(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842486
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】分散及び粉砕機
(51)【国際特許分類】
B02C 7/08 20060101AFI20210308BHJP
B02C 7/12 20060101ALI20210308BHJP
B02C 7/14 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B02C7/08
B02C7/12
B02C7/14
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-41091(P2019-41091)
(22)【出願日】2019年3月7日
(65)【公開番号】特開2020-142195(P2020-142195A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】519080399
【氏名又は名称】渡辺 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆夫
【審査官】
瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−091337(JP,U)
【文献】
特表平02−500604(JP,A)
【文献】
特開昭63−291646(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/008394(WO,A1)
【文献】
特開2004−049957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理流体の微細粉体を少なくとも1μm以下の微細粒子径に分散及び粉砕する分散粉砕機であって、
前記分散粉砕機を密閉するケースと、
該ケース内に所定圧力を有する被処理流体を導入する導入口と、
該導入口に形成される導入路の導入方向に対向する表面に対向面を有し、前記導入方向を軸方向として回転処理する回転処理体と、
前記導入路から連続して前記回転処理体の裏面側となる処理路に通じる流路と、
前記回転処理体の裏面側となる処理路に隣接し、前記回転処理体と対向する位置に固定して配置される固定処理体と、
前記被処理流体を前記処理路で分散及び粉砕して前記ケースから排出する排出口と、を有することを特徴とする分散粉砕装置。
【請求項2】
回転処理体は、表面に対向面が形成される所定の長手方向長さを有する本体部と、該本体部の対向面を含む表面部分を外周端から連続して外周方向に突出して形成される広狭部とからなり、
処理路は、広狭部の裏面側に形成されることを特徴とする請求項1に記載の分散粉砕装置。
【請求項3】
前記被処理流体のケース内の流路は、前記導入路から前記回転処理体の対向面に沿って外方に向かう対向面路と、該対向面路から下方に傾斜する傾斜面路と、該傾斜面路から前記回転処理体の周縁に沿って垂下する垂下面路と、該垂下面路から回転処理体の軸方向に形成する処理路とからなり、
導入路から処理路にかけて漸次に流路径が小さくなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の分散粉砕装置。
【請求項4】
固定処理体は、深さを10μm以下とする複数の溝部と前記回転処理体と10μm以下で隣接する隣接部と交互に連続して形成することを特徴とする請求項1、2または3のいずれかに記載の分散粉砕装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被分散及び被粉砕物を加えた流体において、分散及び粉砕する分散及び粉砕機にかかる発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、医薬品や顔料に加え、希少金属粉等の粒子を微細化するための、分散及び粉砕が求められてきた。特に希少金属粉に至っては、従来よりも、より細かい20μm以下の分散、粉砕精度が求められている。この20μm以下の分散、粉砕精度を達成するものとして特許文献1に記載の磨砕機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−154635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、回転する研磨部材の回転中心から被処理物を搬送する流体を供給して外側に排出するものであって、研磨部材の一方が他方に対して接近、離反可能に配設し、付勢機構により微小間隔に維持することを特徴としている。しかし、動圧発生機構により動圧を加えられた流体を供給した場合、常にローターを押し下げる方向に力が作用するため、付勢力との均衡により微小間隔を維持することは困難であった。
【0005】
そこで、流体の供給による動圧を利用しつつ、適切に微小間隔を維持する分散粉砕機が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分散粉砕機は、被処理流体の微細粉体を少なくとも1μm以下の微細粒子径に分散及び粉砕する分散粉砕機であって、前記分散粉砕機を密閉するケースと、該ケース内に所定圧力を有する被処理流体を導入する導入口と、該導入口に形成される導入路の導入方向に対向する表面に対向面を有し、前記導入方向を軸方向として回転処理する回転処理体と、前記導入路から連続して前記回転処理体の裏面側となる処理路に通じる流路と、前記回転処理体の裏面側となる処理路に隣接し、前記回転処理体と対向する位置に固定して配置される固定処理体と、前記被処理流体を前記処理路で分散及び粉砕して前記ケースから排出する排出口と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、回転処理体は、表面に対向面が形成される所定の長手方向長さを有する本体部と、該本体部の対向面を含む表面部分を外周端から連続して外周方向に突出して形成される広狭部とからなり、処理路は、広狭部の裏面側に形成されることが好ましい。
【0008】
また、前記被処理流体のケース内の流路は、前記導入路から前記回転処理体の対向面に沿って外方に向かう対向面路と、該対向面路から下方に傾斜する傾斜面路と、該傾斜面路から前記回転処理体の周縁に沿って垂下する垂下面路と、該垂下面路から回転処理体の軸方向に形成する処理路とからなり、導入路から処理路にかけて漸次に流路径が小さくなることが好ましい。
【0009】
また、固定処理体は、深さを10μm以下とする複数の溝部と前記回転処理体と10μm以下で隣接する隣接部と交互に連続して形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明により、回転処理体と固定処理体とのズリ応力により微細化をすることができる。特に、微細化にあたり、被処理流体の導入路に対向する対向面を有するため、回転処理体が導入路の導入方向に向けて微細に押し出されてしまうが、処理路を回転処理体の裏面側に形成することにより、この圧力を利用して隙間、クリアランスを維持することが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明により、請求項1の効果に加え、略茸型の形態となって外周を経由して処理路では外方から内方に向けた流入方向となる。これにより回転する回転処理体の遠心力に抗って処理路で処理することとなり、処理路への流入量を調整し、円満な微細処理を可能にすることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明により、流路が暫時的に狭くなることから、処理路への流入量を調整し、円満な微細処理をすることができる。
【0013】
請求項4に記載の内容により、10μm以下の溝を配置することにより、回転処理体が導入方向への押出がなされたとしても、固定処理体の表面に近接した状態となり、溝による微細処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る分散粉砕装置の全体断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の分散粉砕装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施例に関し、
図1の導入路R1側を上側、排出路R7側を下側として説明するが、本発明の実施形態の上下方向を限定するものではない。
【0016】
本発明の分散粉砕装置1は、医薬品、界面活性剤、顔料、酸化物や金属粉等の粒子を微細化することを目的とするものであって、特にコンタミと呼ばれる不純物が付着しないように、メディアレスにより希少金属を微細化することに適している。本発明の分散粉砕装置1は希少金属等を少量処理し、少なくとも1μm以下の微細粒子に処理するためのものである。後述する処理路R5において、回転処理体11の処理面13と固定処理体21の処理面(表面22と溝23)との隙間(クリアランス)を狭め、ずり応力を与えることで微細化するものである(
図3参照)。
【0017】
本発明の分散粉砕対象は流体であって、3乃至20L/Hの処理量であり、比較的少数の流体を処理するものである。また、適正粘度は1万cp乃至5万cp程度であり、比較的高い粘度の流体に対しても処理が可能になる。
【0018】
図1に示すように、本発明の分散粉砕装置1は、上方に導入口2を有し、側方に排出口3を有し、導入口2と排出口3との間を流路R1乃至R7が形成されている(
図2参照)。流路の周囲は複数に分割されたケース4、4によりケーシングされており、完全に密閉される。
【0019】
分散粉砕装置1には、その内部にローターと呼ばれる回転処理体11が本体11a内の軸12により回転可能に配置されている。本説明において、回転処理体11の上下方向の導入口2側を表面側とし、排出口3側を裏面側として説明している。回転処理体11は、円筒状の本体11aの上表面であって導入口2と対向する位置となる対向面12aを有し、この対向面12aの外周方向に傘状に広がる広狭部11b、11bを有する。
図1は断面図であるため、回転処理体11は上側を幅広くした謂わば茸型の形状となる。
【0020】
図1、2に示すように、対向面12aは導入口2から被処理流体Sが導入された状態で、導入路R1の導入方向に対向して、被処理流体Sの流入圧力が付加されるように抗う位置にある。対向面12aの形態は、導入方向に直交するように正対することが好ましいが、厳密な垂直面でなく湾曲等の形態を有していてもよく、両側に流れやすくするために、中央位置に凸を形成するものであってもよい。対向面12aは、所定の広さを有する。この広さは、本実施形態では導入口2の直径に比して約8倍程度の直径を有し、後述する対向面路R2の幅は導入路R1の3分の1程度である。そのため、被処理流体Sが導入路R1より導入され、対向面12aに接触し、対向面路R2を通過する際に回転処理体11に対し、導入方向に所定の圧力をかけることとなる。
【0021】
広狭部11b、11bは、本体11a及び対向面12aよりも外周側、外方に位置するもので、その上面は対向面12aの外周側端から連続して下方に傾斜する第一の傾斜面12b、12bを有し、第一の傾斜面12b、12bの外周側端から下方に垂下する垂下面12c、12c、垂下面12c、12cの下端から本体11a側に向かう処理面13、13を有する。
【0022】
処理面13、13は対向面12aを表面としたときに裏面側となる。対向面12aと処理面13、13とは表面と裏面の関係となるが、被処理流体Sの圧力により回転処理体11が微細に導入方向に押されたときに、処理路を狭める方向になるようにしたものである。そのため、処理面13、13の裏面とは対向面12aに厳密に正対する必要はない。
【0023】
ケース4、4は、回転処理体11との間に所定の間隔を保持して流路を形成している。導入口2から被処理流体Sを導入する導入路R1と、導入路R1から対向面12aにあたり外周側に向かう対向面路R2、対向面路R2から下方に傾斜する第一の傾斜面12bに沿った第一の傾斜路R3(傾斜面路)、第一の傾斜路R3から垂下面12cに沿った垂下面路R4、垂下面路R4から処理面13に沿った処理路R5を有する。
【0024】
処理面13の内側端及び処理路R5からの下流側は、さらに本体11a側に傾斜する第二の傾斜面14及び第二の傾斜路R6が形成され、側方に形成される排出口3に形成される排出路R7から排出される。本実施形態の排出口3は側方に形成されるものであるが、下方に形成されてもよく、本実施形態に限定されない。排出口3は、処理路R5において微細化処理された後に排出する位置にあればよい。
【0025】
導入路R1、対向面路R2、第一の傾斜路R3、垂下面路R4、処理路R5は、この順に沿って、その幅(回転処理体11からケース4までの高さ)が狭くなり、流路径が狭くなる。漸次的に流路径が狭くなることにより、処理路R5に流入する被処理流体Sの量を調整し、微小間隔となる処理を円満に行うことを可能にしている。例えば、導入路R1は2000μm程度、対向面路R2は1500μm程度、第一の傾斜路R3は1500〜1200μm程度、垂下面路R4は1000μm程度となり、処理路R5が後述のとおり10〜20μmの隙間が形成される。
【0026】
処理路R5は、回転処理体11の広狭部11b、11bの下側であって、固定処理体21、21との間となる。微小間隔となるため、
図3には概念図として示している。流路としては、ケース4、4側から回転処理体11の本体部11a側(回転軸側)に向かって、言い換えると回転処理体11の裏面側で外方から内方に向かう方向に形成している。この処理路R5が外方から内方に向かう方向に形成することにより、回転処理体11の遠心力に抗って処理路で処理することとなり、被処理流体Sの処理量を調整し、微細処理を円満に行うことが可能になる。
【0027】
固定処理体21は、
図4に示すように、処理路R5の下方に固定的に配置されるリング体である。固定処理体21は処理路R5に隣接し、回転処理体11の広狭部11b、11bに対向して固定配置される。これは広狭部11b、11bの固定処理体21側の面と、固定処理体21の広狭部11b、11b側の面とが相対立するように配置される。固定処理体21の処理路R5側の面は、表面22、22と複数の溝23、23とが連続して形成され、リングの中心側は傾斜する傾斜面24を形成し、排出し易くしている。溝23、23は、リング体の中心方向から放射状になるように形成されており、本実施形態では8つを等間隔に形成されている。溝23、23の深さは、表面22、22から10μm低く形成されている。固定処理体21は、
図4に示す実施形態に限定されず、溝の本数や溝の形態は適宜変更し得る。
【0028】
固定処理体21は、ケースに固定され、ベアリングを介して調整可能にしている。回転処理体21の表面22、22が回転処理体11の広狭部11b、11bの裏面(下面)側となる処理面13、13と10μmの間隔で配置されている。これにより、回転処理体11が被処理流体Sにより、導入方向に押圧する圧力が加えられ、回転処理体11が導入方向に微細に動く可能性がある。このときに、固定処理体21の表面22、22と処理面13、13との間に流体の薄い皮膜が形成された状態で、回転処理体11が回転する。この場合には、固定処理体21の10μmの溝23、23により、微細処理物の分散及び粉砕が可能になる。
【0029】
ここで、回転処理体11の外径の周速度と処理路R5の幅(固定処理体21と処理面13との長さ)との関係による処理後の平均粒子径(μm)は表1のとおりとなった。
【0031】
表1によると、処理路R5において、10乃至20μmの幅を有する場合、回転処理体11の周速度を15乃至20m/sとすると、0.1乃至0.3μmの平均粒子径となり、一定の微細粒子径を分散、粉砕することが可能になった。
【0032】
本実施形態の分散粉砕装置1を用いた微細粒子の製造方法について説明する。例えば希少金属の粒子を含む流体を3乃至20L/Hの処理ペースで導入口2から流入させる。このとき、分散粉砕装置1と別のポンプ等の圧力付加手段を用いて所定の圧力をかけて流入させる。
【0033】
回転処理体11は軸12により回転し、回転処理体11外径の周速度を20乃至25m/sとする。これにより流路において内方から外方にかけて所定の遠心力が作用する。この状態で被処理流体Sが導入路R1を経由して流入し、対向面12aにあたり、対向面路R2に沿って、第一の傾斜路R3、垂下面路R4へと進む。そして、処理路R5において、回転処理体11の外方から内方に向けて進む。このとき回転処理体11の遠心力に抗って処理路R5に流入することから、被処理流体Sを調整することができる。
【0034】
処理路R5では回転する回転処理体11の処理面13と固定処理体21とのズリ応力により微細処理が可能になる。処理面13と固定処理体21の表面22との隙間は10μmに調整して固定する。固定処理体21には深さ10μmの溝23、23が形成されることで、溝23、23においては20μmの隙間が形成される。これにより、回転処理体11の導入方向への押付があったとしても、少なくとも10μmの隙間を確保することができ、表1で判明したとおり0.1乃至0.3μmの平均粒子径となる微細処理が可能になる。そして、処理路R5から第二の傾斜路R6及び排出路R7を通じて微細処理された流体が排出される。
【符号の説明】
【0035】
1…分散粉砕装置、2…導入口、3…排出口、4…ケース、11a…本体部、11b…広狭部、12a…対向面、12b…第一の傾斜面(傾斜面)、12c…垂下面、13…処理面、14…第二の傾斜面、21…固定処理体、22…表面、23…溝、24…傾斜面