特許第6842478号(P6842478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6842478推算糸球体濾過量を計算する装置及び方法
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  • 特許6842478-推算糸球体濾過量を計算する装置及び方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842478
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】推算糸球体濾過量を計算する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20210308BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
   A61B10/00 U
   A61B5/107 100
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-9068(P2019-9068)
(22)【出願日】2019年1月23日
(65)【公開番号】特開2020-116100(P2020-116100A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2019年3月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月2日に、PLOS ONE,No.3,Vol.2,e0185693 <https://doi.org/10.1371/journal.pone.0185693>として公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】519025611
【氏名又は名称】國軍桃園總醫院
【氏名又は名称原語表記】TAOYUAN ARMED FORCES GENERAL HOSPITAL
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】蕭 博仁
(72)【発明者】
【氏名】石 韵▲うぇん▼
(72)【発明者】
【氏名】朱 基銘
(72)【発明者】
【氏名】張 士泰
【審査官】 ▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096835(JP,A)
【文献】 特開2013−190341(JP,A)
【文献】 特開2016−016170(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0235503(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105277723(CN,A)
【文献】 KAWAMOTO, R. et al.,An Association between the Estimated Glomerular Filtration Rate and Carotid Atherosclerosis,INTERNAL MEDICINE,2008年 3月 3日,Vol.47,p.391-398,<DOI: 10.2169/internalmedicine.47.0552>
【文献】 DOMINGUETI, C., et al.,Evaluation of creatinine-based and cystatin C-based equations for estimation of glomerular filtration rate in type 1 diabetic patients,Archives of endocrinology and metabolism,2016年 4月,Vol.60, No.2,pp.108-116,<DOI: 10.1590/2359-3997000000151>, Epub 2016 Feb 16.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00
A61B 5/00
A61B 5/20
A61B 5/107
G01N 33/493
G16H 10/00 −80/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、個体からの年齢信号、血清クレアチニン生化学的信号(crea)性別信号、血清シスタチンC生化学的信号(cysC)及びアルブミン尿濃度生化学的信号(microalb)を受信するように配置される受信ユニットと、
受信した前記信号を記憶するように配置される記憶ユニットと、
前記記憶ユニットから前記信号を取得し、前記年齢信号、前記血清クレアチニン生化学的信号、前記血清シスタチンC生化学的信号及び前記アルブミン尿濃度生化学的信号に基づいてそれぞれの対数信号を生成し、前記対数信号と前記性別信号のそれぞれに対し係数を乗じ、定数を加算した信号に対して、逆対数変換を実行して逆対数信号を生成するように配置される処理ユニットと、
処理ユニットから前記逆対数信号を取得し、前記逆対数信号を推算糸球体濾過量として出力する出力ユニットと、
を含む、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate,eGFR)を得るための装置。
【請求項2】
前記逆対数信号の生成は、Log(eGFR)=A+X1・log(年齢)+X2・log(crea)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(cysC)+X5・log(microalb)に従って実行され、
ここで、Aは前記定数であり、X1は前記年齢信号の対数信号の係数であり、X2は前記血清クレアチニン生化学的信号の対数信号の係数であり、X3は前記性別信号の係数であり、X4は前記血清シスタチンC生化学的信号の対数信号の係数であり、X5は前記アルブミン尿濃度生化学的信号の対数信号の係数である、請求項に記載の装置。
【請求項3】
少なくとも、個体からの年齢信号、血清クレアチニン生化学的信号(crea)性別信号、血清シスタチンC生化学的信号(cysC)及び首周り信号(NC)を受信するように配置される受信ユニットと、
受信した前記信号を記憶するように配置される記憶ユニットと、
前記記憶ユニットから前記信号を取得し、前記年齢信号、前記血清クレアチニン生化学的信号、前記血清シスタチンC生化学的信号及び前記首周り信号に基づいてそれぞれの対数信号を生成し、前記対数信号と前記性別信号のそれぞれに対し係数を乗じ、定数を加算した信号に対して、逆対数変換を実行して逆対数信号を生成するように配置される処理ユニットと、
処理ユニットから前記逆対数信号を取得し、前記逆対数信号を推算糸球体濾過量として出力する出力ユニットと、
を含む、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate,eGFR)を得るための装置。
【請求項4】
前記逆対数信号の生成は、Log(eGFR)=A+X1・log(年齢)+X2・log(crea)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(cysC)+X6・log(NC)に従って実行され、
ここで、Aは前記定数であり、X1は前記年齢信号の対数信号の係数であり、X2は前記血清クレアチニン生化学的信号の対数信号の係数であり、X3は前記性別信号の係数であり、X4は前記血清シスタチンC生化学的信号の対数信号の係数であり、X6は前記首周り信号の対数信号の係数である、請求項に記載の装置。
【請求項5】
少なくとも、個体からの年齢信号、血清クレアチニン生化学的信号(crea)性別信号、血清シスタチンC生化学的信号(cysC)、アルブミン尿濃度生化学的信号(microalb)及び首周り信号(NC)を受信するように配置される受信ユニットと、
受信した前記信号を記憶するように配置される記憶ユニットと、
前記記憶ユニットから前記信号を取得し、前記年齢信号、前記血清クレアチニン生化学的信号、前記血清シスタチンC生化学的信号、前記アルブミン尿濃度生化学的信号及び前記首周り信号に基づいてそれぞれの対数信号を生成し、前記対数信号と前記性別信号のそれぞれに対し係数を乗じ、定数を加算した信号に対して、逆対数変換を実行して逆対数信号を生成するように配置される処理ユニットと、
処理ユニットから前記逆対数信号を取得し、前記逆対数信号を推算糸球体濾過量として出力する出力ユニットと、
を含む、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate,eGFR)を得るための装置。
【請求項6】
前記逆対数信号の生成は、Log(eGFR)=A+X1・log(年齢)+X2・log(crea)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(cysC)+X5・log(microalb)+X6・log(NC)に従って実行され、
ここで、Aは前記定数であり、X1は前記年齢信号の対数信号の係数であり、X2は前記血清クレアチニン生化学的信号の対数信号の係数であり、X3は前記性別信号の係数であり、X4は前記血清シスタチンC生化学的信号の対数信号の係数であり、X5は前記アルブミン尿濃度生化学的信号の対数信号の係数であり、X6は前記首周り信号の対数信号の係数である、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記推算糸球体濾過量に基づいて、腎臓病の可能性があることを示す、請求項1−のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate,eGFR)を得るための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間で、慢性腎臓病(chronic kidney disease,CKD)及び末期腎疾患(end−stage renal disease,ESRD)の有病率及び発症率は、すべての国で急増し、より高い罹患率及び死亡率をもたらしている[1−3]。糸球体濾過量(GFR)は腎機能を評価するための指標である。現在、腎機能を確認するための最高基準は、外因性物質(例えば、イヌリン(inulin)及び細胞核医薬物質)を人体に注入してから、これらの物質の血液又は尿中の濃度を測定することで糸球体濾過状況を確定することである[4]。この方法は、精度が高いが、過程が複雑で、時間がかかり高価である。さらに、臨床上、通常24時間クレアチニンクリアランス(24時間CCR)を基準として用いている。しかし、この方法は、複雑であり、患者の採尿に対する協力の程度の影響を受ける[4]。
【0003】
従来技術では、腎機能の検査は、通常、例えば、単一の尿サンプルを採取して微量タンパク質を測定する方法、及び血液サンプルを採取して血清クレアチニン含有量を測定する方法により行われる。しかし、多くの研究によって明らかであるように、単なる尿又は血清クレアチニンによる腎臓病の判断は、腎機能の過大推算を招くことが多い。また、血清クレアチニンは、主に筋肉量の影響を受ける。従って、最近発展してきた腎機能の評価モデルでは、血清クレアチニンの内因性指標に基づいて構築され、クレアチニンに影響を与える可能性のある要素を調整して検査の精度を向上させている。これらの要素には、年齢、性別、人体の表面積、及び人種が含まれる。多くの研究によって、腎疾患に対する食事改善療法(MDRD)及びCockcroft−Gault(CG)モデルを含む一般に用いられる推算GFR(eGFR)モデルは、初期段階では腎機能障害を予測する能力が不足していることが発見された。さらに、特にアジア人においては、これらのモデルは、腎機能を過大に推算しやすいため、CKDの早期発見には精度が低い問題がある[5,6]。MDRDに比べて、他の単なる血清クレアチニンに基づく算式のうち、慢性腎臓病疫学コラボレーション(The Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration,CKD−EPI)式は、正確な算式であることが報告されている。血清クレアチニンのみならず、例えば、シスタチンCなどの他の内因性物質は、評価の指標としてより多く使われてきた。報告によると、血清シスタチンCに基づく算式は、CKD−EPI式よりも正確である[7−9]。さらに、報告によると、血清クレアチニンとシスタチンCとの測定値の組み合わせにより、eGFR予測の能力を向上させることができる[10−12]。
【0004】
この臨床研究では、人体表面積に対して補正した24時間CCRによって反映されたGFRを基準として用いて腎機能を評価した。アルブミン尿は、腎機能を評価するための重要な指標であり、早期段階で進行性CKDを検出するのに役立てることができる[13]。本発明者らはアルブミンの尿中の含有量を測定して腎臓損傷を評価し、且つ内因性血清指標、クレアチニン及びシスタチンCの濃度と腎機能の変化との相関性を比較した。現在、eGFRのために最も一般的に使用されている方法はまだMDRDモデルである。しかし、MDRDモデルは臨床的に満足のいくものではない。従って、推算糸球体濾過量を計算する装置及び方法の開発は依然として必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様によれば、
個体からの首周り信号、年齢信号及び性別信号を含む複数の信号を受信するように配置される受信ユニットと、
前記複数の信号を記憶するように配置される記憶ユニットと、
前記記憶ユニットから前記複数の信号を取得し、前記首周り信号及び年齢信号に基づいてそれらの対数信号を生成し、前記対数信号と前記性別信号との加算を実行して総和を得、前記総和の逆対数変換を実行して逆対数信号を生成するように配置される処理ユニットと、及び、
前記処理ユニットから前記逆対数信号を取得し、前記逆対数信号を糸球体濾過量として出力する出力ユニットと、
を含む推算糸球体濾過量(eGFR)を得るための装置が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
個体の首周り、年齢、及び性別を測定するステップと、
前記首周り及び年齢の対数を取得するステップと、
前記対数と前記性別とを加算して総和を得、前記総和の逆対数変換を実行することで糸球体濾過量を得るステップと、
を含む糸球体濾過量を推算する方法が提供される。
【0007】
一実施例において、前記推算した糸球体濾過量(eGFR)は、90mL/min/1.73m未満であり、前記個体がCKDに罹患している可能性があることを示す。
【0008】
一実施例において、前記個体は、心血管疾患リスクが高い個体である。
【0009】
本発明の他の態様によれば、慢性腎臓病(CKD)の診断方法であって、
個体から複数の変数を取得するステップと、
下記の多変数式に従って推算糸球体濾過量(eGFR)を得るステップと、
を含み、
前記eGFRが90mL/min/1.73m未満である場合、前記個体はCKDに罹患している可能性があることを示す、診断方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、慢性腎臓病(CKD)の治療方法であって、
治療有効量の薬物を90mL/min/1.73m未満の推算糸球体濾過量(eGFR)を有する個体に投与することを含み、前記eGFRは、下記の多変数式に従って算出される、治療方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態樣によれば、慢性腎臓病(CKD)に罹患している個体を治療するための薬物の調製における治療有効量の薬物の使用であって、前記個体は90mL/min/1.73m未満の推算糸球体濾過量(eGFR)を有し、前記eGFRは下記の多変数式に従って算出される、使用が提供される。
【0012】
一実施例において、前記多変数式は、
(1) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)、
(2) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)、
(3) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清シスタチンC)、
(4) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(アルブミン尿)、
(5) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(血清シスタチンC)、
(6) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(アルブミン尿)、
(7) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清シスタチン)+X5・log(アルブミン尿)、又は
(8) Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(アルブミン尿)+X6・log(血清シスタチン)、
からなる群より選択される。
【0013】
好適な実施例において、前記多変数式の変数の範囲は以下の通りである。
式(1)において、Aの範囲は0.338から3.636、X1の範囲は0.378から1.931、X2の範囲は−1.634から−0.743、X3の範囲は−0.055から0.087である。
式(2)において、Aの範囲は0.480から3.318、X1の範囲は0.277から1.455、X2の範囲は−1.106から−0.406、X3の範囲は−0.188から−0.051、X4の範囲は−1.2から−0.755である。
式(3)において、Aの範囲は−0.719から2.384、X1の範囲は0.389から1.825、X2の範囲は−0.922から−0.087、X3の範囲は−0.087から0.041、X4の範囲は−1.202から−0.750である。
式(4)において、Aの範囲は0.283から3.607、X1の範囲は0.397から1.979、X2の範囲は−1.634から−0.741、X3の範囲は−0.055から0.087、X4の範囲は−0.048から0.030である。
式(5)において、Aの範囲は−0.065から2.781、X1の範囲は0.291から1.602、X2の範囲は−1.007から−0.242、X3の範囲は−0.163から−0.035、X4の範囲は−1.061から−0.507、X5の範囲は−0.615から0.016である。
式(6)において、Aの範囲は0.661から3.540、X1の範囲は−0.020から1.211、X2の範囲は−1.053から−0.337、X3の範囲は−0.202から−0.072、X4の範囲は−1.373から−0.930、X5の範囲は0.028から0.104である。
式(7)において、Aの範囲は−0.687から2.304、X1の範囲は0.240から1.637、X2の範囲は−0.797から0.019、X3の範囲は−0.090から0.033、X4の範囲は−1.402から−0.918、X5の範囲は0.027から0.098である。
式(8)において、Aの範囲は0.063から2.711、X1の範囲は0.104から1.337、X2の範囲は−0.855から−0.136、X3の範囲は−0.174から−0.054、X4の範囲は−1.131から−0.611、X5の範囲は0.045から0.108、X6の範囲は−0.750から−0.150である。
【0014】
一実施例において、本発明で得られたeGFRは、
(a)rGFRに対して1.75よりも小さい偏差を有すること、
(b)rGFRに対して12.5よりも大きい精度を有すること、及び
(c)rGFRに対して17よりも小さい標準偏差を有すること、
のうちの1つ又は複数の性質を有する。
ここで、前記rGFR(ml/min/1.73m)は、24時間クレアチニンクリアランス(CCR)を体表面積で調整してから測定したものである。
【0015】
一実施例において、本発明で得られたeGFRは、
(a)その偏差がMDRD(Modification of Diet in Renal Disease)式で得られた偏差よりも小さいこと、
(b)その標準偏差がMDRD式で得られた標準偏差よりも小さいこと、
(c)その偏差がCG(Cockcroft−Gault)式で得られた偏差よりも小さいこと、
(d)その標準偏差がCG式で得られた標準偏差よりも小さいこと、及び
(e)その偏差が3変数式で得られた偏差よりも小さいこと、
のうちの1つ又は複数の性質を有する。
【0016】
一実施例において、前記薬物は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEi)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ペントキシフィリン(pentoxifylline)、ビタミンD、アリスキレン(aliskiren)、スピロノラクトン(spironolactone)、重炭酸塩、スタチン系(statins)薬物(HMG−CoA還元酵素阻害剤)又はフィブリン酸誘導体(フィブラート系)である。
【0017】
一実施例において、前記ACEiは、カプトプリル(captopril)、エナラプリル(enalapril)、イミダプリル(imidapril)又はラミプリル(ramipril)である。ARBは、カンデサルタン(candesartan)、イルベサルタン(irbesartan)、ロサルタン(losartan)、オルメサルタン(olmesartan)、テルミサルタン(telmisartan)又はバルサルタン(valsartan)である。スタチン系薬物は、ロバスタチン(lovastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、シンバスタチン(simvastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、アトルバスタチン(atorvastatin)、ロスバスタチン(rosuvastatin)又はピタバスタチン(pitavastatin)である。フィブラート系は、ゲムフィブロジル(gemfibrozil)、フェノフィブラート(fenofibrate)又はベザフィブラート(bezafibrate)である。
【0018】
以下、本発明を詳しく説明する。本発明の他の説明、目的、及び利点は、本発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に容易に見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の決定木分析モデルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される関連する科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。用語の意味及び範囲は明確であるべきである。しかし、曖昧さの可能性があるならば、本明細書で提供される定義がいずれの辞書及び外部定義よりも優先される。
【0021】
文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。例えば、本明細書で用いられる用語「一(a又はan)」は、1つ以上として定義される。
【0022】
本明細書で用いられる用語「又は」は、代替物及び相互に排他的な代替物のみを指すと明示的に示さない限り、特許請求の範囲において「及び/又は」を意味するものである。
【0023】
通常、範囲は、本明細書において「約」特定値から及び/又は「約」別の特定値までとして表される。このような範囲が表される場合、実施例は、ある特定値から及び/又は別の特定値までの範囲を含む。同様に、数値が「約」という用語を用いた近似として表される場合、前記特定値は別の実施例を形成することが理解されるべきである。さらに、各範囲の端点は、他の端点に関連している場合も他の端点から独立している場合も重要であることが理解されるべきである。本明細書で用いられる用語「約」は、±30%、好ましくは±20%、より好ましくは±10%、さらに好ましくは±5%を意味する。
【0024】
用語「推算糸球体濾過量(eGFR)」とは、統計的方法により被検体からの変数に基づいて実際のGFRを導き出したものを指す。
【0025】
用語「クレアチニンクリアランス(CCR)」とは、単位時間当たりにクレアチニンがクリアされた血漿量を指す。
【0026】
用語「参照糸球体濾過量(rGFR)」とは、体表面積(ml/min/1.73m)について調整された24時間CCRによって測定されたGFRを指す。
【0027】
用語「回帰分析」とは、変数間の関係を推定するために使用される統計的方法を指す。
【0028】
用語「微量アルブミン尿」とは、尿中アルブミンが約20〜200μg/min又は約30〜300mg/24hの速度で排泄される任意の疾患(disease)、障害(disorder)、及び病状(condition)を指す。
【0029】
用語「首周り(NC)」とは、非伸縮性のプラスチック製ベルトを用いて、被検体が直立している状態で、頚部の頚椎中央部と中央の前頚部との間で測定したものを指す。
【0030】
用語「入力ユニット」とは、使用者がデータを入力するときに、入力ユニットをトリガすることでデータを電子信号に変換し、記憶ユニットに伝送し記憶するものである。入力ユニットは、キーボード、カードリーダー、マウス、ライトペン、バーコードリーダー、スキャナー、デジタルカメラ又はデジタルコンテンツを入力するのに使用できる他の装置であり得る。
【0031】
用語「記憶ユニット」は、一般的にハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、クラウドドライブ又はデジタルコンテンツを記憶するのに使用できる装置であり得る。
【0032】
用語「処理ユニット」は、一般的にノートパソコン又はデスクトップコンピューターなどの計算能力を備えたコンピューターであり得る。前記処理ユニットは、有線又は無線方式で記憶ユニットに接続されてデータ伝送を行うことができる。
【0033】
用語「出力ユニット」は、処理ユニットが処理した結果を、文字、数字、図形又は符号等の方式で表示するか、又は記憶ユニットに記憶するものである。処理ユニットは、一般的に表示画面、プリンター、ディスクドライブ、プロッタ又はデジタルコンテンツを出力するのに使用できる他の装置であり得る。
【0034】
用語「アプリケーションプログラム」とは、コンピューター機器にインストールされ得る及び/又はコンピューター機器で実行され得る任意のアプリケーションプログラム、プログラム、モジュール及び/又はソフトウェアパッケージを指す。
【0035】
推算糸球体濾過量
特定の実施例において、前記逆対数信号の実行は、Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)である。ここで、Aの範囲は0.928から4.495、X1の範囲は0.057から1.515、X2の範囲は−1.739から−0.805、X3の範囲は−0.072から−0.085である。
【0036】
特定の実施例において、糸球体濾過量が60ml/min/1.73m未満の場合、前記個体が腎臟病に罹患している可能性があることを示す。
【0037】
他の特定の実施例において、前記信号は、血清クレアチニン、血清シスタチンC又はアルブミン尿のうちの1つ又は複数の生化学的信号をさらに含み、前記記憶ユニットは、受信した生化学的信号を記憶することをさらに含み、前記処理ユニットは、さらに前記生化学的信号、首周り信号及び年齢信号に基づいてそれらの対数信号を生成し、前記複数の対数信号と前記性別信号との加算を実行して総和を得、前記総和の逆対数変換を実行し、逆対数信号を生成する。
【0038】
他の特定の実施例において、前記逆対数信号の生成は、
(1)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)(ここで、Aの範囲は0.480から3.318、X1の範囲は0.277から1.455、X2の範囲は−1.106から−0.406、X3の範囲は−0.188から−0.051、X4の範囲は−1.2から−0.755である。)、
(2)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清シスタチンC)(ここで、Aの範囲は−0.719から2.384、X1の範囲は0.389から1.825、X2の範囲は−0.922から−0.087、X3の範囲は−0.087から0.041、X4の範囲は−1.202から−0.750である。)、
(3)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(アルブミン尿)(ここで、Aの範囲は0.283から3.607、X1の範囲は0.397から1.979、X2の範囲は−1.634から−0.741、X3の範囲は−0.055から0.087、X4の範囲は−0.048から0.030である。)、
(4)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(血清シスタチンC)(ここで、Aの範囲は−0.065から2.781、X1の範囲は0.291から1.602、X2の範囲は−1.007から−0.242、X3の範囲は−0.163から−0.035、X4の範囲は−1.061から−0.507、X5の範囲は−0.615から0.016である。)、
(5)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(アルブミン尿)(ここで、Aの範囲は0.661から3.540、X1の範囲は−0.020から1.211、X2の範囲は−1.053から−0.337、X3の範囲は−0.202から−0.072、X4の範囲は−1.373から−0.930、X5の範囲は0.028から0.104である。)、
(6)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清シスタチンC)+X5・log(アルブミン尿)(ここで、Aの範囲は−0.687から2.304、X1の範囲は0.240から1.637、X2の範囲は−0.797から0.019、X3の範囲は−0.090から0.033、X4の範囲は−1.402から−0.918、X5の範囲は0.027から0.098である。)、及び
(7)Log(eGFR)=A+X1・log(首周り)+X2・log(年齢)+X3(性別:女性=1、男性=0)+X4・log(血清クレアチニン)+X5・log(アルブミン尿)+X6・log(血清シスタチンC)(ここで、Aの範囲は0.063から2.711、X1の範囲は0.104から1.337、X2の範囲は−0.855から−0.136、X3の範囲は−0.174から−0.054、X4の範囲は−1.131から−0.611、X5の範囲は0.045から0.108、X6の範囲は−0.750から−0.150である)、
からなる群より選択される1つ又は複数に従って実行される。
【0039】
他の特定の実施例によれば、(1)から(7)のうちのいずれか1つの糸球体濾過量が60ml/min/1.73m未満であると、前記個体が腎臟病に罹患している可能性があることを示す。
特定の実施例において、前記eGFRは参照糸球体濾過量(rGFR)に対して1.75よりも小さい偏差(bias)を有し、rGFRに対して12.5よりも大きい精度(precision)を有し、又はrGFRに対して17よりも小さい標準偏差(SD)を有する。
【0040】
特定の実施例において、前記rGFR(ml/min/1.73m)は、24時間クレアチニンクリアランス(CCR)を体表面積で調整してから測定したものである。
【0041】
本発明の装置又は方法により得られたeGFRは、
(a)rGFRに対して、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50又は1.45よりも小さい偏差を有すること、
(b)rGFRに対して、12.0、12.3、12.5、12.8又は12.9よりも大きい精度を有すること、及び
(c)rGFRに対して、20、19、18又は17よりも小さい標準偏差を有すること、
のうちの1つ又は複数の性質を有する。
【0042】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施するのを支援するために提供される。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で論じる実施形態に修正及び変更を加えることができるので、実施例は本発明を過度に制限するものとして解釈されるべきではない。
【0043】
実施例1:推算糸球体濾過量
患者及びデータ収集
研究のフレームワーク
この研究は、収集されたサンプルを分析してモデルを構築する横断的研究である。この研究は、三軍総合病院及び嘉義長庚記念病院の人体試験委員会(the human trial committee of the Tri−Service General Hospital and Chiayi Chang Gung Memorial Hospital) によって審査され承認された。この研究に対する承認は、長庚記念病院(the Chang Gung Memorial Hospital)の研究倫理審査委員会(the Institutional Review Board,IRB)によって提供された(審査番号:CGMH−IRB−99−3623B)。
【0044】
被検体及びデータ収集
2010年から2011年まで、患者の症例は三軍総合病院及び嘉義長庚記念病院の心臓学クリニックから募集された患者で構成される。選択基準は、正常な腎機能を有するか又はステージ1〜5の間のCKDと診断された20歳を超える患者を含む。除外基準は、急性腎不全、遺伝性腎疾患、他の腎臓関連疾患、がん、妊娠、授乳、ステロイドの長期使用及び最近の放射線検査を受けた患者を含む。研究の目的と内容を説明した後、研究に参加する患者は同意書への署名を求められた。今回の研究では、Magnani(1997)により、α誤差の95%信頼区間で下式に従ってサンプルのサイズを算出した。
サンプルのサイズは、約139=(1.96)×(0.9)×(0.1)/(0.05)であった。
【0045】
結果測定と定義
腎機能の評価
人体表面積(rGFR)(ml/min/1.73m)に対して調整した24時間CCRで示されるGFRを腎機能評価の基準として用い、アルブミン尿を測定して腎臓損傷を評価する。24時間CCRモデルは、(24時間尿量×尿中クレアチニン濃度)/(血清クレアチニン濃度×1440)で得た値を1.73mの人体表面積に対して調整したものである。アルブミン尿の含有量を測定するために、尿中アルブミン濃度に尿量を掛けて24時間アルブミン尿濃度(mg/日)を得る。クレアチニン濃度測定は、修正Jaffe法(Jaffe Method)に基づき、SYNCHRON LXI 725(日本、東京(Tokyo,Japan))を用いて測定する。血清シスタチンC濃度測定は、粒子増強濁度イムノアッセイに基づき、Hitachi 7170シリーズアナライザー(日本、東京)を用いて行われる。
【0046】
統計分析
データ処理
SPSS 18.0を用いて統計分析する。データが正規分布でない場合、対数変換によりデータを正規化する。スピアマン相関性(Spearman’s correlation)により変数の相関性を分析して血清生化学的パラメータと標準rGFR及び腎臓損傷との相関性を検討する。α含有量は0.05に設定され、p値<0.05は各変数の相関が統計的に有意であることを示す。
【0047】
特徴選択
今回の研究では、NC(その測定は遥かに簡単で、違いは僅かである)、ほとんどの人体測定学及び腎臓生理学測定値を用いて腎機能を測定して関係を分析した。前記測定値は、例えば、ボディマス指数、腰周りとヒップ周り、年齢、収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖、血清トリグリセリド、高密度リポタンパク質(HDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、総コレステロール、クレアチニン、シスタチンC、血中尿素窒素、尿酸、総タンパク質、アルブミン、C反応性タンパク質、グルタミン酸トランスアミナーゼ(Glutamic Oxaloacetic Transaminase,GOT)、グルコン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(Glutamic Pyruvic Transaminase,GPT)、総ビリルビン、カルシウム、リン酸塩、ナトリウム及び微量アルブミン尿である。さらに、複数の変数(年齢、クレアチニン、シスタチンC、NC及び微量アルブミン尿)(図1)などの決定木分析モデルの特徴選択を用いた。CG及びMDRDの方程式と比較すると、モデル方程式は、eGFRの他の回帰モデルに用いられるために、年齢、クレアチニン、シスタチンC、NC、微量アルブミン尿及び性別を含む。
【0048】
モデル構築
決定木分析及び測定モデルの変数を用い、基本症例情報、病歴、ライフスタイル及び血液生化学指標情報を独立変数として用いた。rGFRを従属変数として用いた。決定木を用いて得られた結果をスピアマン相関係数と比較してモデルの変数を測定した。ステップワイズ重回帰は、独立変数として所定変数、従属変数として対数変換されたeGFRを用いて行われた。異常変数についても対数変換してから変数としてeGFRモデルを構築した。最終的には、モデルのR説明力に基づいて最も適切なモデルを選択した。その後、このモデルを用いてこの研究のサンプルに対して予測した。また、MDRD及びCGモデルを用いてサンプルについて計算し、各モデルの予測値を得た。その後、前記複数のモデルの信頼性及び有効性を比較した。
【0049】
結果
人口特徴の研究
基本人口統計データ
この研究には、心臓学クリニックから募集した合計177人の外来患者が含まれた。基本患者人口統計データを表1に示す。患者の平均年齢は、66.6±9.6歳であり、ほとんど男性(70.6%)であった。平均首周りは38.7±3.8cmであった。平均血圧は135.7±13.8/77.6±8.2mmHgであった。
【0050】
血液及び尿の生化学的パラメータ
GFR標準rGFRの平均値は50.4±19.7ml/min/1.73mであった。クレアチニン含有量をMDRD及びCGモデルに用いて変換した後、eGFR値は、それぞれ68.6±19.3ml/min/1.73m及び66.6±24.1ml/min/1.73mとなった。標準rGFRに比べて、該2つの値はGFRを過大に推算する傾向があった。サンプルの平均24時間アルブミン濃度は、176.1±805.1mg/日であった。微量アルブミン尿に応じて病状を分類すると、118人の患者(68.6%)は正常とみなされた(表1)。
【0051】
表1.患者の研究的な特徴
SD:標準偏差、BMI:ボディマス指数、rGFR:GFRの基準値、MDRD:腎臓病の変化、CG:コッククロフト−ゴールト
【0052】
腎機能評価モデルの構築
この研究で構築した5つのモデルを表2に示す。5つのモデルにより算出したeGFRを最高基準値と比較し、データをコッククロフト−ゴールト及びMDRDモデルに用いて比較した。モデル1では、血清クレアチニンしか考慮せず、年齢及び性別を調整した結果、説明力Rは0.522、平均予測値は48.35±14.70ml/min/1.73mであった。モデル2では、血清シスタチンCをモデルに追加した結果、説明力は0.551に増加し、平均予測値は48.47±14.70ml/min/1.73mであった。モデル3では、アルブミン尿を追加した結果、説明力は0.622に増加し、平均予測値は48.84±16.04ml/min/1.73mであった。モデル4では、初期年齢、性別、血清クレアチニン及びシスタチンCに加えて、NCを追加した結果、説明力は0.576であり、平均予測値は48.59±14.99ml/min/1.73mであった。モデル5では、6つの変数をモデルに追加した結果、説明力は0.635に増加し、平均予測値は48.90±16.28ml/min/1.73mであった。
【0053】
GFR予測での各モデルの信頼性及び有効性を比較した。結果として、平均rGFRは50.33±19.26ml/min/1.73m、血清クレアチニンのみにより構築したMDRD及びコッククロフト−ゴールトモデルでは、平均値はそれぞれ68.54±19.66ml/min/1.73m及び66.22±24.01ml/min/1.73mであった(表2)。平均rGFRに対して、この2つのモデルの偏差は、それぞれ−18.21及び−15.89であり、精度は16.28及び16.95であり、2つの偏差はいずれも有意差を示した。モデル1は、血清クレアチニンのみにより構築したものであり、その偏差は2.01、精度は14.04であった。両者の間の偏差のp値は0.062であった。血清シスタチンCをモデル2に追加した後、予測値とrGFRとの間の偏差は1.86に低減し、精度は13.48であり、これは、シスタチンCを転化した後、予測能力はクレアチニンのみによるモデルよりも向上したことを示している。さらに、モデル3及び4には、それぞれアルブミン尿及びNCを追加した。モデル3の偏差は1.49、精度は12.89であり、モデル4の偏差は1.74、精度は12.97であった。これらの結果は、アルブミン尿を追加することにより、偏差はさらに顕著に低減したことを示している。モデル5には、同時に2つの変数を追加した結果、偏差は1.40、精度は12.53であった。血清シスタチンCとrGFRとの相関性は、クレアチニンよりも高く、この2つの指標間のアルブミン濃度との相関性の差は大量アルブミン尿(r=0.785対r=0.597)の場合にのみ顕著であった(表3)。
【0054】
表2:各GFR式の誤差値、精度及び相関性の比較
偏差:平均差、精度:偏差のSD、CG:Cockcroft−Gault、crea:クレアチニン、cysC:シスタチンC、NC:首周り、microalb:微量アルブミン尿
Cockcroft−Gault:((140−年齢)×体重)/(0.72×crea)×(0.85、女性の場合)
MDRD:186×crea−1.154×年齢−0.203×(0.742、女性の場合)×(1.212、黒人の場合)
式1:2387×年齢−0.894×crea−0.998×(0.100、女性の場合)
式2:1504×年齢−0.731×crea−0.819×cysC−0.235×(0.162、女性の場合)
式3:554×年齢−0.610×crea−0.903×cysC−0.414×microalb0.082×(0.704、女性の場合)
式4:23×年齢−0.625×crea−0.784×cysC−0.299×NC0.947(0.502、女性の場合)
式5:24×年齢−0.495×crea−0.871×cysC−0.45×NC0.45×microalb0.077×(0.502、女性の場合)
【0055】
表3:アルブミン尿の重症度により、クレアチニン及びシスタチンCとrGFR及びアルブミン尿が層化した後の生化学的パラメータの相関性を比較する。
rGFR:GFRの基準値
【0056】
本発明の結果より明らかであるように、血清シスタチンCを追加した後、従来の単なる血清クレアチニンモデルに比べてeGFRの予測能力を改善することができる。アルブミン尿を計算することにより、偏差をより顕著に低減させることができる。アルブミン尿及び首周りの式を組み合わせることでより正確なeGFR予測を得ることができる。
【0057】
実施例2:糸球体濾過量を推算する装置
本発明の糸球体濾過量を推算する装置は、入力ユニット、記憶ユニット、処理ユニット及び出力ユニットを含む。実施例1で得られた多変数式を記憶ユニットのアプリケーションプログラムに記憶した。前記アプリケーションプログラムは、入力ユニットを介して個体の測定した各個変数を入力し、出力ユニットを介して多変数式で算出した推算糸球体濾過量値を出力することができるように設計された。
【0058】
当業者であれば、例示的な実施例に記載の本発明の多くの修正及び変形を想到できると考えられる。従って、添付した特許出願の範囲に現れるこのような制限のみが本発明に適用される。
【0059】
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図1