さ位置(隔壁5の上面から測定した高さ寸法hbの位置)に位置決めされる。図1に示すレベルhaを上面Maの設定レベル又は設計レベルとすると、レベルhaは、レベルhb×1.0〜レベルhb×1.25の範囲内に好ましく設定し得る。即ち、固定羽根10は、流動層Mに実質的に完全に埋没する高さ位置に好ましく配置し得る。但し、ホモジナイザ1の作動中は、流動層Mの上面Maは、比較的激しく挙動し、上面Maには、起伏、隆起、沈降等の現象が短時間に繰り返し発生する。このため、多くの場合、ホモジナイザ1の作動中には、固定羽根10が部分的にのみ埋没した状態(固定羽根10の上部が上面Maの上方域に部分的に露出した状態)が観察される。従って、レベルha、hbの上記位置関係は、あくまで、設計上又は初期設定上の位置関係を意味するものと理解すべきである。また、固定羽根10の下縁14(図7)は、隔壁5から上方に離間しており、固定羽根10の高さhcは、好ましくは、ha×0.2〜0.6の範囲内の寸法、更に好ましくは、ha×0.2〜0.4の範囲内の寸法に好ましく設定し得る。
【0034】
図1及び図2に示すように、中心軸線CLを中心とした固定羽根10の全体直径dbは、同一レベルにおける周壁2cの内径daよりも小さく、固定羽根10及び周壁2cは、水平距離dcを隔てて離間する。直径dbは、好ましくは、内径da×0.6〜0.9の範囲内、更に好ましくは、内径da×0.7〜0.8の範囲内に設定され、従って、水平距離dcは、好ましくは、内径da×0.2〜0.05の範囲内の寸法、更に好ましくは、内径da×0.15〜0.1の範囲内の寸法に設定される。このような水平距離dcの設定により、反応器2の内壁面近傍の焼石膏Gbの周方向の運動を効果的に助勢し、或いは、焼石膏Gbを反応器の周方向に効果的に付勢することができる。
【0035】
図2に示す如く、固定羽根10は、反応器2の中心軸線CL廻りに均一な角度間隔θ1を隔てて周方向に配列される。角度間隔θ1は、好ましくは、10〜60度の範囲内の角度、更に好ましくは、20〜45度の範囲内の角度(本例では、22.5度)に設定され、固定羽根10の数は、好ましくは、6〜36体の範囲内、更に好ましくは、8〜18体の範囲内(本例では、16体)に設定される。例えば、直径3m程度の流動攪拌層の場合、概ね8〜16体程度の固定羽根10を設置することが望ましい。なお、固定羽根10の角度間隔は、必ずしも全周に亘って均一な値に設定しなくとも良く、反応器2及び支柱40の構造等に相応して任意に設定することができる。
【0036】
図8は、支柱40の直径、固定羽根10の数及び間隔等を変更した反応器2の構成を示す横断面図である。
【0037】
図2に示す支柱40は、概ね内径da×1/3程度の直径を有する。しかし、図8に示すように支柱40の直径を縮小すると、固定羽根10の根元部分(基部)が反応域αの中心に近い位置に配置されるので、反応域αの中心部付近まで攪拌することができる。従って、固定羽根10の配置及び支持構造の観点より許容し得る場合には、固定羽根10の根元部分(基部)を反応域αの中心に近い位置に配置することが望ましいと考えられる。
【0038】
図6は、固定羽根10の構造を示す部分拡大平面図であり、図7は、固定羽根10の構造を示す部分拡大正面図である。
【0039】
図6及び図7に示す如く、各固定羽根10は、湾曲した内縁11、外縁12、上縁13及び下縁14を有する金属製の湾曲板からなる。内縁11を含む固定羽根10の基端部は、ブラケット及びボルト等の取付手段(図示せず)、或いは、溶接等の接合手段によって支柱40に固定され、固定羽根10は、支柱40の外表面と実質的に連続する面を形成する。内縁11、外縁12、上縁13及び下縁14は、所定の曲率半径で湾曲しており、斜め上方に向いた凸状曲面15と、斜め下方に向いた凹状曲面16とが、各固定羽根10によって形成される。上縁13は、外方に向かって下方に傾斜しており、下縁14は、概ね水平に延びる。
【0040】
隣り合う固定羽根10の間には、平面視において支柱40の周方向且つ径方向外方に湾曲して延びる流動路Pが形成される。流動路Pは、周壁2cの近傍の外周帯域に向かって開放するとともに、鉛直方向に対して全体的に傾斜した湾曲流路の形態をなして上下方向に延びる。後述する如く、流動路Pは、調整空気流Af、Agの上昇流を径方向外方且つ周方向に偏向せしめる。
【0041】
図6には、中心軸線CL及び上部外端17を通る支柱40の直径方向(平面視)の線分DL1が、一点鎖線で示されている。仮に、固定羽根10が反応器2の径方向に真っ直ぐに延びる場合、流動層Mの外周帯域において跳躍流動する焼石膏Gbは、周壁2cに衝合してその跳躍距離が低下するので、十分な攪拌効果が得られない。このため、固定羽根10の上部外端17の接線Th(水平面内)は、図6に示すように、線分DL1に対して角度θ2をなす方向に配向される。また、図7に示す如く、固定羽根10の上部内端18及び上部外端17の接線Tv、Tv'(鉛直面内)は、鉛直方向VLに対して角度θ3、θ4をなす方向に配向される。好ましくは、角度θ2は、10〜60度の範囲内の角度、好ましくは、15〜45度の範囲内の角度に設定され、角度θ3、θ4は、10〜60度の範囲内の角度、好ましくは、15〜45度の範囲内の角度に設定される。なお、角度θ3、θ4は、焼石膏Gaの周方向の跳躍移動又は跳躍旋回運動を所望の如く生じさせる上で比較的重要な角度である。このため、固定羽根10の枚数が比較的少ない場合には、角度θ3、θ4は、比較的大きな値に設定することが望ましい。
【0042】
図6に示す如く、隣接する固定羽根10は、平面視において、基端部が互い重なり合い且つ先端部が相互離間するように配置される。固定羽根10の下部内端19及び下部外端20が、図6に示されている。また、図6には、支柱40の直径方向(平面視)の線分DL2、DL3が、一点鎖線で示されている。線分DL2は、調整空気流Agの偏向方向前方(本例では、平面視時計廻り方向)に位置する固定羽根10の下部内端19と、中心軸線CLとを通る。線分DL3は、調整空気流Agの偏向方向後方に位置する固定羽根10の下部外端20と、中心軸線CLとを通る。また、固定羽根10の重なり領域η(平面視)が、図6に斜線で示される如く、支持部廻りに形成される。重なり領域ηは、支柱40の外周面近傍において調整空気流Agが鉛直上方に吹き抜けるのを妨げる。
【0043】
偏向方向後方に位置する固定羽根10の下部外端20は、偏向方向前方に位置する固定羽根10の下部内端19に対し、偏向方向前方に偏倚した角度位置に位置決めされており、下部内端19及び下部外端20は、中心軸線CL廻りに中心角θ5の角度間隔を隔てて配置される。即ち、偏向方向後方の固定羽根10の下部外端20の角度位置は、偏向方向前方の固定羽根10の下部内端19の角度位置に対し、中心軸線CLを中心として、偏向方向前方に角度θ5の位相差を有する。角度θ5は、0度よりも大きく、固定羽根10の角度間隔θ1に対し、好ましくは、θ1×0.3以下の範囲内の角度、更に好ましくは、θ1×0.2以下の範囲内の角度に設定される。このような固定羽根10の構成によれば、石膏粉体の反応器周方向の運動を妨げるような径方向外方の気流運動を抑制することができる。
【0044】
上記の如く固定羽根10の重なり領域ηを確保することにより、支柱40の外周面近傍における調整空気流Agの上方吹き抜けが効果的に妨げられ、流動路Pを通る調整空気流Agの上昇流は、固定羽根10によって確実に偏向される。かくして、上記位相差(角度θ5)及び重なり領域ηは、調整空気流Agの攪拌作用を向上し、これは、焼石膏Gbの均質化に寄与する。なお、特定の固定羽根10の上部内端18と、これに隣接する固定羽根10の下部内端19とがなす角度を角度θ6とし、重なり領域ηの径方向外端νと下部内端19との間の距離(平面視)を寸法L1とし、固定羽根10の平面視対角線方向の長さ(即ち、固定羽根10の平面視最大長)を寸法L2とすると、重なり領域ηは、θ1>θ6>0、1/4≦L1/L2≦1/2の範囲内の領域として好ましく設定し得る。
【0045】
図1図2及び図5図7に矢印で示す如く、固定羽根10は、流動路P内を上昇する調整空気流Agを径方向外方且つ周方向に案内し、調整空気流Agによって流動化した焼石膏層Mの流動物(焼石膏Gb)を調整空気流Agとともに径方向外方且つ周方向に差し向ける。流動路P内の調整空気流Ag及び焼石膏Gbは、上縁13及び外縁12の近傍から概ね支柱40の接線方向に流出して、外周帯域に流動する。固定羽根10は、全体的に湾曲しており、しかも、固定羽根10の上縁13は、外方に向かって下方に傾斜しているので、このような調整空気流Ag及び焼石膏Gbの運動は、固定羽根10の上側角部領域の存在によっては妨げられない。周方向に差し向けられた調整空気流Ag及び焼石膏Gbは、外周帯域の焼石膏Gbを周方向に付勢し、或いは、外周帯域の焼石膏Gbの周方向運動を助勢する。
【0046】
次に、上記構成のホモジナイザ1の作動について説明する。
【0047】
図1に示すホモジナイザ1の使用において、石膏焼成炉の焼石膏Gaが焼石膏供給管Sg及び焼石膏供給口3によって反応域αに連続的(又は断続的)に供給され、反応域αの下部に流動層Mとして堆積する。調整空気供給源の調整空気Aiが給気口6からプレナムチャンバβに圧力下に供給される。全給気口6によって同時に全プレナムチャンバβに調整空気Aiを吐出しても良く、給気口6を段階的又は周期的に作動させ、プレナムチャンバβに段階的又は周期的に調整空気Aiを供給しても良い。
【0048】
図9(A)には、プレナムチャンバβ1〜β8が示されている。例えば、プレナムチャンバβ1からプレナムチャンバβ8まで時間差を付けて順に調整空気Aiを吐出するように各プレナムチャンバβ1〜β8の給気口6を作動させることができる。また、図9(B)には、作動中(調整空気吐出中)の給気口6を黒塗りの丸で示し、非作動中(調整空気非吐出中)の給気口6を白抜きの丸で示した給気方法が示されている。図9(B)に示す如く、対角線方向に対峙する給気口6を同時に作動し、この状態を時計廻り方向に推移せしめることにより、段階的又は周期的に調整空気Aiをプレナムチャンバβ1〜β8に供給しても良い。容易に理解し得るとおり、給気口6の作動パターンは、ホモジナイザ1の使用条件又は運転条件等に相応して様々なパターンに任意に設定することができる。
【0049】
調整空気Aiが供給されたプレナムチャンバβの空気圧は上昇する。図1に示す如く、隔壁5は、プレナムチャンバβの圧力上昇に従って調整空気流Afを上方に噴射する。調整空気流Afは、固定羽根10によって斜め上方、径方向外方且つ周方向に偏向された調整空気流Agとして反応域αに流入する。
【0050】
調整空気流Agは、焼石膏Gbの多くを流動層Mの上層部において径方向外方且つ周方向に跳躍流動させる。径方向外方且つ周方向に跳躍流動する焼石膏Gbは、流動層Mの外周帯域の焼石膏Gbを周方向に付勢して周方向の運動を与え、或いは、焼石膏Gbの周方向の運動を助勢する。即ち、径方向外方且つ周方向に跳躍流動する焼石膏Gbの運動が、固定羽根10の受動的偏向作用によって流動層Mに形成される。流動層Mの上面Maから上方空間に噴出した調整空気流Agの空気は、反応器2の頂壁2a等に接続された排気系管路(図示せず)によって反応域αから導出され、ホモジナイザ1の排気系設備(図示せず)を介して系外に排気される。
【0051】
このように跳躍流動する焼石膏Gbの運動により、焼石膏Gbの流動化及び攪拌が促進し、これにより、焼石膏Gbに含まれる未焼成分及び過焼成分、即ち、二水石膏及び無水石膏は熱交換し、脱水反応又は水和反応により、いずれも半水石膏に転換し、しかも、調整空気流Agと接触するので、湿潤な調整空気流Agの水分により半水石膏の加水効果が得られる。この結果、焼石膏Ga中の二水石膏及び無水石膏の比率が低下し、焼石膏Ga中の半水石膏の割合が増大するので、焼石膏Gaは、所謂「焼きむら」の少ない半水石膏に均質化し、未焼成分及び過焼成分の含有量を低減した比較的高純度の焼石膏Gcとして焼石膏送出口7及び粉体定量供給機8から連続的(又は断続的)に機外又は系外に送出される。粉体定量供給機8から送出された焼石膏Gcは、前述の如く、後続工程の装置(加水装置、冷却装置、粉砕装置等)に供給され、或いは、サイロ等の貯蔵装置に供給される。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態は、焼石膏を均質化するホモジナイザに関するものであるが、本発明の構成は、例えば、以下のような石膏処理に適用することができる。
(1)反応器に散水装置等を設置して焼石膏に加水する水分調節又は加水処理により、焼石膏をスラリー化する際のスラリーの流動性を向上させる焼石膏改質。
(2)焼石膏を空気(大気)に強制的に晒して焼石膏を安定させ又は不活性化するエイジング処理。
(3)添加物(例えば、土壌処理用の不溶化剤又は高分子凝集剤等)を焼石膏等に添加する混合・攪拌処理。
(4)二水石膏を高温ガスで攪拌して半水石膏に焼成する焼成処理。
【0054】
また、上記実施形態に係るホモジナイザは、焼石膏を所謂「焼きむら」の少ない状態にするとともに、スラリー化する際のスラリーの流動性を加水処理により向上させる焼石膏の均質化及び改質を目的としたものであるので、湿潤空気を上向き気流として用いているが、石膏処理の目的に応じて、所定温度及び/又は所定湿度に調製された空気又はガス、或いは、所定量以上の水分を含有する湿潤空気又は湿潤ガスを上向き気流として適宜使用することができる。
【0055】
更に、上記実施形態においては、流動層上面及び固定羽根の設計上の相対位置をレベルha=レベルhb×1.0〜1.25に設定しているが、所望より、流動層上面及び固定羽根の設計上の相対位置をレベルha<レベルhbの関係に設定することも可能である。
【0056】
また、固定羽根及び支柱の相対位置を調節するための位置調節手段を介して固定羽根の基端部を支柱に取付け、固定羽根の位置を可変設定し得るように固定羽根及び支柱を構成しても良い。更には、上記実施形態では、固定羽根は、支柱の外表面と実質的に連続する面を形成しているが、所望により、固定羽根の基端部と支柱の外表面との間に若干の隙間又はクリアランスを形成することも可能である。
【0057】
加えて、上記実施形態に係るホモジナイザは、石膏粉体を連続的又は断続的に反応域に投入又は供給し、処理後の石膏粉体を反応域から連続的又は断続的に機外又は系外に送出する連続処理式の石膏処理装置として記載されているが、本発明の石膏処理装置は、連続処理式の装置設計に限定されるものではなく、一定量又は特定量の石膏粉体を処理し且つ機外に送出した後、一定量又は特定量の石膏粉体を反応域に投入又は供給して処理する所謂バッチ処理式の装置として本発明の石膏処理装置を設計しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、石膏系原料又は石膏系材料の均質化、改質、焼成、混合又は水分調節等のための流動層式反応器、或いは、流動層式反応器を用いた石膏系原料又は石膏系材料の均質化、改質、混合又は水分調節等に適用される。本発明は殊に、石膏焼成装置から導出された焼石膏に含まれる二水石膏及び無水石膏を半水石膏に転換し、焼石膏の成分を実質的に半水石膏のみに均質化するホモジナイザ及び焼石膏均質化方法に好ましく適用し得る。本発明によれば、焼石膏が堆積した反応域の底部から調整空気流を噴射する流動層方式の石膏処理装置及び石膏処理方法において、焼石膏の流動性を改善して、焼石膏中の二水石膏及び/又は無水石膏の脱水反応又は水和反応を促進し、これにより、焼石膏を効果的に均質化することができるので、その実用的効果は、顕著である。
【符号の説明】
【0059】
1 ホモジナイザ
2 円筒形反応器
2a 頂壁
2b 底壁
2c、2d 周壁
3 焼石膏供給口
4 鉛直区画壁
5 水平隔壁
6 給気口
7 焼石膏送出口
8 粉体定量供給機
10 固定羽根
40 支柱
α 反応域
β プレナムチャンバ
η 重なり領域
Ai、Af、Ag 調整空気流(又は調整空気)
Ga、Gb、Gc 焼石膏
M 流動層
Ma 流動層上面
P 流動路
Sa 調整空気供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9