特許第6842537号(P6842537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842537
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】電子デバイスの封止除去
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   H01L21/302 104H
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-524111(P2019-524111)
(86)(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公表番号】特表2019-523566(P2019-523566A)
(43)【公表日】2019年8月22日
(86)【国際出願番号】NL2017050491
(87)【国際公開番号】WO2018016957
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2019年5月23日
(31)【優先権主張番号】2017198
(32)【優先日】2016年7月20日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519020546
【氏名又は名称】ジーアイエーシーオー インストゥルメンツ ホールディング ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】JIACO Instruments Holding B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】タン,ジャチー
(72)【発明者】
【氏名】ビーナッカー,コーネリス イグネイシアス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ホーク,ウィリブローデス ジェラーデス マリア
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−093669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0012681(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/184000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック・パッケージ内に少なくとも部分的に封止された電子デバイスを処理する方法であって、前記方法が、封止除去するステップを含み、
前記封止除去するステップは、
a)水素源を含むガス・ストリームを提供するステップと、
b)前記ガスから水素含有プラズマ・ストリームを誘起するステップと、
c)前記プラスチック・パッケージをエッチングするために前記プラスチック・パッケージに前記水素含有プラズマ・ストリームを方向付けするステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記電子デバイスが、封止された半導体デバイスと、プリント回路基板とのうちの少なくとも1つである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子デバイスが、銅、銀、金、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、イリジウム、アルミニウム、スズ、またはそれらの合金を含み、好ましくは銀、またはその合金を含む、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス・ストリームが、0.01vol%から100vol%、好ましくは0.1vol%から50vol%、より好ましくは0.3vol%から20vol%、最も好ましくは0.5vol%から5vol%の前記水素源を含む、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記水素源が、水素および/または炭化水素である、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ガス・ストリームが、1つまたは複数のキャリア・ガス、好ましくは1つまたは複数の希ガス、および/または窒素をさらに含む、
請求項1から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ガス・ストリームが、実質的に水素ガス、および/または、炭化水素、および、任意選択的な1つまたは複数のキャリア・ガスからなる、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ガス・ストリームが、5vol%未満、好ましくは1vol%未満の酸素ガス、および/または、5vol%未満、好ましくは1vol%未満のフッ素源、例えばテトラフルオロメタンを含む、
請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記プラスチック・パッケージが、10〜30wt%の有機物質(例えばエポキシ樹脂)、70〜90wt%の無機物質、例えばシリカ充填材、および/または、有機ポリマー・ダイ装着材料、ワイヤ材料を覆う薄膜、ダイ・コーティング材料、シリコーン材料、再配線層材料を含むモールド成形コンパウンドを含む、
請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ステップc)の後に、液体中において、好ましくは(脱イオン化)水、有機溶剤、またはそれらの組み合わせを含む液体中において、超音波クリーニングを前記電子デバイスに施すことを含むステップd)が続く、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
5サイクル〜20サイクルの前記ステップa〜前記ステップdを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップbと前記ステップcとが、0.05barから1barにおいて、好ましくは大気圧において行われる、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスの分野におけるものである。さらに詳細には、本発明は、電子デバイスの処理に関し、詳細には、マイクロ波誘起プラズマを使用した半導体デバイスの封止除去、ならびに、処理に適した装置および取得可能な処理された半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、故障分析および品質管理のために繰り返し封止除去される。封止除去は、パッケージ内に封止された電子デバイス(例えば集積回路またはプリント回路基板)が、点検のために電子機器のダイおよびボンド・ワイヤを露出するように処理される工程である。この工程では、例えば光学顕微鏡法、走査電子顕微鏡法(SEM:Scanning Electron Microscopy)、光子放出顕微鏡法などのさらなる分析が実施され得るように、金属ボンド・ワイヤ、金属ボンド・パッド、半導体ダイ、および電子デバイスの他のコンポーネントが、できる限り損傷のない状態に留まることが重要である。封止除去工程が、電子コンポーネントの部品のうちのいずれかに過度な損傷をもたらす場合、生じ得る元の故障部位が除去される可能性があり、重要な情報が失われることになる。
【0003】
典型的な従来の封止除去方法は、高温の硝酸および硫酸を使用して、モールド成形コンパウンドをエッチングにより除去することである。酸エッチングは、高速(1つの電子パッケージに対して数分)であり、金ワイヤ・ボンドされたパッケージに対して良好に作用する。しかし、近年、エレクトロニクス産業において金ワイヤから銅ワイヤへの切り替えが行われており、この切り替えが酸封止除去において問題を生み出している。銅ワイヤは、金ワイヤと比べて、酸により腐食されやすく、損傷を受けやすい。代替的な方法として、マイクロ波誘起プラズマ(MIP:microwave induced plasm)エッチングが開発されている(例えば、全体として本明細書に組み込まれる、J.TangのタイトルがMIP Plasma Decapsulation of Copper−wired Semiconductor Devices for Failure Analysisである博士論文、Delft University of Technology 2014;J.Tangらの、ECS Journal of Solid State Science and Technology、vol.1、2012、175〜178ページ;および、J.Tangら、Proceedings of the IEEE 11th International Conference on Electronic Packaging Technology and High Density Packaging、1034〜1038ページ、IEEE、Xi’an(2010)を参照されたい)。
【0004】
知られたMIPエッチング方法は、プラズマ・キャリア・ガスとしてのアルゴン・ガス(Ar)と、プラズマ・エッチャント・ガスとしての酸素ガス(O2)と、任意選択的なプラズマ・エッチャント・ガスとしての任意選択的にフッ素源(例えばテトラフルオロメタンまたはCF4)とを含むガス・ストリームからのプラズマのマイクロ波誘起に基づく。これらの方法は、エポキシ樹脂およびシリカ充填材を含むモールド成形コンパウンドをエッチングすることに特に適する。エポキシ樹脂成分は、酸素ガスによりエッチングにより除去され、シリカ充填材は、任意選択的に存在するフッ素原子およびイオンによりエッチングにより除去される。代替的な手法は、シリカ粒子を囲むエポキシ樹脂を除去する酸素プラズマ処理と、ばらばらのシリカ粒子を除去する超音波クリーニングとの間に交互に行うことによる、モールド成形コンパウンド材料の除去である。MIPエッチングは、酸を使用した従来の封止除去方法に比べて良好な結果を提供するが、さらなる改善が依然として要求される。
【0005】
現在、製造されるワイヤ・ボンドされた電子デバイスの約70%が銅ワイヤに基づくと推定される。銅ワイヤ・ボンディングの欠点は、ダイが多数の相互接続された層(多層相互接続体)を備えるとき、銅の剛性がボンド・パッドおよびダイの破損をもたらし得ることである。従って、より可撓性の高いワイヤ材料、例えば銀を含むワイヤを使用することが有益であり得る。しかし、銀ボンド・ワイヤを備える電子機器の封止除去は、困難であると概して考えられており、銅ボンド・ワイヤを備える電子デバイスの封止除去よりさらに困難であると考えられている。銀ボンド・ワイヤに関する問題は、銀酸化物(およびプラズマ中にCF4が存在する場合のフッ化銀)が、知られた封止除去方法中に形成され得ることである。フッ化銀が低い融点をもつのに対し、銀酸化物は低い昇華点をもつ。これらの性質の両方が、銀ボンド・ワイヤの望ましくない損傷につながる。
【0006】
例えば、40%のCF4と60%のO2とを含有したガス混合物のプラズマを使用した銀ベース合金ワイヤを含むパッケージの封止除去をともなう、Kerisitら、IEEE 21st IPFA(2014)、102〜105ページにおいて説明される方法は、銀ワイヤの損傷をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気デバイスを処理する他の方法として、クリーニングおよび/またはデフラッシュが挙げられる。これらの方法は、封止除去に関して上述のものと同じ課題に直面している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くことに、水素を含むプラズマを使用することにより、上述の欠点が少なくとも部分的に克服され得ることが本発明者らにより見出された。このような水素含有プラズマは、電子デバイスまたは電子デバイスのボンド・ワイヤに望ましくない程に損傷を与えることなく、電子デバイスを処理することに適している。
【0009】
従って、本発明の第1の態様は、プラスチック・パッケージ内に封止された電子デバイスを処理する方法であって、本方法は、
a)水素源を含むガス・ストリームを提供するステップと、
b)マイクロ波を使用してガスから水素含有プラズマ・ストリームをマイクロ波誘起するステップと、
c)プラスチック・パッケージに水素含有プラズマ・ストリームを方向付けして、プラスチック・パッケージをエッチングするステップと
を含む。
【0010】
電子デバイスを処理することは、封止除去すること、クリーニングすること、デフラッシュすることなどのうちの少なくとも1つを含み得る。従って、本方法は、デフラッシュなどの封止除去ではない他の処理において有益に使用され得る。デフラッシュは、例えば電子デバイスがプラスチック・パッケージ内に封止された後、封止された電子デバイス上に留められた過剰なプラスチック・パッケージ材料の除去である。本発明の方法は、プラスチック・パッケージの高速エッチングを可能にするので、それは、封止された電子デバイスに対して封止除去することに特に適する。
【0011】
本明細書において使用される場合、電子デバイスまたはコンポーネントという用語は、ダイオード、トランジスタ、集積回路などを含む半導体などの能動コンポーネント、例えば抵抗器、コンデンサ、磁気(誘導性)デバイスなどの受動コンポーネント、および、任意選択的に例えばプリント回路基板またはリードフレームといった基材に搭載された能動コンポーネントと受動コンポーネントとの組み合わせを含み得る。
【0012】
従って、例えば、封止された電子デバイスとして、典型的には、封止された半導体デバイス、封止されたコンデンサ、封止されたインダクタ、封止された抵抗器、封止されたプリント回路基板、およびそれらの組み合わせが挙げられる。封止された電子デバイスという用語は、本明細書において使用される場合、プラスチック・パッケージ内に完全に、または部分的に封止された、埋め込まれた、コーティングされた、(電気的に)絶縁された、などの電子デバイスを含む。従って、本方法は、プラスチック・パッケージを備える任意の電子デバイスを処理することに適している。プラスチック・パッケージは、当技術分野において知られており、典型的には、衝撃および腐食に対する保護を提供し、外部回路からデバイスに接続するために使用される接触ピンまたは導線を保持し、デバイス内において生成される熱を放散する。
【0013】
本発明に特に適した装置は、全体が本明細書に組み込まれるWO2013/184000において説明されるように、MIPエッチング装置である。このデバイスはJiaco Instruments B.V.(Delft、the Netherlands)により市販されている。この文献において「Beenakker型TM010モード・マイクロ波共振キャビティ」としても知られるBeenakkerキャビティが特に良好な結果をもたらすので、このMIPエッチング装置は、Beenakkerキャビティを備える。
【0014】
水素含有プラズマは他の用途において使用される。例えば、最大1μmの薄い有機ポリイミド膜またはフォトレジスト層が、シリコン・ウエハ表面からエッチングにより除去され得る(Robb、J.Electrochem.Soc:Solid State Science and Technology(1984)、1670〜1674、および、US4340456を参照されたい)。この知られた用途の場合のエッチング速度は、300Å/分(30nm/分)未満である。この速度は薄いポリイミド膜に対して許容され得るが、典型的には、許容可能な期間内にダイおよびボンド・ワイヤを露出するために、モールド成形コンパウンドを含むパッケージをエッチングにより除去するために、より高い(例えば1μm/分を上回る)エッチング速度が必要とされる。このようなパッケージは、通常、はるかに厚く、例えば10〜1000μm、典型的には50〜500μmである。従って、本発明のプラスチック・パッケージは、例えば、シリコン・ウエハまたはチップにおいて金属間誘電体またはパッシベーション層として、または、ストレス緩和層として使用される薄い絶縁層と混同されないようにしなければならない。
【0015】
特に好ましいエッチング速度は、プラズマを誘起すること(ステップb)、および大気圧においてプラスチック・パッケージをエッチングにより除去することにより実現され得る。プラズマを誘起すること、および、大気圧においてプラズマを使用することにより、プラズマが、真空状態(または0.05bar未満などの低圧)において誘起および使用されるプラズマに比べて、はるかに高い密度(概して、1000倍高い)となるので、プラスチック・パッケージをエッチングにより除去することが、より高効率になり得る。
【0016】
本発明による電子デバイスのプラスチック・パッケージは、10〜30wt%の有機物質(例えばエポキシ樹脂)および70〜90wt%のシリカ充填材(例えば石英)などの無機物質を含む従来のモールド成形コンパウンドを含み得る。プラスチック・パッケージは、様々な半導体パッケージまたはダイにおいて、例えば、有機ポリマー・ダイ装着材料、ワイヤ材料を覆う厚い(>5μmの)(有機)薄膜、ダイ・コーティング材料、シリコーン材料、再配線層材料などの、他の有機ポリマー材料を含み得る。
【0017】
効率の改善は、0.5barなどのわずかに低くされた圧力においても達成され得る。従って、好ましい実施形態において、ステップbおよびcは、0.05barから1barの圧力において行われ、好ましくは、大気圧において行われる。
【0018】
プラズマ・エッチングは、Ar+などのイオンの物理的な打ち込みを使用するイオン・ミリング、O・またはF・などの中性ラジカルによる化学エッチング、および、イオン・ミリングと化学エッチングとの両方の組み合わせである反応性イオン・エッチング(RIE:reactive ion etching)という3つのカテゴリに分類され得る。封止除去の場合、電子デバイスのダイおよびボンド・ワイヤに対する一切の望ましくない損傷を防ぐために、化学エッチングを使用することが好ましい。化学エッチングの場合、パッケージに到達するプラズマは、概して、ラジカルを含み、イオンを実質的に含まない。放射管/チャンバ壁、および、電子またはガス分子/イオンとの再結合に起因して、実質的にパッケージに向かう経路の始まり(プラズマが誘起される位置)のみにイオンが存在するように、真空においてプラズマを誘起すること、および、プラズマをパッケージ(例えば長い放射管または下流の真空室)まで長距離にわたって運ぶことにより、パッケージに到達するこの中性プラズマ残光が実現され得、結果として、経路の端部に位置するパッケージに到達するプラズマは、イオンを実質的に含まない。代替的に、プラズマは、また、誘起されたイオンがプラズマ中において壁または電子と再結合するように、大気圧において誘起され得る。大気圧において分子、原子、ラジカル、およびイオンの密度は、真空中より数段高く、イオンの平均自由行程は、真空中より大気状態中のほうがはるかに小さい。従って、大気圧におけるイオンは、真空中より数段速く再結合する。従って、化学エッチングを達成するためには、ステップbおよびcが大気圧において行われることが好ましい。大気圧においてステップbおよびステップcを行うことに代えて、または追加して、イオンおよび電子がファラデー箱の内側に閉じ込められて、イオンが基材に到達することを防ぐために、プラズマの周囲にファラデー箱が存在し得る。
【0019】
水素含有プラズマを使用することが銀を含む電子デバイスに有益であり得ることだけでなく、水素含有プラズマを使用することが銅、銀、金、パラジウム、アルミニウム、スズ、またはそれらの合金を含む電子デバイスに概して有益であることが見出された。これらの金属はボンド・ワイヤ、はんだボール、リードフレーム、再配線層、ダイが位置する面、および/または、電子デバイスのボンド・パッド内に存在し得る。水素含有プラズマは、エッチャント・ガスとして酸素を使用した従来の酸封止除去またはMIPエッチングに比べて穏やかな封止除去方法をもたらし、従って、電子デバイス部品に誘起する損傷を少なくする。水素含有プラズマは、水素源として水素ガスまたは炭化水素を含むガス・ストリームから誘起され得る。準安定水素分子および中性ラジカル水素(H・)は、それぞれ、H−HまたはC−H連結のホモリシスを介して、または、H+と電子との再結合により水素ガスまたは炭化水素から得られ得る。
【0020】
CH4などの炭化水素が本発明において使用されるとき、エッチング装置内、例えばマイクロ波キャビティまたは放電管内における炭素堆積を避けるために、ガス・ストリームがいくらかの酸素をさらに含むことが特に有益であり得る。
【0021】
理論的に縛られる意図はないが、本発明者らは、水素がプラスチック・パッケージと化学的に反応することにより、C−C結合を切断してC−H結合を形成し、続いて、揮発性コンパウンドを形成すると考える。従って、化学エッチング機構は、酸素がエッチャント・ガスとして使用され、C−O結合が形成され、続いてCO2が形成されると考えられる場合に比べて、異なり得る。
【0022】
パッケージをエッチングにより除去するために、高いエッチング速度が実現されるように、シリカ充填材(存在する場合)を能動的に除去することも概して必要とされる。この目的を達成するために、テトラフルオロメタンなどのフッ素源がガス・ストリーム中に存在し得る。フッ素源は、プラズマ中に存在する、シリカ充填材と容易に反応するフッ素(F・)をもたらす。上述のようなフッ素源の使用に代えて、または追加して、ステップc)の後、液体中において超音波クリーニングを電子デバイスに施すことを含むステップd)が続き得る。この液体は、電子デバイスに望ましくない程に損傷を与えてはならず、従って、例えば(脱イオン化)水、有機溶剤、またはそれらの組み合わせを含み得る。液体は、好ましくは、電子デバイスの部品(例えば半導体ダイ)において金属の腐食を引き起こす可能性のない非イオン溶媒(例えばアセトン)を含む。この液体の特定の機能は、超音波槽から試料にエネルギーを伝達することにより、ガラス・ビーズを解放することである。液体が電子デバイスに損傷を与えない(例えば腐食させない)ことが非常に好ましい。
【0023】
超音波クリーニングが使用されるとき、ステップd)における超音波クリーニングは、典型的には(ステップa〜ステップcにより実現される)プラズマによるパッケージのエッチングと交互に行われる。実際、超音波クリーニングが使用されるとき、本方法は典型的には、5サイクル〜20サイクルのステップa〜ステップdを含む。
【0024】
超音波クリーニングは、酸素ベースのプラズマ・エッチングに対してこれまでに開発されており(例えば、J. Tangら、ECS Journal of Solid State Science and Technology、vol. 1、2012、175〜178ページを参照されたい)、超音波クリーニングは、フッ素源を含有したエッチャント・ガスの必要性をなくし、封止除去された電子コンポーネントに対する損傷をより少なくする結果をもたらすので、フッ素ベースのシリカ充填材除去の代替例として特に好ましい。従って、ガス・ストリームが、テトラフルオロメタンなどのフッ素源を5vol%未満含むこと、好ましくは1vol%未満含むこと、より好ましくは実質的に含まないことが好ましい。
【0025】
ガス・ストリーム中における水素源の相対量は、0.1vol%から100vol%まで変動し得る。実質的に水素ガス(例えば95vol%を上回る水素ガス)からなるガス・ストリームが使用され得るが、典型的には安全上の理由から好ましさでは劣る。さらに、実質的に水素ガスからなるガス・ストリームからのプラズマ・ストリームを誘起し、および持続させることは困難であり、概して真空中(例えば0.1bar未満の圧力)において行われる必要がある。従って、ガス・ストリームが、0.1vol%から50vol%まで、より好ましくは、0.1vol%から20vol%までの水素源を含むことが好ましい。
【0026】
水素源に加えて、ガス・ストリームは、1つまたは複数の希ガスおよび/または窒素などの1つまたは複数のキャリア・ガスをさらに含み得る。特に好ましい希ガスの例は、アルゴンおよびヘリウムである。希ガスおよび/または窒素は、プラズマを持続させること、および、水素ガスおよび炭化水素などの典型的な水素源に関係した安全上の問題を減らすことに役立つ。キャリア・ガスは、安定した大気圧プラズマを持続させることに役立つ。ガス・ストリームは、95vol%を上回るキャリア・ガスを含むことが好ましい。しかし、特に、プラズマが低圧(真空)において生成および維持される場合、純粋な水素ガス・プラズマを生成することも可能であり得る。
【0027】
酸素含有プラズマが、電子デバイスに、例えば電子デバイスにおける銀または銅ボンド・ワイヤに、望ましくない損傷をもたらすことが見出された。従って、ガス・ストリームは、好ましくは、5vol%未満、より好ましくは、1vol%未満の酸素ガスを含む。最も好ましくは、ガス・ストリームが酸素を実質的に含まない。しかし、小量の酸素は、好ましくない副作用をともなわずにエッチング工程に役立ち得る。従って、酸素を実質的に含まないことは、典型的には、電子デバイスに望ましくない程に損傷を与えない、ある量の酸素が存在し得ることを意味する。典型的な量の酸素は、水素ガスの量に対して10vol%であり得る。特定の一実施形態において、ガス・ストリームは酸素ガスを含まない。
【0028】
ΝΗ3、NO、NO2、NF3、Cl2、HCl、CH3Cl、F2、HF、CH3F、CH22、CHF3、CF4、C26、CaF8、H2S、SO2、SF6などの他のガスも銀ワイヤに損傷を与え得ることがさらに見出された。ΝΗ3自体は銀ワイヤに激しく損傷を与えないものであり得るが、ΝΗ3は、特に多量のO2の存在下において、激しく損傷を与えるNO、NO2、HNO3を形成し得る。従って、ガス・ストリームが、これらの他のガスを実質的に含まないことが好ましい。
【0029】
従って、本発明によると、ガス・ストリームは実質的に、水素ガス(H2)、炭化水素ガスまたは蒸気(例えばCH4、C26)、窒素ガス(N2)、1つまたは複数の希ガス、またはそれらの組み合わせからなり得る。実質的に〜からなるとは、ガス・ストリームが、90vol%を上回る、好ましくは95vol%を上回る、より好ましくは99vol%を上回るガスを含むことを意味する。本発明に適した典型的なガス混合物は、水素、炭化水素、およびそれらの組み合わせと併用した希ガス、特に、アルゴン、ネオン、および/またはヘリウムであり、任意選択的に窒素をさらに含む。このような混合物の例として、Ar/H2、He/H2、Ar/CH4、He/CH4、Ar/C26、He/C26、Ar/H2/CH4、He/H2/CH4、Ar/H2/C26、He/H2/C26、Ar/H2/N2、およびHe/H2/N2が挙げられる。
【0030】
特に好ましいガス・ストリームは、流量1400sccmのアルゴンと、流量400sccmのアルゴン/水素混合物(95/5vol%)との混合物である。これらのガス組成物は市販の標準的なガスである。このガス・ストリームは、Ar対H2の比が98.9vol%対1.1vol%である。
【0031】
「sccm」は、本分野において標準的な用語であり、標準立方センチメートル毎分(standard cubic centimeter per minute)の流量を意味する。標準状態は、通常、温度0℃および圧力1.01barである。
【0032】
本発明のガス・ストリームは、複数のガス・ストリームの混合物であり得る。本発明に適したエッチング装置は、例えば、1つまたは複数のガス源(例えばボトル)に接続され得、このガス・ストリームは、装置に入る前に、または装置内において組み合わされ得る。炭化水素蒸気は、例えば、液体状態の炭化水素を含む容器を通してキャリア・ガス・ストリームを泡立てることにより取得され得る。
【0033】
ガス・ストリームとして使用される特に適切なガス混合物は、フォーミング・ガスおよび/または保護ガスとして知られるガス混合物である。フォーミング・ガスは、約5vol%の水素ガスと、約95vol%の窒素または希ガスなどの不活性ガスとを含むガス混合物であり、半導体デバイスの銅ワイヤ・ボンディング中に、半導体デバイス製造業者により典型的に使用される。保護ガスは、約1〜30vol%の水素ガスと約70〜99vol%のアルゴンとを含むガス混合物であり、溶接工程中に典型的に使用される。従って、半導体デバイス製造業者は、概して、フォーミング・ガスおよび/または保護ガスを利用可能なインフラを既に有する。従って、フォーミング・ガスおよび/または保護ガス使用することが本発明の実施態様のための新しいインフラおよびシステムを用意する必要性を制限するので、フォーミング・ガスおよび/または保護ガス使用することが特に有益である。従って、電子デバイスを処理するための、好ましくは半導体を封止除去するためのフォーミング・ガスおよび/または保護ガスなどの水素含有ガスの使用が、本発明の別の一態様である。5vol%の水素ガスを含むフォーミング・ガスの代替例として、1vol%から30vol%までを含む他の市販のガス混合物も、本発明のために使用され得る。
【0034】
本発明のさらなる態様は、例えば銀ボンド・ワイヤ、銀めっきされたリードフレーム、および/またはダイが位置する銀面といった銀を含む、すなわち、ここまでに本明細書において説明されるような本発明による封止除去方法により取得可能な、1つまたは複数のコンポーネントを備える処理された電子デバイス、好ましくは封止除去された半導体デバイスである。処理された電子デバイスの1つまたは複数のコンポーネントは、本発明による封止除去方法が行われたときに、実質的に損傷のない状態に留まる表面を備える。従って、本発明による銀を含む封止除去されたデバイスは、銀を含む封止除去されたデバイスより滑らかな、および、より損傷の少ない表面を備え、例えば、本方法によれば形成されないが、例えば酸素含有ガス・ストリームを使用したMIPエッチング、または従来の酸封止除去方法によれば形成される亀裂、ピッチング、または銀酸化物の存在が実質的にないか、より少ないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明による銀ボンド・ワイヤを備える封止除去された半導体デバイスを示す図である。
図2】本発明によらない銀ボンド・ワイヤを備える比較の封止除去された半導体デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の別の一態様は、水素含有プラズマを閉じ込めることに適した材料として、窒化アルミニウム(AlN)または窒化ホウ素(BN)などの酸素を含まない材料を含むプラズマ放電管を備えるプラズマ・エッチング装置である。AlNおよびBN材料が、特に高い融点および良好な熱伝導性をもち、電子的な絶縁体であることが見出された。加えて、それらの酸素を含まない特性が、上述のような酸素の望ましくない影響を減らす。
【0037】
本発明による装置は、好ましくは、その全体が組み込まれるWO2013/184000において説明されるようなMIPエッチング装置の修正形態である。好ましくは、本発明による装置は、上述のような材料を含むプラズマ放電管に接続されたプラズマ源としてBeenakkerキャビティを備える。
【0038】
典型的には、本発明による装置は、大気状態においてガス・ストリームからのプラズマの持続的な生成を可能にした、真空生成コンポーネントを不要とするプラズマ源(例えばBeenakkerキャビティ)を備える。プラズマ源は、プラズマ・ジェットの形態でプラズマを放電するためのプラズマ放電管を備える。プラズマ・ジェットは、放電管により所定の流れの軌道に沿って、電子デバイスのパッケージ表面に向けられる。ガス供給管とプラズマ放電管とが接続され、放電管は、プラズマ源の中心を通って延びている。この放電管は、窒化アルミニウム(AlN)または窒化ホウ素(BN)などの酸素を含まない材料を備え、2mmから10mmの間の外管径(例えば約6mm)、および、約0.5mmから3mmの内管径(例えば約1.2mm)をもち得る。放電管長は、30mmから150mm(例えば約10cm)であり得る。放電管は、プラズマ源の内側である放電管の内側を流れるガスを、キャビティの共鳴チャンバを形成する中空構造物により囲まれた残りの空所から効果的に分離する。
【0039】
本装置は、典型的には、プラズマ放電管から実質的にある垂直距離に位置する試料保持器をさらに備える。試料保持器は、試料保持するための面を提供する。
【0040】
明確であることと簡潔な説明であることとを目的として、特徴が本明細書において同じまたは別々の実施形態の一部として説明されるが、本発明の範囲が、説明される特徴のうちのすべてまたは一部の組み合わせを含む実施形態を含み得ることが理解される。
【0041】
本発明は、以下の実施例により示され得る。
【実施例1】
【0042】
Jiaco Instruments B.V.(Delft、the Netherlands)により市販されている、および、WO2013/184000において説明されるMIPエッチング装置では、キャリア・ガスとして1400sccmのアルゴン流を使用して、流量400sccmとしたアルゴンおよび水素ガス(95:5)からなるガス・ストリームから、プラズマが誘起された。このプラズマが、超音波クリーニングと組み合わせて、銀ボンド・ワイヤと、10%のエポキシ樹脂および90%のシリカ充填材のプラスチック・パッケージとを備える半導体デバイスを封止除去するために使用された。目視検査できれいなワイヤ表面を示す封止除去された半導体デバイスが得られた(図1)。
【実施例2】
【0043】
実施例1で説明される実験は、アルゴン・ガス、窒素ガス、および水素ガスからなるガス・ストリーム(すなわち、1400sccmにおけるアルゴン(100vol%)の第1のストリームと、25sccmにおける窒素および水素(それぞれ95vol%および5vol%)の第2のストリームとの混合物を使用して繰り返された。目視検査で許容可能な程度にきれいで、わずかに損傷を受けた銀ワイヤ表面を示す封止除去された半導体デバイスが得られた。
【0044】
比較例
実施例1で説明される実験が、Ar/N2、Ar/O2図2)、O2/CF4(超音波クリーニングなし)からなるガス・ストリームを使用して繰り返され、または、従来の酸封止除去方法を使用して封止除去が実施された。結果が表1にまとめられている。
【表1】
図1
図2