【実施例】
【0058】
一般的方法:HPLCは、ダイオードアレイ検出を備えた島津HPLCシステムを用いて行った。逆相には、40℃に自動温度調節したPhenomenex(登録商標)Jupiter 5μm 300Å 4.6×150mmカラムを使用し、0.1%のTFAを含有する水中の20〜100%アセトニトリル勾配を1.0mL/分の流速で用いた。サイズ排除HPLCは、Phenomenex(登録商標)BioSep(商標)S−2000カラムを、40℃で、50:50アセトニトリル/水/0.1%TFAをランニングして使用した。SN−38を含有する溶液は、e=22,500M
−1cm
−1を用いて、アセトニトリル中の363nmにおけるUV吸光度により定量した。SN−38はHaorui社(中国)から購入した。
【0059】
調製A
6−アジド−1−ヘキサノール
【0060】
【化7】
【0061】
水400mL中の6−クロロ−1−ヘキサノール(50.0g,366mmol)とアジ化ナトリウム(65.0g,1000mmol)の混合物を19時間穏やかに加熱還流した。周囲温度に冷却した後、この混合物を3×200mLのEtOAcで抽出した。抽出物を1×100mLの水、1×100mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した後、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させることにより無色のオイル44.9g(86%)が得られた。
1H−NMR (400MHz,CDCl
3):δ 3.66(2H,br t,J=6Hz),3.27(2H,t,J=7.2Hz),1.55−1.66(m,4H),1.38−1.44(m,2H)。
【0062】
調製B
6−アジドヘキサナール
【0063】
【化8】
【0064】
トリクロロイソシアヌル酸(12.2g,52.5mmol)を、氷上で冷却したジクロロメタン100mL中の6−アジド−1−ヘキサノール(7.2g,50.0mmol)の強撹拌溶液に添加した。得られた懸濁液に、ジクロロメタン2mL中のTEMPO(0.080g,0.51mmol)溶液を滴下した。4℃で10分後、この懸濁液を周囲温度まで温め、さらに30分間撹拌した。TLC分析(30%EtOAc/ヘキサン)は完全な反応を示した。この懸濁液を、ジクロロメタンを用いて1cmのセライトパッドを通してろ過した。ろ液を2×100mLの1M Na
2CO
3、1×100mLの水、1×100mLの1N HCl、及び1×100mLの飽和NaCl水溶液で洗浄した後、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させることによりオレンジ色のオイル9.8gが得られた。これを少容量のジクロロメタン中に溶解し、0〜20%EtOAc/ヘキサン勾配を用いてSiO
2(80g)のクロマトグラフィーにかけることにより、アルデヒド生成物6.67g(47.3mmol;95%)を無色のオイルとして得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 9.78(1H,t,J=1.6Hz),3.29(2H,t,J=6.8Hz),2.47(2H,dt,J=1.6,7.6Hz),1.59−1.71(m,4H),1.38−1.46(m,2H)。
【0065】
調製C
7−アジド−1−シアノ−2−ヘプタノール
【0066】
【化9】
【0067】
ヘキサン中の1.6M n−ブチルリチウム溶液(35mL,49mmol)をN
2下、−78℃で、無水THF100mLに添加した。アセトニトリル(3.14mL,60mmol)を強撹拌しながら高速流で加え、白色の懸濁液を形成させた。15分後、この懸濁液を1時間以上にわたって−20℃に温めた。再び−78℃に冷却した後、6−アジドヘキサナール(6.67g,47mmol)を添加し、黄色の溶液を得た。これをさらに15分間撹拌し、次いで−20℃まで温め、飽和NH
4Cl水溶液20mLを添加してクエンチした。EtOAcで希釈した後、この混合物を水、1N HCl、水、及び飽和NaCl水溶液で順次洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させることにより、黄色のオイル8.0gを得た。これを少容量のジクロロメタン中に溶解し、0〜40%EtOAc/ヘキサン勾配を用いてSiO
2(80g)のクロマトグラフィーにかけることにより、生成物6.0g(21.6mmol;84%)が無色のオイルとして得られた。
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 5.18(1H,d,J=5Hz),3.69(1H,m),3.32(2H,t,J=6Hz),2.60(1H,dd,J=4.8,16.4Hz),2.51(1H,dd,J=6.4,16.4Hz),1.55(2H,m),1.42(2H,m),1.30(4H,m)。
【0068】
調製D
N,N−ジエチル 4−ニトロベンズアミド
【0069】
【化10】
【0070】
アセトニトリル100mL中の塩化4−ニトロベンゾイル(18.6g,100mmol)溶液を、水150mL中のジエチルアミン(15.5mL,150mmol)と水酸化ナトリウム(6.0g,150mmol)の撹拌氷冷溶液に30分かけて滴下した。滴下終了後、この混合物を周囲温度まで温めて、さらに1時間撹拌した。この混合物を3×100mLのCH
2Cl
2で抽出し、合わせた抽出物を1×100mLの水、1×100mLの1N HCl、及びブラインで洗浄した。MgSO
4で乾燥させた後、この混合物をろ過し、蒸発乾固させて結晶塊を得た。ヘキサン/酢酸エチル=80/20から再結晶し、生成物20.0gを淡黄色の結晶として得た(90%)。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.27(2H,m),7.54(2H,m),3.57(2H,br q,J=6.8Hz),3.21(2H,br q,J=6.8Hz),1.27(3H,br t,J=6.8Hz),1.12(3H,br t,J=6.8Hz)。
【0071】
調製E
4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリン
【0072】
【化11】
【0073】
ギ酸アンモニウム(20.0g,317mmol)を、氷上で冷却したメタノール400mL中のN,N−ジエチル 4−ニトロベンズアミド(20.0g,90mmol)と10%パラジウム/活性炭1.0gの強撹拌混合物に添加した。この反応物は活発なガスの発生を伴って温かくなる。1時間後、TLC(ヘキサン/EtOAc=60/40)が出発物質の完全な変換を示した。この混合物をセライトパッドによりろ過し、蒸発させて結晶性の固体を得た。これを水中に懸濁させ、真空ろ過により回収した。この生成物を水から再結晶して乾燥させることにより、白色結晶14.14g(83%)が得られた。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.22(2H,m),6.65(2H,m),3.81(2H,br s),3.42(4H,br s),1.17(6H,t,J=6.8Hz)。
【0074】
調製F
1−シアノ−7−アジド−2−ヘプチル 4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート
【0075】
【化12】
【0076】
ピリジン(4.0mL,50mmol)を、氷上で冷却した無水THF 200mL中の1−シアノ−7−アジド−2−ヘプタノール(4.60g,25mmol)とトリホスゲン(12.5g,42mmol)の撹拌溶液に不活性雰囲気下で滴下した。白色の懸濁液を氷上で15分間撹拌し、次いで周囲温度まで温めて、さらに30分撹拌した。TLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=60/40)は、出発物質が、高R
f生成物へと完全に変換したことを示した。この懸濁液をろ過して蒸発させ、残留物を100mLの乾燥エーテル中に移してろ過し、蒸発させることにより、粗クロロホルメート(4.54g,74%)が褐色のオイルとして得られた。トリエチルアミン(3.5mL,25mmol)を、乾燥CH
2Cl
2 100mL中のクロロホルメート(18.6mmol)と4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリン(3.85g,20mmol)の溶液に添加した。1時間撹拌した後、この混合物を1N HClで2回、水で2回、ブラインで1回洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させてオイルを得、これを放置することで結晶化させた。この結晶塊をヘキサン/酢酸エチル=60/40で洗浄した。洗浄液を濃縮し、0〜80%酢酸エチル/ヘキサン勾配を用いてシリカのクロマトグラフィーにかけた。生成物画分を濃縮し、最初の結晶物質と一緒にした。合わせた生成物を1/1の酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、カルバメートを白色の結晶性固体(4.4g, 2工程で44%)として得た。
1H−NMR(CDCl
3,400MHz):δ 7.45−7.35(4H,m),6.888(1H,br s),5.000(1H,m),3.52(4H,br),3.288(2H,t,J=6.8Hz),2.841(1H,dd,J=5.2,17Hz),2.327(1H,dd,J=4.4,17Hz),1.88(1H,m),1.75(1H,m),1.63(2H,m),1.45(4H,m),1.18(6H,br)。
【0077】
調製G
N−(クロロメチル)カルバメート
【0078】
【化13】
【0079】
7−アジド−1−シアノ−2−ヘキシル N−(クロロメチル)−4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)−フェニルカルバメート(2.00g,5.0mmol)、パラホルムアルデヒド(225mg,5.5mmol,1.5当量)、クロロトリメチルシラン(2.5mL,20.0mmol,4.0当量)、及び、無水トルエン25mLの懸濁液を、N
2雰囲気下に、磁気撹拌棒を備えた50mL RBFに入れて、ラバーセプタムキャップで密閉した。密封したフラスコを50℃の油浴中で24時間加熱したところ、この時点で透明な黄色の溶液が得られた。この溶液を周囲温度まで冷却して蒸発させた。残留物を乾燥トルエン10mLに再溶解し、ろ過し、蒸発させることにより、粗N−(クロロメチル)−カルバメートが残留トルエンを含む不安定な黄色のオイルとして得られた(2.68g,予測値の119%)。この物質を無水THF10mLに溶解して、N
2下に保存した。N−(クロロメチル)カルバメートの形成は、エタノール中の4mM N,N−ジイソプロピルエチルアミン1.0mLへ5μL添加した後、逆相HPLC分析(Phenomenex Jupiter 300Å 4.6×150mm C
18;1.0mL/分;10分かけて20〜100%CH
3CN/H
2O/0.1%TFAの勾配)により確認した。出発カルバメートは8.42分で溶出し、λ
max 243nmを示す;生成物N−(エトキシメチル)−カルバメートは8.52分で溶出し、λ
max 231nmを示す;未知の不純物は8.04分で溶出し、λ
max 245nmを示す。240nmでのピーク積分は、約89%のN−(エトキシメチル)−カルバメートを示した。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.39(4H,m),5.54(1H,d,J=12Hz),5.48(1H,d,J=12Hz),4.99(1H,m),3.51(4H,br),3.26(2H,t,J=6.8Hz),2.79(1H,m),2.63(1H,m),1.85(1H,m),1.73(1H,m),1.60(2H,m),1.43(4H,m),1.16(6H,br)。
【0080】
調製H
アジドリンカー−SN−38
【0081】
【化14】
【0082】
SN−38(1.00g,2.55mmol;Haorui社)を無水ピリジン10mLに懸濁し、次いで真空下で濃縮乾固した(浴温50℃)。これを無水THF10mLで繰り返した。得られた淡黄色固体を無水THF50mLと無水DMF50mL中、N
2雰囲気下で溶解し、その後氷上で冷却した。THF中のカリウムtert−ブトキシドの1.0M溶液(2.55mL,2.55mmol)を添加したところ、最初に暗緑色を発色し、これは濃いオレンジ色の懸濁液に変化した。15分後、N−(クロロメチル)−カルバメート(7.5mL,2.8mmol)のTHF溶液を添加した。4℃で15分後、明るいオレンジ色の混合物を周囲温度まで温めた。1時間後、HPLC分析(5μLのサンプル+1mLのアセトニトリル/0.1%TFA)により、86/14の生成物/SN−38が示された。淡黄色の混合物を酢酸エチル200mLで希釈し、2×100mLの水、100mLの飽和NaCl水溶液で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。オイル状残留物を水でトリチュレーションすることによって過剰のDMFを除去し、その残留物をアセトニトリル50mLに溶解し、ろ過し、蒸発させて、黄色のガラス2.96gを得た。この残留物を、それぞれ200mLの、ヘキサン、ヘキサン中の20%、40%、60%、80%、及び100%アセトンの段階的勾配を用いてSiO
2(80g)でクロマトグラフィーにかけ、精製されたアジドリンカー−SN−38(1.66g,81%)を得た。この物質をアセトン50mLに溶解し、0.1%酢酸水溶液45mLをこの混合物が濁るまで撹拌しながら滴下した。撹拌時に、固形物が分離した。その後、追加の0.1%酢酸水溶液5mLを添加して沈殿を完了させた。2時間撹拌した後、その固形物を真空濾過によって回収し、水で洗浄し、乾燥させて淡黄色粉末1.44g(70%)を得た。
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):d 8.15(1H,d,J=9.2Hz),7.60(1H,s),7.48(1H,dd,J=2,9Hz),7.40(4H,m),7.25(1H,d,J=2),5.75(2H,br),5.73(1H,d,J=16Hz),5.28(1H,d,J=16Hz),5.22(2H,s),4.99(1H,m),3.84(1H,s),3.53(2H,br),3.53(2H,br),3.17(2H,t,J=7Hz),3.12(2H,q,J=7Hz),2.74(1H,dd,J=1,17Hz),2.54(1H,dd,J=5,17),1.86(2H,m),1.6(1H,m),1.46(1H,m),1.37(3H,t,J=7Hz),1.25(6H,m),1.12(4H,m),1.02(3H,t,J=7.3Hz)。LC−MS:[M+H]
+=805.3(C
44H
51N
8O
8の計算値=805.3)。
【0083】
実施例1
アミノリンカー−SN−38酢酸塩
【0084】
【化15】
【0085】
THF中のトリメチルホスフィンの1M溶液(2.9mL,2.9mmol)を、THF10mL中のアジドリンカー−SN−38(1.13g,1.4mmol)と酢酸(0.19mL,3.3mmol)の溶液に添加した。ガスが徐々に放出された。2時間撹拌した後、水(1.0mL)を添加し、この混合物をさらに1時間撹拌した。この残留物をエーテルと水とに分配した。水相を酢酸エチルで1回洗浄し、得られた透明な黄色の水相を蒸発させて黄色の泡状物800mgを得た。これをTHFに溶解し、ろ過し、UV吸光度により定量して、1.2μmol(86%)の生成物を含有する溶液が得られた。C
18 HPLCは単一のピークを示し、LC−MSは[M+H]
+=779.3(予測値779.4)を示した。
【0086】
実施例2
化合物(III)(式中m=1及びn約225)とのSN−38コンジュゲート
40kDa 4−アームテトラ−(スクシンイミジル−カルボキシメチル)−PEG(JenKem Technology社;10.0g,1.0mmol HSE)、実施例1のアミノリンカー−SN−38酢酸塩(1.2mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.21mL,1.2mmol)のTHF 75mL中の混合物を周囲温度に保持した。カップリングの進行をHPLCでモニターし、90分までに反応の完了が示された。合計2時間後、この混合物を撹拌したMTBE 500mL中にろ過した。沈殿物を真空ろ過により回収し、MTBEで洗浄し、真空下で乾燥させて、コンジュゲートをワックス状の淡黄色固体(10.1g,95%)として得た。水1.0mL中の2.0mgサンプルの吸光光度分析は、0.17mMのSN−38を示した;重量により予測された0.175mM SN−38の計算値に基づくと、これは96%のコンジュゲートローディングを示す。C
18−HPLC分析は、単一の主要ピーク(363nmで全ピーク面積の98%、256nmで97%)を、0.6mol%の遊離SN−38と共に示した。
【0087】
このコンジュゲートは、pH5.0、10mM酢酸ナトリウム緩衝液中に1.9mM(85mg/mL)まで溶解した。対照的に、調製Hのアジドリンカー−SN−38をPEG
40kD−(DBCO)
4にトリアゾール結合を介して連結させた、対応するコンジュゲート(WO2011/140393)は、0.7mM(32mg/mL)しか溶解しなかった。また、実施例2のコンジュゲートの溶解度を、pH4及びpH5の0.2N酢酸塩緩衝液中、並びに、pH6、pH7及びpH8の0.2Nリン酸塩緩衝液中にて試験した。その溶解度はこれら全てのpHにおいて>300mg/mlであった。しかし、pHは、コンジュゲートを溶解したときにわずかに変化し、一般的にはもとの値よりも上昇した。よって、300mg/mlのコンジュゲートをpH4の緩衝液中に溶解させた場合、pHは4.5となり;pH5の緩衝液中では、pHが5.4となり;pH6の緩衝液中では、pHが6.2となり;pH7の緩衝液中では、pHが7.2となり;かつ、pH8の緩衝液中では、pHが7.7となった。
【0088】
10mg/mlのコンジュゲートをpH4〜pH8の緩衝液及び水中に室温で溶解させて7日間室温に保持した時の安定性も試験した。各種緩衝液中のコンジュゲートの純度は、HPLCで測定した。
【0089】
典型的には、0日目の純度は100%をやや下回って測定され、一般的には約97%であった。水中で試験したどのpHでも7日間にわたって測定した純度の変化は、観察されてもわずかであった。
【0090】
実施例3
インビトロ放出反応カイネティクス
0.1Mホウ酸ナトリウムpH9.4中の実施例2のコンジュゲートの溶液を、密閉したUVキュベット内に37℃で保持した。遊離SN−38フェノキシドの形成による414nmでの吸光度の増加を経時的にモニターした。単一指数関数A
max*(1−e
−kt)(ここで、A
maxは完全な反応での吸光度である)へのデータのフィッティングにより、pH9.4におけるコンジュゲートからのSN−38の放出の速度定数kを求めた。
図6に示されるように、pH9.4における遊離SN−38の形成は、k=0.00257min
−1(t
1/2=270分)で一次反応速度論に従った。これらのリンカーの放出速度はヒドロキシドでは一次であることが知られているので、他のpH値での放出速度は、k(pH)=k
9.
4*10
(pH−9.4)として計算することができる。よって、pH7.4におけるSN−38の放出速度は、pH7.4、37℃で2.57×10
−5min
−1、又はt
1/2=450時間であると算出される。
【0091】
実施例4
インビボ薬物動態
pH5.0の10mM酢酸ナトリウム緩衝液中の実施例2のコンジュゲートの45mg/mL溶液を滅菌ろ過し、カニューレを挿入した雌Sprague−Dawleyラット(n=3)に200mg/kgで注入し、血液サンプル(0.3mL)を定期的に採取し、直ちにpH4.5の1Mクエン酸塩/0.1%Pluronic(登録商標)F68溶液30μLに添加してサンプルのpHを低下させ、凝固させて、残存する完全な(intact)コンジュゲートを安定化させた。このサンプルを2〜8℃、約1,500×g(遠心力)で10分間遠心分離し、赤血球を除去して約150μLの血漿を得た。その血漿を2つのアリコートに分割し、極低温バイアルに移して、分析前に−80℃の冷凍庫内で保存した。
【0092】
分析のため、サンプルを氷上で解凍し、内部標準として8ng/mLのカンプトテシンを含有するアセトニトリル/0.5%酢酸の2倍容量と混合した。4℃、1,6000×gで10分間遠心分離して、沈殿したタンパク質を除去した。サンプル上清(20μL)は、40℃に自動温度調節したPhenomenex(登録商標)300Å Jupiter 5μm 150×4.6mm C18 HPLCカラムを使用して、pH4.0の100mMリン酸ナトリウム、3mMへプタンスルホン酸塩(緩衝液A)及び75%アセトニトリル水溶液(緩衝液B)の勾配を1.0mL/分で用いて分析した。勾配は、5%のBで3分間のアイソクラティック、20%のBで3分間のアイソクラチック、5分間かけて20〜40%のBの直線勾配、2分間かけて40〜100%のBの直線勾配、100%のBで3分間のアイソクラチック、5%のBで3分間のアイソクラチックとした。サンプルの溶出は、ダイオードアレイ検出器と蛍光検出器を用いて、最初の9分間は励起を370nmに、発光を470nmに設定した後、最後の10分間は発光を534nmに設定して検出した。濃度は、ピーク面積を、コンジュゲート(吸光度380nm)及びSN−38(蛍光励起:370nm;発光:534nm)の標準曲線と比較することによって算出した。次の保持時間が観察された:SN−38、12.7分;カンプトテシン、13.2分;及びコンジュゲート、14.5分。定量下限は、蛍光検出によるシグナル対ノイズ比の10倍のピーク高さとして決定された。SN−38:20μL注入のアセトニトリル処理血漿中0.07ピコモル(アセトニトリル処理血漿中3.3nM、もとの血漿サンプル中10nM)。コンジュゲート:アセトニトリル処理血漿では20μL注入のアセトニトリル処理血漿(100nMのコンジュゲート;400nMのSN−38)中2.1ピコモルのコンジュゲート(8.4ピコモルのSN−38)、もとの血漿サンプル中300nM(1200nMのSN−38)。
【0093】
血漿からの完全なコンジュゲートのクリアランスに関する情報を取得するために、同様の安定なコンジュゲート(CH
2CNが存在しない式(II))を22mg/kgで用いて類似の実験を行った。
【0094】
SN−38グルクロニドのレベルは、Poujol,et al.,「ヒト血漿及び唾液中のイリノテカン及び4種の主要代謝産物のための高感度HPLC−蛍光法:薬物動態試験への応用」,Clinical Chemistry(2003)49:1900−1908に記載の方法に従って測定した。
【0095】
実施例5
薬物動態モデリング
コンジュゲートの血漿濃度対時間データは、2相モデルC(t)=A*exp(−αt)+B*exp(−βt)(ここでA+B=用量/Vd)を用いて分析した。非線形回帰分析(ネルダー・ミードの滑降シンプレックス(Nelder−Mead downhill simplex))を用いてデータをフィッティングさせ、その後、コンパートメント間の移動速度(k
12及びk
21)と中心コンパートメントからのコンジュゲートの消失速度(k
el)の推定値を得るために、確立された手法に従ってパラメータをデコンボリューションした。実施例2のコンジュゲート及び対応する安定なコンジュゲート(CH
2CNがHで置換されたもの)のデータ分析から、表1のデータが得られた。
【0096】
【表1】
【0097】
これらのパラメータを用いて、次に遊離SN−38の濃度データをモデルに基づいてフィッティングさせた。このモデルでは、コンジュゲートが速度定数k
1で遊離SN−38を放出し、K
dist=V
d/V
cで第2コンパートメントと平衡化する。モデル曲線は、以下の微分方程式を用いた数値積分法により作成した:
Δ[C
c]=(−k
1[C
c]−k
12[C
c]−k
el[C
c]+k
21[C
p])Δt
Δ[C
p]=(k
12[C
c]−k
21[C
p])Δt
Δ[D
c]=(k
1[C
c]−k
cl[D
c])/(1+K
dist)Δt
K
dist=V
d/V
c
【0098】
ここで、[C
c]及び[C
p]は、それぞれ、中心コンパートメント及び末梢コンパートメント中のコンジュゲート化SN−38の濃度であり、[D
c]は中心コンパートメント中の遊離SN−38の濃度であり、速度定数は上記の通りである;k
clは、血漿からの遊離SN−38の消失速度定数であり、このパラメータについて報告された範囲内(1.4〜3.5h
−1)で変化させた。数値積分は、初期条件[C
c]=C
max、[C
p]=0、及び[D
c]=0を用いて120時間のタイムスパン(Δt=0.12時間)について1000ステップ以上行った。SN−38の容積分布V
dは報告された0.18L/kgの値に設定し、一方V
cはコンジュゲートのV
dとして設定した。
【0099】
この方法を用いて、コンジュゲート化SN−38及びコンジュゲートから放出された遊離SN−38についての濃度対時間データを、
図7に示すようにフィッティングさせた。血漿からの遊離SN−38の消失を十分に報告された範囲内であるk
cl=2.77h
−1(t
1/2=0.25時間)とした場合、及びk
1をインビトロの測定値である0.00173h
−1(コンジュゲートからのSN−38切断のためのt
1/2=400時間)に設定した場合、実験データとの良好な一致が得られた。
【0100】
このモデルを使用すると、これらの種でのk
el及びk
clの値が与えられれば、他の種におけるコンジュゲートの挙動を予測することが可能である。ヒトでは、PEG(k
el)及びSN−38(k
cl)の消失ならびに分布容積の値は報告されていないが、アロメトリック・スケーリングを用いて、おおよそk
el=0.0087
−1(t
1/2=80時間)、k
cl=0.7h
−1(t
1/2=1時間)、及びV
ss=0.15L/kgであると推定することができる(創薬における薬物動態パラメータのアロメトリック・スケーリング:ヒトCL、Vss及びt1/2はインビボでのラットデータから予測できるか?」,Eur J Drug Metab Pharmacokinet.(2004)29:133−143)。薬物動態モデルでこれらの値を使用することにより遊離SN−38の推定上の濃度範囲が、C
max/C
minが約2.5として得られた。
【0101】
実施例6
持続注入用のSN−38の製剤
SN−38の治療的投与は、この薬物の低い水溶性(水に7mg/L、18μM)により制限されてきた。この制限を克服するための製剤が開発された。さまざまな製剤中のSN−38の溶解性を調べるために、ジメチルスルホキシド(DMSO)中のSN−38の115mM溶液を希釈して、各種製剤中の15、10、5、及び2mMの目標濃度を得た(表2)。周囲温度で16時間放置した後、沈殿したSN−38を14,000rpmで30分間遠心分離して除去した。上清をpH10.0、100mMホウ酸塩中に1:200で希釈し、SN−38の濃度を、ε
414=22,500M
−1cm
−1を用いて414nmにおける分光光度法により測定した。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
製剤E及びF中のSN−38は、試験した最高濃度で完全に可溶性のままであった。PEG300以外のポリエチレングリコールは、同様に有利に使用することができると予想される。さらに、これらの薬学的製剤は、該製剤を持続注入により投与することで、SN−38への暴露を必要とする患者へのSN−38への連続的暴露を維持するために使用できることが期待される。このような持続注入は、医療分野で公知の方法のいずれかにより、例えば注入ポンプの使用により、又は静脈内点滴により、実施することができる。